平 事 成 24 業 報 年 度 告 自 平成24年4月 1日 至 平成25年3月31日 平成25年6月 一般財団法人 日本宇宙フォーラム 『平成24年度 事業報告』 (平成24年4月1日~平成25年3月31日) 宇宙航空研究開発機構有人活動20周年の節目である、平成24年度におけ るわが国の宇宙開発分野における状況は、星出宇宙飛行士が国際宇宙ステーシ ョン(ISS)で124日間に及ぶ長期滞在を行い、その間、平成24年 7 月 21日にH-ⅡBロケット3号機で打上げられた「こうのとり」3号機との結 合作業、小型衛星放出、科学実験・技術実証ミッション、メダカを用いた水棲 生物実験及び船外活動等を行い、大きな成果をあげた。 なお、このH-ⅡBロケット3号機の打ち上げ成功を踏まえ、H-ⅡBロケ ットも今後、三菱重工業株式会社(MHI)による打ち上げ輸送サービスに移 行することとなった。 H-ⅡAロケットでは、平成24年5月18日、21号機で第一期水循環変 動観測衛星「しずく」 (GCOM-W1)及び韓国多目的実用衛星3号機(KO MPSAT-3)を所定の軌道に投入し、環境観測の推進と国際打ち上げビジ ネスの本格的参入への一歩となった。 また、平成25年1月27日、22号機で情報収集衛星レーダ4号機及び実 証衛星を所定の軌道に投入し、輸送系の信頼性向上と安心・安全な国創りに貢 献した。 その中で、当財団は、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」 における宇宙実験及び科学観測の支援事業やその有償利用の推進を行った。 宇宙デブリについては、既設施設の円滑な観測運用を行うとともに、宇宙基 本計画に示された、今後の具体的な施策や、国際協調戦略の策定を行う際の一 助となるよう、平成25年2月28日~3月1日に、宇宙状況認識に関する国 際シンポジウムを昨年に引き続き、開催した。 広報・教育・普及事業においては、既存事業の確実な実施・展開を図るとと もに、ロボット相撲等の新規事業での成果も挙げることができた。 また、新規事業展開においては、企画提案型事業創出を目指し、昨年度に引き 続き、スペースアイ(Spacei)、きぼうハイビジョン・アースビュー、シ ームレス測位技術利用、宇宙人材育成事業等で期待された成果を挙げることが できた。 更に、自立的なシンクタンク機能を目指した調査・分析事業も継続実施した。 なお、日本航空宇宙工業会(SJAC)賛助会員として、国内の航空宇宙業界 と連携した事業創出・展開も引き続き推進した。 平成25年4月1日の一般財団法人移行に向け、移行申請等の移行準備作業 を着実に実施した。 平成24年度に実施した主な事業の概要は以下のとおりである。 Ⅰ 事業別実施状況 1.宇宙の開発に係る科学技術及びその他の科学技術に関する調査研究(寄 附行為第4条第1号関連) (1)宇宙環境利用に係る公募地上研究制度の評価等 公募地上研究制度の評価、研究成果をまとめた冊子を編集した。 また、そのデータのアーカイブ化により利用の促進を図った。 (2)宇宙実験実施支援及び宇宙実験計画調整 以下の科学分野における利用テーマの宇宙実験実施支援及び宇宙 実験計画調整を行った。 ① ライフサイエンス分野3テーマ及び微小重力科学分野3テーマの宇 宙実験実施を支援した。 ② ライフサイエンス分野10テーマ及び微小重力科学分野3テーマの 宇宙実験実施後解析を支援した。 ③ ライフサイエンス分野23テーマ及び微小重力科学分野13テーマ の実験計画調整を実施した。 (3)委員会の運営支援 「国際宇宙ステーション・きぼう利用推進委員会」の運営を支援した。 (4)タンパク質構造機能解析のための高品質結晶生成実験支援 きぼう船内実験室利用タンパク質結晶生成実験(通算6回中の第 4回および第5回)を支援した。 (5)宇宙デブリ等観測施設の運用 ① 上齋原スペースガードセンターの運用 レーダ観測施設である上齋原スペースガードセンターにおいて、 主として低軌道の宇宙デブリの観測運用を行った。 ② 美星スペースガードセンターの運用 光学観測施設である美星スペースガードセンターにおいて、主 として静止軌道近傍の宇宙デブリ並びに地球近傍小惑星等の観測 運用を行った。 ③ 宇宙デブリ等観測データの我が国宇宙関連機関等への利活用の 推進を図った。 ④ 「宇宙開発利用の持続的発展のための宇宙状況認識に関する国 際シンポジウム」を主催し、持続的な宇宙開発利用のための宇宙 デブリ観測のあり方に関する提案をまとめた。 (6)小型副衛星募集等に関わる事務局支援 「H-ⅡAロケット相乗り小型副衛星」制度の周知、募集、選定等 の支援を行った。併せて、衛星開発に必要な知識や経験の醸成を目 的としたセミナーや、本制度の更なる発展・普及を目指したワーク ショップの企画、実施支援を行った。 (7) 「きぼう」からの小型衛星放出技術実証に参加する小型衛星募集等に 係る事務局支援「きぼう」のロボットアームを利用してキューブサッ トを放出する制度発足にあたり、本制度に参加する大学等からの募 集、選定等の支援を行った。 (8)宇宙航空文献ライブラリの整備等 NASA(米国航空宇宙局)とJAXA等との科学技術情報の文 献交換(宇宙航空文献ライブラリの整備)業務を行った。 (9) 海外の宇宙航空情報調査 海外の宇宙航空関係情報を調査し、JAXAに対し、関連レポー トの提供及びデータベースの維持改訂業務を行った。 2.宇宙の開発に係る科学技術及びその他の科学技術に関する国際会議及び シンポジウムの開催、協力及び支援(寄附行為第4条第2号関連) (1)宇宙政策に係る研究会事務局支援 宇宙政策に係る有識者による研究会の事務局支援業務を行った。 ① 「国際災害チャータ」の国内事務局支援 地球観測衛星データの被災地域への無償提供等を行うことにより 自然災害等に対する各宇宙機関の貢献を推進する国際的な枠組み である「国際災害チャータ」の技術的な側面も含めた各国との調整 の支援を行った。なお、24年度4月には、チャータ理事会合を JAXA主催により日本で開催すると共に、4月から10月にかけ てはJAXAが幹事機関を担当したため、支援業務を強化した。 ② 「アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)」事務局支援 アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)事務局業務として、 ウェブサイトの運営、ニュースレターの作成・送付(年 3 回)、ニュ ースメールの作成・送信(月 1 回)を行うと共に12月に第19回ア ジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-19/マレーシア・ クアラルンプール)における取材活動等を行った。 (2)国際会議等の開催準備・運営支援 宇宙開発をはじめとする科学技術に関する以下の国際会議及びシ ンポジウムの開催支援の事務局支援を行った。 名称 開催場所 参加数 東京・一橋講堂(第 1 回、第 3 回)、北 の丸サイエンスホ ール(第 2 回) 500 名 300 名 270 名 公開シンポジウム「今、日 平成 24 年 本の宇宙戦略を考える」お 東京:10 月 28 日 よび同報告会(京都・福岡) 京都:11 月 11 日 福岡:11 月 25 日 東京・東京大学武 田先端知ビルホー ル/京都・京都大 学紫蘭会館稲盛ホ ール/福岡・九州 大学箱崎キャンパ ス旧工学部本館講 堂 250 名 120 名 74 名 J A X A シ ン ポ ジ ウ ム 平成 24 年 2012 東京・福岡・札幌 東京:7 月 4 日 福岡:9 月 19 日 札幌:9 月 21 日 東京・メルパルク ホール/福岡・エ ルガーラホール/ 札幌・道新ホール 993 名 537 名 579 名 有人宇宙活動 20 周年記念 平成 24 年 シンポジウム(PART2) 10 月 14 日 ~有人宇宙開発の現場~ 品川インターシテ ィホール 330 名 宇宙政策セミナー(3 回) 開催時期 平成 24 年 1) 9 月 12 日 2)10 月 4 日 3)12 月 10 日 3.宇宙の開発に係る科学技術及びその他の科学技術に関する普及啓発並び に教育及び人材育成及び人材交流の促進(寄附行為第4条第3号関連) (1)① 全国の自治体、科学館、独立行政法人及び科学技術関連企業等 に対し、宇宙航空をはじめとする科学技術に関するイベントの 企画・実施、各種広報活動ツールの企画・製作等。 ・北海道余市町や東京都中央区、神奈川県茅ケ崎市等の自治体 ・佐賀県立宇宙科学館、佐久市子ども未来館等の科学館 ・JAXA及びJAMSTEC等の独立行政法人 ・宇宙技術開発㈱等の科学技術関連企業 ② 東京・池袋「サンシャインシティー」や福岡・天神「イムズプラ ザ」といった複合商業施設の他、大阪駅ビル「時空(とき)の 広場」など集客性の高い場所にて宇宙展を実施した。 ③ 島根大学主催によるシンポジウム「古代出雲文化フォーラム in 東京」の開催及び運営支援を行い、地方大学の特色ある取り組み を、東京で知らしめる試みを実現させた。 (2)ロケット打上げ広報の企画及び実施支援 H-ⅡBロケット 3 号機の打上げに係る広報活動について、搭載 する「こうのとり 3 号機」に関するプレスキットや打上げ告知チラ シの企画・制作を行い、また打上げ整備作業を静止画及び動画で撮 影した。 (3)スペースアイ(Spacei)プロジェクトの推進【自主事業】 ① 全国の83主要科学館に対し、宇宙開発や宇宙に関するタイム リーな情報を送り届け、各館を訪れる来場者に対し、宇宙航空 事業に対する理解の浸透を図った。 ② JAMSTECとの連携により、Spaceiの海洋版たるオ ーシャンアイ(Oceani」をスタートさせ、コンテンツの充 実と取り扱い分野の拡大を推し進めた。 (4)広報記録撮影及びデジタルアーカイブシステムの整備・運用 宇宙航空分野の研究開発に係る広報記録撮影を実施し、デジタル アーカイブシステムの整備・運用を行った。 (5)JAXAホームページ等の整備・運用 JAXAホームページの整備・運用を行った。同時に、ホームペ ージの全面リニューアル作業を行いつつ、その一環で、長年運用し てきたファンサイト「JAXAクラブ」を終了し、新たなコミュニ ティーサイトの立ち上げに向けた準備も行った。 (6)宇宙航空分野の研究開発に係る広報活動ツールの製作 ① 映像関係 各種解説・PR映像及びCG等映像素材の整備及び制作を行った。 平成24年度の制作実績は以下のとおり。 ・JAXA年間活動紹介ビデオ「空へ宇宙へJAXA2013」 ・新型ロケット「イプシロン」CG制作 ・陸域観測技術衛星2号「だいち2号」CG制作 ・JAXAシーズンレポート(四半期ごとの活動紹介ビデオ) ・JAXAクラブ動画ニュース(計19作品制作) ・普及用番組ソフト「宇宙ミッションを支える女性たち」(英語版 /JAXAからの受注) ② 印刷物関係 JAXA機関誌「JAXA’s」の制作・発行(年6回)、各 プロジェクト紹介リーフレット等の各種印刷物の制作・配布等 を行った。 ③ 模型等広報ツール 宇宙航空関係のスケール模型、パネル等の展示物を企画・製作し た。また、各種広報資料・ツールの貸出し運用を行った。 (7)JAXA宇宙教育センターのウェブサイト及びホームページ JAXA宇宙教育センターのウェブサイト及び宇宙情報センター ホームページの整備・運用支援を行った。 (8)写真ニュース紙の企画・制作 宇宙航空分野の研究開発を紹介する写真ニュース誌の企画・制作 (年間12回)を行い、全国の小・中・高に配布した。 (9)外部対応等支援 宇宙航空に係る科学技術に関する外部からの照会・問い合わせ・ 質問等への対応等の支援を行った。 (10)航空機を利用した微小重力教育実験プログラム実施支援 ① 航空機を利用した微小重力教育実験に関わる業務支援(テーマ の公募選定及び実験計画作成・装置製作・航空機実験等の支援(通 算10回目))を行った。 ② アジア地域内の大学生等を対象とした航空機を利用した微小重 力教育実験にについて、テーマの選定及び実験計画作成・装置製 作・航空機実験実施等を支援した。 (11)「地球人の心ぷろじぇくと」の推進【自主事業】 JAXAの「きぼう」利用事業者として、連詩、連句などの作品 を広く全国の学校から募集し、これを国際宇宙ステーションに打上 げ保管する事業を進めた。 また、教育出版社との連携事業を展開中である。 (12)コズミックカレッジの運営支援及び教材・教具管理業務 JAXAの教育活動の一つである「コズミックカレッジ」の事務 局業務を行った。 (13)宇宙デブリに関する教育事業【自主事業】 美星スペースガードセンターにおける高校生向け「観測体験合宿」、 また美星ふるさと祭り会場、及び上斎原スペースガードセンターに おける子供向けの「おもしろ宇宙実験教室」を開催した。 (延べ約120名) (14)衛星設計コンテスト【自主事業】 「第20回衛星設計コンテスト」の事務局運営を行った。 (15)「天文・宇宙・航空広報連絡会」【自主事業】 「天文・宇宙・航空広報連絡会」の事務局運営を行った。 (16)「宇宙の日」記念行事【自主事業】 「宇宙の日」(9月12日)ホームページの維持・運用、「全国小・ 中学生作文絵画コンテスト」を実施した。 (17)宇宙デブリ観測施設の展示館等の運営【自主事業】 宇宙デブリ観測施設に付帯する展示館等を活用し、地域に密着し た広報普及活動を行った。 (18) きぼうハイビジョン・アースビュー教育システムの構築と利用実証 ハイビジョン映像のリアルタイム配信に必要なシステムの開発を 完了し、このシステムを使った「きぼう」からのハイビジョン映像配 信試行実験等を実施した。 (19) 位置連携広告配信プラットフォーム構築 株式会社電通国際情報サービス及び測位衛星技術株式会社と協力 して、GPS機能付きの携帯・スマートフォンにより、屋内外での シームレスな位置情報を取得するビジネスを立ち上げるべく、二子 玉川新ショッピングセンターで実証実験等を行った。 4.その他目的を達成するために必要な業務(寄附行為第4条第4号関連) (1)賛助会員対象行事等【自主事業】 ① 賛助会員を対象に、東京大学大学院工学系研究科、中須賀真一教 授による「超小型衛星と宇宙開発・利用」及びJAXA小澤理事に よる「最近のJAXAの宇宙開発について」の講演を含む「賛助会 交流会」を実施し、意見交換の場を持った。 ② 宇宙開発利用分野の各種情報を掲載した「メールマガジン(JS Fだより)」を、月1回の頻度で発信した。 5.新規事業の推進等 これまでのJSFの事業の蓄積・強みを活かし、5年後にJSFの事業 を模索すべく策定したJSF基本ビジョンに沿って新規事業を企画し、 準備の整った以下の事業を実施した。 (1)宇宙実験支援/利用の拡大 「きぼう」有償利用事業者としての有償利用アイディアとして、 学生や子供たち等の作品をISSに保管する「地球人の心」を継続 し、平成24年 7 月に作品を保管したディスクをISSに運搬した。 (2)宇宙環境保全/次世代デブリ対応の促進 第2回「宇宙開発利用の持続的発展のための宇宙状況認識に関す る国際シンポジウム」を主催し、次世代デブリ事業構想の検討を開 始した。 (3)宇宙利用/産学連携事業の促進 ① カレンダー企画・販売 『2013年 Rockets & Satellites Photo Calendar』の企画・ 制作・販売を行った。(6,400部の売り上げ) ② 高性能断熱塗料(ガイナ)の普及支援 販売促進活動を継続し、個人住宅や三菱重工業(株)が建造中の 海洋研究船に塗布することとなった。 ③ 小型衛星支援業務 これまでに蓄積されてきた小型衛星開発に関するノウハウ・事例 集の作成や、学生を中心とした短期研修コースの設置等の企画を JAXAへ提案した。 ④ 地銀 4 行との協定に基づいた地域企業との連携事業推進 「きぼうを利用したビジネス」をテーマに鳥取県産業振興機構主 催によるJAXA宇宙産業セミナーを実施した。 (4)アジア展開/宇宙外交支援の推進 ① アジア太平洋地域との協力推進 マレーシアで開催された、アジア太平洋地域宇宙機関会議(AP RSAF-19)や衛星データを用いた各アジア地域の環境問題 解決実証である宇宙技術による環境監視(SAFE)プロトタイ ピングの支援などを引き続き行った。 ② 途上国向けマネジメント研修の実施 文部科学省からの受託により、宇宙新興国における宇宙人材育成 等の協力手法に係る調査研究を実施し、トルコでの人材育成ワー クショップやトルコ運輸海事通信省職員 6 名に対するリモートセ ンシングを中心とした研修を実施した。 (5)宇宙理解増進/国民参加型宇宙利用の促進 ① パラボリックフライト等の生涯学習事業の実施 平成24年4月、5月、7月に参加者を募り、一般向けの無重 力簡易実験を実施した。 ② きぼうハイビジョン・アースビューの開発 ISSに搭載したハイビジョンカメラからの映像を利用した教 育システム「きぼうハイビジョン・アースビュー」を構築し、 リアルタイム映像伝送の実証試験を行った。 (6)宇宙政策シンクタンク機能の強化 ① 各種宇宙政策に関する調査・提言 一般財団法人新技術振興渡辺記念会からの助成事業として「科 学館での特別展示用巡回展示物の活用実態と、今後の巡回展示の あり方を探る調査」及び「国際宇宙ステーション搭載ハイビジョ ン映像の利用ニーズ調査」を実施した。 Ⅱ その他 (1)環境管理システムの維持、改善 財団の環境マネジメントシステム(JIS Q 14001 (ISO 14001)) について、財団が定める環境マニュアルに従って環境活動を行っ た。 (2)法人移行制度改革 平成25年4月1日の一般財団法人移行に向け、平成24年9月 3日に内閣府公益認定等委員会事務局へ移行申請を行い、平成25 年2月14日に答申、3月24日に認可を得るなど、移行準備を着 実に実施した。 以上.
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