東京都医薬品情報 № 3 5 3 平成16年2月号 Ⅰ 厚生労働省医薬品・医療用具等安全性情報№197‥‥‥‥‥‥‥2 Ⅱ JAPIC CONTENTS から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14 財団法人 Ⅲ 医薬関連情報から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20 財団法人 1 日本医薬情報センター 日本医薬情報センター Valproic Acid と Zolipidem の相互作用によると思われる夢遊病:1 症例の初め ての報告 2 Carbamazepine 誘発の偽菌状息肉腫:1 症例の報告 3 Labetalol および Nifedipine 徐放性製剤粉砕投与による死亡:1 症例の報告 4 婦 人 科 が ん お よ び 関 連 し た 診 断 に 及 ぼ す Conjugated Equine Estrogen + Medroxyprogesterone Acetate の影響:Women s Health Initiative 無作為試験 1 卵胞ホルモン製剤の 長期投与と安全性について (1)経緯 平成14年7月,米国国立心肺血管研究所(National Heart, Lung and Blood Institute)は,Women's Health Initiative(以下「WHI」という)の研究の一部である「閉経期女性を対象とした結合型エスト ロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンの配合剤のリスクとベネフィットを評価する臨床試験」を中止 した。これを受け,医薬品・医療用具等安全性情報No.182(平成14年10月号)に「卵胞ホルモン/黄体 ホルモン併用長期投与と安全性について」の記事を掲載し,安全性にかかわる情報を提供してきたとこ ろである。 その後,中止されたWHI studyについて,主要評価項目であった冠動脈性心疾患だけでなく,脳卒中, 乳癌,痴呆及び認知障害のリスクに関する研究成績が公表された。また,時期を同じくして,英国で実 施されたホルモン補充療法と乳癌のリスクに関するMillion women studyの疫学調査結果が公表された。 なお,WHIでは,中止された試験以外にもいくつかの試験が進行中であり,順次試験結果が公表される 予定である。 (2)安全対策 平成15年10月までに公表されたWHIの試験成績及び平成15年8月に公表されたMillion women study の試験結果について,専門家の意見も踏まえて検討した結果,卵胞ホルモン製剤のうち長期に使用され る可能性のある更年期障害または骨粗鬆症の効能を有する製剤について,使用上の注意を改訂し,医療 関係者に情報提供することとした。 HRTと乳癌の危険性については,WHI studyとMillion women studyの試験成績について「その他の 注意」の項に記載した。両試験成績とも,1年以内の短期で,乳癌の危険性が上昇し,投与期間が長く なるにつれその危険性が高くなることを報告している。これらの報告を踏まえ,投与前に乳房検診及び 婦人科検診を実施すること及び投与に際して患者にリスクとベネフィットについて十分な説明を行うと ともに必要最小限の使用にとどめ,漫然と長期投与を行わないことを「重要な基本的注意」の項に記載 した。 HRTと冠動脈性心疾患及び脳卒中の危険性については,WHI studyの試験成績について情報提供する とともに,動脈性の血栓塞栓疾患又はその既往歴のある患者を禁忌に設定した。 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 HRTと痴呆の危険性については,WHI studyの試験成績について「その他の注意」の項に記載した。 なお,骨粗鬆症の効能を有する卵胞ホルモン製剤のうち,エストラジオール貼付剤(エストラダーム MR,エストラーナR)については用法・用量に関連する使用上の注意の項に,「投与後6ヵ月〜1年後 に骨密度を測定し,効果が認められない場合は投与を中止し,他の療法を考慮すること」が記載されて いるが,同様の注意事項を他の骨粗鬆症の効能を有する卵胞ホルモン製剤に追記した。 《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》 〈結合型エストロゲン〉 [禁 忌] 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往歴のあ る患者 [慎重投与] 子宮内膜症のある患者 乳癌家族素因が強い患者,乳房結節のある患者,乳腺症の患者又は乳房レントゲン像 に異常がみられた患者 全身性エリテマトーデスの患者 [重要な基本 的注意] 投与前に病歴,家族素因等の問診,乳房検診並びに婦人科検診を行い,投与開始後は 定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。 外国において,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では,乳癌にな る危険性が対照群の女性と比較して高くなり,その危険性は併用期間が長期になるに 従って高くなるとの報告があるので,本剤の投与にあたっては,患者に対し本剤のリ スクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ, 漫然と長期投与を行わないこと。 [その他の注意] (この子宮内膜癌発生の危険性を軽減させる意味から,子宮のある患者に対して,本 剤を長期にわたって使用する場合は,黄体ホルモン剤との併用が望ましい。 ただし,黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人では,冠動脈性心疾患, 脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳癌を発生する危険性が対照群の婦人に比較して,わずか ながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告がある。を削除) ホルモン補充療法(HRT)と乳癌の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,本剤と黄体ホルモ ンの配合剤投与群では,乳癌になる危険性がプラセボ投与群に比較して有意に高く なる(ハザード比:1.24)との報告がある。また,英国における疫学調査の結果, 卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用服用している女性では,乳癌になる危険性 が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍),この危険性は,併用期間が長期にな るに従って高くなる(1年未満:1.45倍,1〜4年:1.74倍,5〜9年:2.17倍,10 年以上:2.31倍)との報告がある。 HRTと冠動脈性心疾患の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,本剤と黄体ホルモ ンの配合剤投与群では,冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群に比較して高い 傾向にあり,特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比:1.81)との報 2004年1月 告がある。 HRTと脳卒中の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,本剤と黄体ホルモ ンの配合剤投与群では,脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセボ投与群に比 較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある。 HRTと痴呆の危険性 米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,本剤と 黄体ホルモンの配合剤投与群では,アルツハイマーを含む痴呆の危険性がプラセボ 投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告がある。 〈参 考〉 企業報告 〈エストラジオール製剤(貼付剤を除く)(更年期障害の効能を有する製剤) 〉 [禁 忌] 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往歴のあ る患者 [慎重投与] 子宮内膜症のある患者 乳癌家族素因が強い患者,乳房結節のある患者,乳腺症の患者又は乳房レントゲン像 に異常がみられた患者 術前又は長期臥床状態の患者 全身性エリテマトーデスの患者 [重要な基本 的注意] 投与前に病歴,家族素因等の問診,乳房検診並びに婦人科検診を行い,投与開始後は 定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。 外国において,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では,乳癌にな る危険性が対照群の女性と比較して高くなり,その危険性は併用期間が長期になるに 従って高くなるとの報告があるので,本剤の投与にあたっては,患者に対し本剤のリ スクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ, 漫然と長期投与を行わないこと。 [その他の注意] (この子宮内膜癌発生の危険性を軽減させる意味から,子宮のある患者に対して本剤 を長期にわたって使用する場合は,黄体ホルモン剤との併用が望ましい。 ただし,結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人で は,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳癌を発生する危険性が対照群の婦 人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告があ る。 を削除) ホルモン補充療法(HRT)と乳癌の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,乳癌になる危険性がプラセボ投与群に比較し て有意に高くなる(ハザード比:1.24)との報告がある。また,英国における疫学 調査の結果,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用服用している女性では,乳癌 になる危険性が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍),この危険性は,併用期 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 間が長期になるに従って高くなる(1年未満:1.45倍,1〜4年:1.74倍,5〜9 年:2.17倍,10年以上:2.31倍)との報告がある。 HRTと冠動脈性心疾患の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群に 比較して高い傾向にあり,特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比: 1.81)との報告がある。 HRTと脳卒中の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセ ボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある。 HRTと痴呆の危険性 米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型 エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では,アルツハイマーを含む痴呆の危険 性がプラセボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告があ る。 〈参 考〉 企業報告 〈エストラジオール製剤(貼付剤) (更年期障害の効能を有する製剤)〉 [禁 忌] 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往歴のあ る患者 [慎重投与] 子宮内膜症のある患者 術前又は長期臥床状態の患者 全身性エリテマトーデスの患者 [重要な基本 的注意] 使用前に病歴,家族素因等の問診,乳房検診並びに婦人科検診を行い,使用開始後は 定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。 外国において,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では,乳癌にな る危険性が対照群の女性と比較して高くなり,その危険性は併用期間が長期になるに 従って高くなるとの報告があるので,本剤の使用にあたっては,患者に対し本剤のリ スクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ, 漫然と長期投与を行わないこと。 [その他の注意] (これらの危険性を軽減させる意味から,子宮のある患者に対して,本剤による治療 を行う際には,黄体ホルモン剤との併用が望ましい。 ただし,結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人で は,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳癌を発生する危険性が対照群の婦 人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告があ る。 を削除) ホルモン補充療法(HRT)と乳癌の危険性 2004年1月 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,乳癌になる危険性がプラセボ投与群に比較し て有意に高くなる(ハザード比:1.24)との報告がある。また,英国における疫学 調査の結果,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用服用している女性では,乳癌 になる危険性が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍),この危険性は,併用期 間が長期になるに従って高くなる(1年未満:1.45倍,1〜4年:1.74倍,5〜9 年:2.17倍,10年以上:2.31倍)との報告がある。 HRTと冠動脈性心疾患の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群に 比較して高い傾向にあり,特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比: 1.81)との報告がある。 HRTと脳卒中の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセ ボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある。 HRTと痴呆の危険性 米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型 エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では,アルツハイマーを含む痴呆の危険 性がプラセボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告があ る。 〈参 考〉 企業報告 〈エストリオール製剤(更年期障害及び老人性骨粗鬆症の効能を有する製剤)〉 [用法・用量に関連 する使用上の注意] [禁 忌] 「老人性骨粗鬆症」に本剤を投与する場合,投与後6ヵ月〜1年後に骨密度を測定し, 効果が認められない場合には投与を中止し,他の療法を考慮すること。 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往歴のあ る患者 [慎重投与] 子宮内膜症のある患者 乳癌家族素因が強い患者,乳房結節のある患者,乳腺症の患者又は乳房レントゲン像 に異常がみられた患者 術前又は長期臥床状態の患者 全身性エリテマトーデスの患者 [重要な基本 的注意] 投与前に病歴,家族素因等の問診,乳房検診並びに婦人科検診を行い,投与開始後は 定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。 外国において,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では,乳癌にな る危険性が対照群の女性と比較して高くなり,その危険性は併用期間が長期になるに 従って高くなるとの報告があるので,本剤の投与にあたっては,患者に対し本剤のリ 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 スクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ, 漫然と長期投与を行わないこと。 [その他の注意] (この子宮内膜癌発生の危険性を軽減させる意味から,子宮のある患者に対して卵胞 ホルモン剤を長期にわたって使用する場合は,黄体ホルモン剤との併用が望ましい。 ただし,結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人で は,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳癌を発生する危険性が対照群の婦 人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告があ る。 を削除) ホルモン補充療法(HRT)と乳癌の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,乳癌になる危険性がプラセボ投与群に比較し て有意に高くなる(ハザード比:1.24)との報告がある。また,英国における疫学 調査の結果,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用服用している女性では,乳癌 になる危険性が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍),この危険性は,併用期 間が長期になるに従って高くなる(1年未満:1.45倍,1〜4年:1.74倍,5〜9 年:2.17倍,10年以上:2.31倍)との報告がある。 HRTと冠動脈性心疾患の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群に 比較して高い傾向にあり,特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比: 1.81)との報告がある。 HRTと脳卒中の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセ ボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある。 HRTと痴呆の危険性 米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型 エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では,アルツハイマーを含む痴呆の危険 性がプラセボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告があ る。 〈参 考〉 企業報告 〈エストリオール製剤(更年期障害の効能を有し,骨粗鬆症の効能を有しない製剤) 〉 [禁 忌] 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往歴のあ る患者 [慎重投与] 子宮内膜症のある患者 乳癌家族素因が強い患者,乳房結節のある患者,乳腺症の患者又は乳房レントゲン像 に異常がみられた患者 2004年1月 術前又は長期臥床状態の患者 全身性エリテマトーデスの患者 [重要な基本 的注意] 投与前に病歴,家族素因等の問診,乳房検診並びに婦人科検診を行い,投与開始後は 定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。 外国において,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では,乳癌にな る危険性が対照群の女性と比較して高くなり,その危険性は併用期間が長期になるに 従って高くなるとの報告があるので,本剤の投与にあたっては,患者に対し本剤のリ スクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ, 漫然と長期投与を行わないこと。 [その他の注意] (この子宮内膜癌発生の危険性を軽減させる意味から,子宮のある患者に対して卵胞 ホルモン剤を長期にわたって使用する場合は,黄体ホルモン剤との併用が望ましい。 ただし,結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人で は,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳癌を発生する危険性が対照群の婦 人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告があ る。 を削除) ホルモン補充療法(HRT)と乳癌の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,乳癌になる危険性がプラセボ投与群に比較し て有意に高くなる(ハザード比:1.24)との報告がある。また,英国における疫学 調査の結果,卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用服用している女性では,乳癌 になる危険性が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍),この危険性は,併用期 間が長期になるに従って高くなる(1年未満:1.45倍,1〜4年:1.74倍,5〜9 年:2.17倍,10年以上:2.31倍)との報告がある。 HRTと冠動脈性心疾患の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群に 比較して高い傾向にあり,特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比: 1.81)との報告がある。 HRTと脳卒中の危険性 米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型エストロゲ ン・黄体ホルモン配合剤投与群では,脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセ ボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある。 HRTと痴呆の危険性 米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験の結果,結合型 エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では,アルツハイマーを含む痴呆の危険 性がプラセボ投与群に比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告があ る。 〈参 考〉 企業報告 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 〈参考文献〉 1)Estrogen plus progestin and the incidence of dementia and mils cognitive impairment in postmenopausal women.JAMA,289:2651-2662(2003) 2)Effect of estrogen plus progestin on global cognitive function in postmenopausal women.JAMA,289:26632672(2003) 3)Effect of estrogen plus progestin on stroke in postmenopausal women.JAMA,289:2673-2684(2003) 4)Influence of estrogen plus progestin on breast cancer and mammography in healthy postmenopausal women. JAMA,289:3243-3253(2003) 5)Breast cancer and hormone-replacement therapy in the Million women study.Lancet,362:419-427(2003) 6)Estrogen plus progestin and the risk of coronary heart disease.N Eng J Med,349:523-534(2003) 2004年1月 2 重要な副作用等に関する情報 前号(医薬品・医療用具等安全性情報 No.196)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副 作用等について,改訂内容,参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹介いたしま す。 1 塩酸テルビナフィン(経口剤) ■ 販売名(会社名) ラミシール錠125mg(日本チバガイギー) 薬 効 分 類 等 その他の化学療法剤 効 能 効 皮膚糸状菌(トリコフィトン属,ミクロスポルム属,エピデルモフィトン属),カンジダ属, スポロトリックス属,ホンセカエア属による下記感染症 但し,外用抗真菌剤では治療困難な患者に限る。 1.深在性皮膚真菌症 白癬性肉芽腫,スポロトリコーシス,クロモミコーシス 果 2.表在性皮膚真菌症 白癬:爪白癬,手・足白癬,生毛部白癬,頭部白癬,ケルスス禿瘡,白癬性毛瘡,生毛 部急性深在性白癬,硬毛部急性深在性白癬 ◆手・足白癬は角質増殖型の患者及び趾間型で角化・浸軟の強い患者,生毛部白癬は感 染の部位及び範囲より外用抗真菌剤を適用できない患者に限る。 カンジダ症:爪カンジダ症 《使用上の注意(下線部追加改訂部分) 》 [警 告] 警 告 重篤な肝障害(肝不全,肝炎,胆汁うっ滞,黄疸等)及び汎血球減少,無顆粒球症,血 小板減少があらわれることがあり,死亡に至った例も報告されている。本剤を使用する 場合には,投与前に肝機能検査及び血液検査を行い,本剤の投与中は随伴症状に注意し, 定期的に肝機能検査及び血液検査を行うなど観察を十分に行うこと。 [重要な基本 的注意] 重篤な肝障害(肝不全,肝炎,胆汁うっ滞,黄疸等)があらわれることがあり,死亡に至った 例も報告されている。重篤な肝障害は主に投与開始後2ヵ月以内にあらわれるので,投与開始 後2ヵ月間は月1回の肝機能検査を行うこと。また,その後も定期的に肝機能検査を行うなど 観察を十分に行うこと。 汎血球減少,無顆粒球症及び血小板減少があらわれることがあるので,定期的に血液検査(血 球数算定,白血球分画等)を行うなど観察を十分に行うこと。 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)があらわれ 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 ることがあるので,本剤の投与中は観察を十分に行うこと。 [副作用 (重大な副作用)] 重篤な肝障害(肝不全,肝炎,胆汁うっ滞,黄疸等):発疹,皮膚そう痒感,発熱,悪心・嘔 吐,食欲不振,倦怠感等の随伴症状に注意するとともに,投与開始後2ヵ月間は月1回の肝機 能検査を行うこと。また,その後も定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い,異常が 認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。 横紋筋融解症:横紋筋融解症が現れることがあるので,観察を十分に行い筋肉痛,脱力感, CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇が認められた場合には投与を中止し,適切 な処置を行うこと。 〈参 考〉 企業報告 症例の概要 患者 No. 性・ 年齢 1 使用理由 (合併症) 副作用 1日投与量 投与期間 女 爪白癬 125mg 70代 ( 貧 血 ,食 道 45日間 炎,慢性副鼻 腔炎) 備考 経過及び処置 横紋筋融解症 企業報告 投与開始日 本剤の投与を開始。 投与22日目 筋肉痛・全身倦怠感なく,全身状態良好。 不明 家の仕事でだいぶ体が疲れたとのこと。 投与43日目 全身の筋肉痛出現。 投与45日目 全身倦怠感も加わり,内科受診。検査の結果, (投与中止日) C K ( C P K ): 4 1 7 0 I U / L , A S T ( G O T ): 98 IU/L,LDH:483 IU/Lと異常高値を認め, 横紋筋融解の疑いもあり入院。入院中は点滴 (1000mL/日)とすべての薬剤中止により経過 観察。電解質異常,腎機能障害は認めず。 中止1日後 筋肉痛,全身倦怠感は徐々に軽快。この日を ピークにCK(CPK) は減少傾向。 中止12日後 退院。 中止15日後 外来受診。特に問題なし。 臨床検査値 投与前 赤血球数(×104/mm3) ヘモグロビン(g/dL) 白血球数(/mm3) 好中球(%) 好酸球(%) 好塩基球(%) 単球(%) リンパ球(%) 血小板数(×104/mm3) AST(GOT) (IU/L) ALT(GPT) (IU/L) Al-P(IU/L) γ-GTP(IU/L) LDH(IU/L) 総ビリルビン(mg/dL) BUN(mg/dL) クレアチニン(mg/dL) 血糖値(mg/dL) 血清カリウム(mEq/L) 血清ナトリウム(mEq/L) 2004年1月 403 10.8 4700 ― ― ― ― ― 22.5 31 10 144 14 260 0.4 16.5 0.49 120 3.8 138 投与45日目 中止 (投与中止日) 1日後 407 9.5 4500 69.5 6.3 0.6 4.3 19.3 23.0 98 25 159 ― 483 0.3 16.6 0.49 132 3.8 139 378 8.9 4200 65.4 8.6 0.4 6.0 19.6 23.1 108 27 138 14 486 0.3 10.5 0.46 97 3.9 141 中止 3日後 中止 5日後 中止 7日後 中止 10日後 384 8.8 3700 55.0 11.7 0.1 5.0 28.2 26.0 83 35 141 15 560 0.3 14.0 0.47 91 4.2 142 390 9.1 4600 51.7 13.7 0.3 6.7 27.6 31.7 47 31 148 16 562 0.3 13.7 0.45 86 4.3 143 377 8.7 5000 52.7 11.3 0.8 7.1 28.1 29.8 32 22 153 15 455 0.3 12.4 0.44 97 4.2 142 391 9.1 4900 52.1 6.9 0.7 7.8 32.5 35.1 29 18 168 18 393 0.4 15.0 0.45 87 4.5 142 CK(CPK) (IU/L) アルドラーゼ(IU/L) 尿中ミオグロビン(ng/mL) 抗核抗体 抗DNA抗体 抗Jo-1抗体 270 ― ― ― ― ― 4170 ― ― ― ― ― 4600 ― 16 (−) (−) (−) 2143 15.3 ― ― ― ― 748 ― ― ― ― ― 244 ― ― ― ― ― 114 ― ― ― ― ― RAPA ― ― (−) ― ― ― ― 併用薬:酒石酸イフェンプロジル,酸化マグネシウム,ミドドリン,ランソプラゾール,クラリスロマイ シン,カルシトリオール,L-アスパラギン酸カルシウム,酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン 2 グルコン酸クロルヘキシジンを含有する製剤(口腔内 ■ 適応を有する製剤) ガム・CHX洗口液(サンスター) コンクール<F>(加藤翠松堂製薬) 販売名(会社名) 薬用リーチ洗口液fp(ジョンソン&ジョンソン) ラカルト(エスエス製薬)他 薬用はみがき類 洗口液 薬 効 分 類 等 含そう薬 歯痛・歯槽膿漏薬 《使用上の注意》 ●医薬部外品 使用上の注意として次の事項を,製品に添付する文書又はその容器若しくは被包に記載すること。 1)口の中に傷やひどいただれのある人は使用しないでください。 2)本剤又はグルコン酸クロルヘキシジンでアレルギー症状を起こしたことのある人は使用しないでくださ い。 3)使用中にじんましん,息苦しさなどの異常があらわれた場合には直ちに使用を中止し,医師又は薬剤師 に相談してください。特に,アレルギー体質の人や,薬などで発疹などの過敏症状を経験したことがあ る人は,十分注意して使用してください。 ●一般用医薬品(下線部追加改訂部分) [してはいけないこと] 次の人は使用しないこと 本剤又はグルコン酸クロルヘキシジンによるアレルギー症状を起こしたことがある人。 口の中に傷やひどいただれのある人。 [相談すること] 次の場合は,直ちに使用を中止し,この文書を持って医師,歯科医師又は薬剤師に相談すること 使用後,次の症状があらわれた場合 まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受ける こと。 ショック(アナフィラキシー):使用後すぐにじんましん,浮腫,胸苦しさ等とともに, 顔色が青白くなり,手足が冷たくなり,冷や汗,息苦しさ等があらわれる。 〈参 考〉 企業報告 医薬品・医療用具等安全性情報 No.197 症例の概要 患者 No. 性・ 年齢 1 使用理由 (合併症) 1日投与量 投与期間 男 歯周ポケット 不明 30代 洗浄 1回 (不明) 副作用 経過及び処置 備考 アナフィラキシーショック 企業報告 投 与 日 10:50頃 本剤の希釈液(グルコン酸クロル ヘキシジンとして0.005〜0.010%)で歯周ポケ ットを洗浄(適応外使用)。その直後,患者は 「気分が悪い」と訴えトイレに行かれる。 10:55頃 患者の具合を聞くためにトイレを ノックするも応答なし。救急車の手配を行う。 ショック体位をとらせ気道確保を行う。 11:00 救急隊員到着,病院に搬送される。 夕方 回復され帰宅される。 併用薬:不明 患者 No. 性・ 年齢 2 使用理由 (合併症) 1日投与量 投与期間 男 歯周ポケット 不明 50代 洗浄 1回 (不明) 併用薬:ステロイド剤 2004年1月 副作用 経過及び処置 備考 アナフィラキシーショック 企業報告 過去,患者は4〜5回本剤の希釈液(グルコン酸クロルヘキ シジンとして0.0007〜0.0010%)を用いて,歯周ポケット洗 浄を行っている(適応外使用) 。 投 与 日 9:30頃 施術開始。歯周膿瘍の症状確認。 スケーリング。治療の最後で本剤の希釈液に よる歯周ポケット洗浄を実施(適応外使用) 。 10:00〜10:15 治療終了。使用直後から, 耳の後ろが痒くなり始め,全身が痒くなる。 待合室へ移動後,上着をはだけると胸にアレ ルギー様の発赤が認められた。呼吸が困難に なり,一時的に全身が硬直した(3分間位)。 水を飲むが嘔吐した。意識はあるものの立っ てはいられない状態となる。 10:15頃〜10:20頃 救急車到着。 10:40頃 病院到着。到着時の血圧は60mmHg であった。 終了1日後 一般病室へ。 終了2日後 午後退院。 終了3日後 仕事を通常通り始められた。 Ⅱ JAPIC「CONTENTS」から 財団法人 日本医薬情報センター 食品医薬品安全部では,財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)が毎週発刊する「CON TENTS」及び毎月発刊する「医薬関連情報」等から情報を入手しています。 「CONTENTS」は国内医薬関係学術情報誌及びメーカー誌約 450 誌の「標題速読誌」で あり, 「医薬関連情報」はJAPICの機関紙で,内外のニュース・規制・副作用等の情報誌です。 つぎの「Ⅱ医薬文献ハイライト」は「CONTENTS」から,「Ⅲ副作用情報」は「医薬関連情 報」から主要な内容について編集会議において編集したものです。 なお、東京都健康局ホームページ(http://www.taims.metro.tokyo.jp/eisei/iyakuhin.nsf)では、主 に副作用情報についてデータベースとして利用していただけるよう掲載していますのでご利用下 さい。 医薬文献ハイライト JAPIC CONTENTS No.1589(2004.1.19)から −Akt シグナルを標的とした創薬の現状− 分子生物学の進歩は目覚ましく、その中でもシグナル伝達の研究成果が目立つ。例えば、 P13K(phosphatidylinositol-3-kinase)やその下流で働く Akt は細胞の生存シグナルにおい て中心的な役割を果たすことが明らかになってきた。その成果の一つとして、分子標的治療 薬等が開発されている。今回は P13K−Akt を標的とした創薬の現状をまとめた論文を紹介 したい。 「現代医療」Vol.35、No.12(2003)の特集として シグナル伝達の基礎と臨床応用 が 取り上げられ、シグナル伝達と分子標的治療が解説されている。その中には主としてがん治 療に関する基礎および臨床例が紹介されているが、首題に的を絞って下記論文を紹介する。 ○生存シグナルを標的とした創薬―― 藤田直也、佐藤沙織、鶴尾隆(東京大学分子細胞 研究所)p.2845−50 ・細胞生存にかかわるセリン・スレオニンキナーゼ Akt は protein kinase B(PKB)とも 呼ばれる。 ・Akt はもともと白血病やリンパ腫を自発的に起こすマウスの系統から単離されたウ イルスの癌遺伝子 V-akt の細胞内ホモログとして見出された。 ・Akt は乳癌、膵癌などで遺伝子増幅が認められたことなどにより、Akt の活性亢進は 細胞の癌化に関わっていることが明らかとなった。従って、Akt を介したシグナル伝 達系は抗癌剤開発のよい標的となりうると考えられ、その阻害薬開発が期待されて いる。それらのうち、開発が進展している薬剤をカテゴリー別にまとめる。 シグナル伝達系阻害薬 ® Planalogues ・DPIEL ・イレッサ ® ・ハーセプチン ・SH−5,SH−6 ・グリベック® P13K 阻害薬 トポイソメラーゼ阻害薬 ・Wortmannin ・トポテカン ・LY294002 ・カンプトテン ・エトポシド COX-2 阻害薬 ・Celecoxib およびその誘導体 キナーゼ阻害薬 Hsp90 阻害薬 ・スタウロスポリン ・ゲルダナマイシン ・UCN−01 ・ゲルダナマイシン誘導体 17−AAG ・PKC412 ・ラジシコール Farnesyltransferase 阻害薬 ・FTI−277 ・L774,832 ・トポテカン(TPT)に癌細胞の Akt 活性を減少させる活性が認められた。 ・Planalogues に属する DPIEL(ホスフォチジルイノシトールアナログ)とその次 世代の誘導体である Compound13(SH-5)と Compound16(SH-6)は Atk の 特異的な阻害薬として報告されており、今後の臨床試験が注目されている。 ・Akt の活性化に必須である膜移行を担うホスフォチジルイノシトールリン酸は P13K により産生されるが、この P13K を阻害する薬剤としては Wortmannin と LY294002 が知られている。いずれも臨床的には問題があり、新しい阻害薬の開 発が望まれる。 ・COX−2 阻害薬として知られる Celecoxib は他の COX−2 阻害薬と比較して、ア ポトーシス誘導活性が強い。これは Akt を介した生存シグナル伝達の遮断が関与 していることを示唆している。 ・キナーゼ阻害薬としてのスタウロスポリンおよび UCN-01 は強い抗腫瘍活性を もつ。 ・スタウロスポリンおよび UCN-01 は Akt のシグナル伝達を遮断していることが 明らかになった。 ・UCN−01 は現在、米国で第 II 相臨床試験が進行中。 ・Hsp90 阻害薬は Hsp90 と結合することにより、Hsp90 とその結合蛋白質との結 合を阻害する。 ・Hsp90阻害薬としてのゲルダナマイシン誘導体17−AAG(17-allylamino-17demethoxygeldanamycin)の第1相臨床試験は進行中。 ・Atk を介したシグナル伝達系は癌細胞の生存にかかわるだけでなく、細胞周期進 行・細胞増殖を抑制する重要な経路であり、この経路を標的にした阻害薬の今後 の開発と展開が注目される。 生存シグナルを標的とした医薬品は既に世にでている。特に、分子標的治療薬としてイレ ッサ、ハーセプチン、クリベックが注目されている。新しいコンセプトの医薬品であるだけ に使い方、情報提供が重要視されるが、それらに対する関心も大きい。さらに、これらに続 く、薬剤の開発にも大きな期待がかかっており、今後の展開に着目したい。 (松本和男) 特集記事一覧 JAPIC CONTENTS No.1587 (2004.1.5) <配列は雑誌名のアルファベット順> 特 集 名 雑 誌 名 巻 (号) JAPICDOC採択誌 動物性皮膚障害 皮膚科の臨床 45(12) 心筋再生の現状と将来展望 医学のあゆみ 207(11) (Ⅰ)経口抗菌薬を選ぶ視点、使うコツ−市中耐性菌感染症の時代に (Ⅱ)SARSとインフルエンザ〜冬の新たな危機管理 感染と抗菌薬 6(4) 救急外来における呼吸困難へのアプローチ 救急医学 27(13) 臨床研修コアスキル Medicina 40(12) 痴呆症学(1)−高齢社会と脳科学の進歩− 日本臨牀 61(増9) 内分泌攪乱物質と脳機能 脳の科学 25(12) リウマチ up to date Pharma Medica 21(12) 心・大血管領域におけるMultidetector-row CTの活用法 −16列で何ができる?− 臨床放射線 48(13) リウマチ・膠原病の患者を診たとき 臨床医 29(12) 「妊娠初期」で学びたいこと 産婦人科の世界 55(12) 内視鏡下手術の適応と限界 産科と婦人科 71(1) 統合失調症と認知機能−最近の話題 精神医学 45(12) 胸部・腹部のMRI 小児科診療 67(1) The Pharmacokinetics of Voriconazole British Journal of Clinical Pharmacology 56(S1) その他 (JAPICDOC非採択誌) 肥満と摂食制御と疾患 Bio Clinica 19(1) 長引く咳 JIM:Journal of Integrated Medicine 13(12) 胃癌手術 up to date 手術 57(13) 特集記事一覧 JAPIC CONTENTS No.1588 (2004.1.13) <配列は雑誌名のアルファベット順> 特 集 名 雑 誌 名 巻 (号) JAPICDOC採択誌 多彩なアレルギー性呼吸器疾患−病態と治療− アレルギーの臨床 24(1) 骨粗鬆症−広がる治療選択肢− 治療学 37(12) 関節リウマチ−最新治療とガイドライン− カレントテラピー 22(1) 眼関連遺伝子−最近の知見と今後の展望− 眼科 45(13) 放射線治療の進歩 癌と化学療法 30(13) 新しい外科治療 現状と今後の展開 外科治療 90(1) アディポサイトカイン ホルモンと臨床 51(12) Critical Careにおける超音波診断 ICUとCCU 27(11) Crohn病−一般的な消化器疾患のなかでいまだ原因不明の疾患− 医学のあゆみ 207(12・13) 腹膜透析 2003 腎と透析 55(別3) Hemifacial microsomiaの集学的治療 形成外科 46(12) 癌の免疫学−癌免疫療法の理論と臨床− 呼吸 22(12) 循環器疾患の予防医学 呼吸と循環 52(1) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)−GOLDをふまえた日常診療の指針− 内科 93(1) 色覚マニュアル−色覚を正しく理解するために− 日本医師会雑誌 130(12)付 肺アスペルギローマに対する最新の治療 日本胸部臨床 62(12) 高血圧性臓器障害とその対策−基礎・臨床研究の最新情報− 日本臨牀 62(1) 癌 en bloc 切除とnon-touch isolation technique の考え方と実践 臨床外科 59(1) (Ⅰ)SMO・CRO・IRB−新たな枠組みづくりへの展望 (Ⅱ)治験支援機関の新展開 (Ⅲ)教育と質の向上への努力 臨床評価 31(1) 麻酔科医の循環管理 臨床麻酔 27(12) てんかん焦点 臨床脳波 46(1) 記憶障害の最近の話題 臨床精神医学 32(12) 脳卒中−診断と治療のめざましい進歩 臨牀と研究 80(12) 婦人科癌化学療法 新しい展開 産婦人科治療 88(1) ベストEBM 産婦人科治療 産婦人科の実際 52(12) 環境ホルモンとヒトの生殖機能 産婦人科の実際 52(13) 電気けいれん療法の実際 −短パルス矩形波治療器による治療を中心に− 精神科治療学 18(12) 吐血をきたす疾患の病態と治療 小児外科 35(12) 腎疾患の治療法をめぐる最近の進歩 小児科 44(13) いわゆる不定愁訴への対応−鑑別すべき疾患と対応 小児内科 35(12) パーキンソン病とその周辺 昭和医学会雑誌 63(4) 周産期医療と高脂血症 周産期医学 33(12) その他 (JAPICDOC非採択誌) (Ⅰ)脳卒中治療ガイドライン (Ⅱ)日本脳卒中学会で作成された脳卒中感情障害 (うつ・情動障害)スケール JAMA(日本語版) 24(12)付 次世代の再生研究に向けた幹細胞の可塑性とそのメカニズム 実験医学 22(1) 整形外科の診療報酬 整形・災害外科 46(13) Ⅲ 医薬関連情報2003年12月号から 財団法人 日本医薬情報センター 副作用情報 1 Valproic Acid と Zolipidem の相互作用によると思われる夢遊病:1 症例の初めての報告 Sattar,S. P.(Omaha Veterans Affairs Med. Cen.,Omaha,USA)ほか Ann. Pharmacother. 37(10)1429−1433/(2003.10) 患者(男,47 才)は双極性障害の病歴があり,抑うつ症に対して citalopram 30mg の 1 日 1 回投与, 不眠に対して zolpidem 5mg の就寝時投与により維持されていた。定期的な診察中に,患者は精 神集中困難の増強,睡眠時間の短縮,被刺激性,気分の変動などを訴えた。双極性障害の病歴 および citalopram 治療中であることから,治療誘発の躁病の可能性が示唆された。Citalopram の 中止を検討したが,患者が投与中止に反対したため,補助療法として valproic acid 250mg 1 日 2 回投与を開始し,citalopram と zolpidem の投与は継続した。これらの治療を開始して 2 日目の夜 間,夢遊病を初めて経験し,翌日の夜間にも経験した。day 4 は,valproic acid を中止し, citalopram と zolpidem を継続し,その夜は問題なく睡眠した。精神科医に説明したが,特に問題を 見出すことができなかった。valproic acid 投与を再開したところ,day 6 に 3 回目の夢遊病を経験し た。valproic acid と zolpidem の相互作用の可能性が考えられた。zolpidem に替えて,trazodone 50mg 就寝時投与を開始したところ,夢遊病は発現しなかった。その後,trazodone は漸増して 150mg とし,valproic acid は 750mg 1 日 2 回に増量して,citalopram は 30mg/日のまま投与した。 臨床的改善が得られ,躁病症状は数週間以内に消失した。zolpidem の投与中止後,夢遊病に関 連した症状はすべて消退した。valproic acid と zolpidem の相互作用はこれまで報告されていない。 本症例は,valproic acid と zolpidem の相互作用によると思われる夢遊病について記述した初めて の報告であると思われた。夢遊病は,患者をおびえさせ,危険な状態に置くことになるので,適切 なケアのためにそのような相互作用を認識することが重要である。 参照文献 22 valproic acid (INN),zolipidem (INN) ,薬物相互作用 「医薬関連情報」速報 No.409 掲載 <参考> valproic acid (INN) ; エスダブル(東洋ファルマー) ; エピレナート(三共) ; サノテン(辰巳化学) ; セボトボル、バルプラム(共和薬品) ; セレニカ(三菱ウェルファーマ、日研化学) ; セレブシロップ(藤沢薬品) ; デパケン(協和発酵) ; ハイセレニン(日本オルガノン) ; バルプラム(共和薬品) ; バルプロ酸ナトリウム(サンノーバ) ; バレリン(大日本製薬) zolipidem (INN) ; マイスリー(藤沢薬品) 2 Carbamazepine 誘発の偽菌状息肉腫:1 症例の報告 Gul,U.(Ministry Health Oncology Education and Res. Hosp.,Ankara,Turkey)ほか Ann. Pharmacother. 37(10)1441−1443/(2003.10) 患者(男,54 才)は,2001 年 10 月,鼡径部および下腹部の皮膚に局在するわずかに鱗屑性,帯 赤褐色の斑様病変により受診した。これらの病変は数日間認められていた。受診の 2 ヵ月前から, けいれん発作に対して carbamazepine (以下 C)100mg/日を服用しており,皮膚病変が出現する 3 週間前に,投与量を 200mg/日に増量した。受診の 3 日前に多量に飲酒していた。C 以外の薬 物は服用していなかった。検査所見は,肝酵素値上昇(ALP 291 U/L,γ−glutamyl transferase 56 U/L,LDH 524 U/L)を除いて,特に異常はみられなかった。腹部および鼡径部の皮膚病変 の皮膚生検の結果,菌状息肉腫様の組織病理学的所見が示された。C 投与中止後,約 2 週間以 内に病変は完全に消退した。これらの結果から,C による偽菌状息肉腫の診断が示唆された。 Naranjo probability scale により,本症例における C 療法と偽菌状息肉腫との関連性は highly probable とされた。菌状息肉腫と診断される患者に対しては薬物使用について質問すべきであり, 医師は偽菌状息肉腫の徴候を認識すべきである。 参照文献 12 carbamazepine (INN) 「医薬関連情報」速報 No.409 掲載 <参考> carbamazepine (INN) ; カルバマゼピン(共和薬品) ; テグレトール(日本チバガイギー) ; テレスミン(三菱ウェルファーマ) ; レキシン(三共) 3 Labetalol および Nifedipine 徐放性製剤粉砕投与による死亡:1 症例の報告 Schier,J. G.(New York City Poison Control Cen.,New York,USA)ほか Ann. Pharmacother. 37(10)1420−1423/(2003.10) Nifedipine 徐放錠の粉砕投与が患者死亡の一因となった 1 症例の報告。患者(女,38 才)は急性 呼吸困難により救急部を受診した。病歴として喘息,HIV,高血圧,末期腎臓病,喫煙など複数の 医学的問題を有していた。検査結果から,急性肺水腫および肺炎と診断された。初期治療による 状態安定後,治療が hydralazine 50mg 1 日 3 回,labetalol 600mg 1 日 2 回,nifedipine 徐放錠 (nifedipine XL 錠)90mg 1 日 1 回の経口投与に変更された。これらはすべて看護師により粉砕され 経鼻胃管から投与された。患者は次第に徐脈が悪化し低血圧,不全収縮が発現した。 epinephrine と atropine の静脈内投与により蘇生し,dopamine,norepinephrine,および dobutamine の注入が行われた。norepinephrine および dopamine 注入は漸減中止されたが,dobutamine は継 続投与された。labetalol は 200mg に減量された。翌朝,labetalol 200mg と nifedipine XL 錠 90mg が,看護師により再び粉砕され,経鼻胃管から投与された。患者は再び,進行性徐脈と低血圧を 発現し,心停止を経て死亡に至った。nifedipine XL 錠の粉砕投与により,患者に重度の低血圧が 生じた。labetalol の併用投与は,代償性心拍数増加を妨げた。同じ方法で nifedipine XL を反復投 与したことは,医療従事者のコミュニケーションおよびドラッグ・デリバリー・システムの理解に根本 的な問題があることを強く示している。Naranjo probability scale により,患者の低血圧と nifedipine および labetalol 療法との関連性は highly probable であることが示された。β遮断剤とカルシウムチ ャネル遮断剤を同時投与すると,相乗効果を生じることがある。放出制御型経口薬の放出性は, 製剤を粉砕すると破壊され,その結果,薬物総量の急速なバイオアベイラビリティを生じる。放出 制御型製剤の作用機序とそれらの投与に関して看護師,医師,および薬剤師間の教育と連絡の 重要性を強調する必要があると思われた。 参照文献 15 nifedipine (INN),labetalol (INN) 「医薬関連情報」速報 No.409 掲載 <参考> ※「nifedipine XL」は本邦未発売であるが、ニフェジピン徐放剤は販売されている。 nifedipine (INN) ; アテネラート(科研製薬) (徐放剤) ; アロトップ(沢井製薬) ; エマベリン(塩野義製薬) ; カルジオルフト(テイコクメディックス、富士カプセル、竹島製薬) ; クノラミン(日本薬品) ; コバニフェート(小林薬学) ; コリネール(日本医薬品) ; トーワラート(東和薬品) ; ニレーナ(三和化学研究所) ; ヘルラート(アズウェル) ; メノプリジン(マルコ製薬) ; ラミタレート(大洋薬品、科薬) labetalol (INN) ; アスクール(東和薬品) ; アドブロール(竹島製薬) ; アミタロール(小林化工) ; トランデート(武田薬品、グラクソ・スミスクライン) ; レスポリート(鶴原製薬) 4 婦 人 科 が ん お よ び 関 連 し た 診 断 に 及 ぼ す Conjugated Equine Estrogen + Medroxyprogesterone Acetate の影響:Women s Health Initiative 無作為試験 Women s Health Initiative Investigators:Anderson,G. L.(Fred Hutchinson Cancer Res. Cen., Seattle,USA)ほか JAMA 290(13)1739−1748/(2003.10.1) 婦人科がんに及ぼす継続的ホルモン併用療法の影響を調べるため,estrogen+progestin 療法の Women s Health Initiative 無作為二重盲検プラシーボ・コントロール試験のデータを解析した。 1993 年 9 月〜1998 年 10 月に登録された,ベースラインにおいて子宮摘出を受けていない閉経後 女性 16608 例(50〜79 才)が無作為に,Prempro(conjugated equine estrogen(以下 E) 0.625mg+ medroxyprogesterone acetate(以下 M)2.5mg 含有の錠剤)1 錠/日投与(8506 例),またはプラシ ーボ(8102 例)を投与された。平均 5.6 年の追跡期間中,111 例が侵襲性の婦人科がんと診断さ れた:侵襲性の卵巣がん 32 例,子宮内膜がん 58 例,非子宮内膜性子宮がん 1 例,子宮頚がん 13 例,他の婦人科がん 7 例。プラシーボと比較して,E+M 群における侵襲性の卵巣がんのハザ ード比は 1.58[95%CI 0.77〜3.24],子宮内膜がんのハザード比は 0.81(0.48〜1.36)であった。腫瘍 組織,ステージ,分化の程度などの分布に大きな差異は認められなかった。他の婦人科がんの発 症率は低く,無作為化によって差はみられなかった。子宮内膜生検の必要性は E+M 群の方が多 かった(33% vs 6%;P<0.001)。以上,子宮内膜がんの発症率はプラシーボと同様であるが,継続的 な E+M 併用療法により卵巣がんのリスクが増大することが示唆される。膣出血の検査に必要な子 宮内膜生検の負荷が増すことから,この治療法の利用が制限される。これらのデータは,継続的ホ ルモン併用療法を行う場合に注意が必要であることをさらに支持するものである。 参照文献 35 Prempro ( conjugated equine estrogen / medroxyprogesterone acetate : medroxyprogesterone (INN) ),hormone therapy 「医薬関連情報」速報 No.408 掲載 <参考> ※「Prempro」は本邦未発売であるが、その有効成分である「 conjugated equine estrogen」と 「medroxyprogesterone acetate」はそれぞれ単剤で販売されており、併用される可能性がある。 conjugated equine estrogen ; medroxyprogesterone acetate; ; ; ; ; プレマリン(旭化成ファーマ、武田薬品) ネルフィン(科薬) ヒスロン(協和発酵) プロゲストン(日本ワイスレダリー、富士製薬) プロベラ(ファイザー) メドキロン(東和薬品) 東京都医薬品情報№353 (平成16年2月号) 平成16年1月21日編集 平成16年2月発行 編集委員 長岡 小川 田部 木内 阿部 発 東京都健康局食品医薬品安全部 安全対策課 郵便番号163−8001 東京都新宿区西新宿2―8―1 電話(ダイヤルイン) 03(5320)4507 行 常雄(健康局技監) 木村 豊彦(健康局参事(安全対策担当) ) 誠一(食品医薬品安全部副参事(安全情報担当) ) 光宏(薬事監視課長) 智香子(府中病院) 小松 千枝子(梅ヶ丘病院) 奈保子(大久保病院) 小縣 正幸(大塚病院)
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