2015 Vol.32 No.12 (通巻 384 号) 12 特 集 NW Re Ib ネビ ッジ トネ コス ムを 支 え る Adobe Reader のメニューバーで「表示(V)→ページ表示(P) 」にある「見開きページ(U) 」と「見開きページモードで表紙をレイアウト(V) 」の 2 か所にチェックすると紙面 のイメージでご覧いただけます。また、両面プリンターをご使用の場合、印刷時に「ページの拡大/縮小(S) 」で「小冊子の印刷」を選択すると紙面に近い状態を再現できます。 2015 Vol.32 No.12 (通巻 384 号) 12 視点 NRI ネットコム、25 年目の挑戦 04 野 村 隆志 特集 Webビジネスを支える NRIネットコム BtoB 企業の Web サイト活用のあり方 ……………………… ─ 増えてきた成功事例と可能性の広がり ─ 06 柿﨑 千絵 法人を顧客とする企業(以下、BtoB 企業)で、Web サイトをマーケティングに活用しようという意識が高まってい る。一方で、マーケティングプロセスのどの部分で Web サイトを活用すべきかを定めるのが難しいと感じている企 業も多い。本稿では、BtoB 企業における Web サイトの有効な活用法について事例を交えて紹介する。 オンライン広告の技術動向 ……………………………………………………………………… ─ 配信対象は「枠」から「人」へ ─ 10 神崎 健太 Web サイトの閲覧時に表示されるオンライン広告は、広告技術の進歩により配信の仕組みが急速に変化している。本 稿では、ターゲティングの高精度化や費用対効果の向上を実現する最近のオンライン広告の技術動向について、事例 を交えて紹介する。 大学生協のデジタルマーケティング ……………………………………… ─ 決済データとスマートフォンの連係によるサービス ─ 14 木村 勇三 NRI ネットコムは 1991 年の会社創立時から、全国大学生活協同組合連合会所属の大学生協(東京地区を除く)の POS システムなどを構築し、最近では決済データとスマートフォンアプリを連係させたサービスを提供するシステ ムも構築している。本稿では、大学生協の新しいマーケティングの取り組みについて紹介する。 C o n t e n t s 挑戦の歴史(最終回) 創立 50 周年 32 2015 変える意志、変わらぬ信念。 ペーパーレス会議のさまざまなメリット ………………………… ─ タブレット端末を活用した「モバイル会議」─ 16 髙島 秀実 企業ではペーパーレス化(紙使用量の削減)に以前から取り組んでおり、業務の多くの部分は電子化されたが、会議 などではいまだに紙の資料が使われることが多く、ペーパーレス化は思ったように進んでいないのが現状である。本 稿では、NRI ネットコムの「モバイル会議」の紹介を通じてペーパーレス会議のメリットを解説する。 変化に強い Web デザインとは ……………………………………………………… ─ 改善や拡張が容易な Web サイトの設計 ─ 高須賀 20 淳 Web デザインというと、「デザイン」という言葉を含むことから、とかく見た目ばかりが注目される。確かに、実際 に姿や形を描くことはデザインにとって重要だが、どう描くかという計画(設計)にこそデザインの本質がある。本 稿では、改善などの変更が容易な Web デザインとはどういうものか解説する。 モバイルアプリ開発の自動化・高速化 ………………………………… ─ 品質と効率を向上させる組織的な開発手法とは ─ 24 佐々木 拓郎、高柳 怜士 “モバイルファースト”が言われ始めて 3 年、当初は個人による開発が多かったモバイルアプリは、今では企業による 組織的な開発が主流である。その一方で、組織による開発に関して確立された方法論はまだ存在しない状況にある。 本稿では、複雑化の度合いを強めるモバイルアプリ開発の品質向上と効率化の方法について考察する。 人型ロボットはどこまで進化したか ……………………………………… ─ ロボットアプリケーションを開発して ─ 岸 本 勇 貴 、伊 津 野 28 匡 ロボットがさまざまな分野で活用されるようになって久しいが、近年は人型ロボットへの注目が高まっている。人型 ロボットは新しいコミュニケーションツールとしての有用性を感じさせるが、現状では課題もある。本稿では、最新 の人型ロボットを動作させるアプリケーションの開発を通じて得られた知見を示し、活用の可能性を展望する。 視点 NRI ネットコム、 25 年目の挑戦 NRI ネットコム 社長 の む ら た か し 野村 隆志 NRI ネットコムは、日本でインターネット ンの 1 つにすぎない。しかしその簡便性と使 の商用サービスが開始された 1991 年 4 月に い勝手の良さ、いくつかの革新的な技術や 設立され 2016 年 4 月に創業 25 周年を迎え サービスの登場によって爆発的に普及し、今 る。素晴らしいお客さまに恵まれ、これまで 日の姿となった。例えば、Yahoo! や Google 着実に成長を続けてくることができた。この などの検索は、見たい Web サイトに簡単に 場を借りて深く感謝申し上げたい。 アクセスすることを可能にし、Web サイト インターネットの黎明(れいめい)期に を短期間に世界的に普及させた。Web は、 誕生した NRI ネットコムの歩みは、インター 人類史上かつてないスケール、スピードでの ネットとそのアプリケーションである Web 情報交換を可能にしたのである。 と共にあると言っても過言ではない。創立当 また、検索エンジン、ニュース、オンライ 時から大学生協の情報システムを構築・運用 ン辞書などを備えた大規模なポータルサイト していた関係で 1996 年には第二種通信事業 の登場により、Web サイトはメディアとし 者の認可を受け、使い放題のインターネット ての側面を強めていった。そして個人が簡 接続サービス「生協インターネット」を大学 単に情報発信できるサービスの登場により、 生向けに開始した。それがインターネット分 ソーシャルメディアという新たなメディアが 野への本格的な進出の始まりだった。 生まれることとなった。 その後、1997 年には Web システム(サー さらには、企業の基幹系システムや決済シ バー)の構築、1999 年には Web コンテンツ ステムなどとの連係により、Web は各種の 制作事業を開始し、インターネットの発展と 取引やサービスを提供できるようになり、誰 ともに企業の Web 活用を多面的に支えるこ もが利用できる本格的な電子商取引が可能と とを目指して事業展開を行ってきた。現在で なった。今日の Web は、使い勝手が良く小 は 320 名を超える社員が、多数のパートナー 回りが利くシステムとなるだけでなく、情報 企業社員と共に Web システムの構築や Web 発信やコミュニケーションのためのメディア サイトの構築・運営などに携わっている。 となり、企業にとってはブランド戦略から営 業活動、取引、サービスの提供という、企業 Web は、もともとはインターネット上で の情報発信の仕組みであり、アプリケーショ 04 と外部との全ての接点で重要な役割を占める ようになった。 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. インターネットと Web 技術にとって今後 マーケティングを支えていくことはできな の大きなテーマは、IoT(Internet of Things) い。すでに現在でも、広報、マーケティン とデジタルマーケティングであろう。 グ、営業企画などのユーザー部門が、Web IoT とは、モノがインターネットで接続さ サイトや営業システムなどについて、外部の れた状態であり、モノに内蔵されたセンサー IT ベンダーなどと直接やり取りしている企 のデータが集約・分析され、必要に応じてモ 業は少なくない。2017 年までには、マーケ ノをコントロールできるようになることであ ティング部門の方が IT 部門よりも多くの IT る。IoT によって、工場の生産設備、橋や建 予算を持つようになるという予測も発表され 物などの構造物、電気・ガス・水道などのイ ている。 ンフラ設備の状況を常時モニタリングし、故 このような時代に必要とされるのは、柔ら 障や異常の兆候を素早く察知して予防的メン かい発想力と先進技術の知識を兼ね備えた テナンスを行ったり、最適な状態にコント “デジタルエージェンシー” だ。デジタルエー ロールしたりすることが可能となる。また、 ジェンシーは、狭義には Web 関連の広告の センサーのデータを利用した付加的サービス 制作を引き受ける事業形態を指すが、時代が も可能となる。 必要としているものはそのような狭い範囲に デジタルマーケティングは、高速無線通信 はとどまらない。今、求められているのは、 ネットワーク、スマートフォンを代表とする マーケッターやデザイナーやアナリストとシ モバイルの普及、IoT、クラウドコンピュー ステムエンジニアが協業することによって企 ティングの普及などを背景に、従来の Web 業活動をサポートする “デジタルマーケティ マーケティングの範囲を超えて、全てのマー ング・エージェンシー” だ。これは新しい分 ケティング活動をデジタル化、高度化するこ 野の事業形態のように言われているが、これ とを目指す。今後は、店舗や営業担当を有す こそが NRI ネットコムが創業以来目指してき る “伝統的” な企業でも、顧客接点としての たものなのである。世界では既にシステム開 Web サイトやスマートフォンアプリなどの 発企業がデジタルマーケティング分野に進出 重要性がますます高まっていくことは間違い を始めており、その流れは確実に日本にも押 ない。 し寄せるだろう。われわれはその流れを見据 えて、一歩先を行く事業を展開したいと考え それでは、企業の IT 部門はこのような変 ている。 化にどう対処してくべきなのか。従来、IT 部門にはシステム企画、構築、運用に関す 今号の特集では、Web 関連技術をベース るスキルと、自社の業務知識の 2 つが求めら にした、NRI ネットコムのさまざまな新しい れてきた。これらのスキルを持つ人材がいわ 挑戦について紹介している。ぜひご一読いた ゆるシステムエンジニアである。しかし、シ だき、何らかの参考にしていただければ幸い ステムエンジニアだけでは、IoT やデジタル である。 ■ 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 05 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム BtoB 企業の Web サイト活用のあり方 ─ 増えてきた成功事例と可能性の広がり ─ 法人を顧客とする企業(以下、BtoB 企業)で、Web サイトをマーケティン グに活用しようという意識が高まっている。一方で、マーケティングプロセ スのどの部分で Web サイトを活用すべきかを定めるのが難しいと感じてい る企業も多い。本稿では、BtoB 企業における Web サイトの有効な活用法に ついて事例を交えて紹介する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web デザイン事業部 Web コンサルタント かきざき ち え 柿﨑 千絵 専門は Web チャネルにおけるマーケティング戦略の企画・立案 BtoB 企業の Web サイト活用 しかし、それだけが Web サイト活用意識 意識の高まり の高まりの理由ではないと考える。企業は これまで BtoB 企業では、Web サイトを活 日々アンテナを張り巡らせているなかで、他 用する効果があまり見えないという声が多 社の Web サイト活用の成功体験に関する情 かった。そのため、ネットビジネスを事業化 報を見たり聞いたりしているはずである。そ する企業がある一方で、ネット活用の範囲 こに自社を取り巻く環境の変化を感じ取り、 を自社 Web サイトの運用にとどめている企 自社における可能性を考えるきっかけとする 業が少なくない。特に製造業では、営業担当 企業が増えているのではないだろうか。 顧客や競合企業の動向に対する感度が高く、 によるマーケティングプロセスを持っている ことから、Web サイトは企業情報、IR 情報、 CSR 情報、採用情報が中心で、製品やサービ スについてはカタログ的な基本情報を掲載す る程度とする傾向があった。 ここで、従来は営業担当によるマーケティ ングを中心としてきた企業が、いかにして しかし、ここにきて BtoB 企業の Web サイ Web サイト活用の成功モデルを導き出した ト活用意識の高まりが見られる。その背景に かという事例を紹介しよう。いずれも NRI は、企業の Web サイトが、他の企業にとっ ネットコムが Web サイト構築を支援したも て重要な情報源になっているという事実があ のである。 る。トライべック・ブランド戦略研究所の 06 増えてきた成功事例 (1)Web サイト訪問のデータを活用 「BtoB サイト調査 2015」によると、企業に 資源エネルギー業界の A 社は、市場構造の 対して仕事上で参照する情報源を複数回答で 変化を受けて従来のマーケティングプロセス 聞いたところ、最も多かったのが Web サイ を見直さざるを得なくなっていた。新規事業 トで 54.2%の企業が挙げたという。 者の参入による顧客流出の恐れを感じていた | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. のである。しかし、そ 図 1 顧客認知ゾーンのイメージ れまでは相手からの働 き掛けを待つ受け身の 営業しかしてこなかっ たため、いわゆる顧客 理解に欠け、どのよう に顧客へアプローチす るべきかを定めきれず にいた。 通常、企業の法人営 業部門には顧客リスト があり、商談、展示会 やセミナーでの名刺交換などで得た顧客情報 十分でないなかで仮説シナリオを描くより を管理している。それは顧客単位でまとめた も、手元にある資産を生かして顧客を “見え 営業リストでもあるが、そのリストに、自社 る化” することから始めたのである。来訪企 サイトの来訪企業の名前が含まれているケー 業を特定して顧客リストと突き合わせること スはまれだ。先に述べたように企業が情報収 で、購買可能性の高い企業を洗い出し、その 集手段として Web サイトを利用する割合は 顧客の Web サイト訪問の目的について仮説 高く、その企業が営業ターゲットでありなが を立てることが顧客理解への第 1 歩となる。 ら、自社サイトを訪問する企業を観察してい (図 1 参照) る企業は少ないのである。 (2)商機予測に“顧客の今”を活用 Web サイトを訪れたのがどの企業かが分 次に、地域別の営業体制を敷いている中 かれば新たな見込み顧客の発見になる。その 堅機械メーカーB 社の事例を紹介する。営業 企業の名前がすでに顧客リストに載っていた 担当は、管轄エリアを中心に既存顧客のフォ ら、休眠顧客を発見したことになるかもしれ ローと新規顧客開拓の両方を業務としてい ない。従来の顧客リストだけに頼っていて る。B 社は既存顧客への営業活動の品質向上 は、Web サイト訪問という顕在化した行動 により他社との差別化を図りたいと考えてい がありながら、それを顧客獲得の機会とする たが、新規顧客開拓もしなければならないた 可能性を逃してしまうのだ。 め思うように取り組めていなかった。 そこで A 社は、顧客が集まる場所としての そこで B 社は、サービス品質を落とさずに Web サイトに着目し、従来から運営してき 営業効率を上げる方法として、部品や消耗品 た企業向け製品・サービスの自社 Web サイ を中心とする小規模な EC サイトを立ち上げ トにアクセスしてきた企業を特定して閲覧行 た。事務員による電話受け付けも併用し、顧 動を計測するツールを導入した。顧客理解が 客の利用機会を増やしただけでなく、部品や 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 07 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 消耗品の販売情報を、 図 2 顧客行動分析フローとシステムの概略 納品した機械の状態を 知るヒントとして生か すこともできるように し た の で あ る。EC サ イトを利用しない既存 顧客に対しては、他社 製品を検討している可 能性もあるため、営業 フォローを厚くして流 出防止に努めた。 顧客リストやテクニカルサポート情報など C 社が属する業界の特性として、企業ごと は、顧客接点での履歴という過去の状態を示 に得意とする専門領域があり、自社商品の優 した情報にすぎない。その情報に、Web サ 位性を訴求しやすい環境がある反面、商品の イトから得られる “顧客の今” を掛け合わせ 技術的な情報は顧客にのみ開示できるように ることで、鮮度の高い営業材料の収集と確実 し、競合他社には知られないようにする必要 な商機の予測を可能にしたのである。また、 がある。 営業フォローの最適化は、顧客満足度の向上 そこで C 社は、閉じた環境で情報を発信す に役立つとともに、そこで蓄積されたノウハ る会員制の Web サイトを新たな顧客接点と ウが他社との差別化につながった。 して立ち上げ、自社の強みとなる領域を中心 BtoB 企業の既存顧客に対する営業プロセ に、顧客が興味を引かれる会員限定コンテン スでは、顧客リストと納入した製品情報から ツを提供することで顧客の会員化を促した。 営業シナリオを作成するケースが多い。いわ Web 会員となった顧客には、その顧客の専 ば過去の履歴を材料に未来の商機を予測する 門領域の最新情報を Web サイトや E メール のだが、この事例のように、今現在の顧客の を通じて得ることができるようにした(図 2 状況も予測材料に加えることは有効である。 参照)。コンテンツはスマートフォンやタブ (3)Web 会員化で営業機会を拡大 08 レット端末などのモバイルでも見やすいもの 近年の法人営業では、オフィスのセキュリ とし、手軽に閲覧してもらえるようにした。 ティ強化やコミュニケーション手段の変化を C 社では、会員情報と Web 上の閲覧履歴 背景に、事前の承諾がない訪問営業が減って を合わせて分析し、顧客ニーズを把握する。 いる。化学工業材メーカーC 社では、このよ また、分析を基に訪問材料を準備して、登録 うな訪問営業をめぐる環境変化によって減っ されたメールアドレス宛てに次回訪問のアポ てしまった顧客接点をどのように強化してい イントメントを申し込むようにしている。顧 くかが課題となっていた。 客にとって興味のある有益な情報を用意する | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. のである。 (2015 年 7 月発表)によると、Web サイト を開設している企業の割合(2,136 社が回答) (4)従業員の家族を接点にして組織力を向上 は 87.1%、製造業では 84.6%である。従業 自社の Web サイトを組織力の向上に役立 員規模別では、300 人以上の企業になると平 てている事例もある。グローバルな製造業の 均して 96%にもなっている。 D 社はカンパニー制の組織構造を持っていた Web サイトの内容はさまざまだが、BtoB が、それぞれが独立していることによる壁を 企業の場合、多くはカタログ的な製品情報や なくして企業全体の一体感を醸成したいと考 会社案内を中心としており、ページビューや えていた。 訪問といったアクセス数で効果を測定するこ そこで D 社は、従業員の家族を対象にし とが多かった。 しかし、今や企業の情報収集手段は変わっ 起こそうと考えた。そしてジュニア層(小学 た。また、モバイルの普及や顧客接点の多様 校高学年)をメインターゲットとする数十の 化により、世の中の情報伝達経路やコミュニ コンテンツを制作し、同社の製品が豊かで安 ケーションスタイルも変わった。その変化を 全な暮らしに貢献していることを表現した。 うまく利用することに成功する企業も現れ始 Web サイトを閲覧した子どもたちの反応は めた。情報の流れやチャネルの役割が変わ 非常に良いものだった。 り、企業が Web サイト活用の可能性に気付 き始めたのである。 して訴える活動は、主に社内のイントラネッ Web サイト活用の目的や用途は、顧客分 トサイトで行われるケースが多い。しかし D 析、顧客とのコミュニケーションを円滑にす 社は一般に公開された Web サイト上にコン るため、顧客ニーズを推測して営業活動につ テンツを置いて、誰でも閲覧できるようにし なげるマーケティングプラットフォームとし た。カンパニー制を取る各事業の価値や企業 て、企業内外へのブランディングの手段とし 全体の価値を再認識してもらうためには、従 てなどとさまざまだ。特有の商習慣や顧客特 業員の家族にコンテンツを見てもらうこと、 性を持つ BtoB 企業では、各社各様の Web サ すなわち従業員と企業の間に家族という接点 イト活用のあり方があっていい。 を加えることが有効と考えたのだ。 │ 増えてきた成功事例と可能性の広がり │ た Web サイトによって企業への関心を呼び このような、自社が目指す姿を従業員に対 BtоB企業のWebサイト活用のあり方 ことで、訪問営業のチャンスを得やすくした 市場変化や法制度の影響を受けやすく、ま た、今後ますます市場がグローバルに広がっ Web サイト活用のあり方は ていくなかで、BtoB 企業の Web サイト活用 各社各様 を考えるには広い視野を持つことが必要だ。 企 業 が 自 社 の Web サ イ ト( ホ ー ム ペ ー 果と、そこに至る道筋を定めてみると、自社 ジ)を持つようになってから 10 年以上が経 にとって有益な Web サイトのあり方が見え つ。総務省の「平成 26 年 通信利用動向調査」 てくるのではないだろうか。 企業を取り巻く大きな枠組みの中で目指す成 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ■ 09 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム オンライン広告の技術動向 ─ 配信対象は「枠」から「人」へ ─ Web サイトの閲覧時に表示されるオンライン広告は、広告技術の進歩によ り配信の仕組みが急速に変化している。本稿では、ターゲティングの高精度 化や費用対効果の向上を実現する最近のオンライン広告の技術動向について、 事例を交えて紹介する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web インテグレーション事業部 テクニカルコンサルタント かんざき け ん た 神崎 健太 専門はデジタルマーケティングに関するコンサルティング 進化するオンライン広告 オンライン広告の費用対効果を明確に把握 ここ数年を見ても、オンライン広告は急激 できないという問題の解決策として、ター な変化の中にある。まずはその概略と背景に ゲットを絞って広告を配信できる運用型広告 ついて確認しておこう。 と呼ばれる手法が登場している。 (1)従来型の広告配信の問題点 この広告手法では、検索されたキーワード バナー広告に代表されるオンライン広告 や、閲覧されたコンテンツなどに応じて広告 (Web ブラウザーに表示される広告)は、こ が配信されるため、広告に接する人の趣味・ れまではインターネット上に用意された広告 し好、商品への関心度などに応じて最適と思 枠に対して配信されるものであった。しか われるメッセージを伝えることができる。広 し、オンライン広告市場が活況を呈するよう 告料金は、広告を表示する機会(例えばキー になるにつれ、このような広告の効果に対す ワード検索から Web ページが表示された時 る疑問が出されるようになってきた。 など)が発生するたびに、リアルタイムの入 特定の広告枠で独占的に広告を表示する権 札方式で決定される。配信した広告の成果 利を購入する従来のこの方式は、新聞や雑 (キャンペーン広告を見た人が実際にキャン 誌、テレビの広告のように多くの人にアプ ペーンサイトを訪れたかなど)に関するデー ローチできるメリットがある。しかし、広告 タもリアルタイムで取得される。このため、 配信対象は不特定多数の人であるため、ター 広告内容の変更や広告配信の停止を臨機応変 ゲットとしたい人に確実に広告を表示できて に行うことも可能だ。 いる保証はない。また、たとえ広告対象が 従来のオンライン広告が「枠」に対する ターゲットとは違っていたとしても固定した 広告配信であったとすれば、運用型広告は 金額を支払わなければならない。そのため、 「人」に対する自動化された広告配信といえ 費用対効果が問題とされるわけである。 10 (2)新しい広告配信手法の登場 る。ターゲティングの精度が高く、従来の広 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 図 1 オンライン広告配信の概略 告配信と比べて費用対効果の面でも強みを ているオンライン広告を集中管理し、一元的 持っている。 に効果測定を行うための仕組みである。ま た、検索に連動させたリスティング広告や、 新しい広告配信を可能にする技術 閲覧されたコンテンツに連動させたディスプ では、このような新しい方式の広告配信を 測定を一元的に行うことも可能である。 実現するためにどんな技術が用いられている のだろうか。ここでは 3 つの段階に分けて解 説しよう。 (図 1 参照) (1)さまざまな広告技術の利用 レイ広告など、さまざまな形式の広告の効果 ②媒体側の広告技術 媒体側の広告技術の代表例は、広告を表 示する機会が発生するたびに DSP と連動し て入札のやり取りを行う SSP(Supply Side 広告配信に関わる技術は、広告主側の技術 Platform)である。入札はほとんどリアルタ と、広告を掲載する媒体側の技術に大別する イム(ミリ秒単位)で行われ、オンライン広 ことができる。 告を見ている人は、このような複雑な取引に ①広告主側の広告技術 よって広告が表示されていることに気付くこ 広告主側の技術としてまず挙げられるの が、 広 告 配 信 先 の 買 い 付 け や タ ー ゲ テ ィ ング(広告対象者の抽出)などを行う DSP (Demand Side Platform)である。 とはない。 (2)広告配信プラットフォームの導入 上に挙げた技術を利用したサービスは効率 的な広告配信を実現したが、その一方で、こ 次に、第三者が提供する広告配信用サー れらのサービスが多数登場するにつれ、広告 バーの 3PAS(Third-Party Ad Serving)があ の入稿や成果の評価などの運用作業は非常に る。3PAS は、複数の DSP を利用して配信し 煩雑なものとなった。そこで登場したのが広 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 11 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 告配信プラットフォームである。 た多様かつ詳細な分析を行えるようになる。 広告配信プラットフォームは、広告主が広 もう 1 つのメリットは人的作業の負荷を軽減 告を配信するために必要となる機能をそろ できる点だ。前述のように、運用型広告はリ え、運用作業やサービスの選定にかかる手間 アルタイムに成果を確認して広告の変更や配 を削減する。そのため、大規模な広告施策で 信停止ができるが、それには人の判断が必要 あっても、 「人」にターゲットを絞った広告 となるため、少なからず手間がかかる。2 つ 配信を行いやすくなる。 のプラットフォームを連係させると、このよ (3)デジタルアナリティスクプラットフオー うな人の判断を半自動化することができる。 ムとの連係 次の段階として重要になるのが、Web サ イトのアクセス解析を行うデジタルアナリ ティクスプラットフォームとの連係である。 オンライン広告施策の最適化に取り組んで デジタルアナリティクスプラットフォーム いる大手家電メーカーの事例を紹介しよう。 には、Web サイトを訪れた人の詳細な行動 同社は、2 つのプラットフォームの連係に データが蓄積されている。それらの多様な よって次のような課題を解決することに取り データの中から、特定の行動パターンを示し 組んでいる。 たユーザー群を抽出し、広告配信プラット ①潜在顧客への有効なアプローチ方法を確立 フォームに連係させると、例えば「広告を見 た後に検索サイトで検索し、その結果に基づ 12 広告施策最適化の取り組み事例 すること ②コンバージョンへの影響を媒体ごとに正し いて Web サイトを訪問し、商品購入の直前 く評価すること に離脱した女性」を抽出し、その人に広告を ①については、自社サイトを訪問した人の 配信するといった高度なターゲティングも可 行動データに基づく追跡型広告を実施してい 能となる。 る。例えば、価格比較サイトから自社の商品 2 つのプラットフォームの連係には、ター 詳細ページを訪問した人は潜在顧客である可 ゲティングの高度化以外にも 2 つの大きなメ 能性が高い。そこで、そのような人を抽出 リットがある。1 つは、両者のデータを統合 し、その人に向けて広告を配信する。これに して分析できるようになる点だ。それぞれの より、表示課金型(表示されるごとに料金が データを統合すると、コンバージョン(商品 発生する)バナー広告へのクリック率が増え 購入や資料請求などの成果の獲得)に至るま たことで、クリック単価を従来比で 3 割程度 でに接触した媒体について、広告・非広告 削減することに成功している。 を問わず可視化することが可能となる。ま ②に関しては、広告の表示がコンバージョ た、広告配信データに関しては、クリック発 ンへ与えた影響を可視化している(図 2 参 生の有無を問わず、表示された広告について 照)。すなわち、広告を目にした人のうち、 Web サイト内での行動データと組み合わせ 何人が自社サイトに来訪し、そのうちの何人 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. オンライン広告の技術動向 図 2 コンバージョンに対する広告表示の影響の可視化例 ます拡大している。POS システムや CRM(顧 これを、広告を目にしていない人(広告以外 客関係管理)システムのデータはもとより、 の集客施策によって来訪した人)のコンバー 今ではセンサーデータなども解析の対象とし ジョン率などと比較すれば、広告表示の影響 て収集できるようになってきている。 が具体的な数値として可視化される。これに これらのデータをオンライン広告配信のた より、バナー広告のように表示自体が認知に めの材料として活用できれば、今以上に精緻 つながる広告媒体への費用投下に関わる判断 な広告配信を行えるようになる。例えば、冷 を正しく行えることが期待できる。 蔵庫の中に何が入っているかというデータに コンバージョンに対する集客媒体の貢献度 基づいて食品や飲料の広告を配信したり、ヘ 合いも算出できる。スピードが求められるオ ルスケア端末が持つ健康状況に関するデータ ンライン広告施策では、多種多様な集客媒体 を利用してフィットネスクラブやサプリメン 間の費用バランスを適性化するのは難しい トの広告を配信したりすることも可能になる が、デジタルアナリティクスプラットフォー だろう。 ムを利用すれば、広告媒体だけでなくソー 広告に活用できるような、生活に即した各 シャルメディアなどの非広告媒体も含めて、 種のデータを大量に収集することはこれまで 自社サイトへ顧客を誘導する集客媒体全体の は難しかった。しかし、今ではそれも可能に 費用バランスの検討が容易になる。 なってきている。オンライン広告の効果をさ │ 配信対象は「枠」から「人」へ │ がコンバージョンに至ったのかを確認する。 らに高めていくために、広告技術の動向を把 より精緻な広告配信に向けて 握するとともに、このような新しいデータの デジタルマーケティングの対象範囲はます えている。 活用方法を考えていくことが重要であると考 ■ 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 13 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 大学生協のデジタルマーケティング ─ 決済データとスマートフォンの連係によるサービス ─ NRI ネットコムは 1991 年の会社創立時から、全国大学生活協同組合連合会 所属の大学生協(東京地区を除く)の POS システムなどを構築し、最近で は決済データとスマートフォンアプリを連係させたサービスを提供するシス テムも構築している。本稿では、大学生協の新しいマーケティングの取り組 みについて紹介する。 NRI ネットコム コー・ネット事業本部 コー・ネット事業推進部 事業推進課長 き む ら ゆうぞう 木村 勇三 専門は企画・営業マネジメント、大学生協向け営業 大学生協での新しいマーケティ ングの取り組み 大学生協の中には電子マネーによる決済率 が 90%を超える店舗がある。システムには、 ことによってポイントを獲得できる。 組合員提案型の CLO 誰が、いつ、どこで、何を買ったかという情 クレジットカードやデビットカードなどの 報が蓄積され、これらの膨大な決済データを 会員に、利用履歴に応じた特典を提供するこ 分析すれば、商品の販売動向を把握すること とを CLO(Card Linked Offer)という。CLO も可能になってきた。一方、学生にはスマー はビッグデータ時代のマーケティング手法の トフォンが浸透し、これまでダイレクトメー 1 つであり、カード会員の年齢や性別、住所 ルや E メールで行ってきた販促がスマート といった属性情報や利用履歴などの多種多様 フォンアプリを利用したものへと切り替わっ なデータに基づいて顧客分析を行い、個々の てきた。 会員のニーズに適合した優待やポイント還元 決済データの分析によって組合員のニーズ などのサービスを提供するものである。これ を発掘し、スマートフォンアプリを活用して を大学生協の電子マネーに適用したのが上述 ニーズに合ったサービスを提案する取り組み のサービスである。 を始めた大学生協も現れている。ある大学生 事業者にとっての CLO のメリットは、バッ 協では、店舗での電子マネーの利用回数に応 チ処理によって同じポイントを全員に発行す じて組合員をセグメントに分け、「ある商品 るなどの “ばらまき” 型のサービスとは異な を購入したら、その金額に応じてポイントを り、配信した特典の効果を利用履歴に基づい 進呈します」 (提供するポイントなどはセグ て検証することが容易なため、販促企画の有 メントによって異なる)といった情報を、ス 効性を高めていけることである。 マートフォンアプリを通じて組合員に配信し 14 ている。組合員は店舗でその商品を購入する 大学生協における CLO も、一般的な決済 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 連係型クーポンと同様の要素を持つが、その 自動的に行われるため、現場スタッフの手間 特徴は「デジタルマーケティングの要素を含 も軽減される。 んだ “組合員提案型” の CLO」といえる点で ある。例えば、販売履歴データから、ある時 間帯に集中的に購入される食堂のメニューを 割り出し、その時間帯を避けてそのメニュー 最適な特典設計を可能にする ために を購入したらクーポンが得られることをス CLO では、対象者に的確な情報や価値の マートフォンなどを使って知らせる。こうし 高い特典を提供するための “特典設計” が重 た提案によって利用時間帯を分散させられれ 要である。そのために、さまざまなサービス ば、それは組合員の利便性も向上させること における利用履歴、決済履歴のデータを連係 になる。 させることが必要になる。 また、きちんと朝食を取ったり、必要な栄 また、規模も事業環境も異なる多くの大学 養をバランスよく摂取したりできるようにす 生協のシステムでは、汎用的な特典設計のほ る食育や、勉学に必要な書籍など、大学生協 かに、組合員や現場スタッフの意見も取り入 ならではの提案に電子マネーのデータを活用 れながら、各生協の特徴に応じた独自の特典 することも可能である。 設計ができることも求められる。同時に、現 特典や提案を組合員に届けるためには、学 場スタッフが、スマートフォンアプリを活用 生にとって非常に身近な存在であるスマート したサービスの提供や、各種ソリューション フォンのアプリを利用することが有効と考え のデータに基づいたマーケティング活動を られる。例えば、組合員が学生証や組合員証 ルーチン化できるように、システムでサポー などで電子マネー決済する際に、アプリを通 トしていくことも必要である。 じて自動的に特典が適用されるようにするこ NRI ネットコムでは、POS、電子マネー決 となどである。こうすれば、精算時にスマー 済、組合員情報管理のシステムをさらに他の トフォンの画面を見せる必要もなく、特典を システムと連係させていくことも検討してい 利用し損なうこともない。 る。また、大学生協のサービスだけでなく、 組合員にとっての CLO のメリットは、自 組合員が利用しているさまざまなサービスの 分のニーズに合った特典が得られやすくなる アイデンティティー情報(ID やパスワード) ことであり、スマートフォンと組み合わせる を一元管理することにより、これまで以上に ことでサービスの価値がより高まる。 価値の高い多様な提案を組合員に行っていく 大学生協の側では、組合員のセグメントに ことも展望している。このように、NRI ネッ 応じた商品単位の高精度のキャンペーンや、 トコムは、さまざまなシステムのデータを有 複数店舗にまたがった販促企画の提案も可能 効活用した、利用価値の高いサービスを実現 となる。また、物理的な特典の発行に要する するトータルソリューションを、お客さまと 手間が不要になり、特典利用に関する処理は 共に追求していくつもりである。 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ■ 15 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム ペーパーレス会議のさまざまなメリット ─ タブレット端末を活用した「モバイル会議」─ 企業ではペーパーレス化(紙使用量の削減)に以前から取り組んでおり、業 務の多くの部分は電子化されたが、会議などではいまだに紙の資料が使われ ることが多く、ペーパーレス化は思ったように進んでいないのが現状である。 本稿では、NRI ネットコムの「モバイル会議」の紹介を通じてペーパーレス 会議のメリットを解説する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 デジタルマーケティング事業部 ビジネスプロデューサー たかしま ひ で み 髙島 秀実 専門はペーパーレス会議システムの企画・営業 ペーパーレス化は継続的な課題 確かに、ホワイトカラーの社員が 1 人 1 台 の PC を持つ環境は当たり前になり、個人に 最近、 「ワークスタイル改革」というキー よる資料づくりなどのオフィスワークはほと ワードを目にする機会が多くなった。そのた んどが PC を使って行われるようになってい めの展示会なども開催され、注目度は増すば る。またオフィスには、原稿をスキャンして かりである。ワークスタイル改革にはさまざ 電子ファイル化するなど、紙を削減するため まな要素があるが、その 1 つであるオフィス の機能を備えた複写機(複合機)が多く導入 ワークのペーパーレス化は、コスト削減だけ されている。それでもオフィスで使われる紙 でなく環境保護という観点からも必要性が叫 の削減は思うように進まず、打ち合わせなど ばれ、継続的に取り組まれてきた大きなテー の会議に紙の資料を用意する企業はいまだに マである。 多数である。ペーパーレス化を推進するので しかし、それにもかかわらず企業内ではい あれば、会議のペーパーレス化(ペーパーレ まだに多くの紙が使われている。日本製紙 ス会議)に本気で取り組む必要があるのでは 連合会が発表した「2015(平成 27)年 紙・ ないだろうか。 板紙内需試算報告」によると、2014 年の情 報用紙(コピー用紙、インクジェット用紙、 ノーカーボン紙、感光紙、感熱紙など)の国 16 ペーパーレス会議のメリット 内需要は 183.2 万トン(報告時点では年間見 ペーパーレス会議には、用紙コスト、印刷 込み数値)で、対前年比 99.6% のわずかな コストの削減という大きなメリットがある 減少でしかない。このような傾向は過去数年 が、それ以外にも重要な点がある。大きいの 続いている。数字で見る限り、オフィスの は、会議の質の向上である。通常の会議で ペーパーレス化はそれほど大きくは進んでい は、発表者(発言者)が参加者に資料のある ないようである。 箇所を見てほしいと思っても、参加者は各人 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. の興味に従って別の部分を見ているかもしれ (NRI)グループでも、2005 年~ 2007 年頃 ない。ペーパーレス会議の場合はスクリーン から全ての会議室、打ち合わせブースにプロ や手元のモニターに、発表者が見てほしいと ジェクターやディスプレイを設置し、全社員 思うものを表示できるので、論点に集中する にノートパソコンを配布してペーパーレス化 ことが容易になる。会議の進行もスムーズ を進めている。この方式は、少人数の打ち合 で、時間の節約にもなる。事前に資料のファ わせの場合は手軽で便利であり、また報告会 イルを会議用のサーバーに格納して、参加者 やセミナーなどの大会場で一方的にプレゼン が内容を把握できるようにすれば、中身の濃 をするような場合にも適している。しかしそ い議論ができる。 の場合でも、人数が多くなって会場が広くな また、会議資料の準備(資料のプリントな るほど遠くの人はスクリーン上の文字が読み ど) 、会議後の資料の回収・保管・管理・廃 にくくなるので、結局はプレゼン資料という 棄などの事務作業を大幅に減らせるので、手 紙の文書が欲しくなる。また、大きな効果を 間やコストを大きく削減できる。遠隔会議に 上げるためには大規模な投資(全社展開)が 利用すれば、出張旅費の削減にもつながる。 欠かせないため、多くの企業で導入できるわ そのほか、会議資料が電子ファイルであれ けではない。 ば、紙の資料より情報セキュリティを強化し やすいというメリットもある。 ③は、会議参加者に 1 台ずつタブレット端 末を持たせ、画面に会議資料を表示するもの で、手軽で安価なシステムでありながら本格 ペーパーレス会議の 3 つの方法 的なペーパーレス会議を実現する。説明者が 現在、ペーパーレス会議の実現方法として メントと参加者の画面とを同期させることが 持つタブレット端末の画面に表示するドキュ は、主として以下の 3 つがある。 でき、参加者は手元の画面で細かい部分を確 ①専用の会議システムの利用 認することが容易である。これによって会議 ②プロジェクターや大型ディスプレイを使っ の進行もスムーズになる。遠隔地との間でも た会議資料の表示(PC 画面の拡大表示) 同期させることができるので、本支店間の遠 ③タブレット端末などをモニターとして利用 隔会議などにも利用できる。 ①は、会議室などに備え付けられた専用シ この方式の始まりは、2010 年の Apple 社 ステムで、各デスクにはモニターが装着され の iPad 発売を機に NRI ネットコムが提供を ている。以前から利用されてきた歴史のある 開始したペーパーレス会議システム「モバ 方式だが、高価で、移動させることもできな イル会議」である。「モバイル会議」は損保、 いため、導入は大企業の役員会議室などごく 運輸、不動産、食品などの大手企業を中心に 一部にとどまっている。 導入事例が豊富で、現在では類似の製品も多 ②は、ペーパーレス化を推進している多く の企業で採用されている。野村総合研究所 く登場するなど、ペーパーレス会議を実現す る方式の 1 つとして定着しつつある。 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 17 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム ペーパーレス会議導入のネック する役員が 1 人でもいると導入が進みにくい のが実情である。 タブレット端末を利用した手軽なシステム の登場で、ペーパーレス会議の導入が進むと 思われたが、そのペースは決して速くない。 導入企業でも、経営レベルの会議にとどま では、どうすればペーパーレス会議を導入 り、部課のレベルで使われている企業はまだ しやすくなるだろうか。ここでそのポイント まだ少ないのが現状だ。「モバイル会議」も、 について考えてみたい。 短期間で導入に至る企業がある一方で、1 ~ 一般に、会議のやり方や会議資料のフォー 2 年の検討の後に話が立ち消えになる企業も マットなどは、企業風土を色濃く反映してお 多い。われわれの経験に基づいて分析する り、その企業の文化とも呼べるものである。 と、ペーパーレス会議が浸透しないのは以下 本格的なペーパーレス化を進めるには、その のような理由によると考えられる。 文化を変えるという決断も必要となる。その ① IT 環境の制約 ため、経営トップの理解とリーダーシップが タブレット端末を使うモバイル会議システ 重要となる。その上で、実際に始める際は、 ムは、WiFi(無線通信規格の 1 つ)環境が未 まず経営層が参加する役員会議などでの導入 整備のために導入できない企業がある。また から始めるとよい。ペーパーレスの役員会議 環境が整備されていても、情報セキュリティ が定着すれば、各役員が管掌する部門での利 の観点から社内での WiFi 利用について制限 用に広がっていく。その後、部課レベルでの を設けている企業が多い。 利用を促進するためには、特定の会議スタイ ②画面サイズの制約 ルにとらわれない、自社の IT 環境に即した 伝統的企業を中心に、今まで A3 判の用紙 18 ペーパーレス会議導入のポイント 仕組みを選択すべきである。 で会議資料を作ってきた企業は非常に多い。 また、ペーパーレス会議は紙の資料をベー タブレット端末は画面サイズが小さいので、 スとした会議と完全に同じにはならないこと その資料をそのまま使うと資料が見えづらく を理解する必要がある。紙には紙の良さがあ 使いにくい。 るので、全てをペーパーレスにしようと考え ③ PC との重複 なくてもよい。ペーパーレス化の検討に際し 前述のように企業では社員にノート PC な ては、会議(準備や会議資料)の何を変えて どを配布していることが多い。新たにタブ 何を維持するのか、事前によく話し合うこと レット端末を配布するのは PC との重複感が が重要だ。何を目的とし、何を重視するかに あり、コスト面でも抵抗がある。 よってツールの選択は異なり、ツールの導入 ④経営幹部の紙への固執 で全てが解決するわけでもない。ペーパーレ これまでの習慣を変えることへの抵抗感を ス化のメリットを享受するためには、会議運 持つ人は少なくない。ペーパーレス化に反対 営のプロセスや会議資料の作り方についても | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ペ ー パ ー レ ス 会 議 の さ ま ざ ま な メ リ ッ ト 図 1 「モバイル会議 3」の構成イメージ 保存資料の取り出し (Windows 限定) お客様センター内 会議フォルダ サーバー保存資料 会議前アップロード メモ付き資料 取り出し 【事務局担当者】 ・参加する一般ユーザー ID と権限を登録 ・会議資料を PDF ファイルに変換 ・会議資料アップロード、削除 ・資料単位の保存、メモ可否を設定 PC からブラウザーを利用し、タブレット アプリと同じ ID/PW でサーバーにログイン して資料を取り出す 社内ネットワーク Windows 端末で「保存」ボタン 押下時にサーバーにも自動保存 Windows 端末 iPad メモ付き 資料 会議資料 xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx xxxxxxx │ タ ブ レ ッ ト 端 末 を 活 用 し た 「 モ バ イ ル 会 議 」 │ iPad と Windows 端末の混在可 検討すべきである。 としている。情報セキュリティを担保した社 内利用ルールを整備した上で、WiFi 環境を 導入が一気に進む兆し 社内インフラとして整備する企業も増えつつ 最近、NRI ネットコムでは、 「モバイル会 今後、一気に進む兆しと考えていいのではな 議」を導入して効果を実感したお客さま企業 から、あらためて全社に展開したいという相 ある。これらは、ペーパーレス会議の導入が いだろうか。 NRIネットコムでもこうした流れを受けて、 談をいただくことが多い。これまでの導入実 Windows 環境でも利用できるようにした「モ 績を基にしたペーパーレス化検討のためのコ バイル会議 3」を発売した(図 1 参照)。「モ ンサルティングサービスを提供するケースも バイル会議 3」は、現行製品のユーザーイン 増えている。 ターフェースを踏襲しつつ、ペーパーレス会 部課レベルを含むペーパーレス会議の全社 議システムを超えて、全社のインフラとして 展開には、これまでタブレット端末の配布 利用できるようアーキテクチャーを一新して や WiFi 環境の整備がネックとなっていたが、 いる。「モバイル会議 3」が、全社レベルの タブレット端末がオフィスに徐々に浸透して ペーパーレス会議の実現と、さらにはペー きていることから WiFi 環境の整備も進んで パーレス化を通じた企業活動の一層の活性 きた。PC をタブレット端末に入れ替える動 化、情報セキュリティの向上に貢献できるこ きも見られ、これらによって状況が変わろう とを願っている。 ■ 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 19 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 変化に強い Web デザインとは ─ 改善や拡張が容易な Web サイトの設計 ─ Web デザインというと、「デザイン」という言葉を含むことから、とかく見 た目ばかりが注目される。確かに、実際に姿や形を描くことはデザインにとっ て重要だが、どう描くかという計画(設計)にこそデザインの本質がある。 本稿では、改善などの変更が容易な Web デザインとはどういうものか解説 する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web テクノロジーコンサルティング部 フロントエンドエンジニア た か す か 高須賀 じゅん 淳 専門は Web サイトの設計、フロントエンドの実装など Web デザインを取り巻く環境 ど 大 き な 変 化 は な い。HTML(HyperText 日本でインターネットの商用利用が始まっ 述するための言語)や CSS(Cascading Style て 25 年余りがたった。当初は表示技術の乏 Sheets:Web ページを構成する要素の色や しさから文字や画像を組み合わせて表示する サイズなど視覚的表現を定義するための言 程度だった Web ページは、映像も取り込み、 語)、JavaScript(Web ページに動的要素な ユーザーの操作に反応する双方向性を持った どの機能を追加するための言語)は 1996 年 メディアとして発展し続けてきた。 にはすでに Web ブラウザーに実装されてい Markup Language:Web ページの構造を記 また、スマートフォンやタブレット端末な た。現在ではそれぞれの言語の役割が明確に どの新しいデバイスの登場、無線接続環境の 定義され、国際的に標準化されている。 (図 整備などにより、さまざまな場所や状況でイ 1 参照) ンターネットが利用できるようになった。イ ンターネットで提供されるサービスも、通販 しかし、仕様が標準化されていても、意図 図1 Web デザインの実装における 3 要素 だけでなく公共サービスや金融サービスなど さまざまな分野へと広がっている。 このようなインターネットの利用拡大にと もなって、サービス利用のしやすさや Web サイト(Web ページのまとまり)の使い勝 手の良さなど、ユーザーエクスペリエンス (経験価値)の向上が求められるようになっ ている。 一方、Web デザインを実装するための技 術に目を向けると、20 年程前に比べてさほ 20 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. する Web サイトを実現するためにそれぞれ ③表示パフォーマンスについての考慮が必要 の仕様をどう組み合わせるかは設計者の判断 ユーザーが利用している通信環境はさまざ に委ねられる。それは Web サイトの規模や まであり、特にスマートフォンのようなモバ 目的によっても違ってくるため、Web デザ イル機器は、場所によって通信速度が遅くな インの内容は千差万別である。以下で述べる る場合や、通信が遮断される場合がある。新 のは、多様な Web サイトの中でも、基幹系 しい通信環境が高性能であるとは限らないの システムと連動し、高いレベルの品質と可用 である。そのため、表示になるべく時間がか 性が必要で、利用者が多い大規模な Web サ からないようにするなど、表示パフォーマン イトの設計についてである。 スについての考慮も必要となる。 以上の課題に加えて、Web デザインは見 Web デザインにおける課題 た目のことだと考えるシステム開発者が多 まず、Web デザインにおける課題を挙げ 理解が進まないことも問題として挙げておき ておこう。 く、Web デザインの設計についての正しい たい。 ①プログラミングによる視覚表現の難しさ Web デザインは、主として HTML、CSS、 JavaScript といったプログラム言語を組み コンポーネント設計の有効性 合わせることによって実装される。すなわ HTML においては、再利用性を高めるため ち、Web ページの視覚表現がそれらの言語 に、繰り返し使用される部品をコンポーネン によってプログラミングされ、Web ブラウ トとして定義しておくのがセオリーである。 ザーがそのプログラムを解釈して描画処理を 運用が長期間にわたる場合でも、各部品を定 行いデザインされた視覚表現を行う。このよ 義し直すことで新たなニーズに対応できるた うに、Web デザインはプログラミングによっ め、全部を作り直さずにデザイン品質を維持 て視覚表現を行うため、一般の造形のように することが容易である。 結果を見ながら作業するのとは違う難しさが ある。 ②閲覧環境の変化を考慮した拡張性が必要 (1)コンポーネント設計とは コンポーネント設計は玩具のレゴブロック に例えると理解しやすい。レゴブロックは、 Web サイトはさまざまなデバイスで閲覧 さまざまな部品を組み合わせて大きな形状を されるため、それらの違いに対応できる拡張 造形できるようにするために、ブロック同士 性が求められる。例えば、処理能力が低いデ を接続する部分の形状は変わらないように設 バイスを考慮してコンテンツのデータ容量を 計されている。 抑えることや、新しいデバイスや閲覧環境に Web デザインにおけるコンポーネント設 よる操作方法の変化に対応できるような設計 計も、見出しや文章、リスト(一覧)、入力 とすることが必須である。 フォーム、ボタンなどを再利用しやすい単位 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 21 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 図2 Web ページ上のコンポーネントの例 図3 OOCSS によるコンポーネント設計の概念 1 つ)としてまとめ、背景色部分のクラスセ レクターをそれぞれ作る。CSS では 1 つの要 素に複数の属性を指定でき、赤いボタンに は「共通クラスセレクター+赤色背景クラス セレクター」、青いボタンには「共通クラス セレクター+青色背景クラスセレクター」を 適用する。このように、共通部分、異なる部 で切り出して HTML ソースコードの部品(コ 分を別々に定義しておくことでクラスセレク ンポーネント)としてまとめ、これに装飾を ターの再利用が可能になり、多様な表現の設 適用するようにして、Web サイト内の複数 計が容易になる。 の箇所で部品を繰り返し利用できるようにす ることである(図 2 参照)。レゴブロックと 前述したように、コンポーネント設計と 同様に、部品の組み合わせに不都合がない合 は、 よ く 使 用 さ れ る 部 品 を そ れ ぞ れ コ ン 理的な設計が要求される。 ポーネントとしてまとめておくことにより、 (2)OOCSS を取り入れたコンポーネント 設計 22 (3)一貫性のある視覚表現と拡張性の実現 Web サイトの各所で繰り返し使用できるよ うにする設計方法のことである。例えば、 最近では OOCSS(Object-Oriented CSS: ヘッダー部分に配置されるヘルプボタン、検 オブジェクト指向 CSS)を取り入れたコン 索フォームの横に配置される検索実行ボタ ポーネント設計が登場している。コンポーネ ン、パーツの開閉を実行させるボタンなどは ントの粒度を変化させて、組み合わせの自由 共通してよく使用される部品である。 度を高めたものである。例えば、図 3 のよう コンポーネントを使い回すこつは、部品と に 3 つのボタンが配置され、ボタンの大きさ レイアウトを別のコンポーネントとして用意 や文字サイズは同じで、背景色がそれぞれ赤 することである。そうすれば、ボタンの装飾 色、青色、緑色だとしよう。 がレイアウトに影響することはなく、レイア この場合、ボタンの大きさや文字サイズは ウトが変わってもボタンの装飾が変わること 共通のクラスセレクター(CSS において Web はない。また OOCSS の概念を取り入れ、小 ページの要素にスタイルを適用する方法の さなボタン、それと組み合わせて使うフォー | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. の リ ニ ュ ー ア ル に お け る Web デ ザ イ ン に ページ全体の構成を決めるページテンプレー ついて紹介しよう。当プロジェクトでは、 トなど、粒度の違うコンポーネントを組み合 HTML、CSS、JavaScript 部 分 の 制 作 は NRI わせることで、表現の幅を広げながら視覚表 ネットコムが行い、アプリケーションへの 現に一貫性を持たせることが容易になる。 HTML 部分の取り込みは別の開発担当が実施 このようなコンポーネント設計に加えて、 した。 大規模プロジェクトの場合、要件変更やバ るかを管理するパターンライブラリーを整備 グ修正などが多く発生する。これに対応す しておけば、修正時の対象範囲が判別しやす るために、上記のように役割分担を厳密に くなり、メンテナンスが容易になる。新しい するとともに OOCSS の概念を取り入れたコ デバイスへの対応が必要となった場合にも、 ンポーネント設計を採用した。これにより、 コンポーネント単位で修正を行ってその組み HTML の部分に影響を及ぼさずにデザイン修 合わせの妥当性を検証すればよく、対応のた 正(CSS と JavaScript の部分に限定した修正) めの大掛かりな作業を回避できる。このよう を並行して行うことができ、その結果、開発 にコンポーネント設計には Web サイトの拡 期間の短縮や、HTML によるアプリケーショ 張性を高めるという利点もある。 ン開発の工数削減を実現できた。 │ 改善や拡張が容易なWe bサイトの設計 │ 各コンポーネントがどのように利用されてい (4)表示パフォーマンスの向上にも効果 変化に強いWe bデザインとは ム類、それらを配置するレイアウト、さらに また、大量の HTML 文書を効率よく制作 一般に、Web ページの表示に掛かる時間 するために、コンポーネントをまとめたスタ は サ ー バ ー サ イ ド で 20%、 ブ ラ ウ ザ ー で イルガイドを事前に作成した。スタイルガイ 80%と言われている。ブラウザー表示では、 ドは単純なコンポーネント一覧ではなく、利 画面レイアウトや装飾などの視覚表現に関わ 用方法やコーディング(ソースコードの記 るファイルの読み込みやその描画が行われて 述)例も記載したもので、標準化資料として おり、その中で、視覚表現を行う多くの部分 チーム内で共有された。 は CSS が担っている。この部分で OOCSS を さらに、異なるブラウザーやデバイスでの 活用したコンポーネント設計を行うと、上述 稼働の確認をコンポーネント単位で実施して のようにクラスセレクターの再利用ができる 障害の発生を事前に防ぎ、生産性と品質を向 ため、ファイル容量の増大が抑えられて表示 上させることができた。 パフォーマンスが向上する。 Web サイトは、新しいデバイスや機能の 実プロジェクトでの取り組み 出現などをきっかけに常に変化する特性があ ここで、野村総合研究所(NRI)が提供す 継続的に対応する必要がある。そのために、 る証券総合バックオフィスシステム「THE 改善や拡張といった変化への対応が容易な STAR」 の イ ン タ ー ネ ッ ト 向 け 機 能 サ イ ト Web デザイン(設計)が重要なのである。■ り、またユーザーエクスペリエンスの向上に 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 23 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム モバイルアプリ開発の自動化・高速化 ─ 品質と効率を向上させる組織的な開発手法とは ─ “モバイルファースト”が言われ始めて 3 年、当初は個人による開発が多かったモバイルアプリは、今では企業 による組織的な開発が主流である。その一方で、組織による開発に関して確立された方法論はまだ存在しない状 況にある。本稿では、 複雑化の度合いを強めるモバイルアプリ開発の品質向上と効率化の方法について考察する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web インテグレーション事業部 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web インテグレーション事業部 クラウドデザイン課長 さ さ き システムエンジニア たくろう 佐々木 拓郎 たかやなぎ 専門はクラウドサービスを利用したシステ ムの設計・構築 専門はモバイルシステムの設計・構築 モバイルアプリの開発事情 たアプリが人気ランキングの上位に位置する 2012 年頃から提唱されていた概念に “モ 発したアプリが上位を占めるようになってい バイルファースト” というものがある。これ る。これは、アプリの高度化や複雑化、サー は、PC よりもスマートフォンなどのモバイ バーサイドのシステムとの連係が主流となっ ル向けを優先させてシステムやアプリケー ていることにより、アプリの規模が大きく ションを開発しようという考えを表してい なっているためである。 ことが多かったが、2015 年現在は企業が開 る。この概念が提唱されてから 3 年がたとう その一方で、企業が組織的にモバイルアプ としているが、その間にもモバイルをめぐる リを開発するための仕組みはまだまだ未成熟 状況は変化している。 と思われる。その主な理由としては次の 2 点 総務省の「平成 26 年版 情報通信白書」に が挙げられる。 よると、10 代から 30 代のインターネット ①主要なモバイルデバイスの OS(基本ソフ 利用時間は、PC よりもモバイルによるもの ト)である iOS と Android 向けの開発ツー の方が長いという。これを裏付けるように、 ル(IDE)がどちらも個人で完結させられ BtoB、BtoC を問わず多くの企業がモバイル るように設計されている。 対応を打ち出している。また野村総合研究 所(NRI) の 調 査 に よ る と、 モ バ イ ル 経 済 ②モバイルアプリで大きな比重を占めるユー 表 1 モバイルアプリの開発工程と作業内容 (スマートフォン向け広告、アプリの売上高、 設 計 アプリ設計、デザイン設計 ソーシャルゲームの課金など)市場は 2011 実 装 コーディング、ユニットテストの記述 年度の約 2,200 億円から 2013 年度は 8,200 億円に急拡大している。 アプリの開発者に目を向けると、モバイル アプリの黎明(れいめい)期は個人で開発し 24 さ と し 高柳 怜士 ビルド ユーザー受け入れテスト・プロダクトな ど目的別のモジュール作成 テスト ユニットテストなど自動テストの実施 配 実機に対するテスト用展開 布 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ザーインターフェー 図 1 アプリ開発の工程と自動化ツール ス(UI)の部分は、 モジュール単位に分 割して複数人で開発 することが難しいな ど、工程の分離が難 しいために属人化し やすい。 では、組織的にモバ イルアプリを開発する にはどうしたらよいのだろうか。それは、開 一般的なシステム開発の工程と大きな違いは 発工程での作業範囲を明確にし、工程ごとの ない。モバイルならではという点を挙げれ 作業を “見える化” することである。すなわ ば、「モバイル端末への配布」があるぐらい ち、開発工程ごとの成果を “外に出す” ので である。詳しく見ると、設計や実装など、人 ある。その際には、進捗(しんちょく)報告 間の判断が必要な工程での自動化は難しい。 のように個々人の努力に依存した方法で実施 一方でビルド(ソースコードから最終的に実 するのではなく、各プロセスの中で自然に 行可能なファイルを作成すること)、テスト、 “見える化” ができるような仕組みとするべ 配布など、単純作業といえる部分では当然な きである。その方が、正確性、継続性の点で がら自動化が威力を発揮する。 有効だからである。 図 1 に、NRI ネットコムが取り入れている 自動化のフローとツールを示す。 アプリ開発の自動化・高速化 例えばビルド~配布の工程であれば、一 般的にはコードが完成した時点でビルドモ NRI ネットコムでは、工程ごとの作業を ジュールを手動で作成し、テストを実行して “見える化” するために、開発の自動化に取 エラーが出ないことを確認する。その上で、 り組んでいる。一見、“見える化” と自動化 モジュールを 1 台 1 台の端末にインストール は関係がないように思えるが、なぜ自動化が (配布)し、UI のテストをする。これらを手 有効なのであろうか。それは、自動化する上 作業で行うと、ビルド方法の間違いなどが入 では各工程の作業やインプット、アウトプッ り込む余地が大きい。 トを明確化する必要があるため、これまでは この工程を自動化すると、ソースコードを 混然一体となっていた開発の中身が必然的に バージョン管理システムに書き込んだ瞬間 整理されるからである。 に、継続的インテグレーション(CI)ツール 初めにモバイルアプリ開発における各工程 (ビルドやテストなどの一連の作業を自動化 を確認しておこう(表 1 参照)。工程自体は する)がビルド、テスト、配布などの指示を 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 25 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 出す。その実行結果が 図 2 クラウドサービスで提供される「Scirocco Cloud」の操作画面 レポートとして得られ るので、実行した本人 だけでなくチーム全体 で成功か失敗かを瞬時 に知ることができる。 自動で実行されるため にヒューマンエラーの 入り込む余地もなく、 誰がやっても同じなの で属人化も防げる。何 よりも、手作業で実行するより何倍も早い。 れにより、画面表示などの問題はある程度、 テストと配布の自動化については以下であら 回避できる。しかし、実機でしか発生しない ためて解説する。 障害もある。そのため主要な端末を集めたテ スト環境を構築するのが望ましいが、構築・ 実機テストの効率化 開発の現場でなければ実現は難しい。 モバイルアプリ開発の自動化で特に高い効 そこで最近注目を集めているのが、イン 果が得られるのがテスト工程である。モバイ ターネット経由でモバイル端末の実機を利 ルアプリの場合、テスト工程が問題となるこ 用するクラウドサービスである(図 2 参照)。 とが多いからである。 サービスの詳細は提供者ごとに異なるが、基 2015 年現在、OS に Android を搭載した端 本的には、サービス提供者が複数バージョ 末は全世界で 2 万機種近くに達し、日本国内 ンの OS の多種多様な機種を用意し、ブラウ だけでも数百機種といわれる。実際に使わ ザーなどからテスト対象のアプリをアップ れている OS のバージョンも多岐にわたり、 ロードしテストを実施できるようになってい 4 ~ 5 世代ぐらいの OS が混在している。こ る。操作時の画面をキャプチャーして保存で のため、多様な OS と機種に対応する必要は きるほか、テストの内容を記録したりプログ あっても、実際に全てをカバーすることは不 ラミングしたりすることにより、複数の端末 可能に近い。そして、モバイルアプリの障害 に対して同時にテストを実行できるものもあ の多くは特定の機種の特定の OS でのみ発生 る。課金方式もまちまちで、月額の定額課金 することが多い。 や端末単位の時間課金などがある。いずれに そこで、開発の現場でまず試みることは、 シミュレーターなどによって OS や画面サイ ズを再現しテストを実施することである。こ 26 維持コストが大きく、よほど大規模なアプリ せよ、うまく利用すると自前でテスト環境を 構築するより大幅にコストを削減できる。 クラウドサービスの実機テストの利点は、 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 発とテストがシームレスに行えるため、プロ ことだけではない。一度テストの設定を行え ジェクトに心地よいテンポ感をもたらす。こ ば、1 機種でも 100 機種でも同じ労力でテス れはアプリ開発では重要なことなのである。 モバイルアプリ開発の自動化・高速化 多種多様な端末、OS のテストを利用できる トを行える。また、多機種テストやリリース ごとの退行テスト(プログラムの改変による 影響を調べるためのテスト)も、簡単に何度 も繰り返し実行できる。 今後のアプリ開発のあり方 モバイルアプリは高度化、複雑化し、さら にアプリを利用する端末の多様化はますます は、クラウドサービスを利用したテストは必 進んでいく。この状況下で、全ての工程を手 須になるだろう。ただし、クラウドサービス 作業で行うのは現実的ではない。一方で、モ を利用しても、操作感などまで確認するのは バイルアプリの開発を支援するツールやサー 難しい。その部分については、現時点では依 ビスは日進月歩で進化している。これらをう 然として手元に実機が必要になる。 まく利用することで開発効率の向上を図るべ │ 品質と効率を向上させる組織的な開発手法とは │ 今後、モバイルアプリの開発を行う上で きであろう。 アプリ配布の自動化 また、最近では自社の開発環境にインス トールして利用するツールより、クラウド 自動化の仕組みを導入していない場合は、 サービスで利用するツールの発展が著しい。 ビルドによって作成したモジュールを直接、 自社内に閉じた開発環境を構築することにこ 端末にインストールしたり、Web サイトに だわるよりは、クラウドサービスを利用し アップロードされたモジュールをテスト実施 た方が効果的だったりするのである。ただ 者がダウンロードしたりすることによってア し、クラウドサービスの利用には、セキュリ プリ配布を行う。この作業自体は、一度だけ ティーポリシーの確認や安全に利用するため であれば大きな負担ではない。しかし、モバ の施策が必要になる。 イルアプリの場合は細かい操作感などの調整 ここまで述べたように、開発支援ツールな が何度も行われ、そのたびに配布が必要にな どを利用することにより、開発の自動化や高 る。そのため、手作業では膨大な時間を要す 速化が促進され、同時に品質面の向上も実現 ることになり、配布すべきバージョンの間違 される。また、操作感などが重要なモバイル いなども起こりやすい。 アプリ開発では、設計とテストの工程がシー 配布自動化ツールを導入すると、新しいモ ムレスに連係されたプロジェクト管理手法が ジュールが作成されるたびに、対象の端末に 有効になる。このように、本稿で述べた施策 自動で通知しインストールを促すことが可能 以外にも、品質を高めるための方法が多数あ になる。これにより、アプリ開発者もテスト るので、モバイルアプリを開発または開発を 実施者も、配布工程の作業を大幅に削減でき 依頼するユーザー部門には、併せて検討され るので、自動化の効果は極めて高い。また開 ることをお勧めしたい。 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ■ 27 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム 人型ロボットはどこまで進化したか ─ ロボットアプリケーションを開発して ─ ロボットがさまざまな分野で活用されるようになって久しいが、近年は人型ロボットへの注目が高まっている。人 型ロボットは新しいコミュニケーションツールとしての有用性を感じさせるが、現状では課題もある。本稿では、 最新の人型ロボットを動作させるアプリケーションの開発を通じて得られた知見を示し、活用の可能性を展望する。 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web インテグレーション事業部 NRI ネットコム Web ネット事業本部 Web ブランドクリエーション部 システムエンジニア きしもと システムエンジニア ゆ う き い づ の ただし 岸本 勇貴 伊 津野 匡 専門はWebアプリケーションおよびスマー トフォンアプリの設計・開発 専門は Web アプリケーションおよびスマー トフォンアプリの設計・開発 再び注目される人型ロボット ターテインメント的要素に重点が置かれてお 人型ロボットといえば、2000 年に登場し れている。2015 年 7 月には、みずほ銀行と た本田技研工業の二足歩行ロボット ASIMO 三菱東京 UFJ 銀行がそれぞれ Pepper と NAO が話題となったことはいまだ記憶に新しい。 を窓口支援業務に活用する実証実験を行い、 それから 15 年ほどがたった 2015 年 5 月には 福岡の商業施設では Pepper が道行く人に声 DMM.com が富士ソフトの Palmi(パルミー) を掛けながらティッシュペーパーを配った。 やディアゴスティーニ・ジャパンの Robi(ロ このほか、受付や案内、結婚式やイベント、 ビ)組み立て代行バージョンなど小型の人型 教育・介護、防犯・警備での導入が進みつつ ロボットの販売を開始し、同年 6 月にはソフ ある。 トバンクが Pepper(ペッパー)の一般販売 図1 り、さまざまな場所や用途での利用が想定さ NAO(左右)と Pepper(中央) を開始したこともあって、人型ロボットへの 注目がにわかに高まってきた。Pepper はソ フトバンクとフランスの Aldebaran Robotics 社(以下、Aldebaran 社)により開発された ものだが、Aldebaran 社は小型の二足歩行ロ ボット NAO(ナオ)の開発で知られる。 (図 1 参照) Pepper や NAO、Palmi などの人型ロボッ トは、人間の代わりに何かの作業をするもの ではなく、人とのコミュニケーション機能に 特化したものである。人の話し相手になった り、歌や踊りを披露したりするなどのエン 28 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 表1 NAO と Peeper の主な仕様 NAO(H25) サイズ (高さ×幅×奥行) 重 量 稼働時間 センサー Pepper(デベロッパー先行モデル) 574 × 275 × 311mm 1,210 × 480 × 425mm 5.4kg 29kg 最長 90 分 最長 12 時間程度 頭:マイク× 4、RGB カメラ× 2、タッチセンサー× 3、赤 頭:マイク× 4、RGB カメラ× 2、3D センサー× 1、タッ サー× 1 手:タッチセンサー× 2 外線センサー× 2 胸:ソナーセンサー× 2、位置センサー× 1、ジャイロセン 手:タッチセンサー3 × 2(L/R) 脚:バンパーセンサー× 2、感圧センサー4 × 2(L/R) 可動部 プラットフォーム 脚:ソナーセンサー× 2、レーザーセンサー× 6、バンパー センサー× 3、ジャイロセンサー× 1、赤外線センサー× 2 [自由度]頭:2、肩:2 × 2(L/R)、肘:2 × 2(L/R)、手 [自由度]頭:2、肩:2 × 2(L/R)、肘:2 × 2(L/R)、手 首:1 × 2(L/R)、手:1 × 2(L/R)、足:5 × 2(L/R)、 首:1 × 2(L/R)、 手:1 × 2(L/R)、 腰:2、 膝:1、 ホ 股関節:1 イール:3 [モーター]25 個 言 語 チセンサー× 3 胸:ジャイロセンサー× 1 [モーター]20 個 アラビア語、イタリア語、英語、オランダ語、韓国語、ス ウェーデン語、スペイン語、中国語、チェコ語、デンマーク 語、ドイツ語、トルコ語、日本語、フィンランド語、ブラジ ル語、フランス語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語 日本語、英語 NAOqi OS 2.1.3(2015 年 8 月末時点) NAOqi OS 2.3.1(2015 年 8 月末時点) ネットワーク タブレット IEEE 802.11 a/b/g/n ― 10.1 インチタッチディスプレイ NAO と Pepper の特徴 ができることに加えて、人間や他の NAO と NRI ネ ッ ト コ ム で は、2015 年 5 月 に 常に全身でバランスを取っており、倒れる際 Pepper の 開 発 者 向 け モ デ ル を、8 月 に は は “受け身” を取って衝撃を緩和する。転ん NAO を導入し、ロボットアプリケーション だ後は倒れていることを認識し、自分で立ち の開発と人型ロボットの活用に関する実証実 上がろうとする。その姿は、幼児が頑張って 験に取り組んでいる(表 1 参照)。 立ち上がる姿によく似ており、非常に愛着が NAO は 2006 年の発売以降、主に研究や 会話することができる。二足歩行を行うため 湧いてくる。 教育を目的に、世界約 70 カ国で約 7 千体以 Pepper は NAO の 技 術 を ベ ー ス に 開 発 さ 上が導入されているという(Aldebaran 社の れた感情認識ができる人型ロボットである。 ホームページより)。国際的なロボットコン NAO と同様に全身にさまざまなセンサーを テスト(ロボカップ)でも標準機に採用され 持ち、動く、見る、聞くといった基本動作と るほど広く普及している。 会話が可能である。二足歩行の機能はない 現在のモデルは第 5 世代で、人間の幼児ぐ が、その代わりに下半身には大容量の電池が らいの大きさだが、正確には身長 58cm、体 搭載されており、12 時間の長時間稼働(NAO 重 5.4kg である。全身にさまざまなセンサー は 90 分間)を実現している。障害物が近く を持ち、歩く、見る、聞くといった基本動作 にあると動作を停止する機能を持つなど、主 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 29 特 集 Webビジネスを支えるNRIネットコム に家庭で利用されることを想定した設計と 用でき、これらを用いてアプリケーション なっている。 の開発を行う。また NAO はもともと教育用 Pepper は「世界初となる自分の感情を持っ として開発されていたこともあり、アプリ たパーソナルロボット」とうたわれており、 ケーションを開発するためのソフトウェア Pepper 自身が感情を持っているかのように 「Choregraphe(コレグラフ)」が無償で公開 人とのコミュニケーションを行う。知ってい されている。そのため誰でもアプリケーショ る人がいると安心したり、褒められると喜ん ンを開発でき、作成したアプリケーションは だりするなど、人の表情や言葉、周囲の状況 スマートフォンのアプリと同様にインター などによって Pepper の感情は変化する。 ネット上のアプリストアに公開することがで これらの感情認識は、クラウド上の AI(人 きる。すでにさまざまなアプリケーションが 工知能)を利用した自律学習によって行われ 開発されており、それらをインストールする ており(そのために無線通信環境が必須とな ことでロボットに新しい機能を追加できる。 る) 、使用時間が長くなるにつれて、世界中 「Choregraphe」では、NAO や Pepper の基 の Pepper を通じて感情認識の精度が向上す 本的な動作や機能がそれぞれライブラリーと る。NAO も感情認識エンジンを搭載してい して定義されている。そのライブラリーをド るが、集合知による認識精度の向上やロボッ ラッグ&ドロップによって組み合わせること ト自身が感情を持つ仕組みは Pepper から採 でアプリケーションを組み立てていく(図 2 用された技術である。 参照)。 ライブラリーとして標準で用意されていな ロボットの動作を決める アプリケーション の複雑な処理については、新たにプログラミ ングを行うことで機能を追加する。例えば、 NAO と Pepper は同じプラットフォームで ネットワーク処理を使って各種 Web サービ 開発されており、ロボットの動作を決めるロ スと連係させたアプリケーションを開発すれ ボットアプリケーションも同じツールで開発 ば、NAO や Pepper に例えば最新のニュース することができる。 を読み上げさせたり、飛行機の出発時刻を答 NAO と Pepper は OS( 基 本 ソ フ ト ) に 30 いネットワーク処理やデータベース処理など えさせたりすることもできる。 「Linux」を採用しており、システム構成も NRI ネットコムも、セミナーの案内用など 通常の PC と同様となっている。人間の頭脳 いくつかのアプリケーションを開発して実証 に当たり動作をつかさどるミドルウェアは、 実験を行ってきた。その結果から言うと、日 独自に開発された「NAOqi(ナオキー)」を 本語を話すことは、通常の会話ではそれほど 採用している。「NAOqi」で提供される機能 支障なくでき、またキーワードやキーセンテ は C++、Python、Java、.NET、JavaScript、 ンスの中から状況にふさわしいものを選択す MATLAB などのプログラミング言語から利 ることは比較的高い精度でできるので、話の | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 人型ロボットはどこまで進化したか 図 2 「Choregraphe」によるロボットアプリケーション開発の画面 プリケーションで処理を行う方が効率的と考 は有用と思われる。一方、言葉を正確に認識 えられる。コミュニケーションのベースとな させるためには、発話者がはっきりとした分 る音声認識は、機械学習の技術が進歩するこ かりやすい話し方をするなどの工夫が必要で とでおのずと精度が向上していくことが期 ある。固有名詞を自然なイントネーション 待できる。また、ソフトバンクと IBM 社が で発話させるためには工夫が必要で、例え 人工知能による質問応答システム「Watson」 ば「エヌアールアイネットコム」と言わせる の日本語対応を共同で行うと発表しているこ 場合、アプリケーションではカタカナよりも とから、自然な対話の中から相手の意図をく 「N R I ネットこむ」という指定の方が、より み取る技術が Pepper に適用されることも考 自然なイントネーションとなる。 │ ロボットアプリケーションを開発して │ 内容がある程度決まっている窓口業務などで えられ、そうなれば、より円滑なコミュニ ケーションが実現すると思われる。今後、利 人型ロボットの将来 用が進むにつれて、集合知による感情認識エ 人型ロボットの現時点での用途は、ユー 固有の愛らしさなどと相まって、高いレベル ザーインターフェースとしての位置づけが最 のコミュニケーション力を持つ新たなユー も現実的であり、ロボット自身で何かの処理 ザーインターフェースとして活用できるよう を行うのではなく、サーバー側に置かれたア になることが期待される。 ンジンも進化することが見込まれ、ロボット 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. ■ 31 挑戦の歴史 最終回 創立 50 周年 2015 変える意志、変わらぬ信念。 上場した NRI は、リーマンショック後の荒波にもまれながらも、「ナビ ゲーション×ソリューション」を軸とした経営スタイルを確立していっ た。過去 50 年で築き上げてきたお客さまとの信頼関係や DNA などは “変えないという信念”と、お客さまと共に社会をあるべき方向へ大胆 に“変えていく意志”を、次の 50 年につないでいく。 上場会社、始動 NRI は、2001 年 12 月に東証一部へ上場した。 第三者の目に常にさらされ、企業としての価値が 問われる。そして、それは当然、株価にも反映さ 新しい仕組みづくり この時期、これからの NRI を形づくるための仕 れる。翌 2002 年 4 月に就任した藤沼彰久社長は、 組みが新たに試みられ、成果を出し始めていた。 波乱のスタートを迎えることになる。西暦 2000 その 1 つが、中国オフショア開発の活用である。 年問題特需が一巡し、IT バブルが崩壊したこと その本格的な契機は、リテール証券向け共同利用 で情報サービス産業の勢いに一気にブレーキがか 型サービス「STAR-IV」の開発プロジェクトだっ かったのだ。2002 年 6 月に 3,502 円の高値をつ た。短期間で大規模な開発を完遂させるため、論 けた当社の株価は、その 9 カ月後の 2003 年 3 月 理分割されたサーバーごとに責任を持たせ、複数 には、3 分の 1 以下の 1,027 円まで下落した(株 のチームが並行で開発を進められるようにした。 価は 2007 年 4 月と 2015 年 10 月に行った株式分 各社とコミュニケーションを密に取るなどの工夫 割の影響を反映させた数値)。 により、独自のオフショア開発手法を確立したこ 2004 年 3 月のグループ経営戦略会議で新しい 32 中身はまだ 50 点だ」と――。 とで、NRI の開発力の底上げにつながった。 経営ビジョン「V2008」を発表した藤沼社長は 上場の約 1 年前には、プロジェクト監理部を中 「今は足元固めの時。中長期的視点を忘れずにま 核とした品質監理本部が誕生している。品質を重 い進する」と語った。短期志向では経営が景気に 視し、全社横断的にナレッジを蓄積・活用する体 引きずられてしまいがちで、大きな投資の判断が 制の発足である。 難しくなる、と中長期計画の重要性を説いたのだ。 「V2008」の前倒し達成を受け、次の長期経営 2004 年からは、 “小泉改革”が功を奏して景気 ビジョン「V2015」は 2008 年 3 月に発表された。 は回復し、その環境の中で NRI の業績も大幅に改 世界経済に大きな打撃を与えたリーマンショック 善。 「V2008」の目標数値は、2 年前倒しで 2006 が起きたのはその半年後である。「V2015」の数 年度に達成した。ただし、藤沼社長は慎重だっ 値目標をいったん見直すことにはなったものの、 た。 「数字は金融マーケットの勢いに乗じたもの。 この逆風の中でも NRI は着実な経営を行うことが | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. できた。データセンターでの運用をベースにした 2014 年 1 月からスタートした NISA(少額投資 アウトソースや共同利用型のビジネスモデルが安 非課税制度)の口座管理をシステム化するに当 定的な事業基盤として機能し、NRI の目指す方向 たっては、早い段階から制度を含めた調査を進 に間違いがないことを再確認する形となった。 め、開発から構築、運用までを主導。業界に貢献 することができた。 産業関連分野においては、大手化粧品メーカー 「ナビゲーション×ソリューション」 の確立に向けて の業務変革プロジェクトを支援したり、大手通信 2010 年 4 月に就任した嶋本社長は、情報技術 ス テ ム を 稼 働 さ せ た り し た。2012 年 4 月 に は 系 の 経 験 が 長 い が、 旧 NRI と NCC( 野 村 コ ン 「NRI システムテクノ」を設立し、大手食品メー ピュータシステム)の合併後の約 7 年間は産業シ カーの重要なシステムを引き受けることで、同社 ステムを担当していた。新規顧客営業の際に、コ の事業競争力強化を支援している。 事業者の大規模かつミッションクリティカルなシ ンサルティングメンバーとのコ・ワークを幾度も 中国・アジアを中心にグローバル化も図ってき 経験しており、「ナビゲーション×ソリューショ た。コンサルティング事業においては、日系企業 ン」を最も早く体現してきた一人である。これが の進出支援から始めた事業は、現地政府向けの調 嶋本社長が大切にしている「Mutual Respect(相 査・コンサルティングや、現地企業向けのマーケ 互尊重) 」の原点である。その精神の下、NRI で ティングに関するコンサルティングなどへと拡大 はコンサルティング部門の幅広い顧客層に対する し て き た。 ま た、BPO 業 務 の 海 外 拠 点 と な る 提案力と、ソリューション部門の長期間にわたる 「NRI 大連」や、金融システム事業のグローバル IT サービス提供力を組み合わせることで、お客 展開を支援する「NRI FT India」をはじめとする さまと共に、NRI らしい大きな価値創造をしてい 海外拠点の数は現在 34 となり、社員数は 2,200 こうとしている。 人に上る。 また、NRI は「V2015」の方針である「金融関 「V2015」はこのような成果を上げながら進め 連のサービス高度化」や「産業関連分野の拡大」、 られ、業績もここにきて力強い成長軌道に乗りつ 「中国・アジア事業の強化・拡大」について以下 のように取り組んできた。 つある。 そして 2015 年 4 月には、今後 8 年間の新たな 金融分野においては、2013 年 1 月に、野村證 経営ビジョン「V2022」が発表された。現在、 券 に 証 券 総 合 バ ッ ク オ フ ィ ス シ ス テ ム「THE 具体的な戦略の検討を進めているところである。 STAR」の提供を開始した。NRI と二人三脚で独 NRI は 2015 年度に創立 50 周年を迎えた。50 自のシステムを構築・利用してきた野村證券が、 年の歳月を紡いできた諸先輩の思いを踏まえ、守 他の証券会社も使うプラットフォームの共同利用 るべきものは守り、変えるべきところは変えてい を決断したのは画期的なことだった。これによ く。次の 50 年でどのような地平を開くことがで り、NRI が 目 指 す 業 界 標 準 ビ ジ ネ ス プ ラ ッ ト きるのか。NRI は新しい歴史を刻むための第一歩 フォームの成長に弾みがついた。 を踏み出した。 ■ 2015.12 | レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. 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No reproduction or republication without written permission. 33 NRI Web Site www.nri.com/jp NRI 公式ホームページ 会社情報 NRI グループの CSR 活動 www.nri.com/jp/csr IR 情報 www.nri.com/jp/ir 事業・ソリューション別のポータルサイト コンサルティング www.nri.com/jp/products/consulting 日本における先駆者として社会や産業、企業の発展に貢献してきた コンサルティングサービスを紹介 未来創発センター www.nri.com/jp/souhatsu アジア・日本の新しい成長戦略に関わる NRI の取り組み、研究成果の 情報発信、政策提言などを紹介 金融 IT ソリューション www.nri.com/jp/products/kinyu 金融・資本市場でのビジネスを戦略的にサポートする IT ソリュー ションの実績、ビジョンを紹介 NRI Financial Solutions �s.nri.co.jp 金融・資本市場に関わる NRI の取り組みについての情報発信、 政策提言、IT ソリューションを紹介 産業 IT ソリューション www.nri.com/jp/products/sangyo 流通業やサービス業、製造業などさまざまな産業分野のお客さまに 提供するソリューションを紹介 IT 基盤サービス www.nri.com/jp/products/kiban 産業分野や社会インフラを支えるシステム、システムを安全・確実に 運用するためのソリューションを紹介 BizMart www.bizmart.jp 企業間業務や生・配・販を中心とするさまざまな業種の業務効率化を 支援するソリューションを紹介 グループ企業・関連団体の Web サイト NRI ネットコム インターネットシステムの企画・開発・設計・運用などのソリュー ションを提供 www.nri-net.com NRI セキュアテクノロジーズ www.nri-secure.co.jp 情報セキュリティに関するコンサルティング、ソリューション導入、 教育、運用などのワンストップサービスを提供 NRI データ i テック www.n-itech.com IT 基盤の設計・構築・展開と稼働後のきめ細かな維持・管理サー ビスを提供 NRI サイバーパテント www.patent.ne.jp 「NRI サイバーパテントデスク」など、特許の取得・活用のための ソリューションを提供 NRI 社会情報システム www.nri-social.co.jp 全国のシルバー人材センターの事業を支援する総合情報処理シス テム「エイジレス 80」を提供 NRI プロセスイノベーション www.nri-pi.com 中国でのオフショア業務などで培ったノウハウを活用した業務 支援サービスを提供 NRI システムテクノ www.nri-st.co.jp 味の素グループに情報システムの企画・開発・運用サービスを提供 だいこう証券ビジネス www.daiko-sb.co.jp 証券業務に関わるさまざまなミドル・バックサービスをワンストップで 提供 野村マネジメント・スクール www.nsam.or.jp 日本の経済社会の健全な発展および国民生活の向上のために重要な 経営幹部の育成を支援する各種講座を開催 Worldwide NRI グループ(グローバル) NRI Financial Solutions(英語) brierley+partners NRI 北京 NRI 北京 上海支店 NRI 上海 www.nri.com/global �s.nri.co.jp/en www.brierley.com www.nri.com.cn/beijing shanghai.nri.com.cn consulting.nri.com.cn ■ IT ソリューションフロンティアについて 34 NRI FT India NRI APAC NRI 香港 NRI 台湾 NRI ソウル NRI インド www.nri�ntech.com www.nrisg.com www.nrihk.com www.nri.com.tw www.nri-seoul.co.kr india.nri.com 本誌の各論文およびバックナンバーは NRI 公式ホームページで閲覧できます。 本誌に関するご意見、ご要望などは、[email protected] 宛てにお送りください。 | 2015.12 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 編 集 長 編集委員 (あいうえお順) 編集事務局 野 呂 青 山 内 山 尾 上 河 西 香 山 田 實 鳥谷部 宮 原 和 栗 直 子 慎 昇 孝 男 敏 靖 満 成 郎 史 由香理 一 雄 五十嵐 梅 屋 川 口 木 闇 武 富 登 坂 引 田 吉 川 和 田 卓 真一郎 剛 弘 憲 一 康 人 和 生 健 一 明 充 弘 瀬 優花子 清 崇 戸 水 史 2015 年 12 月号 Vol.32 No.12(通巻 384 号) 2015 年 11 月 20 日 発行 発行人 嶋本 発行所 株式会社野村総合研究所 正 コーポレートコミュニケーション部 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 1-6-5 丸の内北口ビル ホームページ 発 送 www.nri.com/jp NRI ワークプレイス株式会社 ビジネスサービスグループ 〒 240-0005 横浜市保土ケ谷区神戸町 134 電話 045-336-7331(直通) Fax.045-336-1408 本誌に登場する会社名、商品名、製品名などは一般に関係各社の商標または登録商標です。 本誌では ®、 「TM」は割愛させていただいています。本誌記事の無断転載・複写を禁じます。 Copyright © Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. www.nri.com/jp
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