企業活力 2015 秋季号 巻頭言 97 中国経済はどうなるのか? (国営経済の強さと弱さ) 一般財団法人 企業活力研究所 会長 研究会報告 No. No. 堤 富男 長時間労働からの脱却と新しい働き方に関する調査研究 我が国企業の競争力強化に向けたCSRの国際戦略に関する調査研究 IoTがもたらす我が国製造業の変容と今後のあり方に関する調査研究 常設委員会 これまでの改革の主な成果と今後の取組 「コーポレートガバンスコードを受けた東証規則などの改正、独占禁止法審査手続指針に ついて」 と 「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 法人税改革を含む税制改正の今後の課題 日本再興戦略改訂2015と賃上げフォローアップ調査結果について 「2015年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネルギー政策…エネルギーミックスの実現に向けて」 「2014年度通期決算の概要」 と 「我が国経済の現状と先行き」 について CDGM 特 集 CDGMラウンドテーブルセミナー レポート TPP合意の示唆 米国・EUのFTA政策の経緯から 日本大学 商学部 准教授 飯野 文氏 2015 秋季号 No. 97 [巻頭言] 目 次 CONTENTS 中国経済はどうなるのか? (国営経済の強さと弱さ) 一般財団法人 企業活力研究所 会長 堤 富男…………………………………… 1 [平成27年度 研究会報告] 長時間労働からの脱却と新しい働き方に関する調査研究 【人材研究会】 …………………………………………………………………… 2 我が国企業の競争力強化に向けたCSRの国際戦略に関する調査研究 【CSR研究会】 ………………………………………………………………… 5 IoTがもたらす我が国製造業の変容と今後のあり方に関する調査研究 【ものづくり競争力研究会】…………………………………………………… 11 [常設委員会] これまでの改革の主な成果と今後の取組 【経営戦略・産業政策委員会】 ………………………………………………… 15 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正、独占禁止法審査手続指 針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 【企業法制委員会】 …………………………………………………………… 19 法人税改革を含む税制改正の今後の課題 【税制委員会】 ………………………………………………………………… 日本再興戦略改訂2015と賃上げフォローアップ調査結果について 【雇用・人材開発委員会】 ……………………………………………………… 「2015年版ものづくり白書『概要』 について」 と 「今後のエネルギー政策…エネルギーミックスの実現に向けて」 【企業活力委員会・企業活力政策研究会】 …………………………………… 「2014年度通期決算の概要」 と 「我が国経済の現状と先行き」 について 【業種別動向分析委員会】 …………………………………………………… 30 33 37 48 [CDGM] CDGMラウンドテーブルセミナー レポート………………………… 54 [特集] TPP合意の示唆 – 米国・EUのFTA政策の経緯から 日本大学 商学部 准教授 飯野 文氏 ………………………………………… 56 [その他] 研究所便り 58 ……………………………………………………………………… 巻頭言 中国経済はどうなるのか? (国営経済の強さと弱さ) 一般財団法人 企業活力研究所 会長(新任) 堤 富男 中国経済の減速が、 最近の世界経済に大きなインパクトを与えた。今後この中国経済どうなるか?結論か ら言えば、 私は、 「短期やや楽観、 長期かなり悲観」である。 短期的には、最近の経済減速、株価の暴落などに加え、 もともとシャドウバンキング問題、過剰投資による 過剰設備問題、 さらにはあちこちに見られる鬼城現象などから、 たいへん厳しい見方が多い。 しかし、 さて失 速かというと、 現在の中国の財政の健全さ、 金融政策の余地、 国営企業の多さ、 外貨準備の分厚さ (最近か なり減少しても) などに加え、 その統制力の強さからみて、 どうしてもすぐに失速とは思い至らない。株価の暴 落も腕力でおさえ込み、地方政府の財政悪化もすでにこれ以上悪化しないよう地方債の制度で歯止めが きっちり出来上がり、 ここで最も重要なのが大半の銀行が国営であり、 日本のように経済危機の時に民間銀 行に出資をして助ける必要もない。 いわば国家破産の防波堤である国営銀行は、 国家財政がしっかりして いれば万全の構えなのである。 ただ、 この楽観説は、 中国の危機時の耐久力ということを述べたわけで、 海外への悪影響とは別問題。第 一に中国が資源を爆食、 過大な投資で採算性の合わない多くのインフラ投資で過大な余剰を作ってきたの がバブルの破裂で需要は激減すること、第二に鉄鋼などの重厚長大部門などで過大な投資をし、今後そ の過剰な製品がアジアにあふれ出ることの2点からくる近隣諸国ないし資源国の経済へのインパクトは大変 大きいことを忘れてはならない。 他方、長期的にはこの国営企業を中心とする体質が経済の成長を阻むのではないであろうか。 中国経 済が、 いよいよ農村からの労働供給が少なくなり、 労賃アップの流れが定着した。 日本もこのような現象があったのは70年代であったが、 その当時、 減速し始めた経済を支え、 次なる発展 へつないだのは、 日本では自動車産業、半導体産業、鉄鋼産業、電機産業などの民間企業であった。 この 民間企業の創意工夫が実り、 高付加価値産業が育って行った。 その結果、 同時に世間を騒がせた公害問 題を解決し、 その後の社会の安定を支えた年金、健康保険制度などの立派な社会保障制度を樹立して いったことが大きな原因であった。 翻って中国経済を見ると、 高労賃経済の中で成長率は7%に減速した上に、 合わせて少子高齢化、 労働 人口の減少(日本は90年代の中ごろまで労働人口も増えたことに注意) 、公害問題の最悪化を迎える状況 にあり、 親方日の丸体質の国営企業を中心とする経済の将来に不安を感ずるのは私だけであろうか。 高労賃を支え、 公害問題を解決するには、 イノベーションをしながら高付加価値産業への構造変化が必 要であり、 これだけ大きな過剰設備を抱え、 公共投資での経済成長が望めない事態でどこに成長の種を見 つけるのか、 そのうえ社会保障制度の充実を図る原資も必要であることを考えると、国営企業中心の中国 の長期見通しについてはどうしても慎重にならざるを得ない。 企業活力 1 平成27年度 人 材 「長時間労働からの脱却と 新しい働き方に関する調査 研究」 人材研究会 平成27年度、当研究所では、昨年度に引き続き、委員長として佐藤 博樹 氏(中央大学大学院 戦略 経営研究科 教授)をお迎えし、企業の人事担当者、学識者等からなる人材研究会を設置し、我が国の 企業が「稼ぐ力」を復活させ、さらに向上させていく上で必要であると考えられる「長時間労働からの 脱却」とそれを支える「新しい働き方」に焦点を当て、議論を行うことといたしました。 第1回研究会は、8月26日 (水) に、第2回研究会は9月29日 (火) に開催され、経済産業省 経済産業政策 局 産業人材政策室 小林 浩史 室長をはじめとする関係者の方々にもご出席をいただき、プレゼン及び 各委員のフリーディスカッションが行われました。以降、平成28年2月までに月に1回の頻度で計7回の 研究会を開催し、検討課題を掘り下げていく予定です。 写真左より佐藤委員長、小林室長 平成 27 年度人材研究会委員名簿 委 員 長: 佐藤 博樹 中央大学大学院戦略経営研究科 教授 委 員: 石原 直子 (株)リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 Works 編集長 垣見 俊之 伊藤忠商事(株)人事・総務部 部長代行 兼)企画統轄室長 金子 弘行 イオン(株)グループ人事部 人事企画グループ 労務政策リーダー 狩野 尚徳 キヤノン(株)人事本部 人事統括センター 人材開発部 部長 東風 晴雄 ダイキン工業(株)東京支社 人事本部 採用グループ担当部長 五島 輝昌 パナソニック(株)人事労政部 労政課 課長 齋藤 敦 損害保険ジャパン日本興亜(株) 人事部ダイバーシティ推進グループリーダー 佐藤 彰彦 富士通(株)人事本部 労政部長 杉山 敦 SCSK(株)人事グループ 人材開発部長 髙島 正人 トヨタ自動車(株)東京総務部 人事室長 武内 和子 (株)日立製作所 人財統括本部 ダイバーシティ推進センタ 部長代理 谷 亘 (株)LIXIL Human Resources Diversity & Engagement 部長 2 企業活力 研究会の様子 長尾 健男 新日鐵住金(株)人事労政部 部長 中澤 二朗 新日鉄住金ソリューションズ(株)人事部 専門部長 中島 竜介 アステラス製薬(株)人事部 部長(制度企画グループ統括) 鍋山 徹 (一財)日本経済研究所 チーフエコノミスト 東 俊明 日産自動車(株)人事本部 日本人事企画部 人事企画グループ 主管 藤本 治己 帝人(株)人事総務部長 輪島 忍 (一社)日本経済団体連合会 労働法制本部長 オブザーバー: 小林 浩史 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長 戸島 正浩 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐 中村 智 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐 根津利三郎 (独法)経済産業研究所 シニアリサーチアドバイザー 狩野 史子 神田外国語大学非常勤講師 事 務 局: (一財)企業活力研究所 (株)富士通総研 (敬称略、氏名五十音順) 人 材 1.調査研究の趣旨 我が国労働者の実労働時間は、欧米と比べて長く、か らに向上させていくためには、新たな人材活用戦略が必 ねてより様々な視点からそれを低下させるべきだとの議 要となってくると思われるが、その場合、「長時間労働 論がなされてきた。しかしながら、少なくとも一般労働 からの脱却」とそれを支える「新しい働き方」は、企業 者の年間実労働時間は、 「失われた 20 年」の間、約 2000 の「稼ぐ力」を向上させる有効な「手段」となるのでは 時間でほぼ横ばいであり(図 1) 、あまり改善の動きが ないか。 見られない。一方で、我が国産業の一人当たり労働生産 こうした観点に立ち、平成 27 年度、当財団に企業、 性は OECD 平均を大きく下回っている状況にあり(図 学識者、政策当局など関係者からなる研究会を設置し、 2) 、企業はイノベーション能力と労働への高いモチベー 「長時間労働からの脱却」およびそれを支える「新しい ションを有した人材を駆使しながら、 「持続的な低収益」 働き方」について、先進企業での取組み事例を収集分析 のパラドックスに陥っているといえる。 し、企業における効果的・効率的な推進のあり方につい こうした状況の中、企業が「稼ぐ力」を復活させ、さ て検討することとする。 (図 1)就業形態別年間総実労働時間及びパートタイム労働者比率 (図 2)OECD 加盟 34 か国の労働生産性比較(一人当たり) (出所)厚生労働省(2014) 「毎月勤労統計調査」(同「働き方改革について」より) (出所)公益財団法人日本生産性本部「日本の生産性の動向 2014 年版」 2.検討の視点 (1)企業(経営全体)にとって、 「長時間労働からの脱却」 はなぜ必要か ? ては、効率よく働く(時間生産性を上げる)ことに対す る認識が相対的に低く、普段から「残業を前提とした働 「長時間労働からの脱却」が叫ばれて久しいが、正規 き方」が一般的になっているのではないか。それは、結 雇用者の年間実労働時間は「失われた 20 年」の間、約 局のところ、経営者レベルにおいて、「残業を前提とし 2,000 時間でほぼ横ばいであり、あまり改善の動きが見 ない働き方」が、経営のパフォーマンスの低下に繋がる られない。もちろん、必要な残業はしなければならない との懸念があったり、あるいは、従業員のための「福利 が、現実の職場、とりわけホワイトカラーの職場におい 厚生」の延長線上のものとしてのみ捉えられているから 企業活力 3 人 材 「長時間労働からの脱却と新しい働き方に関する調査研究」 ではないか。むしろ、 「残業を前提としない働き方」や「長 となりかねない。また、ある年代以上の管理職の中には、 時間労働からの脱却」により、社外活動を通じた社員の 自らの成功体験を基に、 「本人が大きく成長していくた 能力の向上、多様な人材の確保等を通じて、企業の生産 めには、時間を掛けて仕事に専念することが必要だ」と 性や「稼ぐ力」の向上に資する面があり得るのではない いった仕事観を持っている場合がある。このような中で、 か。少なくとも、少子高齢化の進展に伴い、突然の残業 「長時間労働からの脱却」を掲げても、現場で納得感が 指示には対応できない労働者の比率が高まることが予想 得られず、自分たちのこととして真摯に取り組むことに される中、「残業を前提とした働き方」のみでは、優秀 はつながりにくい。 な労働者の確保に支障をきたすことになるのではない そこで、本研究会では、現場の管理者および管理され か。 る組織全体にとっても納得のいくような「長時間労働か そこで、本研究会では、まず「長時間労働からの脱却」 らの脱却」の意義、メリットを明らかにすることとする。 の「企業(経営全体) 」における意義やメリットを明ら かにすることとする。 (3)企業内で「長時間労働からの脱却」を進めるため の具体的方策は何か? (2)現場(管理者及び管理される組織全体)にとって、 「長 時間労働からの脱却」はなぜ必要か? これまでも、企業内で「長時間労働からの脱却」を進 めるための方策は、数々、検討されてきた。その結果、 「企業(経営全体) 」において、 「長時間労働からの脱却」 具体的な方策としても、ある程度の候補がリストアップ が必要であると理解されたとしても、それだけで現場が できる状況にある。こうした中から、上記(1)及び(2) 動くとは限らない。現場は、日々の業務において、例え を踏まえ、企業(経営全体)及び現場のそれぞれにおい ば、 「お客様の要件を満足できるよう」 「納期を遅延しな て納得感が得られるような具体的方策を検討することと いよう」 「品質を高めるよう」 「クイックレスポンスがで する。なお、検討の対象としては、 「長時間労働からの きるよう」 といった価値観を持って業務に臨む中で、個々 脱却」を行おうとする際に障害となっている、いわゆる 人の時間制約よりも仕事の時間拘束を優先させる結果と 「企業文化」に対する評価・分析も可能な限り含むもの なる場合が多い。そうした中で、ただ単に「長時間労働 とする。 からの脱却」となれば、勤労意欲が低下するだけの結果 3 .検討体制 佐藤博樹氏(中央大学大学院戦略経営研究科教授)を 識者などによる研究会を設置。事例発表、アンケート調 委員長としてお迎えし、企業の人事担当者、学識者、有 査、インタビュー調査等を行い、報告書を取りまとめる。 人材研究会担当研究員より 昨年度の人材研究会では、 「企業におけるダイバーシティ経営の推進」、なかでも、女性の活躍の場を 拡大するための具体的な方策を中心に議論し、提言を取りまとめました。その中で、多様な属性や知識、 経験、価値観を持った優秀な人材の確保と能力発揮・活躍を推進するためには、多くの日本企業で依然 として残る長時間労働を解消していくことが必要であることが指摘されています。 しかし、「労働時間の削減」の必要性は、昔から言われているにもかかわらず、実態は遅々として進 んでいません。その原因は、 「労働時間の削減」が、労働者にとってだけでなく、企業利益や企業の「稼 ぐ力」の向上にとっても、大きなプラスであるということを、経営者側が実感していないからではない でしょうか。 今年度は、こうした視点にたち、 「労働時間の削減」が、企業にとって本当にプラスなのか、果たし てどのようなルートを通じてプラスになるのか、例えば役員会の席でどのように説明すれば納得しても らえるのか、といった角度から、委員のメンバーの皆様と議論を進めてまいりたいと考えています。 (主任研究員 石川 眞紀) ※ この事業は、競輪の補助を受けて実施しているものです。 4 企業活力 平成27年度 CSR 「我が国企業の競争力強化 に向けたCSRの国際戦略 に関する調査研究」 CSR 研究会 本年度の CSR 研究会では、加賀谷 哲之 氏(一橋大学 大学院商学研究科 准教授)を座長にお迎 えし、我が国企業の競争力強化に向けた CSR の国際戦略について議論を行うこととしており、9 月 17 日 (木)に第 1 回研究会を開催いたしました。今後は、来年 3 月上旬までに計 7 回の開催を予定して おります。 写真左より、藤井顧問、加賀谷座長 平成 27 年度 CSR 研究会委員名簿 座 長: 加賀谷哲之 一橋大学 大学院商学研究科 准教授 顧 問: 藤井 良広 上智大学 客員教授、(一社)環境金融研究機構 代表理事 委 員: 赤羽真紀子 CSR アジア 日本代表 有川 倫子 パナソニック(株) CSR・社会文化部 CSR・企画推進課 CSR 担当リーダー 伊藤 利彦 (株)セブン&アイホールディングス CSR 統括部 CSR オフィサー 牛島 慶一 EY ジャパン エリア CCaSS リーダー マネージング ディレクター 小野 博也 伊藤忠商事(株)広報部 CSR・地球環境室長 金田 晃一 武田薬品工業(株)コーポレート・コミュニケーションズ & パブリック アフェアーズ(CCPA)CSR ヘッド 黒田かをり (一財)CSO ネットワーク 事務局長・理事 小林 雅宏 (株)日立製作所 CSR・環境戦略本部 企画部 担当部長 酒井 恵子 東レ(株)CSR 推進室 室長 相馬 季子 (株)東芝 経営刷新推進部 CSR 経営推進室 参事 シッピー光 ソニー(株)広報・CSR 部 CSR グループ シニアマネジャー 鈴木 均 (株)国際社会経済研究所 代表取締役社長 関 正雄 損害保険ジャパン日本興亜(株)CSR 部上席顧問、 明治大学経営学部特任准教授 CSR 研究会の様子 富岡 正樹 サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 CSR 推進部長 冨田 秀実 ロイドレジスター クオリティ アシュアランスリミテッド 事業開発部門長 中尾 洋三 味の素(株)CSR 部 専任部長 中野 修平 本田技研工業(株)経営企画部 CSR 企画室 主幹 藤崎 壮吾 富士通(株)CSR 推進室 部長 森 まり子 東京商工会議所 検定事業部長 山田 美和 JETRO アジア経済研究所 新領域研究センター 法・制度研究グループ長 オ ブ ザ ー バ ー: 福本 拓也 経済産業省 経済産業政策局 産業資金課長 兼 新規産業室長 須賀 千鶴 経済産業省 経済産業政策局 産業資金課 兼 新規産業室 総括補佐 千葉 悠永 経済産業省 経済産業政策局 産業資金課 調整係長 石川 裕子 経済産業省 経済産業政策局 企業会計室 係長 事 務 局: (一財)企業活力研究所 ロイドレジスター クオリティ アシュアランスリミテッド (敬称略、氏名五十音順) 企業活力 5 C S R 「我が国企業の競争力強化に向けた CSR の国際戦略に関す る調査研究」 1.昨年度の調査研究で課題として抽出された点 昨年度実施した CSR 研究会では「企業のグローバル 上比率 15% 以上の 1000 社を対象とし、102 社から回答) 展開と CSR に関して」と題して、主に海外拠点、サプ を実施。 ライチェーン、バリューチェーンにおける CSR のマネ 企業には、回答する上で、想定する海外拠点を 1 箇所 ジメントの現状を調査研究した。 挙げてもらった。その海外拠点が置かれている国と主要 調査の一環として、海外拠点における CSR のマネジ 機能は以下のようになった(図 1)。 メントについてアンケート調査(一部上場企業で海外売 (図 1) 国別:想定する海外拠点の主要機能(社数)MA 上記の海外拠点において、CSR のマネジメントにつ n = 102 善すべき点がある」と回答した(図 2)。 いて改善すべき点があるか確認したところ、 72.5% が「改 (図 2)想定する海外拠点におけるCSR のマネジメントの改善の有無(%)SA 6 企業活力 n = 102 C S R CSR に関する具体的な活動計画や目標を立てている 難しさを感じる最も多い理由は、 「法制度が異なるた 75 社に「それら目標を立てる際に、海外拠点等を含め め」(80.9%)、次いで「インフラのレベルが異なるため」 ることに難しさを感じるか」質問したところ、90.7% の 「拠点での対応が難しいため」 (57.4 %)であった(図 4) 。 企業が難しさを感じると回答した(図 3) 。 (図 3)CSR目標を立てる際、海外拠点やグルー プ企業を含めることに難しさを感じるか n = 75 (%)SA (図 4) 上記のように、海外に進出して、法制度の違いやイン だまだ多いということが調査の中で浮き彫りとなった。 フラの違い、CSR に関する意識や価値観の違いなど、 そこで今年度の CSR 研究会の調査研究においては、 基本的な国内外の違いに戸惑いを感じている企業が、ま 以下の点にフォーカスをして進めていくこととなった。 難しさを感じる理由(%)MA n = 68 2.今年度調査研究の趣旨 日本企業は、これまでものづくり技術や商品開発力で 諸国においては、欧米型 CSR に加えて、先進国とは異 競争優位にあったが、厳しいグローバル競争の下、その なる歴史的背景、文化、人種、宗教、経済格差等により、 優位性は薄れつつある。こうした状況の下でグローバル 各国それぞれ固有の CSR 課題が見受けられる。そのよ に展開する企業に求められる戦略の一つとして、国や地 うな中、海外進出する日本企業に対して NGO・NPO 等 域を越えたグローバルな課題のみならず、各国(地域) から厳しい CSR に関わる責任追及の動きも続出してい 固有の社会的課題への対応が必要となっており、こうし る。 た形で社会的価値向上を実現することで、自社の円滑な そこで、当研究所内に研究会を設置し、欧米・アジア 海外進出や差別化、持続的な企業価値創造に繋がってい 等の CSR を巡る規制等(法律、公的機関及び民間の規格・ くと考えられる。 ガイドライン、その他事実上の制約等)の動向について 先行している欧米型 CSR においては、既に法規制や 収集把握をするとともに、内外企業がどのように CSR 公的機関による要求事項を含め枠組みが整備され、標準 に取り組んでいるのかを調査分析することによって、日 型が確立されてきている。一方、アジアを中心とする新 本企業の競争力強化に向けた CSR の国際戦略のあり方 興国でも CSR の動きは活発化してきているが、アジア について検討し、提言を取りまとめることとした。 企業活力 7 C S R 「我が国企業の競争力強化に向けた CSR の国際戦略に関す る調査研究」 3.今年度調査研究における検討事項 (1)欧米及び新興国(アジア等)における CSR を巡る 規制等(法律、公的機関及び民間の規格・ガイドライ た CSR の国際戦略の在り方についての検討 ン、その他事実上の制約等)の動向調査 日本企業が海外進出する際に直面する CSR 課題と CSR の中でも環境や人権、労働など個々要素レベ いうことだけに限定せず、「留意点」として提案出来 ルでは多様な法規制などが存在するため、包括的な る形でまとめる。各国での状況と日本での状況を比較 CSR 関連の法規制やガイドラインなどの取組の動向 することで、その差分から「ビジネスチャンスに成り を調査する。CSR に関わる規制の緩い国についても、 得る社会的課題」 「成功事例」を企業に提案出来るよ その規制やガイドラインなどの調査・紹介の他、それ うに、「官民一体」「国の政策」としてもドライバーに らの国において実際に事業展開している多国籍企業が なる研究報告とすることを目的とする。 規制を超えた形(国際基準・ガイドライン、顧客要求 等に沿った形)で、どのような独自の対応をしている かを調査する。 (2)新興国(アジア等)における特徴的な CSR 事例の 調査 対象国におけるビジネス環境、ドライバーとなる CSR の枠組み(法令要求事項、業界要求事項、ガイ ドライン、宗教的な要素を含んだ社会的課題)、その 国を拠点としている各社の取組内容(日本企業、欧米 企業、地元企業)をインタビューや文献調査等を通じ て確認し、それぞれの関係性について事例を交えて分 析する。 8 (3) (1) (2)を踏まえ、日本企業の競争力強化に向け 企業活力 C S R CSR 研究会特別セッション CSR 研究会は、去る 10 月 7 日、WBCSD(The World Business Council for Sustainable Development:「持続可 能な開発のための世界経済人会議」 (注) )の President & CEO である Peter Bakker 氏をお迎えし、意見交換会を実 施しました。 (注) WBCSD は、1992 年のリオサミットで、持続可能な発展についての産業界の考え方を提供することを目的として設立された BCSD (The Business Council for Sustainable Development)を前身として設立された組織。現在 200 を超える企業(うち日本企業は 20 超) の参加の下、持続可能な発展に向けての企業のあり方について、様々な提言活動を行っている。 Bakker 氏の発言の概要は以下のとおりです。 (1)今や企業は完全に持続可能というものに組み込まれた段階に入りつつあり、単に CSR 担当者や CSR 予算を組 めば済むという時代ではなくなっている。どのような事業を行うにしても、持続可能性という試金石に照らし、 合致したものでなくてはならない。 (2)企業の志の高さには以下の 4 パターンある。決めるのは企業自身。 ①非常に先見の明があるリーダーがいる企業。 ②早期取り込み型。まねをするのだが、若干の革新性が見られる企業。 ③傾向に従うだけの良き企業市民。 ④なかなか腰の重い企業。 (3)2011 年に「ビジョン 2050」を策定した。これは、資源制約の中で世界人口 90 億人が幸福に暮らせる社会を 2050 年までに作ることを目的とし、様々な課題の中で世界の企業がどこに優先付けを行うべきなのかを考える うえでの助けとなる枠組みを提供するもの。持続可能なソリューションとして、9 つの分野(①エコシステム、 企業活力 9 C S R 「我が国企業の競争力強化に向けた CSR の国際戦略に関す る調査研究」 ②栄養、③安全かつ持続可能な材料、④水、⑤基本的ニーズと権利、⑥持続可能なライフスタイル、⑦スキルと 雇用、⑧食料、飼料、繊維及びバイオフューエル、⑨気候変動)が特定されている。 重要なことは、 どれか一つを切り出して考えるのではだめで、もっとホリスティックな総合的視点からソリュー ションを編み出そうとすることだ。 (4)さらに、 最近「LCTPi(Low Carbon Technology Partnerships initiative)」というイニシアティブを立ち上げた。 再生可能エネルギーやビルの省エネなど、企業が実施可能な 9 つの気候変動に係るプライオリティが特定されて いる。もし、皆さんの企業にとって気候変動が最大プライオリティなのであれば、この 9 つのうちのどれがもっ とも関連性があるのかという目で見ていただきたい。気候変動について何かやっているというだけでは不十分で、 もう一歩踏み込んでより具体的なソリューションを実践していくことが必要である。これはパリの COP21 で話 すことになっている。 残念なのは、この「LCTPi」に世界の 140 社が参加しているのに、日本からはわずか 2 社しかないこと。日本 の技術を使うことで、世界が学べることはたくさんある。そのためにも、是非もっと日本企業にも参加していた だきたい。 ※ Bakker 氏の発言の概要は、議事録をもとに、企業活力研究所の責任で取りまとめたもの。 ※ CSR 研究会は、国際的には「CSR Forum , JAPAN」と称して、WBCSD、欧州委員会、BUSINESSEUROPE, CSR Euoope 等様々 な国際機関と積極的な意見交換を行っている。 CSR 研究会担当研究員より 昨年度の調査研究「企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究」においては、 「海外拠点やサプ ライチェーン・バリューチェーンに対する CSR のマネジメントのあり方」について検討を進めましたが、 海外展開をする上で、法制度の違いやインフラの違い、国ごとの CSR に関する捉え方・意識の違いに よる「ギャップ」が多く存在していることが分かりました。 これらの「ギャップ」を縮めていくには、正しくお互いを「理解」していくこと(相互理解)がやは り重要になってくると考えます。 本調査研究においては、その「理解」をサポートする位置付けとして、製造拠点や販売拠点として進 出機会の多い(また今後増えていくと思われる)アジア新興国の「中国」 「タイ」 「インド」 「インドネ シア」「ミャンマー」にフォーカスをして、CSR を巡る規制等の動向と企業事例ついて「事実ベース」 で把握し、分析していまいります。 海外展開を既にされていて CSR に関わる課題で苦労されている企業の皆様やこれから海外展開を考 えている企業の皆様に、幅広く活用してもらえる報告書となるよう関係者の方々にご協力、ご示唆いた だきつつ進めてまいります。 ※ この事業は、競輪の補助を受けて実施しているものです。 10 企業活力 平成27年度 ものづくり IoTがもたらす我が国製造業 の変容と今後のあり方に関す る調査研究 ものづくり競争力研究会 当研究所では、平成21年度以降、ものづくり競争力研究会を立ち上げ、検討及び提言を行ってま いりました。平成27年度は、小川 紘一 氏(東京大学 政策ビジョン研究センター シニア・リサー チャー)を座長にお迎えし、IoTの進展により大きく変容する可能性のある我が国製造業のあり方に ついて議論を行うこととしており、8月26日(水)に第1回、9月25日(木)に第2回研究会を開催いたし ました。今後は、来年3月までに計7回の開催を予定しております。 研究会の様子 写真左から小川座長、川森課長補佐 研究会委員 座 長: 小川 紘一 東京大学 政策ビジョン研究センター シニア・リサーチャー 委 員: 尾木 蔵人 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株) コンサルティング・国際事業本部 国際本部 国際営業部 副部長 中島 震 国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 教授 長島 聡 株式会社ローランド・ベルガー 日本共同代表 シニアパートナー 西岡 靖之 法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 教授 眞木 和俊 (株)ジェネックスパートナーズ 代表取締役会長 松田 一敬 合同会社 SARR 代表 オブザーバー: 田中 従雅 ヤマトホールディングス(株) IT 戦略担当シニアマネージャー 正田 聡 経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 室長 川森 敬太 同上 課長補佐 松谷 隆臣 同上 係長 吉田 哲士 同上 係長 岡野 宏美 同上 調査員 鈴木 俊吾 NEDO イノベーション推進部 標準化・知財戦略グループ主幹 事 務 局: 一般財団法人 企業活力研究所 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 (委員名五十音順・敬称略) Ⅰ.研究テーマについて 1 . 趣旨 「製造立国」、「ものづくり大国」と謳われ、我が国経 ならない量のデータを収集、蓄積することが可能となり、 済を牽引してきた製造業が、新たな局面を迎えている。 また人工知能を始めとした、データの解析・処理技術の すなわち、IT の急速な技術革新により、すべてのもの 向上により、活用の幅も大きく拡大してきている。こう がインターネットを介して接続されるようになる(IoT、 したサイクルを通し、新たな付加価値が生み出され、あ Internet of Things)とともに、これまでとは比べ物に らゆる分野で競争領域が変化してきている(図 1 参照) 。 企業活力 11 も の づ く り (図 1) IoT がもたらす我が国製造業の変容と今後のあり方 に関する調査研究 新たなビジネスサイクルの出現 (出所)平成 26 年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書) これに対応するため、ドイツは「Industrie 4.0(第 4 GE を筆頭とした米国企業のみならず、SAP、シーメン 次産業革命)」と銘打ち、官民一体となり製造現場の革 スといったドイツの有力企業も参画している。 新に向けた取り組みを始め、IoT の活用によって生産の かかる状況下、我が国製造業については、IoT の利活 効率性を追求し、例えば、ロットサイズ 1 でも柔軟、迅 用において「出遅れ」があるのではないか、そして、そ 速な生産・出荷(マスカスタマイゼーション)が可能に の背景に、日本企業が抱える経営上の構造的な問題があ なるような「スマート工場」の実現を目指している。こ るのではないかとの指摘も見られる。例えば、日本の経 れに対し、アメリカでも、例えば GE はインダストリア 営者は IoT をあくまで生産性向上のツールと捉え、新た ル・インターネットの概念を提唱し、航空機、産業機器 な収益源の創出をもたらすものと見る向きは少ない。こ の稼働状態をセンサーから取得し、ビッグデータの解析 れは他国のグローバル企業経営者の認識とは大きく異な により、運用の最適化につなげようとしている。2014 る点である(図 2、3、4 参照)。 年には IIC (Industrial Internet Consortium) が設立され、 (図 2) 12 企業活力 日本と他国の認識の違い(その 1) も の づ く り (図 3) 日本と他国の認識の違い(その 2) (原出所)アクセンチュア「グローバル CEO 調査 2015」 (出所)産業構造審議会 産業構造部会 (第 1 回)配布資料「新産業構造部会の検討の背景と ミッション」平成 27 年 9 月経済産業省経済産業政策局 (図 4) 日米の IT 投資に対する期待内容 (日米の経営者、IT 担当以外のマネージャーへのアンケート結果) (原出所)一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「IT を活用した経営に対する日米企業の相違分析」調査結果 (2013 年 10 月) (出所)産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会(第 1 回)配布資料「IoT 時代に対応したデータ経営 2.0 の促進」平成 26 年 12 月経済産業省商務情報政策局 ドイツ、アメリカが強く取り組みを進める中、対応に 「製造プロセスの変化」を始め、「ものづくり上流、下流 遅れをとれば、我が国製造業の競争優位は大きく減殺さ へのインパクト」などについて調査分析を行いつつ、我 れかねない。 が国製造業の競争優位の確保に向けた「今後の対応」の 以上の視点を踏まえ、本研究会では、IoT がもたらす あり方を検討することとする。 企業活力 13 も の づ く り 2. IoT がもたらす我が国製造業の変容と今後のあり方 に関する調査研究 27 年度研究の具体的内容 ②ものづくり下流へのインパクト (1)製造プロセスの変化 例:アフターサービス、モニタリングによる価値 例:ビッグデータの活用、ロボット導入、スマー 提供、ソリューション提供のあり方 ト工場の目指す方向 (2)①ものづくり上流へのインパクト (3)我が国製造業の競争優位の確保に向けた「今後の対 例:商品企画段階でマーケット需要をいかに効率 応」のあり方 的に、かつ細やかに補足するか 3 . 今後のスケジュール 第 1 回の研究会は、8 月 26 日(水)に、第 2 回は、9 月 25 日(木)にて開催され、今年度検討課題を中心にプレゼ ンおよびフリーディスカッションが行われました。以降、月に 1 回の頻度で計 7 回の研究会を開催する予定です。今 後の研究会でも、活発な議論が展開されることと期待しています。 ■今後の予定 第 3 回(10 月 30 日(金)10:00 〜 12:00) ・講師招聘 1 名(島田専務執行役員(シーメンス(株))) 第 4 回(11 月 27 日(金)10:00 〜 12:00) ・講師招聘 2 名(安井技師長(三菱電機(株))、梶本理事(パナソニック(株))) 第 5 回(12 月 18 日(金)10:00 〜 12:00) ・講師招聘 2 名(山本技術理事(日本アイ・ビー・エム(株))、 妹尾理事長(特定非営利活動法人 産学連携推進機構)) 第 6 回(1 月) ・報告書スケルトンの提示(事務局) ・上記につき討議 第 7 回(2 月) ・報告書原案の提示(事務局) ・上記につき討議 ものづくり競争力研究会担当研究員より 都内ではテスラ・モーターズの車を見かける機会が増えてきました。高性能な電気自動車という程度 の認識しか持っていませんでしたが、ソフトウェアのバージョンアップにより、自動運転機能が追加さ れたという記事を読み、驚きました。これまでは、基本的には新モデルへの買い換えという手段でしか、 機能の向上・追加ができなかった自動車が、スマートフォンのようにインターネットを通じ、バージョ ンアップできるようになったのです。 今年度のものづくり競争力研究会では、「IoT がもたらす我が国製造業の変容と今後のあり方に関す る調査研究」ということで、IoT による製造業へのインパクトを検討して参ります。当初は「製造業の 変容」というものをあまりイメージできていませんでしたが、意識をして、様々な商品やサービスに目 を向けると、想像以上のスピード、規模で既に始まりつつあるのではと感じております。本研究会が日 本の製造業の競争優位維持に寄与できるよう、事務局として、微力ながら貢献できればと思います。 (土井 皓介) ※ この事業は、競輪の補助を受けて実施しているものです。 14 企業活力 「これまでの改革の主な 経営戦略 成果と今後の取組」 経営戦略・産業政策委員会 経営戦略・産業政策委員会は、平成27年7月30日(木)に太田 克彦(新日鐵住金株式会社 代表取 締役副社長)委員長の進行により開催されました。 菅原 郁郎 経済産業政策局長(当時)から「これまでの改革の主な成果と今後の取組」等に関する 説明があり、参加者による活発な意見交換が行われました。 左から太田委員長、菅原局長 ご出席者名簿 委 員 長: 太田 克彦 新日鐵住金(株)代表取締役副社長 経済産業省: 菅原 郁郎 経済産業政策局長 龍崎 孝嗣 経済産業政策局 企業行動課 課長 顧 問: 久保田政一 (一社)日本経済団体連合会 事務総長 清成 忠男 事業構想大学院大学 学長 委 員: 水野 雄氏 (株)旭リサーチセンター 常任相談役 森山 幸二 コスモ石油(株)執行役員 経営企画部長 経営戦略・産業政策委員会の様子 山崎 和久 損害保険ジャパン日本興亜(株)企画開発部長 笠村 英彦 太平洋セメント(株)取締役 常務執行役員 奥住 直明 (株)東芝 コーポレートコミュニケーション部長 川久保玲子 東燃ゼネラル石油(株)執行役員 広報渉外統括部長 千釜 章 東北電力(株)執行役員企画部長 若林 邦広 (株)日立製作所 渉外本部長 五嶋 賢二 富士電機(株)執行役員 営業本部副部長 委 員 代 理: 西崎 明史 四国電力(株)東京支社執行役員支社長 梶 達雄 ソニー(株)渉外・通商部 渉外グループ シニアマネージャー 西田 明生 トヨタ自動車(株)渉外部 渉外室長 渡壁 誠 日本電気(株)常務理事 (企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略) これまでの改革の主な成果と今後の取組 ○回り始めた経済の好循環 ■ 1 兆円規模の設備投資減税等、成長志向の法人税改革 2014 34.62 %→ 2015 32.11 %→ 2016 31.33 %+α ⇨ 今後早期に 20% 台まで引下げ ■設備投資 2012 64.9 兆円→ 2013 68.2 兆円→ 2014 69.3 兆円(2 年間で約 5 兆円 / 7 %の伸び) ⇨ 民間投資促進に向けた「官民対話」の場の創設 ■企業収益 東証上場 2,158 社 純利益合計 2015 年 3 月期 21.2 兆円(史上初の 20 兆円越え) 企業活力 15 経 営 戦 略 「これまでの改革の主な成果と今後の取組」 ■雇用 2 年半で就業者数 100 万人増加、有効求人倍率 1.19 倍(23 年ぶりの高水準) 完全失業率 3.3% ■賃上げの実現 一人当たり平均賃上げ率 2015 年 6 月 2.23% 特に大手企業は 2.52% 平均回答額 8,235 円(17 年ぶりの水準) 稼ぐ力の確立 ○コーポレートガバナンスの強化 (これまでの成果) ■「日本版スチュワードシップ・コード」を 191 機関投資家(生命保険、投資信託等)が受入れ、投資先の 経営監視を強化 ■本年 6 月より「コーポレートガバナンス・コード」が約 2,400 社の上場企業に適用 ■独立社外取締役を選任する上場企業| 2013 年:47% → 2015 年:85%(東証一部) ■上場企業の ROE | 2012 年末:5.8% → 2015 年 5 月:8.5%(約 5 割増) (今後の取組) ■株主総会プロセス見直し、企業情報の統合的開示 (四半期開示一本化等) ■金融機関のコポガバ・財務健全性・リスク管理強化 (独立社外取締役の選任・政策保有株式の縮小等の取組を注視、株価変動リスクへの対応等) ○イノベーション・ナショナルシステム、ベンチャーエコシステムの構築 (これまでの成果) ■大学と企業、基礎研究と実用化開発の間の橋渡し機能を産総研等で整備、研究者が大学や研究機関など複 数の機関に所属するクロスアポイントメント制度(既に 28 大学・機関が導入) (今後の取組) ■国立大学改革(経営力戦略) : 各大学はビジョン、目標を明確にし、 「地域貢献」、 「特定分野」、 「世界水準」 のいずれかを選択。目標達成の度合い、学内改革の実績に応じて運営費交付金を重点配分。財務の自由度 拡大。など ○情報活用による未来社会の構築 (これまでの成果) ■パーソナルデータの適正な利活用を図るため、 「匿名加工情報」の利活用規定、第三者機関の設置(個人 情報保護法の改正) (今後の取組) ■書面・対面原則から IT 利活用原則への転換、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC) の監視・監査 機能の強化 ■マイナンバー(全国民に付番される税・社会保障の共通番号)を 2015 年 10 月から導入。医療費控除、納 税証明の手続きを簡略 ■マイナンバーの利活用範囲を預貯金、特定健康診断に加えて、今後、戸籍、旅券、在留届、証券にまで拡 大(2019 年以降) ■個人番号カード: 2016 年度に住民票、印鑑登録証明書、戸籍謄本等のコンビニ交付、2017 年 7 月以降早 期に健康保険証としての利用を可能に。など 16 企業活力 経 営 戦 略 ○国際展開・立地競争力 (これまでの成果) ■インフラシステム輸出 受注額 2010 年 約 10 兆円→ 2013 年 約 16 兆円、2020 年には約 30 兆円を目標など (今後の取組) ■日豪 EPA の発効(2015 年 1 月)に続き、TPP の早期妥結、日 EU・EPA の年内大筋合意など 個人の潜在力の磨き上げ ○女性の活躍強化 (これまでの成果) ■政権交代後の 2 年半で、女性の就業者数が 90 万人以上増加 (2012 年 12 月:2,653 万人→ 2015 年 5 月:2,747 万人) ■育児休業給付を拡大(休業前賃金の 1/2 ⇒ 2/3)など (今後の取組) ■ 2017 年度末までに約 40 万人分の保育の受け皿を整備 (2014 年度末で 19.1 万人分整備 / なお、女性の就業希望者は約 300 万人) ○外国人材の活躍強化 (これまでの成果) ■外国人技能実習制度を抜本見直し(管理強化、期間 3 → 5 年拡大、介護分野の追加に向けた検討)など (今後の取組) ■「留学生 30 万人計画」 、IT 外国人材受入れを 3 → 6 万人に倍増など ○働き方の改革・人材力の強化 (これまでの成果) ■労働時間ではなく成果で評価される「高度プロフェッショナル制度」、働き過ぎ防止の取組強化、フレッ クスタイム制・裁量労働制の見直しなど、多様な働き方を選択可能に (今後の取組) ■定期的に自己の職務能力をチェックして、キャリアパスを形成する「セルフ・キャリアドック(仮称)」 制度の導入など 企業活力 17 経 営 戦 略 「これまでの改革の主な成果と今後の取組」 ローカルアベノミクスの推進 ○サービス産業の生産性向上 (今後の取組) ■ 2020 年までに労働生産性の伸び率 2.0 %を目標(2013 年時点で 0.8 %)など ○観光分野 (これまでの成果) ■訪日外国人旅行者数:2014 年 1,341 万人 2015 年 1 〜 5 月累計は前年同期比 44.9% 増(仮にこの伸び率が続くと、年間 1,900 万人突破)など (今後の取組) ■ 2,000 万人が訪れる年に、外国人観光客による旅行消費額 4 兆円、日本全国で 40 万人の新規雇用を目指す など 岩盤規制改革 ○農業分野 (これまでの成果) ■農林水産物・食品の輸出額| 2014 年 6,117 億円(前年比 11.1% 増、過去最高) 2015 年 1 〜 4 月累計は前年同期比 26.8% 増 (今後の取組) ■ 2020 年の輸出 1 兆円目標を前倒し達成するため、伸びしろのある国、品目に重点化など ○エネルギー分野 (これまでの成果) ■約 60 年ぶりの抜本的な電力システム改革、ガスシステム改革、2015 年 4 月に電力の広域的運営推進機関 創設 (今後の取組) ■ 2016 年 4 月目途に電力小売市場全面自由化、2017 年目途にガス小売市場全面自由化など ○医療・健康分野 (これまでの成果) ■「地域医療連携推進法人」 地域の医療法人等を一体的に経営。効率的な医療介護サービスを提供など (今後の取組) ■医療の ICT 化 重複検査・投薬を防止するため、2020 年までに大病院での電子カルテ普及率を 9 割に、 2018 年度までに地域医療情報連携ネットワークを全国普及など 18 企業活力 企業法制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証 規則などの改正について」 ・ 「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・ システムの在り方に関する研究会について」 企業法制委員会 企業法制委員会は、平成27年7月2日(木)及び平成27年9月3日(木)に開催されました。7月2日の 委員会では「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁 止法審査手続指針について」をテーマに、一般社団法人 日本経済団体連合会 常務理事の阿部 泰久 委員にご説明いただきました。 また、9月3日の委員会では「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会につ いて」をテーマに、経済産業省 経済産業政策局 産業組織課 中原 裕彦 課長をお迎えし開催致 しました。 両委員会は、川田 順一 委員長(JXホールディングス㈱ 取締役 副社長執行役員)の司会によ り進められ、それぞれご説明があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。 阿部委員 写真左より、川田委員長、中原課長 ご出席者名簿(7月2日開催委員会)○ (9月3日開催委員会)● 委 員 長: ○●川田 順一 JX ホールディングス(株)取締役 副社長執行役員 委員代理: 経済産業省: ○●中原 裕彦 経済産業政策局 ○●黒田 嘉彰 経済産業政策局 ●土屋 光邦 経済産業政策局 ●松村謙太郎 経済産業政策局 ○●中村 昌克 経済産業政策局 ●小池麻友子 経済産業政策局 ○ 土井 淳 (株)日立製作所 法務本部長 ○ 裾分 啓士 三井化学(株)総務・法務部長 兼 秘書室長 ○●柴田 英紀 三菱重工業(株)総務法務部 法務担当部長 ●藤田 和久 三菱商事(株)法務部長 産業組織課 課長 産業組織課 課長補佐 産業組織課 課長補佐 産業組織課 課長補佐 産業組織課 係長 競争環境整備室 調査員 ○ 金谷 明倫 経済産業省 競争環境整備室 室長 ○ 中川 和騰 経済産業省 競争環境整備室 係長 委 員 : ○ 大久保 安 (株)神戸製鋼所 執行役員 法務部長 ●塩梅 和彦 四国電力(株)総務部 部長(法務担当) ●古本 省三 新日鐵住金(株)法務部 部長 ○●佐成 実 東京ガス(株)総務部 法務室長 ●山本 芳郎 東レ(株)法務部長 ●田中耕二朗 トヨタ自動車(株)法務部長 ○●永長 勉 日産自動車(株)法務室 主担 ○●阿部 泰久 (一社)日本経済団体連合会 常務理事 ○ 新井 克彦 パナソニック(株)リスク・ガバナンス本部 副本部長(兼)事業法務部 部長 〇 永野 博 アステラス製薬(株)法務・コンプライアンス部 課長 ●金子 菜穂 アステラス製薬(株)法務・コンプライアンス部 係長 ●大溝 貴史 (株)神戸製鋼所 法務部 次長 〇 三谷桂一郎 四国電力(株)東京支社 総務課 課長 〇 長谷川顕史 新日鐵住金(株)法務部 法務企画室長 ●菅谷 基之 損害保険ジャパン日本興亜(株)法務部 課長 〇 東田 英幸 損害保険ジャパン日本興亜(株)法務部 課長代理 ●佐藤 正人 東北電力(株)総務部 法務室 経営法務課長 〇 篠原 朝子 東レ(株)法務部 〇 須藤 充教 トヨタ自動車(株)法務部 国内法務室 東京 G グループ長 ●高尾 朗 パナソニック(株)リスク・ガバナンス本部 事業法務部 法務課 課長 ●奥田 健史 (株)日立製作所 法務本部 〇 丹羽 正典 富士通(株)法務・コンプライアンス・知的財産本部 コーポレート法務部 部長 ●桐野 哲平 富士通(株)法務・コンプライアンス・知的財産本部 コーポレート法務部 〇 中尾智三郎 三菱商事(株)法務部 法務部長代行 (企業名五十音順、敬称略) 企業活力 19 企 業 法 制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 ・コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について (7/2 開催) ・独占禁止法審査手続指針について 1. 東京証券取引所においてコーポレートガバナンス・コードを策定することに伴い、改正された有 価証券上場規程等についてご説明がありました。 コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う有価証券上場規程等の一部改正について 2015 年 5 月 13 日 株式会社東京証券取引所 当取引所は、有価証券上場規程等の一部改正を行い、本年 6 月 1 日から施行します。 今回の改正は、当取引所においてコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という。 )を策定することに 伴い、コードについて“Comply or Explain” (原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)を求 めるほか、独立社外取締役の円滑な選任に資するため、独立性に関する情報開示について見直しを行うなど、所要の 制度整備を行うものです。 Ⅰ 改正概要 1 .コードの策定に伴う制度整備 (1)コードを実施しない場合の理由の説明 (備 考) ・有価証券 E 場規程(以下、 [規程」と いう。)別添、第 436 条の 3 ・上場会社は、コードを実施しない場合には、その理由を説明するも のとします。 (2)コードを実施しない場合の理由の説明の媒体 ・「コードを実施しない場合の理由の説明」は、コーポレート・ガバ ナンス報告書に記載するものとします。 (3)コードの尊重 ・有価証券上場規程施行規則(以下、 「施行規則」という。)第 211 条第 4 項等 ・規程第 445 条の 3 ・「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」の尊重規定は、コード の趣旨・精神の尊重規定に置き換えます。 2 .独立役員の独立性に関する情報開示の見直し ・上場会社が独立役員を指定する場合には、当該独立役員と上場会社 ・施行規則第 211 条第 4 項第 6 号等 との間の特定の関係の有無及びその概要を開示するものとします。 Ⅱ 施行日 ・本年 6 月 1 日から施行します。 ・1 . (2)の改正を反映したコーポレート・ガバナンス報告書は、本年 6 月 1 日以後最初に開催する定時株主総会の 日から 6 か月を経過する日までに当取引所に提出するものとします( 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2015 年 6 月改訂版) 」参照) 。 以上 2. 公正取引委員会が、行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を明確化するために定めるこ ととしている「独占禁止法審査手続に関する指針」の案がパブリックコメントにかけられましたの で、その内容についてご説明があり、意見交換がなされました。 独占禁止法審査手続に関する指針(案) 平成 27 年○月○日 公正取引委員会 はじめに 公正取引委員会は、今般、行政調査手続の適正性をより一層確保する観点から、これまでの実務を踏まえて行政調 査手続の標準的な実施手順や留意事項等を本指針において明確化し、独占禁止法違反被疑事件の調査に携わる職員に 20 企業活力 企 業 法 制 周知徹底することとした。また、同様の観点から、調査手続の透明性を高め、円滑な調査の実施に資するよう、本指 針を定めて公表することにより、その内容を広く一般に共有することとしたものである。(注 1) (注 1)本指針の策定・公表に併せて、独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続における標準的な実施手順等について、本指針の内容を踏 まえて事業者等向けに作成した資料(「独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の概要について」(平成 27 年○月○日公正取引委員 会)。以下、「事業者等向け説明資料」という。)を公表している。 第 1 総論 1 独占禁止法の目的と公正取引委員会の使命 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和 22 年法律第 54 号。以下「独占禁止法」という。)は、私的 独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等の行為を禁止し、事業活動の不当な拘束を排除すること等により、公正 かつ自由な競争を促進し、もって、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進す ることを目的としている。 独占禁止法の目的を達成するため、公正取引委員会が設置されており、市場における基本ルールである独占禁止法 を厳正・的確に執行し、競争秩序を早期に回復するための措置を講ずることが公正取引委員会に求められている。 公正取引委員会は、独占禁止法の違反の有無を明らかにし、違反行為を排除するために必要な措置等を命じるため、 違反被疑事業者等(注 2)に対する調査権限を付与されており、行政調査手続(注 3)において、罰則により間接的 に履行を担保するという間接強制権限に基づいて立入検査、提出命令、留置、出頭命令及び審尋、報告命令等の処分 を行う。このほか、相手方の任意の協力に基づく供述聴取、報告依頼等により調査を行う。 (注 2) 「違反被疑事業者等」とは、違反が疑われる事業者(個人事業主を含む)及び事業者団体等の事件関係人のほか、参考人を含む。 (注 3)公正取引委員会の独占禁止法違反被疑事件の調査手続には、行政調査手続(排除措置命令等の行政処分を行うための調査手続)と 犯則調査手続(刑事処分を求めて告発を行うための調査手続)の 2 つがあるが、このうち、本指針は、公正取引委員会の行政調査 手続を対象としている。 2 公正取引委員会における事件調査の体制と監督者の責務 (1)公正取引委員会は、独占禁止法第 47 条第 2 項の規定により職員を審査官として指定し、独占禁止法違反被疑事件 の調査に当たらせている。公正取引委員会において、事件の調査は審査局が担当しており、審査局長が、審査管理 官の助けを得て、審査長又は上席審査専門官に命じて、これを行わせる。審査長及び上席審査専門官は、担当事件 において、審査官等(審査官その他事件の調査に従事する職員。以下同じ。)を指揮・監督する。 (2)審査局長、審査管理官、審査長及び上席審査専門官(地方事務所においては審査統括官)は、自ら本指針に従っ て調査に携わるとともに、指揮下の審査官等に対して、本指針に従った調査を実施するよう指導・監督する。また、 審査長、上席審査専門官等は、違反被疑事業者等から、直接又は代理人を通じて、調査手法についての申入れその 他担当事件に関して意見があった場合、誠意をもってこれに対応するものとする。ただし、これらの意見に拘束さ れるものではない。 3 独占禁止法違反被疑事件の調査に携わる職員の心構え 独占禁止法違反被疑事件の調査に携わる職員は、以下の点に留意して業務を遂行するものとする。 (1)調査における心構え 調査に携わる職員は、独占禁止法の目的を常に念頭に置き、独占禁止法の厳正・的確な執行という公正取引委員 会の使命を十分に果たすため、冷静な判断力と実態解明への確固たる信念を持って、着実に調査を実施しなければ ならない。 (2)綱紀・品位・秘密の保持 調査に携わる職員は、国民の信用・信頼を確保するため、常に綱紀・品位の保持に努めるとともに、業務の遂行 に当たって知り得た秘密を漏らしてはならない。 (3)適正な手続の遵守 調査に携わる職員は、事業者又はその従業員等に対して法令上の権限を行使する立場にあることを自覚しなけれ ばならない。違反被疑事件の調査に当たっては、調査を受ける事業者又はその従業員等の理解と協力が得られるよ う、当該調査に係る手続について必要な説明を行うとともに、威迫、強要等と受け取られるような態度で接するこ 企業活力 21 企 業 法 制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 となく、常に法令の規定に従った適正な手続に基づいてその権限を行使しなければならない。 (4)効率的・効果的な調査と多面的な検討 調査に携わる職員は、相手方の説明に真摯に耳を傾けるとともに、効率的・効果的な調査によって事案の実態を 解明するよう努めなければならない。また、違反事実の立証に当たっては、物的証拠その他事件に関する十分な証 拠を収集するよう努めるとともに、相手方の供述については、予断を排して慎重かつ詳細に聴取し、その内容の合 理性、客観的事実との整合性等について十分に検討した上で、その信用性について判断しなければならない。 第 2 審査手続 1 立入検査 (1)根拠・法的性格 公正取引委員会は、独占禁止法第 47 条第 1 項第 4 号の規定に基づき、違反被疑事業者等の営業所その他必要な場 所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査することができる。また、同項第 3 号の規定に 基づき、事件調査に必要と考えられる帳簿書類その他の物件について、その所持者に提出を命じ、当該物件を留め 置くことができる。 独占禁止法第 47 条に規定される立入検査その他の処分は、相手方がこれを拒否した場合に直接的物理的に実力 を行使して強制し得るものではないが、相手方に調査応諾の行政上の義務を課し、その履行が罰則(独占禁止法第 94 条)によって担保されているという意味で間接強制力を伴ったものであり、違反被疑事業者等が、調査に応じ るか否かを任意に判断できる性格のものではない。 なお、独占禁止法第 47 条の規定に基づく間接強制力を伴う立入検査ではなく、相手方の事業所等に赴き、相手 方の任意の協力に基づいて資料の提出等を依頼するという調査を行う場合もある。 (2)立入検査時の手続・説明事項 立入検査に際して、審査官は、立入検査場所の責任者等に対し、身分を示す審査官証を提示した上で、行政調査 の根拠条文(独占禁止法第 47 条) 、事件名、被疑事実の要旨、関係法条等を記載した告知書(公正取引委員会の審 査に関する規則(平成 17 年公正取引委員会規則第 5 号。以下「審査規則」という。 )第 20 条)を交付し、検査の円 滑な実施に協力を求めるとともに、検査に応じない場合には罰則(独占禁止法第 94 条)が適用されることがある 旨を説明する。また、併せて、事業者等向け説明資料を手交する。 なお、相手方の事業所等に赴き、相手方の同意の下で資料の提出等を依頼する場合には、審査官等は、調査の相 手方に対し、当該調査の趣旨を説明するとともに、当該調査が独占禁止法第 47 条の規定に基づくものではなく、 相手方の任意の協力に基づいて行うものであることを説明した上で、同意を得て調査を行う。 (3)立入検査の対象範囲 立入検査は、違反被疑事業者等の営業部門、経理部門、法務部門等その名称にかかわらず、審査官が事件調査に 必要であると合理的に判断した場所に対して行うものであり、違反被疑事業者等の従業員の居宅等であっても、違 反被疑事実に関する資料が存在することが疑われ、事件調査に必要であると合理的に判断した場合には立入検査の 対象となる。 (4)物件の提出及び留置に係る手続 ア 物件の提出命令は、審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した範囲で行うものであり、個人の所有物 のように、一般にプライバシー性の高いもの(手帳、携帯電話等)であっても、違反被疑事実の立証に資する情 報が含まれていることが疑われるため、 事件調査に必要であると合理的に判断した場合には提出を命じる。また、 提出を命じる際には、当該物件の原物について現状のまま提出を命じる。 イ 物件の提出を命じ留置する際には、提出命令書等に対象物件の品目を記載した目録を添付する(審査規則第 9 条)。当該目録には、帳簿書類その他の物件の標題等を記載するとともに、所在していた場所や所持者、管理者 等を記載して、物件を特定する。留置に当たっては、検査場所の責任者等の面前で物件を一点ずつ提示し、全物 件について当該目録の記載との照合を行う。 ウ 立入検査当日における提出物件の謄写の求めについては、事業者の権利として認められるものではないが、 日々 の事業活動に用いる必要があると認められるものについて、立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で認めるも のとする。また、事業者からの求めがあれば、立入検査の翌日以降に、日程調整を行った上で、公正取引委員会 が指定する場所において、提出物件(留置物)の閲覧・謄写を認める(審査規則第 18 条)。 なお、謄写の方法については、事業者所有の複写機だけではなく、デジタルカメラ、スキャナー等の電子機器 を用いることも認められる。 22 企業活力 企 業 法 制 (5)立入検査における弁護士の立会い 立入検査において、審査官は、立入検査場所の責任者等を立ち会わせるほか、検査先事業者からの求めがあれば、 立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で弁護士の立会いを認めるものとする。ただし、弁護士の立会いは、事業 者の権利として認められるものではないため、弁護士が到着するまで立入検査の開始を待つ必要はない。 2 供述聴取 (1)根拠・法的性格 供述聴取には、任意の供述聴取及び間接強制力を伴う審尋がある。任意の供述聴取は、聴取対象者の任意の協力 に基づいて聴取を行うものであり、審尋は、独占禁止法第 47 条第 1 項第 1 号の規定に基づいて、聴取対象者に出頭 を命じた上で聴取を行うものである。審尋の場合には、聴取対象者が出頭せず又は陳述をせず若しくは虚偽の陳述 をした場合には罰則(独占禁止法第 94 条)が適用されることがある。 (2)供述聴取時の手続・説明事項 ア 任意の供述聴取 ア 任意の供述聴取は、審査官等が、直接又は事業者若しくは代理人を通じて、聴取対象者の都合を確認し、任 意の協力に基づいて行う供述聴取である旨を明確にした上で、聴取対象者の同意を得て行う。 イ 任意の供述聴取を行うに当たって、審査官等は、冒頭、聴取対象者に対し、任意の供述聴取である旨及び任 意の供述聴取であっても事案の実態を解明して法目的を達成するためには自らの経験・認識に基づき事実を話 してもらう必要がある旨を説明する。また、任意の供述聴取に協力が得られない場合には別途審尋の手続に移 行することがある旨を、必要に応じて説明する。 イ 審尋 ア 独占禁止法第 47 条の規定に基づき、聴取対象者に出頭を命じて審尋する場合は、出頭命令書を送達して行 う(審査規則第 9 条) 。出頭命令書には、法的根拠、出頭すべき日時及び場所、命令に応じない場合の罰則に ついて記載する。 イ 審尋を行うに当たって、審査官等は、冒頭、聴取対象者に対し、その法的性格(独占禁止法第 47 条の規定 に基づくものである旨)を説明するとともに、陳述を拒み又は虚偽の陳述をした場合には罰則(独占禁止法第 94 条)が適用されることがある旨を説明する。 ウ 任意の供述聴取に係る事前連絡時又は審尋に係る出頭命令時に、審査官等は、聴取対象者に対し、直接又は事 業者若しくは代理人を通じて、事業者等向け説明資料のウェブ掲載場所を伝えるとともに、聴取対象者が事前に 同資料の内容を確認していない場合には、当該聴取対象者に対する初回の供述聴取の開始時に、事業者等向け説 明資料を手交する。 エ 供述聴取を行うに当たって、審査官等は、必要に応じて、あらかじめ聴取対象者に対し、供述を録取した書面 は、独占禁止法第 49 条の意見聴取手続において、閲覧・謄写の対象となる可能性がある旨及び閲覧・謄写制度 の趣旨・目的等(目的外利用が認められない旨を含む。)(注 4)について説明する。 (注 4)事業者が、意見聴取手続において閲覧・謄写した供述調書等の内容をもって、自社従業員に対する懲戒等の不利益取扱い、他の事 業者に対する報復行為等を行う可能性があるときは、「第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」(独 占禁止法第 52 条)に該当し、公正取引委員会は閲覧・謄写を拒むことができる。このように、事業者が閲覧・謄写した内容を意見 聴取手続又は排除措置命令等の取消訴訟の準備以外に利用することは目的外利用となるため、閲覧・謄写の申請書の様式には、目 的外利用はしない旨の一文が置かれている。 (3)供述聴取における留意事項 ア 供述聴取を行うに当たって、審査官等は、威迫、強要その他供述の任意性を疑われるような方法を用いてはな らない。また、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、 供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いては ならない。 イ 供述聴取時の弁護士を含む第三者の立会い(審査官等が依頼した通訳人を除く。)、供述聴取過程の録音・録画、 調書作成時における聴取対象者への調書の写しの交付及び供述聴取時における聴取対象者によるメモの録取につ いては、違反被疑事件の実態解明の妨げになることが懸念されることなどから、これらを認めない。 (4)聴取時間・休憩時間 ア 供述聴取は、1 日につき 8 時間(休憩時間を除く。 )までを原則とし、聴取時間が 1 日につき 8 時間を超える場 企業活力 23 企 業 法 制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 合には、聴取対象者の同意を得るものとする。また、やむを得ない事情がない限り、深夜に及ぶ聴取は避けなけ ればならない。 イ 供述聴取において、聴取が長時間となる場合には、聴取対象者の休憩時間を適時適切に確保する。 なお、休憩時間は、原則として聴取対象者の行動を制約しないこととする。ただし、例えば、複数の関係者を 対象として、同日の近接する時間に聴取を実施する場合など、休憩時間に聴取対象者が他の事件関係者と接触し、 供述内容の調整(口裏合わせ等)が行われるなどのおそれがあるときは、審査官等が付き添う。 また、食事時間等の休憩時間は、供述聴取に支障が生じない範囲で、聴取対象者が弁護士等の外部の者と連絡 を取ることや記憶に基づいてメモを取ることを妨げないものとし、聴取対象者が必要に応じて弁護士等に相談で きる時間となるよう配慮しつつ適切な時間を確保するようにする。 ウ 審査官等は、供述聴取を行ったときは、聴取時間、休憩時間について記録する。 (5)調書の作成・署名押印の際の手続 ア 審査官等は、聴取対象者が任意に供述した場合において、必要があると認めるときは、供述調書を作成するも のとする。また、審査官は、独占禁止法第 47 条の規定に基づいて聴取対象者を審尋したときは、審尋調書を作 成しなければならない。 イ 審査官等は、違反事実の立証に当たって、それまでに収集した様々な物的証拠や供述等を総合的に勘案した上 で、当該事件に関係し、かつ、必要と認める内容について、聴取対象者の供述内容を正確に録取し、供述調書又 は審尋調書を作成する。聴取対象者が供述したことを速記録のように一言一句録取することは要しない。 ウ 審査官等は、供述調書又は審尋調書を作成した場合には、これを聴取対象者に読み聞かせ、又は閲覧させて、 誤りがないかを問い、聴取対象者が誤りのないことを申し立てたときは、聴取対象者の署名押印を得て完成させ る。聴取対象者が、自ら供述した内容についての増減変更(調書の記載の追加、削除、訂正)の申立てをしたと きは、その趣旨を十分に確認した上で、当該申立ての内容を調書に記載し又は該当部分を修正し、聴取対象者の 署名押印を得る。また、聴取対象者が誤りのないことを申し立てたにもかかわらず、署名押印を拒絶したときは、 その旨を調書に記載するものとする。 (審査規則第 11 条及び第 13 条) 3 報告命令 (1)根拠・法的性格 公正取引委員会は、独占禁止法第 47 条第 1 項第 1 号の規定に基づき、違反被疑事業者等に対し、事件調査に必要 な情報について、報告を求めることができる。これに違反して、違反被疑事業者等が報告をせず又は虚偽の報告を した場合には罰則(独占禁止法第 94 条)が適用されることがある。 なお、独占禁止法第 47 条の規定に基づく間接強制力を伴う報告命令ではなく、相手方の任意の協力に基づいて 報告を依頼する場合もある。 (2)報告命令時の手続 独占禁止法第 47 条の規定に基づき、違反被疑事業者等から報告を徴する場合は、報告命令書を送達して行う(審 査規則第 9 条) 。報告命令書には、報告書(回答)の様式を添付した上、法的根拠、報告の期限、命令に応じない 場合の罰則について記載する。 なお、相手方の任意の協力に基づいて報告を依頼する場合には、報告書(回答)の様式を添付した上、報告の期 限を記載した報告依頼書を送付するなどして行う。 4 審査官の処分に対する異議申立て、任意の供述聴取に関する苦情申立て 独占禁止法第 47 条の規定に基づいて審査官がした立入検査、審尋等の処分を受けた者が、当該処分に不服があ るときは、処分を受けた日から 1 週間以内に、その理由を記載した文書をもって、公正取引委員会に異議の申立て をすることができる(審査規則第 22 条) 。 また、任意の供述聴取については、聴取対象者等が、聴取において本指針「第 2 2 供述聴取」に反する審査 官等の言動等があったとする場合には、当該聴取を受けた日から 1 週間以内に、書面により、公正取引委員会に苦 情を申し立てることができる。 審査官等は、常に適正な手続に基づいてその権限を行使すべきであり、異議や苦情を申し立てられるような対応 を行わないことが求められるが、仮に異議や苦情を申し立てられた場合には、当該申立てに係る調査に、誠実に対 応するものとする。 24 企業活力 企 業 法 制 コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について(9/3 開催) 我が国を取り巻く現状 ▷ 我が国企業については、ローリスク・ ローリターンの安定志向の傾向(主要 OECD 諸国の比較において、日本の ROE・ROA は低い水準)にあり、引 き続き「稼ぐ力」の向上が課題。 ▷ 世界的には、グローバル化に伴い、内外 からの人材獲得競争の時代に突入して おり、国際的に遜色のない報酬・保険な どの役員就任条件を整えることが必要。 ▷ 会社法改正やガバナンス・コード等の 制度整備を踏まえ、中長期的な企業価 値向上に向けた「攻め」のガバナンス 体制の強化が必要。 研究会の成果の概要 ▷ コーポレート・ガバナンス・システム の在り方に関する研究会(座長:神田 秀樹 東京大学大学院法学政治学研究 科教授)での検討を踏まえ、①我が国 企業のプラクティス集、②英米におけ る取組の概要、③法的論点に関する解 釈指針、④ D & O 保険の実務上の検討 ポイントの 4 点の成果物を作成し、平 成 27 年 7 月に公表。 ①新たなボードプラクティス 〜コードの原則を踏まえた新しい企業実務〜 ▷ コーポレートガバナンス・コードが創 設されたことにより、取締役会の機能 強化が求められているが、同コードが 想定している内容は、これまでの我が 国企業において馴染みのあるものばか りではない。 ▷ また、社外取締役の導入は近年急速に 進んだものであり、社外取締役にどの ような役割・機能を期待するのかにつ いて、具体的な実務(プラクティス) が蓄積されていない。 ▷ このため、我が国企業の主体的な検討 や取組の参考となることを期待して、 取締役会における実務の具体例(ボー ドプラクティス)を取りまとめた。 企業活力 25 企 業 法 制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 〜我が国企業の取組事例〜 〜海外企業の先進事例〜 ▷ 我が国企業がガバナンスに関する取 組を検討するに当たって、海外企業 の取組を参考にすることが有益であ ることから、開示資料を整理。 ▷ それぞれの開示事項について企業の 経営戦略との関係を明らかにしつ つ、アイコンやグラフを使って株主 の目線に立って分かりやすく説明さ れている状況を紹介。 ▷ さらに、取締役会の評価や後継者計 画の策定など、コーポレートガバナ ンス・コードで対応が求められてい るものの、日本では必ずしも実務の 蓄積が多くない分野についても参考 となる取組を紹介。 ②役員報酬 〜業績連動・株式報酬の現状〜 ▷ 我が国企業の役員報酬は依然として 固定報酬中心であり、英米と比して 業績連動報酬や株式報酬の割合が低 く、業績向上のインセンティブが効 きにくい状況。 ▷ 加えて、パフォーマンス・シェアや リストリクテッド・ストックといっ た欧米で一般的に利用されている株 式報酬の手法が未発達。 ▷ 今後、こうした報酬体系の違いが、 グローバルに経営人材を獲得し、我 が国の有能な経営人材と統一的な管 理を行う体制の構築に障害となる可 能性。 26 企業活力 企 業 法 制 〜各種報酬プランの概要及び検討の視点〜 ▷ 欧米では、これまでに広く活用さ れたストックオプションに加えて、 パフォーマンス・シェア(PS)や リストリクテッド・ストック(RS) といった新しいタイプの株式報酬制 度が発展してきている。 ▷ なお、国内においては、ストックオプ ションが利用されているが、 「信託」 を用いて PS やRS に類似した効果を 実現する制度の導入も始まっている。 〜多様な株式報酬の活用〜 ③ D & O 保険と会社補償 〜グローバル水準の補償の仕組みの必要性〜 ▷ 優秀な経営人材の確保に向けた国内 外における人材獲得競争はますます 激化。また、国際的な訴訟リスクも 増大。 ▷ 時として結果責任を問われかねない 現状を放置したままでは、CEO 等 が適切なリスクテイクをする際の障 害になる。 ▷ 我が国に会社補償や会社役員賠償責 任保険(D & O 保険)といったグロー バル水準の補償の仕組みがないこと が人材獲得の大きな障害に。 〜会社補償の活用〜 これまでの問題点 ▷ 英米においては、役員として就任する際には、役員 が個人で被った損害や訴訟費用等を会社が補償(会 社補償“Indemnification” )できる旨の手当てを設 けることが一般的。 ▷ 他方、我が国の法制において会社補償が可能か否か が不明であったため、こうした実務は存在せず。 企業活力 27 企 業 法 制 「コーポレートガバナンス・コードを受けた東証規則などの改正について」・「独占禁止法審査手 続指針について」と「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会について」 今回の成果 我が国の会社法においても、解釈上、社外取締役を活用した一定の要件や範囲の下、会社補償が可能なことを明確 化。 〜 D & O 保険の活用〜 これまでの問題点 ▷ 社長独断の不祥事の場合に他の役員が保護されないなど、我が国において普及している会社役員賠償責任保険(D & O 保険)は、役員の適切な保護を実現するため、十分な活用がされているとは言い難い。 ▷ 会社法上、会社が保険料を全部負担してよいか解釈上の争いがあるため、保険料の一部(※)について、役員が個 人で負担している。 株主代表訴訟を担保する部分の保険料 (※) 今回の成果 ④法的論点の解釈に関するこれまでの問題点 ▷ 会社法の法解釈上、取締役会の上程 事項、「業務を執行した」の範囲、 取締役の監視義務、取締役の責任追 及の提訴判断について、不明確な点 が存在していた。 28 企業活力 企 業 法 制 法的論点に関する解釈指針 1(上程事項) ▷ 監査役会設置会社において、上程事 項の範囲を決定する上での考慮要素 を示し、一定の場合にはその範囲を 限定的に考えることができる旨を明 示。 (上程事項に関する実務については 前述の 「我が国企業プラクティス集」 でも紹介) 法的論点に関する解釈指針 2( 「業務を 執行した」 ) ▷ 「業務を執行した」にあたらず、社 外取締役が行うことができる行為を 例示。 法的論点に関する解釈指針 3(監視義務、提訴判断) ▷ 社外取締役の監視義務の範囲に関する考え方を明 示。 ▷ 取締役の責任追及に関する提訴判断においては、社 外取締役を活用することが望ましい旨を明示。 ▷ 裁判所が、監査役・社外取締役の不起訴判断を尊重 し、株主による訴訟提起を却下できる仕組みの導入 が将来的な立法課題。 社外取締役の監視義務 内部統制システムが機能している場合、 ▷ 社外取締役の監視義務の範囲は、内部統制システム を前提として考えるべき。 ▷ 内部統制システムの機能・運営を確認し、その過程 で不正の端緒を発見した場合に限り適切に調査を行 えば足りる。 取締役の責任追及に関する提訴判断 企業活力 29 ¥ 「法人税改革を含む税制 企業税制 改正の今後の課題」 税制委員会 税制委員会は、平成27年7月14日(火)に、住吉 克之 委員長(東京電力㈱)の司会進行により開催 されました。新居 泰人 企業行動課長から「法人税改革を含む税制改正の今後の課題」に関するご説 明があり、参加者による活発な意見交換が行われました。 左から住吉委員長、新居課長 ご出席者名簿 委 員 長: 住吉 克之 東京電力(株)監査特命役員 経済産業省: 新居 泰人 経済産業省 経済産業政策局 企業行動課 課長 委 員: 菖蒲 静夫 キヤノン(株)財務経理統括センター 税務担当部長 合間 篤史 新日鐵住金(株)財務部 上席主幹 丹 昌敏 住友化学(株)経理室 部長(税務) 小野 和彦 ソニー(株)グローバル経理センター 税務企画担当 統括部長 吉田 修一 東京ガス(株)経理部長 税制委員会の様子 石㟢 正樹 トヨタ自動車(株)渉外部渉外室 係長 小畑 良晴 (一社)日本経団連 経済基盤本部長 大貫 篤繁 日本電気(株)経理部 主計室長 関谷 裕介 (一社)日本貿易会 政策業務グループ長 部長(財務・経理担当) 坂本 隼人 パナソニック(株)経理・財務部 経理渉外担当主幹 川㟢 直行 (株)日立製作所 グループ財務戦略本部 担当本部長 兼 税務統括部長 委 員 代 理: 石川 公丈 コスモ石油(株)経理部税務グループ長 佐藤 政広 石油連盟 企画部財務グループ長 鈴木 弘太 太平洋セメント(株)経理部経理グループサブリーダー (企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略) 法人税改革を含む税制改正の今後の課題 平成27年度改正の決定事項 %(▲ 2.51 %)、平成 28 年度に 31.33 %(▲ 3.29 %)と なる。 ・法人税については、平成 29 年度にかけて段階的に財 ・なお、第 2 段階として、平成 28 年度税制改正において 源が確保されることとなるが、経済の好循環の実現を も、課税ベースの拡大等により財源を確保して、平成 力強く後押しするため、平成 27 年度から税率引下げ 28 年度における税率引下げ幅の更なる上乗せ(+α) を先行させる。 を図る。 ・大法人向けの法人事業税所得割については、外形標準 課税の拡大にあわせて、標準税率を引き下げる。 ・これらにより、国・地方を通じた法人実効税率(現行: 34.62 %(標準税率ベース) )は、平成 27 年度に 32.11 30 企業活力 ・さらに、その後の年度の税制改正においても、引き続 き、法人実効税率を 20 %台まで引き下げることを目 指して、改革を継続する。 企 業 税 制 改正概要 ※東京都ベースであれば、現行の法人実効税率は 35.64%。 平成28年度改正で議論となる経済産業関係税制 ○償却資産課税 新たな投資による地域経済の活性化の効果など幅広い観点から、国際的に稀で、設備投資コストの上乗せとなる償 却資産課税の見直しに向け、引き続き検討を行っていく。 ○グリーン投資減税 再生可能エネルギー・省エネルギーの推進に向け、エネルギー基本計画及びエネルギーミックスを踏まえ、設備を 重点化した上で延長を要望する。 <創設趣旨> エネルギー起源 CO2 排出削減や再生可能エネルギー導入拡大に資する設備投資を加速化させるため、税制上のイン センティブを与える制度。 (平成 23 年度創設) <制度・概要> 対象設備を定め、税制の適用期間内に取得・建設し、その日から 1 年以内に事業の用に供した場合、事業を開始し た日を含む事業年度において 30 %の特別償却を認める(平成 28 年 3 月 31 日まで) さらに、風力発電設備については即時償却を認める(平成 28 年 3 月 31 日まで) また、中小企業者等は、特別償却及び即時償却に加え、7 %の税額控除との選択が可能(平成 28 年 3 月 31 日まで) 企業活力 31 企 業 税 制 「法人税改革を含む税制改正の今後の課題」 ○資源開発促進税制 資源の自主開発を促進し、我が国へのエネルギー・鉱物資源の安定供給を確保するため、資源の探鉱・開発に対す る支援税制の延長等を図る。 資源開発促進税制 ○資源の自主開発を促進し,我が国へのエネルギー・鉱物資源の安定供給を確保するため、資源の 探鉱・開発に対する支援税制 (減耗控除制度、海外投資等損失準備金制度)の延長等を図る。 【達成目標】石油・天然ガスの自主開発比率:40%(現状:約 23%(平成 25 年度)) ベースメタルの自給率:80%([銅]現状:約 59%(平成 25 年度)) 現行制度 【適用期限:平成 27 年度末まで】 ※出資額の 90% (探鉱法人) 又は出資額の 30% (開発法人) ※売上又は所得の一部を準備金として積立てた上で、3 年以内 に取崩して探鉱費に充てた場合は、探鉱費分を特別控除。 ○役員賞与の損金不算入規定の見直し 「稼ぐ力」の向上に向け、企業の適切なリスクテイクを支えるインセンティブとしての業績連動型報酬制度の導入 促進を目指す。 ○車体課税 消費税率 10% 段階の車体課税の見直しにおいては、自動車をめぐるグローバルな環境や課税のバランス、自動車 に係る行政サービス等を踏まえた議論を行う。 ○地域経済再生、中小企業・小規模事業者の活性化 交際費課税の特例、少額滅却資産および個人事業主の事業用資産に係る軽減措置について議論を行う。 32 企業活力 雇用人材 日本 再興戦略改訂2015と 賃上げフォローアップ調査結 果について 雇用・人材開発委員会 雇用・人材開発委員会は、平成27年9月7日(月)に平山 喜三 委員長(山九株式会社 常任顧問)の 司会進行により、開催されました。 委員会では、経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 小林 浩史 室長から、「日本再興戦略改 訂2015と賃上げフォローアップの調査結果」についてご説明があった後、参加者を交えて活発な意 見交換が行われました。 写真左から平山委員長、小林室長 委員会の様子 ご出席者名簿 委 員 長: 平山 喜三 山九(株)常任顧問 経済産業省: 小林 浩史 経済産業政策局 産業人材政策室長 佐藤 幸博 経済産業政策局 産業人材政策室 総括係長 委 員 : 秋元 潤 (株)IHI 人事部 人材開発グループ 部長 鈴木 康公 コスモ石油(株)人事部 人事部長 平田 章 JX 日鉱日石エネルギー(株)人事部長 齋藤 豊 昭和電工(株)総務・人事部長 髙島 正人 トヨタ自動車(株)東京総務部 人事室長 児山 哲哉 日産自動車(株)日本人事企画部 人事企画グループ 主担 田代 康彦 日本電気(株)人事部長 田宮 直彦 (株)日立製作所 人財統括本部 人事教育部長 播磨 秀一 (一財)貿易研修センター 人材育成部 部長補佐 脇澤 寛 本田技研工業(株) 人事部グローバル人材開発センター 所長 委員代理: 山上 晃弘 (一財)エンジニアリング協会 企画渉外部 部長代理 新濱 功啓 大阪ガス(株)東京支社 副支社長 甲斐 智広 (株)神戸製鋼所 人事労政部 人事グループ長 石黒 芳紀 スズキ(株)東京支店 次長 森崎 義仁 太平洋セメント(株)人事部 人事グループ サブリーダー 藤井 智康 (一社)日本経済団体連合会 労働政策本部員 高栁 正人 (公財)日本生産性本部 ワークライフ部課長 細川 純治 パナソニック(株)人材戦略部 タレントマネジメント課 課長 浅香 光康 富士ゼロックス(株)人事部 人事グループ 計画チーム リーダー (企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略) 企業活力 33 雇 用 人 材 日本再興戦略改訂 2015 と賃上げフォローアップ調査結 果について 「日本再興戦略改訂2015と賃上げフォローアップの調査結果」について 日本再興戦略改訂 2015 の概要 ■鍵となる施策 ■雇用制度改革・人材力の強化(人材関連施策抜粋) 1 .失業なき労働移動の実現/マッチング機能の強化/多様な働き方の実現/若者・高齢者等の活躍推進/グロー バル化等に対応する人材力の強化 (1)施策の主な進捗状況 ・働き過ぎ防止や「高度プロフェショナル制度」等の働き方改革の着実な推進 ・職務等を限定した「多様な正社員」の普及・拡大策に向けた取組の推進 ・予見可能性の高い紛争解決システムの構築に向けた分析・調査を実施 ・未来を創る若者の雇用・育成のための総合的対策を推進 ・人材不足分野における人材確保・育成対策の総合的な推進 ・グローバル化等に対応する人材力の育成強化 (2)新たに講ずべき具体的施策 ①働き方改革の実行・実現 ・働き過ぎ防止のための取組強化 ・ 「高度プロフェッショナル制度」の早期創設 ・持続的な経済成長に向けた最低賃金のための環境整備 ②未来を支える人材力の強化 (働き手自らの主体的なキャリアアップの取組支援) 34 企業活力 雇 用 人 材 ・企業における人材育成等の取組の情報提供の促進 ・ 「セルフ・キャリアドック(仮称) 」の導入促進 ・教育訓練休暇制度・教育訓練短時間勤務制度の導入促進 ・企業主導による能力評価の取組促進等 ・企業における従業員のキャリアアップの取組支援の強化 ・中高年人材の最大活用 (職業意識・実践的職業能力を高めるための教育機関改革) ・小学校、中学校、高等学校における職場体験活動等の推進 ・専修学校と産業界が連携した教育体制の構築 ・大学等におけるインターンシップの推進 ・専門職大学院における高度専門職業人養成機能の充実 ・大学等における「職業実践力育成プログラム」認定制度の創設 ・実践的な職業教育を行う新たな高度教育機関の制度化 ・職業実践能力の獲得に資する教育プログラムへの教育訓練給付による支援拡充 ③予見可能性の高い紛争解決システムの構築等 ④多様な雇用・就業機会の確保等 ・高齢者の活躍推進—就労マッチングに資する情報などの充実/多様な雇用・就業機会の創出 ・障害者等の社会参加の推進 2 .女性の活躍推進/外国人材の活用 (1)施策の主な進捗状況 ・保育の受け皿及び保育士等の確保の強化 ・ 「放課後子ども総合プラン」を着実に実施 ・女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みを構築 ・高度外国人材向けの在留資格を新設 ・外国人技能実習制度の新制度への移行に向けた取組を推進 ・持続的成長の観点から緊急に対応が必要な分野において新たな就労制度を創設 (2)新たに講ずべき具体的施策 ①女性の活躍推進 ( 「待機児童解消」に向けた施策の確実な実行) ・保育士確保に向けた取組 ・保育の担い手の確保 ・国家戦略特区の都市公園内における保育所等の設置 ・保育の場の整備状況の的確な実態把握と積極的な広報 ・保育所における第三者評価の受審促進 (長時間労働の是正や柔軟な勤務形態の導入等に向けた企業の取組促進) ・企業における取組の情報開示の徹底 ・各種認定制度・大臣表彰等を通じた先進的取組事例の推進 ・ (プラチナ)くるみんマークの普及等 ・企業に対する長時間労働の是正に向けた取組インセンティブの付与 ・その他長時間労働是正に向けた取組の検討 ・企業における正社員転換・雇用管理改善の強化 ・男性が育児を行うことや家族の介護による離職への対応策 (女性が働きやすい制度等への見直し) 企業活力 35 雇 用 人 材 日本再興戦略改訂 2015 と賃上げフォローアップ調査結 果について ・女性が働きやすい制度等への見直し (家族支援環境の拡充) ・家族支援サービスの品質確保 (女性の「暮らしの質」の向上) ・女性の「暮らしの質」の向上 ②外国人材の活用 ・高度外国人材受入れ促進のための取組強化 ・留学生の更なる受入れ加速化と留学後の活躍支援強化 ・IT・観光等の「専門的・技術的分野」における外国人材の活躍推進 ・経済連携協定に基づく介護福祉士候補者の活躍推進等 (中長期的な外国人材受入れの在り方検討) 平成 27 年「企業の賃上げに関するフォローアップ調査」結果(経済産業省実施) 1 .大手企業調査…東証一部上場企業 1840 社に調査票を送り、817 社から回答を得た。 ・賃上げを実施した企業の割合は今年度 94.5 %となり、昨年度の 94.0 %と変わらぬ高い賃上げ水準を維持。 ・ベースアップを実施した企業の割合も昨年度の 52.7 %から、今年度は 66.8 %に 14.1 %増加し、ほぼ 3 社に 2 社が ベースアップを実施。 2 .中小企業調査…中小企業・小規模事業者約 3 万社に調査票を送り、7,352 社から回答を得た。 ・賃上げを実施した中小企業・小規模事業者の割合は昨年度の 64.3 %から、今年度は 67.6 %に上昇。 ・賃上げを実施した企業のうち、ベースアップを実施した企業の割合が昨年度の 22.2 %から、今年度は 26.9 %に 4.7 %増加。 (従業員数 20 人以下の小規模企業を含め、全ての従業員規模において昨年度より増加。) ・全地域で賃上げを実施した企業の割合が上昇。 36 企業活力 企業活力 「2015 年版ものづくり白書『概要』 について」と「今後のエネルギー政 策について・・・エネルギーミックス の実現に向けて」 企業活力委員会・企業活力政策研究会 企業活力委員会(企業活力政策研究会合同開催)は、平成27年6月19日(金)及び平成27年9月30 日(水)に開催されました。 6月19日の委員会では「2015年版ものづくり白書『概要』」をテーマに、経済産業省 製造産業 局 ものづくり政策審議室 西垣 淳子 室長を、また、9月30日の委員会では「今後のエネルギー 政策・・・エネルギーミックスの実現に向けて」をテーマに、経済産業省 資源エネルギー庁 総 合政策課 村瀬 佳史 課長をそれぞれお迎えし開催致しました。 委員会は、渡壁 誠 委員長(日本電気株式会社 常務理事)の司会により進められ、経済産業省 からご説明があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。 写真左より、西垣室長、渡壁委員長 ご出席者名簿(6月19日開催委員会)○ (9月30日開催委員会)● 委 員 長: ○●渡壁 誠 日本電気(株)常務理事 講 演 者: ○ 西垣 淳子 経済産業省 製造産業局 政策企画官(併)ものづくり政策審議室長 ●村瀬 佳史 経済産業省 資源エネルギー庁 総合政策課長 ご 出 席 者: ○ 中出 朋彦 (株)IHI 総務部 渉外グループ 課長 ●折田 正弥 アステラス製薬(株)渉外部 次長 ●松本 繁則 (一財)エンジニアリング協会 企画渉外部 主管 ●新濱 功啓 大阪ガス(株)東京支社 副支社長 ●小山 優 川崎重工業(株)企画本部 事業企画部 課長 ○ 志子田繁一 川崎重工業(株)企画本部 事業企画部 ●久森 一輝 コスモ石油(株)経営企画部 計画グループ長 ○●河原塚康平 コスモ石油(株)経営企画部 企画渉外グループ 担当課長 村瀬課長 ●加治 賢一 JX ホールディングス(株)企画 1 部 企画 1 グループ 担当マネージャー ○ 藤井 久敬 JFE スチール(株)総務部 総務室 総務室長 ●手塚 宏之 JFE スチール(株)技術企画部 地球環境グループリーダー ●三谷 康久 四国電力(株)東京支社 副支社長 ○ 藤川 優 (株)資生堂 秘書室 渉外グループリーダー ○ 江嵜 茂太 新日鐵住金(株)経営企画部 上席主幹 ●望月 英明 新日鐵住金(株)経営企画部 上席主幹 ○ 山村 茂之 スズキ(株)東京支店 支店長 ●榛葉基世子 スズキ(株)東京支店 渉外課 係長 ●笠原 隆男 石油化学工業協会 業務部兼企画部担当部長 ●井上 喜博 石油連盟 企画部 副長 ○ 佐藤 正彦 (一社)セメント協会 調査・企画部門 統括リーダー ○ 梶 達雄 ソニー(株)渉外・通商部 シニアマネジャー ●徳田 達也 損害保険ジャパン日本興亜(株)本店業務部 代理店業務開発部長 ●井上 究 ダイキン工業(株)東京支社 渉外室 ●田中 浩 東京ガス(株)総合企画部 経営管理グループ マネージャー 企業活力 37 企 業 活 力 「2015 年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネ ルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて」 ●稻田 拓 東京電力(株)企画室 事業分析グループ ○●岩崎 哲久 (株)東芝 コーポレートコミュニケーション部 産業政策渉外室 産業・家電渉外担当部長 ○●七島 正人 東燃ゼネラル石油(株)広報渉外統括部 渉外部長 ●島津 新 東北電力(株)東京支社 総務課 副長 ●石塚 聡 東北電力(株)東京支社 業務課 副長 ○ 松田 英也 東北電力(株)東京支社 業務課 ○●田村 敦彦 東レ(株)経営企画室 産業政策・調査グループ 担当部長 ○●野一色 守 トヨタ自動車(株)渉外部 担当課長 ○ 櫻井 祥子 トヨタ自動車(株)渉外部 ○ 喜多 亮介 トヨタ自動車(株)渉外部 ○ 綛谷 好男 (一社)日本化学工業協会 産業部 部長 ●先名 康治 日本製紙連合会 技術環境部 専任調査役 ●内藤 敏幸 (一社)日本鉄鋼連盟 技術環境本部 地球環境グループリーダー ○ 甲田 直人 (一社)日本鉄鋼連盟 国際協力・調査本部 国際貿易グループ ●藤内 有己 日本電気(株)政策渉外部 課長 ●砂田 一彦 (一社)日本貿易会 政策業務部長 ●毛利 亨 パナソニック(株)渉外本部 渉外部 主幹 ○ 二挺木克洋 パナソニック(株)渉外本部 渉外部 政策渉外課 技術渉外担当 主幹 ●宇留野哲郎 富士通(株)政策渉外室 シニアディレクター ○ 安田 史郎 本田技研工業(株)総務部 部長 ○●伊藤 潤平 三井化学(株)経営企画部 調査・渉外担当ダイレクター ○●藤原 浩二 三菱重工業(株)グループ戦略推進室 戦略企画部 部長代理 ●栗原 康剛 三菱商事(株)グローバル渉外部 渉外企画チームリーダー (企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略) 2015 年版ものづくり白書「概要」について (6/19 開催) 「ものづくり白書」とは ▷ ものづくり基盤技術振興基本法(議員立法により平 成 11 年成立・施行)に基づく法定白書。今回で 15 回目。 ▷ 経産省・厚労省・文科省の 3 省で執筆。 構 成 第 1 部ものづくり基盤技術の現状と課題 ▷ 第 1 章我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 (経済産業省) 第 1 節我が国製造業の足下の状況認識 1 .我が国製造業の業績改善 2 .経常収支の黒字縮小と稼ぎ方の変化 第 2 節我が国の産業構造を支える製造業 1 .我が国の産業構造における製造業の重要性 第 3 節製造業の新たな展開と将来像 1 .データ社会において変わりつつある製造業 2 .欧米における動向 3 .IoT 社会における我が国製造業の方向性 ▷ 第 2 章良質な雇用を支えるものづくり人材の確保と 育成(厚生労働省) ▷ 第 3 章ものづくりの基盤を支える教育・研究開発(文 部科学省) 2 .事業環境の変化に対応した国内拠点の在り方 第 2 部平成 26 年度においてものづくり基盤技術の振興に 3 .国内生産基盤の維持強化 関して講じた施策 今次白書(経済産業省部分)のメッセージ 1 .我が国経済・製造業の現状認識 り産業の稼ぎ方は着実に変化している。 我が国経済は、アベノミクスの効果が現れるなかで着 2 .我が国製造業が直面する課題と展望(第一部第一 実に上向いてきた。ものづくり産業を中心に企業収益の 改善が見られ、 さらには賃金引上げの動きが広がるなど、 「経済の好循環」に向け前進を続けている。一方、我が 国の経常収支(暦年ベース)は 4 年連続で黒字が縮小し、 章のポイント) ①アベノミクスを背景とした企業業績の改善が進み、国 内の設備投資も増加しつつあるものの、さらなる投資 の活発化が重要。 過去最小の黒字を計上した。内訳をみると、貿易収支が ② GDP の 2 割を占め、新たなイノベーションや技術を 過去最大となる赤字を計上する一方で、海外投資収益等 生み出し、他産業への高い波及効果を持つ製造業は引 の第一次所得収支が過去最大の黒字を計上するなど、輸 き続き重要。 出で稼ぐ構造から、海外で稼ぐ構造へと我が国ものづく 国内拠点の役割を見極め、国内・海外でそれぞれ稼 38 企業活力 企 業 活 力 ぐ分野を明確化しつつ、国内の製造業の基盤として り産業も大きな変革を遂げている中、製造業の新たな 様々な担い手を育成していくことが課題。また、製造 ビジネスモデルへの対応は重要な課題。インダスト 業の稼ぎ方が変化する中、海外収益の国内への利益還 リー 4.0 等の各国の動きも見据え、我が国ものづくり 元は重要な課題。 産業の今後の方向性を検討することが必要。 ③ IoT(Internet of Things)の進展により、ものづく 第 1 章我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 第 1 節我が国製造業の足下の状況認識 1 .我が国製造業の業績改善 ●我が国製造業の企業実績は着実に改善。 ●生産性向上設備投資促進税制は、2016 年度で終了。 ●賃上げを始めとする経済の好循環の流れを加速させ、 2015 年度は「全額即時償却又は税額控除 5 %」である 全国に行き渡らせ、また、投資をさらに活発化させる が、2016 年度には「特別償却 50 %又は税額控除 4 %」 ことが重要。 とメリットが小さくなるため、2015 年度内に設備投 ●設備投資は持ち直しつつあるが、いまだリーマン ショック前の水準には及んでいない。 資が完了するタイミングでの、早期の設備投資決断が 一つのポイント。 2 .経常収支の黒字縮小と稼ぎ方の変化 ●経常収支(暦年ベース)は 4 年連続で黒字縮小。グロー バル最適地生産の流れのなかで、経常収支は従来の輸 出で稼ぐ構造から、 投資で稼ぐ構造に変化しつつある。 ●貿易収支は過去最大の赤字を計上。燃料輸入増大やエ レクトロニクス産業の黒字縮小が進む中、輸送用機器 と一般機械が輸出を支える構造。 ●一方で、海外直接投資収益の拡大に伴い、第一次所得 収支は過去最大の黒字を計上。企業の海外展開が進ん だこと等を背景に、直接投資収益、国内への利益還元 はともに増加している。 ●急拡大を続けていた海外設備投資比率は足下では頭打 ちとなっているほか、輸出金額は増加傾向・輸出数量 は持ち直しの兆しが見られる。 ●ただし、グローバル最適地生産という考え方に基本的 には変化はなく、今後も企業の海外展開の基調は続く ものと考えられる。 第 2 節我が国の産業構造を支える製造業 1 .我が国の産業構造における製造業の重要性 ●我が国製造業が国内総生産(GDP・付加価値ベース) に占める割合は約 2 割。製造業は他産業への波及効果 に減少しているが、特に英国、フランスの減少幅が大 きい。 が高く、国内生産額(売上に相当)に占める割合は 3 割を超えている。 こうした現状を踏まえ、これまでの延長線上で製品を ●製造業が盛んである地域は県民所得水準が高く、製造 提供するだけでなく、先進分野の先行的な開発や新しい 業は地方における雇用のみならず所得向上においても ビジネスモデルの創出など、 「次世代型製造業」への転 重要な役割を果たしている。 換に向けて、アドバンスト・マニュファクチャリング(米 ●我が国の GDP に占める製造業の比率は 18.8 %(2013 年)と、米国、英国、フランス(約 1 割強)よりも高 国)や Industrie4.0(ドイツ)等、各国取組を強化して いる。 いものの、中国、韓国(約 3 割程度)やドイツ(約 2 割強)より低い。 ●ここ 10 年、我が国をはじめとして米国、英国、フラ ンスは比率が減少しているのに対し、製造業を重視し ているドイツは減少していない。 ●一方、我が国の就業者に占める製造業の比率は 16.9 % (2012 年)であり、2000 年代を通じて漸減。各国とも ●立地競争力の強化の観点から、いわゆる六重苦の問題 への対応は重要。 ●エネルギーコストや人材面(人手不足)は依然として 大きな問題ではあるものの、極端な円高が是正され、 法人実効税率や経済連携協定等への対応も進められる など、六重苦は解消の方向に向かいつつある。 企業活力 39 企 業 活 力 「2015 年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネ ルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて」 2 .事業環境の変化に対応した国内拠点の在り方 ● 2014 年の資金計画において前年よりも資金配分を高 況には相違がみられる。その一方、日本を「マザー工 める使途は「国内設備投資」が 52.6 %と最も多く、 「海 場」として位置づけ、日本での生産を戦略的に実施す 外設備投資」が 26.3 %、 「研究開発」が 25.4 %と続い る方向性は各社で共通。 ており、国内投資は増加傾向。 ●生産ライン設置の目安は 1 工場で約 20 万台であり、現 ●アンケートによれば、過去 2 年間に約 13 %の企業(約 地生産拠点のない地域等に対しては、コスト等を総合 100 社)が国内に生産拠点を戻したと回答。国内生産 的に判断して「最適地生産」が行われ、海外拠点から を戻した理由としては、 「円高是正」や「海外の生産 近隣の国々への輸出も活発。 コストの上昇」 も挙げられるものの、 「品質や納期など、 海外でのものづくり面での課題」という回答が最も多 く見られた。 【国内回帰の事例】 ●日産自動車:北米向け SUV のローグについて、 現在北米で生産しているが、北米需要増加分(年 ●国内生産拠点の位置づけとしては、 「海外拠点との差 間約 10 万台)について、国内生産・輸出で対応 異化を図るための拠点」とする企業が多く、新しい技 することを検討中。また、現在の為替水準や北 術や製品など新たな価値創造を生み出す「イノベー 米市場の好調が続く前提で、国内生産を 2017 年 ション拠点」 、海外へ移管する生産技術や海外工場の 度までに 20 万台増の 110 万台までの引き上げを バックアップを担う「マザー工場」 、多品種少量生産 検討中。 や短期生産などに柔軟に対応できる「フレキシブル工 場」等の役割を担っている。 ●また、企画・経営管理、研究開発、マザー工場等は大 部分を国内に残す方針の部門として挙げられており、 国内拠点の役割の差別化が進んでいる。 ●国内投資や生産拠点を国内に戻す動きも最近見られて 「国内に残す」 ・ 「海外で稼ぐ」分野の棲み分け②化学産業 ●ナフサを分解して生産される石油化学基礎製品は、汎 用製品の原材料だけでなく、世界的なシェアも高い高 付加価値な機能性化学品の原材料でもあり、連産性に はいるが、 製造業の GDP は 1997 年(約 114 兆円)をピー よりそれぞれの原材料が一定の割合で生産される。 クに減少が続き、ここ数年は約 90 兆円となっている。 ●現在はエチレンやその誘導品を中国に輸出している 企業の海外現地生産比率が引き続き上昇するととも が、今後、米国や中東の安い原料から生産された化学 に、海外現地調達率も上昇していることや、内需の落 品が中国国内に入り、我が国のエチレン等の輸出が厳 ち込み等が大きな要因と考えられる。 しくなる恐れがある。一方で、エチレン等の生産量を ●このような中、製造業が今後も我が国の成長を下支え するためには、 「国内に残す」分野と「海外で稼ぐ」 減らすと、強みのある機能性化学品の原材料を供給で きなくなる可能性もある。 分野を明確化し、国内に残す分野は輸出競争力の維持 ●国内需要の減少も加味すると、2012 年の国内エチレ 強化をはかり、海外で稼ぐ分野は収益を還流させ国内 ン生産量 610 万トン/年は、2020 年までに 470 万トン でイノベーションを産み出すサイクルを作ることが重 /年まで減少する可能性があるが、上記の理由から国 要。 内産業としてある程度の規模は残す必要があると考え ●産業分野ごとの現状や特性を踏まえつつ、今後検討を られる。 行っていく必要がある。 「国内に残す」 ・ 「海外で稼ぐ」分野の棲み分け③航空機 「国内に残す」・「海外で稼ぐ」分野の棲み分け①自動車 産業 産業 ●機体、エンジン、装備品の各分野で、これまで部品サ ●自動車産業は「地産地消」を基本としており、国内で プライヤーとしての位置付けであったが、ボーイング の需要が 500 万台前後で伸び悩む中で、旺盛な海外需 787 において、機体構造材の約 50 %に採用される炭素 要には海外の拡大によって対応している状況にあり、 繊維複合材の独占供給を行っているほか、MRJ で完 日系メーカーの生産の 6 割以上が海外生産となってい 成機市場への参入も目指している産業。産業規模とし る。こうした状況の中で、輸出比率(国内生産のうち ては約 1.5 兆円強で、米国の 1 / 10 程度ではあるが拡 輸出向け台数比率) は、 緩やかに減少傾向にあるが、 「地 大傾向にある。 40 産地消」の流れがより強いメーカーや、国内生産や輸 ●厳しい技術的要求を満たすことが求められており、初 出比率を一定程度保っているメーカーなど、各社の状 期投資コストが高い一方、完成機の製造ロットが小さ 企業活力 企 業 活 力 いために参入障壁が高い。航空機はライフサイクルが ●稼ぐ力を強化していくためには、研究開発拠点の強化 長く、部品サプライヤーやその分担比率が一旦固定さ 等を通じて技術力を高め、イノベーションのタネを産 れると大きな変更はないため、我が国の高度な技術や み出し続けることが求められる。 人材を活かし、部品を国内で生産し、輸出を継続する 構造は継続。 ●海外生産拠点が拡大している一方で、研究開発拠点の 多くは国内に残る傾向が見られる。しかし、我が国製 ●世界的な需要増加に対応しつつ、さらに完成機などの 造業における研究開発費は 2007 年には 12.2 兆円あっ 新たな開発も重なり、各重工メーカーは国内を中心に たのに対し、2012 年には 10.7 兆円と減少している。特 積極的な設備投資を行っており、航空機産業の裾野拡 に「情報通信機械」や「電子部品等」の減少が大きい。 大が期待される。 我が国の研究開発拠点としての魅力向上が重要。 3 .国内生産基盤の維持強化 ●製造業を支えるものづくり人材は多くの業種で減少。 人材不足を見据えて、シニア・ベテラン人材や女性の 活用に取り組む企業が多くみられる。 ●製造業の稼ぎ方が変化する中、製造部門の従事者が減 少し、研究開発に携わる人材が増えてきており、求め られている人材にも変化が起きている。 ●製造業における女性の就業率は、男性に比べてどの年 代も大きく下回っている。また、女性の新卒採用者が いない企業が半数を超えており、採用段階から大きな 男女差が生じている。 ●製造業は他産業と比較して、女性の就労が進んでいる とはいえないため、女性採用や幹部登用など女性の活 躍推進のための取組を加速化させることが必要と考え られる。 同一の都道府県内から調達している企業の割合が高 く、地域に根付いたビジネスを行うなど地域経済にお いて重要な役割を担っている。 ●今後、多くの企業がグローバルニッチトップ企業に成 長し、海外市場で高い利益を上げていくことが期待さ ●中堅・中小企業は地方における雇用の受け皿であり、 れる。 ●地方の雇用創出に、重要な役割が期待される中堅企業 及や「DMM.make AKIBA」等の製造拠点の整備) 。 (※ 売り上げ 1000 億円以下を中堅企業と位置づけ)に ●ものづくりベンチャーを創出する永続的なエコシステ 対して、人材確保・育成から、製品開発・生産、活躍 ムの形成が必要。 舞台の国際化まで、内閣官房を中心として、政府全体 として施策パッケージ化に取り組む。 ●将来 GNT 企業となりうる中堅企業を発掘・支援する ためにも本パッケージにおいて、研究開発支援、国際 的な販路開拓、事業引継ぎの強化、知財分野への支援 等を含め中心的な役割を果たす。 ●ものづくり分野でも起業がしやすい環境が進展(3D プリンタなどのデジタルファブリケーション機器の普 企業活力 41 企 業 活 力 「2015 年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネ ルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて」 第 3 節製造業の新たな展開と将来像 1 .データ社会において変わりつつある製造業 ● IT の急速な技術革新により、データの蓄積と活用の 製造業における IT 活用の進化の経緯 幅が拡大。データ収集、解析、処理というサイクルの ●製造現場でも 1980 年代からコンピューターを使った 中で新たな付加価値が生み出され、あらゆる分野で競 自動化が進むとともに、ERP に代表される企業の統 争領域が変化。 合 IT システムの導入によって製造現場を含めた企業 ●一方、我が国製造業における IT 利活用は諸外国に比 全体の IT 化が進んだ。 べ遅れている。例えばビッグデータの活用状況は米国 IoT のインパクト と比較して大きく見劣る。また我が国の IT 技術者の ● IoT は、2020 年に 200 兆円規模の経済価値を創出する 分布状況は米国と比較して IT サービス企業に大きく 偏っていることが、製造業において IT 利活用が進ん でいない背景にあると考えられる。 と予測。 ●製造業においても、製造現場(工場)でのデータ活用 やモビリティ(自動運転)等の分野で重要な鍵となる 概念であり、ドイツ政府(インダストリー 4.0)やア メリカの ICT 企業等が相次いで構想を提示。 欧米における製造業の IoT 活用①インダストリー 4.0(独政府の取り組み) 42 企業活力 企 業 活 力 欧米における製造業の IoT 活用②インダストリアル・イ 欧米における製造業の IoT 活用④ GE(インダストリア ンターネット・コンソーシアム ル・インターネット) ● GE など米企業 5 社が発起人となり、IoT 関連技術の ● GE は、製造物に取り付けたセンサーを機器制御の効 標準化団体「インダストリアル・インターネット・コ ンソーシアム」を設立。 ●同コンソーシアムで進む IoT 活用のテストベッドと ユースケース作りは、製造業も中心分野の 1 つ。 欧米における製造業の IoT 活用③シーメンス 率化や保守の高度化に活用。 ●当該データ分析システムの外販により、他社製機器の データも取り込み、プラットフォーム化。 ●日本でも、センサー技術やバッテリー技術、データを 処理するプロセッサの小型化や高速化、さらにはデー ●このように、データ活用やソフトウェア開発の能力に タを蓄積するクラウドの普及等により、すべての「モ ものづくりの競争力の源泉が移行する動きや、データ ノ」をデータ化し、インターネットにつなぐ”Internet プラットフォーマーや解析モデルの提供者に付加価値 of Things(IoT)”が現実化。 が移行する傾向が見られる中、欧米の製造業はデータ ●単なる生産の効率化を超えた IoT 活用によって、中小 解析サービスやソフトウェア提供に軸足を移す動き。 企業も含めて製造業の生産効率化が進展しつつある。 ●また、 我が国製造業においても、 センサーデータの活用による予知保全やマスカスタマイゼーションへの対応といっ た高度なサービス・生産システムを構築する例が存在。 企業活力 43 企 業 活 力 「2015 年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネ ルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて」 ●欧米では、個社の取組を超えてサプライチェーンをつなぎ生産を効率化する事例や、単なる生産革新に止まらずビ ジネスモデルを変革させる動きも存在。 ●こうした事例は我が国ではまだ少ないのが実情。日本企業もより積極的に IoT を活用し、そのメリットを享受すべ き。 インダストリー 4.0 とは ●ドイツの強い製造業の競争力強化を図るため、IT を 活用した生産の効率化やサプライチェーンの最適化を 進める構想を起草(2011 年) 。 「インダストリー 4.0」の生産システム ●具体的には、① PLM をデジタル上で統合することに より最適生産をシミュレーションし、現実の工場と同 ドイツが描く「インダストリー 4.0」の生産システム 期させること、② SCM をデジタル上で統合すること ●消費者の多様なニーズに応じた製品供給が可能となる によりマーケットニーズを柔軟に生産プロセスに反映 生産システムの構築が目標。 ○大量生産からカスタムメイド品への市場の変化への 対応(マス・カスタマイゼーション) ○リードタイムの削減にむけた効率的な生産ラインの 自律的な構築(デジタル上で最適化されたラインと 現実のラインの同期) 44 企業活力 させ、変種変量生産を可能とすること、を目指す。 ●これらの一連の流れをデジタル上でやり取りするプ ラットフォームをシーメンス・SAP 等が構築。 企 業 活 力 ①開発・生産工程管理(PLM) ソリューションとしての「生産プロセス」の商品化 ●デジタル上で PLM を構築し、設計から保守までのデー ●インダストリー 4.0 におけるプラットフォーマーは、 タを共通プラットフォーム上で管理することによっ 生産プロセス自体をものづくりのソリューションとし て、一貫したシミュレーションが可能になり、手戻り て商品化。そのためのツールとして PLM や SCM のデ を防ぎ、設計から製造までのリードタイムが短縮でき ジタル上での統合は不可欠。 る。 ●我が国では、生産プロセスは各企業(工場ユーザー) ●こうしたことで、他社に先駆けて市場への新製品投入 が作るもので、外注するものでないという考えが基本 を行ったり、市場の求める製品を迅速に提供したりす で、生産プロセスを丸ごと提供するビジネスが登場し ることが可能となる。 ていない。こうしたことが、PLM ツールサプライヤー ②サプライチェーン管理(SCM) や SCM をつなぐシステムインテグレーターの不在の ●企業の競争力が、 『技術力』から『市場ニーズへの対 背景と考えられる。 応力』へと移りつつある中、サプライチェーンをつな 製造物や生産ラインの運用ソリューション提供 げば、マーケットと生産を直接させ、 『変種変量生産』 ●製造物や生産ラインから得られるビッグデータのマイ を行うことが可能となる。 ●また、企業間のデータをつなぐことは、製品のトレー サビリティ確保の一助ともなる。 ドイツが描く未来の製造業の姿 ●工場間・企業間を水平統合し、ソフトウェアでつなぐ ことにより、ドイツの描く姿が完成。 ●ロットサイズ 1 からの変種変量生産をライン間、工場 ニング→ AI や解析ソフトによる分析→最適ソリュー ションの提案というビジネスサイクルにおいては、い かに多くのデータを集め、解析ソフトを高度化できる かが競争力を左右。 ●我が国でも製造物や生産ラインのデータを取得し、解 析する動きは進んでいるが、多くの場合①自社の生産 効率化や品質向上が目的であり、②システムは各社内 間、 企業間を越えてソフトウェアで繋ぐことによって、 で閉じている。一方、欧米企業の中には①データ解析 全体として効率的な生産を自律的、自動的に行うこと を新たな付加価値の源泉とし、②システムを外部に開 を目指す。 放することでデータプラットフォームを形成する動 ●例えば、ある消費者が「フォルクスワーゲンの車にポ き。 ルシェのシートカバーをつけたい」と言えば、それが 自動的に生産される姿を目指している。 IoT 社会における製造業のあり方 ● IT や IoT 活用の方策と課題は上記に限らず様々。我 必要。 が国製造業に適した新たな活用も含め、積極的な投資 ●こうした現状や今後の製造業のあり方・政府の取組の や思い切ったビジネスモデルの変革が進むような意識 あり方について、ロボット革命イニシアティブ協議会 改革や必要な制度整備、環境整備を行っていくことが において共有し、検討する。 企業活力 45 企 業 活 力 「2015 年版ものづくり白書『概要』について」と「今後のエネ ルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて」 具体的な対応方針 「ロボット革命イニシアティブ協議会(Robot Revolution ● IoT によって製造業の競争ルールは大きく変化。 Initiative)」の創設 ●「ロボット新戦略」では、IoT 時代のロボットで世界 ●ロボット革命実現会議の成果を踏まえ、現場における をリードし、ロボット革命の実現を提言。 ●推進母体として 「ロボット革命イニシアティブ協議会」 を創設。 革命実現のための産学官を分厚く巻き込んだ推進母体 を設置。産業競争力会議や総合科学技術・イノベーショ ン会議等における AI、IoT の議論とも連携。 今後のエネルギー政策について・・・エネルギーミックスの実現に向けて(9/30開催) Ⅰ.今後のエネルギー政策の主要課題 46 企業活力 企 業 活 力 Ⅱ.エネルギーミックスについて Ⅲ.エネルギーミックスの実現に向けた取組について 企業活力 47 業種動向 「2014 年 度 通 期 決 算 の 概 要」及び「我が国経済の現状 と先行き」について 業種別動向分析委員会 業種別動向分析委員会は、平成27年6月30日(火)及びに平成27年10月2日(金)に開催されました。6 月30日の委員会では、経済産業省 経済産業政策局 企業財務室 櫻庭 倫 室長をお迎えし、東証1部上場 2、3月決算企業1,185社(金融業、証券業及び保険業を除く)の「2014年度通期決算の概要」をテーマ にご説明をいただきました。また、10月2日の委員会では、経済産業省 経済産業政策局 調査課 井上 誠一郎 課長をお迎えし「我が国経済の現状と先行き」についてご説明をいただきました。両委員会と も、ご説明の後、委員からも各業界の決算状況、経済動向についてご説明があり,活発な意見交換が行 われました。 6 月 30 日委員会の様子(櫻庭室長) 10 月 2 日委員会の様子(井上課長) ご出席者名簿(6月30日開催委員会)○ (10月2日開催委員会)● 経済産業省: ○ 佐藤 政広 石油連盟 企画部 財務グループ長 ●井上誠一郎 経済産業政策局 調査課 課長 ●髙瀬 智子 (一社)電子情報技術産業協会 総合企画部調査グループ長 ○●持田 弘喜 (一社)日本自動車工業会 総務統括部 企画調査担当 副統括部長 ○ 内山 和憲 (公財)日本生産性本部 公共政策部 担当部長 ●浅岡 裕之 (一社)日本鉄鋼連盟 国際協力・調査本部 国内調査グループリーダー 委 員: ○●笠原 隆男 石油化学工業協会 業務部 兼 企画部 担当部長 ○ 佐藤 正彦 (一社)セメント協会 調査・企画部門 統括リーダー ○●松本 芳彦 (一社)日本化学工業協会 常務理事 ●杉原 克 日本化学繊維協会 理事 ●川岸 隆彦 (一社)日本ガス協会 常務理事 ●澤田 潤一 (公財)日本生産性本部 執行役員 公共政策部長 ○●斎藤 俊 日本製紙連合会 常務理事 ○ 寺島 清孝 (一社)日本鉄鋼連盟 常務理事 48 委 員 代 理: ○ 櫻庭 倫 経済産業政策局 企業財務室 室長 企業活力 (企業名・役職名は当時・企業名五十音順・敬称略) 業 種 別 動 向 『2014 年度通期決算の概要』 (6/30 開催講演資料抜粋) 東証 1部上場 2、3月決算企業 1,185 社(金融業、証券業及び保険業を除く) 1 .2014 年度通期(12 か月累計)決算の概要 ・2014 年度通期(12 か月累計)は、売上高が対前年同期比+ 4.3 %(製造業:同+ 4.0 %、非製造業:同+ 4.7 %) 、営 業利益が同+ 5.8 %(製造業:同+ 8.5 %、非製造業:同+ 2.1 %)、経常利益が同+ 7.6 %(製造業:同+ 9.7 %、非 製造業:同+ 4.6 %) 、当期利益が同+ 7.4 %(製造業:同+ 11.0 %、非製造業:同+ 1.9 %)となり、増収増益。 ・業種別では、30 業種中、石油・石炭製品、鉱業、医薬品を除く 27 業種が増収となったが、石油・石炭製品、医薬品、 卸売業などが減益に転じるなど増益は 22 業種(前年同期は 28 業種)に留まった。 (上場企業の 2015 年度通期想定為替レート) ・対 US ドル:115 円を見込む企業が多く、次点で 120 円。 ・対ユーロ:130 円を見込む企業が多く、次点で 125 円。 (自動車・電機、鉄鋼、石油業の利益増減要因) ・自動車は、売上・構成の悪化、研究開発費の増加はあったが、円安影響、コスト削減により増益。 ・電機は、コスト削減の効果や円安の好影響を上回る売上の落ち込みで減益。 ・鉄鋼は、原材料価格の下落が在庫評価と為替の悪影響を上回り、コスト削減効果もあって増益。 ・石油は、石油製品のマージンは回復したものの、大幅な在庫評価の売上減に加わり、赤字転落。 企業活力 49 業 種 別 動 向 「2014 年度通期決算の概要」及び「我が国経済の 現状と先行き」について 2 .2015 年度通期見通し ・2015 年度の通期見通しは、増収予想の企業が 82 %、増益予想の企業が 67 %となり、61 %の企業が増収増益を予想 する一方、減収減益を予想する企業は 8 %となった。 ・2015 年度通期見通しは、売上高が対前年同期比+ 11.3 %(製造業:同+ 9.8 %、非製造業:同+ 13.4 %)、営業利益 が同+ 18.2 %(製造業:同+ 18.3 %、非製造業:同+ 18.1 %) 、経常利益が同+ 15.9 %(製造業:同+ 17.3 %、非 製造業:同+ 13.3 %)、当期利益が同+ 22.9 %(製造業:同+ 16.9 %、非製造業:同+ 35.5 %)と、増収増益を見 込む。 ・業種別では、減益を見込むのは、鉱業、機械等の 4 業種で、他の 26 業種は増益を見込む。 50 企業活力 業 種 別 動 向 『我が国経済の現状と先行き』 (10/2 開催講演資料抜粋) 【9 月の月例経済報告における景気の基調判断】 ・15 年 9 月の月例経済報告における景気の総括判断は「景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな 回復基調が続いている」となった。 ・先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくこ とが期待される。ただし、アメリカの金融政策が正常化に向かうなか、中国を始めとするアジア新興国等の景気が 下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。こうしたなかで、金融資本市場の変動が長期化した場合の 影響に留意する必要がある。 ・個人消費―総じてみれば底堅い動きとなっている。 ・設備投資―総じて持ち直しの動きがみられる。 ・住宅建設―持ち直している。 ・輸出―このところ弱含んでいる。 ・生産―このところ横ばいとなっている。 ・企業―企業収益は改善している。業況判断は一部に慎重さがみられるものの、おおむね横ばいとなっている。 ・雇用―改善傾向にある。 ・物価―消費者物価は緩やかに上昇している。国内企業物価はこのところ緩やかに下落している。 1 .GDP ■ 4 − 6 月期 GDP2 次速報 ・2015 年 4 − 6 月期の実質 GDP(2 次速報、9 月 8 日公表)は前期比▲ 0.3 %(年率▲ 1.2 %)と、3 四半期ぶりのマイ ナス成長となった。一次速報(前期比▲ 0.4 %、年率▲ 1.6 %)から上方改定。 ・設備投資、公共投資が下方改定となったが、個人消費、民間在庫、政府消費が上方改定となった。 ・名目 GDP は、前期比+ 0.1 %(年率+ 0.2 %)へ上方改定。 ■実質 GDP の水準 ・2015 年度について、内閣府「年央試算」における実質 GDP 成長率+ 1.5 %を達成するため必要な各四半期の成長率 は前期比+ 0.57 %程度。7 − 9 月期以降横ばいで推移した場合の 15 年度実質 GDP 成長率は+ 0.6 %。 ■内閣府年央試算(2015 年度、2016 年度) ・年央試算の 2015 年度の値は、政府経済見通し(2 月時点)と比べ、概ね、足下の動向を踏まえた修正であるとみら れる。個人消費が下方修正された一方で、住宅投資、設備投資は上方修正。政府支出は小幅に下方修正。 ・年央試算の 2016 年度の値は、実質 GDP 成長率が+ 1.7 %。内需寄与は+ 1.7 % pt、外需寄与は▲ 0.0 % pt。 2 .家計部門 ■個人消費 ・実質消費支出(季節調整済)は、前月比+ 2.5 %と昨年 4 月の消費税率引上げの影響等の反動減から緩やかに持ち 直してきたが、足下は一進一退。 ・小売業販売額(季節調整済)も、足下は横ばい圏で推移しており、8 月は前月比 0.0 %。 ・内閣府の国民経済計算 2015 年 4 − 6 月期(2 次 QE)において、国内家計最終消費支出の実質季節調整済前期比寄与 度は▲ 0.4 %となった。形態別動向の寄与度は、耐久財は▲ 0.1 %、半耐久財は▲ 0.2 %、非耐久財は▲ 0.1 %、サー ビスは▲ 0.1 %であった。 ・2015 年 8 月の消費者態度指数(季節調整値)は 41.7(前月差+ 1.4)と、2 か月ぶりに増加。 ・消費者態度指数を構成する 4 項目の意識指標( 「暮らし向き」 、 「収入の増え方」 、 「雇用環境」及び「耐久消費財の 買い時判断」 )のうち、全項目で増加。 企業活力 51 業 種 別 動 向 「2014 年度通期決算の概要」及び「我が国経済の 現状と先行き」について ■失業率 ・2015 年 8 月の失業率は、3.4 %。 ■有効求人倍率・新規求人倍率 ・2015 年 8 月の有効求人倍率は 1.23 倍と、1992 年 1 月(1.25 倍)以来の高水準。 ・同月の新規求人倍率は 1.85 倍。 ■雇用の過不足感 ・企業の雇用の過不足感(全規模全産業)は、リーマンショック後の 09 年 6 月調査(4 − 6 月期)をピークに、雇用 の過剰感の解消が進み、13 年 3 月調査(1 − 3 月期)以降は、人員の不足感が拡大する傾向。 ・15 年 9 月調査(7 − 9 月期)では、不足感が拡大し、先行きも不足感の拡大が続く見込み。 ■名目賃金・実質賃金(一人当たり) ・2015 年 7 月の現金給与総額(一人当たり名目賃金)は前年同月比+ 0.9 %。 ・消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合)でデフレートした 7 月の実質賃金は同+ 0.5 %と 2013 年 4 月以来 2 年 3 カ 月ぶりにプラスとなった。 ■名目・実質総雇用者所得/春闘結果 ・名目総雇用者所得は、2013 年 4 月以降、増加基調で推移。今年 6 月は、特殊要因により前年同月比でマイナスとなっ たが、7 月は、同+ 1.5 %と再びプラスとなった。 ・一方、実質総雇用者所得は、消費税率が引き上げられた 2014 年 4 月以降、マイナス基調で推移。消費税率引上げの 効果を除けば、前年比はプラス傾向にあった。 ・2015 年の春闘の賃上げ率は、連合の集計によれば、2.20 %(前年比 0.13 % pt 上昇)となり、17 年ぶりの高水準となっ た。 3 .企業部門 ■業況判断 ・企業の業況(全規模全産業)は、13 年 9 月調査(7 − 9 月期)以降、プラスの水準(「良い」が「悪い」を上回る) が継続。足下の 15 年 9 月調査(7 − 9 月期)では+ 8 と、前回(6 月調査)から+ 1 %ポイント改善。 ・市場が注目する大企業製造業の業況は+ 12 と、前回から▲ 3 %ポイント悪化。 ■生産(鉱工業指数)及び設備稼働率(製造業) ・2015 年 8 月の生産は、前月比▲ 0.5 と 2 ヶ月連続で低下。ショベル系掘削機械等の生産が減少したはん用・生産用・ 業務用機械工業や、電気機械工業、輸送機械工業等が低下に寄与。 ・同年 8 月の在庫は、前月比+ 0.4 %と 2 ヶ月ぶりに上昇し、依然として高水準で推移。 ・2015 年 7 月の設備稼働率指数は、生産の減少した電子部品・デバイス工業等が寄与して、前月比▲ 0.2 %と、2 ヶ 月ぶりに低下。 ■経常利益 ・2015 年 4 − 6 月期の経常利益(季節調整値)は、19.2 兆円(四半期別で過去最高)と前期比+ 14.8 %。 ・前年同期比では、全産業で+ 23.8 %。全ての産業で前年同期を上回った。 ・好調な自動車販売(自動車向け電子部品を含む)や円安効果等によって、輸送用機械及び情報通信機械が増益となっ た他、化学及び電気業は、原油価格下落に伴う燃料コスト低下により増益。 ・日銀短観(9 月調査)では、15 年度の経常利益計画は前年度比+ 3.3 %と、経常利益額が過去最高水準となった 14 年度から、さらなる増益が見込まれている。 ・資本金規模別では、大企業を中心に増益が見込まれている。 ■設備投資(15 年 7 月) ・7 月の国内向け資本財出荷(輸送機械を除く)は、前期比+ 0.9 %と 2 ヶ月連続で増加し、持ち直しの動きがみられ る。 ・7 月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、8,056 億円(前月比▲ 3.6 %)と 2 ヶ月連続で減少しており、機械受 52 企業活力 業 種 別 動 向 注は持ち直しの動きに足踏みがみられる。 ■設備投資計画(大企業) ・日銀短観(9 月調査)では、15 年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年度比+ 6.4 %と、前回(6 月調査:同+ 3.4 %)から増加幅が拡大。 ・大企業・製造業は前年度比+ 18.7 %増と大幅に増加。大企業・非製造業についても、前年度比+ 7.2 %増と、例年 と比べて増加幅は大きい。 ■設備投資計画(中小企業) ・中小企業・製造業は、過去 2 年、1 割程度の増加が続いており、9 月調査としては前年度並みの計画。 ・中小企業・非製造業は、大幅増となった 13 年度と同程度の計画。 4 .外需部門 ・8 月の貿易収支は、▲ 5,694 億円の赤字(前年同月から 3,838 億円赤字幅縮小)。 ・輸出金額は 5 兆 8,818 億円(前年同月比+ 3.1 %)、輸入金額は 6 兆 4,512 億円(前年同月比▲ 3.1 %)。 ・貿易収支は、2015 年 3 月に中国の春節の影響で、輸入金額が大きく減少したこと等から、2 年 9 か月ぶりの黒字となっ たが、4 月以降は赤字で推移。 5 .消費者物価 ・2014 年 5 月以降、消費者物価(生鮮食品を除く総合)(コア CPI)の前年比伸び率は、縮小傾向。足下では、消費 税率引上げの影響剥落や、エネルギー寄与度のマイナス幅拡大等により、前年比マイナス。 ・消費者物価(食料(酒類除く)及びエネルギーを除く総合) (コアコア CPI)で見ると、足下の前年比伸び率は、 上昇幅は拡大傾向。 6 .海外経済 ■米国経済 ・米国の 2015 年 4 − 6 月期実質 GDP 成長率(確定値)は、前期比年率+ 3.9 %。 ・二次推計(+ 3.7 %)から+ 0.2 ポイント上方修正された。 ・個人消費、設備投資、住宅投資が二次推計から上方修正され、全体を押し上げた。 ・8 月雇用者数は目安の+ 20 万人を下回ったが、失業率は 5.1 %と 2008 年 4 月ぶり低水準。強弱まちまち。 ■欧州経済 ・ユーロ圏の 4 − 6 月期の実質 GDP 成長率(改定値)は、前期比+ 1.4 %(年率)と、昨年央から持ち直しの動き。 ・欧州中央銀行(ECB)は、本年 1 月にデフレ突入懸念を払拭するため量的緩和の導入を表明し、3 月 9 日より国債 購入を開始。ユーロ圏の消費者物価上昇率は、4 月にプラスに転じたものの、足下ではエネルギー価格下落により 半年ぶりにマイナスに転じた。 ■中国経済 ・中国の実質 GDP 成長率は、減速傾向が続く。 ・2015 年 4 − 6 月期 GDP は、前年同期比+ 7.0 %で 1 − 3 月期から横ばい。(中国政府が 3 月に設定した 2015 年の成長 率目標は、7 %前後。 ) ・鉱工業生産及び小売売上高は、8 月はやや持ち直したものの、低迷が続く。 ・固定資産投資については、不動産価格の低迷や在庫調整で、特に不動産開発投資が減速。 ・輸出入については、内需の減速を受けて、特に輸入が昨年末から前年同月比マイナスで推移。 企業活力 53 CDGM CDGMラウンド テーブルセミナー レポート 第19期CDGMラウンドテーブルセミナー経過報告 ○第 19 期 CDGM ラウンドテーブルセミナー経過報告 た。工場内では、同じ制服をきており、髪の毛もネッ 現在行われている第19期CDGMラウンドテーブルセミ トで覆い帽子もかぶっているため「誰がリーダーか ナーは、平成27年7月よりスタートし、10月17日(土) わからない」という原因に対しては、バッチでリー まで、計4回が開催されました。今期は2チーム10名でス ダーがすぐ分かるようにしました。また、 「修理時間 タートし、第2回から3チーム15名となりました。現在各 管理不足」という原因に対しては、記録の取り方を チームが以下のような課題に取り組んでいます。 改善しました。今後は、納期設定に関しての対策を 行っていく予定です。 ・工場の各部門のリーダーで構成されたチームです。こ の会社では、工場見学をされたお客様に工場内の気 ・人事・財務の部署から参加されたチームです。 「なぜ になるところを指摘していただくという試みをして 従業員の意識が低いのか」ということをテーマに活 います。今回このチームは、数多くいただいたお客 動を行っています。そこで、毎年行われる意識調査 様のご意見を整理して、その中の5S(整理、整頓、 の分析を行いました。その結果、他の部署よりも否 清掃、清潔、躾)の問題について解決をしていこう 定的な結果が出ていたところは、 「キャリア開発のサ としています。チームは、5Sが出来ていない最大の ポート不足」 、 「学習・自己啓発機会不足」 、 「顧客ニー 原因は5Sに対する会社全体の意識付けや、各個人の ズの理解不足」であることが分かりました。この結 5Sへの考え方が弱いと考えました。そこで、社員が 果を受けて今後は対策を検討していく予定です。 5Sに対しどのように考えているのか実態調査をする 為にアンケートを実施する事にしました。その結果 毎回のセミナーでは、 吉田先生からの講義のほか、 各チー は、5Sの意味を理解しているが、自分が5Sを出来て ムより経過発表が行われますが、発表に対しては他の参加 いるかはわからないというものでした。アンケート 者から鋭い質問や意見、アドバイスが出されています。ま の結果を受けて、チームは今後の対策として、5Sに た、吉田先生からも各チームに対し、講評がなされます。 関しての教育実施、5Sのルールを明確化、5S委員会 初めて参加されるチームとCDGM経験者チームとがお の再発足を行う予定です。 互いに刺激しあい、活発な意見交換が行われています。今 期は、チーム数は少ないのですが、1チームの発表と意見 ・工場の各部門の課長で構成されたチームです。職場の 交換で1時間かかることもあり、皆さんが熱心に活動を考 問題としてあげられた中から、生産と品質に関わる えていることが伺えます。自分たちのチームの問題ととも 納期遅れの問題に取りかかることにしました。現状 に他の参加チームの問題も真剣に考え、学んでいることが 把握として、過去の納期遅れ件数の確認、受注から わかります。 製品出荷までの流れの確認、機械の停止時間を要因 なお、CDGMラウンドテーブルセミナーは、ご見学が 別に確認、受注に対する生産ラインの実績の確認を 可能です。セミナーの講義の様子や、経過発表時の熱い意 行いました。これは、 原因にあげられた 「納期自体元々 見交換をご覧いただけます。ご興味がございましたら、担 正しいのか」というものに対して現状把握として調 当までお知らせください。 べたものです。現時点では、納期の設定時期に問題 54 があるようですが、どのように対策をしていくのか ○第 20 期 CDGM ラウンドテーブルセミナー開講予定 は現在検討中です。そのほか、納期遅れの原因とし 第20期CDGMラウンドテーブルセミナーは、平成28年 てあげられた中で、すぐにできるものを実施しまし 1月16日(土)にスタートを予定し、現在、セミナーの募 企業活力 C D G M 集を行っております。募集締め切りは、平成27年12月18 日(金)を予定しております。ご参加いただく皆様が、こ のCDGMラウンドテーブルセミナーを通して、職場の問 題の改善策に取り組み、成果を上げ、ご自身も成長してい ただける場としてお使いいただけますよう努めていきたい と思います。 CDGM ラウンドテーブルセミナーのお問い合わせ先 (一財)企業活力研究所 担当 関口・須藤 TEL 03–3503–7671 E-mail [email protected] 第 19 期 CDGM ラウンドテーブルセミナーの様子 企業活力 55 特集 TPP 合意の示唆 –米国・EU の FTA 政策の経緯から 日本大学 商学部 准教授 飯野 文 2015 年 10月、環 太 平 洋パートナーシップ(TPP) 同時に地域の連帯 協定が合意に至った。発効については今後を待たねば や平和につながる ならないが、TPPで日本の貿易自由化率は95%に達し、 重要な試みだ」 (10 過去に日本が締結してきた経済連携協定(EPA)に比 月5日アトランタ共同 して最大とされる。日本では交渉参加の前後からTPP 記者会見中(日本 に対する賛否は経済的観点から論じられることが多 経 済 新 聞 10月5日 かった。合意後も報道を中心に「農家に対する打撃」 付)) 、「(TPPは)間接的な安全保障で地域の安定に や「日本企業のビジネス機会」の拡大などが議論され 貢献する」 (日本経済新聞インタビュー(同 10月9日付) ている(いずれも日本経済新聞記事中の表現であり、 など(()内筆者))ほか、同様の言説が徐々に見られ 前者は2015 年 10月10日付、後者は10月23日付)。も るようになってきている。 ちろんTPPで達成されるであろう関税引き下げ効果や 実際、米国と欧州連合(EU)の貿易政策を振り返 それに伴う貿易拡大効果、ひいてはGDP への影響は れば、自由貿易協定(FTA)や関税同盟は長年、経 重要である。しかし、そうしたある程度数字に表れる直 済的観点に加えて安全保障を含む外交政策上のツール 接的な効果もさることながら、ビジネス環境の安定性や として使われてきた。米国においては経済的要因と外 予測可能性が企業活動にとっての重要なインフラとなる 交政策的要因に基づいてFTA が締結され、その比重 ことに鑑みると、TPP が有する参加国間の共通言語と は時代により異なってきたものの、安全保障政策とのリン しての貿易・投資ルールとそれに基づく紛争処理手続、 クは少なくない。そもそもFTAの締結数が多いとはい さらにはその安全保障的観点も強調されて然るべきであ えない米国が FTAを最初に締結したのは1985 年の米 ろう。「安全保障」という用語の意味するところについ 国−イスラエルFTAであるが、このFTAは中東地域 ては、ここでは「外部からの侵略に対して国家および における同盟国イスラエルの経済的支援という側面が 国民の安全を保障すること」(広辞苑)と一般的に認 強かったことが指摘されている(Krist(2013))。米国 識されている程度の意として用いている。その意味内 が中東地域で2 番目にFTAを締結した国はヨルダンで 容は、それ自体が研究対象となるように歴史的に変遷 あるが(2000 年署名、2001 年発効) 、ヨルダンはイス を遂げており、定義も多様となり得るからである(例え ラエルを初期に国家承認した国であった。また、米国 ば遠藤(2014) ) 。後述する世界貿易機関(WTO)に 会計検査院(GAO)の調査によれば、2001 年の米国 おいてもWTO 協定上、この用語の定義はなされてい における同時多発テロ以降、米国ではFTA 相手国の ない。 選定に新たに国家安全保障会議もかかわるようになっ 確かに、TPP が行っている貿易・投資ルールの策定 たほか、選定基準として米国の外交政策の支持度合い に日本が参画することの重要性はTPP 交渉に参加する も検討されることになったという。米国がオーストラリアと かどうかが国内で検討された際にも争点になった。しか FTAを締結した際には(2004 年署名、2005 年発効) 、 し、TPP が安全保障との関係でいかに捉えられるかと オーストラリアの隣国ニュージーランドが同様にFTA 参 いう議論は国内でほとんど見受けられてこなかった。そ 加を模索したにもかかわらず、イラク戦争への対応の相 うしたなかで、TPP 合意後には、交渉を担当した閣僚 違から参加が困難となったことがよく知られている。 からTPPの安全保障上の意義について強調する発言 EUについては、1950 年代に統合の端緒が見られた が繰り返された(「 (TPPは)経済の安全保障であると が、その統合は当初対共産圏を意識したものであった。 56 企業活力 特集 TPP 合意の示唆 - 米国・EU の FTA 政策の経緯から EUは、その後 1960 年代に関税同盟を完成したのち、 まれないなか、TPPについてはその規模に鑑みれば将 統 合を拡 大し、また深 化させてきた。EUにとって、 来的に多国間のルール形成に与える影響も看過できな FTAなどの貿易協定の締結は、大きく3 つの意義を持 いだろう。 つ。第一に近隣諸国の安定をはかりつつ統合を拡大す 文化や背景が異なる国・地域が通商関係を構築する る手段、第二に途上国支援の観点も踏まえながら、旧 となれば、共通ルールとそのルールに基づく紛争処理手 植民地を中心に政治的かつ経済的な協力関係を維持・ 続を培うの が 妥 当 である。 そ の 役 割 は 長 年 主 に 発展させる手段、第三に経済・貿易的利益を追求する GATT・WTOという多国間の枠組みが担い、現在は 手段である。 多元的なFTAもその役割を負っている。両者を比較す 第一の点に関連して、EFTA(欧州自由貿易連合) ると、相対的に経済的問題に集中でき、経済力や軍事 とのFTA 締結は、その後のスウェーデンなど個別国の 力に影響されない共通言語としてのルールと紛争処理 EU 加盟へとつながり、冷戦崩壊後のポーランドやハン 手続を培えるのは多国間の仕組みである。この点でも ガリーなど中東欧諸国との欧州協定の締結もこれらの WTOの優位性は揺らがないものの、FTAについては 国々のEU 加盟へと結実した。現在でもバルカン半島の より安全保障の側面を備えたツールとして、その観点か 旧ユーゴスラビア諸国と安定化・連合協定が締結され、 ら有意かつ積極的に活用されるべきなのであろう。 これらは統 合につながり得るものと認 識されている 筆者が参加機会を得ている企業活力研究所主催の (Sedelmeier(2015))。第二の旧植民地国との関係 国際経済研究会においても、企業の対外取引や海外 では、EU が旧宗主国であったアフリカ・カリブ海・太平 展開に関連して、WTOやFTA が広く企業活動にい 洋諸国(ACP)諸国との経済連携協定やフランスが旧 かなる影響を与えるかについて活発な意見交換が行わ 宗主国であったチュニジアやモロッコなどとの連合協定 れている。企業が貿易・投資活動を行う上で具体的に が存在する。第三の経済・貿易的利益を追求する手 直面する課題や実際の解決策などを拝聴することは、 段としてのFTAは、特に2006 年にEU が「グローバル・ 大学に所属する筆者にとって得難い機会となっている。 ヨーロッパ」という通商政策を公表した中で明らかとなっ この場を借りて企業活力研究所に御礼申し上げたい。 た。この政策では、FTA が他国に対する市場アクセス 手段として用いられることが明示されたのである。近年 締結された、韓国やカナダ、シンガポールなど主に先進 国やそれに類する国々とのFTAはこのタイプのFTA であり、新世代 FTA、高度・包括的 FTAなどと呼称 されている。 ところで、国際的な貿易ルールの形成という点に着目 すれば、戦後の国際貿易秩序を維持・発展させてきた のは多国間の枠組みである関税と貿易に関する一般協 定(GATT) ・WTOであった。GATT・WTOに関す る研究は枚挙にいとまがなく詳細は割愛するが、TPP とこれとを比較すると、さしあたり次の点に言及できる。 まず、TPPは、多国間で実現できなかったことを盛り込 んでいる。例えば、投資分野の規律やISDSとして知ら れる投資紛争処理手続、競争政策などがあげられる。 これらはWTOにおいて過去に交渉対象にしようと試み られたものの頓挫した分野である。次に、TPPでは、 多国間で不十分ともされた規律の強化がはかられてい る。具体的には、政府調達、地理的表示、電子商取 引といった分野があげられる。TPPでこのようにルール が整備・強化されたことは、企業活動にとっても影響が 大きいといえるだろう。また、WTO 交渉の進展が見込 【参考文献】 W i l l i a m K r i s t , Globalization and America’s Trade Agreements , Woodrow Wilson Center Press, 2013. Ulrich Sedelmeier,“Enlargement: Consituent Policy and Tool for External Governance,”Policy-Making in the European Union , Oxford Univ. Press, 2015. pp.408-435. U.S. Government Accountability Office, An Analysis of Free Trade Agreements and Congressional and Private Sector Consultations under Trade Promotion Authority, 2007. (GAO-08-59) http://www.gao.gov/products/GAO-0859(2015 年 10 月31日アクセス) U.S. Government Accountability Office, Intensifying Free Trade Negotiating Agenda Calls for Better Allocation of Staff and Resources, 2004. (GAO-04-233) http://www.gao. gov/products/GAO-04-233(2015 年 10 月31日アクセス) Stephen Woolcock,“Trade Policy: A Further Shift Towards Brussels,”Policy-Making in the European Union , Oxford Univ. Press, 2014. pp.382-399. 遠藤乾「安全保障論の転回」遠藤誠治・遠藤乾編『安全保 障とは何か』岩波書店、2014 年、33 − 64 頁。 企業活力 57 研究所便り 研 究所便り 退任御挨拶 2013年8月に企業活力研究所に出向して、2年間の任期を終えてこの度出向元へ戻ることとなりました。本研究所で は、「企業の資金調達の円滑化に関する協議会」という任意団体を主に担当し、社債発行や金融機関借入等の資金調 達に係る問題を中心に、事業会社の立場として各方面へ意見を発信して参りました。任期期間を振り返ると未曾有の 金融緩和政策の恩恵を被り、一般的には資金調達に支障を来すような局面ではございませんでしたが、稼ぐ力を強化 する方策として資金の効率的活用に注目が集まった時期でありました。このような環境下、多くの皆様に支えられな がら、調査研究・提言を行うことが出来ましたことは、私にとって非常に貴重な経験であり、大変感謝しております。 引き続き、当研究所へのご支援・ご協力を宜しくお願い致します。 (山梨 聡) 新任御挨拶 本年8月に当研究所に着任致しました北條竜央と申します。「企業の資金調達の円滑化に関する協議会(略称:企 業財務協議会)」の事務局を務めております。企業財務協議会は、企業の資金調達の円滑化の観点から重要と考えら れる問題点について、重点的かつ機動的に議論を行うとともに検討結果の実現に向けて関係各方面に積極的な働きか けを行うことを目的とした民間企業の自主的な団体です。各企業の円滑な事業運営に少しでも寄与できるよう取り組 んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (北條 竜央) 編集 後記 今年のラグビー W 杯で、 強豪南アフリカを破るなど大躍進を遂げた日本代表。そのメンバー を見てみると外国人選手が多いことに驚かれた方も多かったのではないでしょうか。私もラ グビー初心者ですので、気になり、その選出基準を調べてみると、、、 原則として他の国・地域の代表経験がなく、①本人が日本生まれ、②両親か祖父母の 1 人が 日本生まれ、③本人が 3 年以上続けて日本在住とありました。 国籍のみにこだわらないこの「多様性」こそがラグビーの魅力でもあり、他国籍の選手が桜のエンブレ ムを背負って戦っている姿に多くの人々が感動をしたのではないでしょうか。 「多様性」のあるチームの総合力を高める為に、圧倒的な練習時間を費やしていたのはもちろんですが、 異なる文化や価値観に対して、相互理解・尊重をしつつ「対話・コミュニケーション」にも相当の時間を 費やしていたことが、その後の各選手の言葉から伝わってきました。これはビジネスやプライベートの場 面でも大いに参考になるのではないかと強く感じました。 今号に掲載させていただきましたが、今年度の各種研究会がスタート致しました。今年度も多くのご関 係者の皆様の知見をお借りしながら、お読みいただく方々に少しでも参考となる報告書にしてまいりたい と考えております。引き続きのご協力を宜しくお願い申し上げます。 (小西 広晃) 58 企業活力 虎ノ門 5F 事務所 書房 6F 大会議室 秋季報告書 発行 2015. 11 一般財団法人 企業活力研究所 (Business Policy Forum, Japan) 設立:昭和59年7月19日 住所:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-5-16 晩翠ビル5F (大会議室:東京都港区虎ノ門1-5-16 晩翠ビル6F) TEL:03-3503-7671 FAX:03-3502-3740 ホームページ:http://www.bpfj.jp/ Eメール:[email protected] 企業活力
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