<研 究 抄 録 > 「トダロとスミスの開発経済学( 原著第10 版) 」 出版 東 俊夫 OCDI 開発経済学研究会が翻訳を担当した「トダロ とスミスの開発経済学(原著第 10 版)」が昨年末、㈱ を開催し、用語統一等翻訳上の共通課題について森杉 ピアソン桐原(ピアソン・エデュケーション日本支社) 先生からの指導があった他、進捗状況、スケジュール から出版されました。英国に本社のあるピアソン・エデュ の再確認を行いました。その後、遅れていた私の担当 惑をお掛けしました。その後、 6 月に第 2 回の研究会 ケーション社は、教育分野での世界的な出版社であり、 部分も 8 月初めに脱稿し、やっと原稿が全部出揃った 原著も同社から出版されています。 次第です。 この第 10 版の翻訳について、㈱ピアソン桐原から OCDI の岡田顧問(第 6、 8 版監訳者)に相談があっ たのは、一昨年の夏でした。 OCDI としては、これま で第 6 版、 8 版の翻訳を手がけて来ましたが、業務環 翻訳を担当し、日本語も含め言葉とは難しいことを 改めて感じた次第です。具体的には以下の通りです。 1. 英文の構造上、 ある単語( 或いはフレーズ) 境が激変する中で責任を持って翻訳を行えるか否かい の修飾文(説明文)が当該単語(フレーズ)の後に ささか不安でもありました。しかし、①多くの言語に 幾重にも出て来ます。読めば意味は何となく頭の中 翻訳されている本書は、開発経済学の代表的なテキス でイメージ出来るのですが、日本語に訳すととても日 トであり、本書の日本語訳を行うことは、国際技術協 本語になりません。仕方なく、当該文章を 3 ~ 4 セ 力を実施して来た OCDI の本来的な責務であること、 ンテンスに分けざるを得ませんでした。また、幾通 ②第 10 版では構成、事例が大きく変わっており、改め りの分け方も考えられることから、訳しては修正し て日本語版を作成することが求められているであろうこ の繰り返しで、たった 1 センテンスの訳に半日も苦戦 とから、以前と同様に OCDI 開発経済学 研究会を再 するはめに陥ったことが多々ありました。他方、簡明 度立ち上げ翻訳することとなりました。 な構造で記述されている部分は、順調に訳すことが 出来ました。 研究会では、翻訳者は各自の分担に従い翻訳する訳 ですが、訳文のチェック、論点の整理、用語の統一等 2.記述されている総ての英単語を日本語訳する 全体を俯瞰し、品質の確保に責任を持つ監 訳者の責 と日本語として何かしっくりこないこともありました。 務は極めて大きいものがあります。また、監訳者には、 例えば、 「 BRAC has developed high-impact and これらを行い得る学術上の見識、世界経済に関する広 範な知見が必要です。この監訳者の責務を OCDI の widely emulated program innovations in ・・・ 「 program innovations」は、 「何 fields.」です。文中の 理事でもある森杉先生(東北大学名誉教授、日本大学 度も工夫を重ねたプログラム」と言う意味でしょうが、 教 授)にお引き受け頂き、開発経済学 研究会を無事 全体を自然な日本語に出来ず、結局「 BRAC は、 ・・ ・ 立ち上げることが出来ました。翻訳を岡田顧問、第 8 分野で効果が高く、世界的に広く模倣されているプ 版の翻訳者でもある上田寛、大内久夫の両氏及び筧隆 ログラムを開発した。」としました。要するに、 「何度 夫氏と私が担当することになりました。また、研究会 も工夫を重ねた」部分を訳しませんでした。同様の 事務局は、OCDI の宍戸達行、小山彰が担当しました。 ことが多々あり、上手な日本語に出来ない自分に気 付いた次第です。 昨 年の 1 月、 第 1 回の研 究会を開催し、 翻 訳スケ ジュール、役割分担を決定の上、作業を開始しました。 8 さて、この 10 版は帯紙にある通り「ジェンダー問題、 私以外の方々は知見・経験豊かな方々で順調に翻訳を 植民地政策、天然資源、グロバリゼーションなど開発 進められておられる様子でしたが、私の分担部分の翻 分野の最新トピックが充実」していますし、それらの 訳が進まず、監訳者、 OCDI 事務局及び出版社に御迷 トピックに応じたケースタディー対象国も第 10 版では、 OCDI QUARTERLY 81 大きく変更されています。国際関係、アジア・南米諸国・ その他発展途上国の社会・経済に興味関心がある方に 是非とも御一読頂きたく思います。 また、 OCDI は、第 8 版の在庫も若干保有していま す。第 8 版も見たいと言う方には無償で御提供出来ま すので、以下にお問合せ下さい。 OCDI(e-mail:[email protected] 電話:03-5570-5931) 最後に、翻訳に当り㈱ピアソン桐原には、第 8 版と 第 10 版との相違点を厳密に比較した資料提供等出版 に係る各種業務を鋭意積極的にこなして頂きました。 深甚の謝意を表します。 (あずま としお 理事) 9
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