健康寿命

2015-05-23 22:35
健康寿命
健康寿命
東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科 健康推進歯学分野 植野正之 .
「平均寿命」は健康水準の指標としてよく用いられている。我が国は、世界でも高い水準を維持しており、特
に女性は1985年(昭和60年)から今日まで、世界第一位の座を守っている。こうした成果は、我が国の高い教
育・経済水準、保健・医療水準、生活習慣の改善等によってもたらされたと考えられる。
一方、「健康寿命」は、健康で支障なく日常の生活を送ることができる期間またはその指標の総称を指す。生活
の質(QOL)を重視する考え方に基づき、WHO(世界保健機関)が2000年(平成12年)にこの概念を公表した。
平均寿命から介護や病気で寝たきりの期間(自立した生活ができない期間)を引いたものが健康寿命になる。つ
まり、何歳まで自立して健康に暮らせるかの指標である。例えば80歳まで生きたとして、介護に3年そして入院
に3年を要した場合は健康寿命は74歳となる。どんなに平均寿命が延びても、QOLが低ければ、満足のいく生活
を送ることができない。したがって、平均寿命よりも健康寿命を延ばすことが重要である。
厚生労働省によると、2010年(平成22年)の健康寿命の平均は男性が70.42歳、女性が73.62歳であった。厚生労
働省が具体的な推計値を公表したのはこれが初めてである。今回、厚生労働省が行った健康寿命の推計は、2011
∼2012 年度厚生労働科学研究(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「健康寿命における将来予
測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」による算出方法を利用したものである。
2010年(平成22年)の健康寿命を同じ年の平均寿命(男79.64歳、女86.39歳)と比較すると、健康寿命は平均寿
命より男性は約9年、女性は約12年短かかった(図1)。この期間が、自立して生活できない年数になる。女性
は男性に比べこの期間が約3年長かった。これは、女性が骨粗鬆症や認知症といった疾患に罹患しやすいことが
理由のひとつとして考えられている。
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健康寿命
健康寿命と平均寿命の年次的推移をみると、2001年(平成13年)から2010年(平成22年)までの健康寿命の延
び(男性1.02 年、女性0.97 年)は、同期間における平均寿命の延び(男性1.57 年、女性1.46 年)と比べ小さく
なっており、2010年(平成22年)における健康寿命と平均寿命との差は男女とも2001年(平成13年)と比べ拡大
している(図2)。
2013年(平成25年)度より開始される健康日本21(第2次)において、その目標の中に健康寿命の延伸が盛り
込まれている。さらに、健康寿命の延び幅が平均寿命の延び幅を上回ることを目指している。国立社会保障・人
口問題研究所の日本の将来推計人口によると、2013 年(平成25年)から2022 年(平成34年)にかけて、平均寿命
は、男性では80.09 歳から81.15歳へと1.16年、女性では86.80歳から87.87 歳へと1.07年延びることが予測されてお
り、健康寿命はこの増加分を上回らなくてはならないことになる。我が国はこれから更なる超高齢化社会を迎え
る。平均寿命が延びるにしたがい、この差が縮小しなければ、健康上の問題だけでなく、医療費や介護費等の増
大への影響が懸念される。
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健康寿命
都道府県別で健康寿命が最も長いのは、男性が
愛知県で71.74歳、女性が静岡県で75.32歳であっ
た。逆に、最も短いのは男性が青森県で68.95
歳、女性が滋賀県で72.37歳であった。地域格差
は、男性において愛知県と青森県との差が2.79
歳、女性においては静岡県と滋賀県との差が2.95
歳であった(表1)。健康日本21(第2次)の目
標にもあるように、こうした地域格差の縮小にも
取り組んで行く必要がある。
2012年(平成24年)に発行されたThe Lancet
に、2010年(平成22年)時点の世界187か国の健
康寿命が掲載されている。算出方法等の違いで上
記の厚生労働省の数字との単純比較はできない
が、対象国全体の健康寿命の平均は、男性が58.3
歳、女性が61.8歳であった。その中で、日本人の
健康寿命は男女ともに世界一であった
(表2)。
今後、健康寿命を延ばしていくため
には、栄養・食生活、身体活動・運
動、休養、飲酒、喫煙および歯・口腔
の健康等の生活習慣の改善、健康を支
える社会環境の整備等に加え、がん、
脳卒中、心臓病等の生活習慣病予防対
策が必要となってくる。実際に、公共
の場での禁煙推進、一般人向けの高血
圧対策、循環器リスク集団への積極的
な高圧介入等が健康寿命の延伸に有効
であるとの報告もされている。
厚生労働省では2011年(平成23年)より、国民の生活習慣を改善し、健康寿命を延ばすために「Smart Life
Project」(スマート ライフ プロジェクト)を実施している。しかし、健康寿命という言葉は、まだ十分に国民に
周知されていないのが現状である。健康寿命の言葉の意味や概念を浸透させ、国民の健康づくりに対する関心を
これまで以上に高めることが重要である。今後は厚生労働省等、国をはじめ自治体、企業、地域全体を含めた啓
発活動が必要であろう。
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