2011 特 別 号 第 11 号 イタリアソムリエ協会ローマ主催 【FESTA ITALIANA DEL VINO】式典&試飲会レポート Pioniere del Vino Italiano Giacomo Tachis イタリアワインの先駆者 ジャコモ・タキス Pioniere del Vino Italiano Giacomo Tachis イタリアワインの先駆者 ジャコモ・タキス イタリアソムリエ協会ローマ主催【FESTA ITALIANA DEL VINO】式典&試飲会レポート イタリア王国が誕生したのは 1861 年 3 にイタリアワインの歴史に残る一幕であっ ス氏は今日出席するのだろうか。そんな心 月 17 日のこと。 (それまでは今で言う“州” た。 配をかかえて会場に到着。そこにはワイン がそれぞれ違う国として独立していたのが 今年 4 月にはイギリスワイン誌 「デカンター イベントとは思えないような巨大な式場に 1つの国としてなりたっていた。 ) 今年はちょ DECANTER」により世界のワイン業界人 何百人という参加者、ティスティングのワ うどその年から 150 周年にあたり、全国 の中から”Man Of The Year 2011”に選 インサービスをする黒い制服に身を包まれ 各地であらゆる祝典が行われている。去 ばれたタキス氏。イタリアが誇るワイン醸 た AIS のソムリエが 50 人以上という人の る 5 月 14 日ワイン界でもローマのイタリ 造家は、華やかな賞賛の裏でここ数年は 波。国営放送のTVカメラに新聞社のカメ アソムリエ協会 AIS(Associazione Italiana 闘病生活のため、ほとんど公の場にはも ラマンたち。正面には表彰舞台と、後部に Sommelier Roma) が 主 催 する“ イタリア う顔を出さなくなっていた。そんな中この いる人にもわかりやすいように大画面スク の歴 史を飾ったワイン”という大きな 式 式典に出席 するという話しはかなり前か リーンが左右に 2 つ。なんら人気歌手のコ 典が行われた。ローマ市内にある「ROME ら噂になっており 1 席 100 ユーロという参 ンサート会場と変わらないその舞台の裏に CAVALIERI HOTEL」にて開催されたその 加費にもかかわらず彼を一目見たいという は、数百人分の本数のイタリア最高級ワイ セレモニーは、 イタリアワインの父ジャコモ・ ジャーナリストからソムリエ、一般のワイン ンがすらりと並べられ静かに出番を待って タキス氏に捧げる表敬 式でもあり、まさ 愛好家など 500 名以上もの申し込みが殺 いた。 到していた。 その規模の大きさに唖然としているところ へ後部の方からワーっという歓声とともに 2 式典前日夜、タキス氏とともにトスカーナ 拍手が聞こえてきた。タキス氏が娘ととも からローマ入りした一人娘のイラリアと宿 に車椅子で会場へ入場してきたのだった。 泊 先 のホテルで 2 人で夕食をした時 のこ そして舞台前の彼の席に到着する間もな と。「本当に明日父が舞台に立っていられ く、彼の古い友人や同僚であるワイナリー るかどうか、元 気で活発 なころの父しか のオーナー達がわれ先にと彼を取り囲み抱 知らない人 たちが今の 彼を見てどう思う きついて再会を喜び、中には涙する人たち か、それを思うと本当に父を出席させるべ も。式典が始まる前から想像以上の感動 きなのかどうかまだ迷っている。 」と不安 のシーンにその場にいた全ての人が立席し な表情を隠せない様子にこちらまで胸が て見守る。車椅子から姿勢よく立ち上がり、 締めつけられる。そして翌日。本当にタキ 友人達の真ん中で終始笑顔でエネルギー SAN GUIDO テヌータ・サン・グイド」の女 に満ち溢れる父の姿にイラリアが「信じら AIS ローマ会長フランコ・マリア・リッチ氏 性エノロゴ、グラッツィアーナ・グラッシー の挨拶の後、イタリアワイン界の錚々たる ニ女史。生物学 者でもある彼 女は、今ま 今回の式典ではジャコモタキスが携わった メンバーが順番に壇上に上がりタキス氏へ で敬 愛してきたタキス氏への言葉が涙 声 ワイン 23 種類が“イタリアの歴史を飾った の賛辞を述べた。 でなかなか話せず、会場から勇気つけるべ れない」と驚いていた。 く拍手が。 ワイン”として紹介され、その全てのワイ ジャーナリスト/カルロ・カンビ氏 ❹ ANTINORI / ピエーロ・アンティノーリ氏 ❶ カルロ・カンビ出版の社長であり、有名 トップバッターはタキス氏が 1961 年か ジャーナリストのカルロ・カンビ氏。 に調えられた白髪がその長い交友を語って ら 30 年間エノロゴを勤めたトスカーナは 過去に全国新聞などにタキス氏の多くのイ いる。これらのイタリアを代表する最高峰 「アンティノーリ ANTINORI」の 代表取 締 ンタビュー記事を掲載した人。タキス氏の ワイナリーの経営者たちはほとんどが貴族 役ピエーロ・アンティノーリ氏。 「親愛なる 著者本出版にも多大な協力をしたジャーナ であったり、イタリアでも大富豪の部類に ジャコモよ、あなたのおかげで私達は世界 リスト。 入る人達で「VINITALY」にももう顔を出さ でこんなに有名になることができた。そし ないような人達でもあるが、その彼らがタ てこんなに長い間私の親友でいてくれてあ GAJA /アンジェロ・ガヤ氏 ❺ アンジェロ・ガヤ氏。イタリアワイン界 キス氏との再会を子供のようにはしゃいで りがとう。」アンティノーリというイタリア でサインを求められる人といえばタキス氏 喜び、一緒に記念撮 影をする光景は、見 ワインの代名詞のようなワイナリーのボス とこの人。テイスティングでは唯一タキス ている者にとっても感慨深いものがあり、 が言葉を詰まらせる。現在でもタキス氏は 氏が携わっていない、イタリアワインの歴 一目でその交流の深さが伝わってくる。そ アンティノーリワイナリーの向かいに居住 史に残るワインとして彼のバルバレスコが してみんなが挨拶をしているあいだ、隅の している。娘イラリアが生産しているキャ リストに加わっていた。タキス氏とは仕事 方に静かに身を引き一番最後にタキス氏 ンティ・クラシコ「パルゴロ」の畑は、タ 上の交流はないものの長年の友人、そし のもとにゆっくり歩み寄った人がアンジェ キス氏がアンティノーリから譲り受けた優 て後輩として賛辞の言葉を述べた。「タキ ロ・ガヤ氏。この人を脇役にさせるのはタ 良畑を娘イラリアに贈ったものだ。それほ ス氏は我々生産者にとって天才学者であり キス氏以外にはない。アンジェロ氏はタキ どに引退後も家族ぐるみで密接な友情関 ました。80 年代にどうやったら高品質ワ ス氏にお 辞 儀をし手を握りながら何か話 係にあるアンティノーリ家。 インができるのかを彼ほど知っている者は しかけていたがその紳士的で敬意を込め ソムリエ/ルカ・ガルディーニ氏 ❷ 誰もいませんでした。今でこそあらゆる高 次に壇上に上がったのは昨年 “Worldwide 度な栽培法や醸造法が知られていますが、 Sommelier Association”の世界ソムリエコ タキス氏は今から 30 年も前に今生産者が そしていよいよ式典開始。突然会場が真っ ンクールで優勝した今最も注目されている 行っていることをすでにやっていたのです。 暗になり何が始まるのかと思うと、舞台に ミラノのレストラン『クラッコ』の元ソムリ 彼がもしいなかったら、今のイタリアワイ スポットがあたりイタリアの大御所ポップ エ、ルカ・ガルディーニ氏。後輩としてタ ン界はどうなっていたでしょうか。近隣諸 歌手アルバーノ・カリーズィがイタリア国歌 キスへの敬意の言葉を述べた今年 30 歳の 国に先をこされ我々のワイン文化は大きく を歌いながら登場。それにあわせて会場 若きソムリエ。 遅れをとっていたことでしょう。タキス氏 にいた全員がいっせいに起 立し右手を胸 TENUTA SAN GUIDO エノロゴ/ グラッツィアーナ・グラッシーニ女史 ❸ の貢献はイタリアの経済に大きな影響をも ナリー経営者が全国から勢ぞろいした。彼 らはタキス氏の 80 年代、90 年代からの 同僚であり古い友人で、それぞれにきれい た挨拶が印象的だった。 にあて大合唱となった。 (イタリア人は国歌 を歌う時必ず感動する。 ) たらしたことは確かです。」 “ サッシカイア”で知られる「TENUTA ❶ ❺ A A/ 中央 タキス氏 ❶〜❺ / 上記事 来賓者(記事内名前横数字と同じ) B/ セレモニー壇上風景 ❷ ❸ ❹ B 3 Pioniere del Vino Italiano 元ガンベロロッソ編集長/ ダニエレ・チェルニッリ氏 ❻ 泣く子も黙る元ガンベロロッソ編集長、 この春から AIS の教 授郡に加わったダニ Giacomo Tachis 開始。タキス氏への言葉も哲学的でスピリ くから彼に会うためにやってきた彼は長年 チュアルな内容だった。 願っていたタキス氏との再会を果たした。 FATTORIA LE PUPILLE オーナー/ エリザベッタ・ゼペッティ女史 ❿ 「ジャコモのおかげで、私のワインだけで なくサルデニアワインの素晴らしさを世界 トス カ ー ナ 南 部 は マ レ ン マ に あ る に知ってもらうことがができた。それまで 「FATTORIA LE PUPILLE ファットリア・レ・ サルデニアのワインがこの島以外で飲まれ 「タキス氏はイタリアワインのガリバルディ プピッレ」の美しい女性オーナー、エリザ ることなどありえなかったのです。 」と熱く (イタリアを統一した軍事家)。彼がいなけ ベッタ・ゼペッティ女史。このメーカーのワ 語った。 ればイタリアの国ができなかったように彼 インには彼女の陽気さと可憐さがそのまま がいなければ今のイタリアワインがなかっ 反映している。 たのです。 」と絶 賛。 「彼 が 試 飲をしてい DONNA FUGATA / アントニオ・ラッロ氏 ⓫ CASTELL'IN VILLA / ピニャンテッリ伯爵夫人 ⓮ エレ・チェルニッリ氏。タキス氏との出会 いは 1974 年のことだそう。 るところを見たことがあるのですが、300 種類のワインを飲み分けていたのには驚き キャンティクラシコ「CASTELL'IN VILLA カステッリ・イン・ヴィッラ」の女性オーナー シ チ リア の 老 舗 ワ イナ リー「DONNA ピニャンテッリ伯爵夫人。 ました。 」 FUGATA ドンナフガータ」のアントニオ・ 一度以前にボルドーワインの試 飲会に TV 司会者/ブルーノ・べスパ氏 ❼ ラッロ氏。タキスの手がけたワインの中で 1人で 参 加したとき、たまたま隣 の席に 録画ビデオで賛 辞を述べたTV番組の も、特に傑作といわれる銘酒を生んだワ 座っていて彼女も1人で来ていたため仲良 有名司会者ブルーノ・べスパ氏。ワイン愛 イナリー。 「またシチリアに来てください、 くなった女性がいた。それがこのピニャン 好家で知られる。 シチリアのご馳走を用意して家族全員でお テッリ伯爵夫人。試飲しながらきれいなペ TENUTA SAN GUIDO / セバスチアン・ローザ氏 ❽ 待ちしていますから!」とシチリアの人ら ンで一 生 懸 命メモを取っている姿に品が しいコメント。シチリアはタキス氏にとっ あり、試飲会のあともいろいろフランスワ 世界で一番有名なイタリアワイン、ボル て最愛の地。何冊もシチリアとシチリアワ インの話をともにすることができた。カス ゲリの銘酒“サッシカイア”を生んだワイ インへの情熱をつづった本を出版したほど テッリ・イン・ヴィッラのキャンティクラシ ナリー「TENUTA SAN GUIDO テヌー タ・ この南の島への思い入れは強い。 コを飲んだときその比類なエレガントさに サン・グイド」 のセバスチアン・ローザ氏。 オー PIO CESARE /ピオ・ボッファ氏 ⓬ 感動したが、実はこの人がそのワインの造 ピエモンテ州から「PIO CESARE ピオ・ り手と知って、彼女の話し方や人柄がまさ のような風貌。タキス氏とはサッシカイア チェーザレ」のピオ・ボッファ氏。ピエモ にそのままワインの味わいに出ていると心 のワインだけでなくサルデニアでのジョイ ンテはタキスの出身地である。今年ワイナ の中で確信した。彼女がタキス氏に出会っ ンベンチャーも立ち上げた古い仲である。 リー創立 130 周年を 迎 え、唯一アルバの たのは、90 年代初めにブドウ畑にはびこ CASTELLO DEI RAMPOLLA 経営者/ ルカ・ディ・ナポリ・ランポッラ氏 ❾ 旧市街地下に広い醸造庫を持つという老 る病気に悩まされていたとき。あらゆるエ 舗のメーカー。このワイナリーのラベルに ノロゴに問い合わせたが解決が見えず、そ キャンティクラッシコ「CASTELLO DEI はアルバ市のマークが入っている。 の時にある人からタキスにコンタクトする RAMPOLLA カステッロ・ディ・ランポッラ」 SANTADI よう言われ、彼に依頼したことがきっかけ。 ルバックの長い髪に長い髭でロックスター アントネッロ・ピッローニ氏 ⓭ その後彼の導きにより農薬などを使用せ サルデニア「SANTADI サンターディ」の ず解決できたというエピソードが 印 象 的 見てもヨガの師匠みたいなストイックな風 経営者アントネッロ・ピッローニ氏。この人 だった。 情。94 年からビオディナミのワイン作りを もタキス氏の同僚であり親友。この日、遠 の経営者ルカ・ディ・ナポリ・ランポッラ 氏。この人は以前にもお会いしたが、いつ ❻ ❼ ❽ ❾ ⓭ ❻〜⓭ / 上記事 来賓者 (記事内名前横数字と同じ) ❿ 4 ⓫ ⓬ UMANI RONCHI / マッシモ・ベルネッティ氏 ⓯ マルケの「UMANI RONCHI ウマニ・ロ ンキ」オーナー。 このワイナリーのワイン「Pelago ぺラゴ」 は 1997 年にロンドンの " ワインチャレン ジャー”コンクールで世界の 6000 本のワ インの中からトップに選ばれた。これはマ ルケという無名の地から無名のワイナリー が 世 界に 知られるきっか けとなったセン セーショナルな出来事であった。それをま るで昨日のできごとのように話し、あれは タキス氏の素晴らしい仕事によるものだっ たと述べたマッシモ・ベルネッティ氏。 QUELCIA BELLA / ロベルト・ラソルテ氏 ⓰ トス カーナ「QUELCIA BELLA クエ ル C チャ・ベッラ」のロベルト・ラソルテ氏。「タ SAN LEONARDO / カルログエリエーリ・ゴンザーガ公爵 ⓳ キス先生には毎年クリスマスにボローニャ にある私の大好きな生産者のモルタデッ 北 イタリア はトレン ティーノの「SAN ラハムをプレゼントをしています。いつも LEONARDO サンレオナルド」からカルロ とてもそのハムを気に入って楽しみにして グエリエーリ・ゴンザーガ公爵。1ミリた いただいていたのですが何年か前大雪が りともズレのないスーツに身を包んだ長身 降ってどうしてもクリスマスの前日にボロー に、うしろに流れる輝く白髪。颯爽と歩く ニャの生産者のところまで行けない日があ 映画俳優のような彼の姿に誰もが見とれて りました。その年は実はトスカーナの普通 いた。このワイナリーは広大な土地を所有 の食材店で買ったものをあたかも通年通り し、何度も世界中のワイン雑誌のページを ボローニャの生産者のもののように先生に 飾った国宝級の素晴らしい館もある。 届けました。初めて告白しますごめんなさ ARGIOLAS ⓴ い。 」と会場を笑わせたが、ロベルト氏が サル デニアの「ARGIOLAS アルジオラ どれほどタキス氏を慕っているかがわかる ス」。今回ローマに来られなかった家族か エピソード。 ら託されたタキス氏へのメッセージを持っ IL POLLENZA / アルド・マリア・ブラケッティ・ぺレッティ氏 ⓱ て、他界した父の代わりにと賛辞を述べた マルケはマチェラータにあるワイナリー 「IL POLLENZA イル・ポッレンツァ」。 ⓮ ⓯ ⓰ 次 世代の若い女性オーナー。タキス氏が 一目ぼれしたというサルデニアのこのメー カーからは“トゥリーガ”という銘酒が生 タキス氏と同年代の経営者アルド・マリア・ まれた。「父は、昔ワイナリーが経営困難 ブラケッティ・ぺレッティ氏。由緒正しい になった時、一番勇気を与えて背中を押し 貴族の出身。 てくれた人がタキス氏だったと話していま FALCHINI /マイケル氏 ⓲ した。」 ⓱ ⓲ ⓴ トス カ ー ナ は サン・ジャミニアーノの 「FALCHINI ファルキーニ」。 会場が一旦暗くなったあと、いよいよタキ 経営者の息子マイケル氏。彼の父とタキス ス氏と娘のイラリアが壇上に。タキス氏の 氏がともに仕事していたのを子供のころか 代わりとなってイタリアがお礼の言葉を述 ら見ていたそう。タキスの親友であった父 べる。彼女がコメントを読み終わったあと、 は昨年の秋に他界。その頃のエピソードを タキスが一言だけ大声で「Grazie a tutti ! 話しながら最初から最後まで泣きながらの みんなありがとう!」と言った瞬間全員が スピーチで、会場からは一段と大きな拍手 起立。本当に長い長い拍手が続いた。拍 を受けた。 手喝采の末式典が終わりタキス親子が再 び車椅子で会場をあとに。 ⓳ C/ 壇上のタキス氏と娘のイラリア ⓮〜⓴ / 上記事 来賓者(記事内名前横数字と同じ) 5 Pioniere del Vino Italiano Giacomo Tachis たことは 初めてで、 タイルのワイン造りを評価しない、もっと 貴 重 な体 験 で あり 言えば批判する人達も少なくない。しかし か なり面 白 い 発 見 今回は正直、どんな一流の評論家にとって があった。ほとんど も一般のワイン愛好家にとっても稀に見る の ワイン に カ ベ ル 感動的なセレモニーであった。この人はや ネ・ソービニオン品 はりただのワイン醸造家ではないというこ 種 が入っていた が、 と、天才的な学者、研究者でだったという 土地ごとにこのブド こと、時代を先取りする勘が人一倍鋭かっ ウ品 種 の 表 情 が 驚 たこと、人がやらないようなことを勇気を くほ ど 異 な り、 カ 持ってできる開拓者としての心意気があっ ベ ルネ の 七 変 化 を たこと、目に見える功績を残しても生涯裏 見ているようであっ 舞台の学者であり続けたこと、そしてこれ そしてタキス 氏 が 手がけ たワインのセミ た。またどのワインも熟 成期間がとにか ほどの人望を集める心の熱い人であるとい ナーが開始。イタリアソムリエ協会ローマ く長い。樽での熟成も長いがボトリングさ うことを肌で実感した。 の 6 人の教授により 24 種類のワインの試 れてからも瓶内でかなり寝かす。そのせい この式典でタキス氏に賛辞を述べたワ 飲が行われた。 かタンニンがやわらかい。中には水を時折 イナリーは今でこそ世界に名の知れる粒ぞ 飲まないと飲み続けられないようなものも ろいのワイナリーばかりだが、実はタキス かなり早いスピードでテイスティングが進 あったが、タンニンの美しさはどのワイン 氏が手がけるまではほとんどが、質のよ められたものの、式典開始から7時間も も特徴的である。 いワインができない、経営困難、ブドウ の時間が経過していたことになる。24 種 イタリアにもいろいろ異なるワインの宗派 が病気にかかっているなど問題をかかえ 類のワインは全て以前に飲んだことはあっ のようなものがあり、いわゆるスーパータ ていたさえない無名メーカーばかりであっ たが、このように全部同時に飲み比べをし スカンに代表されるタキス氏のボルドース た。20 人以 上の 経 営 者 が 壇 上に 立った Giacomo Tachis's Wine Tasting 4. SOLENGO 2003 ARGIANO ブルネッロ・ディ・モンタルチー ノのワイナリー。SOLENGO ソ レンゴとは、トスカーナ方言で 一人ぼっちのイノシシという意 味。2003 年は誰もが 記憶する 猛暑の年。ブドウはカベルネ、 メルロ、シラーの 3 種。香りは コーヒーや醤油を思いおこさせ る。口に含むとやはりこのヴィ ンテ ージらしく赤 い 果 実 たち の熟した甘みを感じる。 イタリアソムリエ協会ローマの6人の教授により24種類のワイン の試飲が行われた。以下、あくまで個人的な試飲会メモである。 サッポロビール株式会社 /¥10,000 5. CEUSO 2007- 8. LITRA 2000 - ABBAZIA SANTA ANASTASIA 9. BAROLO 2004 PIO CESARE ピ エモン テ は アルバ の ワイナ リー。タキス氏の出身地のワイ ン で あ る。 ネッビ オ ー ロ 品 種 を 70 % を 大 樽、30 % は バリッ ク。しいて 言えば 2004 年 はま だ飲むには少し早いヴィンテー ジ。それでもやはりゆるぎない 一流の風格は確か。クラシカル な品格と美しいミネラル感が印 象的。 日本リカー株式会社 /¥8,500 CEUSO 6. TANCREDI 2007 - 10. CARIGNANO DEL SULCIS SUPERIORE TERRE 7. CONTESSA ENTELLINA MILLE E UNA 11. DUCA ENRICO 1997 - DONNAFUGATA 1. GUIDABERTO 2008 TENUTA SAN GUIDO 2. SAFFREDI 2007 - FATTORIA LE PUPILLE 日本での主なインポーター、 参考上代(税別)も掲載。 ワインセミナーの進行順に掲載いたしました。 6 3. SAMMARCO 2006 - CASTELLO DEI RAMPOLLA キャンティ・クラシコ地区のど真 ん中にあるワイナリー。この地域 は石灰質や小石の多い土壌であ る。ルカ氏 の思 想により、ここ 数年前からセメントタンクやテラ コッタのアンフォラを使用、自然 の流れにそったワイン造りが行わ れている。2006 年はゆっくりゆっ くりと表 情をの ぞ か せるような ヴィンテージ。正直でありのまま に土壌が表現されているワイン。 香りと味わいのバランスには 1 ミ リの狂いもない機密さがある。 株式会社ファインズ /¥8,000 NOTTE 2006 DONNAFUGATA 全種類の中でもっとも個性的だったのがこの 1 本。日本 語に訳すと”千と一夜 ”という名 のワイン。90%がネーロ・ダ・アーボラ、残り 10%が他の赤ブドウ品種。小さな果実にオレ ガノにミントなどの香草、タバコの葉やチョコ レート、なめし皮。なんというエキゾチック さ。香りといい味わいといいオリエンタルな 魅力がシチリア的で、これも他のワインとくっ きりと一線を画していた。ラベルもまた素敵。 今まで厳かなクラシックバレエばかり観てい たところに急にアラブのベリーダンサーが登 場したような衝撃!タンクレディも高い評価だ が、妖艶さでは圧倒的にこちらが勝っている。 BRUNE RISERVA 2001 - CANTINA SANTADI DUCA DI SALAPARUTA こちらも 1824 年からのシチリ アの老舗ワイナリー。このワイ ンは 1984 年が初リリース。ネー ロ・ダ・アーボ ラ 100 %。18 ヶ 月バリックで熟成したあと 12 ヶ 月ボトルで や す ま せ て から 出 荷。最初にマルサラの香りがし、 その後ドライトマトやいろいろ なハーブが折り重なるように攻 めてくる。迫力の 1 本。 モンテ物産株式会社 / オープン価格 タリアワイン界トップの人たちの 言葉は決して表面的なものでは いつか自分が年老いて、そのときイタリ なく、ありがちな自社 宣伝 のた アにいるか日本にいるかわからないがイタ めのパフォーマンスでもなかった リアという国、文化、人のことを想うとき、 と断言できる。タキス氏へのこ きっとこの日のことを思い出すだろう。そ の日の賛辞は、20 年から 30 年 んなことを考えながら会場をあとにした。 もの間一緒に苦労を乗り越えイ タリアワインの 基 盤を作り上げ 栄光をつかんだ人達が心で共有 した大切なくぎりであり、イタリ アワインの歴史の一幕であった。 久谷 満香 ヒサタニ ミカ 1971 年、京都生まれ。 ローマ在住 15 年。 が、全員のエピソードに共通していたのは、 ワイン業界での批判や中傷はよくあるが、 タキス氏はワイン造りの魔法使いというイ これほどまでにみんなが 1 人の醸造家を メージがあるが、実は醸 造は 2 の次 3 の 賞賛したことは稀で、このようなことを成 次で、ブドウ栽培においていかに自然で高 し遂げた人はタキス氏の他にはあとにも 品質な原材料を生産するかということを厳 先にもないだろう。そしてこのような賛美 しく教えられたということ、経営面で問題 はどの業界でも当人が亡くなってから行わ にぶちあたった時もいつも勇気をくれた人 れることが多々あるが、本人の出席のも ラッツィオ州公認ソムリエ であったこと、ワインの大先生だけでなく とに行われたことも本当によかったと思っ ローマインターナショナル記者クラブ会員 人生においての恩師でもあり友情を何より た。あとからイラリアから聞いた話では、 http://buonaforchetta.cocolog- も大切にする人であるということ。今回の タキス氏は壇上からの古い友人達の言葉 nifty.com/blog/ 式典でのワイナリーやジャーナリストなどイ を聞きながらずっと泣いていたそう。 12. CHIANTI CLASSICO CASTEL'IN VILLA RISERVA 1995 - カステッロヌオ ヴォ・ベ ラレ デン ガ 地 区 に 300 ヘクタールの土地を所有するピニャンテッ リ公爵夫人のワイナリー。71 年、88 年、90 年、 97 年が歴代の当たり年といわれるヴィンテー ジであるが、92 年や 96 年などの一般的には よくなかったとされる年代のものも素晴らし い。この中では群を抜いたエレガントさで印 象に残った 1 本。ブルゴーニュの品格に匹敵 して劣らず。またサンジョヴェー ゼのみとい うこと、大樽で仕上げていることもあり、24 種類のワインの中で一番誰とも似ないワイン でもあった。 13. TIGNANELLO 2006 – ANTINORI ワインのネーミングは“ティニャ ネッロ”という畑の名前から。 71 年に初めてIGTワインとし て誕生。それまではキャンティ ・ クラシコ・リセルヴァだった。 その後 72、73、74 年は天候に 恵まれず生 産 せず。75 年に生 産再開。カベルネ・フラン、カ ベルネ・ソービニオンがあわせ て 15%、サンジョヴェーゼ (85%) を使 用。2001 年に畑の新しい 植え替えを行う。標高 300-400 メートル、南向きの畑にはブド ウの木の下に割られた小 石を 敷いている。これは太陽の熱を 石に反射させ、ブドウの熟成を助けるため。3 種 類のブドウそれぞれ別に 27 度を超えない 温度でのマセラシオン、発酵、バリックで熟成、 その後アッセンブラージュ。バルサミコやミン ト臭、こけや赤い熟した小さなフルーツ。澄 んだミネラル感あり、エレガントでやわらかい シルクのような飲み口。後味が非常に長い。 アサヒビール株式会社 / オープン価格 14. BARRUA 2003 – AGRIPUNICA 15. PELAGO 2000 UMANI RONCHI 1955 年 に 誕 生 し た ワ イ ナ リ ー。 カ ベ ル ネ・ソ ー ビ ニ オン 50 %、モンテプル チャー ノ 40 %、メルロ 10 %。カベル ネとメルロはサポートする感じ で、モンテプルチャーノが前面 に出ている感じ。12 ヶ月バリッ ク、ボトルリング後 20 ヶ月も熟 成。甘 いス パ イス香 が 素 晴ら しい。特にタバコの葉や八角、 チョコレート。ミネラル感が全 体を整え、すばらしいバランス。 タキス氏のワインによくみられ る、カベルネが 在 来 品 種の 引 き立て役となる典型的な例だ。 モンテ物産株式会社 / オープン価格 16. CAMARTINA 1999 – 来伊後、サントリーグループのワイン輸入商 社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経 て、現在はイタリアワインや食のライター、 輸入業者のコンサルタントとしてイタリア各 地のワイナリーを巡る。 イタリアソムリエ協会ソムリエ 18. IL POLLENZA 2004 IL POLLENZA 2001 年 が 初 ヴィン テ ージの マ ルケのワイン。15ヶ月バリッ クで熟成。チェリーやドライフ ル ーツなど 甘酸っぱさのあと、 タバコやシナモン、チョコレー トやバ ニラの 熱 い 芳 香 が たっ ぷり。カベルネ・ソービニオン 65%、メルロ 25%、カベルネ・ フラン 10%。 21. SASSICAIA 2007 - TENUTA SAN GUIDO 22. SOLAIA 2004 – ANTINORI 1978 年と 79 年はカベルネ・ソー ビニオンの みで 造ら れて い た が、82 年 より 15 % -20 % の 割 合でサンジョベーゼが加えられ た。2004 年はなかなか難しい 天 候 を 記 録した年。色 が 少し 赤黒いのはポリフェノールの多 さから。カシスやミルト、リク イリツィアに燻したような香ば しさ、スパイスさも感じる。 スリーボンド貿易株式会社 / 参考:¥12,000(VT1998) アサヒビール株式会社 / オープン価格 19. CAMPORA 2003 – FALCHINI QUERCIABELLA 20. SAN LEONARDO 1999 - TENUTA SAN LEONARDO 17. D'ALCEO 2006 - CASTELLO DEI RAMPOLLA ここのワイナリーは 香りの 深 み がどのワイナリーよりもす ごい。どこまで嗅いでも永遠 に奥行きがあり、何重にも層 になっている芳香 が目に見え るよう。土壌の特 徴がそのま まワインのすみずみまで 表現 されて、ブドウの 質の高 さが うか が える。8000-10000 株 / Ha とこちらも密度の高い植樹 率。1996 年に初リリース。カ ベルネ・ソービニオン主体。 チョ コレートとミルク、赤い胡椒に リクイリッツィア、ミントなど の 香りがグ ラスの 外 に 放 散。 これ はグラスが空 になっても うっとりと酔い続けられるワイン。 イタリア最北端トレンティーノ のトップワイナリー。この地方 は古代ローマ時 代からワイン 作りが盛 んでワイン街 道とい うドイツま でワインを 運 んで いた大きな道があるワインに 関しては 古 い 歴 史ある地 域。 ここで 1724 年からワイン造り を行っている老舗。1983 年か ら醸造コンサルタントとしてタ キス 氏 を 迎 える。 カベルネ・ ソービニオン 60%、カベルネ・ フラン 30%、 メルロ 10%。1 年、 2 年、3 年越しのバリックで熟 成。カシス、バルサミコ、コー ヒー、なめし皮。ブドウの 質 の高さからくる品格が充分に感じられる。 23. BARBARESCO 1998 – GAJA 24. TURRIGA 1997 – ARGIOLAS モンテ物産株式会社 / オープン価格 株式会社ファインズ /¥19,000 7 ジャコモ・タキス氏が最後の仕事として、 愛娘と二人で造り上げたワイン ポデーレ・ラ・ヴィッラ “ パルゴロ ” 2008 Chianti Classico DOCG “PARGOLO” 2008 N フィレンツェ ピサ サンカシアーノ バルディペサ村 ポデーレ・ラ・ ヴィッラ キアンティ グレーヴェ・ イン・キアンティ アレッツオ シエナ タキス父娘の造った最新ヴィンテージが届きました。 現在、表舞台を引退したジャコモ・タキス氏がワイン醸造家として最後の仕事に選ん だのは、愛娘イラリアと造る少量生産のオリジナルワイン。 ファーストリリースのヴィンテージ 2007 年に生まれた初孫リッカルドにちなみ、ト スカーナ方言で “ 子供 ” という意味の「PARGOLO パルゴロ」と名付けられました。 2007 年は IGT トスカーナでしたが、2008 年よりキアンティ・クラッシコ DOCG となりました。自然の恵みをストレートに表現した、 まさに醸造家人生の集大成とも 言える、ナチュラルでシンプル、 チャーミングなワイン。 今回、新しいヴィンテージ 2008 が限定 4,000 本 入荷いたします。 PARGOLO Chianti Classico DOCG 2008 サンジョヴェーゼ種を主体にメルロ種を 20%ブレン ド。色調は華やかなルビィ色。チェリーやベリー系 フルーツの深みがあるフルーティでフレッシュな香り。 ふくよかな果実味をスッキリした酸味がまとめている。 ミネラル感があり飲みやすく心地良い味わいは、トス カーナ料理との相性抜群です。 参考上代価格 3,800 円(税込 3,990 円) お問い合わせ 株式会社 グローバル 8 http://www.globalwine.co.jp フリーダイアル 0120-60-9686(平日 10:00 〜17:00)
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