未来の人工衛星 第1章 はじめに 第2章 研究の展開

未来の人工衛星
所属:工学系ゼミ
2年8組9番 大竹 七勢
第1章
第1節
はじめに
テーマ設定の理由
現在、宇宙について、多くの予測・調査がなされている。実際に宇宙空間で調査を行うため
には、地球周辺であれば人の手でも可能だが、多くの場合は人工衛星などに頼る必要がある。
人工衛星は、宇宙を明らかにするために、とても重要なものだと思う。また、人工衛星は天気
予報や GPS など、私たちの生活にも役立っている。現在運用されている人工衛星の、私たちの
生活や宇宙研究上の活用を詳しく知ったうえで、さらに人類の生活を向上させたり、宇宙開発
を進めたりするために、将来、どのような機能を持った人工衛星が必要になるのか、考えてい
きたい。この機会を利用して、このようなテーマをもとに、調べていきたいと思う。
第2節
研究のねらい
宇宙にはまだまだ未知なことが多い。これからの科学技術発展のヒントがそこには多く隠さ
れていると思う。そこで、人工衛星の活躍が期待される。現在の人工衛星、または構想されて
いる人工衛星について調べることで、どのような情報が必要とされているか、未来の人工衛星
にはどのようなものが必要か、それらについて考察し、科学技術の発展や人類生活の向上に役
立てたい。
第3節
研究内容と方法
第1項 研究の内容
・現在運用中または構想中の人工衛星の運用目的について
・未来に必要とされる人工衛星についての考察
第2項 研究の方法
主に、インターネットを使って、調べる。書籍なども参考にする。
第2章
第1節
研究の展開
人工衛星の分類およびその運用目的について
現代生活には、人工衛星に支えられている側面もある。その主なものとして、固定衛星サー
ビスやモバイル衛星システムなどが挙げられる。その他、軍事関連やさまざまな研究分野でも
その存在は大きい。この節では、人工衛星の大まかな分類を調べ、その①運用目的やその分類
に該当する衛星、②代表例、③その他(軌道など)の順にまとめていきたいと思う。
・通信衛星
① 電気通信を目的とする衛星。何千億もの音声、動画、通信データタスクを処理する固定
サービス衛星や、インターネット衛星、主に静止軌道上から他の軌道を周回する衛星や
宇宙船からの通信を中継する中継衛星、放送衛星(通信と放送を区別する場合もある)
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などがこれに含まれる。
② JCSAT,SUPERBIRD(ともにスカパーJSAT 株式会社保有)など
③ 一般的に、対地同期軌道、モルニヤ軌道、低軌道を利用する。
*軌道についての説明
・対地同期軌道…地球の自転周期と一致する軌道周期をもつ地球周回軌道のこと。赤
道上空の同期軌道をとくに静止軌道という。
・準同期軌道…公転周期がその星の自転周期の1/2である軌道。モルニヤ軌道もこの
一種。
・低軌道…通常、地球表面からの高度 350 km から 1400 km あたりの衛星軌道。地表か
ら近いため、設置が容易、データの送受信にかかるエネルギーが比較的少ない、な
どの利点がある。
・軍事衛星
① 軍医目的の衛星。今までに最も多く打ち上げられた。衛星攻撃兵器/キラー衛星(敵の衛
星を攻撃するための兵器。粒子ビーム兵器、エネルギー兵器、運動エネルギー兵器、核
ミサイル、または通常ミサイルなどを用いて敵国衛星を破壊する。)、偵察衛星/スパイ衛
星(軍事目的のリモートセンシング衛星や通信衛星。)、軍事気象衛星、軍事航法衛星、
早期警戒衛星などがこれに当たる。
・科学衛星
① 地球、惑星、太陽などの天体や宇宙線、電離層といった宇宙空間の科学観測を目的とする
衛星。大気などが原因で、地上に届くまでに吸収されてしまう物質や成分があり、地上で
は不可能なより詳細な観測を可能にする。宇宙望遠鏡/天文衛星、惑星周回探査機などが
これに当たる。
② ハッブル宇宙望遠鏡(アメリカ)、ハヤブサ(日本)、かぐや(日本)、ハーシェル宇宙望
遠鏡(EU)など
・地球観測衛星
① 環境モニタリングや気象学、地図学といった非軍事的な地球上の観測を目的とした人工衛
星。電波、可視光線、赤外線を用いて観測する。気象衛星や海洋観測衛星がこれに当たる。
② だいち(日本)
、ひまわり(日本)、LANDSAT(アメリカ)など
・生物衛星
① 生物を宇宙に一定期間生存させ、地球に安全に帰還させるように設計された人工衛星。生
物への宇宙空間の影響などを調べる。
② バイオサテライト 1 号‣2 号‣3 号(アメリカ)など
③ これまでに、ハエ、サル、ネズミ、イヌ、ネコ、カエル、バクテリア、アメーバ、イモリ、
コイ、メダカ、ウニ、カイコ、ハチ、クモ、アリなど数多くの生物が宇宙に送られた。
・航行衛星
① 地上の携帯型受信機が現在の正確な場所を判明できるように無線報時信号を送信する衛
星。衛星測位システムの運用などに用いられる。身近な用途としてはカーナビゲーション
が挙げられるが、他に、船舶や航空機の航法支援や測量などにも役立てられている。現在
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では、リアルタイムで誤差数メートル程度の測位が可能となった。
③ 衛星測位システムは、GPS(アメリカ)、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)、北斗(中国)な
どが運用‣構築されている。
・その他の人工衛星
上記以外には、小型衛星(ミニ衛星、マイクロ衛星、ナノ衛星)、宇宙ステーション、原子
力衛星、テザー衛星、太陽光発電衛星、掃除衛星などの分類がある。太陽光発電衛星や宇宙
ゴミの除去を目的とした掃除衛星は現在、構想されているものである。宇宙空間における太
陽光発電は火力発電や原子力発電に代わる新たな主力発電方法としても注目されている。
第2節
未来の人工衛星
前節の内容を踏まえて、特にこれから活躍が期待される人工衛星の1つに「太陽光発電衛星」
が挙げられる。この節では、太陽光発電衛星に焦点を当てて、考察していきたいと思う。
第1項 太陽光発電衛星について
宇宙太陽光発電とは、宇宙空間上で太陽光発電を行い、その電力を地上に送る発電方法で
ある。1968 年に米国の Peter.Glaser 博士によって提唱された。発電によって得たエネルギ
ーをマイクロ波やレーザーといった形式に変換し、これを地上の大型のアンテナなどの受電
施設(レクテナ)に送り、送られてきたマイクロ波やレーザーを地上で再度電気に変換し利
用する。
過去にも宇宙への発電衛星の打ち上げは計画されてきた。1977~1980 年に NASA(米国航空
宇宙局)と DoE(米国エネルギー省)が構想検討した。この検討においては、アメリカ合衆
国全土の全電力を賄うため、発電性能 500 万 kW(原子力発電 5 機分)
、総重量約 5 万 t の超
巨大衛星を静止軌道上に年に 2 機ずつ、合わせて 60 機程を打ち上げることが計画された。し
かし、技術面やコスト面で計画は見直され、実現するには至っていない。
また、近年では、新エネルギー源として日本でも注目されている。JAXA では、マイクロ波
方式では発電時に 70%のエネルギーが失われるうえ、送信にも受信にも直径 2km のアンテナ
が必要とされるため、YAG(ヤグ;イットリウムとアルミニウムの複合酸化物やネオジムを含
む物質)で生み出した赤外線レーザーで伝送する計画がなされている。実験例として 2cm×
3cm・厚さ 3mm のセラミック板に赤外線レーザーと模擬太陽光を当て、照射したレーザーを増
幅させることに成功した。JAXA の最終目標は 100 万 kw のレーザーであり、これには 1 枚に
まとめて考えると厚さ 13mm で 200m×200m の YAG が必要と推定されている。現在も実用化に
向けて、研究が進められている。
宇宙太陽光発電には、主に以下の技術が必要である。
・マイクロ波およびレーザー送信技術
マイクロ波およびレーザー照射の正確性、環境負荷、生物や航空機への影響
・太陽光発電パネル
宇宙空間での耐久性の必要性、軽量化の必要性
・宇宙空間での大規模構造組み立て、修理技術
ロボット利用による大規模構造の組み立て、人間のいない場所での細かな作業の確立
・宇宙輸送
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輸送コスト削減、新型輸送システムの開発
この発電方法には、環境汚染を引き起こさない、資源の枯渇の心配がない、安定して大き
な発電量を得ることができる、電力を必要としている地域へ柔軟に送電できる(地上送電網
整備の負担が軽減される)などの長所がある。その反面、発電施設の面積が大きくなれば宇
宙ゴミへの対処が難しくなる、故障した際の修理が非常に困難、初期投資が非常に高く発電
コストが高い、受電設備の天候に影響を受ける、受信設備以外の地点にエネルギーを照射す
ることによる軍事転用や誤射のリスクが伴うなどの問題もある。
技術が進歩すれば、発電コストや発電施設の建造・修理の問題は解決できるだろう。また、
変換するマイクロ波の波長やエネルギーを研究していけば、受電設備の天候によるエネルギ
ー損失を少なくできると思う。特に、重大な問題は軍事転用のリスクである。レーザー送信
技術が発展し命中精度が上がれば、誤射のリスクはほとんどなくなると思う。一方で、その
技術を軍事転用された場合、高エネルギーかつ可視領域外のマイクロ波やレーザーを用いて、
世界規模で遠隔的な暗殺が可能になるのではないだろうか。各国で互いに協力し合いながら、
正しい運用が求められる。
第2項 その実現の可能性
最近では、日本以外の各国は、財政上の問題や政策上の方針などにより、国としての継続
的な研究は行っていないという状況にある。日本では、1980 年代から SSPS(宇宙太陽光発電
システム)に関する組織的な研究活動が開始され、90 年代には宇宙科学研究所(現宇宙航空
研究開発機構宇宙科学研究所)を中心とした大学及び国立研究所の研究者により 1 万 kW 級の
「SPS2000」の設計が、2000 年代に入り JAXA 及び経済産業省により 100 万 kW 級(原子力発
電1機分ほど)の SSPS の検討が行われた。
また、宇宙基本計画(平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)では、
(2)具体的取組
②個別プロジェクトを支える産業基盤・科学技術基盤の強化策
ⅲ)将来の宇宙利用の拡大を見据えた取組 の箇所において、
『エネルギー、気候変動、環境等の人類が直面する地球規模課題の解決の可能性を秘めた「宇
宙太陽光発電」を始め、宇宙の潜在力を活用して地上の生活を豊かにし、活力ある未来の創
造につながる取組や、太陽活動等の観測並びにそれに起因する宇宙環境変動が我が国の人工
衛星等に及ぼす影響及びその対処方策等に関する研究を推進する。』
と記されている。
つまり、日本は、世界に先立って SSPS の開発を積極的に推し進め、その実現を目指してい
るのである。第1項で述べたように、その実現にはさまざまな問題をクリアしなければなら
ない。まとめると、課題は大きく3つに分けられる。
1.技術(大型構造物を宇宙空間に輸送し、組み立て、運用・維持する技術、 高効率で安全な
発電・送電・受電技術等)
2.安全性(健康、大気・電離層、航空機、電子機器等への影響)
3.経済性(特に地上から宇宙への輸送費低減が大きな課題)
JAXA ではさまざまな機関と協力して、これらの研究を進めている。
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さらに、宇宙基本計画には「現在のところ、我が国の宇宙太陽光発電システムに関する技
術レベルは、 世界トップクラスに位置している。海外では欧米が SSPS の要素技術の 実証に
取り組んでいるが、宇宙での利用を想定した実験を実施しているのは、 我が国のみである。
」
との記述もある。この分野の研究において、日本は世界をリードする立場にあるのである。
近い将来、日本が宇宙太陽光発電を実現させる日がやってくるかもしれない。
第3章
第1節
まとめと考察
研究のまとめ
人工衛星は、その利用目的によって、通信衛星、軍事衛星、科学衛星、地球観測衛星、生物
衛星、航行衛星の6つに大別されることが分かった。それらの中でも、私は特に太陽光発電衛
星の活躍が今後期待されると考え、その概要と実現の可能性の2つについてまとめた。宇宙太
陽光発電については、日本は積極的にその研究を進め、世界の中でも最先端に位置することが
分かった。実現には課題がある一方で、日本の技術や宇宙基本計画に示されるこの分野への積
極的な姿勢の点から、私は近い将来、太陽光発電衛星の実際的な運用が実現する可能性が高い
と結論付けた。
第2節
研究の考察
前章から述べてきたことだが、石油や石炭、天然ガスなど深刻な資源不足が懸念される中で、
それらの問題を解決する一つの手段として、これから私が特に有用だと考えるものは、
「太陽光
発電衛星」である。
比較的容易な宇宙探査が可能となった今、資源は地球上だけでなく、宇宙空間でも獲得する
ことができる。太陽と同様に、
(核融合などによって)膨大なエネルギーを発し続ける天体は無
数に存在する。宇宙空間では、天候・昼夜などは関係しない。つまり、絶えずほぼ一定量の安
定した発電が可能であるのだ。また、太陽系外の恒星にも発電装置を送ることで、全世界の発
電量をカバーすることが可能であると思う。宇宙太陽光発電システムの完成は、エネルギー不
足を解消してくれる。また、火力発電や原子力発電などの地球温暖化や生物に害をもたらす可
能性を持った従来の発電方法に依存する必要がなくなり、地下資源を節約することもできる。
環境破壊の抑制に大きく貢献してくれると思う。太陽光は半永久的な資源である。地球上に生
命が存在する限り、尽きることはない。環境保全などの観点からも、人類が現代に抱えるエネ
ルギー問題を解決する最も理想的な方法の一つとなるのではないか。
第4章
参考文献
ウィキペディア 「人工衛星」 「宇宙太陽光発電」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E7%99%BA%E9
%9B%BB
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F
JAXA 「SSPS について」 http://www.ard.jaxa.jp/research/hmission/hmi-ssps.html
太陽発電衛星研究会 「SPS とは」 http://www.ssprs.org/whatissps.html
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