『仕上げ技術技能指導力向上講習会』

2015・平成 27 年 7 月 22 日〜24 日
『仕上げ技術技能指導力向上講習会』
主催:全国工業高等学校長協会
協賛:一般財団法人 澁谷ものづくり人材育成研究所
協力:パナソニック株式会社 AIS社 伊勢工場
全国工業高等学校長協会が主催の平成27年度夏季講習会。今年度の夏季講習会83プログラム
の中の一つとして当財団が協賛した『仕上げ技術技能指導力向上講習会』。北は北海道から南は
愛媛県まで、計10名(定員 10 名)の希望者があり、パナソニック株式会社AIS社伊勢工場
にて実施いたしました。受講先生全員から『役に立った、今後の実技実習などの指導に活かして
いきたい』という評価をいただき、成功裡に終了することができました。
1.講習会の狙い
機械実習のボール盤作業などでよく利用される「平行クランプ」の製作を通じて、仕上げ作
業の基本となる、やすりの基本動作、平面度、直角出し、R加工及びネジ立て、磨きなどを
体験し、ものづくりの基礎となる技術技能指導力の向上を図ります。研修生2名に1人の割
合で指導者を配置しますので、貴重な体験となります。
平行クランプ
課題組立図
参考図書(配布)
2.スケジュール
7月22日(水曜)
10時〜 開講式 挨拶、スケジュール説明、講師紹介、課題概要
午前 実習 やすりの基本動作(荒削り)60分
午後 実習 本体A面加工(荒・中仕上げ)105分
R8やすり加工(荒・中仕上げ) 60分
7月23日(木曜)
午前 実習 外形やすり(中仕上げ)90分
外形やすり仕上げ 75分
午後 実習 R8、R4やすり仕上げ加工105分 R8、R4ペーパー磨き 60分
7月24日(金曜)
午前 実習
M6ネジ立て 90分
外形ペーパー磨き、全体目通し、組み立て75分
午後 実習
組み立て、調整、完成 60分
14時〜 閉講式 挨拶、修了証書授与、受講者感想、講師講評
15時〜 伊勢工場見学(希望者)、解散
3.受講者(10名)
北海道尚志学園高等学校(札幌市)1名、日本工業大学駒場高等学校(東京都)1名、
川崎市立川崎総合科学高等学校(川崎市)1名、愛知県立刈谷工業高等学校(刈谷市)2名、
愛知県立名南工業高等学校(名古屋市)1名、三重県立桑名工業高等学校(桑名市)1名、
大阪府立今宮工科高等学校(大阪市)1名、神戸村野工業高等学校(神戸市)1名、
愛媛県立吉田高等学校(宇和島市)1名
4.受講者の属性・プロフィールなど
(1) 学校の所在地域
北海道
首都圏
中部・東海
近畿
四国
10%
20%
40%
20%
10%
(2) 受講者の年代
20代
30代
40代
50代以上
20%
10%
20%
50%
(3) 受講の動機 (重複回答)
スキルアップのため
授業改善のため
幅広い知識を得るため
校外研修の一環として
70%
40%
40%
10%
受講生Aさん「高校時代には仕上げの経験もありましたが、教員になってからは充分学ぶ機
会がありませんでした。今回このような仕上げの講習があり参加しました。」
受講生Bさん「以前は企業を退職された方から教えてもらう機会もありましたが、職員数も
減り指導を受ける機会もなく、忘れてしまっていることも多いので、今回思
い出したい気持ちも含めて講習に参加しました。」
受講生Cさん「生徒の仕上げの作業は、機械で加工した面を最後にヤスリがけでバリを取る
くらいの位置づけになっています。フライス盤よりも、手仕上げの面のほう
が精度が高くきれいだね、ということを生徒に教えたくて参加しました。」
受講生Dさん「手仕上げ実習の授業は行っているのですが、ちゃんとできる人に教えてもら
えていませんので、教科書に書いてある範囲の浅い知識でやっています。で
すから、きちんと教えることができるようにと考え、参加しました。」
開講式に臨む受講生
奥嶋財団代表理事
受講生と講師陣
5.講師(5名)
澁谷ものづくり人材育成研究所派遣講師2名、パナソニック株式会社AIS社伊勢工場社員
3名
6.講習会での技能習得のポイント
(1) やすりの基本動作
やすりの基本動作を学びます。基本形は修練された技能の結晶です。小さなやすりを使う
時にも、この基本が活きてきます。(300 ㎜平荒やすり)
(2)平面度、直角出し
時間の関係で、部品の爪(2点)の面を利用し、平面度、直角出しを行います。マイクロ
メーターでチェックしながら寸法の精度を上げます。0.2mm の仕上げ代の部分を光明丹を
使用した赤あたりを繰り返しながら、200 ㎜中目・細目やすりで仕上げます。平面出しは
仕上げの基本であることを学びます。
(3)R加工
本課題にあるR8とR4の加工を行います。R加工がしっかりできると作品がしまってよ
く見えることを学びます。特に直線部との交わり部を丁寧に行います。
(4)ねじ立て
ねじ穴間のピッチをそろえること、ひとつひとつのねじを直角に立てることの重要性を学
びます。今回は M6 の下穴があいていますので、スコヤを使ってねじの直角度を念入りに
確認し、ねじを切っていきます。
(5)外周の磨き
外観をきれいにするのはものづくりの基本です。ペーパーの磨き方ひとつで見栄えが大き
く変わります。目の通った磨きの美しさを味わいます。
(6)完成した平行クランプ
7.参加者の感想・意見
(1) 講習会の評価
役に立った
概ね役に立った
あまり役に立たなかった
全く役に立たなかった
(2) 授業に活用できるか
すぐに活用できる
一部なら活用できる
全く活用できない
90%
10%
0
0
60%
40%
0
受講生Aさん「今までの指導が全然違っていたなあと感じることが多くありました。ああこ
ういう世界なんだ、と非常に興味深かったです。私が知りたかったことが、
結構色んなことがわかり、学校に帰って若い先生の指導に活かしたいです。」
受講生Bさん「学校では真鍮の上下2面をヤスリがけで、面を平らにするのに、定盤の上に
サンドペーパーを置いてこするなど、基本ができていませんでした。今回の
素晴らしい貴重な経験を、今後学校での授業に活かしていきたいです。」
受講生Cさん「生徒に機械加工ではなく、仕上げ加工での面の精度の素晴らしさを教えてい
きたいです。また仕上げが終わったあとに面をそろえる目通しを初めて知り
ましたが、面の見え方がまるで変わるので感動しました。」
受講生Dさん「生徒はヤスリがけの基本は何もわかっていないので、ガムシャラに削って、
1分経ったら疲れてしまう状態ですので、今回学べたこのような技能を少し
でも指導に活かせたらと思っています。」
受講生Eさん「今まで第1姿勢、第2姿勢、第3姿勢というのがあることも知りませんでし
た。手仕上げの技能を詳しく教えていただき、講師の方も2人に1人ついて
いただき充実した指導を受けられましたので、2学期からの実習で少しでも
生徒に還元ができればと考えています。
」
完成した平行クランプを手にする受講生の皆さん
8.講師の講評
A講師「ヤスリがけの要点は、左手の支えをしっかりしておくことと、削るものをよく見
ることです。今回学習していただいた課題は、ちょうど学校の実習に当てはまる
ボリュームだと思います。自分自身も技能検定にぜひ挑戦してください。そうす
ることで後の課題研究などのものづくりの授業がやりやすくなります。」
B講師「皆さんに今後心がけていただきたいのは『5S』です。これは「整理・整頓・清
潔・清掃・しつけ」の5つのことです。作業が終わるときだけでなく、休憩に入
るときにもきちんと習慣づけしてください。見栄えも安全性も、仕事の効率もよ
くなるだけでなく、教える人と教わる人の心構えを高めます。」
C講師「ヤスリがけは動く範囲の少ない地味な作業ですが、奥の深い作業で、仕上げを突
き詰めていければ機械の精度以上の加工ができます。ミクロンをコントロールで
きるような作業もできます。」
D講師「作業を行うときの道具に対する心構えも大事です。使い方がわかっているだけで
なく、その道具を使う目的を果たせるようによく整備して扱いたいものです。日
本のものづくりの原点はそこらへんにあります。R加工はNCでもできますが、
その元になるのは人の手仕上げです。このような基本を生徒さんによく教えてい
ただけると有り難いです。
」
E講師「3日間教えられる立場で色々なことを吸収されたと思います。わからないところ
が多分たくさんあると思います。皆さんがわからないところは、生徒もわからな
いと感じる点だと思いますので、分からないところは聞いていただいて、教えら
れるようにしてください。
」
以 上