機械・金属 工 業 岡崎の石製品 岡崎の石製品 窯業・土石 工 業 おかざきのいしせいひん 業界のデータ(愛知県内) 主要な産地 岡崎市 産業の起源 天正年間 年間生産額 約 40 億円 増し、石製品業界は大いに伸長した。この 沿 革 業 木工品 工 享徳元年( 1452 )、西郷稠頼が岡崎の地 に城を築いた時、この地の花崗岩を城の石 垣に使用した。これが岡崎の石が石材とし 頃になると、徒弟制度も確立され、比較的 大きな規模の事業者も現れ、石材業者は集 団地を形成した。 太平洋戦争後の復興期から高度経済成長 期にかけては、戦没者墓石・慰霊塔、神前 業 永禄年間( 1558 ∼ 1570 )の頃には、すで 彫刻物、燈籠、庭物のブームが順次起こり に石塊をもって生活の糧とする人々がいた 活況を呈したが、業界を取り巻く環境が大 といわれている。 きく変化した近年、生産量は減少傾向にあ 繊 維 工 て実用的価値を見出された最初であるが、 業 食 品 工 岡崎で石工業が興ったのは、天正 18 年 る。 ( 1590 ) 、家康に替わり岡崎城主になった 業 工芸品 工 田中吉政が、城下整備のために多くの優秀 な石工を和泉・河内から呼び寄せたときで 製 品 知 識 岡崎の石製品は、おおむね次の 3 つに大 業 郷土玩具 工 ある。以後、石工業は領主や寺院の保護の 別される。 もとでその基礎を築いた。 ● 墓石類 墓石、墓標、五輪の塔など。 業 その他 工 東海道の宿場町・城下町として栄えた江 ● 燈 籠 神社や庭園用の燈籠。立燈籠型 戸時代には、岡崎の石製品は街道を旅する (春日型、善導寺型など)と置燈籠型(雪見 人々によって各地に紹介されるとともに、 型、岬型など)の2つに大別され、さまざま 矢作川から全国に舟運された。 な形がある。 ● 彫刻物 庭園の飾り物用としては、蛙、 農 次大戦時下の好況期には、燈籠、庭物、神 亀、梟、石橋など。神社仏閣用としては、 業 前彫刻物、仏像など、各種製品の需要が急 鳥居、狛犬、狐、仏像、玉垣など。このほ 野 菜 日清日露の両戦争後の経済発展期や第一 か記念碑などもある。 業 のは墓石類で、全体のおよそ 65%を占め 果 樹 農 このうち、もっとも多く生産されている ている。燈籠は 15%、彫刻物は 8%程度で 花 卉 農 業 畜 産 農 業 水産業 工 業 岡崎の石製品 取り巻く環境の変化によって崩れつつあ なお、製品製造とは別に墓石などに文字 工 業 る。 木工品 建築資材 12% 彫刻物 8% や絵を彫ることを専門にする字彫り業も存 在している。 事業所を従業員規模でみた場合、4 人以 繊 維 墓石類 65% 工 業 燈籠 15% 窯業・土石 なっている。ただ近年、この形態は業界を 工 業 石製品の生産割合 機械・金属 岡崎の石製品 下の零細業者が約 8 割を占めるといわれ、 築資材として利用されている。 ) 燈籠類の 43 品目は、昭和 54 年に「岡崎 なお、岡崎の石製品に使われる石は、中 ストーンフェア」を開催している。 墓石や燈籠、彫刻物の展示即売に加え、 荒目石の 5 種類あり、もっとも多く利用さ が行われ、多くの消費者や石材業者が会場 れているのは中目石である。 を訪れる。 工 業 石材加工科を設置し、全国から石材店の子 あ その他 また、職業訓練法人岡崎技術工学院は、 工 業 毎回、趣向を凝らしたさまざまなイベント 郷土玩具 目石、青目石、薄石(宇寿石、臼石) 、白石、 産 地 の 特 徴 工 業 省)から伝統的工芸品に指定されている。 岡崎の石製品業界では、毎年秋に「岡崎 工芸品 石工品」として通商産業省(現・経済産業 産 地 の 取 組 工 業 家内工業的な色彩が強い。 食 品 ある。 (残り 12%は、庭石、敷石などの建 じ 岡崎は、茨城県の真壁、香川県の庵治と 業 工、安全衛生作業法などの実技を修得して ミで仕上げまで手作業で行うのが基本とさ 農 業 いる。 果 樹 細工技術は機械化が進んだ現在も槌とノ 農 材に恵まれていることである。 工法、石製品据付法などの学科と石材加 岡崎産地の特徴は、細工技術の高さと石 学し、修行先の石材店に勤務しながら、加 野 菜 並ぶ石の三大産地のひとつである。 弟を受け入れている。毎年 10 人前後が入 れている。また、最高級の墓石材料になる 農 業 花 卉 硬質のみかげ石と、燈籠や彫刻物に最適な 粘りのあるみかげ石の両方が岡崎市内の山 から切出されている。こうしたことから岡 農 業 畜 産 崎産地は「石都岡崎」とも呼ばれている。 製造面をみると、各業者はおおむね製品 ごとに専門化しているが、流通面では他産 水産業 業にみられる産地問屋に相当するものはな く、業者間で相互に製品を融通する形態と 取材協力:岡崎石製品協同組合連合会 ☎ 0564-31-3823 職業訓練法人岡崎技術工学院 ☎ 0564-53-3521 機械・金属 工 業 粘 土 瓦 業界のデータ(愛知県内) 主要な産地 高浜市・碧南市 産業の起源 江戸時代(1700 年頃) 年間出荷量 約 3 億 8,475 万枚 粘土瓦 窯業・土石 工 業 ねんどがわら 江戸時代に作られていたのは、ほとんど 沿 革 がいぶし瓦(黒瓦と呼ばれることもある) 約 1,400 年前。朝鮮半島の百済から瓦博士 焼瓦も多く製造された。昭和 40 年代にカ が飛鳥寺(法興寺)の造営のために来日し ラフルな陶器瓦のブームが到来すると、陶 た時といわれている。これ以降、瓦はおも 器瓦の勢いが増し、今日では全生産量の 9 業 に寺院などの屋根に使われるようになった 割近くを陶器瓦が占めるに至っている。 業 木工品 であったが、大正時代には赤褐色をした塩 工 工 日本に瓦づくりの技術が伝わったのは 繊 維 が、広く普及するのは江戸時代になってか 業 食 品 工 らである。 また、長いあいだ瓦といえば、波形をし た和形瓦のことを指したが、平成のはじめ へいばん 江戸時代、三井寺に出入りしていた西村 わがた 頃に平板瓦が登場すると、住宅洋風化を背 さん 業 工芸品 工 半兵衛が、いわゆる日本瓦(和形瓦・桟瓦) 景に平板瓦の生産量が徐々に増加し、今で を 発 明 し た( 延 宝 2 年・1674 年 )こ と と、 は生産量のおよそ 6 割に達している。 幕府が火災の延焼を防ぐため瓦屋根を奨励 製 品 知 識 したことが普及を後押しした。 業 郷土玩具 工 碧南市、高浜市を中心とする地域で瓦 粘土瓦は粘土を原料にした瓦で、さまざ が製造されるようになったのも江戸時代 まな色や形のものがある。一般的には、製 法、形状、種類などによって分類される。 (以 ( 1700 年頃)と推測されている。 業 その他 工 粘土が大量に採掘され、港に近く瓦運搬 下、主に一般住宅などの屋根に葺く瓦) の地理的条件が整っていたこの地域では、 ● 製法による分類 瓦の生産が大いに伸長し、後に日本一の生 ・陶 器 瓦( 釉 薬 瓦 ) 瓦 の 表 面 に 釉 薬 を 業 野 菜 農 塗って焼成する。釉薬に含まれる酸化金 産量を誇る産地へと発展した。 属の色を出す。 とくに昭和 30 年に真空土錬機が開発さ ・いぶし瓦 釉薬を使わず、焼成の最終段 農 によって大量生産が可能になり、生産量が 階で瓦を燻し、素地表面に銀色の炭素膜 業 飛躍的に増加した。 を作る。 果 樹 れ、そのあとトンネル窯が導入されたこと 花 卉 農 業 愛知県における陶器瓦といぶし瓦の 生産割合 (平成 21 年) いぶし瓦 12% その他 2% 農 業 和形瓦 40% 畜 産 水産業 愛知県における瓦の生産割合 (形状による分類) 陶器瓦 88% 出所:工業統計表 平板瓦 58% 工 業 機械・金属 40 枚 49 枚 工 業 53 枚 木工品 1 坪あたりの葺き枚数 粘土瓦 谷の深さ(山の高さ) 工 業 瓦 1 枚の大きさ 形状による分類 和形瓦( J 形) 平板瓦( F 形) S 形瓦( S 形) 305 mm 350 mm 310 mm × 305 mm × 345mm × 310mm 35 mm ∼ 35 mm 以下 50 mm 以上 50mm 窯業・土石 粘 土 瓦 平板瓦( F 形) 繊 維 工 業 陶器瓦 (注:基本的な分類。これ以外の粘土瓦も作られている。 ) 工 業 食 品 和形瓦( J 形) いぶし瓦 S 形瓦( S 形) 無釉瓦 工芸品 工 業 和形瓦( J 形) 陶器瓦 ・無釉瓦 釉薬を使わずに焼成するもので、 生地に粘土以外の物質を混ぜる練りこみ 工 業 郷土玩具 方法や色むらを持った窯変瓦などがある。 ● 形状による分類 ・和形瓦( JIS 規格では J 形) 工 その他 ・平板瓦( JIS 規格では F 形) 業 ・S 形瓦( JIS 規格では S 形) ● 種類による分類 のふたつは、石州産地(島根県)と淡路産 を「 本 葺 き 瓦 」と 地(兵庫県)である。 いうが、本葺き瓦 ひら 三州産地の特徴は、和形瓦、平板瓦、い ている。 いることであり、なかでも平板瓦はその発 祥地ということもあって、豊富なバリエー いては他産地の追随を許さない。 石州産地は基本的に和形瓦を中心とする れる粘土瓦は、一般に三州瓦と呼ばれ、こ 産地で、淡路産地はいぶし瓦を得意とする の三州瓦をつくる産地を三州産地と呼ぶな 産地である。 水産業 碧南市や高浜市を中心とする地域で作ら 農 業 ションの瓦が開発されている。平板瓦につ 畜 産 産 地 の 特 徴 ぶし瓦、S 形瓦と、あらゆる瓦を生産して 花 卉 本葺き瓦 つがセットになっ 農 業 は、平瓦と上にか ぶせる丸瓦のふた 業 *寺社建築に葺く瓦 農 業 あり、また、国内最大の産地でもある。他 果 樹 ・役瓦 軒瓦、袖瓦、鬼瓦などの瓦。 農 三州産地は粘土瓦の三大産地のひとつで に葺く瓦。 らわしになっている。 野 菜 ・桟瓦 住宅の屋根の桟(最も広い部分) 機械・金属 工 業 粘土瓦 粘土瓦 窯業・土石 工 業 ねんどがわら 三州産地で作られる瓦は 1,130 度前後で 焼成される。石州産地は 1,250 度以上、淡 生 産 状 況 県の粘土瓦の年間出荷枚数は、約 3 億 8,475 とになり、低いほど瓦表面の発色が良くな 万枚。島根県の 8,150 万枚 、兵庫県の 4,697 る。三州瓦は他産地の中間の温度で、強度 万枚を大きく引き離し、全国トップを誇っ 業 と色のバランスが良い瓦とされている。 ている。 業 焼成温度は、高いほど瓦の強度を増すこ 工 木工品 工 工業統計表(平成 21 年)によれば、愛知 路産地は 1,000 度前後である。 繊 維 ただ、粘土瓦需要はおおむね住宅建築戸 工 から地域ブランド(地域団体商標)に認定 数の多寡に依存するため、ここ 10 年ほど 業 された。また、国の地域産業資源にも指定 は減少傾向にある。 食 品 なお、三州瓦は平成 18 年 11 月に特許庁 現在、三州瓦のトンネル窯の工場は、ほ されている。 業 工芸品 工 とんどが完全オートメーションで、粘土供 給から土錬、プレス、乾燥台車積み、乾燥、 施釉、焼成台車積み、焼成、選別、梱包まで、 業 郷土玩具 工 すべてコンピュータ制御の機械で行われて いる。人が直接かかわるのは、梱包前の検 粘土瓦の県別出荷枚数 査だけである。全工程(粘土供給から梱包 業 その他 工 その他 5,912 万枚 まで)にかかる時間は 42 時間ほどである。 兵庫 4,697 万枚 三州産地には、窯の長さが 100 メートル、 1 ライン 1 日の生産能力が 5 万枚にも及ぶ 農 平成 21 年 全国:5 億 7235 万枚 最新鋭の工場もある。 業 野 菜 島根 8,150 万枚 愛知 3 億 8,475 万枚 業 果 樹 農 出所:工業統計表 粘土瓦出荷枚数と新設住宅着工戸数 (億枚) (万戸) 農 業 140 7 花 卉 130 6 120 5 110 100 3 90 水産業 1 畜 産 農 業 4 80 2 0 70 粘土瓦出荷枚数(愛知県) 新設住宅着工戸数(全国) 12 13 14 15 16 17 18 出所:工業統計表・建築着工統計 19 60 ∼ ∼ 0 20 21 (平成/年) 工 業 機械・金属 粘土瓦 工 業 粘土瓦(陶器瓦)の生産工程 窯業・土石 粘 土 瓦 工 業 木工品 窯業機械メーカー 釉薬製造業者 工 業 繊 維 土練 成形 乾燥 (真空土練機) (自動プレス) トラック搬入 選別 包装 出荷 (自動施釉機)(トンネル窯) 全自動 ライン 製造業者 (窯元) 工 業 製土 業者 焼成 工芸品 採堀 業者 JIT システム 施釉 工 業 配合土 受け入れ 食 品 粘土 配合 工 業 郷土玩具 工 その他 業 農 野 菜 業 農 業 果 樹 三州産地の瓦メーカーは 、 それぞれが厳密な 農 業 花 卉 製品チェックを行っている。規格外品となった瓦 などは、廃棄するのではなく、愛知県陶器瓦工業 組合の「シャモット工場」へ搬入する。ここで細 農 業 かい粉(シャモット)に砕かれ、粘土配合所に送 畜 産 られる。配合所ではシャモットを原料粘土の一部 ( 3%)として再利用している。 水産業 取材協力・写真提供:愛知県陶器瓦工業組合 機械・金属 工 業 鬼 瓦 鬼 窯業・土石 工 業 おにがわら 瓦 沿 革 業 木工品 工 江戸時代、幕府の命により屋根瓦が普及 すると、鬼瓦も広く庶民の生活に溶け込ん でいった。 業 や矢作川を利用した舟運に便利であったこ 繊 維 工 三州地域はその原料に恵まれていたこと とから、粘土瓦の全国有数の産地に発展し 業 盛んに製造されるようになった。 食 品 工 たが、粘土瓦のひとつの形態である鬼瓦も 鬼瓦は職人の手作業で一つひとつ作られ 製 品 知 識 鬼瓦には、厄除け、招福、火災除け、水 除けなどの願いがこめられている。社寺仏 業 工芸品 工 おにし る。その職人を鬼 師(鬼板師)と呼ぶが、 閣や住宅の屋根に鎮座させて、守り神とす 技を磨き、腕一本で勝負する。 るのが本来である。 三州産地には腕の良い鬼師が集まってお 業 郷土玩具 工 り、競争が激しい半面、普段から互いがそ の技を高めており、鬼師は高い評価を受け ている。 しかし、近年、本来以外の用途も広がっ ている。 縁起物の恵比須、大黒、鶴、亀、馬、鹿、 仙人、乙姫、竜宮城などの飾り瓦をインテ 業 その他 工 リアや贈答用としたり、花器、水差し、ガー デンテーブル、ガーデンポットなど洋風住 宅の庭作りのエクステリアとしたりする 業 野 菜 農 ケースも増えつつある。 代 表 的 な 鬼 瓦 業 果 樹 農 シンプルな鬼瓦 伝統的な鬼瓦 一般住宅によく使わ れているシンプルな デザイン 格式のある雰囲気を 醸す こだわりの鬼瓦 花 卉 農 業 個性的な住まいを 実現 社寺仏閣用の鬼瓦 畜 産 農 業 水産業 鬼師の技が集約されて いる 洋風屋根の 飾り瓦 カラーも多彩 インテリア製品 新築祝い、記念品、 お歳暮などの贈答品 エクステリア製品 耐久性に優れ、自然 との調和を意識 取材協力・写真提供:鬼瓦製造販売 鬼十(高浜市) 井野瓦工業株式会社(高浜市) 三州鬼瓦製造組合 工 業 機械・金属 ファインセラミックス 沿 革 器の研究にはじまったが、後にこの電磁的 とき、そのひとつにファインセラミックス 特性が明らかになるにつれ、機能性ファイ は位置づけられる。 昭和 33 年に生産がはじまった半導体集 しいので、伝統的な陶器や磁器などをオー 積回路は、パッケージ用セラミック基板 ルドセラミックスと呼ぶのに対し、ファイ の需要を増加させ、続く昭和 40 年代には、 ンセラミックスをニューセラミックスと呼 多層パッケージの開発、セラミック太陽電 ぶこともある。 ミックスメーカーが集積しているが、もと と、構造を維持するために用いる「構造用 は陶磁器メーカーだったところが少なくな ファインセラミックス」に分けられる。 く、その多くは昭和 50 年代からファイン ● 機能性ファインセラミックス ラミックス製造にも応用できたことが背景 ◆ 電磁気用部材:IC パッケージ、電池、 HDD 用薄膜磁気ヘッド、セラミック にある。 精製した天然原料、化学的プロセスによ ◆ 半導体関連部材:サセプター、ヒー タなど り合成した人工原料(珪酸塩鉱物・酸化化 て、新しい特性(耐熱・耐強度・電磁的性 機械的特性に優れた材料。 質など)を持たせたセラミックスのことで ◆ 工具部材:ダイヤモンド工具、WC工具 など ある。 耐摩耗部材:乳鉢、破砕ロールなど とつに数えられる セラミックス は、「焼 ◆ 化学部材:自動車用触媒、セラミック フィルターなど き物」を意味し、炉や窯で原料を焼き固め ◆ 水産業 陶磁器、ガラス、セメント、琺瑯などが 農 業 ◆ 畜 産 有機材料、金属材料と並ぶ 3 大材料のひ た製品の総称である。 農 業 ● 構造用ファインセラミックス 花 卉 合物) 、天然には存在しない化合物を用い 業 熱的部材:スパークプラグ、炉心管など 農 ◆ 農 業 ファインセラミックスとは、高純度に 果 樹 光学用部材:光ケーブル、 太陽電池など ◆ 野 菜 コンデンサなど 製 品 知 識 業 性に優れた新しい機能をもった材料。 工 な陶磁器の製造で培った技術がファインセ 電気的、磁気的、光学的、熱的、化学的特 その他 セラミックスメーカーに転換した。伝統的 工 業 活かした「機能性ファインセラミックス」 郷土玩具 愛知県では瀬戸市周辺にファインセラ 工 業 ファインセラミックスは、材料の機能を 工芸品 池などの開発が進んだ。 工 業 ファインセラミックスの歴史は比較的新 食 品 ンセラミックスが生産されるようになった。 工 業 磁器を、土器、陶器、磁器などに分類した 繊 維 期のフェライト磁石の発明、ステアタイト磁 工 業 セラミックスの代表であるが、このうち陶 木工品 ファインセラミックスの開発は、昭和初 工 業 窯業・土石 ファインセラミックス ふぁいんせらみっくす 生体・生物部材:人工関節、人工歯根 など 機械・金属 工 業 ファインセラミックス ファインセラミックス 窯業・土石 工 業 ふぁいんせらみっくす ◆ 生活文化部材:包丁、ゴルフクラブ、 ◆ 光触媒など 窒化珪素:高い機械的強度、耐磨耗性、 耐食性に優れ、自動車エンジンのセラ 業 木工品 工 また、ファインセラミックスの代表的な ミック化やガスタービン翼などに使用 材料としては、以下のものがある。 される。 ◆ アルミナ:硬度、耐熱性、耐薬品性 汎用される。電気絶縁性にも優れ、IC ファインセラミックスは、その特性を活 パッケージ、電子部品の基板などに使 かして、さまざまな分野で利用されている。 繊 維 業 途 工 用 に優れた特性を有し、機械材料として 業 食 品 工 用される。 ◆ 業 工芸品 工 ◆ 電子機器分野では、半導体素子のパッ ジルコニア:強度が大きく、靭性(欠 ケージのなかの部品に用いられ、自動車分 けにくさ)が大きいので、包丁、ハサ 野では、ガソリンエンジンのなかのセンサ ミ、人工骨などに使用される。 材料や浄化用の部品などに使われている。 業 郷土玩具 工 炭化珪素:珪素と炭素から構成され 多くは、ふだん目に触れないところで使 ているセラミックスで、空気中では高 われ、エレクトロニクス産業や自動車産業 温でも安定しているため、耐火物、研 などさまざまな産業を支えている。 磨剤、発熱体などに使用される。 工 有機材料 業 その他 セラミックス プラスチックなど 金属材料 農 鉄やアルミなど 業 野 菜 セラミックス 業 果 樹 農 土器 陶磁器 ガラス セメント 陶器 炻器 磁器 耐火物 研削砥石 琺瑯 ファインセラミックス 花 卉 農 業 畜 産 農 業 水産業 ファインセラミックスの概念図 れている。 の活況、さらに海外向け部材の輸出が伸び 瀬戸市ではファインセラミックス産業を たことによる。 工 業 食 品 バックアップする取組みを地道に進めてお ファインセラミックス部材の構成比率 り、青少年にセラミックスをわかりやすく 汎用および その他 0% 化学、生体・ 生物・他 11% 紹介することで、将来の人材確保や産業振 工 業 工芸品 熱・半導体 関連 9% 興へ繋げたいとしている。 工 業 電磁気・ (平成 20 年) 光学用 機械的 65% 15% 生 産 状 況 郷土玩具 全国のファインセラミックス部材の生産 総額は、統計を取りはじめた昭和 56 年当 出所: (社)日本ファインセラミックス協会 時は 2,900 億円程度であったが、それ以降、 工 業 その後、一時的な落ち込みはあったもの 超えるまでになった。 ファインセラミックス部材の生産総額(全国) (億円) その他 順調に伸び、平成 3 年には 1 兆 2,000 億円を 工 業 帯電話やデジタル家電の普及や自動車産業 繊 維 学などの産業分野で工業部材として利用さ 工 業 業分野に応用されるようになったのは、携 木工品 機械、窯業、ガラス、セメント、鉄鋼、化 工 業 ファインセラミックス部材が広範囲な産 窯業・土石 スのほとんどが、自動車部品、電子・電機、 伸びている。 ファインセラミックス 愛知県で生産されるファインセラミック 年には平成 3 年の 2 倍、2 兆 4,000 億円まで 工 業 の、おおむね増加基調をたどり、平成 19 産 業 の 特 徴 機械・金属 ファインセラミックス 25,000 野 菜 農 20,000 15,000 56 58 60 62 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 注)平成 3 年は推定、平成 21 年は見込 (昭和・平成 / 年) 出所: (社)日本ファインセラミックス協会 畜 産 農 業 1,500 農 業 (億円) 花 卉 愛知県のファインセラミックスの販売金額 [機能材計] 果 樹 0 農 業 5,000 業 10,000 1,000 500 水産業 0 1 3 5 7 9 11 出所:愛知県鉱工業指数(年報) 13 15 17 19 2122 (平成 / 年) 取材協力・写真提供:株式会社ヤスフクセラミックス(岡崎市) 株式会社成田製陶所(瀬戸市) 機械・金属 工 業 常 滑 焼 主要な産地 常滑市 産業の起源 平安末期 常滑焼 窯業・土石 工 業 とこなめやき 業界のデータ(愛知県内) 釉などの新しい焼き物が創出 沿 革 され、多くの名工と呼ばれる 業 木工品 工 常滑焼の歴史は古く、その 人達を輩出した。なかでも朱 ルーツをたどると古代にはじ 泥の急須は、このあと常滑を まった猿投窯に行き着くとい 代表する焼き物になっていく。 業 繊 維 工 われる。 明治初期には土管の量産化 平安末期、近在に穴窯が築 に成功し、これを機に常滑窯 業の近代化が確立する。以後、今日までタ 工 る甕や壺などが作られた。当時の窯は「古 イル、衛生陶器、植木鉢、置物など、時代 業 常滑」と呼ばれ、瀬戸、信楽、越前、丹波、 とともに新しい製品が生み出されている。 食 品 かれ、写経を納める経塚壺や日常に使われ 備前とともに日本六古窯のひとつに数えら 江戸時代、常滑では大窯が使われていた 業 工芸品 工 れている。常滑焼はこのなかで最も古く、 が、天保年間には登窯が導入され、明治 規模は最大であったといわれている。 30 年代以降は石炭窯が利用された。石炭 室町時代には半地上式の大窯が使われ、 窯は昭和 40 年代まで使われたが、その後 業 郷土玩具 工 大型の甕や壺が作られていたが、安土桃山 はガス窯や電気窯が普及し、量産品はトン 時代には織田信長の禁窯令(尾張藩で瀬戸 ネル窯で焼成されるようになっている。 以外の窯を築くことを禁止した令)により 業 その他 工 衰退してしまった。 しかし、江戸後期には復興を果たし、幕 末から明治にかけては、朱泥・白泥・藻掛 製 品 知 識 常滑ではさまざまな陶磁器が作られてい る。主な品目は以下の通り。 業 野 菜 農 ● 食卓用品(日用雑器) 地元産出の陶土が有色粘土であるため、 親しみやすく、素朴な焼き物が多く作られ 業 ある。 果 樹 農 ている。灰釉、藻釉、朱泥などの飲食器が 花 卉 農 業 畜 産 農 業 水産業 工 業 機械・金属 常滑焼 工 業 窯業・土石 朱泥の急須は常滑焼の代表作で、この赤 い急須をみれば常滑焼と分かるほどよく知 わゆるロクロを用いず、太い粘土のひも 種類の多さ、使い勝手の良さから高い評価 (棒状の粘土)を積み上げて、作品を形作っ ● 衛生陶器(タイル) ときに用いられた。 最も多い生産量を誇る。タイルは外装タイ 浴槽などをつくる新たなプロジェクトが平 ルや床タイルが主流。 成 17 年から展開されている。新たに「フ ● 植木鉢 ローライフ 26 」のブランドを立ち上げ、伝 した製品を提案している。 工 業 生産量は全国有数の規模を誇る。 統を守りながらも、新しい感覚でデザイン 工芸品 園芸鉢、盆栽鉢、観葉鉢に大別される。 工 業 常滑ではこのヨリコ造りの技法で陶器の 食 品 トイレや洗面所などの陶器で、常滑では 工 業 ていく成形法で、主に大型の甕や壺を作る 繊 維 を得ている。 工 業 を混ぜて焼いた無釉陶器で、品質の高さや 木工品 られている。陶土にベニガラという酸化鉄 ● 花器・置物 連の製造品出荷額は約 400 億円。このうち、 製品の開発が積極的に行われている。 最も多いのは「衛生陶器」で、全体の 63% この両者を合せると 90%近くに達する。 受け継がれている。 で 86 業者となっている。全体の約 4 割を占 農 業 めている。 果 樹 そのひとつにヨリコ造りと呼ばれる技法 がある。この技法は常滑独特のもので、い その他の陶磁器・ 同関連製品 3.3% その他 13.4% 食卓用・ 厨房用陶磁器 41.1% 常滑市の工業統計調査(平成 20 年)より作成 4 人以上の事業所と 3 人以下の事業所の合計 陶磁器製 タイル 25.4% 衛生陶器 63.6% 水産業 その他の 陶磁器・ 同関連製品 23.4% 陶磁器用 坏土 3.6% 農 業 陶磁器製 タイル 7.7% その他 0.8% 畜 産 陶磁器製 置物 7.2% 陶磁器製置物 0.7% 食卓用・ 厨房用陶磁器 2.7% 花 卉 陶磁器用 坏土 3.8% 常滑市における窯業土石関連の製造品出荷額 農 業 常滑市における窯業土石関連の事業所数 業 もっとも多いのは「食卓用・厨房用陶磁器」 農 の手により研鑚された高度な技術や技法が 窯 業 土 石 関 連 の 事 業 所 数 は 209 業 者。 野 菜 千年の歴史を誇る常滑焼は、多くの名工 陶磁器絵付 0.5% 衛生陶器 2.9% 業 を占める。また「タイル」は 25%を占め、 産 地 の 動 向 工 れ、デザインや色などに工夫を凝らし、新 常滑市における平成 20 年の窯業土石関 その他 スチックといった他素材との競合もみら 工 業 生 産 状 況 等 郷土玩具 他の産地との競合や、ガラス、木、プラ 常滑市の工業統計調査(平成 20 年)より作成 4 人以上の事業所と 3 人以下の事業所の合計(秘匿を除く) 取材協力:とこなめ焼協同組合(常滑市) ☎ 0569-35-4309 岩瀬弘二氏(常滑市) ☎ 0569-37-2800 機械・金属 工 業 瀬 戸 焼 主要な産地 瀬戸市 年間販売額 167 億円 産業の起源 平安中期 瀬戸焼 窯業・土石 工 業 せとやき 業界のデータ(愛知県内) 沿 革 業 木工品 工 瀬戸焼のはじまりについては諸説がある が、その源流を辿ると、当時、古窯で最大 の規模を誇った猿投窯に行き着くといわれ 業 繊 維 工 ている。 とくに瀬戸焼と呼べるのは、鎌倉時代の はじめ頃から中国陶器を手本に、神仏への 業 階からである。 食 品 工 供え物を入れる器などを焼いた古瀬戸の段 また、この時期には石炭窯が開発され、 業 工芸品 工 古瀬戸とは、中世の一般的な焼き物が無 大量生産が進む一方、新たな製品開発も積 釉であったのに対し、日本で最初に器全体 極的に行われ、タイル、便器、碍子、ノベ に釉薬を施した特殊な陶器のことを指し、 ルティなども生産されるようになっている。 室町中期まで約 300 年にわたって生産され 業 郷土玩具 工 た。 江戸時代には尾張藩主徳川義直が東濃地 製 品 知 識 瀬戸地区には陶磁器の原料が豊富に埋蔵 業 その他 工 方に離散していた瀬戸の陶工を呼び集め、 されており、その陶土は火に強く、焼き上 産業を保護したため、生産が盛んになり、 がりが真っ白になる良質なものであり、そ 江戸後期には磁器の染付焼の生産もはじ のことが多様な陶磁器製品の生産を可能に まった。 している。 業 り、明治政府の輸出振興策のもとで、国内 うが、この言葉のルーツとなった瀬戸焼は、 よりも海外を優先した製品がつくられ、明 親しみやすいデザイン、温かみのある釉薬 農 治 10 年代には輸出用陶磁器が総生産の約 7 の発色が特徴で、実用的な生活雑器にとど 業 割を占めた。 まらず、美的観賞の対象としても数多く生 野 菜 農 江戸末期から明治にかけて輸出がはじま 一般に陶磁器のことを「せともの」とい 果 樹 産されている。 花 卉 農 業 ●主な生産品目 和 飲 食 器 :日本の風土や行事、料理など に合わせて、様々な種類の図 畜 産 農 業 柄や形のものがある。 洋 飲 食 器 :ディナーセットやティーセッ トがその代表。 水産業 ノベルティ:陶磁器製の置物などの装飾品 で、干支の置物や人形など。 工 業 機械・金属 工業協同組合直営のアンテナショップに位 内外、浴室やトイレなどにも が設置されている。瀬戸で作られた陶磁器 取り入れられている。 のほとんどがここに集められ、毎年 9 月に PR に貢献している。 工 業 高度に精選された原料から高 開催される「せともの祭」とともに陶磁器 繊 維 ファインセラミックス: 工 業 置付けられる「瀬戸蔵セラミックプラザ」 木工品 タ イ ル:内装品・外装品のタイル。室 瀬戸焼 絶縁体など。 また瀬戸市の中心部には、愛知県陶磁器 工 業 電 磁 器:鉄塔や電柱などに取り付ける 窯業・土石 瀬 戸 焼 い精度で加工されたセラミッ 工 業 食 品 ク(焼き物)部品。エレクト ロニクス産業のほか、様々な 分野で利用されている。 工 業 工芸品 生 産 状 況 愛知県陶磁器工業協同組合によると、平 工 業 郷土玩具 素材が粘土・トウモロコシ・ 廃貝殻でできた新しい陶器 成 20 年の陶磁器販売額(瀬戸市 ・ 尾張旭地 区)は約 167 億円となっている。 陶磁器の製品別販売状況 このうち、もっとも多いのはファイン 食卓用品 1.8 和飲食器 20.8 農 平成 20 年 (単位:億円) 業 ノベルティ 31.3 野 菜 瀬 戸 産 地 の 取 組 ファイン セラミックス 52.8 業 磁器の 52 億 7,000 万円、ノベルティの 31 億 3,000 万円などとなっている。 工 洋飲食器 3.0 その他 タイル 4.4 セラミックスの 52 億 8,000 万円、次いで電 瀬戸産地では新しい取組がはじまってい 果 樹 農 業 電磁器 52.7 る。これまでの伝統を継承しつつ、創意工 夫を凝らし、時代に沿った新しい器が開発 されている。 瀬戸市・尾張旭地区の陶磁器の販売額 農 業 (億円) 300 花 卉 素材に、粘土・トウモロコシ・廃貝殻を 用いて、軽量化し、使い終えた後は土に還 250 るという環境に優しい焼き物が試作され、 農 業 200 畜 産 見本市などで展示されている。 後継者不足に悩む陶磁器業界が新たな魅 力を発揮するためには、今まで以上に業界 ∼ ∼ 0 11 営者も増えつつある。 水産業 の革新を図っていく必要があると考える経 150 12 13 14 15 16 出所:愛知県陶磁器工業協同組合 17 18 19 20 (平成/年) 取材協力:愛知県陶磁器工業協同組合 有限会社錦山八木製陶 ☎ 0561-82-5660 瀬戸蔵セラミックプラザ 機械・金属 工 業 赤 津 焼 赤津焼 窯業・土石 工 業 あかづやき 主な製品としては、茶器、花器、酒器、 沿 革 飲食器などがある。 業 木工品 工 赤津地区を含めた瀬戸地域の焼き物の歴 また、赤津焼は昭和 52 年に国の「伝統的 史は古く、史料にはじめて瀬戸が登場する 工芸品 」 の指定を受けている。 のは『日本後紀』弘仁六年( 815 )正月五日 業 繊 維 工 の記述からである。 古窯の調査によれば、その起源は奈良時 代の須恵器にまでさかのぼることができ、 業 あったとされている。 食 品 工 鎌倉時代に釉薬を用いたのは瀬戸のみで 安土桃山時代には、茶道の発展の影響を 業 工芸品 工 受け、志野、織部など、現在の赤津焼の根 幹をなす技法や技術が確立した。 業 郷土玩具 工 特 織 部 黒織部、青織部、赤織部、絵織部を含めて織部 と呼ぶが、一般的には青織部のみを織部と称し、 黒織部は鉄釉に含める。赤織部は赤い地土に白土 で文様を描き、鉄絵をあしらう。絵織部は織部文 様のみをあしらい、灰白釉で焼成する。 徴 日本六古窯のひとつに数えられる赤津焼 は、赤津地区で産出される原料のみを使用 業 その他 工 し、基本的に素焼きをせず、釉薬を施した 陶器である。 赤津焼は 7 種類の釉薬を使うことと、12 業 ている。 野 菜 農 種類の装飾技法を駆使することを特徴とし かいゆう てつゆう こ ぜ と 7 種類の釉薬とは、灰釉、鉄釉、古瀬戸、 農 黄瀬戸、志野、御深井、織部である。装飾 業 技法には、ヘラ彫り、印花、櫛目、三島手 き ぜ と し の お ふ け おりべ 果 樹 いんか くしめ み し ま で などがある。 鉄 釉 どんぐり の傘 施釉調合 呉 須 鬼板粘土 製 品 上絵付け 検 品 栃渋入れ 焼 成 施 釉 絵 付 け 素 焼 き 乾 燥 素地加飾 ね か し 成 形 ねじ押し 畜 産 農 業 陶土調合 仕 上 げ 花 卉 農 業 製造工程 水産業 種猿赤本山 投津山 長蛙木 石石目節土 取材協力:赤津焼工業組合 ☎ 0561-21-6508 立日窯 菊陶園 ☎ 0561-82-4073 工 業 機械・金属 瀬戸染付焼 瀬戸染付焼 革 工 業 せとそめつけやき 窯業・土石 沿 工 業 せとそめつけやき 木工品 瀬 戸染付焼は、19 世紀の初頭、加藤民 吉が磁器の焼成技術を瀬戸の地で広めたこ とが起源となっているが、このあとに行わ かな色づけが生みだされる。主なモチーフ 染付焼の要である染付画は、江戸時代の 工 業 潤いをもった仕上がりにするため、本焼 発展したといわれ、その技法は現在まで受 食 品 は、自然画、鳥、花などである。 絵師 山本梅逸や横井金谷らの指導により 成時に一定時間窯の温度を高温のまま維持 け継がれている。 のが染付焼の最大の特徴である。色は藍色 ブルなど大型品も製作されるようになり、 を基調とした作品が多い。 工 業 の存在感を放っているが、消費者の趣向が 瀬戸染付焼は平成 9 年に国の「伝統的工 郷土玩具 瀬戸染付焼は伝統的な工芸品として独特 生産量が増加していった。 工 業 明治以降は、食器に加え、花瓶、重箱、テー 工芸品 する「ねらし」を行い、釉薬を熟成させる かつては主に食器類が作られていたが、 変化しつつある今、陶芸家のなかには独自 芸品」の指定を受けている。 業 高い美意識が感じられる。 伝統的な染付には筆を用いるが、その技 農 からは、陶芸家の凝縮された精神性と格調 業 釉後、焼成したものが瀬戸染付焼である。 新たな染付焼を追求して生まれた焼き物 野 菜 白地の素地に染付(下絵付)を行い、施 工 られる。 徴 その他 に工夫を凝らした作品へ挑戦する動きもみ 特 工 業 焼き物は大きく発展したといわれている。 繊 維 現代風にアレンジさ れた瀬戸染付焼 れたいくつかの試験研究と結合して、この 法には、つめたて、ダミ、線書(線描き) 農 業 果 樹 などがある。この技法から繊細な線や柔ら 農 業 花 卉 ① ② ③ ⑤ ⑥ 乾燥 素焼 染付 (下絵付) 素地加飾 ⑪ ⑩ 本焼成 (ねらし) 乾燥 施釉 ⑫ 上絵付焼成 上絵付 ⑨ ⑧ ⑦ 取材協力:瀬戸染付焼工業協同組合 宝山窯 有限会社宝山製陶所(瀬戸市) ☎ 0561-41-0563 里秋園 丸八製陶所(瀬戸市) ☎ 0561-21-6173 水産業 完成品 農 業 素地成形 ④ 畜 産 陶土 (調合) 機械・金属 工 業 犬 山 焼 犬山焼 窯業・土石 工 業 いぬやまやき 業界のデータ(愛知県内) 主要な産地 犬山市 産業の起源 江戸時代 す た め、1 年 中 使 え 沿 革 る。 赤絵の食籠 赤絵は、想像上の鳥である鳳凰や草花な 井窯」を築き、焼き物を作ったのが犬山焼 どが描かれている。これは近世に、京都や の起源である。以後、その子孫 3 代が 100 瀬戸、名古屋などから、陶工、画工職人を 業 年にわたって生活雑器を製作したが、途絶 招いたことが今日の基礎となっている。 業 (現・犬山市今井)の郷士 奥村伝三郎が「今 工 木工品 工 元禄年間( 1688 ∼ 1704 )、今井村宮ケ洞 る実用的な図柄であ 繊 維 えてしまった。 業 食 品 工 文化 7 年( 1810 ) 、7代目の犬山城主成瀬 製 造 工 程 まさなが すい ひ 正壽は犬山焼再興のため、丸山の地に陶窯 1 .砕石を粉砕し、 水簸から粘土を生成する。 を開き、その窯は文政年間( 1818 ∼ 1830 ) 2 .土練りをして成形し乾燥させ、素焼き 業 工芸品 工 に「お庭焼」として発展した。 今日の犬山焼につながる 2 種類の色絵陶 磁器を振興したのは、8 代目城主の成瀬正 業 郷土玩具 工 住である。 正住は城内に絵付窯を築造し、中国の明 代の名器である「呉州赤絵」の大皿や鉢な 業 その他 工 どを買い求め模写させるとともに、絵師に し、下絵付をして、釉薬を施して焼成 する。 3 .上絵付をし、上絵窯、錦窯(金焼)な どで焼成して仕上げる。 水簸:土の粒子の大きさによって水中での沈む速さが違う ことを利用して、早く沈殿する砂利や粗粒を取り除き、 はい ど 陶土を泥水として粒子の細かい坏土(陶磁器を作る素 地となる土)だけを放置沈殿させて採取すること。 うんきんで 「雲錦手(桜と紅葉を描いた色絵)」の下絵 を描かせこれに倣って絵付を命じた。 業 「国焼」が数多く誕生した。国焼は藩内お 野 菜 農 そのころ全国各地に、犬山焼のような よび近隣諸藩の生活雑器を中心としていた 業 新の廃藩置県とともに消滅していったが、 果 樹 農 ため経済的基盤は弱く、その多くは明治維 犬山焼は技術力、品質、そして芸術性の高 雲錦手の抹茶茶碗 花 卉 農 業 さにも定評があり、販路の確保などにも力 を注いだことにより、今日の犬山焼につな がった。 畜 産 農 業 特 徴 犬山焼の特徴は、桜の雲と紅葉の錦を描 水産業 いた「雲錦手」と中国風の「赤絵」である。 雲錦手は、桜が春を表し、紅葉が秋を表 絵付作業 取材協力:愛知県陶磁資料館 犬山焼窯元 後藤陶逸陶苑 犬山市観光協会 工 業 機械・金属 鶴 城 焼 鶴城焼 徴 工 業 城」と呼ばれていたことにちなんでいる。 木工品 西尾市の鶴城焼は、かつて西尾城が「鶴 窯業・土石 特 工 業 つるしろやき 初代窯元である内藤義山氏が命名した。 工 業 など陶芸産地の土を取り寄せて、地元の土 繊 維 鶴城焼で使用する土は、萩、信楽、備前 とブレンドする。土の持つ特色を最大限い 工 業 と温もりを与える器がこの焼物の特徴とい 食 品 かして、味わう道具として、人の心に潤い える。 工 業 きらら焼などの焼物があるが、このなかで 工芸品 西尾には古くから、八ッ面焼、西尾焼、 比較的新しい鶴城焼は異彩を放っている。 工 業 窯、灯油窯、電気窯が設備されているが、 郷土玩具 西尾市山下町の内藤氏の工房には、ガス あながま これとは別に平原の地に薪だけで焼く窖窯 工 その他 がある。 業 窖窯では 1 年間に 5 回ほど火を入れ、1 週間ほど薪を燃やし続ける。1 週間で使う 農 業 自然釉が器の景色になり、使い込むほどに 野 菜 薪の量は約 10 トン。窖窯で焼いた器物は、 深みを増す。 農 業 彩である。 果 樹 作品は、抹茶茶碗、花器、水差しなど多 農 業 花 卉 農 業 畜 産 水産業 取材協力:鶴城焼窯元 内藤義山氏(西尾市) ☎ 0563-57-5914 機械・金属 工 業 幡 豆 石 幡豆石 窯業・土石 工 業 はずいし 沿 革 業 木工品 工 蒲郡の海岸部から三ヶ根山の南に広がる 幡豆海岸のいたるところに、深層で形成さ 用 途 平成 17 年に開港した中部国際空港の埋 め立て工事には幡豆石が使われている。 幡豆石は、これまで三河湾や伊勢湾で主 工 称幡豆石として知られる花崗岩で、古くか に利用されてきたが、最近は他の場所でも 業 ら石材に用いられてきた。 広く使われるようになっている。 繊 維 れた岩石が地表に露出している。これが通 この頃は河川の改修工事や耐震工事にも 工 ぼる。戦国時代、加藤清正が名古屋城築城 利用されている。従来はコンクリートによ 業 のとき、この石を石垣に用いたことはよく る川岸の補強が一般的だったが、自然に近 知られている。 い状態で河川を維持しようとする動きのな 食 品 幡豆の採石の歴史は、近世初期にさかの 業 工芸品 工 本格的な採掘が始まったのは、寺部の採 掘場(丁場)が開かれた明治 20 年頃で、舟 かで、コンクリートに代えてこの石が採用 されている。 業 郷土玩具 工 運が容易という好条件が発展の基礎となっ 幡豆石を扱う愛知県港湾石材協同組合 た。採掘は明治末期に拡大し、昭和 30 年 は「環境にやさしい石を安全に納入」を 代に最盛期を迎えた。30 年代初めには 15 キャッチフレーズに掲げているが、自然保 の採石場が点在した。 護の側面からも幡豆石は注目されている。 業 その他 工 現在は採石業者が 2 社、運搬業者が 1 社。 生産量は最盛期の 5 分の 1 ほどの年間 40 万 ㎥となっている。 業 野 菜 農 特 徴 幡豆石は硬くて重いのが特徴である。沈 業 から河岸や海岸の護岸・築堤、粗積みの石 果 樹 農 んだまま動かず、安定度が高いため、古く 垣などに使用されてきた。 花 卉 農 業 石を割ると凸凹の多い団子状の塊にな る。 石と石との摩擦が非常に大きくなって、 スベリや割れによる形状の変化をほとんど 畜 産 農 業 起こさない。加工においては、切ると表現 するよりも割ると表現したほうが適切なほ どである。 水産業 採石場 写真提供:愛知県港湾石材協同組合 工 業 機械・金属 珪 砂 砂 革 窯業・土石 珪 沿 工 業 けいしゃ 工 業 木工品 瀬戸や岡崎には、良質な珪砂原鉱に恵ま れた国内最大の珪砂資源地帯があり、100 年 ほど前から工業的手法で採鉱されている。 工 業 繊 維 瀬戸地区の珪砂は、 粘土層の上部にあり、 粘土分を多量に含んでいるので、水洗いし て粘土分を取り除く必要があるが、採掘は 工 業 食 品 地場産業である陶磁器業界との連携で進め られている。 珪砂は珪石を砕いたものであるが、三河 工 業 工芸品 (岡崎)産珪石は、大正 13 年の当初は耐火 煉瓦の原料として採掘されていた。 戦時中、 採掘は一時的に衰退したが、戦後は珪素鉄 工 業 郷土玩具 材料として再び活気づいた。岡崎市の桜井 寺地区や寺野地区は国内有数の鉱量を含有 するとされ、昭和 26 年に国は新たに法定 業 に変化したもの。陸地で地層として分布し 工 するようになっている。 れる岩が、風雨や振動によって細かく粒状 その他 鉱物にこの珪石を追加し、資源開発を保護 たり、河口や海岸で砂浜として発達したり 使用され、この 3 つの分野で需要の大部分 ントで再粉砕・分級の工程を経て製品となる。 を占める。 天然珪砂は、花崗岩あるいは珪岩と呼ば 三河珪砂は、良質な石英片岩類を原料に しており、その成分は SiO2 が 98%クラス 水産業 がある。 の用途は拡がっている。 農 業 ちなみに人造珪砂のほかに「天然珪砂」 やソーラーパネルの原料にも使用され、そ 畜 産 は「シリカフラワー」と呼んでいる。 農 業 「銀砂」 、微粉砕した珪砂を「石粉」もしく 炉砂などにも利用され、近年では IC 基板 花 卉 三河産珪砂は人造珪砂で、人造珪砂を このほか、研磨剤、農薬キャリア、焼却 農 業 を砕鉱プラントで破砕したあと、珪砂プラ 果 樹 れるほか、鋳造用、建材用としても大量に を施す。これが人造珪砂となる。 業 珪砂はガラス製品の主原料として使用さ 珪石の鉱山から採掘された高純度の原石 用途にあわせて、磨鉱、磁選などの処理 英の砂である。 で多く産出される。 野 菜 珪砂は珪酸分( SiO2 )を主成分とする石 したもので、瀬戸市、豊田市、土岐市など 農 製 品 知 識 と純度が高く、耐熱性、耐火度ともに優れ、 粒形は丸く、通気性がよい。 取材協力・写真提供:三河珪石株式会社
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