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分詞構文の指導方法についての一提案

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分詞構文の指導方法についての一提案
学習者向け読み物を活かす指導
吉 川 勝 正
要
旨
入学して来る学生の学力の低下傾向に対して, 各大学で様々な対策が採られて
いる。 本学に入学して来る学生の英語力も, 残念ながら, 低下傾向にある。 近年
の入学生は, 本来高校時代に習得しておくべき重要な文法事項を習得できていな
い。 そのために, 筆者は分詞構文, 仮定法, 関係詞などの重要な項目については,
使用テキストとは別途にプリントを作成して, 試行錯誤を経ながら, 指導を継続
している。 本稿では, 分詞構文の指導に関し, 英語学習者や児童向けの読本から,
分詞構文の用例を用いることの意義と有用性を説明し, 使用頻度の高い例 (付帯
状況, 結果, 原因・理由) については, 英文を暗記させることを提案したい。
はじめに
大学生の学力低下が話題になるようになって久しい。 近年ますます多くの大学では, リメディ
アルという名称を用いても, 用いてなくとも, こうした学力の低下に配慮したカリキュラムや
授業内容に変えている。 筆者が所属している学科では, リメディアルに相当していたのが 「基
礎英語」 という科目であった。 現在はこの科目は既に廃止されている。 それは, この科目だけ
で, 本来高校卒業までに学習しておくべき事項の復習を徹底するのは無理であることが分かり,
英語の全ての科目に於いて, 高校卒業時までに習得しておくべきだった事項を, もう一度学習
するのが適切と判断したからである。
英語の科目に限定するならば, 以前の学生に比べて文法力の低下が顕著であるように感じて
いる。 それで, 筆者は普段の授業の中で, 特に高校時代に習得すべき事項でそうなっていない
大切な文法事項については, 別にプリントを用意して授業を行っている。 本稿では, 文法項目
の中で, 分詞構文に焦点を当ててみた。 「分詞構文の実際の使われ方」 を英語学習者向けの英
語の読み物の中で調べ, その特徴からより効果的な指導方法を探るのがねらいである。
―
―
吉
川
勝
正
なぜ学習者用の読み物を対象としたか
分詞構文の実際の使用例は, 英語の小説, 随筆, 新聞など広くから採集できるし, 従来の使
用例の研究はこうしたところで行われて来た。 しかし, 本学の学生の英語力はでは, そうした
成人した母語話者に向けて書いてある書物, 雑誌, 新聞をすらすらと読みこなすことはできな
い。 まだまだ, 英語学習の途上で, 母語話者向けでも子ども用か, 英語学習者向けの比較的簡
単な英文で書かれたものでないと, 読めない。 よって, 授業で指導する時も, 英語の成人母語
話者向けの書籍等から例を出すのは, 学生にとっては難しくて手に負えない。 そこで, 学生の
英語力に合ったものから用例を採り, 示すのが分かり易いと考えた。
こうした考えから, 成人母語話者向けに書かれた小説, 随筆, 新聞などではなく, 英語学習
者向けや母語話者の児童向けに書かれた比較的簡単な物語の中から, 分詞構文の用例を求める
ことにしたのである。
本稿では, 物語に限定して分詞構文の使用例を調べてみることにした。 理由であるが, 学習
者向けのものとしては, 最も多く出版されているからである。 他の新聞や随筆などで, 学習者
や子ども向けに易しい英語で書いてあるのは極めて少ないのが現状だからである。
学習者向け物語での使用例
分詞構文の使われ方を調べたのは,
,
三冊を合わせたものを表
,
の三冊である。 以下, 分詞構文の使われ方を表
表
表
で示し,
で示した。 縦が文での位置, 横が意味による分類である。 意味に
よる分類で一つ注意を喚起しておきたい。 結果を表す用法は付帯状況に入れる立場を取る研究
者が大半だが, 筆者は付帯状況から独立して一つの意味として考える方が良いとの立場で, こ
こでは, 独立させている。 また, この三冊の物語のそれぞれの総語彙数が異なっているので,
これが分詞構文の使用数の差の一番大きな要因であると思われることも注意されたい。 また,
分詞構文の意味は曖昧なのが基本的な特徴であり, 例えば, 付帯状況と理由・原因の両方に解
釈できうる場合などがよくある。 よって以下はあくまで筆者による分類であり, 読み手によっ
ては分類の違いが多少出てくる可能性が十分にあり得ることを初めにお断りしておきたい。
―
―
分詞構文の指導方法についての一提案
表
付帯状況
結果
理由・原因
時
条件
逆説 (譲歩)
理由・原因
時
条件
逆説 (譲歩)
理由・原因
時
条件
逆説 (譲歩)
時
条件
逆説 (譲歩)
文頭
文中
文末
表
付帯状況
結果
文頭
文中
文末
表
付帯状況
結果
文頭
文中
文末
表
付帯状況
結果
合
計
理由・原因
文頭
文中
文末
―
―
吉
川
勝
正
上の つの表を見れば, 位置では文末が一番多く, 意味では付帯状況が圧倒的に多いことが
分かる。 また, 時, 条件, 逆説 (譲歩) の使用例は全くなかった。 具体的に割合で見ておきた
い。 位置では, 全使用例
文末が
箇所で
箇所で
個所の中で, 文頭が
箇所で約
%であった。 意味では, 付帯状況が
%, 理由が
箇所で
%, 文中が
箇所で使用されて
箇所で
%,
%, 結果が
%であった。
今回調べた 冊の中には, 時, 条件, 逆説 (譲歩) の用例は見られなかった。 この原因は幾
つか考えられる。 先ず ( ) 僅か 冊で合計の総語彙数やページ数が少ないために, たまたま
そうした用例に出くわさなかった, ことが挙げられよう。 次に ( ) 元々, 一般向けの英語の
本や雑誌や新聞などでも, 現れる頻度がかなり低く, 学習者向けでも同様に低く, 現れなかっ
た。 ( ) 学習者向けや母語話者でも児童向けの物語では, 時, 条件, 逆説 (譲歩) は分詞構文
を使って書かなくとも, 適切な接続詞を使って書くのが, 読者にとって理解の負担が少ないの
かもしれない。 他方, 付帯状況, 結果, 理由・原因の用法は分詞構文の本質的な用法で, 他の
接続詞を使って書いた場合とは全く同じ意味合いにはならず, 分詞構文でしか表し得ない意味
合いがあるのかもしれない。 分詞構文の意味の曖昧性は, ある特定の接続詞で書き換えた場合
は, それが薄れてしまうのであろう。
用例の紹介
以下, 各物語の中での分詞構文の用例を紹介していく。
より
付帯状況の例
結果の例
―
―
分詞構文の指導方法についての一提案
理由・原因の例
(
の前に
が略されている)
より
付帯状況の例
より
付帯状況の例
結果の例
原因・理由の例
―
―
吉
川
勝
正
授業でどう活かすか
近年, 筆者の担当する英語の授業で時折プリントを用意して特定の文法項目の説明を行って
いる。 こうした文法項目には, 仮定法, 関係詞, 分詞構文がある。
分詞構文に関しては, 先ずは類似の日本語の二つの文を繋ぐことから入っている。 そして,
学習参考書に見られるような基本的で分かりやすい例文を導入している。 ただ, このような例
文は実際の本や雑誌や新聞やネットに使われていた英文ではなく, 英語学習者のために書かれ
たものである。 分かり易い反面, 実際の分詞構文とは, 語彙のレベルや文章の長さなどで, ど
うしても多少の隔たりが存在する。
基本的な分詞構文をある程度理解しても, 直ぐに実際の分詞構文に移行するにはやや問題が
あった。 そうした問題点を解決するためには, 今回上に紹介したようなレベルの分詞構文の例
であれば, あまりレベルの差を感じることなく, 学生が取り組めるものである。 また, 実際の
英文であれば, 学生の動機付けの点でも利点がある。
ただ, 注意しなくてはいけない点もある。 それは, 実際の英文は, 文脈の中で使われており,
単独では使われていないので, 実際の分詞構文を理解する場合には, 話題や文脈や固有名詞に
ついての背景知識の説明をしないと, 分かり難い点である。 この辺りには十二分の配慮が必要
となる。
こうした点を考慮すると, 分詞構文を単独で示すよりも, 分詞構文を含んだ前後 ページく
らいをプリントして読ませてみるのが賢明であると思われる。 しかし, これを例えば,
の
分詞構文を含んだ英文の前後 ページをプリントして用意し, 授業中で行うとなると, かなり
の時間を要してしまう。 そこで, 事前に予習するように課題としてプリントを渡しておいて,
次の授業の中でやるのが効率的である。
分詞構文は,
などのような
慣用的な言い方以外は, 日常会話ではあまり使われることはないし, 上級者ではない限りは,
分詞構文を使って英語の文章を書く必要もまずない。 このような考えから, 従来分詞構文の例
文を暗記させることは, 他の重要な構文や文法事項の場合とは異なり, 行われることは滅多に
なかった。 しかし, 書く必要がなくても, 英文を暗記していることは英文の理解をかなり楽に
―
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分詞構文の指導方法についての一提案
なるのは明らかである。 教師が長々と丁寧な解説や説明をするだけで, 分詞構文の用例に触れ
るのが少ないままでは, 定着が期待できない。 従来, 分詞構文が英語学習者にとって困難と受
け取られて来た理由の一つは, 指導方法にも一因があったと筆者はみる。 定着を図るには, 使
用頻度の高い, 付帯状況, 結果, 理由・原因の例文を暗記させるのが効果的と考える。 この暗
記法については数年実施してみて, また報告したい。
おわりに
本稿に於いては, 本学の学生に対する分詞構文の指導に関して, 学習者向けや母語話者児童
向けの読み物から例を採用することの意義を初めに示し,
冊の本での実際の使われ方を調べ,
表にしてみた。 すると, 付帯状況, 結果, 理由・原因の用例が多いことが判明した。 そして,
この実際の例文を課題として事前に与えておいて, 授業では解説にとどまらずに, 例文を暗記
させることの必要性を提案した。 まだ, 仮説の段階であり, 今後数年実践しながら, 分詞構文
のより良い指導方法を模索して行きたい。
分 析 図 書
(
)(
)
アイビーシーパブリッシ
ング株式会社
(
) (
(
)
講談社インターナショナル株
式会社
参 考 文 献
吉川勝正 (
) 「分詞構文は難しくない」,
)
サテライト講義
熊本学園大学経済学部編,
講
ミネルヴァ書房
―
―
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