平成 19 年度 年末まちあるき 「日本橋:日本橋のオモテとウラ」 2007/12/28 山下 真司、北野 充 日本橋:日本橋のオモテとウラ 1. はじめに 3. 日本橋 2. 裏日本橋 1.はじめに 1-1 当日のルート まず馬喰町や人形町などのいわゆる『裏日本橋』エリアを歩き、その後三越や三井本館など開発の著しい『日本 橋』を歩きます。 神田から ①馬喰町 (問屋街とアート) ③日本橋(三井村) 大手町へ ②人形町(商店街) 図. 当日のルート概要 2.裏日本橋~江戸を支えた問屋街と情緒豊かな商店街 2-1 馬喰町(問屋街からアートまで) ■ 地区概要 日本橋馬喰町と隣接する日本橋横山町は、古くは江戸時代初期、徳 ※ 裏日本橋とは 川家康の江戸開府にさかのぼる問屋街であった。なかでも<江戸通り 神田の一部、馬喰町、人形町、小伝馬町など、 ><清洲橋通り><靖国通り>の三本の大通りに囲まれた三角地帯 昭和通りと隅田川にはさまれたエリアを言う。今 は、我が国最大の現金卸問屋街を形成し、世界的に有名である。約 1500 回はその中でも商業地として古くから栄えた馬喰 の商社や店舗が軒を並べ、特に衣料・繊維品・服飾品などの種類が多 町と人形町を歩く。 く、幅広いマーチャンダイズを展開している。 - 18 - 平成 19 年度 年末まちあるき 「日本橋:日本橋のオモテとウラ」 ■ 2007/12/28 山下 真司、北野 充 近年の動き ・商店街活性化プロジェクト 2005 年 3 月にスタートした、中央区が支援する SOHO(東日本橋 2)をベースに活躍する文化服装学院卒の 3 人のデザイナーたちをきっかけに、問屋街に若手クリエイターが集まりだしている。彼らのアトリエが問屋街に次々 と形成され、彼らによる新作の展示イベントやショーが盛んに行われている。また問屋街のアトリエで開かれる展 示会に問屋街商社が足を運び、それが商談に発展するなど、若手デザイナーと問屋街との関わり方にも新たな展開 が見られる。さらに問屋街活性化活動の一環として、専門学校の非常勤講師の方などを講師として迎える BUNKA オープンカレッジといった事業を、横山町・馬喰町の協賛問屋及び小売店、メーカーなどを対象に開講され、これ まで 18 回開催されている(はじまりは 2004 年 1 月)。 ・空きテナントの活用 馬喰町や神田など東京のイーストサイドでは、ビルの空きテナントを住居やアトリエ、ギャラリーなどにコンバ ージョンした物件が多く見られる。近年では、ギャラリーへのコンバージョンを核に、周辺の開発によって停滞し た区域を活性化しようとする動きから、2003 年から CET(セントラルイースト東京)と呼ばれるイベントが開催 されている。今年は、空き物件をギャラリーに見立てて作品を展示したり、裏路地のビルに映像作品を投射したイ ンスタレーションがあったり、この地で働くクリエーターのオフィスが公開されるなどのイベントが開催された (12 月 2 日で終了)。 (写真はともに馬喰町界隈の物件。右から馬喰町 ART+EAT、pilot program gallery、FOIL GALLERY) 2-2 人形町 ■ 地区概要 人形町の起源は江戸時代。人形町などの日本橋の東側一帯は絹や綿の着物をはじめ衣類全般を扱う繊維街として 発展していった。人形町の名は江戸時代の里俗地名で、大伝馬町 2 丁目と通旅籠町の間を南北に横切る通りに、古 くからこの呼び名があった。また市村座、中村座の両座が繁栄していたことから芝居小屋が多く、現在の日本橋人 形町 2 丁目周辺には人形を製作し、修理する人や、舞台で人形を操る人形師が大勢暮らしていたことから人形町と つけられたと言われている。下町情緒の残る界隈には、安産・子授けの神様であられる水天宮や、明治座や浜町公 園にぬける甘酒横丁、江戸時代から続く伝統工芸店や、味な老舗が多く残っている。 近年では、浜町や蛎殻町や浜町寄りのエリアではワンルームマンションの開発が進んでおり、近隣の商店街の賑 わいの喪失が懸念されている。 ■ 甘酒横丁(まちあるきルート内) 明治の初め頃にこの横丁の入り口の南側に尾張屋という甘酒屋があったことから、昔は『甘酒屋横丁』と呼ばれ ていた。当時の横丁は今より南に位置しており、道幅もせまい小路であったが、関東大震災後の区画整理で現在の ような道幅になった。和菓子店、せんべい屋、つづら屋など、昔ながらのしもた屋が残っている。 ※ 柳屋 大正 5 年(1916)創業の鯛焼き屋。全身をリズミカルに動かしながら焼く鯛焼には連日長蛇の列ができる。 - 19 - 平成 19 年度 年末まちあるき 「日本橋:日本橋のオモテとウラ」 2007/12/28 山下 真司、北野 充 図. 甘酒横丁マップ(囲んであるのが柳屋です) ■ 人形町商店街(まちあるきルート内) 明治 41 年(1908 年)に「商誠会」を組織し、近代的商業組合となった。昭 和 26 年(1951 年)にはいち早くアーケードを設置して話題を呼んだ(現在は 防災面の問題・老朽化により廃止) 。加盟店には江戸・明治時代から続く老舗が 多く名を連ねている。せともの市や、人形市、べったら市と一年を通して行事 が多いことも特徴に挙げられる。 先ほど、人形町はマンション開発などで商店街の賑わいの喪失が懸念される と書いたが、この界隈にはさほどマンションは建設されておらず、子授け・安 産祈願で知られる水天宮やオフィス街が近いことから、観光客やサラリーマン で常ににぎわっている。さらに近隣にスーパーなどの大型店はほとんどなく、 商店街にとって恵まれた環境にあると言える。 写真. 人形町商店街シンボルタワーの時計台 3.日本橋 2-3 日本橋 ■ 歴史 日本橋は、1603 年に発令した徳川家康の「全国道路網整備計画」によって日本橋川に架けられた橋で、翌年には 五街道の基点となった。1614 年には船運ターミナルとして舟入掘が整備され、日本橋通り(東海道・中山道)と本 町通り沿いに、町人の居住地として間口数間、奥行き 20 間の宅地が割り付けられた。日本橋川沿いでは魚介類を卸 していたため非常に活気があった。当時、芝居町や吉原、最大の商業地の日本橋は3ヶ所で毎日三千両もの金が落 とされたと言われている。しかし、明治 6 年 2 月、明治政府は、橋詰広場のにぎわいをつぶす政策を打ち出し、 「葭 簀張床店取除けの布令」を発して、橋詰広場のもっていた娯楽的な機能が失われ、人のにぎわいも失われていった。 先立つ明治 5 年 2 月、銀座で大火が起こり、あたらしい西洋式のまちづくりがはじめられ、1911 年(明治 44 年)に 現在の日本橋が開通した。そして、1974 年(昭和 39 年)には日本橋の上に首都高の建設が始められ現在に至って いる。 ■ 現況 日本橋地区は、日本銀行本店や東京証券取引所が立地する日本を代表する金融街が立地する。また、三越や三井 不動産を始めとする三井グループの本社が建ち並び、丸の内の三菱村と並ぶ三井村と言われている。2005 年には重 要文化財である三井本館の隣に大型複合再開発ビル、日本初のマンダリン・オリエンタル東京も入居する日本橋三 井タワー(三井新館)が開業した。さらに、2004 年 3 月 30 日にはコレド日本橋がオープンした。これは、三井不 動産が東京都中央区日本橋 1 丁目 4 番 1 号の東急百貨店日本橋店跡地にオープンさせたオフィス+商業の複合ビル - 20 - 平成 19 年度 年末まちあるき 「日本橋:日本橋のオモテとウラ」 2007/12/28 山下 真司、北野 充 である。正式名称は、 「日本橋一丁目ビルディング」と言う。日本橋の新たな観光名所(ランドマーク)として注目 されている。 日本橋三井タワー(にほんばしみついタワー)は、2005 年 7 月に三井不動産が東京都中央区日本橋室町二丁目に 建設した超高層ビルで、日本橋地区のランドマークである。30 階から 38 階は日本初進出の最高級ホテル、マンダ リン・オリエンタル東京が入居している。隣接する三井本館の保存と都市再開発を両立したことが評価され、三井 不動産は日本設計と共に、2005 年の日本建築学会賞(業績)を与えられた。 写真1 三井タワー・三井本館 写真2 コレド日本橋 写真3 三越日本橋店 日本橋室町再開発 日本橋室町 2 丁目地区は、中央通りから東側に広がるエリアでは再開発プロジェクトが三井不動産によって行わ れている。日本橋室町 2 丁目の三井第三別館とその周辺エリア「室町東地区」は、三井本館や日本橋三井タワーの 向かいに位置する。三井不動産 HP によると再開発全体の竣工は 2012 年を予定している。計画では、三井第三別 館、三井六号館、三井第五別館を含む周辺地区 1.3ha を、地元の地権者とともに再開発する。全体を複数のエリア に分けて、オフィスや住宅、店舗などを整備する。住宅については、賃貸住宅を積極的に組み込んでいく予定であ る。 参考文献 1) 電脳問屋街 H.P http://www.tonya.or.jp/index.html (最終閲覧日 2007.12.27) 2) 東京 R 不動産 H.P http://www.realtokyoestate.co.jp/column/cet07/cet07.php (最終閲覧日 2007.12.27) 3) 人形町商店街協同組合 http://www.ningyocho.or.jp/index.html (最終閲覧日 2007.12.27) 4) 日清紡甘酒横丁 H.P http://www.nisshinbo.co.jp/ama/ (最終閲覧日 2007.12.27) 5) J-Net21 にぎわい商店街 H.P http://j-net21.smrj.go.jp/well/nigiwai/070822.html (最終閲覧日 2007.12.27) 6) 日本橋商店街振興組合 H.P http://www.nihombashi.com/MenuF/MatizukuriF/matizukuri.htm 7) 日本橋街づくり H.P http://www.nihombashi.com/MenuF/MatizukuriF/matizukuri.htm - 21 -
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