巻頭言 第 22 回 ITS 世界会議「セッションの概要」発刊にあたって ITS Japan 国際委員会 委員長 尾﨑 信之 ITS 世界会議は、世界 3 地域を代表する ITS 団体(欧州:ERTICO - ITS Europe、アメリカ:ITS America、アジア太平洋:ITS Japan)が共同で開催する唯一の産・官・学が参加する国際会議であり、技 術開発ばかりでなく政策、市場動向など幅広い観点から情報交換し ITS の普及による交通諸問題の解 決及びビジネスチャンス創出を図ろうとするものです。ITS を取り巻く世界の潮流に触れる絶好の機会で すので、事前に会議の全貌をつかんで頂くことを目的に毎年概要集を作成しています。 今年のボルドーITS 世界会議の開催テーマは「宇宙技術で広がる未来の ITS」(Towards Intelligent Mobility- Better use of space-)です。ボルドー市は人口約 23 万人(広域都市圏は 76 万人)、ガロンヌ 川河口に位置しており、歴史地区が「月の港ボルドー」などの呼称で世界遺産として登録されています。 公共交通としてのトラム(路面電車)は市民の重要な足であり、特に中心市街地では街の景観と同化し、 歩行者と共存したトランジットモールは一見の価値があります。また、全地球航法衛星 Galileo の管制セ ンターが近くにあることもあり、今回の会議のロゴマークに衛星のシンボルを付けたと聞いております。 本大会のトピックスとして7つのテーマを掲げており、テーマ1に衛星測位としての宇宙技術の記載が あるのが今回の特徴と言えます。基調講演 3、エグゼクティブセッション 14、スペシャルインタレストセッシ ョン 69、採択論文数約 880 件の会議構成となっております。昨年のデトロイト大会を踏襲した HLTS (High Level Technology Summits)、GPS(General Public Sessions)のセッションもあり、特に HLTS では PnP シティ、自動運転がセッションのテーマとして企画されています。この PnP シティは今後の持続可能 なモビリティを目指す新しいスキームとして使おうとしているようです。今回新しい企画として、特定のテ ーマに関するステークホルダー同士のオープンな議論の場としての SW(Stakeholder Workshops)、EU で行われているプロジェクトの計画・状況報告の場としての PR(Project Dissemination)、さらに製品の発 表の場として、CP(Commercial Paper Session)、CS(Commercial Presentation Sessions)などのセッション もあります。デモンストレーションは公道、駐車場で 17 種類ほど検討されており、また、テクニカルビジッ トも管制センターをはじめ、上下に橋桁を動かすことで船を通すジャック·シャバンデルマ橋、ボルドー港 など 8 箇所ほど計画されています。 自動運転・協調型運転支援システム、ビックデータの利活用は 2013 年の東京大会以来、継続的な テーマとして今回も各セッションで多様に取り上げられており、ガリレオなどの衛星航法・宇宙技術、都 市としてのモビリティの質の向上のための各種技術、さらに欧州を横断する大西洋回廊のマルチモーダ ルな物流基地のひとつとしての港湾含めた海上交通技術なども議論されることになっております。 概要集の発行も 13 回目を迎えました。大規模に行われます国際会議に参加されるにあたり、効率的 な聴講と情報収集のお役に立てればと、ITS Japan 国際委員会のメンバーを中心に分担し、まとめたも のであります。本概要集をご活用頂ければ誠に幸いです。 3 目 次 ITS 世界会議ボルドー2015 見どころ ......................................................................................................... 5 Plenary Sessions ............................................................................................................................................ 6 High-Level Technology Summit ................................................................................................................... 9 Executive Sessions ...................................................................................................................................... 11 General Public Sessions .............................................................................................................................. 21 Special Interest Sessions ............................................................................................................................. 24 Technical/Scientific Sessions ...................................................................................................................... 63 Interactive Sessions ................................................................................................................................... 102 Commercial Paper Sessions ...................................................................................................................... 111 本概要集は 2015 年 7 月現在の情報に基づいて掲載しています。 当日変更になる場合もあります。 4 ITS 世界会議ボルドー2015 見どころ 自動運転 欧州連携:欧州では科学技術・イノベーション政策 HORIZON2020 の枠組みの中、CityMobil2 (2012-2016、20 億円、ローザンヌ、サルデーニア島での実証実験等)、AdaptIVe(2014-2017、31 億円、自動走行シナリオ検討、技術開発)等様々な先進 ITS プロジェクトが進展する一方で、実 用化を睨み、イギリスの Lutz Pathfinder、スウェーデンの DriveMe、オランダのトラック隊列走行等 各国別の取り組みも始まっている。欧州の国々にまたがる自動運転への協調体制は、今後どのよ うな展開を見せるか。 Connected Vehicle: 通信は、センサー単独ではカバーできないところを補完する先進安全運 転支援 ADAS のキーデバイスとして期待される。また、自動運転実現のための重要な要素技術で あるダイナミックマップの動的情報、先読み情報取得という観点から「Connected Vehicle」が議論 される一方で、クラウドに常時接続で経路案内、防災情報提供、地図メンテ、プローブ利活用等 先進テレマティックスまで包含するケースもある。 自動運転というコンテクストで、「Connected Vehicle」開発のロードマップが示されるか? 「Connected Vehicle」の適用範囲が制御系に伸びる中で、「Cyber Security」の問題がクル ーズアップされている。この分野の技術課題、ロードマップが共有できるか? 自動運転分野で技術開発、(公道)検証実験でプレゼンスを高める欧州トップ Tier1 サプラ イヤが、自動運転に関する制御技術をどのようにプロモートするか? オープン・ビッグデータ OBD2 等のデータ標準化に伴い、Google、Apple 等 ICT 大手がオープンデータ・ビッグデータを 活用したクラウド情報提供サービスでプレゼンスを高める中、欧州自動車メーカ含めた自動車業 界は、付加価値の流出を阻止するためにポテンシャルを示すことができるか? 都市交通 マルチモーダル: フランス・ナント市(P&R 活用)、ドイツ・ストラスブール市(LRT 活用)に代表され るように都市交通改善の様々な取り組みで成果を挙げる欧州では、自転車道の整備が進み、 PMV の導入が進む。このような背景から、マルチモーダルコンセプトをベースにした新しい都市 交通、都市計画の先進事例が示され、一つの道筋が見られるか? スマートコミュニティ: 日本の「スマートコミュニティ」は、自然エネルギーを活用して分散発電を推 進し、「系統電力網のピーク需要を低減する」ことを狙いとする一方で、欧州は「都市生活の質向 上」に重きを置く。この方向性を再度確認する議論が出てくるか? その他 衛星測位利活用: 衛星測位の研究組合である TOPOS が主催団体として名乗りを挙げている中、 会議テーマの一つが「Space Technologies & Service for ITS」であり、PL2 のテーマが「Space for Intelligent Mobility」である。会議での議論は、どのような方向へ向かうのか? ショーケース: デトロイト大会では、日米の自動車メーカ(及び一部サプライヤ)の本拠地というこ ともあり大々的にデモが実施されたが(特に自動運転、V2X 等)、今年はどうか? 標準化: 欧州の得意な標準化の分野で新たな進展が披露されるか? 5
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