Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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自律神経の薬物と薬理 : 特に降圧薬の分類
藤井, 恵美子; 村木, 篁
東京女子医科大学雑誌, 63(1):33-39, 1993
http://hdl.handle.net/10470/8458
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
33
〔東女医大誌 第63巻 第1号頁 33∼39 平成5年1月〕
総 説
自律神経の薬物と薬理一特に降圧薬の分類一
斗京女子医科大学 薬理学 助教授
フジ イ エ ミ コ
藤 井 恵 美 子
同 教授
ムラ キ タカムラ
村 木 篁
(受付平成4年9月19日)
Drugs Acting on the Autonomic Nervous System:
Their Use as Antihypertensive Agents
Emiko FUJII and Takamura MURAKI
Department of Pharmacology(Head:Prof. Takamura MURAKI)
Tokyo Women’s Medical College
We have revlewed recent advances in the autonomlc pharmacology on heart and blood vessels. We
have briefly discussed the usefulness and drawback of the antihypertensive agents that interfere with
adrenergic mechanisms.
はじめに
維は胸髄および腰髄から出,副交感神経のそれは
本稿では,自律神経系の特徴について述べたの
脳神経および仙髄から出る.
ち,降圧薬を作用部位別に分類し,そのうち自律
2.アドレナリン作動性神経とコリン作動性神経
神経系を抑制して降圧作用を示す薬物に焦点をあ
交感・副交感神経のいずれにおいても,節前線
て,降圧薬の作用機序について受容体と関連させ
維末端からはアセチルコリン(ACh)が神経伝達
て,医学部の学生を念頭において解説を試みた.
物質として遊離されるが,節後線維末端からは副
1.自律神経系の解剖
交感神経ではAChが遊離され(コリン作動性神
末梢運動神経系は体性神経系と自律神経系に分
経),交感神経では一般にノルエピネフリソ(アド
けられる.体性神経系の遠心路は,骨格筋の運動
レナリン作動性神経)が遊離される.交感神経支
を司り,脊髄前角から出る運動神経は,途中でシ
配下の汗腺は,例外としてコリン作動性である.
ナプスを介さず直接骨格筋に達する.自律神経で
なお,副腎髄質は交感神経節細胞に相当すると考
は,中枢神経から出た神経線維は,効果器にいた
えられる(図1).
るまでに必ず一回はニューロンをかえ,2つ目の
3.化学伝達物質と受容体:受容体の存在部位
ニューロンの細胞体は集合して自律神経節を作っ
と情報伝達様式
ている,中枢から出て神経節に到達する神経線維
自律神経節後線維の刺激の効果は,節後線維末
を節前線維,神経節細胞から出る神経線維を節後
端から遊離される化学伝達物質の違い(ノルエピ
線維という.自律神経は,心臓,血管,外分泌腺,
ネフリンまたはACh)と効果器細胞の膜の性質の
平滑筋などを支配し,これらの機能を意識によら
違いにより,興奮性または抑制性になる.自律神
ずに調節している.自律神経は,解剖学的に交感
経により支配される多くの効果器は,一般に交感
神経と副交感神経に分類され,交感神経の節前線
神経と副交感神経による拮抗的二重支配を受けて
一33一
34
t
いる.例えば心臓機能は,交感神経により促進さ
バむ
一合部
体性神経
れ,副交感神経により抑制される.
ムお
一{
No
神経または効果器の細胞膜には,化学伝達物質
神経節
の情報を受け取るために特定のタンパク質で構成
孝卜遙輸
副交感神経
された受容体がある.自律神経の興奮によりシナ
Nc ロ
垂i三一噸『
交感神経系
神経節
プス間隙に放出されたノルエピネフリソまたは
No β
AChは,それぞれ特定の受容体(アドレナリン受
容体,ACh受容体)に結合して作用をあらわす.
副腎髄質
これら受容体には種類があり(表1),大別すると
Nc:ニコチン受容体、 M$1ムスカリン受容体
アドレナリン受容体にはαおよびβアドレナリ
α :αアドレナリン受容体、 β :βアドレナリン受容体
ン受容体,ACh受容体にはムスカリンおよびニコ
一一一く款 アセチルコリン
コリン作動性神経
チン受容体がある.ニコチン受容体には,自律神
○一・一一・一・・…・一・一・・’・・一・・・…〈馨 ノルエピネフリン
経節に存在する神経型(Nn)と神経筋接合部や発
アドレナリン作動性神経 エピネフリン
電器官に存在する骨格筋型(Nm)の2種類があ
図1 末梢神経系の化学伝達物質による分類(東京女
る.
’子医科大学薬理学講義用教材プリント,薬理学 担
αアドレナリン受容体はシナプス後部に存在
当 佐久間昭 1992より引用)
するα、受容体と,アドレナリン神経終末のシナフ.
ス前部に存在するα2受容体とに分けられる.α、受
表1 コリン作動性,
アドレナリン作動性神経伝達物質の受容体サブタイプと
情報伝達様式
神経伝達物質
アセチルコリン
受容体サブタイプ
ムスカリン
遺伝子
代表的存在部位
情報伝達様式
Ml
m1
脳,神経節,胃
PI代謝回転促進
M2
m2
心臓
アデニル酸シク
M3
m3
平滑筋,腺
PI代謝回転促進
M4
m4
脳
アデニル酸シク
m5
脳
PI代謝回転促進
堰[ゼ抑制
堰[ゼ抑制
ニコチン
ノルアドレナリン
@ および
α1H
@アドレナリン
Nn
α,β
自律神経節
Na+, K+の透過
Nm
α2βγδ
神経筋接合部
ソ2βεδ
i骨格筋)
ォ増大による膜
フ脱分極
α1A
α1A
脳,輸精管
ソLB
ソ1B
穴ヌ,肝臓,脳
PI代謝回転促進
フ臓,肺
ソ1C
脳,輸精管,
ソ1L
蜩ョ脈
血管
ソ1N
α2A
α2
β1β2β3
シナプス前・後部
アデニル酸シク
件ャ板,血管
堰[ゼ抑制
β、
心臓
アデニル酸シク
タ2
C管支
塩b組織
堰[ゼ活性化
ソ2B
タ3
34一
35
容体にはαIA,α、Bなどのサブタイプがあり,一方,
受容体に結合すると,瞳孔,唾液腺,心臓,気管
プラゾシンに対する親和性の違いからα、H,α、L,
支,膀胱などで副交感神経を刺激したと同様の効
α、Nにも分類されている1)2).α2受容体は,交感神経
果を示し,いずれもアトロピンで抑制される.近
はじめ多くのアドレナリン神経終末のシナプス前
年,ムスカリン受容体には4種類のサブタイプ
部に存在し,ノルエピネフリンの遊離を抑制する
(M、∼M4)が存在することが示された12). M、は,
(α2受容体にもα2Aおよびα2Bのサブタイプが存在
中枢神経系や神経節に,M2は心臓に多く,M3は平
する)3).α2受容体はシナプス後部(冠血管,腎血
滑筋や腺に,M4のメッセンジャーRNAは脳に強
管,膵ランゲルハンス三島B細胞など)にも存在
く発現する.
心臓でのムスカリン受容体は,M2ただ一種類で
し4),また,血管内皮細胞のα2受容体は,
endothelium・derived relaxing factor(内皮由来
あると考えられてきたが,最近それがさらに2つ
血管拡張因子,EDRF)の遊離を介して血管平滑筋
のサブグループに分けられた13>.M2αは心収縮力
を弛緩する5).
の抑制と関連し,M2βはPI代謝の促進と共役し
血管平滑筋にはα、およびα2受容体が存在し,
ている.さらに,最近第5番目のサブタイプであ
α1受容体刺激は,ホスファチジルイノシトール
るm5受容体遺伝子が脳に発現していることが発
(PD代謝回転を促進することにより,α2受容体刺
見された14).
激はセカンドメッセンジャーであるサイクリヅク
4.心血管機能に対する交感,副交感神経の調節
AMP(cAMP)の産生を抑制することにより,共
作用
に1血管収縮に関与する.血管平滑筋のα2受容体の
血管の緊張は,交感神経,副交感神経,非アド
分布には著しい部位差があり,ヒトでは手足・腹
レナリン・非コリン性神経などによって調節され,
部皮下脂肪組織の細い血管のノルアドレナリソ収
関与する伝達物質も,ノルエピネフリンやACh,
縮に関与する6)7).
神経ペプチドからATPやNOなどの小分子まで
β受容体は,脂肪分解および心収縮や心拍数の
多岐にわたっている15).交感神経伝達物質は,ノル
増加などに関与するβ1受容体と,気管支筋の弛
手ピネフリンであるが,交感神経興奮により
ATPまたはその関連物質,ニューロペプチドY
緩,血管(動脈,静脈)の拡張およびインスリン
分泌促進などに関与するβ受容体とに分類され
も共に放出されノルエピネフリンの作用を修飾す
る.β2受容体はシナプス前部にも存在し,ノルエピ
る16).
ネフリンの合成および遊離を促進する(ポジティ
交感神経の興奮またはノルエピネフリン,エピ
ブフィードバック機構)8).最近,ヒト心筋に焼受
ネフリンの投与は,心臓の潮受容体を介し,
容体も20∼30%存在することがわかり,β、/鳥比は
cAMPの産生を促進することにより心収縮力増
心房で74/26,心室で86/14といわれる9).なお,心
強,心拍数増加,自動能と伝導速度の増加をもた
臓の収縮増強に関与する4、アドレナリン受容体
らす.血管では,α、およびα2受容体刺激による収
も存在する10).また,遺伝子工学的手法により凧
縮またはβ2受容体刺激による拡張を生じる.副交
やβ受容体とは異なるアミノ酸配列を有するβ3
感神経の興奮またはACh投与後の反応はその逆
受容体も見出されている11).
で心臓では収縮力減少,心拍数減少,伝導速度の
ある特定の受容体に特異的に作用する薬物によ
減少をもたらす.血管には副交感神経の支配はな
る薬理学的反応の差異や結合実験から類推されて
いが,ムスカリン受容体は存在するので,AChを
いたα,β受容体のサブタイプは,受容体遺伝子の
静脈内投与するとEDRF(NO)の産生を介して血
クローニングにより,受容体分子の違いによるこ
管が拡張する.
とが次第に明らかになってきた(表1).
5.降圧薬の分類
1914年,DaleによりAChの作用はムスカリン
性とニコチン性に大別された.AChがムスカリン
自律神経に作用する薬物は,薬物の作用部位に
より,シナプス前部(神経終末)に作用するもの,
一35一
36
シナプス間隙に作用するもの,シナプス後部の受
視床下部
容体に作用するものに分類される.また,作用様
壷
式によりACh受容体に結合するコリン作動薬,
橋・延髄
抗コリン作動薬,アドレナリン受容体に結合する
↓
脳幹部
α一メチルドパ
レセルピン
(血管運動中枢〉
アドレナリン作動薬,抗アドレナリン作動薬およ
ヘキサメトニウム
トリメタファン
メカミラミン
自律神経節
びアドレナリン作動神経遮断薬などに分類され
↓
る.
交感神経
血圧は,血管系の緊張度により決定される末梢
クロニジン
グアナベンズ
グアンファシン
レセルピン
グア不チジン
飾後線維終末 ベタニジン
/
抵抗に比例し,また心拍出量と循環血液量に比例
α1受容体
プラゾシン
ドキサゾシン
テラゾシン
ウラピジル
血管平滑筋
降圧利尿薬
心臓
(β1受容体)
する.高血圧症の80∼90%は本態性高血圧症で,
β遮断薬
(プロプラノロール・他)
全身の血管抵抗が原因不明のまま上昇しているも
のである.降圧剤は,血圧を下げることにより心
血管拡張薬
アンギオテンシンH
臓,脳,腎臓の高血圧合併症を減少することを期
1変騰阻害薬
待して使用される.
アンギオテンシン1
現在使われている降圧薬は作用機序から,以下
図2 降圧薬の作用部位
表2 自律神経系抑制作用を有する降圧薬の分類
一 般 名
作 用 機 序
1)中枢性交感神経遮断薬
塩酸クロニジン
酢酸グアナベンズ
塩酸グアンフアシン
α一捻チルドパ
レセノレピン
2)β遮断薬
(β1,β,,α、)
受容体選択性
β、=β霧
塩酸プロプラノロール
塩酸カルテオロール
ヒ。ンドロール
マレイソ酸チモロール
ナドロール
β、〉β聖
塩酸アセブトロール
アテノロール
酒石酸メトプロロール
β正〉β2,α1
塩酸ブニトロロール
塩酸アロチノロール
塩酸ラベタロール
塩酸プラゾシン
3)α、遮断薬
塩酸ブナゾシソ
メシル酸ドキサゾシン
塩酸テラゾシソ
ウラピジル
4)末梢ニューロン遮断薬
レセルピン
硫酸グアネチジン
硫酸ベタニジン
臭化ヘキサメトニウム
5)節遮断薬
カソシル酸トリメタファン
塩酸メカミラミン
一36一
Ca拮抗薬
37
の5種類に分けられる.
ニスト活性(内因性交感神経刺激作用),膜安定化
1)自律神経系抑制薬(中枢性交感神経遮断薬,
作用などが異なる多くの種類が開発されている
β遮断薬,α遮断薬,末梢ニューロン遮断薬,節遮
(表2).非選択性β遮断薬(凧,β2受容体の両方
断薬),2)降圧利尿薬,3)Ca拮抗薬,4)変換酵
を遮断する)のプロプラノロールは,臨床で広く
素阻害薬,5)血管拡張薬
応用された最初のβ遮断薬であり,罪なお,この
それぞれの降圧薬の作用部位を図2に示す.
系の薬物のうちで最も重要なものである.部分的
6.自律神経系抑制作用を有する降圧薬の作用
アゴニスト活性はないが,気管支平滑筋および骨
機序
格筋の焼受容体を遮断する.従って,エピネフリ
自律神経系抑制作用を有する降圧薬は表2のよ
ンその他の内因性カテコールアミンによる気管支
うに分類できる.血管を支配する自律神経は,主
拡張を抑制するため,気管支喘息患者には発作を
として交感神経であるため,交感神経の抑制薬が
誘発する危険がある.プロプラノロールは交感神
降圧剤として用いられる.
経副腎系活動によるグリコーゲン分解を抑制する
1)中枢性交感神経遮断薬
ので,インスリン使用時の低血糖作用を増強する.
中枢性交感神経遮断薬は,交感神経中枢の興奮
プロプラノロールと血管平滑筋に直接作用する血
頻度を抑制することが主作用である.
管拡張薬(例えばヒドララジン)との併用は有用
クロニジンは,中枢性および末梢性σ2アゴニス
で,血管拡張薬による特徴的な反応である反射性
トである.主に中枢神経に作用して交感神経系を
頻脈を効果的に抑制する.プロプラノロールの降
抑制し降圧作用を示す.クロニジンの副作用で頻
圧作用の機序はいまだ解明されていないが,心拍
度の高いものは口渇である.また,長期間使用後
出量の低下,交感神経刺激によるノルエピネフリ
中止すると,交感神経興奮による症状(不安,頭
ソ遊離の抑制およびレニン分泌の抑制などが機序
痛,腹痛,頻脈,発汗,嘔気など)が現われ,血
として提起されている.
圧が治療前以上に上昇する(反跳現象)こともあ
る.クロニジン中止時には徐々に減量する必要が
心選択性のないナドロールは,部分的アゴニス
ト活性がなく,プロプラノロールと異なり膜安定
ある.グアナベンズおよびグアソファシンもα2ア
化作用のない長時間作用型で,脂溶性でないため
ゴニストで,その薬理学的性質はクロニジンと類
血液脳関門を通過しにくい.チモロールは,ごく
似する.
わずかの部分的アゴニスト活性があり,プロプラ
α一メチルドパは,容易に中枢神経系に到達し,
ノロールの5∼10倍のβ遮断作用を有する.ピン
脱炭酸されてα・メチルドパミンとなり,更に水酸
ドロールは,部分的アゴニスト活性があるため,
化されてα2アゴニスト作用のつよいα一メチルノ
心筋予備能の小さい患者や強度の徐脈が出現しや
ルエピネフリンが生成され,神経終末でノルエピ
すい患者に適している.
ネフリンと置換し遊離される.αメチルドパはク
心選択性(角よりβ受容体に強く作用する)の
ロニジンと同様に中枢性に作用して降圧作用を示
メトプロロールは,非選択性β遮断薬に比べ喘息
す,
患者に対してより安全であり,非選択性遮断薬で
レセルピンは,交感神経系のノルエピネフリン
みられるインスリンによる低血糖を増強する作用
を枯渇して降圧作用を示すが,一方,脳内のカテ
がない.アテノロールは,部分的アゴニスト活性
コールアミンおよびセロトニソを枯渇して鎮静,
はないが,ごくわずかな膜安定化作用を有する.
うつ状態を生じる欠点がある.
その他の作用はメトプロロールと類似している.
2)β遮断薬
α、遮断作用を併せもつβ遮断薬(β1〉焼,α1)
β遮断薬は,高血圧のほか,狭心症,不整脈など
のうベタロールは,σ1遮断作用による血管拡張と
の心臓血管障害の治療に有効である.
β遮断による心臓抑制の総合作用により,心拍数
β遮断薬には受容体の選択性のほか部分的アゴ
や心拍出量にほとんど変化を与えず,末梢血管抵
一37一
38
抗を減少し血圧を降下させる.
よび左心室仕事量が減少する.
3)α、遮断薬
第四級アンモニウム構造をもつヘキサメトニウ
プラゾシンの主な作用は末梢性であり,シナプ
ム(C6),スルポニウム構造をもつトリメタファ
ス後部のα、受容体遮断による動脈および静脈の
ン,第二級アミンのメカミラミンなどがある.節
血管拡張である.プラゾシンやブナゾシンはα、受
遮断薬は,起立性低.血圧,下痢など副作用が大で
容体のサブタイプのうち,α1Bサブタイプに対して
あるため,降圧薬としての有用性は減少した.ト
高親和性で,血管壁における強力な交感神経遮断
リメタファンは降圧作用発現が早く作用時間が短
作用はα1B遮断によることが明らかとなった15).
いので,高血圧発作の救急治療,手術時の出血防
プラゾシンは,抵抗血管および容量血管の両方の
止のために人為的低血圧を起こす目的で用いられ
血管を拡張させるため,全末梢抵抗が減少し血圧
る..
が持続的に降下する.プラゾシンはα2受容体に対
おわりに
する親和性が少ないので,従来のα遮断薬にみら
本稿では,現在用いられている降圧薬のうち,
れる起立性低血圧とそれに伴う反射性頻脈が比較
特に自律神経系の抑制作用を有する降圧薬をとり
的軽度である.
あげ,その作用機序について述べた.降圧薬のあ
4)末梢ニューロン遮断薬
るものは,受容体のサブタイプを特異的に遮断し,
グアネチジンは,節後性アドレナリン作動性神
効果を現わすことが示された.今後さらに,それ
経機能を抑制する薬物の代表である.グアネチジ
ぞれの降圧薬について,サブタイプとの関連の研
ンを静注すると,交感神経系を刺激し血圧を一過
究が進展すれぽ,薬用量や副作用の軽減に大いに
性に上昇する.一方,間接型アドレナリン作動薬
役立つものと思われる.
(チラミン,アンフェタミンなど)に対する反応を
文 献
抑制する.
1)Muramatsu I, Obmura T, Kigoshi S et al:
グアネチジンを慢性投与するとアドレナリン作
動神経に取り込まれてニューロン内貯蔵三二に貯
蔵され,ノルエピネフリンを置換して枯渇するこ
とで降圧作用を示すが,中枢神経にはとりこまれ
ないのでレセルピンのようにうつ状態を起こすこ
Pharmacological subclassification of αr
adrenoceptors in vascular smooth muscle. Br J
Pharmaco199:197−201,1990
2)Muramatsu I, Kigoshi S, Ohmum T:
Subtypes of αradrenoceptors involved in
noradrenaline−induced contractions of rat thor一 ・
acic aorta and dog carotid artery. Jpn J Phar−
とはない.グアネチジン,レセルピンともに起立
macQl 57:535−544,1991
性低血圧を起こす欠点がある.ベタニジンの血行
3)Bylund DB: Heterogeneity of alpha−2
adrenergic receptors. Pharmacol Biochem
動態への影響は,本質的にはグアネチジンと同一
である.
5)節遮断薬
神経節のシナプス後山のニコチン受容体との競
合的拮抗によりシナプス伝達を遮断する競合的遮
Behav 22:835−843,1985
4)Lefkowitz RJ, Ho∬man BB, Tay監or P:
Neurohumoral transmission l The autonomic
and somatic motor nervous systems. Z%Good・
man and Gilman’s The Pharmacological Basis
of Therapeutics(Gilman AG, Rall TW, Nies
断薬が,血管に分布する交感神経節を遮断し血管
AS eds),8th ed pp84−121, Pergamon Press, New
の交感神経緊張を低下させるため降圧薬として用
York(1990)
いられる.
5)Cocks TM, Angus JA:Endothelium−
節遮断によってどの程度血圧が低下するかは,
noradrenaline and serotonin, Nature 305:
dependent relaxation of coronary arteries by
交感神経緊張度が関連し,節遮断後の心拍数の変
627−630, 1983
化は,迷走神経緊張度と関係する.ヒトでは,節
6)Flavahan NA, Cooke JP, Shepherd JT et a豆:
遮断薬投与後ふつう軽度の頻脈に血圧下降を生じ
Human post−junctional alpha・1 and alpha−2
adrenoceptors: Differential distribution in
る.高血圧患者では,心拍出量,1回拍出量,お
38一
39
arteries of the limbs. J Pharmacol Exp Ther
humanβ』・adrenergic receptor. Science 245:
241 :361−365, 1987
1118−1121, 1989
Responses to noradrenaline in human sub−
12)東田陽博,野田百美,木村康宏ほか:ムスカ.リソ
性受容体遺伝子導入細胞における受容体一反応
cutaneous resistance arteries are mediated by
カップ.リング,日薬理誌 98:169−175,1991
bothα1・andα2−adrenoceptors. Br J Pharmaco1
13)内田修次,吉田 博:ムスカリニッタ・レセプター
の研究の展望一妾ブタイプ,サブグループを中心
7)Nielsen H, Morte皿sen FV, Mulvany MJ:
99:31−34, 1990
として一.日.薬理誌 95:7−14,1990
8)井上道敏,多田道彦編:心臓と末梢血管の神経性
}4)Bonner TI, Young AC, Brann MR et al:
調節.メディカルトリビューン,東京(1991)
Cloning and expression of the human and rat
9)Stiles GL,. Taylor S,■efkowitz RJ:Human
cardiac beta−adrenergic receptors: Subtype
m5 muscarinic acetylcholine receptor. Neuron
heterogeneity delineated by direct radioligand
1 :403−410, 1988
binding. Life Sciences 33:467−473,1983
15)村松郁延:血管における神経調節と受容体.最新
10)Puc6at M, Terzic A, Clement O et al:Car−
医学 47:10−16,1992
diac α・adrenQceptors.mediate positive
inotropy via myofibrillar sensitization. Tips
16)Mura血atsu I, Ohmura T, Oshita M:Com−
pafison between sympathetic adrenergic and
13:263−265, 1992
purinergic transmission in the dog mesenteric
11)Emorine LJ, Maruno S, Briend・Sutren M・M
artery. J Physiol 411:227−243, 1989
et al:Molecular characterization of the
._
R9_