速報 TPP交渉が大筋合意 平成27年11月 JAグループ愛知 ○ 交渉の概要 TPP協定は、アジア太平洋地域において、モノの関税だけでなく、 サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、金融サービス、電 子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野のルールを構築する経済連 携協定です。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国、 豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ及び日本の 12カ国が参加しています。 ○ 交渉の経過 日本は、平成25年3月に交渉に参加しました。参加にあたっては、 TPP協定は全ての関税の撤廃を原則としており、我が国の農林水産業や 農山漁村に深刻な影響を及ぼしかねないことから、交渉で実現すべきこ とが国会で決議(下図)されました。その後、各国の交渉官や閣僚によ る会合の断続的な開催、米国におけるTPA法案の成立等を経て、 27年10月5日、TPP協定は大筋合意に至りました。 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に関する決議(抜粋) 1 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目につ いて、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。10年を超 える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。 ○ 交渉の結果 農畜産物の合意内容は、①重要品目の開放、②関税を撤廃したことの ない834品目中395品目で撤廃される等、かつてない市場開放が行わ れるものです。 米:関税のかからない特別輸入枠を78,400トン新設 麦:実質的な関税であるマークアップ(輸入時徴収する差益)を段階的に45%削減 牛肉:現状38.5%の関税を段階的に9%まで削減 豚肉:安い肉にかかる従量税→現状482円/㎏から50円/㎏まで段階的に削減 高い肉にかかる従価税→現状4.3%から段階的に撤廃 乳製品:バター等は、低関税輸入枠を新設。一部チーズ等は長期間かけて関税撤廃 国会決議逸脱の懸念あり! 重要品目の交渉結果 米 現行の国家貿易と枠外税率(341円/kg)は維持さ れましたが、WTO枠(MA※)の枠外で米国に7万t、 豪州に8,400tを上限とする輸入枠(輸入義務な し)が新設されました。 既存のWTO枠(MA)の中に、米国からの輸入が大 半を占める中粒種・加工用の枠を新設しました。こ れは、実質的な米国の優遇措置と言えるものです。 ※MA:ミニマムアクセス。低関税で輸入する数量の枠。 現行の国家貿易と枠外税率(小麦:55円 /kg、大麦: 39円/kg )は維持されました が、国別輸入枠が新設されました。 麦 7万t (米国産) + 77万t (主に加工用米) うち10万t (主食用) TPPによる 新枠 8,400 t (豪州産) 既存の WTO枠(MA) 中粒種・加工用の 枠を新設 小麦 枠内輸入時に徴収するマークアップ(政 府調達額と売渡価格との差益で、政府管 理費相当)が、9年目までに45%削減さ れます。 輸入価格 関税38.5%を段階的に削減し、 16年目以降は9%に下がります。 牛 肉 セーフガード(SG:輸入急増時に、 関税を上げて更なる輸入を食い 止める措置)は導入されますが、 発動時の税率は段階的に低減 されます。また、16年目以降は 4年間発動が無ければ廃止※と なります。 豚 肉 安い肉にかかる従量税は125円 となり、10年目以降は50円に 下がります。 高い肉の従価税は2.2%となり、 10年目以降は撤廃されます。 SGの導入はありますが、発動 基準が厳しく、発動した場合も 効果を期待しづらい内容です。 また、12年目以降は廃止となります。 乳 製 品 脱脂粉乳・バターについて、現行の国家貿易と関税は維持されましたが、低関税の輸入 枠が新設されました。 チーズの関税について、日本人の嗜好に合うもの(モッツァレラ、カマンベール等)は維持 されましたが、原材料として使われるもの(粉、シュレッド等)は、16年目に撤廃されます。 〈現行〉 〈関税削減後〉 重要品目以外の交渉結果 その他農畜産物のうち、本県の主な作物の合意内容は下図の通りです。野菜は 全て関税撤廃、全農林水産物の51%が関税即時撤廃となります。米をはじめ、 関税を残す品目も低関税輸入枠の設置や関税削減を受け入れており、大幅な市場 の開放となります。 品目 現在の関税率 合意内容 政府は、国内の野菜消費量 キャベツ、トマト、ブロッコリー、 の8割が国産であることや、 キュウリ、ネギ、ダイコン、ホウ 3% 関税撤廃品目は国産と競合 レンソウ、レタス、アスパラガス、 しないことを理由に、影響 カボチャ じゃがいも 4.3% は限定的としています。 6% ただし、「限定的」の意味 スイートコーン たまねぎ 8.5% は明確ではありません。 さつまいも また、カボチャやアスパラ 緑茶 等、TPP参加国からの輸入 量が多い品目も撤廃されて オレンジ おり、影響が心配されます。 12.8% 即時関税撤廃 4年目に撤廃 6年目に撤廃 17% 6~11月:16% 4~11月:6年目に関税撤廃 12~5月:32% 12~3月:8年目に関税撤廃 生果 「21.3%」~「29.8%または 果汁 1kg23円のうち高い方」 さらに、果汁等加工向けの うんしゅうみかん 品目も撤廃されており、 なし これらの輸入品が国産と競 合しないか注視が必要です。 ブドウ 17% 6~11年目に関税撤廃 6年目に撤廃 4.8% 3~10月:17% 11~2月:7.8% 即時関税撤廃 (イチジクは6年目に撤廃) スイカ、メロン、モモ、イチゴ、 海外産はそんなに増えないっ て、ホントかな? 農家の経営や食卓への影響が 心配だね… 6% カキ、イチジク 冷蔵・冷凍は13年目に関税撤廃 殻つき 1.7%から21.3% 全卵 18.8%~21.3% 全卵粉は13年目に関税撤廃 又は48~51円/kg その他は6年目に関税撤廃 鶏卵 または卵黄 その他は11年目に関税撤廃 11年目に関税撤廃 鶏肉 8.5%、11.9% 冷凍丸鶏・鶏肉(丸鶏と骨付きモ モ肉以外)は6年目に関税撤廃 はちみつ 30% 8年目に撤廃 ISDS条項の合意内容 交渉難航分野であり、懸案事項でもあったISDS条項については、訴訟を起こせ る期間を3年半以内に限定する等の濫訴防止規定(訴訟の乱発を防ぐ規定)を設け ることで大筋合意となりました。 ISDS条項 海外に進出した企業や投資家が、その国の急な制度変更等で損害を受けたら、 企業等はその国を相手に損害賠償が請求できる取り決め。 今後の見通しについて 今後のスケジュール 今後、細部調整のうえ協定の内容を確定させ、各国政府の「署名」を経て、 国会批准の後、協定が発効するという流れになります。 米国では、大統領が署名する90日以上前に、署名の旨を議会に通知する義 務があるため、署名は早くても1月以降になります。米国での審議開始は、 大統領選の予備選が本格化する3月以降と見られています 日本では、国会審議の開始は来年の通常国会以降になる見込みです。国内 対策については、年内に「関連対策大綱(仮称)」を策定し、2015年度 補正予算や2016年度当初予算にて対策を打ち出す予定となっています。 協定内容の 確定 各国政府間の署名 (協定調印) 各国議会での 条約批准※ 60日後 発効 大筋 合意 ※ 各国の批准が遅れても、署名から2年経過した場合は加盟国のGDP の85%を占める国々(6か国)が手続きを終えれば発効します。 JAグループの取り組み 2015年10月15日、JA全国大会が開催されました。その中で、 『TPP対策運動の継続・強化に関する特別決議』が行われました。 JAグループは、本決議に基づき、生産者の将来不安を早急に払しょく するべく、運動を継続・展開してまいります。 TPP対策運動の継続・強化に関する特別決議(抜粋) 1. TPP交渉の大筋合意内容と国会決議との整合性について徹底した検証により、農業者の みならず消費者など国民にその内容を公表する運動の構築 2.今後行われるわが国としての国会批准を注視しながら、新たな食料・農業・農村基本計画等 食料の安定生産・安定供給、食料自給率の向上がはかられ、農業・農村を守るための万全 な対策運動の構築 3.21分野の大筋合意内容が、国民生活に与える影響を検証し、広範な組織との連携による 国民の生命とわが国の主権を守る運動の展開
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