社会システムの中での自動車 - 経済産業省 九州経済産業局

2.社会システムの中での自動車(ITS)
(1)ITSの現状
ITS(Intelligent Transport Systems)は、人と道路と自動車の間で情報の受
発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、様々な課題を解決するた
めのシステムとして考えられた。最先端の情報通信や制御技術を活用して、道路交通
の最適化を図ると同時に、事故や渋滞の解消、省エネや環境との共存を図っていくも
のである。関連技術は多岐にわたり、広い意味では信号灯制御やナビゲーションシス
テム、電子料金収受サービス(ETC)などもITSに含まれ、すでに社会に浸透し
ている技術も少なくない。
近年のITSを取り巻く環境は劇的に変化している。特に自動車のエネルギー転換
分野では、駆動系の電動化がEV、PHVにより始まっており、また、情報通信分野
では、スマートフォン、タブレットなどの普及と同時に移動体通信の飛躍的高速化と
データ通信接続の一般化によるユビキタスな通信環境が整いつつあり、個人や自動車
自体が感知センサー・情報の発信側としての役割を担うようになってきている。
ITSは社会システムを大きく変えるプロジェクトとして、新しい産業や市場を作
り出す可能性を秘めている。
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(2)社会に浸透するITS
①カーナビゲーションとVICS(Vehicle Information and Communication System:
道路交通情報通信システム)
カーナビゲーションは交通関連情報の提供、目的地情報の提供を目的として、GP
Sや移動体通信技術の進展により急速に普及してきた。交通関連情報は移動に最適な
経路選択、渋滞情報、推定所要時間、交通規制情報等を提供し、ドライバーの利便性
の向上を図る。さらに、目的地情報により目的地の地域情報等のサービス情報を提供
し、ドライバーの移動を快適にする。
VICSは、渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナ
ビゲーションなどの車載機に文字・図形で表示する情報通信システムで、ドライバー
の適正なルート選択を促し、輸送時間の短縮によるコストの削減、的確な状況把握に
よる安全性の向上、交通の円滑化を向上させる。
道路管理者と警察が収集した道路交通情報を、(財)道路交通情報通信システムセン
ター(VICSセンター)が、FM多重放送や高速道路に設置された電波ビーコン、
一般道路に設置された光ビーコン等により、車載装置に情報提供を行っている。
VICSの普及により交通量が円滑化し、走行速度が向上することで、実走行燃費
が改善され、自動車からのCO2排出量を削減し、地球温暖化防止に貢献する(2011
年度に年間246万t削減:国土交通省地球温暖化対策の評価)。
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②ETC(Electronic Toll Collection System:料金電子収受システム)
料金所ゲートに設置したアンテナと、車両に装着した車載器との間で無線通信を用
いて自動的に料金の支払いを行い、料金所をノンストップで通行することができるシ
ステムである。
有料道路におけるETCの利用率は約88%(H24.10 国土交通省)で、ETCを導
入することで、料金所渋滞の解消、クルマの燃費の向上により、地球温暖化の防止や
大気環境の改善に寄与する(2011 年度に料金所周辺のCO2を22万t削減:国土交
通省地球温暖化対策の評価)。
○ETCの利用(スマートインターチェンジ(IC))
既存の高速道路ネットワークを有効に活用し、地域経済の活性化や渋滞の軽減等を
図るため、サービスエリア等におけるスマートインターチェンジ(ETC専用のイン
ターチェンジ)の整備が推進されている。ETC専用のため料金徴収施設を簡素化、
無人化でき、またランプウェイの代わりにサービスエリア等を活用することでコンパ
クトな整備が可能である。スマートICにより効率的な追加IC整備が可能となり、
高速道路の有効活用を通じて、地域活性化や物流効率化に寄与する。
九州では西日本初の高速道路本線直結型ICの九州自動車道宮田スマートインタ
ーチェンジ(IC)が 2011 年3月に開通した。宮田スマートIC周辺には多くの工
業団地があり、自動車関連工場を始めとした多くの工場が立地している。宮田スマー
トICの開通により、高速道路へのアクセス時間短縮による物流の効率性の向上が図
られ、また周辺道路の安全性の向上にも寄与している。
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③ASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)
ASVは、最新のエレクトロニクス技術を活用して、安全性を格段に向上させるこ
とを目指した自動車である。具体的には、車両周辺の交通環境や路面の状況などの情
報を各種センサーや情報通信装置を用いて収集し、その情報をもとに安全な運転を支
援する。
現在、自動車・二輪車メーカー、学識経験者、関係省庁等が連携し、ASVに関す
る技術の・開発・実用化・普及を促進する「ASV推進計画」が「ASV推進検討会」
(事務局:国土交通省)の下で行われている。
実用化されたASV技術には、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、定
速走行・車間距離制御装置(通称名:ACC:Adaptive Cruise Control)、ふらつき警
報、横滑り防止装置(通称名:ESC:Electronic Stability Control)、駐車支援
システム等がある。
(国土交通省ホームページから)
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④AHS(Advanced Cruise-Assist Highway Systems:走行支援道路システム)とは、
道路とクルマが連携し(路車協調)、センサーや路車間通信などの最新のITSテ
クノロジーを駆使して交通事故や渋滞の削減を目指すシステムである。
AHSは様々な事故要因のうち、その直接の引き金となるドライバーの発見の遅れ、
判断の誤り、操作の誤りなど事故直前の行動事象に対し、情報提供、警報、操作支援
といったサービスを行うことで効果的に事故の発生を防ぐ。その代表的なサービスと
して、カーブなどの見通しの悪い箇所でクルマから検出困難な停止車両などを発見し、
衝突事故を防止する前方障害物衝突防止支援サービスがある。
(国土技術政策総合研究所ホームページから)
⑤UTMS(Universal Traffic Management Systems:新交通管理システム)
光ビーコンなどの最新の情報通信技術やコンピュータなどを駆使して、刻々と変化
する交通状況を把握し、信号制御の最適化、リアルタイムな交通情報の提供等により
「安全・快適にして環境にやさしい交通社会」実現を目指すシステムである。警察庁
が ITS の一環として、研究開発及び実用化・整備を推進している。
UTMSには、ITCS(高度交通管理システム)などの9つのシステムがある。
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高度交通管制システム(ITCS)
((一社)UTMS協会資料)
⑥ITSスポットサービス
人と車と道路とを情報で結ぶITS技術を活用した次世代の道路(スマートウェイ)
において、カーナビ・ETCを進化させて一体化し、オールインワンで多様なサービ
スの実現が進められてきた。このオールインワンのサービスに対応する通信手段とし
て、道路に設置された「ITSスポット」とクルマ側の「ITSスポット対応カーナ
ビ」との間で高速・大容量通信を行うことにより、広域な道路交通情報や画像も提供
されるなど、様々なサービスが2011年から全国で始まっている。
(国土交通省ホームページから)
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○3つの基本サービス
・ダイナミックルートガイダンス:広範囲の渋滞データを受信。カーナビが賢くル
ート選択。
・安全運転支援:ドライブ中のヒヤリを減らす事前の注意喚起。
・ETC:ETCによる各種決済サービス。
○その他のサービス
・インターネット接続(一部の機種で実現):サービスエリアなどでインターネッ
トにアクセス。地域観光情報の提供が可能。
○将来のサービス
・このほかに決済、観光、物流などのサービスも今後展開される予定。
(国土交通省ホームページから)
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(3)普及に向けた取り組み
①政府におけるITSの取り組み
日本においては「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」
(2001 年 1 月設置。本部長:内閣総理大臣)のもと、国土交通省、警察庁、総務省、
経済産業省の四省庁が連携してITSを推進している。また、四省庁は、産学による
ITS 推進団体である ITS Japan、ITSの国際標準化を進める ITS 標準化委員会と連
携してITSを推進している。
IT戦略本部の「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月11日 高度情報通
信ネットワーク社会推進戦略本部決定)においては、「ITSによる人やモノの移動
のグリーン化(グリーンITS)」及び「情報通信技術を活用した安全運転支援シス
テムの導入・整備の推進」が掲げられている。
1)人・モノの移動のグリーン化(グリーンITS)
同戦略では、「2020年までに、高度道路交通システム(ITS)等を用いて、
全国の主要道における交通渋滞を2010年に比して半減させることを目指しつつ、
自動車からのCO2排出削減を加速する」との目標を掲げている。
「ITSに関するロードマップ」(平成22年8月3日 高度情報通信ネットワー
ク社会推進本部決定戦略)によれば、ITSを活用して様々な道路交通情報の(感知
器情報、プローブ情報)を収集、活用することによって、渋滞対策のみならず、交通
信号制御の高度化、交通施策の評価と都市計画への活用、運輸部門における二酸化炭
素排出量の計測、災害時・交通障害発生時の実態把握等、広く交通に係る諸問題に適
切に対応できる可能性があるとされている。
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(「新たな情報通信技術戦略 工程表(平成24年7月4日改訂)」高度情報通信ネッ
トワーク社会推進戦略本部)
2)安全運転支援システム
2008 年に日本学術会議は「提言 交通事故ゼロの社会を目指して」をとりまとめ、
交通事故死傷者ゼロは既存の施策の延長では無理という認識を示し、ドライブレコー
ダーの活用などとともに、予防安全技術の一つとしてISA(Intelligent Speed
Adaptation:高度速度制御システム)導入の重要性を強調し、一定の市街地を特区と
し住民参加型の社会実験を行うよう提案した。
「新たな情報通信技術戦略 工程表」においては、「安全運転支援システムの導入、
普及により、2018年に交通事故死者数を2,500人以下とする」との目標を掲
げている。
最近では、車両構造の進化に加えて、自律検知型システムの実用化・普及や車両セ
ンサーから認知が難しい危険に対応する路車協調型システムの開発・実用化が始まっ
ており、車車間通信型システムの実用化準備など、安全運転に対応した車載器・車両
の開発、普及に取り組みが進められている。
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(「新たな情報通信技術戦略 工程表(平成24年7月4日改訂)」高度情報通信ネッ
トワーク社会推進戦略本部)
(日本自動車研究所資料)
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① 新中期計画の基本方向
特定非営利活動法人 ITS Japan は、ITSの発展と地域への普及・実用化の促進を支
援する事業等を行っている。2008 年度に 2030 年の「交通社会のありたい姿」を想定
し 「ITS 長期ビジョン 2030」を策定。2011~15年の新中期計画では、同ビジ
ョンで提示した社会を実現するための具体的取り組みを、新技術の発展や社会環境変
化にも対応して、以下の方向で展開することとしている。
1)
2)
3)
4)
移動通信ネットワークの高速化と日常生活への普及がもたらす潜在力を活かし
た交通社会システムの進化
自動車の動力源の転換とエネルギー需給構造の変化を支え、モビリティの持続的
向上と省エネルギーを両立する交通システムの実現
経済活動の一層のグローバル化と担い手となる国・地域の構図の変化を先取りし
た ITS 分野の国際連携のリード
誰もが多様なライフスタイルで活き活きと暮らす豊かな社会を支える自立的・効
率的モビリティの実現
(特定非営利活動法人 ITS Japan 講演資料から)
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新中期計画では、このような考え方で ITS Japan が今後5年間に取り組むべき主な
活動領域を次のように設定している。
A.
B.
C.
D.
エネルギー供給の革新に対応した交通システム
次世代協調型運転支援システム
情報共有型社会の交通システム
地域と連携したITS展開促進
これらの領域に取り組むにあたり、体制面では国際活動と事業基盤を特に強化すべき
領域として設定。
X.
Y.
国際連携と海外展開支援
産官学連携促進と事業基盤の拡充
(特定非営利活動法人 ITS Japan)
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(4)地域での取り組み
①視点
地域が抱える共通の課題は、交通渋滞、交通事故等の道路交通問題、急速に進む高
齢化、環境・エネルギー問題、地域産業の活性化といったものがある。
地域の社会インフラ整備を進めるうえで、ITSは交通渋滞の緩和、交通事故の削
減、少子・高齢化対策、地球温暖化対策、防災・減災、高度情報化や国際化、都市の
再生や地域活性化といった様々な問題解決に役立つ。
2011年3月に発生した東日本大震災時に、ITS Japan は国と連携して被災地域
の救援活動、復旧活動の支援を目的として、自動車会社3社と電機会社1社が集めて
いる交通情報を集約し、被災地内外の通行実績情報を作成し、インターネット上に公
開した。これらは物流事業者など関係者に活用された。この教訓から得られたITS
分野における課題等を踏まえた地域での、都市交通・高度物流インフラの整備の取り
組みが必要である。
(特定非営利活動法人 ITS Japan 講演資料から)
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②九州地域での取り組み(事例紹介)
九州では、国、地方自治体、産業界でITSを活用し、活力ある地域づくり、生活
利便性向上の観点から公共交通を活用した取り組みが加速している。
国、自治体等が主体となったものでは、ITSによる観光案内と新エネルギーシス
テムのモデル実証等のプロジェクトが進行しており、パークアンドライドの普及によ
る活力ある魅力的な街作りに貢献する交通社会の実現、ITSスポットを活用した物
流効率化の実証実験が行われた。
また、地域の産業界によるITSを社会基盤とした、九州における実用展開の検討
や、人材育成の取り組みが行われている。
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<プロジェクト、実証実験>
○長崎EV&ITSプロジェクト
長崎EV&ITSとは、長崎EV&ITSコンソーシアム(プロジェクト推進のため、
産学官で組織した協議会)の議論を踏まえた「未来型ドライブ観光システムの構築」
や「エネルギーシステムとEVに係るモデル実証」などの実施、EVを核にして情報
通信ネットワーク、エネルギーネットワークがつながった「EVスマート社会」や「長
崎発世界標準」及び「長崎発地域型ビジネスモデル」を創造するプロジェクトである。
(長崎県HPから)
観光情報など多様なデータを統合的に収集・配信できる統合観光情報プラットホー
ムや、EVを情報端末として、観光スポットや充電案内、公共交通機関との連動など
のサービスを受けられる未来型ドライブ観光システムの構築を目指している。
(長崎県ホームページから)
53
(長崎県ホームページから)
54
(長崎県ホームページから)
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○国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所、福岡市「子育てと働く女性を支援する
ITSを活用した橋本パーク&ライド社会実験」
2010年に福岡都心部への交通渋滞の低減や地下鉄の利用促進、ゆとりある地域
づくり、子育てをしながら働く女性への支援策として、ETC、携帯電話、交通系I
Cカードによる交通支援サービス、買物・クリーニング支援サービス、保育支援サー
ビス実験が行われた。
実証実験の結果、ETCパーキング、買物支援サービス、クリーニング支援サービ
スは利用者に高く評価された。
(「社会実験結果(概要版)」ITS を活用したパーク&ライド社会実験実行委員会から)
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○「物流事業を支援するITSスポットサービス実証実験」
国土交通省は「博多アイランドシティ次世代物流研究会」と連携し、「ITSスポ
ット」を活用した初の物流効率化の実証実験を2012年2月から開始した。
内容は、九州地方の「ITSスポット」で物流事業者の実験車両のプローブ情報(走
行位置などの情報)を収集し、このデータをリアルタイムで物流研究会へ情報提供し
た。
物流研究会では、物流車両の到着時刻予測を納品先に事前に知らせるなどにより、
配送荷物の効率化の可能性などを、道路管理者は同じプローブ情報を用いて交通分析
への活用を検討する。
(国土交通省ホームページから)
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<人材育成>
○北九州学術研究都市におけるカーエレクトロニクス人材育成
北九州学術研究都市連携大学院カーエレクトロニクスコースでは、各大学院(北九州
市立大学・九州工業大学・早稲田大学)が各々の強みを結集し連携大学院を構築して、
自動車業界、北九州市、FAISを巻き込んだ教育プログラムを開発、実施すること
により、「カーエレクトロニクス」の領域において、広い視野と見識を備え、次代を
担うリーダーとしての実践力を有する高度専門人材の育成に取り組んでいる。コース
履修生は、自動車関連技術の一翼を担う人材として、大手自動車・電装品・半導体メ
ーカー等に就職している。
また、2013年度からは自動車の知能化・ロボット技術を担う高度専門人材育成
のための「インテリジェントカー・ロボティクスコース」を開講予定。
((財)北九州産業学術推進機構
ら)
カーエレクトロニクスセンター
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ホームページか
○九州大学大学院統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻
オートモーティブサイエンス専攻は、世界的にも例を見ない総合的で体系化された
わが国に初の本格的な自動車大学院である。
情報制御学分野では、車載センサや制御システムの開発、組込みハードウェアやソ
フトウェアの開発、ITS など先端的な自動車情報計測制御の研究と開発を行っている。
(九州大学大学院オートモーティブサイエンス専攻
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講演資料から)
(5)ITSの未来像
ITSは新たな産業創出するものとして、さらには高度情報通信社会を先導するも
のとして大いに期待されている。現在、エネルギー問題や環境問題、そして災害に強
い社会を実現する取組として、スマートシティやスマートコミュニティ構想の実証実
験が行われているが、その中で、次世代自動車やITSの存在は不可欠とされており、
特にEVやPHVは移動手段としてだけでなく、平時・緊急時の家庭用の蓄電池とし
て活用でき、社会のインフラの一つとなりつつある。情報の高度化等を想定した新た
な交通システム及び社会システムについて、九州地域においては以下の取組がある。
また、クルマを動くセンサーとして位置、車速、ブレーキ、温度センサー、ワイパ
ー動作等のプローブ情報を収集し、これらを集約・加工して渋滞緩和、安全性の向上、
環境の改善等へ利用が進められている。近年、これら情報をビッグデータとして活用
し、従来にない新しい価値を生みだし、新たなサービスの提供、ビジネスの創造や社
会課題の解決につなげる取り組みが行われている。
例えばスマートフォンなどのモバイル端末を利用してクルマとつないでネットワ
ーク化し、新しいシステムを作る動きもみられる。
(ゼンリン講演資料)
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(ゼンリン講演資料)
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①スマートコミュニティの中でのITS
エネルギーの消費が増え続ける現代において、これからは、太陽光や風力など再生
可能エネルギーを最大限活用し、一方で、エネルギーの消費を最小限に抑えていく社
会が必要である。
大量の再生可能エネルギーを安定的に受け入れるとともに、節電やピークカットを
行うためには、ITと蓄電池を用いて、需給両面の最適制御を行うスマートグリッド
技術などを活用し、家庭、産業、交通などの分野でエネルギーの効率的な活用を行う
社会システムの形成が必要である。
それを実現するのが家庭やビル、交通システムを IT ネットワークでつなげ、地域で
エネルギーを有効活用する次世代の社会システムであるスマートコミュニティであ
る。
スマートコミュニティでは変化する電力の需要と供給をITによってコントロー
ルし、無駄なく安定した電力の活用を可能にする。
例えば太陽光発電を利用したり、電気自動車の蓄電池から電気を取り出すことで、
家庭内で必要な電気をやりくりし、電気の使用量抑制に協力した家庭は、コミュニテ
ィ全体の省エネやCO2削減に貢献したことで、電気代の割引を受けることができる。
スマートコミュニティでは交通システムも双方向化する。例えばBRT(Bus Rapid
Transit:バスによるラピッド・ トランジット(=都市大量旅客高速輸送))は人の
ニーズに合わせて、柔軟に運行する。
そして、「ITS」が発信する交通情報でクルマが最適なルートを選び、渋滞も緩
和される。また、自動運転機能により安全で、究極のエコドライブを実現する。
さらに、クルマは電気の貯蔵庫としても機能する。例えばカーシェアリングサ-ビ
スでは、当面使わないクルマから施設や地域に電気が供給される。
クルマがエネルギーのインフラとなる「V2G」(Vehicle to Grid:プラグインハ
イブリッド自動車や電気自動車(EV)から生まれた電力を電力網(スマートグリッド)に
送る技術)が実現する。
以上のようにITSの究極の姿がスマートコミュニティであるとも言える。
62
(経済産業省ホームページ)
このようなスマートコミュニティの構築を目指し、国内4地域(横浜市、豊田市、
けいはんな学研都市(京都府)、北九州市)において、2011年度から2014年度
までの期間、住民の参画を得て、関連技術の実証、ビジネスモデルの確立の取り組み
が行われている。
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○北九州市スマートコミュニティ創造事業
スマートグリッドを北九州市の経済成長を担う産業として育成し、さらに、本事業
を通じて、新しい交通システムの構築、ライフスタイルの変革など市民生活の向上に
つながる新しいまちづくりを進めている。
クルマに関する取り組みとしては、以下の二つがある。
・先進的なエネルギー制御や、電気自動車(EV)、蓄電池などを組み合わせてエネル
ギー流通の全体最適を図る「地域節電所」を整備
・EV などの大量導入を可能にする充電設備の整備と並行し、自転車や公共交通機関
が連携する次世代交通システムを構築
将来は本事業で得られた成果を、
「アジア低炭素化センター」を核に官民が連携し、
都市環境インフラに係る技術やノウハウ等を組み合わせパッケージ化し、アジア地域
を中心にビジネスベースで移転する構想がある。
これらの取り組みはアジア戦略において、都市交通等日本が強みを持つインフラ整
備をパッケージでアジア各国に展開・浸透させる重要な国家プロジェクトに寄与する
ものである。
ITS技術を移転することは、日本の高度成長期と同じような渋滞、事故、環境問
題といった交通に起因する問題を抱えている国々の課題解決に役立ち、地球規模での
温暖化・エネルギー問題の解決にもつながる。
(北九州市資料から)
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②新しい価値の創出
○QPITS(九州ITS利活用研究会)
ITS を「人の動き」を支援するシステムととらえ、事業者の枠を超え共有可能な地
域内の公共交通機関からの ITS 情報、地域の観光、商業、防災などの情報(コンテン
ツ)を加え、これらを相互に利活用することにより、地域経済の発展に寄与しながら、
「すべての人にやさしく、災害時にも強い」スマート社会をつくり、地域全体の経済
活性化を目指す取り組みが、QPITS(九州ITS利活用研究会)により行われている。
(QUEST資料)
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○IT融合による新社会システムの実装
平成24年度IT融合による新社会システム実証プロジェクト(新エネルギー・産
業技術総合開発機構委託事業)に採択された「移動体データ銀行で実現する次世代都
市交通情報共通基盤アジアモデル構築」事業が、西鉄情報システム(株)、九州大学
他によるコンソーシアムで実施されている。
本事業は、「都市交通データを市場流通させるために次世代都市交通情報共通基盤
(類似業態:決済ネットワーク、業界VAN、クレジット信用照会会社、報道共同通
信他)を構築し、この価値化されたデータを利活用した交通利用生活者支援サービス
を創出するという内容である。
具体的には、これまで都市交通事業者などが取り扱ってきた運行情報、利用者の通
行履歴や購買 POS 情報などのトランザクションデータ(ビッグデータ)を日常業務
処理だけに使って廃棄してきたことに着眼し、これらデータを価値顕在化(power of
data)させ、利便性、安全性、生活サービスなどにおいて初めて収益化させ、新事業
会社を設立し、新たな産業創出を目指すものである。
プロジェクト概要
・・・情報は集まる程価値が出る・・・
GPS情報
自動車制御(CAN)情報
交通ICカード
改札・ショッピング
電車
バス
運行情報・
運行情報・ロケーション情報
ロケーション情報
満空情報・CAN情報
名古屋大学
九州大学
交通情報
共通基盤
Wifi・ETCアンテナ
場所情報
スマートフォン
位置情報(GPS)
移動体データ銀行
ビッグデータ
活用技術
のりものインフォコム
交通ライフログレポート
ドライバーズカルテ
(a)マルチモーダル対応を可能と
する乗換案内の研究開発
(a)交通データ連動コンテンツ配信
システムの研究開発
(a)バス等の車両情報を収集する
車載システムの研究開発
(b)多言語化による外国人旅行者
への情報提供サービスの研究開
発
(b)最適推薦情報(レコメンド)エン
ジンの研究開発
(b)情報の蓄積と「移動体データ銀
行」への提供形態の検討と
開発
(c)路線バスの満空情報を検出す
る各種センサー情報処理と認識
度の研究開発
西鉄情報システム
(c)事業者向けレポートシステムの
研究開発
メイテツコム
(西鉄情報システム(株)講演資料)
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(c)集積情報から運行状況を推定
する為の処理・解析技術の
検討
IIC