国際交流と宗教 - 鳥取大学地域学部

〔班員〕青野
湧太
安達
朋世
足立
萌美
岡本
敬之
岸下
真依子
永見
嘉章
豊田
成美
平尾
萌子
洪
素正
丸岡
卓矢
山根
佑美
山本
麻衣里
吉田
礼奈
〔指導員〕キップ・A・ケイツ
北川
扶生子
27
2012年度
地域文化調査成果報告書
【はじめに】
3.鳥取県国際交流財団
担当:豊田成美
私達は、実際に鳥取県国際交流財団を訪問し、鳥取県
の国際交流の現状について詳しくお話を伺った。在日外
私達国際交流班は、テーマ決定に向けて、以下の3つ
国人の状況などを聞き、理解を深めた。その中で宗教に
の活動を行いました。
関するデータについて伺ったところ、宗教はやはり日本
人にとって触れがたい問題であり、どこまで立ち入って
1.国際交流の現状について
いいか分からない、などの理由から宗教に関するデータ
グループに別れ、それぞれ、日本、鳥取県、鳥取市、
はほとんど無い、ということが分かった。財団訪問の後、
鳥取大学について、外国人登録者数などについて調査し、
やはり鳥取県で様々な宗教を持つ外国人の方々はどのよ
発表した。
うに生活しておられるのか、食事のことなどで日常生活
鳥取県の外国人登録者数では、東京都の約40万人、大
に支障はでないのだろうか、など多くの疑問が出てきた。
阪府、愛知県の約20万人に比べて約4千人という、全国
○鳥取国際交流財団にて
でも三番目に外国人の住んでいる人数が少ない県である、
ということが分かった。
また、鳥取県の国別外国人登録者数では、中国人、韓
国人がその半分以上を占めており、鳥取県内の外国人は、
69%になるということが分かった。(データ
県人口の0.
H22年)
2.BOOK REPORT
メンバー全員が国際交流に関する、様々な本を読み、
発表した。そのなかで、様々な背景を持つ人達と国際交
流する時に宗教による食べ物の制限や結婚相手の制限な
ど、国際交流や国際理解を深めるためには、多くの宗教
4.テーマ決定
問題があるということが分かった。これらの問題につい
どこまで立ち入って聞いてもいいのか、調べられるの
てディスカッションするうちに、鳥取県ではどのように
か、など多くの不安は残ったが、今年度の国際交流班の
しているのだろうか、という疑問を持った。
テーマは国際交流と宗教について、と決めた。
○BOOK REPORTで使用した様々な本
【世界の宗教】
担当:山根佑美
まず、キリスト教・モルモン教・ユダヤ教・イスラム
教・ヒンドゥー教・仏教の基本情報について調べた。そ
の中から、生活において重要だと感じる食のタブーと、
世界と日本の各宗教信仰者の割合について取り上げ発表
し、その他の基本情報は、レジュメにまとめ当日配布し
『よく分かる世界の宗教
キリスト教』C・ワトソン
た。
作、岡田好恵訳、岩崎書店、1994年
『最新版宗教世界地図』立山良司、新潮社、2002年
28
国際交流と宗教
[食におけるタブー]
[世界の信仰者割合]
キリスト教は例外的に食にタブーを設定しない宗教だ
が、四旬節(イースター前の40日間)の初日と最終日に
二種類の食事制限を行う。一つめは大斎といい、18∼60
歳以上の健康な信者が朝食と夕食の量を抑える。二つめ
は小斎といい、14歳以上の健康な信者が肉食を避ける。
モルモン教はキリスト教から派生した新宗教だが、キ
リスト教とは違いタバコ・酒・コーヒーなどのあらゆる
刺激物の摂取を禁止するなどの厳格な食事制限がある。
ユダヤ教にはカシュルートという厳格な食物規定があ
る。牛肉・鶏肉・ヒレやウロコのある魚は食べることが
できるが、豚肉・タコ・イカ・エビなどを禁止している。
イスラム教では、豚・アルコール・貝類・漬物などの
発酵食品を禁止している。
ヒンドゥー教では、牛・豚・魚介類全般・生ものなど
[日本の信仰者割合]
を食べることができない。牛を食べることはできないが
乳製品は食べることができる。
仏教の場合は、宗派や国によって大きく異なるが、一
部の僧侶と厳格な信者の場合は肉全般と五葷(ニンニ
ク・ラッキョウ・ニラ・タマネギ・アサツキ)を禁止す
ることがある。五葷を禁止するのは、匂いが強く修行の
妨げになるからだと言われている。
[各宗教の分布図]
【ゲストスピーカー①(イスラム教・モルモン教)
】
担当:永見嘉章
○Anis Mohamed(アニス)さん
青:仏教
緑:キリスト教
ピンク:ヒンドゥー教
黄:イスラム教
アニスさんはエジプトからの留学生で、厳格なイスラ
赤:ユダヤ教
ム教徒の方である。私たちはアニスさんに、イスラム教
の基本的な部分をはじめとして、様々なことをお話して
いただいた。普段あまり接することのないイスラム教に
ついて知ることができ、大変良い勉強となった。特に印
象に残ったことは、アニスさんが宗教を特別なものとし
て捉え、自分の生活の一部となっている、ということで
ある。日本人の宗教に対する考えとは大きな差があるよ
29
2012年度
地域文化調査成果報告書
するときには、IPhoneのアプリを使用して行うのだとい
う。リサさんが鳥取での生活に困っているのではないか
と思っていたが、きちんと自分たちで工夫をして生活し
ておられる様子がうかがえた。
○ハウスさん・マンローさん
ハウスさん・マンローさんはお二人ともモルモン教の
宣教師の方で、お告げによって日本にやってきて布教を
行っているのだという。お二人は新興宗教のモルモン教
について様々なことを私たちにお話ししてくださった。
アニスさん
モルモン教の教義など基本的な部分を分かりやすく説明
してくださった。近年モルモン教はメディアなどで取り
うに感じた。さらに後日、アニスさんに再びお越しいた
上げられているが、普段はあまり聞くことのないモルモ
だき、鳥取大学内にあるイスラム教徒の方のためのお祈
ン教の信者の方のお話を聞くことで、宗教に対する視野
りの場に案内してもらい、実際にアニスさんにお祈りを
がさらに広がった。また鳥取の湖山にもモルモン教の教
するところを見せていただくことができた。実際にお祈
会があると知り、急に身近なものに感じられた。
りの場面を目にすることで、イスラム教徒の方の強い思
いを感じることができた。
○Liyana Nurlisa(リサさん)
リサさんはマレーシアからの留学生で、リサさんもア
ニスさん同様、真面目にイスラム教を信仰しておられる
方である。リサさんには、鳥取での生活と宗教の関わり
合いについて様々なことをお話していただいた。私たち
が気になっていた食の問題についてもリサさんはお話し
てくださり、特にイスラム教の断食については、私たち
が抱いていたイメージとは大きく異なっているというこ
ハウスさん
とを実感した。断食はイスラム教徒の方にとってのお祭
マンローさん
りであるのだという。また興味深かったのは、お祈りを
○まとめ
ゲストスピーカーの方たちのお話を聞く中で共通して
感じたことは、みなさんそれぞれが宗教に従って生活を
送っており、私たち日本人との違いがある、ということ
である。鳥取での生活についてもそれぞれが工夫をして
生活しておられ、非常に感心させられた。また、直にお
話を聞くことでそれぞれの宗教に対する意識も大きく変
わったように思う。その後の調査において大変役立った。
ゲストスピーカーの方々に改めてお礼を申し上げたい。
リサさん
30
国際交流と宗教
○Kuy Tola(クイ・トラ)さん
【ゲストスピーカー②(ヒンドゥー教・仏教)
】
担当:安達朋世
○Ajoy Kumar Dutta(アジョイ)さん
仏教のゲストスピーカーとして、カンボジアからの留
学生のクイ・トラさんからお聞きした。
宗教的な行事については、クイ・トラさんはカンボジ
ヒンドゥー教のゲストスピーカーとして、バングラデ
アでは、週に一度、家族とお寺へ行き、僧侶から説教を
シュからの留学生のアジョイさんからお話をお聞きした。
受け、瞑想するという決まった行いがあり、毎週家族と
カースト制度について、ヒンドゥー教には、カースト
行っていたそうだ。
制度と呼ばれる身分制度があり、自分の階級により職業
次に、僧侶が禁止されていることについては、僧侶は
も定められ、また、同じ身分同士の結婚のみ、許される。
お酒を飲んではいけず、また、女性に触れてはいけない
また、自分の名前の最後に階級の名前がつくため、自分
そうだ。
の名前を言う時に最後の名前を隠す人も多いそうだ。
また、僧侶について、カンボジアでは、僧侶は神のよ
次に、鳥取での食事について、ヒンドゥー教では、牛
うに尊敬され、王様でも、僧侶に会ったときは頭を下げ
を神様、または母親として考えているため、牛を食べな
るそうだ。僧侶には厳しい戒律があるが、一般の人達に
い。そのため、アジョイさんは鳥取ではレストランへは
はこのような戒律はない。
行かず、東京にある専門の店でスパイスなどを送っても
また、他の宗教について、違う宗教を信仰しても構わ
らい、生活しているそうだ。
ず、他の宗教の神に対しても尊敬しているそうだ。
ま た、違 う 宗 教 信 仰 者 と の 結 婚 に つ い て は、ヒ ン
そして、違う宗教信仰者との結婚については、結婚が
ドゥー教では認められない。しかし、アジョイさんは仏
でき、その場合はほとんどが仏教信仰者の方が改宗する
教徒の奥さんと結婚し、アジョイさんをはじめ、若い世
そうだ。
代の人々は、このような戒律に反抗しているそうだ。
クイ・トラさんのお話を聞き、カンボジアでは、僧侶
そして、日本への留学について、アジョイさんは信仰
は厳しい生活を強いられるが、クイ・トラさんのように、
心の強い信仰者ではないため、宗教面での不安はなかっ
普通の仏教徒は仏教に固執せず、宗教に対する考え方が
たそうだ。
自由であると分かった。クイ・トラさんの出身である、
アジョイさんのお話を聞き、ア ジ ョ イ さ ん は ヒ ン
カンボジアでは、仏教や僧侶に対する考え方など、同じ
ドゥー教を信仰しているが、カースト制度に反抗し、違
仏教国である日本と大きく異なり、その違いが興味深
う宗教信仰者と結婚するなど、宗教に関し、広い考えを
かった。
持っていることが分かった。
31
2012年度
【フィールドワーク
地域文化調査成果報告書
鳥取キリスト教教会】
担当:丸岡卓矢
私たちは、ゲストスピーカーのみなさんのお話を参考
に、日本に住む外国人の方が利用されている宗教的な施
設などを実際に訪問した。
まずは、鳥取市内にある、キリスト教の教会へと足を
運んだ。
↑『愛真幼稚園百年史』
(大前幸正 平成19年 学校法人
愛真幼稚園発行)より、第3回卒園式。明治42年撮影。
れキリシタンがいた」など、興味深いお話を聞かせてい
ただいた。
プロテスタントである鳥取教会は、1890年に創立され、
1915年に現在の場所に移転した。幼稚園などの社会活動
も行ってきた。
国際交流についてお聞きしたところ、現在の信者は日
ご覧の地図内には、2つのキリスト教会がある。一つ
は北側に建っているカトリックの『鳥取カトリック教会』
本人がほとんどで、国際交流活動は、これと言っておこ
で、もう一つは南側に建っているプロテスタントの『鳥
なっていない、との事だった。
ただ、創立に当たり、アメリカ・ボストンのエリオッ
取教会』であれる。
ト教会から当時のお金で数千ドルという多額の寄付が贈
どちらも若桜街道沿いの、鳥取県庁の近くに立地して
られたことや、教会の運営に深くかかわり、尊敬されて
いる。
いた、ミス・コーと言う名の、外国人女性のエピソード
など、多くの興味深いお話を聞かせていただいた。
今回調べた結果、キリスト教の教会や仏教のお寺など
の他に他宗教の施設を鳥取県内に発見することができな
かった。しかし、調査の中で鳥取市内におられるイスラ
ム教信者のかたがお祈りをするのに、鳥取大学の地域学
部棟内の一室が使われていることを知った。ゲストス
ピーカーでもお世話になったアニスさんとお友達の御厚
意で実際にその部屋にいれていただき、お祈りの手順な
ども教えてもらいながら見せていただいた。この部屋に
は大学によってお祈り前の体を清める行程に必要な専用
カトリック教会は、約120年前に、山陰地方で最初の
の洗い場が部屋に作られていて、信者の方にとってお祈
教会として設立された。ベルギー人修道士の方が設立に
りのしやすい環境が整っているということだった。モス
関わっていらっしゃるとのことだ。
ク等がない鳥取に必要とされている場所がこのような身
国際交流活動について伺ったところ、現在はリーマン
近にあり、それを全く知らなかったことに驚いた。
ショックによる雇用減などの経済的事情で減っているそ
うだが、以前は出稼ぎにきたフィリピン人の方が多く教
会にいらっしゃったそうだ。他にも「鳥取藩の武士に隠
32
国際交流と宗教
【フィールドトリップ
鳥取大学祈りの場・神戸訪問】
となのではないかと感じた。
担当:吉田礼奈
また、Araiさんの話を聞いた後モスクを出ると近くに
イスラム教信者のための食料品のスーパーがあった。神
戸にはこのようなスーパーがいくつもあり、信者のため
の配慮がなされていた。鳥取にはこのようなスーパーは
ない。信者にとってもっと住みやすい地域となるような
取り組みが必要であるのではないだろうか。
次に訪れたのはインドの宗教の一つであるジャイナ教
の寺院だ。訪問の前に私達はジャイナ教について文献な
どで学習をしたが、徹底した禁欲主義があるなどとても
過酷で厳しい宗教という印象を持っていた。今回訪れた
寺院は日本で唯一のジャイナ教の寺院である。また神戸
イスラム教
(鳥取大学
市には約80名の信者がおられるそうだ。今回私達が訪れ
祈りの部屋
地域学部棟
た際、日本人の方が見学に入って来られていて、比較的
2階)
オープンな施設であった。床は大理石で作られ、写真を
さらに私達は調査によってさまざまな宗教施設がある
とることは禁止されたが、祭られていた神様の像が金で
ことがわかった兵庫県神戸市へ12月15日(土)に行った。
作られていてとても豪華なつくりだった。この寺院には
最初に訪れたのはイスラム教の神戸モスクだ。この神
インドから来られた夫婦二人がおられ、何か日本の生活
戸モスクは、日本で一番古いモスクで大変歴史のある建
において困ることはないかと質問したところ、神様のた
物だ。ここで私達はAraiさんという方にお話しを聞いた。
めに生きているので困ったことはないと答えられ、私た
モスクの来場者は一日10人程度だが、礼拝の日である
ちが抱いていた厳しい宗教というものより、信仰深い宗
金曜日は150人もの信者が集まるそうだ。印象に残った
教であると印象が変わった。
話としては日本人の宗教観の話で、日本人の宗教は形式
的で宗教ではない、宗教を軽く考えるということをおっ
最後に訪れたのはユダヤ教の教会であるシナゴークだ。
000人のユダヤ教信者がおられるそうだ。
日本には約2,
しゃられた。宗教を深く信仰しているからこそ感じるこ
この日は土曜日で、ユダヤ教にとって土曜日は聖なる日
である。お祈りのためにたくさんの人が集まっておられ
た。お話を聞くために部屋に案内されたのだが、男性は
祈りの場である部屋に女性は同じ部屋の区切られた小部
屋に案内された。これは男女一緒に祈りの場にいること
が祈りの妨げとなるからということだった。またイスラ
エルの女性からお話を聞いたのだが、ユダヤ教という宗
教の厳しさ、ホロコーストなどから生き残ってきたとう
事実があるためか他宗教信者より多宗教を認めていない
という印象と、ユダヤ教徒であることへの誇りを感じた。
また小さな子供たちがいたのだが、最初は普通の日本の
学校に通っていたそうだが、日本人に宗教的な理解が得
られず通うことをやめたということも聞いた。また最後
に写真をお願いしたのだが、土曜日はあらゆる労働が禁
神戸モスク
(兵庫県神戸市)
止されているため撮ることができなかった。
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2012年度
地域文化調査成果報告書
かれている、イスラム教は戦争やテロ、女性差別、ヒン
ドゥー教は、厳しい戒律やカースト制度、また、ベジタ
リアンというイメージが多かった。続いて、ユダヤ教で
は、排他的やナチスドイツの迫害などがあり、仏教は、
仏様、親しみやすい、宗派が多いという意見があった。
このことから、キリスト教・仏教には開放的やなじみ
深いなどプラスのイメージが多く、イスラム教ユダヤ教
ヒンドゥー教には、排他的で、怖いといったマイナスの
イメージが多いということが言える。
ユダヤ教
シナゴーク
(兵庫県
神戸市)
フィールドワークを通じて感じたことは、確かに宗教
のタブーとしてできないことやらなくてはいけないこと
はたくさんあるが、それを苦痛だと感じる人はおらず、
神に祈り生きることに幸せを感じているという印象で
図2
あった。日本に住まれていても、自分なりの生き方を決
めていきいきと生活をされていたが、私達の宗教の知識
また知識に関しては、イスラム教、ユダヤ教、ヒン
や理解がないためにうまく交流できないことがある事実
ドゥー教に対し、知識はあまり持っていないという意見
も知った。
が多いことが、図2より分かる。
【意識調査】
担当:岡本敬之
図3
興味に関しても、図3より、こちらも先ほどの宗教に
対する興味が無いという回答が目立った。このことから、
キリスト教や仏教に比べ、イスラム教ヒンドゥー教ユダ
図1
ヤ教に知識・興味を持っている人が少ないと言う事が分
アンケートは、タイムフェスティバル参加の日本人81
かり、これらがマイナスイメージを持つ要因だと考えら
名、外国人39名、そして、鳥取大学地域学部地域文化学
れる。
科1回生50名、鳥取商業高校3年生36名から回答を得た。
次に、外国人の調査結果では、鳥取で宗教に従った生
日本人の調査結果では、図1より、キリスト教・仏教
活を行うにあたって、特に困っているという回答は見受
に良い印象を持っている方が多いことが分かった。また
けられなかった。一方、図4の結果からでは、理解して
各宗教についてのイメージは、キリスト教は十字架、開
いるという回答は少数であった。この2つの結果から、
34
国際交流と宗教
宗教実践は困難ではないものの、自分たちの宗教に関し
アンケートを中学校に依頼した際には、生徒への影響や
ては、日本人の理解が不十分だという回答が多くみられ、
保護者からの承諾が得られないなどの理由により、断ら
相互理解の必要性があるといえる。
れたこともあり、現実とのギャップがあると考えられる。
最後に、意識調査全体を通して、日本人、外国人とも
に宗教の重要性を認識している反面、日本での宗教に対
しての理解と支援が充分ではないということから、宗教
に関する教育・コミュニティに関する情報発信が今後の
課題といえる。
【地域貢献
タイムフェスティバル】
担当:平尾萌子
地域貢献活動のひとつとして、11月25日にとりぎん文
図4
化会館で行われたTIME(とっとり国際交流連絡会)主
また宗教的支援の有無については、「支援を受けてい
催のタイムフェスティバルにて、国際交流班でブースを
ない」との回答が多く、宗教的コミュニティの有無につ
出展した。
TIME(とっとり国際交流連絡会)とは、鳥取に住ん
いては、宗教によってばらつきがみられた。
このことから、宗教に関するサポートを受けていない
でいる留学生や、その他の外国人と日本人をつなぎ、お
人、コミュニティ自体を知らない人が多いということが
互いの理解を深めるために、集いの場を提供している。
分かり、情報・コミュニティが不十分だといえる。
年に2回情報誌を発行したり、年に数回様々なテーマで
セミナーを行ったり、鳥取の国際交流を推進する活動を
している。タイムフェスティバルは、それらの活動の一
環であり、世界の国々、国際交流団体が出展する国際村
である。毎年鳥取に住んでいる多くの外国人が訪れる。
伝統芸能の披露、また、それぞれの国のブースでは特産
品や伝統料理などが振舞われ、鳥取にいながら多くの異
国文化に触れることができ、国際交流を行う絶好の機会
と言える。
もちろん、外国人だけでなく、日本人も多く来場する。
図5
次に、日本人と外国人の宗教に対する比較で、図5か
ら日本人、また鳥取大学地域文化学科1回生でも「はい」
との回答が圧倒的に多く、同様の質問で外国人もまた、
宗教に関係なくほとんどの人たちが「はい」と回答して
いる。
そして、宗教の教育における重要性に関しては、日本
人、鳥取商業高校3年生の両者とも「重要」との回答が
約半数であったのに対し、外国人はほとんどの人が「重
要」と回答している。
以上のことから、宗教の重要性を認識し、教育の場で
も宗教について教えることに賛同する人は、比較的多い
タイムフェスティバル
国際交流班のブース
(とりぎん文化会館)
ということ言える。しかし私たちが以前、宗教に関する
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2012年度
地域文化調査成果報告書
【地域貢献
模擬授業】
担当:岸下真依子
地域貢献はタイムフェスティバルにおける展示だけで
はない。これまでに我々が行ったアンケートの集計結果
から、日本人、外国人共に宗教教育の不足とその必要性
を感じていることが分かった。また、地域の人々にこそ
我々が調査を行った、鳥取で暮らす外国の人々の現状に
ついて知ってもらいたく思ったために、地域貢献の一つ
の形として模擬授業を開催することが決定した。
タイムフェスティバルの様子
(とりぎん文化会館)
日程
私たちは、そういった人たちに向けて情報発信をするた
模擬授業班を少数人数ながら組んで、鳥取県内で私た
め、世界宗教についてまとめた手づくりのポスター、世
ちが行った授業は以下の通りである。
界宗教に関わる本などを展示した。
・1月9日
また、この日は情報発信だけでなく、たくさんの情報
鳥取西公民館(タイムセミナーの中で発表
を行った。
)
・1月23日
収集を行うこともできた。まず、会場内を歩き回って、
敬愛高等学校(対象は80名強の第三学年の
生徒。
)
日本人がどれくらい世界宗教について知っているのか、
外国人がどれくらい日本の生活で困っているのかなどを
授業の概要
知るため、世界宗教と国際交流に関するアンケートを
行った。日本人向け、外国人向けのアンケートを作成し、
合計120人の方に協力頂くことができた。
まずは鳥取の外国人と宗教の現状について紹介し、次
に簡単な宗教紹介を行った。そして今まで我々が行って
それから、会場を歩き回り、多くの国のブースを訪れ、
きた調査内容の紹介、最後にはそれらを踏まえた上で、
実際にお話を伺うことができた。まず、フィリピンの
国際交流に於いて知識を持つことや偏見を無くすことの
ブースに行くと、カトリック信者の女性がお話をしてく
重要性について発表した。
ださった。ここで日頃通っている教会の場所を教えて下
その後は質疑応答、感想やコメントの記入時間となっ
た。時間は全部で45分であった。
さり、ミサにも誘って頂き、後日教会を訪問することが
できた。また、スーダンのブースに行くと、イスラム教
この模擬授業には今までの調査結果も作成段階から盛
信者の女性にお話を伺うことができた。その女性は、お
り込んでいる。模擬授業において模擬授業班が伝えた
祈りの場所がないこと、食品を買う時の不便などについ
かったことは、先入観や偏見を捨てて国際交流を楽しん
て話して下さった。イスラム教の戒律によって、食べる
で欲しいということ、自分で体験することや知る事が大
ことを許されている食品をハラルと呼ぶが、そのハラル
切だということ、そして何よりも我々が伝えようと重視
を買う時に、中に何が入っているかなどの材料の表示が
したことは、国際理解の為に宗教の観点から学習するこ
曖昧なため買えなかった、ハラルが買える店が少ないた
との必要性である。これからのグローバル化する社会に
め、情報が欲しいなど、語ってくださった。今まではそ
出ていく若者たちにこそ知ってほしいことを授業内に組
のように悩んでいる人たちがいるのではないかという想
み込んだ。
像でしかなかったが、実際に話を聞くことで、宗教に
また、近年カルト勧誘が鳥取でも頻繁に見られるよう
沿った生活をするのに本当に困っている人たちがいるこ
になってきていることや、宗教について恐怖心や偏見を
とを知り、私たちにとって大きな収穫となった。
抱くのはカルトと宗教の違いを知らない為だと感じた
我々はカルトについてもその違い、定義について語った。
これはカルトについて教育することで悪影響を及ぼすの
36
国際交流と宗教
まず1つ目に、宗教施設が不十分であること、また宗
教施設に関する情報が不足している、ということが挙げ
られる。アンケートによる意識調査から、「宗教施設が
不十分である」という外国人の方の意見や、「宗教施設
について十分な情報が得られていない」という意見が多
く見られた。また、課外調査として神戸を訪れた際には、
鳥取と神戸では宗教施設の充実度に大きな差があると感
じた。
そこで私たちは、鳥取においても、宗教施設の充実、
宗教施設に関する十分な情報発信が必要だと考える。例
鳥取敬愛高等学校での授業の様子
えば、公共の場における祈りの場の設置や、自治体によ
ではなく、むしろその違いを明確に意識することで宗教
るウェブサイトでの情報発信である。鳥取大学地域学部
への恐怖心・偏見を無くして欲しいという我々の考えに
棟2階に、祈りの場として専用の部屋が設けられている
よる。
のだが、その部屋を使用しておられる方々は、その部屋
感想を一部抜粋して紹介する。
のおかげで宗教実践がしやすくなったとおっしゃってい
「宗教について考え方が変わった。
」
た。鳥取空港には国際交流財団もあるので、そのような
「それぞれの宗教について理解する必要があると思っ
場に祈りの場が設けられていれば、信者の方々がより生
た。
」
活しやすくなるのではないだろうか。また、教会や寺院
「宗教について偏見しがちになるが、納得できてよ
の場所をまとめたマップや、アクセス方法などをのせた
かった。
」
ウェブサイトの設立が、宗教施設に関する十分な情報提
「自分が思っていたよりも多くの外国人が鳥取に住ん
供となるのではないだろうか。
でいると知ることが出来た。
」
2つ目に、日常生活へのサポートが不十分である、と
「信者の人に対して、サポートが必要だと感じた。
」
いう問題が挙げられる。例えば、食品に関する問題であ
などである。これらの感想からも分かるように、我々が
る。食に関するタブーのある宗教信者の方々は、食品の
伝えたかったことは学生に伝わっている。それを嬉しく
材料や成分が分からないために、食事の際に困ることが
思うと同時に、ここから学んだこと・感じた事を、生徒
ある、とおっしゃっていた。
がこれからの国際交流やそれに関す学習に役立ててくれ
そこで、メーカーによる食品の詳しい成分表示が必要
ることを望む。
であると考える。また、スーパーや飲食店などでも、使
今後もこういった機会を設ける事で宗教に対する若者
用した材料の情報提示の必要があると考える。例えば、
の見方、意識を変えていく必要があると言えるだろう。
インドの「ベジタリアンマーク」のようなマーク表示が
教育的観点から、それが政教分離や教育基本法にも定め
分かりやすくて良いと思う。実は、日本にも「NPO法人
られているように難しいことであることも承知の上だが、
日本ベジタリアン協会」による、ベジタリアンの方向け
やはり宗教についての知識教育は行うべきでないか。何
の食品を表すマークが存在するのだが、その認知度は十
故ならそれが鳥取県内での国際交流を、よりスムーズに
分ではないだろう。
すると考えるからである。
【国際交流と宗教
まとめ】
担当:山本麻衣里
『インドのベジタリアンマーク』
これまでの調査から、国際交流と宗教についてどのよ
(http://eventjot.com/1911)
うなことが言えるだろうか。
37
2012年度
地域文化調査成果報告書
3つ目に、宗教理解が不十分であること、宗教に関す
て偏ったイメージを抱いていた。しかし、宗教施設に足
る基礎知識の不足が挙げられる。
を運び、信者の方々にお話を伺うなど、実際に交流する
そこで、学校での国際理解教育の一環として、宗教に
ことによって、今まで抱いていた偏ったイメージは大き
関する基礎情報を提供する必要があると考える。社会科
く変化した。実際に交流することによって、私たち自身
の授業の中で、世界情勢と関連させて情報を提供する、
知らないうちに勝手なイメージを抱いてしまっていたの
もしくは、道徳の授業の中で、相互理解に必要な情報と
だと認識することができた。そのような偏ったイメージ
して提供するのが良いのではないだろうか。また、信者
やステレオタイプは、知識の不足・情報の不足・交流の
の方からお話を聞くなどの、実際に交流する場を設ける
不足によって生み出されるのではないだろうか。特に大
のも良いのではないだろうか。
きな原因となっているのは交流の不足だろう。今回の調
1年間の調査を通して、私たちの抱いていた宗教に対
査を通して、改めて交流することの重要性を知ることが
するイメージや意識は大きく変化した。調査を始める前
できた。ぜひ、みなさんには交流の機会を持ってほしい
は、宗教に関する知識は十分でなく、特定の宗教に対し
と思う。
【参考文献・URL】
『最新版宗教世界地図』立山良司、新潮社、2004年
『よく分かる世界の宗教
『国際理解を深める
キリスト教』C・ワトソン作、岡田好恵訳、岩崎書店、1994年
世界の宗教(全5巻)
』保坂俊司ほか、ポプラ社、2005年
『宗教のしくみ事典―教えから歴史・系譜・宗派まで早わかり』大島宏之、日本実業出版社、1993年
『すぐわかる世界の宗教―古代の神話から新宗教まで』町田宗鳳、東京美術、2005年
『ムスリム・ニッポン』田澤拓也、小学館、1998年
『愛真幼稚園百年史』大前幸正、学校法人愛真幼稚園、平成19年
http://www.jpvs.org/entry/suisyou_mark/index.html 特定非営利活動(NPO)法人日本ベジタリアン協会
http://fknews.ldblog.jp/archives/2012-10.html?p=
.
.
http://www.canstockphoto.jp/illustration/%E4%B8%89.
.
.
http://blog.goo.ne.jp/daitinotabi/e/ee000211a16b54.
.
.
http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/upload/detail.
http://blogs.yahoo.co.jp/poppin_96/49197563.html
http://cool-boom.jp/blog/risa/2010/09/post-78.html
http://ameblo.jp/teddy-dubai-living/entry-10715419680.html
http://blogs.yahoo.co.jp/a151e/62977850.html
http://store.lds.org/webapp/wcs/stores/servlet//Product3_715839595_10557_21097_-10__196982
http://blogs.yahoo.co.jp/aquarius1969newage/61033441.html
http://www.fotosearch.jp/photos-images
http://www.beautybride.net/mt/yuri_anundee/index_8.php
http://www.voyagesphotosmanu.com/bukkyo-jiin-soryo.html
http://zudaji.hamazo.tv/e3861285.html
38
国際交流と宗教
【Special Thanks】
○鳥取県国際交流財団:佐々木満也さん
○ゲストスピーカーの皆様
アニスさん(Anis Mohamed、エジプト)
、リサさん(Liyana Nurlisa、マレーシア)
、アジョイさん(Ajoy Kumar Dutta、
バングラデシュ)
、クイ・トラさん(Kuy Tola、カンボジア)
、ハウスさん(アメリカ合衆国)
、マンローさん(オー
ストラリア)
、鳥取大学学生部生活支援課:宮田育征さん(日本)
、鳥取大学祈りの部屋の皆様
○鳥取カトリック教会:野嵜司祭
○鳥取プロテスタント教会:橋原牧師
○神戸モスク:アッサン・アライさん(Ahsan Arai)
○バクマン・マハビールスワミ・ジェイン教会:ダウラバイさんご夫妻(Mr. & Ms. Dhaulabhai)
○神戸シナゴーク:ギンゴールドさんご夫妻(Mr. & Ms. David Gingold)
○鳥取敬愛高等学校:森本浩子先生及び生徒の皆様
○鳥取商業高等学校:宇田川ひろえ先生及び生徒の皆様
○鳥取大学地域学部地域教育学科:住川英明教授
○アンケートに協力してくださった皆様
【謝辞】
調査の過程で、多くの方々に、快くご協力を頂きました。また、発表会には多くの方がご来場くださり、「宗教教
育とカルトについて」
、「アンケートの質問法について」など、貴重なご意見を賜りました。この場を借りて厚くお礼
申し上げます。今後の研究につなげていきたいと思います。
とりぎん文化会館最終発表
39
2012年度
地域文化調査成果報告書
Religion and International Exchange
∼Foreign Residents and World Religions in Tottori∼
To answer these questions, our Kokusai Koryu student
Students: Tomoyo Adachi, Yuta Aono, Moeko Hirao,
So-Chang Hong, Maiko Kishishita, Takuya Maruoka,
team read books, researched websites, designed question-
Yoshiaki Nagami, Takayuki Okamoto, Narumi Toyota,
naires, visited prayer rooms, churches, mosques, synagogues
Airi Yamamoto, Yumi Yamane, Rena Yoshida,
and temples, and interviewed guest speakers of different re-
Moemi Adachi
ligions from countries in Asia, Africa and America.
Instructors:
Research and Fieldwork
Kip A. Cates, Fukiko Kitagawa
To study this topic in depth, students in our team carried
Regional Culture Research
out the following types of research:
The Department of Regional Culture of the Faculty of Re-
Books, Data, Documents
gional Sciences offers a special course called“Regional Culture Survey”
(Chiiki Bunka Chosa)
. This course offers 2nd
books, articles, documents on world religions
year Tottori University students the chance to do fieldwork
information and data from Internet websites
and research in the local community on a topic linked to re-
Lectures by Guest Speakers
gional culture. The course is divided into four separate re-
Mr. Anis Zaid(Egypt)Islam
search groups. One of these is the“International Exchange”
Ms. Lisa(Malaysia)Islam
group.
House and Monroe(US)Mormon missionaries
Each year, this group chooses an exciting topic on the
Mr. Kuy Tola(Cambodia)Buddhism
theme of “International Exchange and Tottori”
. Previous
Mr. Yuichiro Tanaka(Hindu)from Bangladesh
topics have included:
Mr. Y. Miyata(Tori-Dai)lecture about cults
2005: The status of foreign residents in Tottori
Interviews and Visits
2006: International marriage in Tottori
research visits to churches in Tottori City
2007: Education and international exchange
a 1-day fieldtrip to Kobe to visit its Muslim mosque, Jew-
2008: Work and international exchange
ish synagogue and Jain Temple
2009: The 1927 Tottori-USA doll exchange
Questionnaire Surveys
2010: Tottori, history and emigration to Brazil
students did 4 surveys of people’
s knowledge, images and
2011: Sister city exchanges in Tottori
ideas about world religions:
This year, students selected the theme:
Japanese at TIME Festival(81 people)
2012: Religion and international exchange
Japanese at Tottori University(39 students)
Japanese high school students(36 students)
Religion in Tottori
foreign students and residents(50 people)
For some people, the topic of“religion”may seem dark,
difficult or dangerous. Yet a knowledge of world religions
Regional Contribution
along with respect for religious customs, beliefs and taboos
To share what they learned about world religions and in-
can lead to international understanding and cross-cultural
ternational exchange in Tottori, students:
friendships. Our students began their research on this topic
taught a model lesson about world religions to 80 high
with a number of questions:
school students in Tottori City
What kind of religions do foreign residents in Tottori fol-
organized a display on world religions for the 2012 inter-
low?
national TIME Festival in Tottori
How important is religion for them?
gave a formal presentation on their research at Tori-gin
What problems do Christians, Muslims, Hindus and Jews
Bunka Kaikan on January 26, 2013
face in daily life in Japan?
Thanks!
What image do Japanese people have of Christianity, Is-
Our Kokusai Koryu group would like to thank all the peo-
lam, Hinduism and Judaism?
ple who helped us over the year. Arigato!
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