【十字靭帯(ACL・PCL)】 《半月板の血管分布と神経支配》 《膝関節の運動

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【十字靭帯(ACL・PCL)】
♪
《半月板の血管分布と神経支配》
《膝関節の運動に関与する筋》:屈曲伸展,内旋外旋
・伸展:大腿四頭筋
・屈曲:ハムストリング(大腿二頭筋,半腱様筋,半膜様筋)
縫工筋,薄筋,腓腹筋,膝窩筋,足底筋
・内旋:鵞足を構成する筋,半膜様筋,膝窩筋
・外旋:大腿二頭筋
左アヒル,右ガチョウ
《鵞足を構成する筋》
・縫工筋,薄筋,半腱様筋
♪ 軟部組織損傷 サブノート ♪
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【膝関節〜下腿部
軟部組織損傷】
p395
≪1.小児の膝変形≫
a) 反張膝:伸展可動域が 20°を超えたもの
b) 内反膝:O 脚
c) 外反膝:X 脚
d) ブラント病
整形 p127
・脛骨近位骨端部の後内側
の発育障害
・下腿の内反・内旋変形
O脚
→
・幼児型(1~3 歳):両側性が多い *生理的 O 脚との鑑別が困難 MDA を計測
・年長児型(8~14 歳):片側性が多い
骨端軟骨の成長障害
e) 大腿四頭筋拘縮症:医原性の 80~90%は直筋型
→
≪2.膝の離断性骨軟骨炎≫
・大腿骨内側顆
の発生が多い(60~70%)
・嵌頓症状(ロッキング)
整形 p107
≪3.オスグッド・シュラッター病≫
・10 歳代前半のスポーツ活動をしている男児
・脛骨粗面部の疼痛と膨隆
裂離損傷
・大腿四頭筋による牽引力
・安静時痛はほとんどない
・膝立ちによる圧迫痛
・治療:膝バンド(シュラッテル・バンド)
・予後良好
*膨隆は残ることもある
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尻上がり現象
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≪4.ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)≫
整形 p239
・膝伸展機構の使いすぎ(オーバーユース):跳躍やキック
・膝蓋骨下極部
の運動痛,圧痛
*膝蓋骨上極や脛骨付着部に圧痛があることも
・尻上がり現象
・治療:運動後のアイシング,ストレッチング,膝バンドなど
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≪5.半月板損傷≫
『構
造』
・血管分布:半月板辺縁(外)1/3 のみ *それ以外は関節液から栄養を得ている
・神経分布:半月板の外 1/3・中 1/3
*前角および後角にはパチニ小体やルフィニ小体やゴルジ小体などの固有受容器がみられる
《膝内部の情報伝達》
辺縁部の剥離であれば修復術,辺縁部のみが損傷することが少ないため(部分)切除術が多い
『特
徴』
・急性の場合:内側半月の損傷が多いただし円板状半月を加えると外側半月の損傷が多い
*外側半月は円板状半月や繰り返しのストレスにより損傷しやすい
・内側半月は他の組織との結合が強いため,損傷を受けやすい.特に後節
『発生機序』・外側半月は可動性が大きいため,繰り返しのストレスにより,前節・中節の損傷を受けやすい
・急性:膝屈伸時に回旋力が加わり損傷
*内側側副靭帯や前十字靭帯損傷に合併することもある
*実技の教科書では下腿の外旋で内側半月・内旋で外側半月を損傷する
『症
状』
・関節裂隙の運動痛や圧痛
・引っかかり感,嵌頓症状,クリック,膝くずれ
・関節水腫
血腫は辺縁部の損傷時や他の組織の損傷を合併したさいにみられる
・陳旧例では…大腿四頭筋萎縮
『検査法』
・マックマレーテスト・圧迫アプレイテスト
ステインマンテスト・ワトソンジョーンズテスト
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靭帯損傷の分類 p53
≪6.膝の側副靭帯損傷≫
a)内側側副靭帯損傷
*膝の靭帯損傷で最も多い
『発生機序』
・外反力
(足が地面に固定されていない状態で受傷することが多い)
*インサイドキックで蹴ろうとして,相手がそのボールを蹴ったとき
『症
状』
・新鮮例:同部位の圧痛,ADL に支障をきたすほどの疼痛
腫脹,関節可動域制限,断裂音(pop 音)
・陳旧例:膝くずれなどの不安定感
『理学所見のポイント』
1.関節不安定性
2.関節血症の有無
3.圧痛の部位
『検査法』
:完全伸展位と屈曲 30°で調べる
・側方動揺テスト
*伸展位でも動揺性が認められれば前十字靭帯損傷を合併
・牽引アプレイテスト
・グラビティテスト
b)外側側副靭帯損傷
・単独損傷はまれ
*後外側構成体:外側側副靭帯・弓状靱帯・膝窩筋腱により構成
*不幸の三徴候:内側側副靭帯,内側半月,前十字靭帯の損傷
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関節血症
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c)前十字靭帯損傷
『発生機序』
・接触型:外反・回旋力による
以前は外旋だが、今は内旋
*他の靭帯損傷(内側側副靭帯)を伴うことが多い
・非接触型:ジャンプの着地や急停止
*四頭筋の収縮力により脛骨が前面へ引き出される
♪
『症
状』
・急性:膝がずれた感覚,断裂音(pop 音),関節血腫(受傷後数時間後)
・陳旧例:膝くずれ
『検査法』
・前方引き出しテスト
・ラックマンテスト
・N-テスト
・Lateral Pivot Shift Test
エクステンションラグ(extension lag):膝関節自動伸展の可動域が他動的伸展の可動域より小さい
もの.膝伸展機構が問題だが不確か(内側広筋の筋力低下といわれている)
d)後十字靭帯損傷
『発生機序』
・膝関節 90°屈曲位で脛骨前面を強打
*前十字靭帯損傷に比べ,機能障害は少ない
『検査法』
グラビティテスト(重力でどうなるか)
・後方押し込みテスト
・後方落ち込み徴候(サギングサイン)
*靱帯の修復について*
・炎症期:血腫形成.大食細胞が損傷された膠原線維を貪食
炎症細胞が肉芽組織を形成,新しい膠原線維を形成
線維芽細胞が無秩序に配列して細胞外基質を産生
・修復期:膠原線維が平行に配列しはじめる.徐々に強度を増し線維束を形成
線維芽細胞や炎症細胞は減少
・再造形期:線維芽細胞や膠原線維の配列が規則正しく,正常靱帯様組織になる.
しかし 1 年経過しても,組織学的にも力学的にも正常靱帯と同様にはならない.
*側副靭帯では修復力は旺盛だが,十字靭帯では修復能が低い
理由) 関節内靱帯のため血腫が関節包に拡がる
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≪7.腸脛靭帯炎≫
・腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間の摩擦により炎症が生じる
・オーバーユース:膝の屈伸,ランニング時の下腿の内旋
・膝外側部
の圧痛,運動痛
・検査法:グラスピングテスト
ober test(オベールテスト・オバーテスト)
*大腿骨外顆近位で腸脛靭帯を圧迫しながら膝を屈伸すると疼痛を生じる
腸脛靭帯:腸骨と脛骨をつなぐ靭帯.大腿筋膜張筋(と大殿筋)により大腿筋膜が肥厚して形成される.
脛骨近位外側のガーディ結節に至る
≪8.膝蓋軟骨軟化症≫
・膝蓋骨の関節軟骨の軟化,膨化,膨隆,亀裂および細線維化
・15~30 歳に好発
・膝前方の疼痛
・グライディングテスト
≪9.滑膜ヒダ障害(タナ障害
:p400 参照
)≫
・膝蓋内側滑膜ヒダが膝関節の屈伸時に内側膝蓋大腿関節内にはさまれる
・若い女性に多い
*膝蓋内側滑膜ヒダ:健常膝の 50%に認められる
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≪10.膝蓋大腿関節症≫
・大腿脛骨関節には病変はなく,膝蓋大腿関節に限局した関節症
・一次性と二次性のものがある
・膝蓋骨を大腿骨に圧迫しながら膝を屈伸させると,ざらざらした感じを
(グライディングテストのこと?)
触知し疼痛が誘発される
≪11.鵞足包炎(鵞足炎)≫
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鵞
足:縫工筋・薄筋・半腱様筋
*脛骨粗面の内側
≪12.腓腹筋半膜様筋包(ベーカー嚢腫・膝窩嚢腫)≫
・50 歳以降の女性に多い
・膝窩部のやや内側
に波動性を有する腫瘤 (鶏卵大)
・圧痛や熱感はない
・しばしば関節腔と交通している
・変形性膝関節症や関節リウマチに合併して生じるものが多い
≪13.変形性膝関節症≫
・女性に多い
・多くは…内反変形(O 脚)
・動作開始時痛.降りるときの疼痛
・寒冷,湿潤な時期に症状悪化
・治療:減量,四頭筋筋力増強訓練
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≪14.コンパートメント症候群≫:筋区画内圧の上昇により起こる障害
p402
【下腿の筋区画(コンパートメント)】
・前方区画:前脛骨筋,長母趾伸筋,長趾伸筋
深腓骨神経,前脛骨動脈・静脈
・外側区画:長腓骨筋,短腓骨筋
浅腓骨神経
・後方浅区画:腓腹筋,ヒラメ筋,足底筋
腓腹神経,伏在神経,大・小伏在静脈
・後方深区画:後脛骨筋,長母趾屈筋,長趾屈筋
脛骨神経,後脛骨動脈・静脈,腓骨動脈
『好発部位』:前方および外側筋区画
*前脛骨筋症候群,前脛骨区画症候群
『急性型』
・原因:骨折,打撲,筋挫傷,ギプス固定
・症状:著しい疼痛,筋伸展時痛,腫脹,感覚障害,
動脈本幹の拍動(足背動脈,後脛骨動脈)は触知可能,水疱など
筋伸展時痛:筋膜も伸ばされて内圧が上昇する?
*不可逆的な進行をたどる
*5P 徴候 p84:阻血症状…疼痛,蒼白,拍動消失,感覚異常,麻痺
動脈本幹の血圧 100mmHg,毛細血管(細動脈)の血圧 20〜30mmHg
・処置:観血療法として筋膜切開
*圧迫・挙上の処置は禁止
『慢性型』
・ほとんどがランニングによる
・運動時の疼痛,圧痛,下腿の緊張感
・治療はスポーツ中止.改善されなければ筋膜切開
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≪15.アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎≫
p403
*アキレス腱には腱鞘は無く,パラテノン(腱傍組織)が周囲を囲む
パラテノン(腱傍組織):脂肪を多く含む疎性結合組織
p74
・発生機序:踵骨軸の外反,外反扁平足,下腿三頭筋伸張性の低下
p410
*アキレス腱滑液包炎
・靴との関連性が強い
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・アキレス腱付着部の圧痛
・歩行時痛
≪16.アキレス腱断裂≫
パラテノンは断裂しない
『発生機序・特徴』
・跳躍動作の着地時,急なダッシュ
*テニス,バドミントン,バレーボール,剣道で全体の 60%
・中年以降
腱の変性(肥厚)が原因
『症
剣道は左足が多い
状』
・断裂音,痛みは「蹴られた,ボールをぶつけられた」と表現する
・疼痛 … 軽微
・歩行 … 困難だが可能
・つま先立ち … 不可
・断裂部の陥凹
急性期では腫脹は少ない.だんだん腫れてくる
・トンプソンテスト陽性
・完全断裂がほとんど
*下腿三頭筋肉離れ*・腓腹筋内側頭の筋腱移行部に多い
『断裂部位』
・アキレス腱狭窄部(踵骨付着部から 2~4cm 中枢部)
次いで,筋腱移行部
『固
定』最近では早期から装具をつけて運動療法 保存の方が再断裂しやすいといわれている
・初期 … 足関節最大屈曲位
*徐々に下垂位→中間位へと移行
観血療法も行なわれるが,治療時期はそんなに変わらない
固定期間 4〜6 週間
スポーツ復帰は 6〜9 ヶ月
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≪17.腓骨筋腱脱臼≫
・長腓骨筋腱
の単独脱臼が多い
・スキー外傷としての報告が多い
・外反背屈
強制により脱臼
・外果腱溝部の形成不全,上筋支帯の損傷・欠損
長腓骨筋:腓骨頭から第 1・2 中足骨底と内側楔状骨
短腓骨筋:腓骨体下部外側面から第 5 中足骨底
≪18.過労性脛部痛(シンスプリント)≫
『原因・症状』
底背屈により脛骨下 1/3 後内側に圧迫力と張力が交互に働く
・足関節の反復性底背屈(ランニングなど)による
・疼痛:脛骨内側中下 1/3 (ヒラメ筋の腱膜の付着部)
・ショック吸収能の低下,足部過回内,扁平足,膝外反
疼痛は骨に沿って広い範囲(約 10cm) つま先立ちで症状の再現→ヒラメ筋腱膜が疑われる
『所
見』
・X 線:骨皮質の肥厚・膨隆像 (約 60%)
・骨シンチグラム:50%陽性
*骨膜炎でも疲労骨折でもない*
骨になんらかの炎症を起こしていると考えたほうが
理解しやすい.コンパートメントとは別と考えたほうがよい
『治
療』
・安静,アイシング,筋力強化,ストレッチ,
アーチの補正,よい靴の使用
骨折では限局性圧痛,腫脹もみられる
扁平足の傾向の人に多い
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など
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【下肢の末梢神経障害】
≪1.上殿神経麻痺≫
・中・小殿筋
の麻痺
・トレンデレンブルグ徴候
≪2.大腿神経麻痺≫
♪
・大腿四頭筋
の麻痺
・膝蓋腱反射の減弱,消失
≪3.深腓骨神経麻痺≫
・下腿伸筋群
の麻痺
・尖足,鶏歩
≪4.浅腓骨神経麻痺≫
・腓骨筋
群の麻痺
・内反足
≪5.脛骨神経麻痺≫
・下腿屈筋群
の麻痺
・外反足,鉤足(こうそく)
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【足
関
節】
《構造と運動》
①距腿関節:脛骨の下関節面
内果関節面
〜 距骨上面(距骨滑車)
腓骨の外果関節面
*運動:底・背屈 らせん関節(蝶番関節)
②距骨下関節:距骨下面 〜 踵骨上前面
*運動:内・外転,内・外がえし
顆状関節
関節) : 1.踵立方関節(外側)
③横足根関節(ショパール
2.距舟関節(内側)
*運動:底・背屈,内・外転,内・外がえし
④足根中足関節(リスフラン
関節):遠位足根骨 〜 中足骨
*運動:底・背屈,内・外転
(楔状骨・立方骨)
他…中足間関節,中足指節関節,足の指節間関節
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