「男と女の買い物の特徴」

「男と女の買い物の特徴」
Excell-K
(株)ドムス・インターナショナル
代表 松村 清
2010 年の国勢調査速報によると、一般世帯数は 5093 万世帯と増加しており、調査開始以来初
めて 5000 万世帯を超えた。その中で一人世帯が 1588 万世帯(一般世帯の 31.2%)と最も多く、
夫婦と子供からなる標準世帯の 28.7%を初めて抜いた。そして 65 歳以上の者のうち、単独世帯
で暮らす者は 458 万人と 65 歳以上人口に占める割合いは上昇している。
一人世帯の増加は小売業にとって、男性客の増加を意味する。結婚しない男性、単身赴任者の増
加、そしてユニセックスの時代になり、男性が日常品の買い物に行く行為は今や一般的傾向にな
っている。今までは一般消費財の購買は女性が 70~80%の割合で行っていたが、今後は男性客の
増加により買い物の常識が違ってきて、小売業も男性顧客に対する対応が求められている。男性
客の特徴を述べてみよう。
1) 男性客は感覚的で、短時間ショッピングを好む
・女性は直観力と分析力のバランスがよく、買い物は慎重で時間をかけたショッピングを
し、常に比較購買をする。男性は直観力を重視し、一面的で品質の良い商品を求め、短
い時間ショッピングを好む。
項目
男性
女性
直観力/分析力
左右の脳の連携プレーが不得意で、分
析力に欠け、直観力重視型
左右の脳の連携プレーが得意で、直観
力と分析力をバランスよく使うショッ
ピング
一面的/多面的
一面的で一点集中型
多面的で分散型。単品よりも多品種で
比較の基準を多く示すことが必要
コスト意識/
リスク意識
ショッピング時間
対応
コスト意識・リスク意識に欠けており、
コスト意識・リスク意識が敏感で、
細やかな値段を意識しない。高単価商
買い物は慎重なシビア客
品の買い物もする利益客
短時間ショッピング
時間をかけたショッピング
品質の良い商品をすすめる
比較購買・コーディネーション購買を
すすめる
2) 男性客はモノに集中し、どちらかというとよく知られたブランドを好む
・男性はモノに対するこだわりが高いため、ナショナルブランドを好む傾向がある。
女性はそのモノを使った活用の場へのこだわりが強い。
項目
こだわり対象
関心の内容
宣伝方法
(例)
男性の購買
モノへのこだわりが高い
最新の商品やその技術的要素に関心
を持つ
効果的な宣伝は「モノ」に焦点:
「今までにない飛びを経験できる
○○ドライバー」
女性の購買
他人の目や活用の場へのこだわりが
強い
商品を使用して楽しく過ごす場や友人ら
との語り合いに関心を持つ
効果的な宣伝は「楽しい雰囲気」に焦点:
「爽やかなゴルフシーズン到来。おしゃれ
をしてプレーをしませんか?」
1
3) 男性客は分かり易い買い物を求める
・女性の買い物はエンジョイメントの部分が強く、買い物に対してイキイキとした行動を
とるが、男性の買い物は目的達成の手段で義務的である。そのため分かりにくい売り場
に拒絶反応を示す。新規獲得は難しいが、固定客になり易い。
項目
男性
買い物目的
買い物態度
目的達成の手段
仕方なく
店の人と会話は少ない。分かり易い売り
場及び商品提案が重要
新規獲得は難しいが、固定客になり易い
買い物は自己実現の場
イキイキ
分かりやすい買い物
フレンドリーな対応
買い物行動
ロイヤルティ度
対応
女性
店の人との会話が多い
新規獲得は容易だが、浮気性
4) 男性客はシャイなので、店の人とのコミュニケーションが不得意
・シャイなため店の人と話さず自分で解決しようとする。そのため使い方などについて分
かり易い POP が重要だ。また店の人との会話で自分の意見を否定されると気分を害する。
一方、肯定やおだてには弱い。
項目
男性
分からないとき
応対方法
女性
店員に聞かずに出来るだけ自分で解決
気軽に相談
会話は自分の論理や知識の優位さを確認
する手段。自分の判断基準や見方を肯定
的に評価されたい。否定されるとカチン
と来る。
迷って分からない自分をストレート
に出し、アドバイスを訊く。会話自体
を楽しむ。
5) 男性は簡便性を求め、即食べられる食品や即使用出来るものを好む傾向がある。
下記の表は、米国のスーパーマーケットにおける商品購買率の男女比である。
商品
果物・野菜
乳製品
精肉
飲料水・アルコール
コールドデリ、サラダ
ベーカリー
チーズ
紙製品
スナックフード
洗濯用品
鮮魚
冷凍食品
ビューティーケア・トイレタリー
大衆薬
ホットデリ
シーズナルアイテム
キャンディー
書籍・雑誌
自動車用品
女性(A)
(%)
74
61
56
50
39
39
35
35
32
32
20
17
17
17
15
9
9
4
0
男性(B)
(%)
53
45
32
53
40
38
32
30
21
13
13
19
15
6
17
13
6
4
9
差(A-B)
(ポイント)
21
16
24
-3
-1
1
3
5
11
19
7
-2
2
11
-2
-4
3
0
-9
2
男性客が女性客より購買率が高いカテゴリーには、自動車用品、シーズナルアイテム、飲料水、
アルコール、冷凍食品、ホットデリ、コールドデリがある。一方、男性客が女性客より購買率が
低いカテゴリーとしては、精肉、果物、野菜、洗濯用品、乳製品、スナック、大衆薬が代表的だ。
惣菜の購買率が高いのは、単身世帯の男性や男性同士世帯が購入していることが推測される。
しかし、調理が必要な生鮮食品、洗濯という面倒な行為が必要な洗濯用品、そして家族全員に関
わるような商品は、圧倒的に女性に引き離されている。
男性の購買特徴をまとめてみると、以下のようになる。
1) 男性が女性より購買率が高いカテゴリーのキーワードは「簡便性」と「高い男性趣向性」だ。
2) 男性はシャイで面倒くさがり屋が多いので、店の人に売り場や商品の場所を尋ねない傾向が
ある。従って分かり易いサインや POP、パンフレット、カタログが大切である。
3) 価格より価値を重視する傾向があるので、アップグレードし易い。従って、価値を訴求する
POP や接客が重要である。
4) 良く知られている商品を購買する傾向があるので、NB 商品の充実や「コマーシャルで放映
中」などのサインが有効である。
5) 試着や試用をすると、女性客より購買率が高い。従って出来るだけ試着や試用を勧める。
6) 短時間ショッピングを好むので、分かり易い売り場づくりや商品陳列が大切である。
7) ジャスタック社の調査によると、スーパーマーケットの買い物時、女性客は 6 割近くの人が
買い物リストを持っているのに対し、男性客は 4 人に一人しか持たない。そのため男性客は、
衝動買い傾向が非常に強いので、迫力のあるビジュアルな訴求が効果的である。
8) 子供連れの男性客は子供にねだられると断れない傾向が強い。従って、子供に好かれるよう
な品揃え、陳列の高さ、サービスに注意する必要がある。
9) 一般的に女性客は「家の中」で使用する商品を購入するのが得意だが、男性客は「家の外」
で使用する商品を購入するのが得意である。
最近の米国の小売業では男性客対策が重視されている。それは、女性の買い物時に男性の同伴者
がいると女性の買い物時間が短くなるからだ。
「同伴者により変化する女性の買物時間」
(ドラッグストア調査)
女性友達と一緒
12 分 25 秒
母親と一緒
12 分 20 秒
子供と一緒
11 分 42 秒
男性と一緒
5 分 41 秒
自分一人
7 分 23 秒
3
上記の表からも分かる通り、女性客の買い物時間を減少させる同伴者は何と男性なのだ。特に団
塊の世代がリタイアすると、時間があるために奥さんの買い物に付いてくる傾向が高まっている。
男性は自分が欲しいものを求めて直線的に売り場に行き、手早く買い物をする。一方女性は欲し
ているものを手に入れるまで、色々比較しながら購入するために時間がかかる。それに我慢の出
来ない男性が奥さんの買い物を急がせる。その結果買い物時間が短縮化され、売り上げが上がり
にくくなる。そのため、男性客が時間をつぶせるように男性用品コーナーを充実したり、コーヒ
ーを飲む場所を設置したり、スポーツ番組を流したりいろいろ工夫している。
女性の買い物行動は今までにもずいぶん研究されてきた。しかし男性の買い物については今まで
余り話題にもならず、極端に言うなら女性の買い物と同じだとさえ考えられてきた。これが間違
っていた。男性買い物客の増加により、男性と女性の買い物には大きな違いがあることに早く気
が付いて早急な対策をとることが重要だ。
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