安心を支える風景。

CSR長期ビジョン 柱1
セメントの社会資本貢献
もの貯 留 容 量を持つ
スケートボードを楽しむ若 者や、家 族 連れでにぎわう公 園 。
このコンクリートフロアは、大 雨の時には6 0 0 0
調 整 池となり、浸 水 被 害から地 域 住 民を守る役 割を担っています。
m3
人のそばに、
安心を支える風景。
フォーカス1
埼玉県
東京都
神奈川県
吉川市アクアパーク
2002年8月開設。1,900m 2 の広場に
千葉県
スケートボード場、バスケットコート、多目
的ステージを備え、県外からも利用者が訪
れる人気の市民公園。
憩いの公園が、災害時には頼れる存在に
埼玉県吉川市が管理する都市公園「アクアパーク」は、
ら問い合わせがあるそうです。
この斬新なアイデアは、市民の声から生まれました。
「ス
公共の公園には珍しく、本格的なスケートボード場を備え
ケートボードのできる公園が欲しい」
という若者たちの願
ていることで人気を集めています。
いが、運良く当時検討中だった調整池造成の事業に組み
この公園が注目される点はもう一つ、その形状にもあり
入れられることになり、市民参画型のプロジェクトに発展
ます。地 面を4m 近く掘り込んであり、まるで“ 水のない
しました。行政と市民が一緒になってワークショップを開
プール”の底につくられたかのようです。なぜ、
このように
催し、調整池について学ぶところから始まり、公園の設計
地面の下に公園がつくられたのでしょうか。実はこの場所
やルールづくり、開設後の維持管理など様々な話し合い
は「調整池」
と呼ばれ、集中豪雨の時などに雨水を一時的
が持たれたそうです。
に溜めておけるようプール状になっているのです。普段は
「吉川市は海抜が低く、歴史的に水害の多い土地なの
公園として使われていますが、大雨の際には水門が開か
です。現在も水害対策のための調整池や雨水幹線などの
れ、近くを流れる大場川が氾濫しないよう雨水を貯留する
仕組みになっています。
水害対策としての調整池は、全国各地で造成されてい
ますが、アクアパークのようなスタイルは珍しく、吉川市道
路公園課へは、今でも年に何度か、全国の自治体などか
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TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2010
貯留イメージ
大場川
整備が進行中です。アクアパークは、市民参画で誕生し
涵養して水循環を保全する効果があります。
また雨水管と
た公園だけあって、利用マナーも徹底されています。普
ポンプ場の整備により、下水道の処理能力を高度化する
段は市民の憩いの場として、大雨の時には防災の要とし
整備も重要です。ポンプ場から速やかに川や海へ放流す
て、両面の役割をしっかり果たしています。」と吉 川 市 道
ることで雨水管の氾濫を防ぐことができます。
路公園課の担当の方が説明してくれました。
東京都板橋区高島平地区では、浸水対策用の雨水管
の下水道として高島平1号幹線が1999年度に整備され、
世界で増加する都市型水害
「砂漠で洪水?」そんなニュースが流れたのは2009年
11月のことでした。サウジアラビアのジッダという土地で
これにより浸水被害も軽減されました。2001年7月の豪
雨では1時間の降水量が95.5㎜を越えましたが、床下浸
水1戸の被害にとどめることができたといいます。
また和田弥生幹線(東京都中野区・杉並区)では、貯留
豪雨による洪水被害が出たことに世界の人々が驚きまし
管整備以降、浸水被害が激減し、同一規模の降雨量で比
た。
しかも雨量は70㎜ほど。それほど甚大な被害を及ぼ
べた場 合 、浸 水 家 屋 の 棟 数 が 5%程 度にまで 低 減しま
す雨量とも思えないからです。砂漠では雨などすぐに砂
した。
中に吸い込まれてしまうだろうと考えがちですが 、実は
東京近郊に限らず、各地では都市型水害に備え、下水
「保水力」が弱く強い雨が降ると低地に向かって一気に出
道を中心に見えないところで整備が進んでいます。セメン
水してしまうのです。
また、砂漠につくられた都市では、砂漠ゆえに雨を想定
した放水路整備がされておらず、流れてきた水を制御す
ト・コンクリートが、かつて大地が担っていた“雨水を一時
的にたくわえる”
“すみやかに流す”などの機能を甦らせ、
人々の安心を守っています。
ることができないそうです。世界各地を襲う異常気象が、
このような都市の弱点を浮かび上がらせる結果となって
しまいました。
これらの集中豪雨は、温室効果ガスの増加
に伴う地球温暖化と無関係とはいい切れず、今後も発生
する可能性は否めません。
セメント・コンクリートが担う大地の働き
霞川の調整池取水口
霞川の調整池内
日本国内でも集中豪雨による浸水・洪水被害が増加傾
向にあります。
これまでに想定されていた雨量を超えるこ
とが多くなり、都市の排水処理機能が追いつかなくなっ
てしまったのです。都市部の水害は「内水氾濫」
と呼ばれ、
主に下水道が大量の水をさばき切れなくなるために起こ
VOICE
吉川市アクアパークの
ご近所にお住まいの方
るものです。
また川が増水し、下水道の水を流せなくなる
今では、豪雨の時にも不安がなくなりました。
ため、雨水が地表にあふれ出てしまうこともあります。短
長年住んでいますが 、大場川沿いのこの周辺は水害
時間に大量の雨水が下水道に流れ込む、
このような現象
を防ぐために、様々な対策が講じられています。
吉川市アクアパークでは公園が調整池の役割も果たし
ていますが、土地確保が困難な都市部では、地下空間を
利用した地下式調整池や貯留管の整備が有効で、浸水
被害の軽減に貢献しています。
霞川に設置された巨大な地下駐車場のような調整池
(東京都青梅市)
では、二重構造になった貯留部に合わせて
3
88,000m(25mプール約200杯分)
もの水を貯めるこ
とができ、近隣の浸水被害低減に力を発揮しています。
下水道の処理能力を高めるためにも、多くの対策が講
じられています。
「 雨水浸透ます」は、雨水を地下に浸透
が多く、床下浸水の経験もあります。調整池ができてか
らは大きな被害がなくなって安心しています。去年のゲ
リラ豪雨でも大丈夫でした。
20年以上も前になりますが、地域住民の署名運動が
きっかけになって、調 整 池の造 成が 始まりまし
た。公園兼用になって、地域の子どもたちに
遊び場もできたのでとても良かったと思いま
す 。調 整 池 だ け だともった い な い で すも
のね。
地元自治会が 鍵の開閉管理や巡回、清
掃なども行なっているので、自分たちでつ
くり、守っているという気持ち。思い入れ
のある場所ですよ。
させて、雨水管への流出量を制御するとともに、地下水を
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