米国でも写真作家を目指す人は多い。伊藤剛さんは8年ほど 前からフィラデルフィアで写真センターを運営し、そうした アマチュアたちを育成してきた。このほど彼が主催するフォ トコンペの優秀作品展がリコーリングキューブで開催される。 8年前から、 フィラデルフィアで 運営している写真センター ProjectBashoフォトコンペ受賞作品展 「ONWARD」 アメリカには、商業カメラマンとは 別に、自分の写真制作をライフワーク とする人たちが大勢いる。そのため各 伊藤さんが運営する写真センタ ー 「 Project Basho 」は、築 年ほどの倉 庫スペースに、ギャラリー、暗室、コ ンピュータールームなどを持ち、 「写真 にまつわる様々なこと」を提供してい る。初心者向けの一眼レフ入門教室か ら、大判カメラ、スタジオライティン グ、古典印画法などなど。そのほか写 真家やキュレーターなどを招いた写真 ワークショップも定期的に開催。 受講者のメインターゲットは、写真 作家を目指す社会人たちで、魅力的な プログラムには全米から人が集まると いう。彼らが重視するのは作家として のキャリアをどう作っていくかで、公 募型のフォトコンペに参加することも 大事な足がかりの一つだ。 4年前から始めた写真公募展 家のラリー・フィンク氏だ。 「応募作品は世界各地から集まり、約 600名の2300点ほど。米国外は %程度で、そのうち 名が日本人。 『 ONWARD 』は毎年、審査員を変え、 メディアスポンサーを増やして徐々に 規模を広げてきた。今年の審査は写真 90 30 米国で公募、世界の 写真家の眼差し 01 州ごとに写真センターと呼ばれる写真 の複合施設がある。 15 Sandy Alpert Rebecca Soderholm 今月の インタビュー=市井康延 72 NIPPON CAMERA 右上:Akihiro Furuta 左上:Rebecca Soderholm 左中:Dina Litovsky 左下:Joey Cardella 町の中心部から地下鉄 で 10 分ほど離れた場 所に位置し、昔の 2 階 建ての倉庫を改装した 「Project Basho」の スタジオ外観。 った後、この写真センターを立ち上げ たのだ。 今は日本の写真関係者との交流など で、日米間を行き来する。2年前には 能登の文化に興味を持ち、受講生を連 れ て 撮 影 ツ ア ー も 行 な っ た。 外 に 出 て、伊藤さん自身、日本を再発見した のだろう。 「知ったつもりになっているが、この 2国間ではあまり情報が流通されてい ないことに気づいた」と伊藤さん。 月 日からリコーリングキューブで開 催されるフォトコンペ受賞作品展「O NWARD」ではアメリカで今、写真 作家を目指す人が何を考え、模索して いるかが分かる。そこではきっと新鮮 な驚きがあるはずだ。 NIPPON CAMERA 73 1974 年生まれ。テンプル大学日本校に入学後、96 年よりフィラデル フィアの本校に留学。卒業後、現像所勤務を経て、2002 年より自宅 アパートを使って暗室ワークショップを開講。その後、写真センター Project Basho を創設。http://www.projectbasho.org/。 伊藤 剛[いとう・つよし] 5 ギャラリーは兼用のスペースと利用され,他にもレクチャ ーやワークショップも開かれ人が集まれる様になっている。 右上は ONWARD の展示の一部。 日本語の応募票を制作したので、今年 は急増しました」 アメリカでは出力メディア自体が何 かはあまり重視していないという。4 ×5判フィルムで撮影しインクジェッ ト出力する人もいれば、デジタルネガ を起こしてプラチナプリントを作る人 もいる。 「単純にアナログか、デジタルかなん て分けられない。最終的に写真、形に なった時のメッセージ性、力を持って いるかが重要です」 伊藤さんは、日本から出たくてアメ リカに留学し、卒業後、現像所に勤め た。 深 く 暗 室 技 法 を 学 ぼ う と 思 っ た 時、フィラデルフィアにはそうした施 設がなく、ニューヨークのICPに通 ■ Project Basho フォトコンペ受賞作品展「ONWARD」 5 月 4 日(水)∼ 22 日(日) リコー・リングキューブギャラリーにて開催 4
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