論文のテーマを考える上で役立つ文献リスト

論文のテーマを考える上で役立つ文献リスト
文学研究に文化史的広がりを持たせる上で有益と思われる基礎文献や、ヨーロッパ文学、
美術史、精神史などの重要な研究書を、18世紀以前のヨーロッパ文化に興味の中心がある
ものを主体に、厳選して列挙した。選択基準は、卒論のテーマにかかわらず一読の意義があ
る古典的名著や近年の重要な研究書の他、定評のある入門書、内容に独創性はあまりないが
日本語で書かれているので導入のために読んでみるとよい研究書など、さまざまである。手
にとって目次を眺めてみるだけでも、いろいろと刺激があると思われる。
慶應義塾藝文学会の『文献案内(改訂版)
』およびその増補版となるウェブサイト(英米文
学専攻の HP)もあわせて参考にすること。
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導入的内容の基本書
定評ある古典的研究書
最近の専門的研究書
[通史的な文学史、関連文化史]
通史的な文学史は数多いので、入手しやすいものを中心に挙げる。全巻を通読する必要は
ないが、興味のある時代については読んでみる必要あり。
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Ford, Boris, ed., The Pelican Guide to English Literature, 9 vols (Harmondsworth: Peguin,
1982-84). −文学史だけでなく、歴史的背景、文化的文脈、代表作品の解説。必読。
Ford, Boris, ed., The Cambridge Guide to Arts in Britain, 9 vols (Cambridge: Cambridge
UP, 1988-89). −イギリス美術、文化への導入。[B702.33C41-9]
Ford, Boris, ed., The Cambridge Cultural History, 9 vols (Cambridge: Cambridge UP,
1988, 1992). 導入的イギリス文化史。[B702.33F411-9]
[批評理論、ヨーロッパ文学一般]
; Eagleton, Terry, Literary Theory: An Introduction (Oxford: Blackwell, 1983). −現代批評
を扱った研究は数多いが、全体像をつかむのにわかりやすい入門。邦訳 イーグルトン
『文学とは何か』(岩波書店)。
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Lodge, David. The Modes of Modern Writing: Metaphor, Metonymy, and the Typology of
Modern Literature (London: Edward Arnold, 1977). − 少し古いが、今世紀の文学批評の
基本的用語、概念についてわかりやすく解説している。より新しいロッジ『バフチーン
以後−ポリフォニーとしての小説』
(法政大学出版局)も有益。
— E.アウエルバッハ『世界文学の文献学』
(みすず書房, 1998)−ヨーロッパ文学論の古典。
同著者の『ミメーシス』
(筑摩書房)も重要。
; ツヴェタン・トドロフ『幻想文学論序説』三好郁郎訳(創元ライブラリ、1999)−これ
も幻想文学論の古典。
— Dictionary of the History of the Ideas, 5 vols (New York: Charles Scribner’s Sons,
19968-74)、邦訳、『西洋思想史大事典』(平凡社)。ヨーロッパの観念史事典。事典の形
式になっているが、個別の項目が独立した論文のように読める。たとえば「古代、中世
における神話」、「19世紀における神話」、「自由」、「個人主義」など、様々な観念や主
題について歴史的に解説している。
『西洋思想史大事典』を構成している項目をテーマ別
に編纂して翻訳、解説した「叢書ヒストリー・オヴ・アイディアズ」
(平凡社)も刊行さ
れている。これは『神話の系譜学』、『アレゴリー・シンポル・メタファー』など、二十
数巻の小冊子で刊行されていて、テーマ別に概念史を知る上で便利。
[フォークロア、神話、比較宗教学、西洋古典]
; Briggs, Katherine, M., The Fairies in Tradition and Literature (London, 1967) −邦訳
ブリッグス『イギリスの妖精−フォークロアと文学』(筑摩書房, 1991) 妖精論の古典。
; 久保正彰:
『OVIDIANA―ギリシア・ローマ神話の周辺』
(青土社, 1978)−ヨーロッパ文
学のソースとしても重要なオウィディウスを中心に、神話と文学の関わりを具体的にあ
つかった読みやすい評論。
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Joseph Campbell, The Masks of God. 4 vols (New York: Viking, 1959-67). - Primitive
Mythology, Occidental Mythology, Oriental Mythology, Creative Mythology の4巻からな
り、全世界の神話を総括的に論じている。いろいろな事例を知るには便利で、事典風に
つかえる。現在は Penguin Books 版もある。邦訳 J.キャンベル『神の仮面−西洋神話
の構造』山室静訳上・下巻(青土社, 1985).
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Warner, Marina. From the Beast to the Blonde: on Fairy Tales and their Tellers (London:
Vintage, 1994). Maria Warner は女性論の視点から文学、文化研究にアプローチしている。
民話、伝説に興味ある人は、研究上の方法論を知る上でも必読。同じく Maria Warner に
は、Alone of All her Sex: the Myth and Cult of the Virgin Mary (London: Weidenfeld and
Nicolson, 1976)という聖母マリア論もある。
— ミルチャ・エリアーデ『神話と夢想と秘儀』岡三郎訳(国文社, 1972)− エリアーデは
20世紀を代表する比較宗教学者で、本書はエリアーデの数ある著作のなかでも重要な
一冊。他にも『永遠回帰の神話』
(未来社)
、『大地・農耕・女性』(未来社)、
『生と再生』
(東京大学出版会)、『聖と俗』(法政大学出版会)、『イメージとシンボル』(せりか書
房)などが、文学研究にも示唆的である。さらに『世界宗教史』全3巻(筑摩書房)、
『エ
リアーデ著作集』13 巻(せりか書房)などが刊行されている。
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L.D. レイノルズ / N.G. ウィルソン『古典の継承者たち: ギリシア・ラテン語テクスト
の伝承に見る文化史』西村賀子、吉武純夫訳 (国文社, 1996)
[中世ヨーロッパ文学、文化]
いわゆる文学史に限らず、中世の文化、メンタリティ、芸術について面白い切り口を提供
してくれる書物を挙げる。
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松原秀一『中世ヨーロッパの説話』
(中公文庫, 1992). − 比較文学的視野からとらえた
物語論。同著者の『異教としてのキリスト教』
(平凡社, 1990)も面白い。
アーロン・グレーヴィチ『同時代人の見た中世ヨーロッパ』中沢敦夫訳(平凡社、1995)。
中世の説話から中世人のメンタリティを読み解く。
E.R.クルツィウス『ヨーロッパ文学とラテン的中世』南大路振一他訳(みすず書房、1971);
Curtius, E.R., European Literature and the Latin Middle Ages, trans. W.R. Trask.
(Princeton, NJ: Princeton UP, 1953).−西洋文学にくり返し登場する様々なモチーフやト
ポスを詳述していて、手引きとしても使える。邦訳 クルツィウス『ヨーロッパ文学と
ラテン的中世』
(みすず書房)。
新倉俊一『ヨーロッパ中世人の世界』
(筑摩書房、1983)− 日本語の中世文学論のなか
では面白い一冊。著者は中世フランス文学者なので、フランスが中心だがバランスよく
様々なテーマを扱っている。
池上俊一『ロマネスク世界論』 (名古屋大学出版会, 1999)
クロード・カプレール、
『中世の妖怪、悪魔、奇跡』幸田礼雅訳(新評論、1997)
H.R. Patch, H.R., The Other World According to Descriptions in Medieval Literature
(1950; repr. New York: Octagon, 1980)−ハワード・ロリン・パッチ『異界−中世ヨーロ
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ッパの夢と幻想』黒瀬保他訳(三省堂、1983)−中世文学の主要な要素である異界(妖
精国、死後世界など)の描写をあつかった古典的研究。
マイケル・カミール『周縁のイメージ−中世美術の境界領域』永澤峻、田中久美子訳 (あ
りな書房、1999)−中世写本の余白の挿絵、中世教会の世俗的な彫刻などを具体例とし
て、中世文化におけるマージナルなものを論じる。
ユルギス・バルトルシャイティス『アナモルフォーズ』高山宏訳(国書刊行会、1992)
−バルトルシャイティスは、中世、ルネサンス美術にひそむ異形のもの、独特のモチー
フ、異教性などに注目した一連の著作を発表していて、見るだけでも楽しい。他に、
『ア
ベラシオン』
、『鏡』、
『イシス探求』
。著作集全4巻
[近代初期、ルネサンス文化]
1500-1700 年頃の文化を、美術史や民衆文化の視点から総括的に扱い、この自体の文学を考
える上で有益な視点を提供してくれる文献を中心に挙げてある。
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ミハイール・バフチーン『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文
化』川端香男里訳(せりか書房, 1980)−民衆文化(カーニバル、祭礼など)の原理を論じ
た古典的研究。
Burke, Peter, Popular Culture in Early Modern Europe (Aldershot, Hants: Wildwood
House, 1978). −邦訳 バーク『ヨーロッパの民衆文化』
(人文書院)
。Peter Burke は重
要なルネサンス研究者。近代文学における民衆、大衆といった概念をちゃんと押さえ、
近代においてどのように伝承されてきたかを考えるうえで必読。
Thomas, Keith, Religion and the Decline of Magic: Studies in Popular Beliefs in
Sixteenth- and Seventeenth-Century England (London: Penguin Books, 1971). −イギリ
スの大学の文学部で必読書として名前の挙げられることがもっとも多い本−邦訳 みす
ず書房。
ジャン・セズネック『神々は死なず−ルネサンス芸術における異教神』高田訳(美術出
版社、1977)−ルネサンスの古代神話受容の基本的研究書。
ワイリ−・サイファ−『ルネサンス様式の四段階−1400〜1700 における文学・美術の変
貌』川村訳(河出書房新社, 1987)。− ルネサンス、バロック美術の時代を同時代の文学
とのかかわりで論じている。通史的で読みやすい。
Greenblatt, Stephen, Renaissance Self-Fashioning: From More to Shakespeare
(Chicago: Univ. of Chicago, 1980). 邦訳、グリーンブラット『ルネサンスの自己形成』- 新
歴史主義批評の古典。
岩崎宗治『シェイクスピアのイコノロジー』
(三省堂書店、1994)−同時代のイメージの
文化とのかかわりで面白くシェイクスピアを読み解いている。
[18世紀から19世紀へ−イギリス文学を中心に]
この時代の文学を考える上で有益な文学史、文化史的文脈を知ることができる書物を中心に
挙げた。
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由良君美『椿説泰西浪漫派文学談義』
(青土社, 1983)−文学研究が美術、歴史など関連
分野との総合研究であることがよくわかるロマン派中心の近代文学論。同著者の他の著
作も一読の価値あり。
『みみずく英学塾』(青土社, 1987) 『みみずく偏書記』
(青土社,
1983)『メタフィクションと脱構築』 (文遊社, 1995)。
川崎寿彦『庭のイングランド−風景の記号学と英国近代史』
(名古屋大学出版会, 1983)。
ヨーロッパにおける風景の意識の発展を文学との関連でとらえた好著。自然描写や風景
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といったテーマに興味ある人には面白い同入所となる。同著者には『森のイングランド
−ロビン・フッドからチャタレー夫人まで』
(平凡社ライブラリー)、
『鏡のマニエリスム
−ルネッサンス想像力の側面』
(研究社)もある。
M.H. ニコルソン『暗い山と栄光の山−無限性の美学の展開』 小黒和子訳, クラテール
叢書, 13 (国書刊行会, 1989)−十八世紀文学、絵画を特徴づけるピクチャレスクの美学に
ついての基本書。
M.H. ニコルソン『月世界への旅』高山宏訳, 世界幻想文学大系,11(国書刊行会, 1986)
−同じ Marjorie Hope Nicolson による、17世紀の天文学の進展に触発された十八世紀
の宇宙旅行ものに関する刺激的な研究。
マリオ・プラーツ『肉体と死と悪魔−ロマンティック・アゴニー』倉智他訳(国書刊行会,
1986) −文学と美術の両面から論じた19世紀文化論。
川村錠一郎『マニエリスムとバロック』(青土社、1988)
高山宏『庭の綺想学−近代西欧とピクチャレスク美学』
(ありな書房、1995)
高山宏『奇想天外・英文学講義』講談社選書メチエ(講談社、2000)−近代イギリス文
学を同時代の文化史の文脈で考察した、楽しく読める通史。
Altick, Richard D., Paintings from Books: Art and Literature in Britain, 1760-1900
(Columbus OH: Ohio State UP, 1985)−文学と絵画の関係、特に英文学作品の絵画化につ
いて多くの具体例を挙げて論じている。
[ヨーロッパ文化史、精神史]
ヨーロッパの心性(メンタリティ)、精神現象、社会現象などを歴史的に解読しようとした、
広く文化史的視座に立つ重要な研究を挙げる。
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L.フェーブル、G.デュビィ、A.コルバン『感性の歴史』大久保他訳(藤原書店, 1997)−
人間の感性、心性、習慣などの展開を文化史的に考察する方法についての、いわゆるフ
ランスの「アナール派」の歴史家による概説。
アラン・コルバン『浜辺の誕生−海と人間の系譜学』福井訳(藤原書店、1992)。−リゾ
ートとしての海辺の誕生に関する研究。18,19世紀文学の文脈を考える上で有益。
同著者の『レジャーの誕生』渡辺響子訳(藤原書店、2000)も面白い。
A.V. ビュフォー『涙の歴史』持田訳(藤原書店、1994)。小説を読んだり舞台を観て、
人はいつから涙を流すようになったのか?主に 18-19 世紀フランス社会の分析を通じて
論じる。
Klibansky, Raymond, Erwin Panofsky, and Fritz Saxl, Saturn and Melancholy: Studies in
the History of Natural Philosophy, Religion and Art (London: Thomas Nelson, 1964). −
メランコリーというひとつの気質を、美術史、科学史、文学史、哲学史など複数の視点
から捉えて、その展開を古典から近代まで論じた感動的ともいえる大著。文化研究の一
環としての文学研究という視点を知るうえでも重要。邦訳−レイモンド・クリバンスキ
ー、アーウィン・パノフスキー、フリッツ・ザクセル『土星とメランコリーー自然哲学、
宗教、芸術の歴史における研究』榎本武文他訳(晶文社、1991)
、
松枝到編『ヴァールブルク学派−文化科学の革新』(平凡社、1998)
、M.グリーン他『エ
ラノスへの招待−回想と資料』
(平凡社、1995)−この2冊は、文学を含む様々な文化現
象を総合的に研究する方法論を確立しようとした、20世紀の研究機関に関する書物。
研究の方法論を考える上で有益。
ミシェル・フーコー『言葉と物−人文科学の考古学』渡辺・佐々木訳(新潮社, 1974)
− フーコーの代表作のひとつで、テクストとイメージの関連などについて、いろいろ
と考える糸口を与えてくれる。
ジョルジュ・デュビィ、ミシェル・ペロー監修『女の歴史』杉村他監訳 10 分冊(藤原
書店、1994 )。ヨーロッパの女性の地位、表象、観念の変遷について、歴史的に考察し
た大著。
〈人間の一生、病、死、死後世界〉
死生観のテーマは特に注目を集めていて研究も多いので、まとめて紹介する。
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フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生− アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』
杉山光信・杉山恵美子訳(みすず書房, 1980) −子供はいつから「不完全、未完成な大人」
ではなく、独立した人格、存在として認められるようになったのか?ヨーロッパ近代に
おける子供の概念の誕生をあつかった興味深い研究。
サンダー・L・ギルマン『病気と表象−狂気からエイズに至る病のイメージ』本橋訳(あ
りな書房、1996)− 病の社会文化史。
フィリップ・アリエス『図説 死の文化史− 人は死をどのように生きたか』福井憲彦訳
(日本エディタ−スク−ル出版部, 1990)。西洋の死の文化史について、多くの図版とと
もに概説した定評ある書物
ジャン・ドリュモー『恐怖心の歴史』永見、西澤訳(新評論、1997)−超自然的なもの
への恐怖の歴史を中世から読み解く。
ジャック・ル・ゴッフ『煉獄の誕生』渡辺、内田訳(法政大学出版局、1988)
。―カトリ
ック信仰の死生観の要である煉獄の概念の発達史。
ジャック・ル・ゴッフ『中世の夢』池上俊一訳(名古屋大学出版会、1992)− 中世文
化の様々な側面をあつかった刺激的な論集。
Panofsky, Erwin, Tomb Sculpture: Its Changing Aspects from Ancient Egypt to Bernini,
ed. H.W. Janson (London: Thames and Hudson, 1964). − 多くの図版が入った墓石彫
刻などの研究。邦訳有り。
[西洋美術の文化的文脈、テクストとイメージの関連について]
文学と美術との関連を考え、文学研究にビジュアルなものを取り入れるに当たって、具体的
な視点を提供してくれる研究書を挙げている。
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Panofsky, Erwin, Studies in Iconology: Humanistic Themes in the Art of the Renaissance
(1939; New York: Harper & Row, 1972). 「時」の擬人化に関する研究など重要な論文集。
邦訳パノフスキー『イコノロジー研究』上・下巻(ちくま文庫)
。パノフスキーは二十世
紀を代表する美術史家。
マリオ・プラーツ『綺想主義研究−バロックのエンブレム類典』伊藤博明訳(ありな書
房, 1999)−プラーツは二十世紀を代表する批評家で、特に文学と視覚芸術の関連につい
て多くの著作を残した。
『綺想主義研究』は、十七世紀の図像学の伝統を文学に関連付け
て具体的に論じている。
マリオ・プラーツ『ムネモシュネ―文学と視覚芸術との間の並行現象』高山宏訳 (あり
な書房, 1999)−文学と絵画の関連について、多少哲学的な考察。
マリオ・プラーツ『官能の庭−マニエリスム・エンブレム・バロック』(ありな書房、1992)、
『ペルセウスとメドゥーサ−ロマン主義からアヴァンギャルドへ』
(ありな書房、1995)
−16-19 世紀文学中心の論文集。拾い読みするだけでも、文学をより広い文脈で考えるた
めの具体例をいろいろと知ることができる。
Praz, Mario, An Illustrated History of Interior Decoration from Pompeii to Art Nouveau,
trans. by Wiiliam Weaver (London: Thames and Hudson, 1964; rpt. 1981)−ヨーロッパ
における室内インテリアの歴史。文学や絵画への言及も豊富。
Miller, J. Hillis, Illustration (London: Reaktion Books, 1992) − デジタル複製時代におけ
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る文化批評、ターナーにおける言葉とイメージ。邦訳『イラストレーション』尾崎、加
藤訳(研究社出版、1996)
Clark, Kenneth, Landscape into Art, rev. edn (New York: Harper & Row, 1976)−絵画にお
ける風景描写を論じた古典。ケネス・クラーク『風景画論』佐々木英也訳、改訂版(岩
崎芸術社、1998)
若桑みどり『マニエリスム芸術論』
(ちくま学芸文庫)−17世紀の文学への言及も多い。
森洋子『ブリューゲルの諺の世界−民衆文化を語る』
(白凰社, 1992)
、『シャボン玉の図
像学』(未来社、1999)−どちらも、ひとつのイメージをいろんなメディアを横断して追
いかけてゆく楽しみを教えてくれる。
フランセット・パクトー『美人』浜名訳(研究社、1996)−女性美の表象を近代初期か
ら現代の映画に至るまで、様々に類型化して考察している。
エミール・マール『ゴシックの図像学』田中仁彦他訳、上下巻(国書刊行会, 1998)中世
から近代のキリスト教美術を総括的に論じた大著の第2巻目。四部からなり、他の部は、
ロマネスク、中世末期、カトリック宗教改革以降をそれぞれ対象としている。方法論的
には古いが、全体像を知るにはまだ極めて有益である。他に、『ロマネスクの図像学』、
『中世末期の図像学』も翻訳されている。
[書物文化をめぐって]
多くの場合、文学作品との出会いは書物を手に取ることによって生まれる以上、書物そのも
のの分析(レイアウト、挿絵の利用、読書形態、流通過程など)を手がかりとしてテクスト
の内容を考えることは有益である。そうした視点から書物文化を考えた代表的研究書を紹介
する。
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リュシアン・フェーブル、アンリ=ジャン・マルタン『書物の出現』関根他訳 上・下
巻(筑摩書房、1985)
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ロベール・マンドルー『民衆本の世界−17・18世紀フランスの民衆文化』二宮、長
谷川訳(人文書院、1988)。
宮下志朗『書物史のために』(晶文社, 2002)
マーシャル・マクルーハン『グーテンベルクの銀河系−活字人間の形成』森常治訳(み
すず書房、1986)
ロジェ・シャルチエ編『書物から読書へ』水林他訳(みすず書房、1992)。
Chartier, Roger, ed., The Culture of Print: Power and the Uses of Print in Early Modern
Europe, trs. Lydia G. Cochrane (Cambridge: Polity Press, 1989).−この2冊は論文集。
アルベルト・マングエル『読書の歴史』原田訳(柏書房, 1999)
ロジェ・シャルティエ、グリエルモ・カヴァッロ編『読むことの歴史―ヨーロッパの読
書史』田村毅他訳 (大修館書店, 2000)
メアリー・カラザーズ『記憶術と書物−中世ヨーロッパの情報文化』別宮貞徳監訳(工
作社、1997)
バーバラ・M・スタフォード『アートフル・サイエンス−啓蒙時代の娯楽と凋落する視
覚教育』高山訳(産業図書、1997)。−書物や版画など、印刷メディアをふんだんに使っ
て18世紀を論じた刺激的な書物。
松枝到編『ヴァールブルク学派−文化科学の革新』(平凡社、1998)
M.グリーン他『エラノスへの招待−回想と資料』(平凡社、1995)−この2冊は、文学
を含む様々な文化現象を総合的に研究する方法論を確立しようとした、20世紀の研究
機関に関する書物。研究の方法論を考える上で有益です。
[旅行、風景、植民地主義]
異なった文化圏へ旅することは、新奇な体験を記録することを促す。文学の生産と密接な関
係にある、旅のテーマに関連する書物を紹介する。
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ピエーロ・カンポレージ『風景の誕生−イタリアの美しき里』中山悦子訳(筑摩書房, 1997)
柴田陽弘編『自然と文学−環境論の視座から』(慶應義塾大学出版会, 2001)−論文集。
松田が「所有される自然―ヨーロッパ中世文学の自然・環境・風景」を寄稿。
エリック・リード『旅の思想史−ギルガメッシュ叙事詩から世界観光旅行へ』
(伊藤誓訳)
叢書ウニベルシタス 420(法政大学出版局, 1993)
ノルベルト・オーラー『中世の旅』藤代幸一訳 叢書ウニベルシタス 274(法政大学出
版局, 1989)
本城靖久『グランド・ツアー−英国貴族の放蕩修学旅行』
(中公文庫, 1994)−一般的概
説書
Said, Edward W., Orientalism (New York: George Borchardt Inc., 1978). − エドワー
ド・W・サイード『オリエンタリズム』板垣他訳 上・下巻(平凡社ライブラリー、1993)。
小池滋『英国鉄道物語』
(晶文社、1979)−文学と鉄道という、興味深いテーマへの格好
の入門書。