技術情報 安全対応の位置計測システム ~ ピュアシリアルEnDat 2.2インターフェースを採用し、EN 61 508規格のコントロールカテゴリSIL–3や EN ISO 13 849規格のパフォーマンスレベル“e”に適合する安全アプリケーションに対応~ ハイデンハインは、 EnDat 2.2 によるピュアシリアル通信を行うため、 シングルエンコーダシステムとして安全対応のアプリケーションでの使用が可能 なエンコーダを用意しています。 EN 61 508 規格の SIL–2 カテゴリや EN ISO 13 849 のパフォーマンスレベル "d" に適合したアプリケーションの安 全制御装置と結合することができます。 位置情報は、互いに独立して生成される 2 つの位置データならびにエラービットに基づいて安全に伝送され、 安全制御装置へ供給されます。 安全対応の取付け方法を行うロータリエンコーダの他に、 シールドタイプのアブソリュートリニアエンコーダやアブソリュート角度エンコーダも機能安全 対応となっています。 安全性は近年、 機械 ・ プラント建設業界にお いて急速にその重要度を増しています。 その 証拠に、 新たな法律やより厳しい安全基準が 国内外で制定されています。 このような厳しい 要求は、 主に作業者に対する安全確保のた めのものですが、 資産や環境についてもさらに 配慮がなされてきています。 機能安全の目指すものは、 機械や設備の正 常運転時もしくは異常運転時に起こりうるリス クを最小限にする、 もしくは排除することです。 それはシステムに冗長性を持たせることで実 現できます。 例えば、 安全アプリケーションの 軸は、 機能安全に対応するため、 位置情報 に冗長性を要求します。 正確な位置情報を 入手するためには、 様々なシステム構成が考 えられます。 1 つの方法としては、 1 軸に 2 つ のエンコーダを使用することです。 しかし多くの 場合、 コスト削減の観点から 1 つのエンコーダ のみの使用が採用されています。 これまでは、 アナログ正弦波信号出力のエンコーダをこの ために使用してきました。 ハイデンハインは、 EN 61508 と EN 13849 に 準拠した安全性重視のアプリケーションにおい て安全対応の位置計測システムを実現するた め、 ピュアシリアル通信のシングルエンコーダ でのシステムソリューションを提案いたします。 2012.11 すなわち、 安全アプリケーションは、 コストの 最適化、診断機能、自動調整、そして位置デー タの高速生成など、 シリアルデータ伝送のあら ゆる長所を活かすことができます。 安全対応の位置計測システム 安全対応のアプリケーションのためのハイデ ン ハ イ ン 製 計 測 シ ス テ ム は、 EN 61 508 と EN ISO 13 849−1(EN 954−1 の 後 継 規 格 ) に適合しています。 これらの規格では、 組み 込まれている部品やサブシステムの故障確率 に基づく、 安全に対応したシステムの評価が 記述されています。 このモジュール的アプロー チは、安全対応のシステムを構築するメーカー がシステム全体を構築する際に役立ちます。 なぜなら、 あらかじめ適合しているサブシステ ムを使ってシステムの構築を始めることができ るからです。 EnDat 2.2 を介したシリアルデー タ伝送を伴う安全対応の位置決めエンコーダ は、 この手法に寄与できます。 安全な運転に おける安全対応の位置計測システムは、 こ のようなサブシステムを提供いたします。 安全 対応の位置計測システムとは、 以下で構成さ れています。 • EnDat 2.2 インターフェース搭載エンコーダ • EnDat 2.2 通信用データ伝送線ならびにハ イデンハイン製ケーブル • 監 視 機 能 を 持 っ た EnDat 2.2 受 信 回 路 (EnDat Master) さらに、 実際の “ 安全なサーボドライブ ” システム全体は、 以下で構成されます。 • 安全対応の位置計測システム • 安全対応の制御装置 ( 監視機能を持った EnDat Master を含む ) • モータ電源ケーブル ・ ドライブを伴う電源部 • エンコーダとドライブの間の物理的な接続 ( 例 : シャフト接続やカップリング ) アプリケーションの範囲 ハイデンハインの安全対応の位置計測システ ムは、 EN 61 508 規格で定められたコントロー ルカテゴリ SIL−2、 EN ISO 13 849 のパフォー マンスレベル ”d” やカテゴリ 3 を満たすアプリ ケーション内で、 シングルエンコーダシステム として使用できるように設計されています。 制御装置内で追加的な監視を行うことで、 一部のエンコーダは、 SIL−3、 パフォーマン スレベル “e”、 カテゴリ 4 の安全アプリケー ションにも使用可能となります。 詳細は、 対 応エンコーダのカタログ、 製品情報などの 資料を参照ください。 安全対応の位置計測 シ ス テ ム の 機 能 は、 シ ス テ ム 全 体 で 下 表 に挙げる安全機能にも使うことができます。 (EN 61 800-5-2 も参照ください ) SS1 Safe Stop 1 SS2 Safe Stop 2 SOS Safe Operating Stop SLA Safely Limited Acceleration SAR Safe Acceleration Range SLS Safely Limited Speed SSR Safe Speed Range SLP Safely Limited Position SLI Safely Limited Increment SDI Safe Direction SSM Safe Speed Monitor Safety functions according to EN 61 800-5-2. EnDat 2.2インターフェース搭載の安全対応 位置計測システムの他に、ハイデンハインは 1) DRIVE-CLiQ インターフェースを搭載したア プリケーション用の安全対応エンコーダを用 意しています。詳細については、各製品情報 を参照ください。安全アプリケーションにおい て標準エンコーダ(信号出力1 VPP等)の使用 時に個別の追加データ(EN 61800−5−2、 D16に基づく故障率や故障モデル)が必要な 場合は、お問い合わせください。 安全対応の位置計測システム EnDat 2.2 EnDat Master 1) DRIVE-CLiQはSIEMENS AG社の登録商標です。 サーボドライブ 安全制御装置 エンコーダ 電源 電源ケーブル 安全対応のサーボドライブシステム 機能 エンコーダ内で同時にスキャニングを行うこと により 2 つの独立した位置データが生成され、 EnDat 2.2 プロトコルにて EnDat Master に伝 送されます。 位置計測システムの安全方策 はこれら位置データに基づいています。 EnDat Master には様々な監視機能が備わっており、 エンコーダ内のエラーや送信中のエラーを検 出することができます。 そして 2 つの位置デー タを比較します。 EnDat Master は、 2 つの 位置データと独立したエラービットを、 2 つのプ ロセッサーインターフェースを介して安全制御 側へ送ります。 制御側では、 安全対応の位 置計測システムが正しく動作しているか、 定 期的にテストをして監視します。 EnDat 2.2 プ ロトコルのアーキテクチャによって、 どんな制御 運転時においても、 すべての安全に関する情 報処理や機械制御を正常に実施することが可 能です。 これは、 安全対応に関する情報が 付加情報に保存されているために可能となりま す。 EN 61 508 に従った位置計測システムの アーキテクチャは、 シングルチャンネルテスト システムと考えられています。 測定値の取得 位置計測システム構築に関する資料 位置計測システムの使用目的は、制御設計、 機械設計、据付工事、サービス部門などに要 求を行ないます。必要な情報が位置計測シス テムに関する資料に記載されています。 安全対応のアプリケーションに位置計測システ ムを導入するために、適切な制御が必要とな ります。制御はエンコーダとの通信やエンコー ダデータの内容チェックなど基本的な処理を 想定しています。 安全制御にて機能を監視するEnDat Master の構築に必要なことは、ハイデンハインの資料 533095に記載されています。例えば、位置値 やエラービットの評価と処理についてや、位置 計測システムの電気的接続やサイクリック試 験に関する仕様が記載されています。 データ伝送ライン 測定値の受信 ポジション1 ポジション2 EnDat インターフェース 安全制御装置 インターフェース1 EnDat 2.2 (プロトコルとケーブル) EnDat Master インターフェース2 マニュアル参照 2 つの独立した 位置データ 内部モニタリング プロトコル作成 安全対応の位置計測システム シリアルデータ伝送 2 つのプロセッサーインターフェースを 介して得た位置データとエラービット モニタリング機能 性能テスト 資料 1000344には、一部のエンコーダを、 SIL-3、パフォーマンスレベル“e”、カテゴリ4の 安全アプリケーションで使用するための追加的 監視について、記載されています。 機械やプラントメーカでは、これら詳細に注意を 払う必要はありません。これらの機能は制御側 から供給される必要があります。製品情報、カ タログ、取付説明書には適切なエンコーダの選 択の手引きが掲載されています。製品情報と カタログにはエンコーダの機能とアプリケーショ ンの一般的なデータだけでなく、仕様と環境条 件についても記載されています。取付説明書 にはエンコーダ取付けに関する詳細情報を掲 載しています。 安全システムのアーキテクチャーと制御の診断 により、さらなる要求が起こる可能性があります。 例えば、制御の操作マニュアルにはエンコーダ とモータ間での機械的接続の緩みがエラー除 外にしているかどうかを明確に述べられている 必要があります。機械設計者は、要求結果を、 例えば、据付工事者やサービス技術者に知ら せる必要があります。 (安全対応の特性値に関する情報を参照ください) 安全対応の特性値 安全性重視のアプリケーションにおける位置計 測を行う場合、 後述のように他のパラメータが 関連してきます。 機械の安全設計時にこれら のパラメータに従わなければなりません。 単位時間あたりの危険故障確率 ( PFH 値 ) は エンコーダの 1 時間あたりにおける危険故障の 発生確率を示します。 エンコーダの故障率は、 全体システムに対する PFH 値の計算式に含 まれています。 アプリケーションのエラー反応時間は、 制御 装置や作動装置 ( ブレーキやコンタクタなど ) の安全モジュールのサイクル時間によって異 なります。 さらに、 アプリケーション特有の設定 ( 例 :EnDat クロック周波数 ) もこの値に影響を 及ぼす可能性があります。 よって、 管理文書 に記載されているエラー反応時間が参照され なければなりません。 安全位置は、 安全なエラー検出が確立される までの、 エンコーダの最大限の可能オフセット 位置を表します。 その個々の値は、 通常オペ レーションで使用する位置値 1 の値とリンクして おり、 安全測定単位となります。 その値は、 例 えば、 指等の挟まれ事故を防ぐための、 必要 最小距離に直接影響を及ぼします。 安全位置 は、 エンコーダの測定値と機械的接続値に分 けられます。 制御側がそのような誤差を検知するという保証 はできないため、 多くの場合、 緩みの可能性 を排除しなければなりません。 制御の操作マ ニュアルにおいて緩み対策を要求している場 合、 安全な機械的接続に関する情報を考慮し なければなりません。 要求がない場合は、 無 視することができます。 摩擦式接続のエラー除 外の場合には、 安全位置とみなされる必要の あるこれ以上の機械的オフセットはありません。 エンコーダの測定値は、 制御内で比較した 位置値の影響力を含む、 最大限のオフセット 位置を表します。( 資料 536402 の算法による ) 定量的誤差に加えて、 エンコーダ内で起こるい かなる位置誤差も含みます。 制御やアプリケー ション次第で、 個々の値 = 安全測定分解能 (SM: Safety-relevant measuring step) は、 機 能安全のパラメータ化にも関連します。 管理文 書はそのような事例に準じた記述を含みます。 緩み対策がバックラッシュによる機械停止のみ で十分な場合、 この最大可能オフセットを安全 位置と算定できます。 これはエンコーダの測定 値と機械的接続値を足すことで算出できます。 特性値機械的接続は “ 機械的接続の緩み ” に よ る 誤 差 が 生 じ た 場 合 の 値 を 示 し ま す。 EN 61 800−5−2、 電気モータに関する基準の 表 D16 では、 考慮を必要とする故障の際の損 失もしくはエンコーダとモータ間の機械的接続の 緩みを定義しています。 重要事項 緩み対策は許容可能な仕様の制限事項と関 係づけることができます。これは適切なエンコー ダや取付方式の選択のためと考えられます。 さらに、 機械的接続の欠落や緩み対策は、 エ ンコーダ取付時や標準のアプリケーションでは 不必要な処置 ( 例 : ねじ部の回転防止ロックな ど ) を行う際には、 通常、 追加的監視を要し ます。 機械の設計エンジニアはこれらの追加 的監視に厳密に従わなければなりません。 関連資料 エンコーダが正しく動作するように以下資料の記載内容にしたがってください。 • 安全対応の位置測定システムの製品情報、カタログ、および取付説明書 制御導入に関する資料 • Specification for Safe Control • Supplementary Specification for SIL 3, PL “e”, Cat.4 • EnDat Interface Description • Electrical Connection Directive • Requirements for PositionValue Comparison 533 095 1000344 297403 231929 536402 http://www.heidenhain.co.jp 本社 名古屋営業所 大阪営業所 九州営業所 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-2 ヒューリック麹町ビル9F (03) 3234-7781 (03) 3262-2539 〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-23-20 HF桜通ビルディング10F (052) 959-4677 (052) 962-1381 〒532-0011 大阪市淀川区西中島6-1-1 新大阪プライムタワー16F (06) 6885-3501 (06) 6885-3502 〒802-0005 北九州市小倉北区堺町1-2-16 596 632-J3 · PDF · 3/2015 版権保持 ※仕様は改善のため、事前にお断りなく変更することがあります。 十八銀行第一生命共同ビルディング6F (093) 511-6696 (093) 551-1617
© Copyright 2024 Paperzz