”●’”●●●●●’●●’●’”●●’● 蛯X罵、,∵99,鷺、『讐●●●●●9?嘗’覧『●●「c、撃響◎驚轡量窯ごぎ二、鮒骸’……鷺骸9◎●●’●●●●”●’●●●’●●●●’’” 『内{勧都市緑化技術開発機構 __一際三1蕊濡ll」1ご謡11謡ごll謙撚雛_ 植物は、発熱した都市を冷やし、空気に潤 いを与え、CO2を取り込み、鳥や虫に住みか 1.はじめに一都市沙漠と屋上緑化 をもたらし、人の心にやすらぎを与え精気を わが国の都市の多くは、大都市に限らず地 呼びおこす。 方都市までも、夏期のヒートアイランド化や 屋上緑化は、単に建築物単体の観点のみで 冬期のドライアイランド化が進んでいる。と なく、広く都市の環境改善、自然生態の復活、 りもなおさず都市の気候の沙漠化である。 地球環境問題への対処、人間の心のいやしな 他方、地球温暖化防止のため、CO2などの ど様々な観点から、積極的に推進すべきとき 温室効果ガスの削減は、地球環境改善のため にきたのである。 o −気 o 急務となっている。そのため産業のあり方、 開発に伴う森林などの植物環境の減少とその 2.住宅に自然の息吹を 補填、クーラーや暖房の節約などライフスタ わが国の住宅は戸数的には全世帯数を上ま イルのあり方などを含め、変革が必要である。 わり、質の時代、良質なストックの形成に向 また生活環境から自然が大幅に後退し、身 かう時代になっていると言われている。 のまわりから緑が消えていっている。都市の 一方で市民レベルの眼で周囲をみると、住 自然生態系は深刻な影響を受けつつある。 宅の立地や質、環境などについて様々な問題 人々が生命を持つ植物的環境を忘れた世界で を抱えている人々も多い。そのようななかで、 日々をすごすうちに受ける心への影響も無視 より快適な住まいを実現する方策の一つとし しえない。特に幼少期の児童たちへの影響に て、ベランダ園芸やガーデニングがブームと は注意が必要である。 なってきている。わが家の庭にアゲハチョウ 大地を経済効率優先で利用してきた結果、 が来た、ベランダの小さな木の枝にウグイス 植物が生育している土の地面、緑の大地は、 実はメジロの場合が多いが が来たなど 今や都市ではほとんど見られなくなり、建物 の話題に花が咲くこともある。 が建つか舗装面でおおわれるか、何らかの人 都市や団地に住む多くの人々が、一度遠く 工物、無機物が大地を覆いつくしている。そ に去ったかに思われた懐しい自然の僅かな再 の結果、多くの都市域では地表の植物は勿論 来に心を弾ませるのである。 のこと、地中の無数の動物、昆虫、菌類など 多くの都市、あるいは郊外の住宅団地でも、 がほとんど絶滅しかけている。きわめて多く 少し高みから見渡すと、眼に入るのは一面の の生命体からなるバランスのとれた構成体の 屋根、屋根の心素や白いコンクリートの屋上 中の一員である人間が、このような環境で末 である。これらの屋根の線を超える高い樹木 永く心身ともに健全に発展できるのであろう はほとんど見かけられないのが一般的な現状 かという疑念が頭をもちあげてくる。 である。 余裕のある土地のきわめて少ない都市にあ 一方、新聞紙上での意見や世論調査などに って、残された切札は屋上である。 よると、多くの人々は身近に、それもささや 入念に計画された土地の高度利用、有効利 かな水準ででも、自然や緑の充実を求めてい 用により空地を生み出すとともに、各種の屋 る。 上を一体として扱い、そこに土の地面と植物 を導入することが求められている。建物がお 3.地球環境時代 おいつくした大地の生命の代償を屋上に再現 話は変わって、今や地球的規模での大きな するのである。 かっ深刻な問題の一つにCO2の増加などを中 家とまちなみ37 1998.3 47 心とするいわゆる地球環境問題がある。 参加者は国連発表によると、締約国155ヵ 去る1997年12月1日から10日、実際には 国1,534人、非締約国6ヵ国29人、その他関係 Il日まで京都で『気候変動に関する国際連合枠 者710人、オブザーバー278団体3,865人、 組条約』の第3回締約国会議(COP3)が開催さ 報道関係者を加え合計9,850人であったという。 れたことは記憶に新しいところである。 会議は先進国における温室効果ガスの排出 削減目標などを定めた『京都議定書』を採択し 資料:環境庁地球環境部 表一1COP3で採択された「京都議定書」のポイント 数値目標(第3条) て閉幕した。 住宅に関しては、住宅の断熱性能の向上や 対象ガス 二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFC、 PFC、 SF6 省エネルギー、太陽光発電などが課題として 基準年 1990年(HFC、 PFC、 SF6については1995年とし得る) あげられているが、他方では森林の役割が大 吸収源の 限定的な活動(1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少)を 謌オい ホ象とした温室効果ガス吸収量を加味 きくとりあげられ、植物の果たすCO2吸収と 固定は重要な要因となっている。 住宅地における植物のCO2固定量は僅かで あるが、地域の気温の緩和効果や建築物、道 目標期間 2008年から2012年 削減目標 附属書1締約国全体の対象ガスの人為的な総排出量を、目標期間中に 路面などへの太陽光による焼け込みの緩和と、 その結果得られる省画ネ効果には注意を払う 譓?Nに比べ全体で少なくとも5%削減する。 各附属書1締約国は、目標期間中の対象ガスの人為的な排出量が、 必要がある。 ツ別の割当量を超過しないことを確保する。例えば、 また人々が植物になじみ、植物を大切にす 坙{の割当量:基準年の94%(6%削減) ト国の割当量:基準年の93%(7%削減) dUの割当量:基準年の92%(8%削減) る気運の醸成は、やがて地球的規模での森林 の育成や保護に大きな役割を果たすことにな るであろうと思われる。 目標期間中の割当量に比べて排出量が下回る場合には、その差は、 バンキング 汪勛ネ降の目標期間中の割当量に加えることができる。 4.都市のヒートアイランド 東京、大阪などの大都市の都心部が夏期ヒ ートアイランドとなることはよく知られている。 O C25 O最高気温の年平均 聡最低気温の年平均 東京の気温変化を経年的にみてみると、 年々気温の上昇がみられるが、特に最低気温 2αo’… 」畢製卿二士“轡嘱 の上昇が顕著である。さらに同じ東京の相対 湿度をみてみると、こちらは年々低下してき ているが、特に冬期の湿度の低下が著しい。 15.0・ (図一1、2) 吟 これらから東京は年々気温が上昇し、特に 10.0 最低気温の上昇が著しく、また夏期はヒート 5.0 1870 1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 アイランドが現れ、一方冬期は乾燥化が進ん 資料:(財)都市緑化技術開発機構作成 だドライアイランドとなりつつあるといえる。 原資料=気象庁 高温化と乾燥化、要するに沙漠化である。 このような傾向は、かつて大都市固有の問 図一1 東京の気温の経年変化(1875∼1990) 題であったが、近年は地方の中小都市におい 0 %10 80 ④冬季相対湿度 駿夏季相対湿度 てもみられるようになってきた。写真一4は 周囲を水田に囲まれた人口5万余の埼玉県幸 1二ll;1:ゴ::;lllil}::::1:1・1幽墾!㌔監1∵ 手市のヒートアイランドを示す図である。ヒ ートアイランドは都市の構造、建築物の態様、 60 .…魯⑳.④.・.鷲∵∴贈焦乳1・②樽 自動車交通やクーラーの使用などが複合して 起るといわれる。今や大都市も中小都市も変 40 りはなくなりつつある。 20 住宅団地についてみてみると、アスファル 0 1950 1960 1970 1980 1990 ト路面やコンクリートの住宅の焼け込みが著 資料:(財)都市緑化技術開発機構 しく、夜間になっても熱の放射が続き、小さ 原資料:気象庁 なヒートアイランドを形成する。写真一6は 図一2 東京の相対湿度の経年変化(1951∼1986) 48 家とまちなみ37 1998.3 多摩ニュータウンにおける表面温度を示して ● いる。 夏期、太陽光による焼け込みとその結果蓄 熱した構造物は、夜間になって大気の気温が ∩ 下がっても熱線を放射し続け、結果的に暑い まち、暑い住宅を作り出している。人体も放 射熱を直接受ければ、たとえ冷えた外気、ク ーラーで冷やした室内の空気に接していても 坂本新太郎 熱苦しさを感ずる。 写真一1 東京都心部の緑地分布 このような現象を避けるためには、とにか (さかもと しんだろう) 昭12(1937)年生まれ。 く植物を導入するのが効果的である。 昭35(1960)年 千葉大学 園芸学部卒業 同年建設 省入省。計画局都市計画 課 昭52(1977)年 滋賀県企 画部次長 昭59(1984)年 住宅・都 市整備公団公園緑地部長 昭60(1985)年建設省都 市局公園緑地課長 写真一2 東京都心部の表面温度分布 東京のヒートアイランドとクールアイランド 昭63(1988)年 建設大臣 官房審議官(花博担当) 写真一5 多摩ニュータウンの一部の状景 平1(1989)年 国際花と 1987年7月24日、午前9時頃、ランドサット 緑の博覧会政府苑副苑長 による。太陽高度がまだ浅いため、熱容量の大 平2(1990)年建設省退 きな丸の内などのビル街は温度上昇の過程にあ 職 り、前日の蓄熱の残りが主で、当日の影響はま 同年 (財)都市緑化技術開 だ少ない。周辺の住宅地はすでに温度上昇を示 発機構専務理事今日に している。緑地は低温である。 至る。 ・千葉大学非常勤講師 ・大阪芸術大学客員教授 ・博士(学術) ・技術士(都市及び地方計 画) 写真一6 写真一5の地域の表面温度分布 左の高層住宅 の屋根、中央の低層住宅の屋根、右手前のグラウンド む 裸地と擁壁などに焼け込みによる温度上昇がみられ る。 多摩ニュータウンにおける表面温度分布 撮影:(財) 都市緑化技術開発機構山田宏之、協力:住宅・都市整備公団 写真一3 幸手市の土地利用 5.生物のいないまち、心のすさむまち 都市から、生活環境から、様々な生物が姿 を消していっている。あるいは、ハシブトガ ラスの繁殖にみられるように生物が交代し、 かつ単調化してきている。自然生態系の危機 である。 また多くの要因がからみ一概に原因を断定 することは避けねぼならないが、近年特に児 写真一4 幸手市の表面温度分布 童の心のすさみが指摘されている。荒れる学 校、すぐ“きれる”ローティーン、などの事例 埼玉県幸手南のヒートアイランド Q が各地で報告されている。これらについても、 1987年7月24日、午前9時頃、ランドサット 生活環境から様々な動・植物が後退し、また による。周辺の水田地帯は低温であるが、市街 地は温度上昇が著しく、ヒートアイランドを形 自分の手で四季の移り変わりに即した生命を 成している。 持つものを手がける機会がほとんど失くなっ たことが原因しているとの指摘がある。 家とまちなみ37 1998.3 49 緑はその周辺にすむ種々の動物・昆虫を含 7.ヒートアイランド対策 めて、人間にとって心のいやし効果がきわめ ヒートアイランド対策というと大規模な対 て大きいのである。 策が想像されるが、とりあえず焼け込みによ る蓄熱を避ける対策として考えてみたい。 コンクリート構造物の焼け込み防止には植 物の植栽によるものが目下のところ最も効果 6.炭酸ガスの吸収と削減 的である。具体的には屋上緑化、壁面緑化で 地球の温暖化対策には6種類のガスの削減 あり、街路樹であり、駐車場、擁壁などの緑 が掲げられているが、都市や住宅地という観 化である。 … 恥_ 蹴 支保 点からはCO2の吸収、削減に努力することと なるのであろう。 まずCO2の吸収は、主として植物により行 瀞 われる。植物は一般に光合成においてCO2を @ レレ 吸収し、炭素Cを固定し、酸素02を排出する。 ダ. A、 /・飯,一哩 グ 樹木の場合、Cの多くは立木の材として長い a@ 芝罰板 一 A 一 T , z 一 I I 期間固定され、さらに伐採されても木材とし 一 需 } 匿 一 . } . , 一 一 て利用される限り固定され続ける。一般的に ヒ 不織布 排水層 みて、樹木の材積1m3当りltonのCO2(正 土留め盤 確にはそのうちの約30%のC)を固定してい 排水 ン るという。やや大きな街路樹(幹の直径50∼ 60cm、高さ15∼20m)は1本当り2∼ 5tonsのCO2を固定していることになる。 k固目・ @ 防水層 y壌 ◎ 資料:(財)都市緑化技術開発機構 特殊緑化共同研究会著 NEO−GREEN SPACE DESIGN①P47 仮に燃料として消費される場合、その熱量 図一4 屋上緑化の典型的な断面図 に見合った化石燃料の消費を節約でき、かつ これらにより焼け込みを防ぐことがヒート で吸収され得るので、CO2の総量には大きな アイランドの形成を防止する一助となり、ま 変化は生じないことになる。 たひいては微気象的にみた気温の低減などを また道路沿いに植栽された樹林帯の場合、 通じて冷房などのエネルギー使用量を減少さ 道路側の自動車の排出ガスによる高濃度の せ、結果的にCO2の削減につながるものと考 CO2が樹林帯に入ると半減するという報告も えられるのである。 ある。このことは、生活環境の保護という観 屋上緑化について検討してみる。最も一般 点からも重視すべきことである。 的に行われている方法として、屋上のスラブ 都市のCO2の吸収について樹木の果たす役 面などに防水シート、二二シート、排水層を 割は、都市が排出するCO2の総量に対しては セットし、厚さ5cm程度から50cm程度、最 僅かなものであるが、個別にみると意外に大 も多いケースは30cm程度の土壌層がおかれ きな働きをしているのである。 る。潅水装置をセットし(なかには無潅水とい 努めて大木となる樹木を植栽していく必要 う例もある)、植物を植栽する。なおこの場合、 がある。 屋上の防水層の劣化はほとんど進行しないこ CO2の削減については、次のヒートアイラ とが確かめられている。 ンド対策として検討してみたい。 この緑化された部分に太陽光が当たると、 , 層 u 1 e 層 P ■ ■ ● 墜 。 1 1 , ・ 脚 脚 ・ ■ 聖 ● , ‘ ,脚 艦 . , I I h l g u l I h I ■ P , h I I 戟@ l 冒 1 「 「 P 馳 I h , I h , 1 。 1 幽 h I L C, h l ・ r @ . , ケ , , a@ , L 612180 0612180 一一一 O 気 芝生下 :㌧’㌦ 一防水シート上一→一 一・・盤/7⊃Z 一小屋畏∼ 天井面∼_亜㎜皿 .●1, 1 ‘ ﹂ ,, 1 1 L ■II 11■瘤■ l l ﹂ 膨 隔 ● ■・ 1 C , } 師 1 1 畠 , y P . ■ , P ・ 1 1 脚 ‘ P 幽 印 「 墜 ■・,, 1 ・ 1 1 1 C I , , 幽 1 1 1 怐@ 5 1 幽 ■ F 零 . . ︻ 畠 幽 ﹁ 1 1 8月24日 o ■ ■ 25 20 0 6 12 18 0 1 8 o r r I 〟@ I r 5 1 1 9 温 度40 も35 ) 30 25 20 ■ 塵 . 脚 幽 ﹁﹁ 1 1 旧 45 ・ 脚 ﹂ 1 幽 8 ■ し ﹂● 1 昌 昌 層 ﹁ 勝 , ︻ ﹁ ︻ ﹂ P 墜 幽 , 幽 , 1 ﹂ 膠 艦 ﹁ ■ 1 1 髄 P ・ P 1 1 9 1 ■ ● C l I 8 ・ ■ ■ 印・ L 卜 1 ‘ 1 2 幽 「 P 幽 脚 脚 , 1 9 1 脚 冒 引 ■ 8 幽 60 55 50 幽 ,・ 1 , ﹁ ) 30 , , ■ ︻・ 度40 分35 ﹂ 冒 旧 45 ∼皿 3 ● ■ 齢 畠 8 冒 働 60 55 50 そこで発生したCO2は再び樹木などの光合成 @ 1 9 P 1 8 3F室内 P 幽 ■ v ■ o 6 12 18 0 8月25日 時 8月24日 芝生緑化を施した屋上 8月25日 時 芝生緑化を施していない屋上 *なお芝生緑化の屋上防水は、保証期間を 通常の2倍(20年)としている。 図一3 屋上緑化による屋上各部の温度の違い(積水ハウス(株)における例) 50 家とまちなみ37 19983 資料:積水ハウス(株)総合住宅研究所 e ○ まず植物の葉がこれを受けとめ、光合成を行 いる。生物の世界ということであるが、通常 う。光合成は植物が生き、成長していくため はある範囲の昆虫や魚、鳥などの生息空間を に必要なきわめて基礎的な働きであり、多く 人工的につくり出すことを指している。 の植物は太陽光を最も効率的に受けとめよう ビオトープは、人為がまさり、多様な生物 と葉を展開する。さらに高木などの葉を透過 の生息する空間を次々と破壊してきたことの した光や木洩れ日を利用する低木や下草の葉 反省から、もう一度多様な生物が生存できる が地表を覆っている。植物はこのように太陽 自然的環境を創出しようということである。 光を二重、三重に利用しつくそうと待ち構え ビオトープづくりは大地の.ヒに自然の復元 ている。そしてそれぞれが炭水化物を生産し、 を図り、そこに昆虫や小動物の定着を促すの 樹木であればこれが木材となって蓄積されて が本来の姿であるが、人工地盤上や屋上など いく。 でも様々な実験や計画づくりが試みられてい 屋上に降り注ぐ太陽光を、焼け込みと蓄熱 る。 の原因として、またスラブ面の防水層の劣化 を促す厄介なものとしてみるか、植物に生産 ρ 要約すれば、鳥については、それぞれの種 ジ の好む樹木や食餌木を植栽し、ある程度の繁 をもたらす福音としてみるか、同じエネルギ みをつくると営巣し、ヒナを育てている姿が ーをみる見方がマイナス側とプラス側とに大 見うけられる。 きく分れるのである。 昆虫については、たとえばトンボなどにつ なお植栽による温度の低減は、植物の葉か いても、小さな水面と粘土質の底土があれば らの蒸散と地表面からの蒸発によって、それ 繁殖が認められ、また自然土壌での植栽地で ぞれ気化熱として熱を奪い、周囲の気温や物 はセミが生育し、繁殖している。 体の温度の上昇を防ぐことによっている。 建築物の屋上の場合、大体10階の屋上位ま ではトンボなどの飛来と産卵がみられる。 8.生物を呼ぶ 近年ビオトープという言葉が広く使われて このようなことから、たとえ人工的な地盤 の上であっても、個別に十分な環境を整えて やり、かつそれが都市内で一定の系を形成す るように構成すれば多様な生物の生息は可能 である。 自然地の十分な観察と適切な生息空間の創 出により、かなりの種類の生物の、都市への 回帰を期待したいものである。 9.心の健康と緑 写真一7 屋上における鳥の営巣、ヤマバトか? 東京 緑、また同義に用いられる「あお」も含めて、 都港区赤坂コマツビル屋上、撮影:(財)都市緑化技術開 緑はもともと植物に関連した語といわれ、ま 発機構 た「芽をふく」、「みずみずしい」などの意を含 むといわれている。 各種の色彩を表す言葉のなかで「緑」だけは ほとんどすべての人が「植物」や「植物的環境」 を直観的に想起する。 「みどりご」「青いリンゴ」また「青二才」など のように、あるいは「みずみずしい」若葉、若 竹などのように、「緑」は未熟なもの、と同時 にこれから成長する生命を示唆している。 人聞は、「緑」また「緑なす植物」との幾世代 にもわたる長い関わりあいの中から、人間の 存在の奥深いところに、静かにしかし幅広く、 植物に対し、成長する生命、希望、やすらぎ O 写真一8 屋上におけるセミのぬけが といった感懐を抱くに至っているのではない ら コマツビル屋上、撮影:(財)都市 かと思われる。 緑化技術開発機構 人間は文明により発展し、今後さらに文明 家とまちなみ37 19983 51 は高度に発達していく。しかし人間は、おの さが倍加することとなる。たとえば屋上緑化 れのまわりがすべて文明の産物でおおいつく は、それ自体はまちの中の点的存在である。 されたとき、反射的に自然を求めるようであ また大木の生育は不可能ではないが困難なこ る。その自然もどちらかといえば穏やかな植 とが多い。このようなことから、都市内外の 物的環境を想いうかべる。 公園や学校、街路などに努めて大木を育成し、 かつて大阪で1990年の花博に先だって開 また河川、池などの水面を生物の生活に適し 催されたグリーンフォーラムというシンポジ た姿としていくなど、都市全体あるいは住宅 ウムで、西ドイツ(当時)チュービンゲン大学 団地、一町内など、地域的まとまりのある範 のボルノー名誉教授は、「都市と緑と人間と」 囲を、努めて有機的、体系的に計画し、育て と題する講演の中で、「人間は緑に対する直接 ていくことが必要である。 的なかかわりの中でのみおのれをその生きた このような点などを考慮しつつ、建築物や 生活性、生動1生の中に保ち得るのです」と述べ、 構造物と植物とが調和した美しい、快適なま 人間が緑とのかかわりを絶ったとき、人間の ちや住宅が今後ますます増加することを期待 みずみずしい感性は失なわれ人間本来の姿を したい。 失いかねない危険を説き、そして最後に次の なお(財)都市緑化技術開発機構では、屋上 ように述べている。以下に原文のまま引用し 緑化、室内緑化、壁面緑化などを特殊緑化と てみる。 して扱い、これまで技術開発、マニュアルの 「もしも都市が緑を喪失することによって、 発刊、研究会の開催などを行ってきている。 自然に対する関わりの中で完全な人間的な住 何かと御教示いただければ幸いである。 まいを発展させる可能性をもはや与えてくれ ◎ ないならば、人間がどんなに心に準備し、覚 悟を定めても挫折するほかはありません。こ こに、人間の身体的健康のみならず道徳的健 全さに対して都市計画者が持つ途方もなく大 きな責任があるのです。」(大阪大学人間科学部 森田孝教授訳) 10.緑のデザイン いくつかの視点から、都市、住空間、人間 9 写真一10 東京都の高齢者用住宅の 屋上庭園 ハーブを主体としている。 撮影:(財)都市緑化技術開発機構 鴎..二.〆’ 写真一9 個人住宅(RC4F)のテラスの緑化 撮影:(財) 都市緑化技術開発機構 と緑、植物、また植物的環境との関係を一覧 してみた。勿論これらは多くのテーマのごく 一部であることと、それぞれ述べた内容はは なはだ不十分である。しかしいずれにしても 都市や生活環境に樹木や草花などの植物の導 要望するところでもある。 52 麟 入はきわめて重要であり、また多くの人々の 写真一11 戦後における屋上緑化の さきがけの1例 東京都港区赤坂の なお屋上緑化などを進める場合、地域の植 コマツビル屋上 撮影=(財〉都市緑化 物環境との関連性に留意すると楽しさや快適 技術開発機構 家とまちなみ37 1998.3
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