スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運
動許容条件に関するガイドライン (2008 年改訂版)
Guidelines for Exercise Eligibility at Schools, Work-Sites, and Sports in Patients with
Heart Diseases(JCS 2008)
合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心臓リハビリテーション学会,
日本心電学会,日本心不全学会,日本スポーツ法学会,日本体育協会,日本体力医学会,
日本臨床スポーツ医学会
班 長 長
嶋
正
實 あいち小児保健医療総合センター
班 員 伊
東
春
樹 榊原記念病院 / クリニック分院
勝
村
俊
仁 東京医科大学健康増進スポーツ医学講座
班 員 野
川久保 清 共立女子大学家政学部公衆栄養学研究室
岸
田 浩 日本医科大学内科学講座
古
賀
義
則 久留米大学医学部附属医療センター循環器科
坂
本
静
男 早稲田大学スポーツ科学学術院
下
光
輝
一 東京医科大学衛生学・公衆衛生学
高
田
英
臣 横浜市立スポーツ医科学センター内科診療科
高
橋
幸
宏 榊原記念病院心臓外科
中
澤 原
隆
司 北野病院心臓センター
橋
本 通 昭和大学藤が丘リハビリテーション
馬
場
三 愛知医科大学小児科学講座
牧
田 茂 埼玉医科大学リハビリテーション科
武
者
樹 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病
礼
春
病院循環器内科
院循環器内科
協力員 宇津木 伸
東海大学専門職大学院実務法学研究科
安 田 東始哲 あいち小児保健医療総合センター循環器科
誠 脳神経疾患研究所附属総合南東北病
院小児科
小
林
義
典 日本医科大学内科学講座
村
瀬
訓
生 東京医科大学健康増進スポーツ医学講座
小
川 聡 慶應義塾大学呼吸循環器内科
齋
藤
靖 さいたま記念病院内科
外部評価委員
浅 井 利 夫 東京女子医科大学東医療センター
スポーツ健康医学センター
越
後
茂
之 えちごクリニック
太
田
壽
城 国立長寿医療センター
宗
(構成員の所属は 2008 年 9 月現在)
目 次
改訂にあたって…………………………………………………… 2
Ⅰ.心疾患における運動許容条件の必要性…………………… 3
1.学校(小学校∼高等学校) …………………………… 3
2.大学生 …………………………………………………… 5
3.職域 ……………………………………………………… 6
4.スポーツ ………………………………………………… 7
Ⅱ.運動許容条件の基本的考え方…………………………… 10
1.心疾患のリスク分類と運動・作業強度分類 ……… 10
2.学校における運動許容条件の考え方 ……………… 11
3.職域における運動許容条件の考え方 ………………
4.スポーツにおける運動許容条件の考え方 …………
5.障害者スポーツにおける運動許容条件の考え方 …
Ⅲ.運動強度の分類……………………………………………
1.スポーツ・運動 ………………………………………
2.学校 ……………………………………………………
3.職域の作業強度の分類 ………………………………
Ⅳ.法的問題……………………………………………………
1.学会のガイドラインというものの位置づけ ………
11
12
13
14
14
14
17
20
20
1
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
2.ガイドライン利用に際しての留意点 ……………… 21
Ⅴ.心疾患の病態別,対象別運動許容条件………………… 22
1.先天性心疾患 …………………………………………
2.先天性心疾患術後 ……………………………………
3.後天性弁膜症 …………………………………………
4.心筋疾患 ………………………………………………
22
25
27
31
5.冠動脈疾患 …………………………………………… 35
6.不整脈 ………………………………………………… 38
7.高血圧 ………………………………………………… 44
8.マルファン症候群 …………………………………… 45
付録 1 各スポーツ領域でのメディカルチェックの現状 … 46
文献……………………………………………………………… 50
(無断転載を禁ずる)
改訂にあたって
ガイドラインの目的
定の心疾患患者の運動許容の最終判断は,患者をとりま
運動・スポーツへの参加は健康な人たちだけでなく,
く環境を考慮して,担当医と患者本人が行うものであり,
種 々 の 疾 患 を 持 っ た 人 た ち に と っ て も, 健 康 増 進,
その目安として本ガイドラインがある.したがって,本
QOL の改善,生活習慣病やメタボリックシンドローム
ガイドラインは運動許容条件を判断する立場にある現場
の予防や危険因子の減少,心身の健康に対する危険因子
の医師(健康スポーツ医,産業医,学校医)に利用され
の減少などに欠かすことができないものであり,また社
ることを前提としたものである.
会的交流の楽しさなども与えてくれる.
一方,以前は心疾患などの慢性疾患を有する患者は病
今回の改訂にあたって
状の悪化を恐れて運動を禁止される傾向にあったが,最
本ガイドラインは循環器病の診断と治療に関するガイ
近では運動によって患者の QOL が改善することも明ら
ドライン(2001 − 2002 年度合同研究班報告)「心疾患
かにされてきたので,むしろ許容範囲内で運動・スポー
患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関
ツへ参加することが勧められるようになっている.
するガイドライン(2003)」
(班長:川久保清)1)に沿って,
心疾患患者が運動・スポーツに参加することを希望す
新しく得られた知見やエビデンスを加えながら改訂した
る場合にどのように許容するかを判断したり,スポーツ
ものである.
選手が心疾患に罹患した後にどのようにスポーツ活動に
なお,2004 年 7 月に厚生労働省が一般市民にも AED
復帰できるかを判断したりすることがしばしば求められ
(Automated external defibrillator)の使用も認めてから,
る.また,学校教育においては心疾患を有する児童・生
運動・スポーツの現場を含めて急速に全国に普及し,
徒にどの程度の体育授業や課外活動を許可するかについ
AED による心室頻拍 / 心室細動の救急処置で患者が救命
て担当医や学校医が判断する必要がある.職域において
されるようになっている.しかし,AED の普及には地
は,心疾患を有する従業員がスポーツ活動を希望する場
域のさらなる努力が必要である 2).AED は完全な救急救
合だけでなく,職場の作業条件を運動と考えれば,作業
命機器ではないので,AED が設置されているからとい
従事の許容や心疾患罹患後の職場復帰について産業医が
う理由で運動許容基準を変更できるというわけではな
判断する必要がある.
く,あくまでも救命的な処置が可能になったと考えるべ
本ガイドラインでは,心疾患を有する患者に対して,
きである.
心疾患の重症度に応じた運動許容条件について示すもの
2
である.運動許容条件については,学校においては体育
ガイドライン作成の経緯
授業や課外活動に関するもの,職域においては運動と共
心疾患患者におけるスポーツ許容条件については米国
に作業強度に関するもの,スポーツにおいてはスポーツ
スポーツ医学会と米国心臓病学会によるベセスダ会議勧
活動に関するものを取り上げた.
告があり,最近では 2005 年に改訂された勧告が提案さ
心疾患患者の運動許容条件については,無作為化比較
れている 3).この勧告は米国における小児から成人まで
試験のようなエビデンスがないのが現状である.しかし,
の心疾患患者のスポーツ許容の判断に使われるものであ
心疾患患者の重症度の判定やそのための検査について
り,本ガイドライン作成の際,参考にした.また日本臨
は,エビデンスがある.そのエビデンスを利用して,多
床スポーツ医学会学術委員会内科部会勧告(委員長:村
くの専門家が合意するような運動許容条件の勧告あるい
山正博)は,循環器疾患におけるスポーツ参加・禁止の
は目安を示すのが本ガイドラインの目的である.ある特
基準を示しており,十分参考になる 4).
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
学校における運動許容条件については,日本小児循環
針の作成に有用)がある.
器学会学校 検診委員会などが作成した基準やガイドラ
クラス C:専門家の意見
5)
イン があり,先天性心疾患や不整脈を有する小児の体
育実技や部活動の許容条件が示されている.日本学校保
ガイドラインの構成について
健会で 2002 年度に心臓病管理指導表を改訂し,新しく
まず,「心疾患患者における運動許容条件の必要性」
「学校生活管理指導表」が提案され,全国に使われてい
について,学校,職域,スポーツの領域ごとに運動中や
る 5).学校における運動許容条件については,これらを
作業中の事故の実態から概説した.続いて,「運動許容
参考にした.
条件の基本的考え方」の項では,心疾患患者のリスクの
職域における作業許容条件については,米国疾病予防
程度と,運動(作業)強度との関連から,運動許容条件
センターと米国スポーツ医学会における身体活動ガイド
設定の考え方を示した.心疾患のリスクとは,自分に対
ラインに示されている作業強度別の望ましい運動耐容能
するものと他者に対するものとし,自分にとっては,運
を提示した 6).また,就労中の作業強度は同一の職業で
動・作業中の突然死や失神などによる事故と,自分が持
も作業内容により大きく異なるため,本ガイドラインで
つ心疾患の病態が悪化することである.他者に対しては,
は,職業別,作業分類別の活動強度を広く示すことによ
心疾患患者が失神などを起こすことで引き起こされる他
り,職場復帰及び復帰後の職務内容を決める際の参考と
者に対する危害である.職域やスポーツの特殊な条件下
なるように配慮した.活動強度の基礎データについては,
では他者に対する危害も考慮しなければならない.
Ainsworth らのデータ 7)より 3METs 以上の労働に関する
「運動強度の分類」では,既存のガイドラインの強度
活動を抜粋して提示した(表 11).
分類を参考にした.法的問題の項では,法律の専門家に
運動許容条件を設定することと医師の安全配慮義務との
文献の評価法
関連について執筆頂いた.「心疾患の病態別,対象別運
文献の質的評価法は,運動許容条件そのものに関する
動許容条件」では,心疾患ごとに運動許容条件の考え方
文献が少なく,エビデンスが乏しいため,簡易分類とし
を示した.先天性心疾患などでは主に学校で問題となる
て A ∼ C 分類を採用した.
ため,疾患ごとに対象が異なる構成となっている.
クラス A:良好な証拠(メタ分析,無作為化比較試験,
各スポーツ領域でのメディカルチェックの現状につい
コホート研究)がある.
ては許容条件とやや異なる内容ではあるが参考になるの
クラス B:かなりの証拠(ケースコントロール試験,
で付録として最後の項に示した .
対照の少ない試験,一致しないデータであるが,治療指
態度などスポーツをする側の条件や天候,気温,湿度,
Ⅰ
心疾患における
運動許容条件の必要性
高度などの環境条件にも影響を受けるのは当然であり,
それらを加味した総合的な判断が必要である.
1
学校(小学校∼高等学校)
本章では,領域ごとに運動中,作業中の心疾患による
運動・スポーツは小児の心身の発達には欠くべからざ
事故の実態とその予防対策としての運動許容条件ガイド
るものであり,心疾患の有無にかかわらず,原則的には
ラインの必要性を示すものである.心疾患による事故,
何らかの運動への参加を勧めるべきと考えられる.しか
特に心臓性突然死の実態を把握することにより,運動許
し,心疾患による運動中の突然死,運動による短期的・
容条件として取り上げるべき心疾患の病態が明らかにな
長期的な病態の悪化,重篤な運動誘発性不整脈などもみ
るものである.
られ,運動制限の必要な症例もある.このような児童生
もちろん,運動許容条件は運動量だけでなく,競技に
徒でも教科体育や学校行事などをすべて禁止するのでな
おけるストレス,脱水の有無,運動に対する動機,意欲,
く,可能な範囲で参加を考慮すべきである.たとえばサ
3
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
ッカーやハンドボールでは選手としての参加は難しくて
ックなどがあり,既手術例としてはファロー四徴症,短
も,ゴールキーパーやマネージャーとしての参加は可能
絡手術,マスタード手術などが多かった 11).
な場合もある.そのような判断に使われるのが運動許容
伊東らは 1988 ∼ 1993 年に日本体育学校健康センター
条件である.
に報告された学校管理下の心臓性突然死 536 例中,生前
1
運動中の突然死の実態
小児期の突然死の頻度を死亡個票による集計で求めた
に心疾患が指摘されていた 209 例を検討し,術後先天性
心疾患の 69 例(33.0%),未手術先天性心疾患 32 例(15.3
%),心筋症 51 例(14.4%),
QT 延長症候群 13 例(6.2%),
ものでは,大阪の 5 ∼ 19 歳の年間突然死は年齢相当人
そ の 他 の 不 整 脈 31 例(14.8 %), 川 崎 病 5 例(2.4 %),
口 10 万人に対して男子では 3.0 人,女子では 1.5 人で,
心筋梗塞 5 例(2.4 %),原発性肺高血圧症 2 例(1.0 %)
そのうち心臓性突然死と考えられるものが約 60 %と報
心筋炎 1 例(0.5%)であったと報告している 10).
Maron は突然死した若年者のスポーツ選手 387 人の死
8)
告されてきた .
日本スポーツ振興センターは毎年,学校管理下の突然
因を報告している(多くは剖検されている)が,それに
死の実態を報告している .それによると 10 数年前には
よると肥大型心筋症 26.4%,心臓震盪 19.4%,冠動脈奇
小学生,中学生,高校生全体で毎年 100 人程度の学校管
形 13.7%,原因不明の左室肥大 7.5%,心筋炎 5.2%,大
理下の突然死が報告されていた.しかし,最近では学校
動脈瘤破裂(マルファン症候群)3.1 % 12)などで,不整
管理下の心臓性突然死が減少し,平成 16 年度 44 名,平
脈による突然死は比較的少ない.外国では日本が行って
成 17 年度は 35 名になっている.減少している要素とし
いるような学校心臓検診が行われておらず,前もって致
て,学校心臓検診により突然死の可能性のある疾患が発
死的不整脈の有無については調査されていないことも原
見されやすくなったこと,学校での心疾患児の管理が適
因と考えられる.
切になったこと,先天性心疾患の術前術後の管理が改善
新村らは神奈川県の児童・生徒の急死例 97 例を検討
されたことなどが推測される.
し,原因不明の急性心機能不全(剖検の結果,流動性の
年齢とともに突然死は増加する傾向がみられ,明らか
心臓血,諸臓器の鬱血等の急性心臓死を示唆する所見の
に男子の方が多い.突然死の原因として 60 ∼ 70%が状
みで,器質的異常を認めないもの)60 例,器質的心疾
況証拠から心臓性と推測されているが,我が国では剖検
患 18 例(肥大型心筋症 3 例,不整脈源性右室心筋症 2 例,
例が少なく,すべての症例が心臓性突然死と確認されて
先天性心疾患 4 例,川崎病 3 例,心筋炎 3 例,QT 延長症
いるわけではない.
候群 2 例,心房粗動 1 例),脳血管障害 14 例,熱中症 5
9)
学校管理下の突然死の発症状況をみると,運動に関連
例と報告し,97 例中 90 例は生前心疾患を指摘されてい
したものが多い 10).1988 ∼ 1993 年までに日本体育学校
なかったという 13).
健康センターに報告された学校管理下の心臓性突然死
小児期心臓性突然死の機序がまだ充分解明されておら
536 例については,ランニングに関連した突然死が多く,
ず,不明な点も少なくない.生前まったく無症状で,心
207 例(38.6 %,うちランニング中 142 例,ゴール直後
電図にも異常を認めないものが多いのも現状である.
49 例,ゴール直前 16 例)であり,その他,歩行 82 例(15.3
%),球技 78 例(14.6 %),座位 39 例(7.3 %),水泳 28
例(5.2%)などであった 10).
2
突然死の原因疾患
1 ∼ 30 歳までの 469 例の突然死の剖検例を集計した
11)
4
3
運動によって病態が増悪する
可能性のある心疾患または状況
①心筋疾患
小児期では,肥大型心筋症が問題である.症状が比較
Liberthson らの報告 をみると,心臓性突然死の原因疾
的軽微なため,運動制限が緩やかになりがちで,運動中
患として心筋炎,肥大型心筋症,冠動脈疾患,先天性冠
に突然死する場合が少なくない.また成人に比較して肥
動脈奇形,伝導障害,僧房弁逸脱,大動脈瘤破裂,術後
大型心筋症の進行が早いものが多く,予後不良のものが
を含む先天性心疾患などが多くみられる.また死亡前に
少なくない.
明らかな心疾患を持っていることが判明している 327 例
剖検例では心筋炎が突然死の大きな原因疾患になって
の原疾患をみると,未手術例としては大動脈弁狭窄症,
おり,小児期の突然死の 9%を占めているという報告も
肺血管閉塞性病変などが多く,それに続いて肥大型心筋
ある 14)が,生前に心筋炎と診断することが困難なことも
症,拡張型心筋症,心筋炎,QT 延長症候群,房室ブロ
多く,剖検で初めて診断されることも多い.心筋炎後の
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
患者において,運動許容条件の設定が必要になる.
る.
②冠動脈疾患
⑤心臓震盪
小児の運動による突然死の原因の中に冠動脈疾患も指
心臓震盪(Commotio cordis)は前胸部に非穿通性の
摘されている.しかし,我が国では剖検例が少ないこと,
衝撃を受け,突然,心室細動になり,突然死する可能性
川崎病による冠動脈疾患以外は生前には発見しにくいこ
のある病態である.小中学生に多く発生し,野球などの
となどからその頻度や状況は明らかではない.運動時に
ボールによる胸部への衝撃が最も多い.一般的には心臓
胸痛や失神があり,それに伴う心電図変化がある場合に
は構造的には異常は認められない.予防のためにチェス
は冠動脈疾患を念頭におく必要がある.小児期の冠動脈
トパッドが考えられているが,十分に予防できるわけで
疾患としては先天性冠動脈奇形(主に冠動脈起始異
はない.
12)
常) ,川崎病による冠動脈病変
15)
があげられる.
③先天性心疾患
先天性心疾患は,非チアノーゼ性とチアノーゼ性に分
類されるが,軽症の非チアノーゼ性心疾患は健康児と同
Maron らの報告によると若年者スポーツ選手の突然死
原因の第 2 位にあげられている 12).我が国では報告され
た症例はまだ少ないが今後,注目すべき問題である.
⑥学校における AED の設置
じように運動しても病態の悪化はない 16).大動脈弁狭窄
我が国でも若年者のスポーツ中の突然死を予防するた
症や大動脈縮窄症などの左心系の狭窄病変は運動時の病
めに心室頻拍 / 心室細動の治療目的に AED の普及が全国
態悪化に注意が必要である.また僧帽弁逆流も運動によ
で急速に広まっている.スポーツ施設だけでなく学校で
って逆流量が増加する可能性がある.また肺高血圧に伴
の設置も目ざましく増えているが,明らかな設置基準が
う肺動脈閉塞性病変の著しいアイゼンメンガー症候群も
ない .
運動によって病態が悪化する可能性がある.チアノーゼ
アメリカでは以下の基準に 1 つでも合致すれば,学校
性先天性心疾患の場合には,運動中の呼吸困難のため.
には AED を用意すべきであるとの勧告が出されてい
患児の能力以上の運動を強制することは困難である.
る 24).(1)5 年以内に使用する可能性がある場合.(2)
先天性心疾患術後症例も運動によって病態が増悪する
心臓性突然死する可能性がある対象者がいる場合.(3)
場合がある.術直後だけでなく,術後遠隔期にも不整脈
90%以上の症例が失神してから除細動まで,5 分未満で
の発生は増加し,突然死する可能性はある.多くは不整
可能であること,または.訓練すべきこと.
脈死と考えられ,心筋切開,心筋切除,虚血,心筋障害
の進展,伝導障害などの不整脈の背景因子となる要因が
多数存在する
2
大学生
17)
ので,術後長期の管理が必要である.不
整脈のほか残存弁逆流や肺動脈閉塞性病変がある場合に
小・中学生,高等生と年齢が増すにつれ,心臓性突然
は運動に対する注意が必要である.
死の発生頻度が増加することから,大学生においても心
臓性突然死の頻度が高くなることが推察される.しかし
④不整脈
ながら,我が国における大学生の運動中の突然死に関し
運動によって誘発される不整脈が問題となる.QT 延
て,その原因や発生頻度,病態生理,予防策など十分に
長症候群は運動中や睡眠中にも突然死が起こりうるが,
解明されているわけではない.大学生では,競技スポー
水泳中にも多いことが報告されている 18).学校検診で偶
ツを含め運動を行う者が多いにもかかわらず,心臓に関
然発見される無症候性の QT 延長は予後良好なことが多
するメディカルチェックは十分に行われていないのが現
いが,LQT1 や LQT2 のような症例で運動中や水泳中に
状である.
失神や突然死が報告されている 19).基礎疾患のない単形
性心室頻拍の予後は良好で,突然死の原因になることは
まれである
20)
1
運動中の突然死の実態
.しかし,カテコラミン感受性(誘発)多
米国における若年スポーツ選手の突然死の発生頻度
形性心室頻拍 21)−23),不整脈源性右室心筋症,先天性心
は,女子の 1.33 人 /100 万人 / 年に比較して,男子では
疾患術後の心室頻拍 / 心室細動は失神や突然死の原因に
7.47 人 /100 万人 / 年と男子で高頻度である 25).また,男
なる.高度房室ブロックや完全房室ブロックでは長い心
子高校生の 6.60 人 /100 万人 / 年に比し,男子大学生では
停止や心室頻拍 / 心室細動などの心室不整脈が問題とな
14.50 人 /100 万人 / 年と大学生で高いことが報告されて
5
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
いる 25).
は,小児とほぼ同様と考えられる.すなわち,先天性心
我が国の全国 243 大学,短期大学における突然死アン
疾患,心筋症,不整脈,冠動脈疾患などである.若年ス
では,回答のあった 181 校(74%)の延べ
ポーツ選手では肥大型心筋症とスポーツ心臓との鑑別が
学 生 数 11,868,668 名( 昭 和 54 年 1 月 か ら 昭 和 62 年 8 月
必要となる.まれではあるが Brugada 型心電図を有する
ケート調査
26)
まで)のうち,38 校,102 例(男:女= 99:3)の突然
若年スポーツ選手に運動中の心室性不整脈誘発例があ
死が報告された.女子の 3 例は基礎疾患を有しており,
り,心電図の経過観察が必要と思われる.川崎病の長期
予期せぬ突然死は男子のみで,その頻度は 8.5 人 /100 万
予後は不明であったが,成人期に達した川崎病例に虚血
人 / 年であった.また,全国 576 の大学,短期大学を対
性心疾患発症が報告され 30)−33),経過観察が必要な重要
では,昭和 57 年
な既往疾患となった.また,高身長の若年スポーツ選手
度から昭和 63 年度の 7 年間に 21 例の突然死があり,そ
でマルファン症候群による心血管系病変が突然死の原因
の発症率は 12.8 人 /100 万人 / 年と報告されている.
となりうるため,慎重な管理が必要である.
象とした循環器検診アンケート調査
2
26)
突然死の原因疾患
3
職域
我が国における大学生の突然死の原因疾患に関する調
査はほとんどないため,欧米の若年スポーツ選手の報
告
3),27),28)
について述べる.突然死の原因疾患には人種差,
スポーツ選手や運動指導員のように,職業としてある
いは仕事の一部として運動を実施している者もいるが,
地域差がある.米国 3),27)では若年スポーツ選手の突然死
仕事中に特別な運動を実施していなくても,一般に労働
の原因として,肥大型心筋症が最も多く,心臓震盪,冠
は身体活動を伴うものであり,平日では 1 日のうち 30
動脈奇形,原因不明の左室肥大(肥大型心筋症疑い)が
∼ 40 %の時間が費やされることが多い.そのため,心
一般的である.イタリア 28)では不整脈源性右室心筋症が
疾患を有する者が建設業や運送業などの高強度の身体活
最多で,冠動脈硬化性疾患,冠動脈奇形と続くが,肥大
動を伴う労働に従事する際は,活動に制限が必要となる
型心筋症は少ない.欧米での若年スポーツ選手の突然死
場合がある.また,近年問題となってきている過労死の
例は剖検例が多いこともあり,基礎心疾患が明らかとな
中には,心疾患や脳血管疾患が多く含まれており,十分
ることが多い.
な配慮が必要となる.さらに,電車,バス,航空機など
我が国においては,剖検率が低く,死亡診断書の病名
の公共交通機関の運転手や運送業に従事する者は,仕事
に急性心不全とする傾向があり,正確な死因が明らかで
中に心事故を起こした場合には,乗客を巻き込んだり,
ないことが多い.1948 ∼ 1999 年の 52 年間の東京都 23
重大事故となったりすることもあり,他者に及ぼす影響
区内におけるスポーツ中の突然死例 534 件(剖検率 72.8
も大きい.したがって,職業として運動を実施していな
%)の疫学調査 によれば,年齢別では10歳代116例(21.7
い場合でも,心疾患を有する場合には適切なリスク評価
%)が最も多く,男女比は約 5:1 である.若年者の死
を行った上で就業許可を与える必要があり,その条件を
因の第 1 位は形態上急性心臓死の結果としての所見しか
示すことは重要なことであると考えられる.
29)
なく,突然死の機序が明らかでない急性心機能不全で,
その平均年齢は 20.4 ± 9.5 歳である.急性心機能不全は
10 歳代の 51%,20 歳代の 46%を占め,他の心疾患(弁
労働に関連した心疾患死亡や
突然死の実態と原因疾患
膜症,心肥大,心筋炎,冠動脈起始異常,心筋症,心奇
労働者の心筋梗塞の発症状況や死亡状況などの調査報
形など)は 10 歳代の 26%,20 歳代の 21%に認めている.
告及び職種別の心疾患発症状況などについての報告はい
運動との関連では急性心機能不全,他の心疾患はそれぞ
くつかあるが,労働による負荷と心疾患発症との直接的
れ運動中に 60 %,58 %,運動直後に 15 %,20 %が突然
な関連については報告が少なく,十分には検討されてい
死を起こしていた.生前に健康あるいは病歴のない者が,
ないのが現状である.
他の心疾患では 4 割強であるのに対して,急性心機能不
Hirobe ら は 1994 年 か ら 2000 年 に か け て 71 施 設 の
全では 70%以上を占めていた.
257,440 名(男性 207,310 名,女性 50,130 名)の労働者
における心筋梗塞の発症率を WHO MONICA 研究 34),35)
運動によって病態が増悪する
可能性のある心疾患
に準じて調査した.その結果,35 ∼ 64 歳の男性におけ
大学生においても,運動許容条件に含めるべき心疾患
32.2 − 48.3) で あ り, 死 亡 率 22.2 %(95 % CI:17.3 −
3
6
1
る 人 口 10 万 人 あ た り の 年 間 発 症 率 は 40.2(95 % CI:
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
27.2)であったと報告している 36).Kitamura らは,大阪
循環器障害を発症,死亡や永久的労働不能に陥った状態」
の企業 8 施設を対象として,40 ∼ 59 歳の労働者の心筋
と定義されている 41).上畑の報告 42)によると,過労死
梗塞や脳卒中の発症状況を 1963 年から 1994 年にかけて
の特徴としては男性が約 90%を占め,35 ∼ 54 歳の壮年
調 査 し 報 告 し て い る 37). こ の 報 告 に よ る と,1963 ∼
期や中高年の労働者に多く,ホワイトカラーでは営業販
1970 年の心筋梗塞の発症が人口 1,000 人当たり 1 年間に
売職,専門技術職,記者・編集者,教員など,ブルーカ
0.2(95% CI:0 − 0.3)であったのに対し,1987 ∼ 1994
ラーでは夜勤労働者,職業運転手,建設作業員などの順
年の発症は 1.0(95% CI:0.7 − 1.3)へと増加している.
に多く,両者はほぼ同数であるとされている.2003 年
また,上畑は,労働に関連した心疾患による死亡の状況
度では約 300 件が過労死の労災認定を受けており,約
を,心疾患の職業別調整死亡率で検討し報告してい
180 件が脳血管疾患であり,約 120 件が虚血性心疾患な
る 38).1970 年と 1985 年で 15 ∼ 64 歳男子就業者の心疾
どの心疾患により占められている.また,被災者の 3 分
患の年齢調整死亡率の変化について,全体で 13%増加,
の 2 が週 60 時間以上,月 50 時間以上の残業及び所定休
職業別にみた場合,専門的・技術的職業従事者で 68.1%,
日の半分以上の出勤など,長時間労働をほぼ日常業務と
運輸・通信従事者で 51.1%と著しい増加がみられたとし,
している.このような報告から,過労死症例の検討から
循環器疾患による死亡に職業間の相違があったことを報
恒常的な長時間の労働が疲労の蓄積を生じさせ,脳・心
告している.
臓疾患を発症させる恐れがあると考えられるようになっ
労働者の突然死の実態については,平成元年度人口動
てきている 43).そのため厚生労働省では平成 14 年 2 月に,
態社会経済面調査において,壮年期(30 ∼ 65 歳未満)
月 100 時間を超える時間外労働を行わせた場合,または
死亡をテーマとして「急な病死」の実態調査が行われて
2 か月間ないし 6 か月間の 1 か月平均の時間外労働が 80
.この調査では,死亡する 1 週間前の状態が,入
時間を超えた場合については,産業医等の面接による保
いる
39)
院中もしくは疾病によって日常生活上に支障があった者
健指導を受けさせるように通達を出している.さらには,
を除く急な病死が,全死亡の 12.2%あり,原死因の 31.5
2005 年 11 月には労働安全衛生法が一部改正され,上記
%が心不全,19.8%が虚血性心疾患等,心不全と虚血性
の条件に該当する場合の産業医等による面接が 2006 年 4
心疾患を合わせた心疾患は男性で 54.0%,女性で 45.7%
月から実施されている.
と約半数を占めていたことが報告されている.そのうち,
Devereux らは,携帯型血圧計により仕事中の血圧を
発症から死亡までの期間が 1 日以内のケースは,心不全
測定し,随時血圧より左室心筋重量係数との相関が高い
で 88.4 %,虚血性心疾患で 81 %を占めていた.また,
ことを示し,仕事中の血圧が臓器障害に重要な影響を与
性別では男性,年齢別では 50 歳代に多く,生産・運輸
えると報告している 44).Schnall らは,職業ストレス(Job
職が 28%,事務・技術・管理職が 25.0%となっていた.
strain)が高い男性では仕事中の血圧が高く,心肥大も
また,日本の 10 企業の従業員 196,775 人について検討
進行しやすいことを報告している 45).また,シフトワー
では,
突然死は男性で 251 人,女性で 13 人(10
クは冠動脈疾患を増すことがいくつかの研究で報告され
万人あたりそれぞれ 21.9,5.7)あり,そのうち心臓病
ており,交替制勤務はストレス負荷が大きいと理解され
は 153 例,58.6%を占め,内訳では急性心不全が最も多
ている 46).固定的な夜間勤務労働者では,睡眠時の血圧
く 100 例,次いで心筋梗塞が 43 例,肥大型あるいは拡
低下を減少させ,睡眠時血圧を高くすること 47)や夜間勤
張型心筋症が 4 例であったことが報告されている.発症
務の看護師では日中勤務と比較して non-dipper の割合が
から死亡までの情報が詳細に記録されている心疾患によ
高く,覚醒時の収縮期血圧の変動が大きいとの報告 48)も
る死亡の 131 症例では,発症から 1 時間以内に 52.7%が,
あり,交感神経のリズムが行動に同調していないことが
1 ∼ 3 時間の間に 24.4 %が死亡しており,心疾患による
指摘されている.
突然死が,他の疾病に比較して死亡までの時間が非常に
以上のことから,心疾患を有する労働者を長時間勤務
短いことを示している.
や交代制勤務に従事させることは,循環器系に身体活動
した報告
2
40)
心疾患の病態が増悪する
可能性のある労働条件
過労死とは 1978 年に上畑がはじめて報告したもので,
強度以上の負荷をかけることにもなり,慎重な判断が必
要になると考えられる.
4
スポーツ
「過重な労働負担が誘因になり,高血圧や動脈硬化など
の基礎疾患が悪化して脳血管疾患や心筋梗塞などの急性
スポーツは,競争を含む身体運動であることから,顕
7
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
性のみならず潜在性疾患により事故を発症する危険を常
る疫学的検討は少なく,大規模調査は主にアンケート調
に内在している.また,特殊なスポーツ種目(自動車レ
査により行われたものである.我が国におけるスポーツ
ース,スキー滑降など)では,他者にも危害を与える可
関連の突然死の発生頻度は,対象年齢が小児を多く含む
能性がある.スポーツの危険性は,運動強度が高いと考
都道府県体育施設では 1,636 万延べ施設利用者に 1 件 51)
えられる競技スポーツに発生頻度が高いとは限らず,一
と低い頻度であり,大学生における発生頻度は 34 万人
般市民スポーツにおいても突然死が報告されている.潜
に 1 件 26)と米国の頻度とほぼ同様の結果である.しかし,
在性を含めて心血管に異常を有する者においては,疾病
中高年が多い社会人やフィットネス施設における調査で
の重症度の限度を超えた負荷が加わった場合には,スポ
は,大学生に比べ発生頻度は高く,社会人 42,887 人に 1
ーツの種類や競技に関係なく,顕性の疾病として発症す
件 54)及び 1 件 /497 万人延べ施設利用者 55)となっている.
ることになり,突然死に結びつくことがある.この潜在
性及び顕性の疾患を明らかにし,安全にスポーツを行う
②スポーツの種類(表 2)
ためには,競技スポーツに限らず,一般市民スポーツ,
スポーツ中の突然死に関する主な文献による 1,412 症
さらに運動療法をも含むスポーツ活動を行う者すべてが
例の集計(表 2)では,欧米での突然死に関連したスポ
メディカルチェックの対象となり,スポーツ参加の許容
ーツ種目は,バスケットボール,ラグビー,サッカーな
を判定することになる.
どの球技が半数近くを占め,次いでランニング,
体操(フ
1
ィジカル・トレーニング)が多いと報告されている.我
スポーツにおける突然死の実態
が国ではランニングが最も多く,次いで水泳があり,球
技の頻度が高い諸外国と傾向が異なる報告であった.こ
①疫学(表 1)
れは,欧米と我が国において一般的に行われるスポーツ
米国では毎年 30 万例を超える突然死が発生し,その
49)
種目が異なることに加え,主として行っている運動をス
.しかし,スポ
ポーツの種類としてとらえるか,突然死に直接関わった
ーツ活動に伴う突然死の頻度は低く,疫学的研究として
運動を原因とするかなど報告により解釈が多少異なるこ
のデータは,世界的にみても報告が少ない.米国におけ
とによる.我が国の報告 69),71)では,各種スポーツのト
るスポーツ選手の突然死の頻度は,クロスカントリース
レーニングとしてランニングが多く行われていることか
キーの 13,000 時間に 1 件からジョギングの 396,000 時間
ら,ランニングが原因としての頻度が高い要因となって
に 1 件と報告されている
いると推定される.しかし,Quigley ら 59)によるアイル
半数が心血管障害による突然死である
50)
.スポーツ関連の突然死に関
する報告(表 1)では,対象及び集計方法により異なるが,
ランドにおけるスポーツ関連の突然死の報告では,球技
年間数十万人から数百万人に 1 件の発生頻度とする報告
の中でもゴルフにおける突然死が最も多く,我が国の中
が多い.我が国においてもスポーツ関連の突然死に関す
高年の傾向 71)と類似している点も認められる.スポーツ
表 1 スポーツにおける突然死の発生頻度
文献)
報告者(発表年)
51)
村山正博(1983)
52)
Ragosta(1984)
53)
Phillips(1986)
Amsterdam(1987)50)
対象
Maron(1996)56)
Maron(1996)57)
ロードアイランド・ジョガー
米国空軍軍人
クロスカントリースキー
ジョギング
大学生
社会人
フィットネス施設利用者
高校・大学スポーツ選手
マラソンランナー
高校スポーツ選手
Corrado(1998)58)
59)
Quigley(2000)
イタリア Veneto 州市民
アイルランド市民
26)
杉本恒明(1990)
54)
小堀悦孝(1990)
55)
村山正博(1992)
Van Camp(1995)25)
8
都道府県体育施設利用者
30 歳以下
17 ∼ 28 歳
ニアミスを含む場合
ニアミスを含む場合
平均年齢 37 歳
発生頻度
1 件 /1,636 万人
(延べ施設利用者数で算出)
1 件 /280,000 人 / 年
1 件 /735,000 人 / 年
1 件 /13,000 時間
1 件 /396,000 時間
1 件 /339,104 人
1 件 /42,887 人
1 件 /37,526 人
1 件 /497 万人
1 件 /149 万人
男性:7.47 件 /100 万人 / 年
女性:1.33 件 /100 万人 / 年
1 件 /50,000 レース完走者
0.46 件 /10 万人 / 年
1 件 /72,500 人 / 高校生活 3 年間
1.6 件 /10 万人 / 年
1 件 /60 万人
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
に関連する突然死の頻度は,スポーツの種類により国・
スポーツ中の突然死の原因疾患(表 3)
2
地域の差が若干はあるものの,あらゆる種類で発生して
おり,スポーツの種類・強度に関係なくスポーツ参加者
スポーツにおける突然死の基礎疾患としては,半数以
の運動許容判定が必要である.
上が心血管系の疾患である(表 3).我が国の報告 71)に
多く含まれる急性心不全や急性心機能不全や他の中にも
表 2 突然死に関連したスポーツの種類
文献)
報告者(発表年)
60)
Buddington(1974)
61)
Opie(1975)
62)
Maron(1980)
63)
Tsung(1982)
64)
Kennedy(1984)
65)
Virmani(1985)
66)
Northcote(1986)
67)
Virmani(1987)
68)
Thiene(1988)
69)
Niimura(1989)
70)
Burke(1991)
71)
Murayama(1993)
72)
Whittington(1994)
73)
Maron(1996)
74)
Virmani(1997)
58)
Corrado(1998)
75)
Larsson(1999)
59)
Quigley(2000)
合計
症例数
年齢
109
19
29
4
11
32
60
33
10
62
34
645
52
134
62
49
16
51
1412
9 ∼ 39
17 ∼ 58
13 ∼ 30
14 ∼ 18
10 ∼ 49
14 ∼ 60
22 ∼ 66
8 ∼ 47
13 ∼ 30
∼ 15
14 ∼ 34
8 ∼ 82
12 ∼ 40
10 ∼ 65
11 ∼ 35
18 ∼ 32
15 ∼ 78
体操
球技
30
11
21
4
9
13
60
13
4
0
19
201
26
108
30
39
−
37
625
スポーツの種類
ランニング
28
0
4
0
2
8
0
6
1
29
0
165
6
17
11
1
16
8
302
31
0
1
0
0
6
0
9
1
18
3
19
1
0
−
1
−
0
90
水泳
6
0
1
0
0
2
0
1
1
7
3
80
8
その他
14
8
2
0
0
3
0
4
3
8
9
180
11
3
6
−
4
−
2
118
21
4
−
4
277
表 3 スポーツ関連突然死の基礎疾患
文献)
報告者(発表年)
60)
Buddington(1974)
61)
Opie(1975)
62)
Maron(1980)
63)
Tsung(1982)
64)
Kennedy(1984)
65)
Virmani(1985)
66)
Northcote(1986)
67)
Virmani(1987)
68)
Thiene(1988)
69)
Niimura(1989)
70)
Burke(1991)
71)
Murayama(1993)
72)
Whittington(1994)
73)
Maron(1996)
74)
Virmani(1997)
58)
Corrado(1998)
75)
Larsson(1999)
Tabib(1999)76)
59)
Quigley(2000)
合計
症例数
年齢
109
19
29
4
11
32
60
33
10
62
34
645
52
132
62
49
16
80
51
1490
9 ∼ 39
17 ∼ 58
13 ∼ 30
14 ∼ 18
10 ∼ 49
14 ∼ 60
22 ∼ 66
8 ∼ 47
13 ∼ 30
∼ 15
14 ∼ 34
8 ∼ 82
12 ∼ 40
10 ∼ 65
11 ∼ 35
18 ∼ 32
35.8 ± 14.6
15 ∼ 78
基礎疾患
CAD
43
19
3
0
7
8
51
14
0
0
9
139
43
3
11
9
0
27
42
428
Ao
HCM
5
0
14
1
2
2
1
2
0
8
8
ILVH
18
0
5
0
0
4
0
2
0
2
3
ARVC
0
0
0
0
0
0
0
0
10
0
1
CAA
7
0
4
2
1
3
0
2
0
0
4
Myo
4
0
0
0
0
4
0
2
0
5
2
2
48
5
1
4
20
1
124
0
13
8
0
0
0
0
55
0
4
0
25
0
8
0
0
2
0
0
1
0
0
0
0
0
9
0
6
6
0
0
1
55
3
7
2
1
38
1
0
0
0
19
4
11
4
8
0
42
不明
0
0
1
1
1
2
2
6
0
23
4
369
0
4
13
0
0
0
0
426
他
32
0
0
0
0
8
6
5
0
24
3
128
7
21
21
18
1
23
6
303
CAD:冠動脈疾患,HCM:肥大型心筋症,ILVH:左室肥大,ARVC:不整脈源性右室心筋症,CAA:冠動脈奇形
Myo:心筋炎,Ao:大動脈解離・破裂,不明:急性心不全(剖検なし)・急性心機能不全(剖検あり)を含む
9
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
表 3 に示した疾患以外の心血管系疾患が含まれており,
類のⅠ度からⅢ度までの心機能を持つ心疾患について判
報告されている突然死の基礎疾患の大半は心血管系と推
断することとした.この判断の基準は,原則として個々
定される.Maron らの報告
62),73)
をはじめとして米国で
は肥大型心筋症の頻度が高く,次いで冠動脈疾患が多
い
.しかし,40 歳以上の対象を多く含む報告
74),76)
59),61),
の患者の運動耐容能(最高酸素摂取量など)である.
ただし,学校においては学校生活管理区分には,A(在
宅医療・入院が必要),B(登校はできるが,運動は不可)
66),71),72),74)
では,虚血性心疾患の頻度が高く,欧米と本
が含まれている.また,小児においては軽微なリスクす
邦で同様の傾向である.一方,1996 年の Maron の報告
なわち健常者と同程度のリスクという考えがあり,それ
73)
も小児のリスク分類には含めた.
では冠動脈奇形の頻度が高く,肥大型心筋症に次いで
報告の 19 %を占めている.米国での特徴的なことは人
種間の相違であり,黒人で肥大型心筋症が多く,白人で
2
運動・作業の強度分類(表 4)
冠動脈疾患が多い 70)とされている.また世界的な地域性
運動・作業の強度には,絶対的な強度と相対的な強度
でみるとスウェーデンでオリエンテーリング選手に心筋
がある.絶対的な強度は,運動・作業の平均的な酸素摂
炎が多いことが報告されている 75).この心筋炎の原因と
取量で表現され,各種運動や作業実施時に測定した酸素
し て は, 森 林 の 中 を 駆 け め ぐ る 際 の 感 染 症 と し て
摂取量のデータを集約した表 47)を用いて予測するのが,
Chlamydia pneumoniae 及びその関連として Bartonella が
一般的である.その場合には運動・作業強度は METs 単
疑われ,Chlamydia 関連抗体価の高いことが認められて
位(安静座位の酸素摂取量 1 MET = 3.5ml/kg/ 分の何倍
いる.一方,イタリアの Corrado ら 77)の報告では,スポ
の酸素摂取量かの単位)で表現される.相対的な強度は,
ーツ参加者の中で不整脈源性右室心筋症が多く,地域性
個人の最高運動能力(最高酸素摂取量)の何%かの強度
が高いことから,遺伝的素因の関与が疑われている.さ
で表現される.
らに,2004 年のベセスダ会議からの報告では,内因性
本ガイドラインでは,運動・作業強度を,METs を用
3)
の突然死ではないが心臓震盪が取り上げられている .
3
運動許容条件を設定すべき心疾患
いて 3 段階(軽い,中等度,強い)に分類した.この強
度の指針は米国疾病予防センターと米国スポーツ医学会
における身体活動勧告ガイドライン 6)によった.このガ
心疾患患者のスポーツについての運動許容条件作成上
イドラインでは,中等度の運動を 3 ∼ 6 METs として,
取り上げるべき心疾患は,スポーツによって突然死の発
成人は毎日 30 分,早歩きに代表される中等度強度の運
生や病態が増悪する小児から青年期に多い心疾患に加え
動を実施することが勧告されているものである.
て中高年の事故原因として多い冠動脈疾患である.
学校においては学校生活管理指導表としての運動強度
区分の定義は,主に自覚的な運動強度を中心に 3 強度に
Ⅱ
運動許容条件の基本的考え方
分類されている.
3
運動許容条件の示し方
本ガイドラインでは,運動・作業強度と,それを実施
1
1
10
心疾患のリスク分類と運動・
作業強度分類
心疾患のリスク分類
するために望ましい運動耐容能と心疾患重症度の関係か
ら,表 4 に示した運動・作業許容条件とした.運動許容
条件として適合するには,各種の運動・作業を自覚的運
動強度(表 8 を参考)13 以下(ややきついか,楽な強度)
で行えることを基準とした.これは,「心疾患における
運動療法に関するガイドライン」79)に示された運動強度
心疾患における運動許容条件は,心疾患の重症度と実
に合わせたもので,最高酸素摂取量の 40 ∼ 60%強度で
施する運動・作業の強度との関連から,心臓性突然死や
ある.ある METs 数の強度の運動を「ややきついか楽な」
心疾患の病態が増悪するリスクの程度を判断するもので
強度で行うには,心疾患患者はその METs 以上の運動耐
ある.本ガイドラインでは,心疾患の重症度は軽度リス
容能が必要になる.たとえば,3METs の軽い運動を行
ク,中等度リスク,高度リスクの 3 段階に分けた.ただし,
うには,3 ÷ 0.6 = 5 METs の運動耐容能(Bruce 法トレ
入院による安静治療が必要な病態については,高度リス
ッドミルの第 1 段階をクリアすること)が必要となる.
クには含めなかった.原則として,NYHA の心機能分
6 METs までの中等度の運動をややきつい以下の強度で
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
表 4 運動・作業強度と運動許容条件の関係
軽い運動
3 METs 未満
5 METs 未満
許容
許容
条件付許容
運動・作業強度
望ましい運動耐容能*
軽度リスク
心疾患のリスク 中等度リスク
高度リスク
中等度の運動
3 ∼ 6 METs
5 ∼ 10 METs
許容
条件付き許容
禁忌
強い運動
6.0 METs を超える
10 METs を超える
許容あるいは条件付き許容
条件付き許容あるいは禁忌
禁忌
*:運動・作業強度を最大運動能の 60% で行うとした場合に,望まれる運動耐容能
註:ただし小児においては,運動の強弱と上で示した METs 値の関連は合わないことが多いので別に示した
行いうるには,6 ÷ 0.6 = 10METs の運動耐容能(Bruce
運動習慣から,心血管系や筋骨格系の発育を促し,将来
法のトレッドミルの第 3 段階まで行なえる)が必要とな
的な高血圧,糖尿病,高脂血症などの冠危険因子を是正
る.
すること,④積極的な社会参加及び生産的役割の向上を
心肺運動負荷試験を行った場合には嫌気性代謝閾値
目指す長期効果にも注目することにあると考えられる.
(AT:ここでは呼気ガス分析による換気閾値を指す)が,
そこで,学校,特に中学校以降の運動部の部活動につい
疾患の種類によらず,ほとんどすべての心疾患での運動
て配慮するため「軽度リスク」の上に,よりリスクの少
78),79)
.したがって,AT を
ない「軽微なリスク」のランクを設け,長期的にも問題
測定すれば,職域での作業レベルやスポーツでの可能な
がないと考えられるものをこのランクに当てはめた.こ
運動強度が想定できる.
れは,健常者と同等のリスクという意味である.
しかし,運動・作業強度は推定値であり,個々の患者
したがって,本ガイドラインの運動許容条件を,児童・
にはあてはまらないことは十分に予想されることであ
生徒・学生用に表 5 のようにする.
強度の上限として目安となる
る.本ガイドラインの適応には個々の患者の状態と環境
を考慮して個別に判断すべきことである.また,運動・
3
作業強度の METs 値に関しては,米国のデータが主であ
職域における運動許容条件の
考え方
り,日本人の新しいデータがないことも適応上の問題点
である.
心疾患患者の職場復帰をどのように進めるのか,
また,
表 4 で,「許容」とされるのは,その強度の運動がす
職場において心疾患患者をどのように管理するのかつい
べて許容される場合である.「条件付き許容」とされる
ては,労働安全衛生規則第 14 条に定められた産業医の
のは,治療後の経過やある条件によって許容されるもの
安全配慮義務を考慮する必要がある.心疾患の発症ある
である.禁忌はその強度の運動が禁忌と判断するもので
いは心疾患による死亡などの心事故が発生した際に業務
ある.
との関連性が認められれば,業務上疾病として扱われる
2
学校における運動許容条件の
考え方(表 5)
ことになるため特別な配慮が必要となる.第 14 条の中
で,特に関係のある項目は,①健康診断の実施及びその
結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関す
ること,②作業の管理に関すること,③上記のほか労働
心疾患患児に対する運動許容条件判定の目的には,①
者の健康管理に関することなどである.
運動による急性心不全の発生と運動中の突然死予防とい
③では,産業医は主治医の診断書の下に,患者が職場
う短期的目的,②運動による継続的心負荷に伴う不整脈,
復帰するにあたっての就業上の指示を事業者に対して行
心拡大,慢性心不全惹起による余命短縮の防止という長
うことになる.通常は,時差出勤,半日勤務,残業・出
期的目的があり
80)
,ひいては,③個々人に即した安全な
張禁止,また職務内容によっては配置転換などの指示が
表 5 学校における運動許容条件の示し方
運動の強度*
軽微なリスク
軽度リスク
中等度リスク
高度リスク
軽い運動
許容
許容
許容
許容
中等度の運動
許容
許容
許容
条件付き許容
強い運動
許容
許容
条件付き許容
禁忌
運動部での運動
許容
条件付き許容
禁忌
禁忌
*運動の強度については,運動強度の表 9 を参照のこと
11
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
出される.また,②の作業の管理に関連することとして
把握,健康管理は,米国と同様に自己責任と法的には考
は,職場での作業の種類,作業強度,作業時間などの指
えられており,スポーツ参加に際してメディカルチェッ
示が該当する.これについては,病院・診療所の主治医
クを受けた者の運動許容に関しては,医師の診断ないし
からの診断に基づいて行われるが,その際には,心疾患
勧告が必要となっている.特に我が国においては,諸外
患者の運動負荷試験データの下に作業条件の指示が出さ
国にはないスポーツの参加に際して診断書の提出を求め
れなければならない.表 4 に示した基準で,許容される
られることがあり,心疾患を有する者の運動許容条件が,
運動強度と等価の作業強度までの条件を就労上の指示と
一般診療の場において必要とされている.
して出すことになる.また,これを行うにあたっては,
スポーツへの参加を希望する心疾患患者の重症度評価
運動負荷試験から得られる情報は主に有酸素能力に関す
には,運動負荷試験は重要であるが,潜在性心疾患を検
ることであるので,重量物の運搬などのアイソメトリッ
出するための運動負荷試験の適応については議論が多
クな作業は,別に考慮しなければならない.さらに産業
い.一般成人に対するスポーツ参加のためのメディカル
医は,①の健康診断においても,その事後措置の一環と
チェックとしては,米国では中高年のスポーツ選手に対
して,作業内容の変更,労働時間の短縮など必要に応じ
する AHA(米国心臓協会)の勧告が示されており,メ
て心疾患患者に対して事後指導を行っていく必要があ
ディカルチェックの基本項目は,学生を中心とした競技
る.
選手に対するスポーツ参加前のスクリーニング 73)項目と
事業所の産業医が,上記の職務を遂行するにあたって
同じ問診 8 項目と身体所見 4 項目の合計 12 項目である(表
は,産業医は職場における就業者の作業内容について作
6).安静心電図や心エコー検査,最大運動負荷試験は
業場の巡視などを通して把握していることが必要であ
医師の判断で行うことになっている.この勧告における
る.そして,主治医との密接な連携の下に心疾患を有す
運動負荷試験の適応 73)としては,リスクファクターを持
る就業者の管理を行っていかなければならない.
たない無症候の外見上健常者への運動負荷試験の適応は
しかし,就業後の患者の評価をどのように行い,許容
ないとして米国心臓病学会(ACC)と AHA の運動負荷
条件の指示を行っていくかについては,従来の問診,身
試験ガイドライン 81)に準拠している.このガイドライン
体所見,安静時心電図などの簡単な検査のみでは不十分
では外見上健常者における冠動脈疾患の検出のための運
である場合も多い.運動負荷試験のみならず,作業中の
動負荷試験は,陽性率の低さ,偽陽性の多いことから,
ホルター心電図や携帯型血圧記録によって就業者の作業
有益性よりも悪影響が大きいとしている.心エコー検査
中の状態を知ることが,今後重要になるものと思われる.
は,既往歴,身体所見において弁膜症,肥大型心筋症,
4
スポーツにおける運動許容
条件の考え方(表 6)
不整脈源性右室心筋症及び心筋梗塞の既往がある者が対
象となる 82).
我が国では,日本臨床スポーツ医学会から一般人を対
象としたスポーツ参加のためのメディカルチェック基本
スポーツにおける運動許容条件の設定はメディカルチ
項目 4)が示されている.この基本項目の中で運動負荷試
ェックを経て行われる.メディカルチェックの結果から,
験の適応としては,安静心電図に異常を認めた者,及び
スポーツ参加の可否を判定することになる.我が国にお
リスクファクターの有無に関わりなく男性で 40 歳以上,
いても,成人のスポーツ参加に関する個人の身体状況の
女性で 50 歳以上の者が対象になるとしている.心エコ
ー検査の適応疾患は特定されておらず,メディカルチェ
表 6 スポーツ参加前のスクリーニング検査(AHA 勧告 文献 73)
家族歴
既往歴
理学所見
12
1. 若年者の突然死
2. 心臓病患者
3. 心雑音
4. 高血圧
5. 易疲労
6. 失神
7. 労作時呼吸困難
8. 労作時胸痛
9. 心雑音
10. 大腿動脈脈拍
11. マルファン症候群の特徴
12. 血圧測定
ック基本検査において異常の認められた者に対し,精密
検査として追加の検査として行うものとされている.日
本臨床スポーツ医学会の勧告の中には,メディカルチェ
ック後の診断書(案)も呈示されている.
1971 年,公式競技に参加する者全員に法的にメディ
カルチェックを義務づけたイタリアでは,毎年,一般的
診察(身体所見),安静心電図,及び最大下運動負荷試
験を最低限の検査として行っており,1985 年からは心
エコー法も通常の検査として行われている.さらに,循
環器的異常が疑われた場合には,追加の検査を行うこと
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
とされている.イタリアでは,このメディカルチェック
実として認識されてきている.
をもとに競技への参加・禁止を判定している.競技への
障害者のスポーツ参加に関しては,内部障害者(特に
参加・禁止条件は米国における第 16 回及び第 26 回のベ
心機能障害)に対するスポーツ参加と心疾患を合併して
セスダ会議の勧告 3)より厳しい基準により判定されてい
いる運動機能障害者のスポーツ参加の 2 通りが考えられ
る.30 年間の集計では,メディカルチェックを行った
るが,循環器の立場から基本的に本ガイドラインに沿っ
市民スポーツ選手 125,405 人の中で,3,190 人(2.5 %)
て参加の判断をすればよいと考える.
が競技の参加を禁止され,その半数は心血管異常による
障害者(肢体不自由,視覚障害,聴覚・平行機能障害,
.また,トップアスリート 22,000 人お
音声・言語機能障害,そしゃく機能障害,知的障害,内
いては,480 人(2.2%)が国内・国際大会での競技禁止
部障害を含める)の全国的なスポーツ組織である㈶日本
を勧告されたが,3 名が競技を続けている中で突然死し
障害者スポーツ協会では,全国障害者スポーツ大会(い
ものであった
83)
ている.しかし,このイタリアでの 26 年に亘るスクリ
わゆる身障者国体といって国民体育大会後に行われる障
ーニングの結果,若年スポーツ選手の心血管突然死の年
害者のための全国大会)を開催している.身障者国体は,
間発生率は減少し,同年代の一般住民での突然死発生率
開催基準要項に身体障害者手帳の交付を受けた身体障害
を下回る結果となり,メディカルチェックの有用性が明
者または療育手帳の交付を受けた知的障害者は原則参加
らかとなった
5
84)
.
障害者スポーツにおける運動
許容条件の考え方
を認めることが謳われているが,今日まで内部障害者(心
臓機能障害,腎臓機能障害,呼吸器機能障害,膀胱・直
腸・小腸機能障害とヒト免疫不全ウイルスによる免疫機
能障害)への門戸が閉ざされていた.これは,これまで
の身障者国体は肢体不自由者や知的障害者の参加がほと
障害者(肢体不自由,知的障害,内部障害等)は運動
んどで,内部障害者の参加が無かったため問題にされて
不足によりフィットネスの低下を生じ,生活習慣病をき
こなかったことが一因である.昨今,内部障害者の増加
たしやすいと考えられる.これらを予防するためには,
に伴い,内部障害者に対しても積極的にスポーツの門戸
単に機能障害部分の訓練のみでなく,全身持久能力向上
を開こうという機運が高まり,厚生労働省においても内
という視点から,全身的なスポーツなどの身体活動を積
部障害者の身障者国体への参加を検討する方針が打ち出
極的に行うことが健康増進と QOL 向上の点からも望ま
され,平成 17 年度に内部障害者の身障者国体参加を可
しい.スポーツの持つ遊戯性が,障害者の意欲と自発性
能にするための医学的基準検討や準備を行っていくこと
を取り戻し,社会性を獲得するためにも良い手段となる.
を目的として,㈶日本障害者スポーツ協会内に医科学委
このように障害者のフィットネス向上と心理的側面から
員会内部障害者小委員会が作られ活動を開始した.平成
スポーツを実践する意義が挙げられる.
25 年度までにすべての内部障害者の身障者国体参加指
我が国における障害者のスポーツ人口は増加しつつあ
針を作成すべく準備を進めている.
り,スポーツを行っているものは全障害者の約 30 %と
身体障害者手帳を保有している心臓機能障害者のスポ
いわれているが,その対象となる障害は,肢体不自由,
ーツ参加に関しては,先ほど述べたように,基本的に本
視覚障害,言語聴覚障害,知的障害が中心となっており,
ガイドラインに準じた参加基準を参考にすればよいと考
内部障害者のスポーツ参加の実態は不明である.パラリ
える.身体障害者手帳における等級と医学的な参加基準
ンピックや極東南太平洋身体障害者スポーツ大会
が合致していないため,それぞれ個別にガイドラインに
(FESPIC)などの国際大会が行われ,種目別にも各種ス
照らし合わせて判断せざるを得ない.
ポーツの国内大会が盛んに行われているが,我が国の障
身障者国体について,内部障害者が参加可能な競技種
害者スポーツは競技スポーツ偏重の傾向が強く残ってお
目は現時点で陸上競技,水泳,アーチェリー,卓球,フ
り,障害者の健康維持・増進を目的とした健康スポーツ
ライングディスクであり,この中で心臓機能障害として
やそれを基礎にした市民スポーツや生涯スポーツとして
最も無難な競技はフライングディスク(図 1 の軽度静的,
裾野を広げていくのはこれからである.
軽度動的にあたるⅠ A)と考えられる.いずれにしても,
ただし,全国の障害者スポーツ施設では,すでに内部
スポーツ種目の強度と疾患の重症度並びに運動耐容能を
障害者が施設内でスポーツを行っている実態があり,さ
考慮して決定していく必要がある.心機能障害者で参加
らに肢体不自由者の中でも内科的疾患を持つものもいる
の可能性のある疾患はペースメーカ挿入後,人工弁移植
ため,障害者スポーツへの内部障害者の参加は既成の事
後,弁置換後,陳旧性心筋梗塞,慢性心不全(軽症),
13
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
されるものは MET(s)である.またスポーツを分類す
不整脈,冠動脈バイパス術後等が考えられる.
る際に,動的運動あるいは静的運動が各々どの程度関与
Ⅲ
しているかによって分ける方法もある.この分類の代表
運動強度の分類
的なものが,第 16 回ベセスダ会議 89),第 26 回ベセスダ
会議 90)及び第 36 回ベセスダ会議 3),91)より呈示されてい
る.この分類を図 1 に示してある.高血圧症に対する運
1
動療法を考える際には動的運動を主なものとして運動処
スポーツ・運動
方を作成することが重要であり,特にこの動的運動ある
いは静的運動がどの程度関与しているかを見極めること
1
METs を使用したスポーツ・運動の
強度(表 7,表 8)
85)
が必要になるので,この分類方法は有用となってくる.
実際的に使用する際には,以上に示された数値は体調良
好な状態と考えられる時のものであり,何らかの理由で
は日
体調不良の場合に運動を行う場合には,相対的に強度が
常生活活動を含めた運動あるいはスポーツのエネルギー
高くなってしまうことを考慮しておくことが重要であ
スポーツあるいは運動の強度を,Ainsworth ら
消費量の観点から METs 表示で,Boulay ら
86)
はクロスカ
ントリー・スキー選手のエネルギー消費量測定から相対
的代謝率(RMR)表示で呈示している.Ainsworth らの
る.
2
学校
主要な種目の METs 表示の運動強度を,表 7 に示してあ
る.自転車,ウォーキング,ランニング,水泳,クロス
学校管理下での生活規制,運動規制が学校心臓検診に
カントリー・スキーなどは,スピードの相違によって,
関連して系統的に行われているのは日本だけである.学
その運動強度は広範囲にわたっていることが判明する.
校での「管理指導表」の原型は昭和 40 年代後半に発表
ACC/AHA がまとめた「非心臓手術患者の周術期心血
され,その後数回の修正が加えられ,全国に普及し,多
87)
管系評価ガイドライン」
をみると,機能的許容量は
くの学校で使用されている.日本学校保健会の調査では,
METs で 評 価 で き, 心 機 能 良 好 7METs 超, 中 度 4 ∼
平成 10 年度には全国 82.9 %の自治体で心臓病管理指導
7METs,低下 4METs 未満としている.Balady らは AHA
表が使用されていた 92).これにより全国ほぼ同一の管理
/ 米国スポーツ医学会(ACSM)から 1998 年に Scientific
指導表を用いられ,比較的均一な管理が可能になった.
Statement を呈示し,その中で運動強度分類を年代別,
しかし,問題点を指摘され,新しい管理指導表の改訂が
性 別 に 分 類 し, そ し て 運 動 強 度 を 非 常 に 軽 度(very
考えられていた.平成 14 年度から小・中学校で,平成
light),軽度(light),中等度(moderate),高強度(hard),
15 年度から高校で新しい学習指導要領が実施されるこ
非常に高強度(very hard)と 5 段階に層別化している
とに伴い,教科体育も一部変更されることになったので,
88)
(表 8).女性の場合には,各々 1 ∼ 2 METs 低く判定す
それに合致する新しい管理指導表 93),94)が作成され,学
る方がより良いように考えられる.また,持久性トレー
校生活管理指導表として活用されている.その結果,運
ニングを行っているスポーツ選手では,最大持久性能力
動強度区分の定義も新しく作成され,それに基づいた管
は酸素摂取量で 10 ∼ 15ml/kg/ 分(あるいは 3 ∼ 4 METs)
理指導表に変更された.
くらい高いと推測して考えるとよいように思われる.
2
スポーツ分類(図 1)
運動強度区分の定義
学校生活管理指導表では運動強度区分は,自覚的運動
スポーツあるいは運動強度の分類に関して,競技スポ
強度を中心に 3 強度に分類され,更に部活動に言及して
ーツあるいは市民スポーツ及びレクリエーションといっ
いる.これらは主に自覚症状を中心とした相対強度によ
た形式からみたものは,これまでにあまり報告されてい
る分類である.METs 値による絶対的強度で分類しない
ない.スポーツあるいは運動の強度を示す方法としては
のは,現場での使い易さを考慮したものである.
いくつかのものが挙げられており,たとえば%最高心拍
軽い運動は「ほとんど息がはずまない程度の運動.球
数(% HR),%心拍予備能(% HR reserve),%最大酸
技は原則としてフットワークを伴わないもの」とされる.
素摂取量(% VO2),相対的代謝率(RMR),基礎代謝
等尺運動(静的運動)は軽い運動には含まれない.
率(MET)などがある.この中でも一般的によく使用
中等度の運動は「少し息がはずむが,息苦しくない程
4
14
1
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
を改変
表 7 METs 表示の各種運動強度(同一種目ごと) 文献 85)
METs
8.5
4
6
8
10
12
16
3
5.5
7
10.5
12.5
3.5
7
8.5
12
5
7
8
9
10
11
11.5
12.5
13.5
14
15
16
18
9
2
2.5
3
3.5
4
4
4.5
8
11
3.5
4.5
7
8
2.5
3
12
9
5
5
4
6
9
3
4.5
5.5
3.5
4.5
スポーツ種目
自転車
自転車
自転車
自転車
自転車
自転車
自転車
自転車エルゴ
自転車エルゴ
自転車エルゴ
自転車エルゴ
自転車エルゴ
ローイングマシン
ローイングマシン
ローイングマシン
ローイングマシン
エアロビクスダンス
エアロビクスダンス
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ランニング
ウォーキング
ウォーキング
ウォーキング
ウォーキング
ウォーキング
ウォーキング
ウォーキング
水泳
水泳
アーチェリー
バドミントン
バドミントン
バスケットボール
ビリアード
ボウリング
ボクシング
ボクシング
ドッジボール
クリケット
カーリング
フェンシング
アメリカン・フットボール
フリスビー
ゴルフ
ゴルフ
ゴルフ
器械体操
内 容
クロスカントリー,マウンテンバイク
16km/ 時未満
16km/ 時以上 19km/ 時以下
19.2km/ 時以上 22.2km/ 時以下
22.4km/ 時以上 25.4km/ 時以下
25.6km/ 時以上 30.4km/ 時以下
32km/ 時以上
50 ワット
100 ワット
150 ワット
200 ワット
250 ワット
50 ワット
100 ワット
150 ワット
200 ワット
ロー・インパクト
ハイ・インパクト
8km/ 時(1.6km を 12 分間)
8.3km/ 時(1.6km を 11.5 分間)
9.6km/ 時(1.6km を 10 分間)
10.7km/ 時(1.6km を 9 分間)
11.2km/ 時(1.6km を 8.5 分間)
12km/ 時(1.6km を 8 分間)
12.8km/ 時(1.6km を 7.5 分間)
13.8km/ 時(1.6km を 7 分間)
14.4km/ 時(1.6km を 6.5 分間)
16km/ 時(1.6km を 6 分間)
17.4km/ 時(1.6km を 5.5 分間)
クロスカントリー
3.2km/ 時未満
3.2km/ 時
4km/ 時
4.8km/ 時
5.6km/ 時
6.4km/ 時
7.2km/ 時
クロール 45m/ 分
クロール 67.5m/ 分
遊び
競技
試合
リング上
スパーリング
競技
全般的
クラブを自分で運ぶ
カートを利用
METs
12
8
8
6.5
2.5
10
スポーツ種目
ハンドボール
ホッケー
アイスホッケー
乗馬
乗馬
柔道
8
9
8
7
10
8
11
8
10
12
10
3
5
7
7
10
4
6
4
6
12
6
8
3
4
8
6
3
7
12
3.5
12
5
7
12.5
16
7
10
5.5
9
15
7
7
8
9
14
5
6
8
7
ラクロス
オリエンテーリング
ポロ
ラケットボール
ラケットボール
ロッククライミング
ロッククライミング
縄跳び
縄跳び
縄跳び
ラグビー
ローンボウリング
スケートボード
ローラースケート
サッカー
サッカー
野球
野球
ソフトボール
ソフトボール
スカッシュ
テニス
テニス
バレーボール
バレーボール
ビーチ・バレーボール
レスリング
カヌー
カヌー
カヌー
カヌー
カヌー
セーリング
スキンダイビング
スキンダイビング
スキンダイビング
スクーバダイビング
水球
アイススケート
アイススケート
アイススケート
スキー・ジャンプ
クロスカントリー・スキー
クロスカントリー・スキー
クロスカントリー・スキー
クロスカントリー・スキー
スキー・滑降
スキー・滑降
スキー・滑降
ボブスレー・リュージュ
内 容
フィールド
速足でかける
歩く
柔術,空手,テコンドー,キッ
クボクシング
遊び
競技
ラペルを使用して降りる
登る
ゆっくりと
通常のスピードで
速く
遊び
競技
ピッチング以外の守備
ピッチング
ピッチング以外の守備
ピッチング
ダブルス
シングルス
遊び
競技
3.2km/ 時以上 6.2km/ 時以下
6.4km/ 時以上 9.4km/ 時以下
9.6km/ 時以上
遊び
競技
競技
遊び
中等度速度
速く
遊び
14.4km/ 時以下
14.4km/ 時超
競技
4km/ 時
6.4km/ 時以上 7.8km/ 時以下
8km/ 時以上 12.6km/ 時以下
12.8km/ 時以上
軽度
中等度
高強度
(1 マイルを 1.6km,1 ヤードを 0.9m に換算して表示)
15
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
表 8 AHA/ACSM による運動強度分類
運動強度
非常に軽度
軽度
中等度
高強度
非常に高強度
最大
持久性運動
筋力トレーニング
相対的運動強度
健常成人(年齢)での絶対的運動強度(METs)
相対的運動強度
%最大酸素摂取量 最高心拍 自覚的
若年
中年
高齢
超高齢
自覚的運 最大筋力
心拍予備能(%) 数(%) 運動強度 20 ∼ 39
40 ∼ 64
65 ∼ 79
≧ 80
動強度
(%)
<25
<30
<9
<3.0
<2.5
<2.0
≦ 1.25
<10
<30
25 ∼ 44
30 ∼ 49
9 ∼ 10
3.0 ∼ 4.7 2.5 ∼ 4.4 2.0 ∼ 3.5 1.26 ∼ 2.2 10 ∼ 11 30 ∼ 49
45 ∼ 59
50 ∼ 69 11 ∼ 12 4.8 ∼ 7.1 4.5 ∼ 5.9 3.6 ∼ 4.7 2.3 ∼ 2.95 12 ∼ 13 50 ∼ 69
60 ∼ 84
70 ∼ 89 13 ∼ 16 7.2 ∼ 10.1 6.0 ∼ 8.4 4.8 ∼ 6.7 3.0 ∼ 4.25 14 ∼ 16 70 ∼ 84
≧ 85
≧ 90
≧ 16
≧ 10.2
≧ 8.5
≧ 6.8
≧ 4.25
17 ∼ 19
>85
10.0
8.0
5.0
20
100
100
100
20
12.0
自覚的運動強度:Borg15 点法
METs:男性の数値を示しており,女性の数値は 1 ∼ 2METs 低値
Ⅱ.中等度
(< 20 ∼ 50% MVC)
Ⅰ.軽度
(< 20 MVC)
静的要素増大 Ⅲ.高度
(> 50% MVC)
3)
図 1 スポーツ分類(競技中の静的要素と動的要素に基づくもの)
ボブスレー / リュージュ*†
陸上競技フィールド種目(投擲)
体操競技*†
空手 / 柔道等の武術*
セーリング
ロッククライミング
水上スキー*†
ウェイトリフティング*†
ウィンドサーフィン*†
アーチェリー,
自動車レース*†
ダイビング*†
馬術競技*†
オートバイレース*†
ビリヤード
ボーリング
クリケット
カーリング
ゴルフ
ライフル射撃
A. 軽度
(< 40% Max O2)
ボディビルディング*†
スキー競技(滑降)*†
スケートボード*†
スノーボード*†
レスリング*
アメリカンフットボール*
陸上競技フィールド種目
(ジャンプ)
フィギュアスケート*
ロデオ競技*†
ラグビー*
ランニング(短距離)
サーフィン*†
シンクロナイズドスイミング†
野球 / ソフトボール*
フェンシング
卓球,
バレーボール
B. 中等度
(40 ∼ 70% Max O2)
ボクシング*
カヌー / カヤック
自転車競技*†
陸上競技(10 種競技)
ボート競技
スピードスケート*†
トライアスロン*†
バスケットボール*
アイスホッケー*
クロスカントリースキー
(スケーティングテクニック)
ラクロス*
ランニング(中距離)
水泳
ハンドボール
バドミントン
クロスカントリースキー
(クラシックテクニック)
ホッケー*
オリエンテーリング
競歩
ラケットボール / スカッシュ
ランニング(長距離)
サッカー*
テニス
C. 高度
(> 70% Max O2)
動的要素増大 Max O2 ; Maximal oxygen uptake 最大酸素摂取量
MVC ; Maximal voluntary contraction 最大随意収縮力
緑の部分は最小の総循環器応答(心拍出量と血圧)を示し,赤色の部分は最大の総循環器応答を示している.
*:身体衝突の危険性あり.
†:失神をおこせば危険度は高まる.
16
度の運動でパートナーがいれば楽に話ができる程度のも
大きなかけ声を伴ったり,動作中や動作後に顔面紅潮,
の.原則として身体の強い接触を伴わないもの」とされ
呼吸促迫を伴うほどの運動」をいう.ここでいう等尺運
る.等尺運動は「強い運動」ほどの力は込めて行わない
動とは,移動距離がごく短く,かつ強い力をこめて行う
ものを含む.
運動で,腕立て伏せ,懸垂など,身体を支持したり,重
強い運動は,「息がはずみ,息苦しさを感じるほどの
量挙げなどで重いものを持ち上げたりする運動である.
運動.等尺運動の場合は,動作時に歯を食いしばったり,
息を止めて行う無酸素運動であることが多い.
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
なお,球技種目においては,軽い運動と中等度の運動
に全く同じ取り組みが表わされているものもあるが,軽
い運動は「ランニングのないゆっくりな運動」であり,
中等度の運動とは「フットワークを伴う運動」であるこ
とから,両者の区別は学校現場ではその適応に混乱をき
たすことはないと考えられる.また中等度の運動と強い
運動の間に区分しにくい取り組み方があるが,「身体の
表 10 学校生活管理指導表による指導と死亡(一般人の死亡との比)94)
総死亡
急死
E可
同じ
同じ
E禁
4倍
同じ
D
20 倍
100 倍
C
B
50 倍
100 ∼ 200 倍
300 倍 700 ∼ 1000 倍
運動中の急死の約 40%は指導より強い運動中であった.
3
職域の作業強度の分類(表 11)
強い接触を伴わない」ものが中等度の取り組みであり,
それを伴うものは強い運動と考える.
労働による作業強度のすべてを提示することは困難で
ただし,この運動強度区分は各人の自覚的な運動強度
あり,また,同じ作業でも個人により強度は異なる.表
であり,同じ運動であっても各個人にとっては必ずしも
11 に Ainsworth らの調査した各種の運動や活動強度の
同じ強度の運動にはならない.したがって,運動強度区
分類 7)から,3METs 以上の労働に関連するものを抜粋し,
分は,同年齢の平均的児童生徒にとってその運動への取
職業別及び作業分類別に提示する.3METs 以上に絞っ
り組みが上記のどの分類に属するかによって区分される
たのは,心疾患のリスクが中等度以上の場合に配慮する
ものである.
必要があることと,すべての強度を提示すると膨大な量
運動部活動への参加の可否は日常の練習,鍛錬過程と
になり,利用しにくいものになるからである.この表を
競技に対する学校の姿勢や個人的資質を配慮しなくては
みると,林業,消防士,建設業などに高強度の作業が多
ならない.単に運動種目によって一概に決定すべきでは
く含まれていることがわかる.また,職業にかかわらず,
ない.運動部の運動量や鍛練方法は学校やその運動部に
歩行や立位を伴う作業の場合には強度が高くなることが
よって大きく異なるのでその内容を吟味して,運動強度
あり,注意が必要である.
の区分に従って決定する.
心疾患患者の場合は,絶対強度に加えて,その労作の
2
学校生活管理指導表(表 9,表 10)
種類が循環器系に及ぼす影響を考慮する必要がある.静
的労作では,動的労作と同様に,心拍数及び血圧の上昇
学校生活管理指導表(表 9)では教科体育に掲げられ
がみられるが,動的労作と比較して,血圧の上昇の程度
ている全運動種目を取り上げ,その種目への取り組み方
が大きく,特に収縮期血圧だけでなく拡張期血圧の上昇
によって強度を分類している.また,表中に示されてい
もみられるという特徴がある.心疾患患者において特に
ないクラブ活動,運動や学校行事への参加の可否,日常
注意すべきものは,静的労作である.静的労作とは,具
生活や社会活動における指導区分も運動強度の定義と指
体的には,重量物の運搬,拭き掃除,しゃがみ動作のあ
導区分の基本に沿って判断するものである.
る庭仕事などである.各種の労作で,心拍数及び血圧の
指導区分は以下の 5 ランクに相当する.
変化を検討したいくつかの研究では,荷物を持っての歩
A:在宅医療・入院が必要
行やしゃがみ動作などの静的労作の強い動作では,階段
B:登校はできるが,運動は不可
の上り下りなどの動的動作よりも,血圧が顕著に上昇し,
C:「同年齢の平均的児童生徒にとっての軽い運動」
同じ動作でも小さな筋群に負荷がかかるほど血圧の上昇
には参加可
D:「同年齢の平均的児童生徒にとっての中等度の
運動」も参加可
E:「同年齢の平均的児童生徒にとっての強い運動」
も参加可
反応が大きいことを示している 96).また,しゃがみ動作
よりも荷物の運搬動作のほうが血圧の上昇反応は大き
い.また,10 kg の重量物の運搬でも,
「背負う」より「抱
える」,さらには「片手で下げる」という小さな筋群に
負荷がかかる方が収縮期血圧の上昇が大きい.「いきみ」
従来の学校生活管理指導表と死亡率の関連をみた検討
の動作では,酸素消費量の減少と回復期の反跳現象がみ
では,リスクが低いと判定された場合の死亡は一般人と
られ,「いきみ」による酸素負債が心筋酸素消費量の増
ほぼ同様で,リスクが高いほど一般人と比較して死亡率
大と相俟って心筋虚血を惹起する可能性が指摘されてい
)
が高くなる結果であった 95(表
10).本ガイドラインの
る 97).以上のことから,中等度以上のリスクを持つ心疾
心疾患リスク分類と対比すると,高度リスクは指導区分
患患者においては,静的要素が強い労作を避けるべきで
の C,中等度リスクは D,軽度リスクあるいは軽微なリ
あると考えられる.特に適正配置上,心疾患で考慮すべ
スクは E に相当する.
き作業は,ハンマー打ち,シャベル作業,釜たきなどの
17
表 9-1 学校生活管理指導表 小学生用
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
18
表 9-2 学校生活管理指導表 中学・高校生用
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
19
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
表 11 主な職業及び作業における活動強度
職業,作業分類
農作業
林 業
建設業
製鋼所
部品製造
歩行を伴う作業
立位作業
管理業務
作業内容
強度(METs)
雑草を刈る,納屋の掃除,家禽の世話,きつい労力
6.0
牛や馬に餌を与える,家畜用の水を運搬する
4.5
動物の世話をする(身づくろい,ブラッシング,毛を刈る,入浴補助,メディカルケア,烙印
4.0
押し)
樹木を刈り取る
9.0
手で若木を植える
6.0
電動のこぎりを使用する
4.5
草むしり
4.0
シャベルですくう:きつい(7.3kg/ 分以上)
9.0
シャベルやピック,じょうご,鋤のような重い道具の使用,れんがのような重い荷物の運搬
8.0
シャベルですくう:楽な(4.4kg/ 分以下)
6.0
一般的な大工仕事
3.5
粉砕機の使用,一般的な作業
8.0
鋳型(鋳物を鋳造するときに,溶かした金属を流し込む型)を返す,鍛冶
5.5
鋳物(溶かした金属を鋳型に流し込んで器物をつくること)
5.0
パンチプレス(大型の穴あけ機)を操作する
5.0
たたく,穴を開ける
4.0
溶接作業,旋盤の操作
3.0
階段上り,立位:約 7.3 ∼ 18.1kg のものを持ちながら
8.0
階段下り,立位:約 22.7 ∼ 33.6kg のものを持ちながら
6.5
階段下り,立位:約 11.3 ∼ 22.2kg のものを持ちながら
5.0
5.6km/ 時で 11.3kg 以下の物を運ぶ:きびきびと
4.5
4.8km/ 時で 11.3kg 以下の軽い物を運ぶ,車いすを押す
4.0
5.6km/ 時(屋内)
,きびきびと,何も持たずに
3.8
4.8km/ 時(屋内)
,ややはやい,何も持たずに
3.3
4.0km/ 時,ゆっくりと 11.3kg 以下の軽いものを運ぶ
3.0
立位でのトラックの荷物の積み下ろし
6.5
ややきついまたはきつい(22.7kg 以上の物を持ち上げる,レンガを積み上げる,壁紙を貼る),
4.0
マッサージ,アイロンがけ
ややきつい(休息をはさみながら効率よく物を組み立てる,22.7kg の物をロープに引っ掛け
3.5
て釣り上げる)
部品の組み立て,溶接,引っ越しの荷造り,看護:軽いまたはややきつい労力
3.0
舞台,競技場の整備,ややきつい労力
4.0
掃除,モップがけ,ややきつい労力,電気の配管工事
3.5
掃除機をかける,機器を用いた床磨き,ゴミを捨てる,ややきつい労力
3.0
(1 マイルを 1.6km,1 ポンドを 0.45kg に換算して表示)
文献 7)より抜粋,改変 重筋労働に加え,過重な精神的負荷のかかる職種に対す
1
学会のガイドラインという
ものの位置づけ
1
運動許容性診断の特殊性
る配慮が必要である.
Ⅳ
法的問題
一般に「医師の診断」は,ひとりの医師がひとりの患
このガイドラインが対象とする疾患は,その目的も受
者に対してなす個別性の高い行為であるので,裁量の幅
け手も具体的状況も千差万別であり,個別に法的問題を
が広く認められている.患者は万別であって日ごとに変
論ずることは不可能である.ここでは,学会の提案する
化することから,第三者の介入になじまないからである.
ガイドラインというものに帰せられる法的機能を瞥見し
むろん,適正な判断に至るまでに考慮すべき項目は外し
た上で,ガイドラインの適用にあたって留意すべき点を
てはならないし,その項目ごとの判断,また総合判断が
指摘する.
道理にかなって為されていること,その結果が適切に相
手方に伝えられていることなどは,裁量の限界を画する
事柄として評価の対象となりうる.このガイドラインも,
20
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
基本的にこの裁量の適正さをガイドするもの,とみるべ
きるのならば,これに違背する判断は不適切な行動(過
きであろう.
失)という推定を受けることになる.従来から自分たち
ここに示されたガイドラインには,具体的状況への適
が行ってきた慣行がこの基準にそぐわないようなことが
用の仕方については,必ずしも十分な情報は用意されて
あった場合にも,この基準が「規範」とされることもあ
はいない.「産業医が,上記の職務を遂行するにあたっ
りうる.そして,その違背の結果として何らかの不幸な
ては…職場における就業者の作業内容について作業場の
事態が生じた場合には,この違背行動をとった者は,裁
巡視などを通して把握していることが必要である」(Ⅱ
判の場において自らの正当性を立証することができなけ
− 3 職域における運動許容条件の考え方参照)という指
れば,過誤責任を問われることになる.
摘は,職場に限らず,本ガイドライン全体について一般
しかし,ここに示されたガイドラインのうちには,す
的に言えることであろう.
でに定着している慣行から援用したものもあるようであ
ただし,この作業ないし運動が現実に行われる場の把
るが,他方またやや試み的に「目安」としての機能を持
握という課題は,職場のような管理の行き届いた状況と
たせるとするものもみられるようである.後者はむしろ
異なり,スポーツの現場や学校教育の現場ではその時々
今後コンセンサスになってゆくことが期待されるものと
で状況は大きく相違することから,十分には果たし得な
考えたほうがよいかもしれない.そうであるとすると,
い.そこでこれらの場合には,その現場の差異の幅をあ
この種のガイドラインは標準的医師の基準を確認する際
らかじめ念頭においた適応性の説明と判断が医師に大き
の一つの参考文献にとどまることになり,他の考え方の
く期待される.
立証があれば,それも正当とされうるかもしれない.い
また,この種の診断を利用する者(診断書の提出先)
ずれにせよ,上で述べた効果が働きうることをも考慮し
は競技会顧問医のような専門家であることもあろうが,
て,医師には,このガイドラインから逸脱する場合には,
多くの場合は素人であり,それもある場合には本人であ
その理由を明記して残しておくことが勧められる.
り,教員であり,人事担当者であったりする.当然にさ
他方また,専門医師たちは専門家として,自らなした
まざまな使い方がなされ,これにしたがって診断の意義
個別の診断についての最終責任を負うべきものであるか
も,その責任状況もさまざまになってくる.あるいは自
ら,“このガイドラインに従っていたのであるから法的
己決定の,あるいは職場の命令の,あるいは大会からの
責任を問われない”わけではない.その医師の熟達度,
勧告などの資料として用いられることになる.これらの
そのおかれた環境によって注意義務水準は変わりうるか
受け手がこの種の診断の意味をよく理解していない限り
らである.このガイドラインは目安に過ぎないとすれば,
(それは,診断医の説明によることになる),診断の結果
臨床家には,このガイドラインにもかかわらず,最新の
は結局のところ適正には反映されない.
知見を自らの努力で追い続ける責任は残る(注).
さらにガイドラインで問題にしている診断の関わる行
したがって,学会は出したガイドラインを更改し続け
動の最終決定は,身体的安全性と人格・自己発展あるい
る(道義的)責任を負っている.それは,これに依存し,
は教育的鍛錬などという対立する価値との関わりのなか
あるいは依存せざるを得ないことになる学会員たちに対
で,問題となっている運動をいかに位置づけるかに懸か
しての責任であると同時に,その会員によって診断され
ることになる.このような価値観に関しては個人差が極
る患者に対する責任でもある.
めて大きく,客観的に評価しうるものではないことも承
知しておくことも必要である.
2
ガイドラインの意味
このような情況の中での個々の医師の診断にとって,
ガイドラインはどのような意味を持つか.当然のことで
あるが,一学会の認定したにすぎないガイドラインは,
少なくともそれ自体としては法的に拘束力を持つもので
(注:ガイドラインの不適正さが原因で被害が生じたよ
うな場合には,理論的には学会に法的責任が生じ得るが,
実際的には上述のように実務にあたった専門家の責任と
される可能性が高いと判断される.それだけに学会の道
義的責任は重いと考えるべきである.)
2
ガイドライン利用に際しての
留意点
はなく,これに「従わなかった」という理由だけで法的
制裁を受けることはない.
このガイドラインに即して為されることになる診断の
つぎに,このガイドラインを“標準的基準として学会
下される現場での留意点を記しておく.
のコンセンサスを得られたもの”と位置づけることがで
①先述のように,診断書の目的,診断書の利用方法など
21
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
を十分に聴取した上で診断書を作成すべきであり,また
診断書の内にもその内容,当該診断の効果の限界を明記
しておくべきである.いったん作成された診断書はひと
り歩きしかねないし,受け取り手は医療者に限らない.
心疾患の病態別,
対象別運動許容条件
Ⅴ
② 1 で述べたが,このガイドラインから違背する場合に
は,その理由をきちんと記録に残すべきである.診断者
自身が明確に自覚するために,また相手方への説明の確
1
先天性心疾患
1
疾患の概要
認として,そして後の争いの証拠としても有用であろう.
③診断内容の説明に際しても,交付相手と本人との関わ
り・位置づけをしっかりと確認した上で,ふさわしい説
明に努めなくてはならない.説明は,被説明者が理解す
先天性心疾患は学校における運動許容条件を考える上
ることが目的なのであり,説明者自身の自己満足では意
で最も重要な疾患である.先天性心疾患は,左右短絡疾
味がないことをよく認識しておくべきである.
患(心室中隔欠損症,動脈管開存症,心房中隔欠損症),
④診断の為に採集されたデータ及び診断内容は個人情報
圧負荷疾患(大動脈弁狭窄症,大動脈縮窄症,肺動脈弁
であるから,これに対しては患者の自己情報管理権が及
狭窄症),弁逆流性疾患,チアノーゼ性疾患,その他(冠
ぶことに注意すべきである.医師がこれを第三者に伝達
動脈奇形,修正大血管転位症,原発性肺高血圧症)に分
するには,基本的に患者本人の承諾を要するものであり,
類される.
診断書の伝達は本人の手を介することが原則である.
個々の疾患での運動許容量と心負荷ないし心事故との
産業医は,当該被用者が当該職責を担うに適するか否
関連を詳細に検討した研究はないが,我が国では従来か
かの結論を職制に伝える義務を負っているにすぎず,雇
ら学校生活管理指導表(表 9)を用いて,学校での運動
用主(その義務履行補助者たる上司等)は被用者の健康
についての目安としてきた.運動許容の決定は,これま
に関する生のデータを知る権利はない.ただし学校教師
でに出された各疾患の自然歴や種々の病態での心事故の
の場合には,その適用の場面の多様性,また本人の自己
報告などから,小児循環器医の総合的な判断によってな
決定能力の不足など状況が異なり,生データを知る必要
されてきた.日本小児循環器学会学校心臓検診研究委員
が高い一方,地方公務員法上の守秘義務,あるいは服務
会による「運動部(クラブ)活動への参加のめやす」も
規程上のそれの存在に注意を要する.
出されているが 98).本ガイドラインもこれに準じた.
⑤制定法上の明確な根拠はないのであるが,裁判例によ
って認められてきた「安全配慮義務」なるものが雇用主
(学校側)にはある.これは,職業病や事故の防止など
リスク分類のための検査法
リスク分類のための検査には,基本検査として身体所
雇用契約に含まれる本来的な義務とは別に,職場で一日
見,胸部 X 線写真,心電図検査があり,これは全員が必
を送る労働者の生活・健康全体に対して安全を確保する
須である.ここで中等度リスク以上と判断された場合や,
義務が雇用者にあるというものである.この考え方は判
軽度リスクか中等度リスクかの判断に迷う場合に,心エ
例ばかりではなく,終身雇用制を前提とした労働安全体
コー検査を行う.心臓カテーテル法は,中等度リスク,
制全体に色濃い.
高度リスクで手術適応判定のために実施するものであ
この考え方に従えば,雇用主は可能な限り被用者の健
り,運動許容決定のためには有用性が低い.
康データを集め,これをもとに積極的に被用者の健康を
保持増進するべきことになり,情報管理という観点から
みるとむしろ問題を背負い込むことになる.この矛盾克
服の鍵は,患者の医師であると同時に職場の管理者の協
22
2
3
疾患別運動許容条件
①左右短絡疾患(表 12)(表 13)
働者としての側面も持つ産業医の,生データと医師の判
基本検査における判定では,心音異常,心拡大,心肥
断をめぐる適正な行動にある.
大の有無と程度がリスク判断の基準となる.心室中隔欠
このほかにも,行動の決定能力の欠如(学童の場合),
損小欠損非手術例では,思春期までは運動時に血行動態
行動決定に自由性を欠く状況(授業,クラブなど),リ
の変化はないとの報告がある 99),100).また,AHA による
スクをあえて冒す状況(競技)などがガイドラインの適
Natural history study では,軽症例の予後は極めて良好で
応に特殊な影響を与えることになる.
あると報告されている 101),102).動脈管開存症については
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
表 12 基本検査による左右短絡疾患のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
身体所見
Ⅱ音正常,Ⅲ音なし
胸部レントゲン写真
心拡大なし,主肺動脈突出なし
軽度リスク
Ⅱ音正常,Ⅲ音あり
軽度心拡大
Ⅱ音亢進,Ⅲ音あり,
拡張期流入雑音あり
Ⅱ音亢進著明,
心雑音:弱い∼無い
中等度リスク
高度リスク
心 電 図
心室肥大所見なし
左室肥大,
ASD *:右室肥大
両室肥大,
ASD:右室肥大
右室肥大,
ASD:右室肥大著明
心拡大,肺血流量増加著明
主肺動脈突出著明,
肺血管陰影:末梢は明るい
* ASD:心房中隔欠損症
表 13 心エコー法,ドプラ心エコー法による左右短絡疾患のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度リスク
中等度リスク
高度リスク
心室中隔欠損症・動脈管開存症
心房中隔欠損症
左室・肺動脈の拡張がない,心室中隔が
収縮期に右室側へ偏位(右室圧上昇なし)
左室・肺動脈の拡張が軽度,右室圧上昇
なし
左室・肺動脈がはっきり拡張,心室中隔
の湾曲度減少(右室圧上昇)
左室拡張なし,肺動脈拡張著明(弁逆流
あり)
,心室中隔は収縮期に平坦
右室・肺動脈の拡張がない,心室中隔が
収縮期に右室側へ偏位(右室圧上昇なし)
右室・肺動脈の拡張が軽度,右室圧上昇
なし
右室・肺動脈がはっきり拡張,心室中隔
の湾曲度減少(右室圧上昇)
肺動脈拡張著明(弁逆流あり),心室中
隔は収縮期に平坦
心室中隔欠損+
大動脈弁閉鎖不全
弁の変形のみ
弁逆流軽度以下
弁逆流中等度*
弁逆流著明*,左室拡張
*この場合,運動種目のうち特に静的運動の制限が求められる.また,手術適応とは異なる.
表 14 基本検査による大動脈弁狭窄のリスク分類
身体所見
脈圧 振戦(スリル)
正常 なし
正常 なし∼あり
正常 あり
正常∼狭い あり
リスク分類
軽微なリスク
軽度リスク
中等度リスク
高度リスク
胸部 X 線写真心拡大
なし
なし
なし
なし∼あり
心電図所見
正常
正常
正常∼左室肥大
ST・T 変化*,心室頻拍*
*負荷心電図で ST・T 変化・心室頻拍があれば,他の所見に関わらず高度リスクである.
データがないが心室中隔欠損症から類推して支障ないと
考える.心房中隔欠損症は,小欠損で肺高血圧がなけれ
ば小児期には運動能は正常域で
例や成人では低下する
103),104)
,肺高血圧の合併
104),105)
.これらの運動耐容能の研
表 15 ドプラ心エコー法による大動脈弁狭窄のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度リスク
中等度∼高度リスク
ドプラ法による圧較差
< 20 mmHg
20 ∼ 40 mmHg
> 40 mmHg
究,従来の指導による経験から,基本検査によるリスク
判定基準とした(表 12).
しかし,基本検査によるリスク判定ないし運動許容条
二次検査である心エコー法,ドプラ心エコー法では以
件の設定は精度が低い.このため,
本症を疑ったならば,
下のような判定基準とした(表 13).心室負荷 , 特に右
ドプラ心エコー法が必須で,簡易ベルヌーイ法によって
室負荷が高度になるにつれ,リスクが高いと判定するも
圧較差を推定する(表 15).この方法は本目的には最適
のである.
であるが,誤差が大きい例がある 108)ので,左室壁厚も
参考にして判定する必要がある.
②圧負荷疾患
本症は経年的に進行する例のあることがよく知られて
a)大動脈弁狭窄症(表 14)(表 15)
いる 106),109)ので,進行する例を見逃さないためには 3 ∼
本症における小児期の病態増悪は主として運動中の失
5 年を目途に検査を繰り返す必要がある.
神発作ないし突然死である
106),107)
.基本検査における
「脈
b)大動脈縮窄症
圧が狭い,心電図上 ST・T 変化,胸部 X 線写真心拡大」
大動脈縮窄症では,運動時の上肢高血圧が問題となる.
は高度リスクである(表 14).心拡大がある場合,他疾
本症の病態の増悪は,心内膜炎,大動脈解離・破裂,頭
患合併の鑑別も要する.心雑音のみで,振戦(スリル)
蓋内出血などで,後 2 者は高血圧と関連する.しかし,
もなく,他の基本検査が正常ならば,軽微のリスクであ
小児期に運動と関連する心事故のデータはなく,リスク
ることが大多数である.
基準を決定するデータがない.Siguroardottir らは平均
23
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
15 歳の対象例で運動時血圧 210 mmHg を重症高血圧と
し,問題があるとしている
110)
.したがってここでは,
基本検査における判定では,逆流の程度がリスク判断の
基準となる(表 17).
運動時収縮期最高血圧 210 mmHg 以上を中等度リスク以
心エコー法,ドプラ心エコー法では,左室拡大の有無
上とする.
と逆流の程度から判定する(表 18).
c)肺動脈弁狭窄症(表 16)
心系弁逆流性疾患にはエプスタイン奇形による三尖弁
軽症では,運動能や運動時の心機能は正常であるが,
閉鎖不全であり,基本検査と心エコー法による右心系拡
狭窄が強い例や成人例では運動能が低下し,心機能の反
大の程度によって判定する(表 19).エプスタイン奇形
111)
.基本検査でのリスク基準は,心雑
において,心電図検査は運動許容条件決定における有用
音が 2 度以下は軽微なリスク,3 度以上は軽度∼高度リ
性が低い.ただし,WPW 症候群の合併は,突然死のリ
スク.胸部 X 線写真では,心拡大がないのは軽微∼軽度
スクとなる 113).チアノーゼがある場合はチアノーゼ性
リスク,あるのは中等度∼高度リスクである.心電図で
心疾患の項に従う.
応も異常である
は,正常が軽微リスク,ST・T 変化のない右室肥大が軽
度∼中等度リスク,ST・T 変化がある右室肥大は高度リ
④チアノーゼ性心疾患
スクである.運動負荷による ST・T 変化はまれである
チアノーゼ性疾患では,運動中はその強度に応じて動
112)
脈血酸素飽和度が低下するので,ある時点からはそれ以
圧較差,心室中隔形態による右室圧の推定からリスクを
上の運動が不可能となる.運動は自己制限となるので,
分類する(表 16).
許容ないし制限は不要である.ただし,本人のできる範
.心エコー法・ドプラ心エコー法では,狭窄弁での
囲内にとどめ,強要はしないことが基本である.チアノ
③弁逆流性疾患(表 17,表 18,表 19)
ーゼ性心疾患に,弁逆流,心筋収縮能低下などが加わり,
この疾患群における運動許容に関するデータは皆無で
心拡大,肝腫などの心不全徴候が出現すれば,運動は進
あるが,従来,学校生活管理指導表に従ってきた経験的
行悪化を早めるので,中等度∼高度リスクと判定する.
な基準を踏襲する.
左心系弁逆流性疾患には,大動脈弁閉鎖不全症と僧帽
⑤その他
弁閉鎖不全症がある.我が国では小児期にはリウマチ性
a)冠動脈奇形
弁膜症はほとんどなく,先天性心疾患に伴うものである.
基本検査としては狭心症・失神の有無の聴取が重要で
表 16 ドプラ心エコー法による肺動脈弁狭窄症のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度∼中等度リスク
高度リスク
ドプラ法による圧較差
< 30 mmHg
30 mmHg ∼左室圧以下
左室圧以上
収縮期心室中隔形態
正常
右室に凸でやや扁平化
扁平∼左室に凸
表 17 基本検査による左心系弁逆流性疾患のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度リスク
中等度∼高度リスク
身体所見
心雑音 2 度以下,心尖部Ⅲ音なし
心雑音 3 度以上
心尖部Ⅲ音あり
胸部 X 線写真
心拡大なし
心拡大あり
心拡大あり
心電図
正常
正常
左室・左房肥大
表 18 心エコー法,ドプラ心エコー法における左心系弁逆流性疾患のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度
中等度リスク
高度リスク
左室拡大の有無
なし
なし
あり
あり
逆流の程度(カラードプラ法)
微 小
軽 度
中等度
高 度
表 19 基本検査と心エコー法による右心系弁逆流性疾患のリスク分類
リスク分類
軽微なリスク
軽度リスク
中等度∼高度リスク
24
身体所見
心音:正常
心音:正常
心音:弱い
胸部 X 線写真(心拡大)
なし
なし
あり
心エコー法(右心系拡大)
ない
軽度
中等度以上
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
ある.これらの症状が初発あるいは初発が突然死の場合
114)
動による急性心不全の発生と運動中の突然死予防という
.既知の場合でこれらの症状がな
短期的目的,②運動による継続的心負荷に伴う余命短縮
い場合には,軽度∼中等度リスク,ある場合には中等度
の防止という長期的目的があり 80),ひいては,③個々人
∼高度リスクである.胸部 X 線写真上心拡大があれば中
に即した安全な運動習慣から,心血管や筋骨格系の発育
等度∼高度リスクである.運動負荷検査において虚血所
を促し,将来的な高血圧,糖尿病,高脂血症などの冠危
見がなければ軽度∼中等度リスク,安静ないし運動負荷
険因子を是正すること,④積極的な社会参加及び生産的
試験で虚血所見があれば高度リスクである.
役割の向上を目指すことにある.
が報告されている
b)修正大血管転位症(表 20)
チアノーゼ(心室中隔欠損+肺動脈狭窄)があれば,
1
先天性心疾患手術後患者の特徴
チアノーゼ性心疾患の項に従う.チアノーゼがない(心
先天性心疾患は多種多様であり,それぞれに特徴的な
内奇形がない,または心室中隔欠損,肺動脈狭窄,房室
術後の問題点を有する.以下,特徴を示す.①同一疾患
弁逆流などの合併)場合,胸部 X 線写真,心電図を参考
でも手術の時期や術式は患者ごとに異なり,中には非生
に判定する(表 20).心エコー法は,本症の診断,心内合
理的血行動態となる修復も多い(Fontan 手術,心房転換
併奇形の診断,心腔拡大の有無の診断に有用である.特
手術,修正大血管転位症に対する手術など),②同一疾
に,三尖弁(体循環側房室弁)逆流の合併は重要な予後
患でも術後の遺残病変や続発症は多様である(Fallot 四
悪化要因なので
115)
,その診断と経過観察には有用であ
徴症では,肺動脈狭窄や肺動脈弁閉鎖不全の遺残だけで
る.しかし,運動許容量決定における役割は大きくない.
なく,右室機能低下,三尖弁閉鎖不全,心室性不整脈,
c)原発性肺高血圧症
心筋障害に対しても考慮が必要),③心臓はいわばこれ
診断が確立すれば高度リスクである.
らの病変に代償して心拍出量を保つ状態にあるが,代償
2
の程度やその持続力(心肺予備力)は心機能の良否や複
先天性心疾患術後
数の病変の存在により異なる.また,逆に,同程度の心
機能または心内状態であっても,運動に対する心肺の反
先天性心疾患に対する外科治療は飛躍的に進歩してい
応や予備力は患者ごとに異なる.④これらの遺残病変や
る.早期手術の介入や心筋保護法の改善により心筋障害
続発症は経年的に変化し,また,この変化が新たな続発
や不整脈などの続発症の発生は明らかに減少した.また,
症の発生や心機能低下に関与する,⑤手術後の運動状態
Jatene 手術や Ross 手術の普及,Rastelli 手術での warfarin
は,心内病変の有無にかかわらず,運動制限が無い患者
が不要な goretex 3 弁の導入など,生理的血行動態に近
から全く運動していない患者までさまざまである.
づける術式の選択もなされている.しかし,一方で,左
したがって,現時点で無症状かつ比較的十分な運動が
心低形成症候群や心房内臓錯位症候群の救命率の向上に
可能であっても,運動における安全性は大きく変化する
伴い,弁機能異常などの遺残病変や不整脈,心機能低下
可能性が高いことを念頭に置き,患者ごとの詳細かつ経
を有する患者,また,現在では無症状であるが,これら
年的な運動許容条件の決定が必要となる.
が続発症として発症する可能性を有する患者が増加して
いることも事実である.このような患者にとって,高強
2
運動許容条件判定のための検査法
度かつ継続的な運動は突然死や心機能の経年的悪化に結
運動時の失神や突然死発生の要因と運動継続に伴う問
びつく可能性があり,積極的なスポーツ参加は必ずしも
題点を疾患別手術別に理解し,それらの特徴を考慮した
良い結果を招かない.先天性心疾患手術後においても運
厳密な検査と経過観察を行う.
動指導の重要性が指摘されるようになった.
第一に,心機能の評価,遺残病変の程度と続発症の有
手術後患者に対する運動許容条件決定の目的は,①運
無,ホルター心電図による不整脈の検討を行う.現在の
表 20 非チアノーゼ性修正大血管転位症のリスク分類
リスク分類
軽度リスク
中等度リスク
高度リスク
胸部 X 線写真
心拡大なし
心拡大なし∼経時的拡大傾向
心拡大あり,肺血管末梢が明るい
(アイゼンメンジャー症候群)
心電図
正常洞調律,
1 ∼ 2 度(Wenckebach)房室ブロック
高度∼ 3 度房室ブロック
高度∼ 3 度房室ブロック,失神の既往
25
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
症状の有無や運動状態,不整脈発生と運動時の失神の既
不可欠である.
往はもちろんであるが,手術前の状態(心機能や心肥大
表 21 に,運動中の失神や突然死にかかわる要因と評
の程度,不整脈),手術時期と回数,具体的修復方法(心
価のポイントを疾患及び手術別に示す 122),126)−144).突然
室切開の有無や用いた材料),手術直後の臨床経過(心
死の直接要因は急性循環虚脱と不整脈である.急性循環
不全や不整脈などの問題点),手術後の経過年数など,
虚脱の可能性が高い疾患としては,大動脈弁狭窄症や大
手術に関する詳細な病歴も将来の続発症の可能性や心筋
動脈縮窄症などの左心系閉塞性病変や,心房中隔欠損症
障害の程度
116)
を探るために有用である.
や心室中隔欠損症などの肺動脈閉塞性病変(高度肺高血
第二に運動負荷試験を実施する.NYHA などの主観
圧の遺残),また,不整脈による突然死の可能性が高い
的評価のみでは実際の機能障害を過小評価する可能性が
疾患及び手術は,心房性頻脈や洞機能不全を有する心房
ある.漸増運動負荷試験(ramp 負荷)が一般的であるが,
中隔欠損症,エプスタイン奇形,完全大血管転位症に対
117)
や心拍応答不全も
する心房転換術,Fontan 手術など,また心室性不整脈を
関与することから 118)−121),呼気ガス分析を併用するこ
有する心室中隔欠損症,ファロー四徴症,左心系閉塞性
運動耐容能の低下には肺血管病変
とが望ましい 122),123).最大運動機能の評価は重要である
病変などがある.Silka らは,手術後患者の突然死の検討
が, 酸 素 摂 取 量 VO2), 心 拍 数(HR), 酸 素 脈(O2
で,特にファロー四徴症や心房転換術などのチアノーゼ
pulse),二酸化炭素排泄量(VCO2),分時換気量(VE),
性心疾患,大動脈弁狭窄症や大動脈縮窄症などの左心閉
換 気 当 量(VE/VO2,VE/VCO2) な ど の 測 定 項 目 は,
塞性疾患では突然死のリスクが高く,同年齢対象の 25
anaerobic threshold(AT) 時,respiratory compensation
∼ 100 倍であり,また,経年的に増加すると報告した 126).
4
4
4
4
4
4
4
(RC)時においても注目し,不整脈の出現や心電図の変
化だけでなく,各測定項目の変化から運動時血行動態の
3
運動許容条件決定のための治療
悪化を示唆する所見を把握すること,すなわち,AT,
運動耐容能低下には,心肺病変だけでなく,不整脈や
RC,peak 前後での運動の安全性を評価しておくことも,
心拍応答の良否,貧血 145),心膜疾患,血管内皮障害 146),
運動許容条件決定に有用と考える
123)
.前述したように,
遺残病変や続発症は変化するものであり,経年的評価は
147)
なども関与する.当然,遺残病変への再手術が有効
と考えられる症例(遺残短絡閉鎖,狭窄病変解除,ファ
表 21 先天性心疾患術後の運動時の問題点と検査のポイント
先天性心疾患
動脈管開存症
心房中隔欠損症
検査のポイント
肺高血圧,僧帽弁閉鎖不全 127)
修復時の年齢,肺高血圧,心房性不整脈,房室ブロック,遺
残短絡 128),129)
心室中隔欠損症
心室性不整脈,肺血管病変
修復時の年齢,肺高血圧,心室性不整脈,房室ブロック,遺
残短絡 101)
肺動脈狭窄症
心室性不整脈
右室肺動脈圧格差,右室機能,肺動脈弁閉鎖不全,三尖弁閉
鎖不全,右室拡大 127)
大動脈狭窄症(弁,弁上,弁下) 心室性不整脈
圧較差,左室肥大,虚血,大動脈弁逆流,心室性不整脈 127)
大動脈縮窄症
心室性不整脈
上下肢圧較差,運動時血圧,大動脈拡大,左室肥大と心筋異
常 127)
ファロー四徴症
心室性不整脈
修復方法,肺動脈発育,肺動脈狭窄,肺動脈弁閉鎖不全,拡
張した右室,広い QRS 波,遺残短絡,肺高血圧,心室性不整
脈,修復後経過年数 127),130)−132)
完全大血管転位症(心房転換術) 洞結節機能不全,心房性心室 不整脈,房室ブロック,肺血管病変,右室機能,三尖弁閉鎖
性不整脈
不全,Buffle obstruction,遺残短絡,心筋虚血 133)−136)
完全大血管転位症(Jatene 手術) 虚血
冠動脈病変,心筋虚血,心室機能,大動脈弁閉鎖不全,遺残
短絡,肺動脈狭窄 137)−139)
修正大血管転位症
房室ブロック,心房性不整脈, 房室ブロック,不整脈,右室機能,三尖弁閉鎖不全,遺残短
右室機能不全,三尖弁逆流
絡 115),140),141)
総肺静脈還流異常症
徐脈,心房性心室性不整脈
不整脈,肺高血圧,肺静脈狭窄 142)
フォンタン手術後
心房性心室性不整脈
不整脈,体静脈圧,心室機能,房室弁閉鎖不全,肺循環の良
否,術式,動脈血酸素飽和度 122)
チアノーゼ性心疾患姑息術後
低酸素,不整脈
動脈血酸素飽和度,不整脈,心機能低下 127)
エプスタイン奇形
上室性不整脈
上室性不整脈(WPW 症候群,心房細動),小さな右室,右
室機能,右室容量負荷,三尖弁逆流,チアノーゼ 143),144)
先天性冠動脈異常
虚血,心室性不整脈
冠動脈病変,心室機能,心室性不整脈,心筋異常 127)
26
失神・突然死の要因
肺血管病変
心房性不整脈,肺血管病変
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
ロー四徴症術後の肺動脈弁置換術 148),心房転換手術後
ないからといって,すべての運動を許容することには否
における double switch 手術,房室弁修復術,術後収縮
定的な意見があることも事実である 80).表 21 に示した
性心膜炎手術
149)
150)
など)では手術
手術後患者の特徴と問題点を考慮し,遺残病変や続発症
を優先するべきである 123).また,先天性心疾患領域に
が軽度であったとしても,運動負荷試験を中心とした患
おいても,慢性心不全に対する ACE 阻害薬やβ - ブロ
者ごとの詳細な経年評価が望ましい.最終的な運動許容
ッカー,肺高血圧に対する phospodiasterase 5 inhibitor
条件の決定には,患者本人だけでなく,両親や学校関係
や endothelin receptor antagonist などの有効性が報告され
者も加えて,本人がスポーツを行う意義と必要性,運動
,両心室ペーシング
151)−153)
.運動機能の低下もしくは異常な心肺応
に伴う危険性について検討し,許容される運動,禁止す
答を認める患者では,その原因について精査し,必要で
るべき運動について充分に考慮することが重要であ
あれば外科的または内科的治療を行ってから運動許容条
る 159),160).また,スポーツ施行時の条件,すなわち,体
ている
件を決定する.
調や運動環境,warm up や cool down などの指導も徹底
さらに,運動機能に問題を認めなくても,運動に不慣
する必要がある.スポーツに対する価値観は個々人で異
れな場合には,簡単なスポーツを実際に施行させるなど
なり,また,学校生活から社会人へと成長するとともに
の運動療法的な指導も必要となる.また,スポーツの種
変化していくものであるが,特に継続的なスポーツを希
類を決定する際には,競技自体の運動強度だけでなく,
望する場合には厳密な経年的評価が必要である.
身体接触の有無やポジションによる精神的負担の程度,
競技以外の身体トレーニングの程度も把握し 154),水泳
5
先天性心疾患術後の課題
や野球,サッカーなど,希望するスポーツにおいて運動
先天性心疾患外科の進歩に伴い,運動を含めた術後の
強度を変えて施行させ,安全性を評価することも必要で
quality of life(QOL)は格段に向上している.しかし,
あろう 155).
一方で,学校や社会生活における具体的な管理指導方法
各種疾患における運動許容条件(表 21)
4
など,解決すべき手術後の問題は逆に増加した.今後は,
運動耐容能低下の詳細な病態生理を疾患及び手術ごとに
スポーツを希望する患者に対しては,スポーツの種類
検討することが第一に必要である.そして,特に,後天
選択や具体的な運動強度決定など,正確な指導が必要と
性心疾患領域における慢性心不全治療のエビデンスを応
なる.近年,先天性心疾患においても,各疾患の特徴を
用し,先天性心疾患での効果に関する大規模研究も重要
考慮した運動指導指針が提唱されている
117),122),127),139),
な課題となるであろう 161). 現時点では運動制限を余儀な
142),155)−157)
くされる患者においても,今後,それらの運動許容条件
運動強度から 9 区分し(図 1),各疾患の術前状態及び術
は改善するものと考える . そして外科医は術後 QOL 向上
後の遺残病変や続発症の程度に応じた運動許容条件が呈
のための手術を常に考えてさらに努力しなければならな
.ベセスダ会議では,運動様式を静的と動的,
示された
3),127),158)
.本邦でも門間基準により,各病態の
程度に応じた具体的な運動指針が作成され 159),さらに,
心臓病管理指導表が学校生活管理指導表に改訂されたこ
い 162).
3
後天性弁膜症
1
疾患の概要
とで,より判り易い運動指導が可能となっている.
経験的には,心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などの
根治性の高い疾患で,遺残病変や続発症などの問題がな
いほとんどの患者は通常のスポーツに参加可能であ
る
160)
.一方,有意な遺残病変や不整脈を有する患者,
後天性弁膜症の原因は,リウマチ熱,外傷,心内膜炎
など多岐にわたるが,機能異常の面からみると弁狭窄と
突然死の可能性が示唆される大動脈弁狭窄症やファロー
閉鎖不全に大別される.ここでは比較的頻度が多い,僧
四徴症 118),非生理的血行動態の Fontan 手術や心房転換
帽弁狭窄症,僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁狭窄症,大動
術では,無症状でもすべてのスポーツへの参加ができる
脈弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症を取り上げる.
わけではなく,運動強度と運動様式を考慮した許容条件
を設定しなくてはならない.しかし,疾患の種類や遺残
病変及び続発症の程度のみから,許容する運動強度やス
ポーツの種類を正確に区分すること,また,その区分内
での安全性を厳密に保証することは困難である.問題が
27
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
である.peak VO2 についてみると NYHA Ⅰ度は基準値
4
2
リスク分類のための検査法
の 100 %∼ 80 %程度,Ⅱ度は 80 %∼ 60 %程度,Ⅲ度は
60%以下にほぼ相当する.
①診断と重症度評価
弁膜症の診断は,身体所見,特に特徴的な心雑音によ
り比較的容易であるが,弁の形態や機能評価には心エコ
運動許容条件の判断は手術適応との関連で考えられ
ー法が汎用される.血流についてはドプラ心エコー法が
る.通常,弁膜症での手術適応は NYHA Ⅱ度以上,す
有用である.弁膜症の診断のためには他の検査はほとん
なわち日常生活で弁膜症に基づく症状があり,それを裏
ど必要ないが,基本的情報として心電図と胸部 X 線写
付ける血行動態異常が証明されることである.
真,及び心エコー図で質の良い画像が得られない場合に
手術適応のある例では外科治療を優先させるべきであ
は心臓 MRI 検査(Cine CMR)も有用である.ドプラ心
って,スポーツ参加は不適当である.手術までの期間の
エコー法はかなり鋭敏であり,小量の弁逆流も検出可能
運動は許容されたとしてもデコンディショニング予防な
である.正常例において三尖弁逆流は 24 ∼ 96%,僧帽
どを目的とした運動療法であって,スポーツ競技参加は
弁逆流は 10 ∼ 40%,肺動脈弁逆流は 18 ∼ 92%,そして
適当ではない.就業に関しても,病態に悪影響を及ぼさ
大動脈弁逆流は 0 ∼ 33%にみられるという
.さら
ない範囲での労作に限定される.したがって,本項で対
163),164)
に競技選手ではこの率は高くなり弁逆流は 90 %にみら
象となる後天性弁膜症をリスク分類すると,手術適応の
る 165).これらはいずれもごく少量(trivial)の逆流であ
ない時は軽度∼中等度リスク,手術適応がある例の手術
り,臨床的意義はない.
までの時期は高度リスク,手術後状態は軽度∼高度リス
競技選手の逆流性弁膜症の場合,弁膜症による左室拡
ク,手術不能例は高度リスクとなる.
大とアスリートハートによる左室拡大の鑑別は困難なこ
とが多い.スポーツ選手の 45%に左室拡張期径が 55mm
3
疾患別運動許容条件
以上あり,14%に 60mm 以上の左室拡大がみられるとい
運動許容条件の判断については運動耐容能(表 4)が
う 166).米国では,トレーニングを積んだ弁膜症の競技
基準となる.すなわち強い運動が必要でない職業スポー
選手では,一応 60mm を超えた場合に左室拡大と考えら
ツ選手以外では,最大運動能の 40 ∼ 60%または嫌気性
れている 167).
代謝域値レベルを上限とし,さらに疾患ごとの特異的制
重症度評価には,血行動態異常の評価と身体機能分類
限事項を勘案して許可条件を決定する.心房細動の合併
(NYHA 心機能分類など)は不可欠で,前者は心エコー
例では安静時の心拍コントロール状況ばかりでなく,運
法や心臓カテーテル法,後者は通常問診により決定され
動に対する心拍応答を考慮して血行動態の面からも検討
る.NYHA 分類のような自覚症状による身体機能分類
されなければならない.また,抗凝固療法については衝
は簡便ではあるが,先天性心疾患と同様に罹病期間の長
突の危険性を避けることの配慮が必要である.
い弁膜症ではその障害された心機能に見合った日常労作
しかしないために症状が惹起されにくく,身体機能を実
①僧帽弁狭窄症(表 22)
際より高く,重症度を軽く評価する傾向がある.
僧帽弁狭窄症の原因はほとんどがリウマチ性である.
心疾患患者の身体機能評価すなわち運動耐容能につい
正常の僧帽弁口面積は 4.0 ∼ 5.0cm2 であり,1.5cm2 以上
ては,客観的な評価法として運動負荷試験がある.病歴
では安静時に症状が出ることはまれである.僧帽弁狭窄
があいまいな例や,運動をしたいがために症状を隠して
の場合,運動中の血行動態の特徴は左房圧の上昇で,特
いるような例では特に有用である.中でも心肺運動負荷
に心房細動で心拍数コントロールがついていない場合は
試験は運動中の心機能評価や重症度分類に極めて有用で
著明な一回拍出量の減少を伴うので運動耐容能の低下は
あるばかりでなく 168),具体的に許容される運動強度を
著明である.血栓塞栓症を疑わせる症状や既往がある場
決定することも可能である
79)
.心肺運動負荷試験による
合には運動は慎重でなければならない.脱水は血栓形成
最大運動耐容能は,最大または最高酸素摂取量(Maximal
を助長するので,運動前後での水分摂取が重要である.
VO2 または peak VO2)を年齢,性,体重で補正した基
僧帽弁狭窄症ではその重症度にかかわらず心房細動やそ
準値に対する割合で評価する 168).最高酸素摂取量は加
の既往のある患者の抗凝固療法は必須である.その場合,
齢により 10 年間に 8 ∼ 10 %低下し 169)−171),女性は男性
体が接触する危険のある競技や外傷の危険性の高い競技
より低値を示すためである.これは AT についても同様
への参加は禁じられる.
4
28
②手術適応との関係
4
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
表 22 ACC/AHA 診療ガイドラインによる僧帽弁狭窄症の重
症度分類
指標
平均圧較差(mmHg)
肺動脈収縮期圧(mmHg)
弁口面積(cm2)
軽症
<5
< 30
> 1.5
僧帽弁狭窄症
中等症
5-10
30-50
1.0-1.5
重症
> 10
> 50
< 1.0
②僧帽弁閉鎖不全症(表 23)
僧帽弁閉鎖不全症は後天性弁膜症の中でも頻度の多い
疾患である.原因は多岐にわたり,僧帽弁逸脱,リウマ
チ性,冠動脈疾患,拡張型心筋症,結合織疾患,感染性
心内膜炎などがあるが,最も多い原因は僧帽弁逸脱症候
群である.冠動脈疾患や心筋症による二次的なものは,
a)軽症僧帽弁狭窄症
その項の運動許容条件を参考にすること.運動中は前方
僧帽弁弁口面積 1.5 cm2 より大,安静時の肺動脈収縮
拍出量とへの左房逆流量は同程度に増え,左室駆出率は
期圧 35 mmHg 未満,運動中の肺動脈楔入圧 20mmHg 以
不変ないし軽度減少する 173).僧帽弁狭窄より少ないが,
下または運動中の肺動脈収縮期圧が 50mmHg 未満,か
拡大した左房内の血栓形成の頻度が高いので,同じよう
つ心不全や血栓塞栓症の既往がなく薬物治療の必要がな
な注意が必要である.
い洞調律例は軽度リスクであり
172)
,競技スポーツや職
a)軽症僧帽弁閉鎖不全症
域での作業にほとんど制限はない.同様の条件でも心房
心不全や血栓塞栓症の既往がなく,洞調律で左室径及
細動例は,中等度リスクとなり,薬物治療で運動中の心
び左室機能が正常例は,軽度リスクである 172).この場合,
拍数がよくコントロールされているなら中等度の運動ま
ほとんどの競技スポーツに参加可能である.心房細動合
で許容できる.
併例では,運動中の心拍応答が正常にコントロールされ
b)中等症僧帽弁狭窄症
ていれば,軽度リスク群として強い運動まで許容される
僧帽弁口面積 1.0 ∼ 1.5 cm ,運動中の肺動脈楔入圧
が,心房細動例では運動耐容能が 10 METs を超えるこ
25mmHg 以下または運動中の肺動脈収縮期圧 50 mmHg
とは極めてまれであるため,事実上中等度の運動許容に
以下のいずれかがある場合は,洞調律,心房細動にかか
とどまる.
2
わらず中等度リスクである
172)
.中等度以下の静的
(Maximal voluntary contraction; MVC ≦ 50 %) 及 び 動
b)中等症僧帽弁閉鎖不全症
左室拡大が軽度で左室機能が正常の場合には中等度リ
的(Maximal VO2 ≦ 70%)スポーツは可能である(図 1).
スクである.中等度リスク群では中等度以下の静的
しかし,顕性心不全の既往や運動耐容能の低下,労作時
(MVC; Maximal voluntary contraction < 50%)かつ動的
息切れなどの症状を伴えば,手術や PTMC の適応とな
(Maximal VO2 ≦ 70%)スポーツ,または高強度の動的
4
4
り,高度リスクとなる.
スポーツ(Maximal VO2 > 70%)は可能な場合もある(図
c)重症僧帽弁狭窄症
1).心房細動例では運動中の頻脈の程度を評価する必
弁口面積 1.0 cm 未満,運動中肺動脈楔入圧 25 mmHg
要があり 172),運動負荷試験が必要である.
を超える,または安静時肺動脈収縮期圧 50mmHg を超
c)重症僧帽弁閉鎖不全症
える場合のいずれか,または運動中の肺動脈収縮期圧が
左室機能低下や明らかな左室拡大がある例(概ね左室
4
2
50mmHg を超える場合は高度リスク群である
172)
.うっ
拡張期径> 60mm),肺高血圧例は高度リスク群であり,
血性心不全を呈さなくても競技スポーツ参加は不適当
手術適応を検討すべきである.また,スポーツへの参加
で,職域でも一般事務作業に制限される.高度リスクで
は許可されない.職域での活動も低強度の事務作業程度
も,薬物療法で症状がほぼコントロールされれば軽い運
にとどまる.
動が許容される場合がある.
表 23 ACC/AHA 診療ガイドラインによる僧帽弁閉鎖不全症の重症度分類
軽症
定性的指標
左室造影
1+
カラードプラジェット面積(cm2) 小量の中心ジェット
(4 cm2 未満または左房面積の
20% 未満)
ドプラ縮流幅(cm)
< 0.3
僧帽弁閉鎖不全症
中等症
2+
軽症よりは多いが重症
の徴候はない
0.3 ∼ 0.69
重症
3 − 4+
縮流幅> 0.7cm で中央が大き
い逆流ジェット(左房面積の
40%を超える)またはジェッ
トが壁に当たるか渦を巻く
≧ 0.70
29
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
能である.弁狭窄が軽度でも心拍出量が多いと圧較差は
③僧帽弁逸脱症
50mmHg を超えることがあり,逆に高度になって心拍
僧帽弁逸脱症は僧帽弁逆流を伴うものと,伴わないも
出量が低下すると圧較差が 30 mmHg 以下となることも
のがある.予後は良好であるが,運動時の心室性不整脈
あるので,血行動態の評価には注意が必要である.無症
については確認が必要である
174)
.僧帽弁逆流が進行す
状の場合には運動負荷試験による運動耐容能評価を注意
る場合にはうっ血性心不全や肺高血圧に陥る例もあ
深く行う.運動負荷試験で多形性や 2 連発以上の心室期
り
175)
,運動許容条件は前述の僧帽弁閉鎖不全症と同様
に考える.
外収縮が認められれば,中等度リスクとなり 172),低強
度の運動にとどめる.
b)中等症大動脈弁狭窄症
④大動脈弁狭窄症(表 24)
弁口面積が 1.0 ∼ 1.5 cm2,圧較差が 20 ∼ 40mmHg は
成因としてはリウマチ性,先天性(二尖大動脈弁など
中等度リスクであり 179),低強度のスポーツ(Maximal
を含む),老人性(変性,カルシウム沈着性)が代表的
VO2 < 40 %)への参加が可能なことが多い(図 1).慎
である.重症度判定のための弁狭窄に関する評価はドプ
重な経過観察と定期的検査に加え,手術適応についての
ラ心エコー法で可能である.重要な症状は心不全,失神
検討が必要である.運動負荷試験で多形性や 2 連発以上
発作,狭心症発作であり,僧帽弁膜疾患と異なり,これ
の心室期外収縮が認められれば,中等度リスクであ
らの症状が出現すると急速に病態が悪化したり,心臓突
る 172).
然死を起こしたりするので弁狭窄の程度によらず高度リ
c)重症大動脈弁狭窄症
4
.大動脈弁狭窄症は進行性であるこ
弁口面積 1.0 cm2 以下,圧較差が 40mmHg を超える場
とが多く,無症状であっても,6 ∼ 12 か月ごとの定期的
合は高度リスク群である 179).重症大動脈弁狭窄症はい
なドプラ心エコー法による評価が必要である.また,競
かなるスポーツも許可されない.直ちに手術適応を検討
技スポーツへの参加者にはホルター心電図による心室性
すべきである.
スクである
176)−178)
不整脈の評価が必要である.なお,大動脈狭窄症の重症
度分類については ACC/AHA 診療ガイドラインが日本人
⑤大動脈弁閉鎖不全症(表 25)
において妥当かどうかの議論がある.
成因には,リウマチ性,先天性二尖弁,特発性大動脈
a)軽症大動脈弁狭窄症
拡張症,高血圧,マルファン症候群,梅毒などがある.
弁口面積 1.5 ㎝ 2 以上を超える場合,圧較差 25mmHg
未満軽度リスク群であり
179)
,ほとんどのスポーツは可
慢性の経過をとり左室は徐々に拡大し,無症状の期間は
長い.心エコー法とドプラ心エコー法による弁形態,原
因,逆流量の半定量化,左室径,左室収縮能等の情報は
表 24 ACC/AHA 診療ガイドラインによる大動脈弁狭窄症の
重症度分類
指標
流速(m/sec)
平均圧較差(mmHg)
弁口面積(cm2)
弁口面積係数(cm2/m2)
軽症
< 3.0
< 25
> 1.5
大動脈弁狭窄症
中等症
3.0 ∼ 4.0
25 ∼ 40
1.0 ∼ 1.5
重症
> 4.0
> 40
< 1.0
< 0.6
運動許容条件の判断に有用である.左室収縮期径は予後
を規定する重要な因子である 179).狭心痛や呼吸困難な
どの症状が出現した後の死亡率は年間 10 %を超えるた
め 180),181),高度リスク群である.
a)軽症大動脈弁閉鎖不全症
左室径が正常で軽度逆流の例は軽度リスクであり,ほ
表 25 ACC/AHA 診療ガイドラインによる大動脈閉鎖不全症の重症度分類
定性的指標
左室造影
カラードプラジェット幅(cm)
ドプラ縮流幅
定量的指標
逆流量(ml/beat)
逆流分画(%)
逆流弁口面積(cm2)
左室サイズ
30
軽症
大動脈弁閉鎖不全症
中等症
重症
1+
中心ジェット幅が左室流出路
の 25%未満
< 0.3
2+
軽症よりは多いが重症
の徴候はない
0.3 ∼ 0.6
3 − 4+
中心ジェット幅は左室流出路
の 65%より大
> 0.6
< 30
< 30
< 0.10
30 ∼ 59
30 ∼ 49
0.10 ∼ 0.29
≧ 60
≧ 50
≧ 0.30
増加
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
とんどのスポーツ参加が可能である.しかし,6 ∼ 12 か
ている施設が多い.
月ごとの定期的検査を行い,左室径の増加や左室機能の
弁機能及び左室機能が正常で抗凝固療法を行っていな
低下がないことを確認する必要がある.また,軽症であ
い生体弁による僧帽弁置換術後例は軽度リスクである
っても,症状の有無にかかわらず心室頻拍を有する例で
が,強い運動は許可できず,中等度強度の静的運動また
は,低強度の運動(Maximal VO2 < 40 %)にとどめる
は動的運動が可能である.軽度左室機能障害例は中等度
べきである.(図 1)
リスク群であり,低強度の運動にとどめる.
b)中等症大動脈弁閉鎖不全症
大動脈弁位人工弁置換の重篤な合併症発生率は年間 2
4
左室の軽度拡大を有する例は中等度のリスクであり,
∼ 3 %以上で,人工弁が直接の死因となる場合は 1 %程
定期的な左室機能評価が必要で,左室拡大の進行がみら
度ある 182)−187).大動脈弁置換術後では,軽度ないし中
れなければ中等度の運動まで許容できる.安静時並びに
等度の大動脈弁狭窄と同じ病態と考えるべきである.抗
運動誘発性の心室期外収縮を有する例は中等度リスク群
凝固薬を服用していない左室機能正常の大動脈弁置換術
である.
後例は中等度リスク群である 172).機械弁または生体弁
c)重症大動脈閉鎖不全症
による大動脈弁置換術後では,左室機能が正常であれば
重症例では,まず手術適応を第一に検討すべきである.
中等度強度の静的運動または動的運動が可能である.低
左室径にかかわらず症状のある例,近位上行大動脈の著
強度であっても競技スポーツに参加する場合には,運動
明拡大例(大動脈径 >45mm),マルファン症候群による
負荷試験で少なくともその運動強度までの安全の確認を
例は高度リスク群であり 172),競技スポーツへの参加は
するべきである.
許可されず,低強度の運動にとどめる.職域での活動も
いずれの場合でも,術前の心不全状態からの回復の程
低強度の事務作業程度にとどまる.
度の評価が重要で,運動耐容能や左室機能,BNP・ノル
⑥三尖弁閉鎖不全症(表 26)
エピネフリンなどの神経体液性因子,圧受容体反射や心
拍変動などの自律神経機能など,可能な限り病態の把握
成因は僧帽弁膜症とほとんど同じで,右室圧上昇,右
に努める.多くの症例でこれらの指標は経時的に回復す
室拡大,三尖弁輪拡張,肺高血圧,右心不全などを起こ
るので,初期は 3 ∼ 6 か月ごとの運動負荷試験による評
しうる.無症状の一次的な三尖弁閉鎖不全で右房圧が
価が重要である.特に術後 6 ∼ 12 か月間の心臓リハビ
20 mmHg 以下,右室機能が正常ならば軽度リスクであ
リテーションは身体機能回復に重要で,運動処方に基づ
る 172).しかし多くの場合,三尖弁閉鎖不全は連合弁膜
き運動療法を実施すべきである.
症の一つとして存在することが多いので,運動許容条件
は基本的に合併する僧帽弁膜症や大動脈弁膜症の重症度
に依存する.
⑦人工弁置換術後
⑧弁形成術後
僧帽弁形成術が広く行われるようになった.しかし,
この治療法を受けた患者への運動の影響を調査したデー
タはほとんどない.通常は低い運動強度のスポーツには
人工弁置換術後は,根治的治療が行われたにもかかわ
参加可能であると思われ,運動負荷試験を実施して AT
らず,新たな疾患を持つ患者としての対処が必要である.
レベルまたは最大運動能の 40 ∼ 60%程度の動的運動が
人工弁には生体弁または機械弁が使用される.人工弁の
可能である.
観点から運動中の心拍数と血行動態との関係を示した報
告はないが,経験的には心拍数の上限を 150 拍 / 分とし
⑨抗凝固療法
人工弁置換術後に抗凝固療法中の患者は,身体衝突や
表 26 ACC/AHA 診療ガイドラインによる三尖弁膜症,肺動
脈弁膜症の重症度分類
三尖弁膜症・肺動脈弁膜症
重症三尖弁狭窄症
弁口面積< 1.0cm2
重症三尖弁逆流
縮流幅>0.7cm かつ収縮期肝静脈逆流
重症肺動脈弁狭窄症 ジェットの流速> 4 m/sec または最大
圧較差> 60 mmHg
重症肺動脈弁逆流
カラージェットが右室流出路を覆う.
連続波ドプラシグナルが急峻に減少
する
外傷を負う可能性があるスポーツや作業は許容されな
い.
4
心筋疾患
1
学校
ここでは,小児期の心筋疾患を肥大型心筋症,拡張型
31
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
心筋症,拘束型心筋症,不整脈源性右室心筋症,及び心
い種目であれば,中等度強度までの運動が許容(日本学
筋炎に分けて述べる.
校保健会編「学校生活管理指導表」における「D」区分
に相当)されるが,強い運動は禁忌とする.リスク評価
①肥大型心筋症
のために定期的な検査を繰り返すべきである.突然死の
a)疾患の概要
危険因子を 1 つ以上有するものは高度リスクであり,軽
肥大型心筋症は左室または右室心筋の肥大を特徴とす
い運動を除き,運動を禁忌とする(日本学校保健会編「学
る.肥大は左室後壁よりも心室中隔に強くあらわれるこ
校生活管理指導表」における「C」区分に相当).リス
とが普通で,収縮期に左室流出路狭窄が生じることもあ
ク評価の検査を定期的に行う.
る.また,日本人には心尖部の肥大を特徴とする例が比
較的多くみられる.左室容量は正常または減少する.し
ばしば家族性に発症し,常染色体優性遺伝の形をとるこ
a)疾患の概要
とが多い.小児での罹患率はオーストラリアからの報告
拡張型心筋症は左室または両方の心室の拡張と収縮力
では 10 歳未満の小児のうち 0.32 人 /10 万人・年
,米
低下を特徴とする.小児での罹患率はオーストラリアか
国からの報告では 18 歳以下の小児で 0.47 人 /10 万人・年
らの報告では 10 歳未満の小児のうち 0.73 人 /10 万人・
であった
188)
189)
.最近の諸研究によると,肥大型心筋症の
予後は以前に考えられていたほど悪くはなく,1 % / 年
程度の死亡率である
190),191)
.小児における肥大型心筋症
の主要な死因は心臓性突然死である
192)
.突然死はそれ
年 188),米国からの報告では 18 歳以下の小児で 0.58 人
/10 万人・年であった 189).原因はさまざまで,特発性,
遺伝性,ウイルス性 / 免疫性,アルコール性 / 中毒性,
虚血性,高血圧性などの心疾患に伴うものなどである.
までに全くあるいはほとんど症状のなかった患児にも発
最近の研究では,リンパ球性心筋炎の組織学的所見が小
生する.突然死が肥大型心筋症の初発症状であることも
児の拡張型心筋症の 40.3 %にみられたという 188).小児
多く,しばしば運動中に発生しているので,学校管理下
における予後データはさまざまであるが,5 年生存率と
における突然死予防は重要な課題である.
して 64%ないしは 84% が報告されている 199).小児にお
b)リスク分類のための検査法
いて心臓性突然死は比較的まれである.
成人での肥大型心筋症における突然死の危険因子
b)リスク分類のための検査法
は 193)−195),①肥大型心筋症に関連した突然死の家族歴,
拡張型心筋症におけるリスク評価に必要な検査は,詳
②肥大型心筋症に起因したと考えられる失神の既往,③
細な既往歴と家族歴の聴取,安静時 12 誘導心電図,心
ホルター心電図で記録された非持続性心室頻拍の既往,
エコー検査,24 時間または 48 時間のホルター心電図記
④運動負荷試験中に生じた低血圧 194),195),⑤著明な心筋
録,トレッドミルまたは自転車エルゴメータによる運動
肥厚(30mm 以上)などであり,そのうちでも著明な心
負荷試験,心臓カテーテル法などである.拡張型心筋症
194),195)
.ま
における予後判定因子として,さまざまのものが提唱さ
た,これらの危険因子の数と突然死のリスクは比例する
れているが,個々の症例に対して決定的に適用できるほ
筋肥厚が最もよく突然死の発症を予測しうる
と報告されている
194)
.逆に,これらの危険因子のいず
れをも有しない症例が突然死にいたる危険はほとんどな
収縮能の低下
193)
196)
どの因子は見つかっていないのが実情である.
c)運動許容条件
.また,左房径(>48mm) や
拡張型心筋症をもつ小児は中等度以上のリスクを有す
などは心不全死の危険因子であると
ることとし,中等度リスクは,心室性不整脈に起因する
いと報告されている
32
②拡張型心筋症
197),198)
いう.
と考えられる失神の既往がなく 199),心不全がないか,
肥大型心筋症におけるリスク評価に必要な検査は,詳
あっても NYHA 分類Ⅰ度またはⅡ度 199),あるいは最大
細な既往歴と家族歴の聴取,心エコー検査,24 時間また
酸素摂取量 18 ml/kg/ 分以上(5 METs 以上)199)−201),安
は 48 時間のホルター心電図,運動負荷試験などである.
静時 12 誘導心電図で房室ブロック 202),203)や左脚ブロッ
c)運動許容条件
クがなく 202),203),運動負荷心電図あるいはホルター心電
本疾患に起因する突然死の多くが小児または若年成人
図で心室頻拍を認めないもの 199)とする.また心不全や
であることを考慮すると,肥大型心筋症をもつ小児は中
不整脈がコントロールされても心機能が改善しなければ
等度以上のリスクを有することになる.上記に述べた突
予後不良な疾患で,運動はその増悪因子であることを考
然死の危険因子①∼⑤のいずれをも有さないものは,中
えると,胸部 X 線写真で心胸郭比 55 %未満で肺うっ血
等度リスクであり,自覚的強度 13 以下で競技性の少な
所見を認めず,駆出分画 40 %以上,脳性利尿ペプチド
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
(BNP)が 100pg/ml 未満などの所見があっても中等度リ
が本症の発症に関与しているようである 206).本症の発
スクと考える.高度リスクは,心室性不整脈に起因する
生頻度は低く,日本における総患者数は 640 人程度であ
と考えられる失神の既往のあるもの
199)
,NYHA Ⅲ度ま
たはⅣ度 199),最高酸素摂取量 18 ml/kg/ 分 未満 199)−201),
運動負荷心電図またはホルター心電図で心室頻拍
199)
の
ると推定されている 207).欧米の多施設協同研究による
と,死亡あるいは心臓移植をうけた 42 人の本症患者の
うち 32 人が突然死であり,うち 16 人は労作中に発生し
いずれかを有するものとする.
たと報告されている 208).また,初発症状が心臓性突然
検査の結果,中等度のリスクと判定されれば,中等度
死であることが多い.
強度までの運動を許容する(日本学校保健会編「学校生
b)リスク分類のための検査法
活管理指導表」における「D」区分に相当).ただし,
リスク分類に必要な検査は,詳細な既往歴と家族歴の
強い運動は禁忌とする.高度のリスクと判定されれば,
聴取,安静時 12 誘導心電図,24 時間または 48 時間のホ
軽い運動を除き,運動を禁忌とする(日本学校保健会編
ルター心電図記録,胸部 X 線写真,心エコー検査などで
「学校生活管理指導表」における「C」区分に相当).
③拘束型心筋症
ある.予後不良を予測する因子は,若年発症,競技スポ
ーツ選手,突然死の家族歴,広範な右室病変あるいは左
室への進展,失神の既往,心室頻拍などである 209).本
a)疾患の概要
症と診断されたすべての小児は高度リスクを有すると判
拘束型心筋症は心室壁の硬化に伴う心室拡張能の低下
断される.
を特徴とする.収縮能はほぼ正常であり,心筋の肥大は
c)運動許容条件
認めない.小児での罹患率は 18 歳以下の小児を対象と
軽い運動を除き,運動は禁忌である(日本学校保健会
した米国からの報告ではで心筋症全体の 3%を占めてい
編「学校生活管理指導表」における「C」区分に相当).
たという 189).特発性のもののほか,アミロイドーシス
また,定期的に 1 度程度はリスク評価のための検査を繰
などに伴う場合もある.日本で行なわれた全国的な大規
り返すべきである.
模疫学調査によると,有病率は人口 10 万人あたり 0.2 人
であった 204).小児期に発症した本疾患の予後は不良で,
⑤心筋炎
2 年生存率は 50%以下である 205).
a)疾患の概要
b)リスク分類のための検査法
心筋炎は炎症細胞の浸潤と心筋障害によって特徴づけ
拘束型心筋症におけるリスク分類に必要な検査は,詳
られる炎症性疾患である.病因は感染,中毒,自己免疫
細な既往歴と家族歴の聴取,安静時 12 誘導心電図,24
などであるが,最も多いのが感染性のものである.細菌,
時間または 48 時間のホルター心電図記録,胸部 X 線写
マイコプラズマ,ウイルスなど,あらゆる種類の病原体
真などである.胸部 X 線写真での肺うっ血所見,胸痛や
が原因となりうるが,コクサッキー B ウイルスをはじめ
失神の既往,心電図での ST 変化など心筋虚血を示す所
とするエンテロウイルスによるものが最も多い.心筋炎
見のある症例では予後は極めて不良である 205).本症の
は若年者の突然死のうち 18 ∼ 29%を占めると推定され
予後が極めて不良であることから,本症と診断されたす
ている 210).心筋炎の多くは上気道感染症や消化器感染
べての児は高度リスクを有すると判断される.
症などの先行感染症の後,数日して発症するが,初発症
c)運動許容条件
状は全身倦怠感,不機嫌,呼吸困難などの非特異的なも
軽い運動を除き,運動を禁忌とする(日本学校保健会
のであることが多い.したがって,明らかに心疾患を疑
編「学校生活管理指導表」における「C」区分に相当).
わせる症状や所見のない軽度の上気道炎患児に運動を禁
また,定期的にリスク評価のための検査を繰り返すべき
止させることや心臓専門医を受診させることは困難であ
である.
る.しかし,感冒罹患中または罹患後に頻脈,不整脈,
④不整脈源性右室心筋症
浮腫,呼吸困難,心拡大などの心不全を疑わせる症状や
所見のみられた場合には運動参加を見あわせ,心臓専門
a)疾患の概要
医を受診することが必要である.
主として右室心筋,時に両心室にみられる進行性の線
b)リスク分類のための検査法
維脂肪化を特徴とする.しばしば家族性に発生する.発
急性期の心筋炎と診断されたすべての小児は入院治療
症年齢は早くても思春期後期以後で,20 ∼ 40 歳がほと
の必要がある.症状,身体所見,胸部 X 線写真,心エコ
んどである.また,運動選手によくみられ,激しい運動
ー法,標準 12 誘導心電図,ANP や BNP,心筋トロポニ
33
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
ン T などの血清所見などで活動性が消失したと判断され
運動の許容条件の判断にも有用である.なお,心事故の
た場合には,心エコー法などで心機能を測定し,ホルタ
危険性はこのような肥大型心筋症の病態のみでなく,運
ー心電図や運動負荷心電図などで不整脈の評価を行って
動の性質と強度,環境,試合条件や患者本人のコンディ
運動許容条件の判定をする.
ションなど多数の因子に左右されることを銘記しておく
c)運動許容条件
べきである.
急性期を過ぎて活動性が消失したと判断されれば,拡
心停止や心室細動からの蘇生例や自然発症の持続性心
張型心筋症の項に準じて運動許容条件を判断する.
室頻拍例は突然死の高リスクで 217)−220),二次予防とし
2
て ICD の適応であるとともに,運動制限が必要である.
成人(職域,スポーツ)
突然死の一次予防のための危険因子としては一親等以
成人の心筋症については大規模な臨床試験はほとんど
内または多発する 50 歳未満の突然死の家族歴 193),214),221)
なく,運動中の心事故・突然死の機序や危険因子につい
と若年者または運動時に繰り返し発生する原因不明な失
ては不明な点が多い.そのため既存のガイドラインを参
神 193),222)が挙げられており,病歴や家族歴の聴取が重要
照しながら専門家の意見により作成した.成人の心筋症
である.心エコー図では最大壁厚 30mm 以上 193)−195),223),
として,肥大型心筋症,拡張型心筋症を取り上げた.そ
運動負荷試験では 50 歳未満の患者にみられる収縮期血
の他の心筋症については,学校の項を参照のこと.
224)−227)
圧の低下または上昇不良(< 20mmHg)
が突然死
の危険因子である.またホルター心電図では,120/ 分以
①肥大型心筋症(表 27)
上の非持続性心室頻拍が突然死の危険因子であるが 228)−
231)
a)疾患の概要
,電気生理学的検査の有用性は確立されていない.
本症の有病率は一般に 500 人に 1 人
とされ,我が国
しかしこれらの主要危険因子の陽性適中率は 20 ∼ 25%
でも 10 万人当りの有病率は,職場検診で 170 人 212),住
程度でそれほど高くなく中等度リスクと評価される 214),
民検診で 374 人 213)とほぼ同様の頻度が報告されている.
216)
本症では左室収縮機能は正常に保たれ,重篤な心不全を
い例は軽度リスクと評価される.
示すことは少なく,死亡率は年率 1%程度である.しか
c)運動許容条件
し,死因の過半数を突然死が占めることが問題で,40
(1)職域での作業
211)
.一方,陰性適中率は 90 %と高くこれらの因子がな
歳以下の若年者の突然死の原因として重要である 214)−
軽度リスクであれば軽い作業及び中等度の作業は許容
216)
.突然死はスポーツ,労作中やその直後に多く発生
される.強い強度の作業は 10METs 以上の運動耐容能が
すると報告されているが,激しいスポーツ試合やトレー
あり,自覚的運動強度 13 以下であれば従事可能の条件
ニング中のみではなく,ジョギング中,階段昇り,重い
つき許容とした.中等度リスクでは軽い作業は許容され
荷物を持った時など中等度の運動・労作時にも発生する.
る.中等度の作業は 5 ∼ 10METs の運動耐容能があり自
b)リスク分類のための検査法
覚的強度 13 以下で心室頻拍などの危険な不整脈がなけ
表 27 に ACC/ESC の Clinical Experts に よ る 肥 大 型 心
216)
筋症についての Consensus Document
で挙げられてい
る突然死の主要危険因子を示した.この他に個々の患者
で考慮すべき因子として 1)心房細動,2)心筋虚血,3)
れば許容されるが,強い作業は禁忌とする.高度リスク
では自覚的強度 13 以下で危険な不整脈や心不全がなけ
れば軽い作業は許容される.
(2)スポーツ
左室流出路狭窄,4)突然死の頻度が高い遺伝子異常,5)
軽度リスクでは,軽い運動と中等度の運動は許容され
高度な(競技性が強い)身体活動が挙げられている.こ
るが,強い運動や競技的スポーツは禁忌とする.中等度
のような危険因子は ICD の適応の検討に用いられるが,
リスクでは自覚的強度 13 以下で危険な不整脈がなけれ
ば軽い運動及び中等度の運動は許容されるが,強い運動
表 27 肥大型心筋症における突然死の危険因子
危険因子
心停止(心室細動)の病歴
自然発症の持続性心室頻拍
50 歳未満の早発性突然死の家族歴
原因不明な失神
高度な左室壁肥厚(≧ 30mm)
運動中の血圧上昇反応不良
非持続性心室頻拍
34
リスク分類
高度
高度
中等度
中等度
中等度
中等度
中等度
は禁忌とする.高度リスクでは危険な不整脈や心不全が
コントロールされたと循環器専門医により判断された場
合,軽い運動は条件つき許容とする.中等度の運動,強
い運動や競技スポーツは禁忌とする.
肥大型心筋症の中にはプロスポーツなど極めて高度な
運動が可能な患者がみられるが,競技スポーツにおいて
は精神的緊張,興奮などの悪条件が加わると,突然死が
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
発生する可能性が高くなることが知られている.したが
なければ許容される.高度リスクでは心不全や不整脈が
って原則として競技スポーツは禁忌とするが,軽度リス
コントロールされた例では軽い作業は許容される.
ク例では軽い運動のスポーツ競技は許容される.
(2)スポーツ
なお,ICD 植込み例では危険な不整脈が発生しても突
原則として禁忌とする.ただし,中等度リスクでは運
然死を未然に防止できることが明らかとなりつつある.
動耐容能の 60 %未満で競技性の少ない軽い運動は許容
しかし ICD により上述の運動許容条件を変更しうるか
される.また中等度及び高度リスクにおいても適切な運
否かは今後の検討課題である.
動処方による心臓リハビリテーションは許容される.
②拡張型心筋症
5
冠動脈疾患
1
川崎病
a)疾患の概要
心不全で発症し,しばしば進行性で,以前は 1 年,5
年生存率は約 85 %,50 %と予後不良であった.しかし
ACE 阻害薬,β- 遮断薬などの心不全治療の進歩により
5 年生存率は約 80%と飛躍的に改善している.我が国に
①疾患の概要
おける有病率は 10 万人当り 12.5 ∼ 150 人と報告 213),232)
川崎病は主として 4 歳以下の乳幼児に発症し,発熱・
されている.
発疹・目の充血などを主徴とする原因不明の急性疾患で,
b)リスク分類のための検査法
急性期には軽度な心筋炎を含めると 20 %近くの例に心
拡張型心筋症の主な死因は心不全死と突然死で心機能
障害があるとされる.このうち,冠動脈の病変が重要で,
障害が進行した例に多く発生し,運動はその増悪因子で
約 4%に冠動脈瘤ないし拡張が残存し,運動許容上問題
ある.したがって,エビデンスは不十分であるが,本症
となる 234).
は原則的に高度リスクである.しかし心不全治療法の進
歩により心機能が改善(駆出分画 40 %以上)し,中等
②リスク分類のための検査法
度リスクと評価してよい例が増加している 233).また心
ここでは概要を示すが,詳細は日本循環器学会「川崎
機能の改善はなくても心不全がコントロールされた例で
病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」
は適切な運動処方による心臓リハビリテーションは有効
235)
である 79).しかし運動により心不全が増悪し,心機能が
たい.
低下する危険性があり,薬物治療を継続するとともに定
川崎病既往の小児での運動許容条件は,冠動脈遺残合
期的に検査を行う必要がある.これらのリスク分類には,
併症に伴う心筋虚血のリスクを適切に把握した上で設定
胸部 X 線写真,心エコー図,運動負荷試験,ホルター心
するものである.本症の場合,冠動脈狭窄・閉塞が遠隔
電図,BNP が有用である.
期に発生する危険性は,急性期の冠動脈血管炎により引
心不全がコントロールされ,以下の条件を満たす場合
き起こされた障害の程度と疾患自然歴(冠動脈瘤形成の
中等度リスクと判定される.
有無,大きさ,広がり,瘤の遺残,退縮,血栓形成,狭
236)
や「川崎病の管理基準(2002 年改訂)」
も参照され
・
NYHA 心機能分類Ⅰ∼Ⅱ度
窄形成,血管内皮障害,側副血管形成)が密接に関連す
・
胸部 X 線写真にて心胸郭比が 55 %未満で肺う
る.
っ血所見を認めない
運動許容の判断には,急性期からの冠動脈病変を主と
・
駆出分画 40%以上
する病歴と,各時点での心筋虚血の有無の両面から把握
・
運動耐容能 5METs 以上で運動中に心室性不整
するために,心エコー法,運動負荷試験が必要である.
脈の増加,血圧下降がみられない.
その結果から冠動脈造影検査を行うかどうか判断する.
・
ホルター心電図で心室頻拍がみられない.
・
脳性利尿ペプチド(BNP)が 100pg/mℓ未満
③運動許容条件
上記以外は高度リスクとして扱う.
運動負荷試験,心筋シンチグラフィなどによる検討の
c)運動許容条件
報告 237)−241)から以下のように運動許容条件を判断する
(1)職域
ものとする.
中等度リスクでは軽い作業は許容される.中等度の作
経過中心エコー法による冠動脈拡張がない場合には,
業については運動耐容能の 60 %未満で危険な不整脈が
観血的検査は行わず,急性期を過ぎれば,軽微なリスク
35
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
として運動制限の必要はない.急性期に認められた冠動
脈拡張が数か月以内に正常径に復帰したものでは,心エ
コー法にて冠状動脈変化がなくなれば,軽微なリスクと
する.
2
冠動脈疾患(職域,スポーツ)
①疾患の概要とリスク分類のための検査法(表 28)
小ないし中冠動脈瘤
(直径7 mm 以下)
が残存する例で,
成人における職域,スポーツの運動許容条件判断にお
10 歳未満では病初期の 6 ∼ 8 週を過ぎれば軽度のリスク
ける主要な疾患が冠動脈疾患である.術後例,直達治療
とする.10 歳代では 2 ∼ 5 年に 1 回の負荷(運動ないし
後の例を含め,病態はさまざまであり,冠動脈病変の程
薬物)心筋シンチグラフィを行い,有意な可逆性潅流異
度だけでなく,自覚症状や心機能,運動負荷時心筋虚血
常を認めない場合には軽度のリスクと判断し,競争的で
や心室性不整脈の有無,運動耐容能などの評価がリスク
持久性を要する運動を除く強い運動を許容する.狭窄が
分類に必要である.
疑われた場合には,冠動脈造影検査を行いその結果によ
労働における就業条件としての冠動脈疾患患者の明確
り,運動許容条件を決める.
なリスク分類の報告は,示されていない.これは,労働
狭窄のない 1 個または複数個の巨大冠動脈瘤(直径
が単に身体的作業強度にとどまらず,多くの要素が含ま
8mm 以上),あるいは多数の小,中冠動脈瘤の残存する
れ,身体的・精神的負荷となることから,画一的なリス
例では,10 歳未満で初期の 6 ∼ 8 週を過ぎれば軽度のリ
ク層別化が行いにくいことが考えられる.
スクとする.10 歳代では 1 年に 1 回の負荷心筋シンチグ
運動におけるリスク分類には,AHA のガイドライン
ラフィを行い,有意の可逆性潅流異常を認めない場合に
242)
「運動負荷試験及び運動トレーニング基準」
,米国心
は中等度のリスクとする.狭窄が疑われた場合には,冠
肺リハビリテーション協会(AACVPR)の心疾患患者
動脈造影検査を行いその結果で,運動許容条件を決める.
に対するリスクの層別化基準 243)があり,スポーツにお
冠動脈造影で確認された冠動脈狭窄ないし閉塞例は中
けるリスク分類には ACSM のリスク層別化 244),及び我
等度以上のリスクとし,負荷心筋シンチグラフィの結果
が国におけるベセスダ会議をもとに日本循環器学会「運
が陰性の場合には中等度のリスクとする.負荷心筋シン
245)
動療法に関する診療基準委員会」
の資料に修正を加え
チグラフィの結果で中程度以上の可逆性潅流欠損が明確
た日本臨床スポーツ医学会の勧告であるスポーツ参加基
に認められるか,あるいは負荷心電図で強陽性(ST 下
準 246)などが示されている.これらのガイドラインをふ
降 0.2mV 以上)の場合には,高度リスクとする.運動
まえ,労働・運動を前提とした冠動脈疾患におけるリス
負荷心電図が陰性であっても,小児では心筋虚血の検出
ク分類を表 28 に示した.
感度が低いため,負荷心筋シンチグラフィで確認する必
この分類における軽度リスクは,冠動脈疾患を有する
要がある 236).
が,健常人と同様に運動が可能なレベルであり,無症候
であり,心機能が保たれ,運動耐容能も健常人と同等に
良好である者である.中等度リスクとは,軽度∼中等度
の心機能障害があり,5METs 以下の運動や日常生活で
は,症状や虚血性心電図変化,重篤な不整脈を認めない
表 28 冠動脈疾患患者におけるリスク分類
軽度リスク
症状が安定し,以下に示す臨
床所見をすべて満たすもの
1. NYHA 心機能分類Ⅰ度
2. 症候限界運動負荷試験に
お い て 狭 心 痛 を 認 め ず,
虚血性 ST 変化及び重篤な
不整脈を認めない
3. 運動耐容能が 10METs 以上
4. 左室駆出率が 60%以上
5. 心不全症状がない
36
中等度リスク
症状が安定し,以下に示す臨床所見のいずれ
かに該当する者
1. NYHA 心機能分類Ⅱ度
2. 症候限界運動負荷試験において 5METs 以
下で狭心痛や虚血性 ST 変化及び心室頻
拍などの重篤な不整脈を認めない
3. 運動耐容能が 5METs 以上,10METs 未満
4. 左室駆出率が 40%以上,60%未満
5. 日常生活での心不全症状はないが,胸部
X 線写真にて心胸郭比が 55%以上,また
は軽度の肺うっ血の所見を認める
6. 脳性利尿ペプチド(BNP)が基準範囲以
上,100ng/ml 未満
高度リスク
症状が不安定な者,及び以下に示す臨床所見
のいずれかに該当する者
1. NYHA 心機能分類Ⅲ∼Ⅳ度
2. 症候限界運動負荷試験において 5METs 以
下で,狭心痛や虚血性 ST 変化及び心室頻
拍などの重篤な不整脈を認める
3. 運動耐容能が 5METs 未満
4. 左室駆出率が 40%未満
5. 日常生活で心不全症状を有する
6. 脳 性 利 尿 ペ プ チ ド(BNP) が 100ng/ml
以上
7. 左冠動脈主幹部に 50%以上及び他の主要
血管に 75%以上の有意病変を有する
8. 心停止の既往
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
ものである.合併する心不全は,軽労作では症状はない
中等度から強い運動は運動耐容能及び虚血徴候出現の
が,心機能低下を反映して胸部 X 線写真や検査値に軽度
60%強度までが許容範囲の条件付き許容に分類される.
の異常を認める範囲である.高度リスクは,日常生活に
高度リスクでは,軽い∼中等度強度においても専門医
おいて虚血または心不全の症状があり,運動負荷試験に
による管理下で許容された労働のみ可能である条件付き
おいて予後不良の徴候である低運動強度における虚血徴
許容であり,強い強度に関しては,原則的に禁忌である.
候,不整脈,心血行動態不良などが認められるもの及び
スポーツでは,軽い運動及び中等度の運動では,循環器
重症冠動脈病変を有するものである.
専門医の管理の下に運動療法において許容された運動の
み行うことが可能な条件付き許容とする.強い運動に関
②運動許容条件(表 29)
しては禁忌である.高度リスクでは,基本的に競技スポ
職域における冠動脈疾患運動許容条件の判断の中で重
ーツは認められない.
要なものは急性心筋梗塞後の職域復帰の判断である.こ
等尺性労働が加わる肉体労働に関しては,中等度以上
のような社会復帰の基準については,明確な規定はない
の等尺性労働が加わる者については,労働強度を一段階
ものの,概略が循環器疾患のリハビリテーションに関す
軽いものとするとした.AHA ガイドラインにおいても
るガイドライン 6)に示されている.一方,ACC/AHA の
酸素摂取量による評価では,荷重負荷,気温,環境的及
急性心筋梗塞の管理に関するガイドラインにおいては,
び心理的ストレスが適切に評価されないことから,労働
労働態様にかかわらず合併症のない,無症候性の患者で
許容に関しては,その点も考慮するように勧告してい
は,そのほとんどが 2 週間以内に以前の活動に戻っても
る 248).したがって,許容条件の判断には労務担当者や
安全であるとしているが,その根拠となるデータがない
産業医からの情報収集により,労務内容の正確な把握が
とコメントしている
247)
必要である.スポーツについても同様であり,静的負荷
.
心筋梗塞後を含め,冠動脈疾患の運動許容条件につい
が加わる種目においては,静的負荷強度により,運動強
て前述のリスク分類のガイドラインを参考に表 29 に示
度がより軽いクラスを許容するものとする.
した.軽度リスクの者では,軽い強度及び中等度強度の
公的機関の運転手(パイロット,電車,バス)につい
労働は,特別の制限を加えないすべて許容に分類され,
ては,冠動脈疾患の罹患及び疑いのある者の就業は,一
強い強度については運動負荷試験により到達した運動強
般的に禁忌である 249).パイロットに関しては,公式の
度以下の作業強度であれば従事可能の条件付き許容とし
航空身体検査基準 250)があり,冠動脈疾患に関しては,
た.スポーツに関しては,軽度リスクであれば,症候限
完全血行再建がなされた者も含め,徴候及び既往のある
界運動負荷試験で確認された範囲の運動であれば,競技
者の就業は禁止されている.電車に関しても,動力車操
スポーツを含めて許容され,軽い運動及び中等度運動で
縦者運転免許に関する省令において心疾患がないことと
は,すべて許容である.強い運動では,運動負荷試験で
以前は規定されており,現在も運転に支障がないとの条
到達した運動強度が許容上限となることから条件付き許
件を付け,法的に規制している.しかし,バスやタクシ
容に分類される.
ーなどの乗客を扱う運転に関して,英国では冠動脈疾患
中等度リスクでは,軽い強度のみすべて許容であり,
の病態により,発症及び治療により一定期間自動車の運
中等度∼強い強度については運動耐容能または虚血徴候
転を規制している 251)が,我が国では乗客を扱う自動車
出現の 60 %以下の強度の労働は可能とする条件付き許
第二種免許に関して免許取得時点での規制はない.
容とした.スポーツでは,軽い運動はすべて許容とし,
表 29 冠動脈疾患患者における労働・運動許容条件
強度(METs)
低リスク
中等度リスク
高リスク
軽い
(3METs 未満)
すべて許容
すべて許容
条件付き許容*3
中等度
(3.0 ∼ 6.0METs)
すべて許容
条件付き許容*2
条件付き許容*4
強い
(6.1METs 以上)
条件付き許容*1
条件付き許容*3
禁忌
注 1:等尺性労働強度が中等度以上である場合には労働強度を一段階軽いものとする.
注 2:等尺性運動強度が中等度以上である場合には運動強度を二段階軽いものとする.
*1 運動負荷試験で安全が確認された強度以下であればすべて許容
*2 運動耐容能の 60%以下で,かつ虚血徴候が出現しない強度であれば許容
*3 運動耐容能または虚血徴候出現の 60%以下の強度であれば競技を除き許容
*4 専門医の管理下において許可された労働のみ許容
37
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
る.
③経過観察
運動負荷試験は小児の運動特性に合った方法で行う必
冠動脈疾患は,病態が短期間で変化するのが特徴であ
要がある.小児の特徴は最大負荷またはそれに近い状態
り,運動許容条件の判定には経過観察が必要である.労
で運動することが多いことと,運動耐容能が大きいこと
働における経過観察の検査項目は,日本循環器学会「慢
である.マスター 2 階段法では負荷量が少ないので不適
性冠動脈疾患の診断と病体把握のための検査法の選択基
当であり,トレッドミルや自転車エルゴメータによる試
252)
準に関するガイドライン」 に準拠し,行うことが望ま
験が望ましい.自転車エルゴメータ試験では下肢の疲労
しい.運動が許容され,症状が安定している場合には,
から最大負荷をかけることができないこともあり,トレ
1 年に 1 回の定期的な運動負荷試験などの検査により,
ッドミル試験が汎用される傾向がある.
労働の継続の可否を判断する必要がある.軽度リスク及
ホルター心電図は不整脈の状況を知るのに有用であ
び中等度リスクであっても条件付き許容のものでは,半
る.特に日常生活や実際運動中における不整脈の出現状
年に 1 回の運動負荷検査,高度リスクの条件付き許容の
態やその変化は運動許容条件の判断に用いられる.心疾
ものに関しては,病態に応じて 3 か月以内に 1 回程度の
患や不整脈を有する小児の水中・水泳の管理指導は学校
冠危険因子を含めた総合的な評価が望ましく,スポーツ
保健上重要である.水泳許容条件の判断に水中心電図を
に関しても同様である.
行う場合がある.水泳時の顔面浸水で洞性徐脈になるが,
6
その他房室ブロック,心室期外収縮,上室期外収縮など
不整脈
の出現が観察される.水中心電図と顔面浸水試験とは類
似の反応を示すことから顔面浸水試験で代用可能であ
1
る 253).泳ぐという水泳運動で出現する不整脈は運動関
学校
連性であることからトレッドミル負荷試験で代用でき
①疾患の概要とリスク分類のための検査法
不整脈は学校検診後の運動許容条件の判断に関与する
る.
②疾患別運動許容条件(表 30)
ことが最も多い心疾患である.不整脈が指摘されたとき
器質的心疾患を持たない小児における不整脈例の管理
に,運動許容条件を判断するために行うべき検査は器質
基準については,2002 年に日本小児循環器学会で「基
的心疾患の有無を検討するための心エコー法,運動によ
礎心疾患を認めない不整脈の管理基準」が出されている
る不整脈の変化などを検討する運動負荷試験である.
254)
(表 30)
.日本小児循環器学会では器質的心疾患を伴
心エコー法によって,器質的心疾患の有無,特に先天
う症例の運動許容条件についてのガイドラインは作られ
性心疾患やその術後,心筋症などについては不整脈の出
ていない.器質的心疾患を持つ不整脈例の運動許容条件
現と関連のある異常について注意して検査する必要があ
については,各疾患の項を参照すること.
表 30 基礎疾患を認めない不整脈の運動許容条件 254)
この基準は一応のめやすであり,
個々の症例によって基準を変更できる.なお管理区分の( )内は選手を目指した運動部(クラブ)
活動の可・禁をいう.
洞性不整脈
接合部調律
接合部補充収縮
上室期外収
上室頻拍
38
条 件
縮心房性,結節性
多形性または二連発
①比較的短時間で消失
②自覚症状がないか,あるいは極めて軽い
③心不全がない
④運動負荷によって誘発されない
以上の条件を満たす
運動負荷により誘発される
ただし頻拍時に心拍数が少なく,短時間に消失する
心不全を認めるが,治療が奏効する
治療は奏効しないが,心不全や自覚症状がない
治療は奏効せず,心不全がある
管 理 区 分
管理不要
管理不要
観察期間
管理不要
E(可)
E(可)
6 か月∼ 1 年ごと
6 か月∼ 1 年ごと
D
E(禁)
D または E(禁)
D または E(禁)
A,B または C
1 ∼ 3 か月ごと
3 ∼ 6 か月ごと
必要に応じて
1 ∼ 6 か月ごと
必要に応じて
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
心房粗動・細動
運動負荷によっても心室拍数の増加が少ない
運動負荷により心室拍数が著しく増加する
心室期外収縮
連発がなく,単形性で,運動負荷により消失,減少
(運動負荷心電図を記録 または不変
し,必要に応じてホルタ 上記ではあるが,小学校低学年で 1 ∼ 3 分の安静時心電図に
ー心電図も記録する)
おいてその発生が少ない.
運動負荷により著しい増加,多形性または二連発が出現する
安静時心電図で多形性または二連発がある
ただし運動負荷により心室不整脈が消失する
心室副収縮
失神発作,心不全,自覚症状などがなく,運動負荷で消失
心室頻拍
(運動負荷心電図,ホルタ または減少し,非持続性である
ー心電図,心エコー図を ただし連発数が少なく,心室拍数が少なく,運動負荷により
記録し,慎重に決定する) 消失
失神発作,心不全の既往はあるが,治療が奏効し,運動によ
って誘発されない
失神発作,心不全の既往はないが,運動負荷によって誘発さ
れる,または減少しない
失神発作または心不全を伴い,治療が充分奏効しない
促進性固有心室調律
運動負荷のより正常洞調律となる
運動負荷により正常洞調律にならない
QT 延長
失神発作,家族歴等がなく,心電図所見のみのもの
運動中に失神発作の既往がある
ただし薬物でコントロールされている
失神発作の既往はあるが,運動とは無関係に出現する
WPW 症候群
上室頻拍の既往なし
上室頻拍の既往あり
完全右脚ブロック
他の合併所見がないもの
ただし左軸偏位や PR 時間延長合併しているもの
完全左脚ブロック
1 度房室ブロック
PR 時間 0.24 秒以下(小学生)または 0.28 秒以下(中学生・
高校生)
運動負荷により PR 時間が正常化する
運動負荷により PR 時間が正常化しない
運動負荷により 2 度以上の房室ブロックが出現する
運動負荷により Wenckebach 型が正常房室伝導になる
2 度房室ブロック
(運動負荷で正常房室伝導 運動負荷により 1 度房室ブロックになる
が見られない場合はホル 運動負荷でも 2 度房室ブロックのまま
ター心電図を記録する) 運動負荷により高度または完全房室ブロックになる
Mobitz Ⅱ型
高度および完全房室ブロック 運動負荷時に心室拍数が 2 倍以上で症状がない
(運動負荷心電図やホル 運動負荷時に心室拍数が 2 倍以上に増加しない
ター心電図を記録し,必 運動負荷時に心室期外収縮や心室頻拍が頻発する
要に応じて電気生理学的 Adams-Stokes 発作や心不全を伴う
検査を行う)
洞不全症候群
徐脈傾向が軽度で,運動負荷で心室拍数の増加が良好
(運動負荷心電図,ホル 運動負荷でも心室拍数の増加が悪い
ター心電図を記録し,必 Adams-Stokes 発作や心不全を伴う
要に応じて電気生理学的
検査を行う)
D または E(禁)
C または D
E(可)または長期観察
例は管理不要
E(可)
または管理不要
D または E(禁)
D または E(禁)
E(禁)または E(可)
心室期外収縮に準ずる
D または E(禁)
必要に応じて
必要に応じて
1 ∼ 3 年ごと
1 ∼ 3 年ごと
1 ∼ 6 か月ごと
必要に応じて
6 か月∼ 1 年ごと
1 ∼ 6 か月ごと
E(禁)または E(可)
6 か月∼ 1 年ごと
C,D または E(禁)
必要に応じて
B,C または D
必要に応じて
A または B
E(可)
心室頻拍に準ずる
E(可)
B または C
D
C,D または E(禁)
E(可)
上室頻拍に準ずる
管理不要
E(可)または管理不要
専門医の判断による
管理不要
必要に応じて
1 年ごと
1 年ごと
必要に応じて
必要に応じて
必要に応じて
1 ∼ 3 年ごと
1 ∼ 3 年ごと
必要に応じて
管理不要
E(可)
該当項目に準ずる
管理不要
E(可)
E(禁)または E(可)
高度房室ブロックに準ずる
高度房室ブロックに準ずる
D または E(禁)
C または D
C
A,B または C
3 ∼ 6 か月ごと
3 ∼ 6 か月ごと
必要に応じて
必要に応じて
D,E(禁)
C または D
A,B または C
3 ∼ 6 か月ごと
必要に応じて
必要に応じて
1 年ごと
1 ∼ 3 年ごと
6 か月∼ 1 年ごと
注 1) 運動負荷は十分の監視のもとに心拍数 150/ 分以上になることを目標とする.ただし高度または完全房室ブロック,洞不全症
候群ではこの心拍数を目標としない.
注 2) 運動部(クラブ)の管理に関しては,激しい練習や試合を伴うものについては上記のようであるが,運動量や参加の方法に
よっては可能なものもある.
注 3) 徐脈性不整脈には等尺運動や潜水運動に注意する.
注 4) 治療の必要な不整脈はまず治療が優先されるので心室頻拍,QT 延長症候群,高度房室ブロック,洞不全症候群などの不整脈
は専門医による管理が望ましい.
39
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
心疾患のない失神発作の原因がわからない症例にも考慮
職域,スポーツ
2
すべき検査である 260),261).
①疾患の概要
③疾患別運動許容条件
器質的心疾患を有する例における運動中の突然死の直
a)洞機能不全
接誘因は重篤な不整脈であるが,器質的心疾患が証明さ
3 秒未満の無症状な洞停止は病的な意義をもたない
れていない突然死例においても不整脈が原因と考えられ
が 262),3 秒以上の洞停止,洞房ブロックや洞不全症候群
る場合が多いとされている 255).器質的心疾患を有する
は異常と考えて運動負荷試験 263)やホルター心電図を行
ものは,不整脈の有無にかかわらず突然死のリスクが高
う.さらに眼前暗黒感,失神などの症状があり,洞機能
い患者であり,基礎疾患の種類によって不整脈のもつ意
不全との関連が明らかでなければ電気生理検査を行う必
義が異なることを考慮して運動許容条件を定める必要が
要がある 264),265).また,心エコー法にて器質的心疾患の
ある.器質的心疾患のない不整脈患者における運動許容
有無や心機能評価を行う必要がある.スポーツ選手では,
を判断する場合には,不必要に活動を制限しないことが
徐脈性不整脈が特徴的であり,マラソン選手などでは心
重要である.我が国における不整脈の運動許容条件につ
拍数 30 拍 / 分以下,あるいは 3 秒以上の洞停止もまれで
いては,日本臨床スポーツ医学会の「スポーツ参加・禁
はなく,病的な洞不全との鑑別は必ずしも容易ではな
4)
止の基準」 があるが,職域における許容条件に関する
い 259).
ガイドラインは作成されていない.このガイドラインで
検査の結果,器質的心疾患がなく,徐拍が運動により
は,この基準と小児不整脈の管理基準
254)
とベセスダ会
適度に増加する場合には軽度リスクである.失神あるい
議における勧告 ,AHA と北米ペーシング電気生理学
は失神前兆があるものは,原因が同定され,必要なら治
会(NASPE)及びその後身である Heart Rhythm Society
療されるまでの間,高度リスクとする.明らかに不整脈
3)
の不整脈例の公共運転に関する米国のガイドライン
256),
及び本邦における 3 学会合同委員会によるステートメ
は,治療が必要であり,治療開始後 3 ∼ 6 か月無症状の
ント 258)を参考にした.スポーツに関しても NASPE の報
場合には,中等度リスクとする.人工ペースメーカ植え
告
259)
があり,これに基づいた.なお,この基準は一応
込み患者では,ペースメーカシステムを障害する恐れの
の目安であり,個々の症例に応じて基準を変更して使用
ある作業や運動は許容できない.
すべきである.不整脈の発症にはさまざまな要素が関与
b)心房細動,心房粗動
するため,特に心室頻拍,QT 延長症候群,Brugada 症
コホート研究によれば,心房細動の発症頻度は男女
候群,高度及び完全房室ブロック,洞不全症候群などの
5,209 例にて 22 年間追跡中 98 例(1.9 %)で,心房細動
不整脈は専門医による管理が望ましい.
出現例の生命予後は不良であったと報告されている 266).
②リスク分類のための検査法
40
によると考えられる意識障害や疲労感の症状のあるもの
257)
また,航空機乗務新人男性社員 3,983 名を対象とし,44
年間追跡調査したところ,心房細動発症は 7.5%であり,
リスク分類には,運動負荷心電図,ホルター心電図,
心房細動の全死亡頻度は,非心房細動例に比べて 1.3 倍
心エコー法,電気生理検査などの検査が自覚症状の重症
であったと報告されている 267).長期間にわたる高強度
度に応じて選択される.
のスポーツ競技者における孤立性心房細動の発症率は,
自覚症状の中で,説明のつかない労作中の失神発作は
一般住民でみられる頻度よりも高いことが,近年報告さ
徹底的に原因を究明する必要性のある最も重要な症状で
れている 268).
ある.原因を明らかにするために,ホルター心電図が最
心房細動例には,スポーツ,作業と同等の運動強度の
初の検査として有用であるが,解決できない場合には,
運動中における心室応答を運動負荷心電図で評価する必
イベント心電計が使用される.また 2008 年度内に植込
要がある.軽労作においても心拍数が過剰に亢進する心
み型ループレコーダーの臨床使用が許可される予定で,
房細動例は,正常な心拍応答を示す症例よりも安静時及
これも必要に応じて適応を考慮する.Tilt 試験は神経調
び低強度運動強度における交感神経活性が賦活化されて
節性失神による患者を評価するのに使用される.運動負
いる状態を示す.このような例には,運動時の心室レー
荷試験は運動中の心電図を評価でき,電気生理検査は,
トを制御する治療が行われる.器質的心疾患を伴わない
器質的心疾患や異常心電図のある患者における失神との
例で,無治療あるいはジギタリス,β遮断薬,カルシウ
関連性のある不整脈を確立することができるが,器質的
ム拮抗薬などの治療により,運動時に適度な洞性頻脈と
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
同等の心室レートを保てるものは軽度リスクとする.し
に,無治療,安静時の状態で,副伝導路伝導による最大
かし,スポーツ選手の場合には心室レートをコントロー
心室レートが 240 拍 / 分以下であり,失神や失神前兆の
ルすることは困難であり,β遮断薬はドーピング検査に
発作がないものは,突然死のリスクは低いと考えられ,
おける禁止物質である.このように心房細動により運動
軽度リスクである 272).失神や失神前兆の症状があるも
耐容能が低下しており(有症候性),かつ薬剤を使用し
のや,副伝導路を伝導する最大心室レートが無治療,安
にくい条件下では,肺静脈電気的隔離術を含めた根治的
静時に 240 拍 / 分を超える場合には,高度リスクである.
カテーテルアブレーションを適応してもよい
265)
.心房
副伝導路のカテーテルあるいは外科的アブレーションが
粗動では,運動時に心室に 1:1 伝導し,心室レートが
成功した後は中等度リスクであり,アブレーション後無
非常に速くなる危険性がないかどうかを検査する必要が
症状で,正常房室伝導をもち,経過観察の電気生理検査
ある.器質的心疾患を伴わない心房粗動のあるもので,
で頻拍が誘発されないか,アブレーション後 3 ∼ 6 か月
ジギタリス,β遮断薬,カルシウム拮抗薬などの治療に
間頻拍の自然再発がない場合にはすべての強度の作業,
より,運動時適度な洞性頻脈と同等の心室レートを保て
運動が条件付き許容される.
るものは中等度リスクである.この場合でも 1:1 房室
なお,パイロットや公共交通機関に従事する運転手な
伝導が起こりうることを注意しておく必要がある.
ど,特に安全性を要求される職業人は,無症状であって
心房細動,心房粗動で抗凝固療法を必要とするものは,
もその治療方針決定のために電気生理学的検査の適応が
衝突の危険性のある作業,運動は許容されない.
あると考えられている 261).また,発作により多くの人
c)上室頻拍,WPW 症候群
命に関わる可能性があるためカテーテルアブレーション
運動時の動悸や失神の原因として上室頻拍があり,症
によりリスクを最小限にすることが望ましい 265),204).事
状から上室頻拍が疑われ,診断が確立されていなければ,
実,電気生理学的検査により頻拍が誘発される無症候例
電気生理検査の適応も考える必要がある 269).持続の短
で,アブレーションによりその後の頻拍の発生を抑制し
い(5 ∼ 10 秒)上室頻拍で,運動で持続時間が増加しな
えたとの報告がある 273).
い無症状のものは軽度リスクである.失神,失神前兆,
d)上室期外収縮,心室期外収縮
著明な動悸があるものは,高度リスクとする.カテーテ
上室期外収縮では問診や各種検査から器質的心疾患の
ルアブレーションなどの治療が成功した後は中等度リス
証拠が否定できれば軽度リスクであり,強い運動も許容
クとし,治療後少なくとも 6 か月再発がない状態であれ
される.
ば中等度から強い運動を条件付許容とする.しかし,再
心室期外収縮では,運動時に増加したり,複雑な心室
発の予知については限界があり,失神が起これば危険性
性不整脈が出現したりした場合には,器質的心疾患の有
が増加するスポーツについては,その後の検査も必要で
無を明らかにする検査が必要である.918 例を対象とし
ある.
た運動負荷試験による不整脈の検討では,心室期外収縮
まれではあるが WPW 症候群をもつ運動選手の突然死
は非心疾患に比べ虚血性心疾患群に多く出現し,多源性
が認められているが,一般的に頻拍発作未経験例におけ
心室期外収縮と二段脈は後者に多いが,運動による消失
る自然歴の予後は良好である.しかし,40 歳以下の無
は虚血性心疾患の存在を否定するものでないと指摘され
症候性例の中で,その後 30 %は将来的に症状を発現す
ている 274).無症候性中年男性を対象として平均 23 年間
るので注意が必要である 270).頻拍発作を有する症例で
追跡による前向き対照比較試験の結果によれば,心臓死
は,カテーテルアブレーションは有効であり,第一に考
は運動中の心室期外収縮数非増加群に比べて増加群で有
慮すべき治療法であるが,無症候性例には薬剤を使用せ
意に多かったと報告されている 275).
ずに観察することが可能である 271).
慢性安定狭心症を対象に,1 年間の運動トレーニング
器質的心疾患がなく,動悸や頻拍の既往がない場合は
によってホルター心電図による心筋虚血発作回数は有意
軽度リスクである.房室回帰性頻拍発作のある症例は上
に減少したが,心室期外収縮については減少,不変,悪
室頻拍と同様の運動許容条件である.しかし,速い心室
化とさまざまであり,運動トレーニング効果を心室期外
レートを伴う心房細動を起こしうるかどうか評価する必
収縮によって評価するのは困難である 276).
要がある.副伝導路を伝導する最短の QRS 間隔を決定
運動中,あるいは運動負荷試験中に心室期外収縮が増
するために,電気生理検査による心房細動誘発試験が勧
加し,著明な疲労感,息切れなどが生じる場合には,中
められる.
等度リスクである.それ以外は軽度リスクとする.器質
WPW 症候群で心房粗動・心房細動の発作がある場合
的心疾患を有するものは,それぞれの心疾患の運動許容
41
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
条件に従う.
には消失する,器質的心疾患のない例は,予後は良好で
e)心室頻拍,心室粗動・心室細動
あり 280),軽度リスクである.
非持続性あるいは持続性心室頻拍例については,運動
第 2 度房室ブロック(Wenckebach 型)が運動中ある
負荷試験,運動中のホルター心電図,心エコー法による
いは運動後に始めて現れたり,悪化したりする場合には,
非侵襲的検査や心臓カテーテル法,電気生理検査によっ
中等度リスクである.まれではあるがヒス束内あるいは
て心臓の構造異常,心室頻拍の機序や部位を確立する必
ヒス束下ブロックでも Wenckebach 型を呈することがあ
要がある.
り,電気生理学的検査及び人工ペースメーカ治療を要す
無症状で,短い連発数の(たいてい 8 ∼ 10 連発未満)
る可能性もある.
非持続性単形性心室頻拍で,レートが 150 拍 / 分未満で,
第 2 度房室ブロック(Mobitz Ⅱ型)ではペースメーカ
器質的心疾患がない例では,突然死のリスクは高くなく,
治療の必要性があり 272),完全房室ブロックと同じ運動
軽度リスクである
277),278)
.器質的心疾患を認めないもの
完全房室ブロックはホルター心電図,運動負荷心電図,
ある.一般的に予後は良好であるが,有症候性で薬物が
電気生理学的検査の結果を考慮して専門医による管理が
無効であれば,積極的にアブレーションが適応とされて
必要である 272).アダムス・ストークス発作や心不全を
おり,その有効性も高い 273).また,心拍数が 200 拍 / 分
伴う場合は高度リスクである.安静時心拍数が 40 拍 / 分
前後の強い運動後に非持続性の心室頻拍が出現すること
以上であり,運動負荷時心室拍数が 1.5 ∼ 2 倍以上に増
も報告されている 279).運動や精神的興奮で多形性心室
加して,心室性不整脈や症状がない場合には,軽度リス
頻拍が誘発されるカテコラミン感受性(誘発)多形性心
クであるが,強い運動は許容できない.運動負荷時心室
室 頻 拍(Catecholamine-induced polymorphic ventricular
拍数が 1.5 ∼ 2 倍以上に増加しない場合には,中等度リ
tachycardia)は若年者にみられることがあるが,運動中
スクである.
に突然死する可能性のある疾患
42
許容条件である.
は特発性心室頻拍と診断され,運動に誘発されることが
21)−23)
であり,運動制限
人工ペースメーカ植え込みの患者は,外傷がペースメ
とβ - 遮断薬や ICD の植込みが必要である.
ーカを損傷するような衝突の危険性のある運動や作業は
持続性心室頻拍(30 秒以上)の例では,最後の発作
許容されない.また,運動,作業を許容する前に,運動
から少なくとも 6 か月間は高度リスクとする.
の需要に見合う活動レベルの運動負荷試験を行う必要が
除細動器や抗頻拍機器を植え込んだものは,除細動器
ある 272).
に対する有意な損傷の危険が少ない低強度の作業であっ
g)脚ブロック
ても治療(電気的除細動,ペーシング)を要した最後の
完全右脚ブロックでは,運動で房室ブロックが出現せ
心室性不整脈の発現から 6 か月間は禁忌である.それ以
ず,症状もない場合は軽度リスクであり,強い運動も許
後は,低強度の作業だけは条件付許容される高度リスク
容される.左軸偏位,PR 時間延長を伴う場合には,経
である.なお,車の運転については米国,本邦のガイド
過観察による管理のもとに判断する必要がある 272).
ラインに沿って容認あるいは禁止するが,二次予防か一
完全左脚ブロックでは,器質的心疾患がない例や,正
次予防目的で除細動を適応されたかで内容が異なるので
常 HV 間隔でペーシングに対して正常房室反応を示す場
注意を要する 257),258).
合には軽度リスクである.一方 His-Purkinje ブロックを
心室粗動と心室細動は心停止を生じるものであり,器
特徴とする房室伝導異常がある場合には人工ペースメー
質的心疾患の有無にかかわらず高度リスクである.しか
カを植え込む必要がある.その場合には,完全房室ブロ
し,治療により 6 か月間発作がないものは低強度の作業,
ックの運動許容条件に従う.
運動が条件付許容される.
h)QT 延長症候群
f)房室ブロック
先天性 QT 延長症候群は遺伝的に発症し,心電図上で
第 1 度房室ブロックで QRS 波形が異常であるか,PR
著しい QT 時間の延長と多形性心室頻拍(Torsades de
間隔が 0.3 秒以上の場合に,精密検査が必要である.無
points)を特徴とする症候群であり,失神をきたし,心
症状で器質的心疾患がないもので,第 1 度房室ブロック
室細動へ移行し突然死をきたすことがある.失神を主訴
が運動で増悪しない場合は軽度リスクであり,強い運動
とする若年の患者で,特にその症状が運動時やその直後,
も許容される.
感情的な興奮あるいは聴覚刺激などに伴って起きるよう
第 2 度房室ブロック(Wenckebach 型)はよく訓練さ
であれば,QT 延長症候群を疑う必要がある 280).失神発
れた運動選手に多い 262).安静時にのみ出現し,運動時
作を予防することが最も重要であり,強い強度の運動の
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
みならず通常の作業,運動においても感情的な興奮が不
女性 3.5%と報告されている 294).最も多いのは基礎疾患
整脈の誘引となることがあり,また,水泳中の突然死も
のない失神であり,この中で神経調節性失神の頻度が最
報告されているので
281)
,高度リスクである.なお,成
も多く失神全体の 25%を占めると考えられる 295).一般
人で認めることの多い病態として,薬剤,徐脈,電解質
的に予後は良好であるが,失神の再発を 30%に認め 294),
異常などに伴う二次性 QT 延長症候群がある.多くは普
長時間の心停止をきたす悪性血管迷走神経失神もみられ
段は QT 延長の程度が軽く,QT を延長させる誘因によ
る 296).治療法としてβ遮断薬やジソピラミドなどの薬
り診断される.また本病態が表現型の弱い遺伝子変異が
物治療,水分負荷,やティルト訓練法が有効とされてい
存在することも知られており
282)
,QT 延長症候群の潜在
る.また薬剤を静注することによってティルト試験にて
型と考えられている.基本的に,問題となる誘因の非存
誘発されなかった例の治療効果は良好であるのに対し,
在下では,軽度リスクであり,就労,運動を制限する必
抑制されなかった例の再発率は高いとされている 297).
要はない.
運転中にもこのような失神が生じる可能性があり,失神
i)Brugada 症候群
の再発率の高い3∼6か月間は特に注意が必要であ
右側胸部誘導の ST 上昇と右脚ブロックパターンを呈
し,心室細動発作を有する症候群である
283)
.失神や心
る 298),299).本邦でも 2001 年の道路交通法改正により,
失神が認められれば,運転免許証取得あるいは更新の際
室細動を伴う有症候群と,心電図異常を有するが症状の
には医師の診断書が必要となった 258).
ない無症候群があり,前者ではその発症率,機序,臨床
失神あるいは失神前兆があるものは,治療されるまで
病態,予後,さらに一部の症例では遺伝的背景が明らか
は高度リスクである.治療開始後 3 ∼ 6 か月無症状の場
にされ,治療法も確立されつつある.しかし後者では未
合には,医師の再評価後に作業,運動が許容される .
解決の点が多いが,近年の経過観察試験により突然死,
k)ペースメーカ
失神などの家族歴がなければ,その予後が良好であるこ
ペースメーカ装着患者のスポーツ参加については,軽
とが明らかとなった
284)−286),288)−290)
.これまでの調査か
度リスクに該当すると考えられるが,ペースメーカの
ら Brugada 症候群は男性に多発し,その有病率は全人口
mode を考慮した上で原疾患の運動制限に従う.今日ペ
の 0.07 % ∼ 0.16 % と 考 え ら れ て い る 287)−289). ま た,
ーメーカ機器の発達は目をみはるものがあり,ICD はも
Brugada 症候群の発症率は年間 0.014 %と報告されてい
とより,心臓再同期療法(CRT: cardiac resynchronization
る 290).現時点では Brugada 型心電図所見を有する心停
therapy)の両心室ペーシングや CRT に ICD 機能を取り
止蘇生例,心室細動や多形性心室頻拍が確認されている
入れた CRT-D も本邦に導入されている.しかしながら,
場合,原因不明の失神を有し,電気生理学的検査で心室
ペースメーカ装着患者のリハビリテーションやスポーツ
細動・多形性心室頻拍が誘発される例が植込み型除細動
参加に関しての基準が本邦ではまだ確立していないのが
器(ICD)の適応と考えられている
273)
.Brugada 症候群
現状である.
では,致死的不整脈は安静時に発生することが知られて
ペースメーカ装着患者に心臓リハビリテーションを実
いるが,一方では運動中に心室性不整脈が発生する症例
施することは,運動耐容能の向上はもちろんであるが,
291)
,また高いレベルのスポーツ選手は,安静
日常身体活動とペースメーカプログラムとの適合状態の
時の副交感神経の活動度が高く,さらに運動に伴う高体
評価や患者の心理的不安の軽減や患者教育の点からも意
も存在し
温が不整脈の発生に繋がる可能性が指摘されている
292)
.
義があり,欧米では積極的に適用されている 300)−302).
したがって,有症候性 Brugada 症候群は中等度リスクと
ペースメーカ装着患者の心臓リハビリテーション導入
考える.無症候性 Brugada 症候群の予後は良好であるこ
時の評価にあたっては,不整脈の種類と程度とそれによ
とから,軽度リスクと判断され,激しい競技を除くすべ
る循環動態の変化並びに不整脈の誘因(運動や虚血等)
ての運動が許容される
293)
.ICD が植え込まれた場合,
を明らかにしておく必要がある.ペースメーカのプログ
デバイスを障害する恐れのある作業や,運動は許容でき
ラムや ICD の作動レートやアルゴリズムを理解してお
ない.
く.ペースメーカ装着患者にとって,運動負荷試験はペ
j)神経調節性失神
ースメーカのプログラム設定や評価に有用である 303),
神経調節性失神には,心抑制型,血管抑制型,両者の
304)
混合型の 3 つに分けられる.一般人における失神の頻度
心拍応答機能の内蔵されたペースメーカを装着した患
は,フラミンガム調査によると,5,209 人の 26 年間の経
者の運動時の生理学的反応は正常者とほとんど変わらな
過中に少なくとも 1 回の失神を有した頻度は,男性 3.0%,
くなっている.この機能は身体活動時の生体の代謝需要
.
43
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
に応じて心拍数を増やすことが目的である.心拍応答セ
ポーツも好ましくない.さらにペースメーカは電磁波に
ンサーとしては,①体動感知センサー(加速度センサー
より誤作動を起こすことが知られているために,運動療
と振動センサー),②分時換気量センサー,③ QT セン
法やスポーツ現場に強い電磁波を発生する可能性のある
サー,④重力加速度センサー,⑤ dp/dt センサーなどの
機器類を近づけることは避ける.
種々のセンサーが開発され,それぞれのメリットとデメ
リットを補うように,これらのセンサーを組み合わせた
デュアルセンサーが主流となってきている
高血圧
1
疾患の概要
.
ICD を植え込んだ患者に対しては,ICD が作動する心
拍数を熟知しておく必要がある.第 4 世代 ICD はシング
ルチャンバー ICD であり,心室からの情報のみで頻脈
高血圧は,日常的によくみられる心血管疾患であり,
性不整脈を感知するために,頻脈の起源が上室性または
総死亡率,心血管疾患死亡率,脳卒中,冠動脈疾患,心
心室性にかかわらず通電が起こってしまう.第 5 世代
不全,末梢動脈疾患,腎不全を増加させる 308).長期に
ICD は心房と心室からの情報の組み合わせで鑑別できる
わたる運動の継続は心血管疾患発症のリスクを低下させ
デュアルチャンバー ICD となっている.運動処方心拍
るが,その一方で,激しい運動に伴う心筋梗塞や心停止
数は ICD 通電をきたす心拍数の少なくとも 10 から 15 拍
などの心血管事故の発生が報告されている 309).高血圧
低めに設定すべきである 301).ICD 植込み患者は心臓リ
の罹患率は加齢とともに上昇する 310)ことから,高血圧
306)
,心電図モニタ
患者では他の冠危険因子の合併率が高くなり,運動の実
ーでの監視下で実施することにより,グループサポート
施に伴うリスクも上昇する.したがって,運動実施前に
が受けられ,心理的にも好影響をきたし,社会的にも復
は,入念な医学的検査によるリスクの層別化と,高リス
職が可能となるなどの効果が認められている 307).
ク例に対する適切な運動許容条件の設定が必須となる.
CRT 挿入患者は基礎疾患として心不全があるため,
高血圧患者における運動中の心血管系障害は,以下のよ
運動療法やスポーツ参加に関しては,心不全の状態が安
うな機序で発生すると考えられている.
定し CRT のプログラミングが良好であることが条件で
運動により惹起された心筋酸素消費量の増加,拡張期
ハビリテーションのよい適応であり
ある.運動療法により運動耐容能や QOL の向上が期待
及び冠循環時間の短縮が,一過性の心内膜下の酸素欠乏
されるが,今日まで CRT 挿入患者を対象にした運動療
を引き起こし,冠循環障害の存在下で,不整脈が誘発さ
法の無作為比較対照試験は報告されていない.
れやすい状態となる 311).また,特に運動不足の潜在性
ペースメーカ装着患者については,運動強度として心
あるいは顕性心疾患保有者において,激しい身体活動に
拍数を用いる以外に,RPE(自覚的運動強度またはボル
より急性心筋梗塞が誘発されることも確認されてい
グスケール)が有用となることが多い.特に,
chronotropic
る 312)−314).これは,心拍数と収縮期血圧の急激な増加
incompetence を有する患者で,心拍応答センサーが十分
により,冠動脈攣縮が冠動脈の病変部に誘発されること,
機能していない場合は,心拍数での強度設定は困難であ
あるいは冠動脈の捻れにより,不安定な動脈硬化性プラ
るため RPE を利用する.すべてのケースにいえること
ークの破裂や血栓による冠動脈の閉塞が起きたことが考
であるが,虚血を有する患者は虚血閾値以下の心拍数を
えられる 315),316).
設定すべきである.心拍応答センサーの中で体動感知セ
身体活動のリスクに影響する因子として,年齢,冠動
ンサーは,座位式の自転車エルゴメータによる運動時に
脈疾患の有無,血行動態と心筋酸素消費量に直接関連す
は心拍上昇反応が遅くなる.
る運動強度などがあげられる 243).
ペースメーカ装着患者のスポーツ参加については,基
礎疾患と不整脈のコントロール状態並びにペースメーカ
44
7
305)
2
リスクの層別化のための検査
のプログラム様式により判断する.特に ICD の場合は
リスクの層別化には,高血圧の重症度,標的臓器障害
mode と upper rate を十分に考慮し,運動強度が強く心拍
及び他の冠危険因子の有無の確認が必要である.以下に
上昇に伴い ICD 作動の危険性がある場合は強度を下げ
必要と思われる検査を示す.
る.コンタクトスポーツはペースメーカ本体に衝撃が加
糖尿病,脂質異常症,腎機能障害の検出には血液生化
わるため禁止とする.また球技に関しても本体に故障の
学検査,尿検査が必要である.身長と体重測定は Body
危険が伴う種目は好ましくない.リード断線や心筋電極
mass index を算出するために必要である.左室肥大,慢
がはずれる可能性から,極端に上肢や肩の運動を伴うス
性心不全の評価には,胸部 X 線写真,心電図,心エコー
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
法,心筋シンチグラムなどが必要になる.冠動脈疾患の
確認には,運動負荷試験,負荷心筋シンチグラム(運動
8
マルファン症候群
1
疾患の概要(表 31)
または薬物)を行う.
その他,眼底検査,頭部 CT スキャン,足関節上腕血
圧比(ABPI)測定,血管造影など必要に応じて実施する.
運動許容条件
3
マルファン症候群は,骨格系,眼及び心血管系に特徴
的な症候を有する常染色体優性遺伝を示す全身の結合組
運動許容条件については,第 36 回ベセスダ会議にお
織(細胞外マトリックス)異常に基づく先天性代謝異常
ける勧告 3),米国スポーツ医学会の運動と高血圧に関す
である.我が国での発生頻度は明らかではないが,欧米
,米国スポーツ医学会の運動処方の指針第 7
では少なくとも約 10,000 人に 1 人とされ 319),そのうち
る声明
版
317)
318)
を参考にした.
の約 15320)∼ 30 % 321)は遺伝関係が不明な突然変異によ
①血圧が 120 ∼ 139/80 ∼ 89mmHg では,生活習慣修正
る.小児期早期には特徴的症候はほとんどみられず,成
を行い,運動への参加は可とする.
長,年齢の経過とともに出現するため若年成人になって
②血圧の高値が続く場合には,心エコー検査で左室肥大
から診断されることが多く,大学生あるいは若年成人の
の有無を確認する.左室肥大が認められた場合には薬物
運動許容条件で問題となる疾患である.心血管系の合併
療法を開始し,血圧の正常化が確認されるまでは参加す
症が予後を左右し,主な死因は大動脈解離や大動脈瘤破
る運動を限定する.
裂である.本邦の大動脈解離の発症率調査は少なく,3
③血圧が 140 ∼ 159/90 ∼ 99mmHg で,臓器障害を伴わ
人前後 /10 万人 / 年と報告 322)されているが,マルファン
ない場合には,競技スポーツ参加の制限はしない.ただ
症候群による大動脈解離では 1.1 人 / 人口 100 万人(66
し,およそ 3 か月ごとに血圧を確認する.
人の大動脈解離中マルファン症候群が 2 人)との報告 323)
④血圧が 160/100mmHg 以上では,臓器障害を認めなく
がある.
ても,高度静的スポーツへの参加は,生活習慣修正及び
薬物療法により血圧がコントロールされるまで禁止す
2
リスク分類のための検査法
る.
マルファン症候群は特徴的な骨格系や眼症状,心血管
⑤他の心血管疾患を合併する場合には,疾患の種類と重
324)
系の異常を認めることで診断される(表 31)
.症候
症度により参加の可否を決定する.
を満たさないものは不全型と称し,確定診断が困難なこ
高血圧患者における運動(身体活動)のリスクに影響
ともある 325).生命予後は心血管系病変の進行度・重症
する因子の確認と,リスクの層別化が必要である.リス
度により左右されるため,心血管系合併症の定期的評価
クの層別化は,冠危険因子及び心血管疾患の有無,年齢,
が重要である.
性別を考慮して決定されるが,高血圧患者においては,
常染色体優性遺伝で 50 %の確率で遺伝するため家族
特に冠動脈疾患の有無の確認が最も重要である.
歴・遺伝歴の詳細な検索は診断上重要であるが,突然変
運動負荷試験はいずれのリスクにおいても可能な限り
異によることも考慮する.心血管系の合併症の診断は,
実施する.
胸部 X 線写真,心電図,心エコー検査,CT,MRI,心
また,特に配慮すべき事項としては以下のことがあげ
血管造影などによるが,心血管系の合併症が認められな
られる.
い場合でも,少なくとも年 2 回の胸部 X 線写真,心電図,
①β - 遮断薬や利尿薬は,高温・多湿環境下における体
心エコー検査などによる定期的な経過観察が必要であ
温調節機能を阻害する可能性があるので,熱中症予防対
策は重要である.
②α - 遮断薬やカルシウム拮抗薬,血管拡張薬は,運動
後低血圧を誘発することがあるので,クールダウンを必
ず行うよう指導する.
③冠動脈疾患の合併例のような高リスク患者では,虚血
性心電図変化や狭心発作を誘発する心拍数よりも 10bpm
以上低くなる運動強度にするような,特別な配慮が必要
となる.
表 31 マルファン症候群の特徴
骨格系 :長身,上節 / 下節比低下または指極 / 身長比≧
1.05,くも指,くも肢(長くて細い四肢),鳩胸,
漏斗胸,脊柱側彎,肘関節伸展制限(170 未満)
,
関節過動性
心血管系:上行大動脈拡張(バルサルバ洞を含む),上行大
動脈解離,僧帽弁逸脱,大動脈弁逆流
眼 :水晶体偏位(亜脱臼,脱臼,振盪),網膜剥離,
緑内障
その他 :自然気胸,線状皮膚萎縮症,反復性ヘルニアま
たは瘢痕性ヘルニア,腰仙部硬膜拡張像
45
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
る.小児期には僧帽弁逸脱が主体で,多くは無症候であ
る 325).上行大動脈根部拡張は乳幼児期より出現し,加
齢とともに増大するが
326)
2
大学スポーツ
,大動脈破裂は正常あるいは
我が国においては,学校保健法施行規則の一部改正に
ほぼ正常な大動脈径でも起こりうる.突然死をきたす進
伴い,平成 7 年度から少なくとも小・中学校,高等学校
行性の疾患であり,偽陰性診断には特に注意が必要であ
入学時全員に対し学校心臓検診として心電図検査が義務
る.偽陰性を避けるために遺伝学的検査を行うこともあ
化されている.しかしながら,大学における健康診断は
るが,必ずしも確定診断が可能になるわけではない.
学校保健法に則りながら,それぞれの大学の実情に合わ
3
運動許容条件
マルファン症候群と診断されても,上行大動脈根部が
せて実施されており,心電図検査は義務づけられていな
い.
昭和 63 年度,全国 576 の大学,短期大学を対象とし
4cm 以上(成人),中等度から高度僧帽弁逆流,マルフ
た循環器検診アンケート調査では,回答を寄せた 358 校
ァン症候群に関連する解離や突然死の家族歴がなけれ
の検診時心電図施行状況がある.それによると,特定学
ば,軽度・中等度静的 / 軽度動的な運動への参加は可能
年を指定して全員に心電図検査を実施する施設が 54 校
である 244).ただし,少なくとも 6 か月ごとに心エコー
(15 %),運動部員にのみ心電図検査を義務づけている
法による大動脈拡張の厳重な経過観察が必要であり,症
学校が 47 校(13%),要精検者にのみ心電図検査を施行
例によっては CT や MRI による精査や回数を増やすこと
する学校が 104 校(29%)で,残り 153 校(43%)は心
も必要である.明らかな上行大動脈根部拡張(成人で
電図検査未施行であった.大学生においても,少なくと
4cm 以上),大動脈再建術後,大動脈や他の動脈の慢性
も心電図検査は実施されるべきと考える.
解離,中等度から高度僧帽弁逆流,解離や突然死の家族
歴を有するマルファン症候群は,軽い運動を除いては禁
忌とする 327).嚢胞性中膜壊死などによる血管脆弱性の
ため,身体衝突の危険性のあるスポーツは禁忌である.
付録 1 各スポーツ領域でのメディ
カルチェックの現状
3
国体及び国際大会
(付録表2),
(付録表3)
①日本における現況(付録表1),
アジア大会やオリンピック大会に参加するためには,
競技成績が優秀であることは必須条件としてよく知られ
ているが,もう 1 つの重要な条件である健康状態の良好
なことは,意外と知られていないのが現状である.つま
心疾患の運動許容条件の判断が求められる,我が国の
り各国代表選手になるためには,自国において行われた
各種スポーツの現場において,メディカルチェックがど
メディカルチェックで健康状態であることが保証されな
のようになされているかを示した.
ければならない.参加選手は自国において当然メディカ
1
ルチェックを受けているはずだが,その内容はなかなか
学校
目にすることはできない.そこで日本オリンピック委員
毎年学校で行われる心臓検診が心疾患の第一次スクリ
会(JOC)で行われているオリンピック強化指定選手健
ーニングになっている.特に小学校 1 年生,中学校 1 年生,
康診断を,実例として呈示する.オリンピック強化指定
高校 1 年生の全児童生徒に心電図記録が義務付けられて
選手健康診断で実施されている項目を,付録表 1 に示し
おり,先天性心疾患,心筋症,不整脈の発見に極めて有
てある.主として既往歴や家族歴をチェックする病歴で
効である.一次検診で異常があったり,二次以降の検診
は,突然死と関連するものを有していないかを確認して
が必要と考えられたりする場合には専門医療機関への受
いる.生活内容に関する質問では,アレルギー体質有無
診が勧められている
328)
.
のチェック,運動量や食事摂取量のチェックを行ってい
専門医療機関では必要に応じて心エコー検査,運動負
る.薬剤使用歴は,アンチ・ドーピングの観点と,治療
荷試験,ホルター心電図検査などが行われている.小児
を必要としている疾患を現在有しているかどうかを知る
の運動負荷検査ではトレッドミル運動負荷試験,エルゴ
観点の両面から,チェックしている.自覚症状に関して
メータ運動負荷試験などがしばしば行われ,運動能の検
は,多方面に関して聴取し,スポーツ障害につながる問
査には利用されている.
題点の有無,治療の必要性の有無,コンディション状態
のチェックに役立てている.練習意欲,食欲,睡眠,精
神的ストレス,疲労感の有無などをチェックし,コンデ
46
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
付録 表 1 オリンピック強化指定選手に対する健康診断の項目
1. 病歴
既往歴,家族歴
2. 生活内容に関する質問
嗜好品のチェック
食事摂取状況
薬剤あるいは食物アレルギーの有無
練習量
3. 薬剤使用歴
処方薬,市販薬(サプリメントも含む)
4. 自覚症状
多数の症状のチェック
5. コンディションのチェック
練習意欲,疲労感,食欲,睡眠,便通,
精神的ストレス,減量の必要性
6. 内科的理学所見
血圧,脈拍数,胸部聴診,腹部触診,
7. 胸部 X 線写真
8. 安静時心電図
9. 尿検査
10. 血球数算定
11. 血液生化学検査
12. HBs-Ag,HBsAb
13. 女子選手に対しては月経に関する質問
付録 表 2 国体参加選手に対する基本健康診断の項目
Q1.これまでの主な病気・ケガについての質問
Q2.現在の病気やケガについての質問
Q3.自覚症状についての質問
Q4.現在のコンディションについての質問
Q5.家族の病気に関する質問
Q6.減量(体重)についての質問
Q7.女性の選手におたずねします(月経に関する質問)
〈現症〉
身長,体重
体温
脈拍数,血圧
理学所見
〈臨床検査所見〉
安静時心電図検査
尿検査
血球数算定
血液生化学検査
AST(GOT)
,ALT(GPT)
,CK,血清鉄,総タンパク,
総コレステロール,HDL- コレステロール
付録 表 3 国体参加選手に対する追加健康診断の項目
Q1.運動歴についての質問
Q2.ベストの成績・記録についての質問
Q3.過去 1 年の主な大会での成績についての質問
Q4.生活についての質問
トレーニング,食事,嗜好品に関する質問
〈女性に対するメディカルチェック〉
1. 初潮未発来の場合
女性検査:性染色質あるいは染色体検査
ホルモン測定:卵胞刺激ホルモン,黄体化ホルモン,
プロラクチン,エストラジオール
2. 月経周期異常のある場合
不規則:基礎体温測定
続発性無月経:基礎体温,体脂肪率,骨塩量の測定
LH-RH 負荷試験
プロラクチン,エストラジオール,
テストステロン
〈追加検査項目〉
1. 形態測定
指極間距離 / 身長比,手長 / 身長比,
下半身 / 上半身比,中手骨指数,
Thumb Sign,体脂肪率
2. 眼科所見
視力測定,水晶体所見
3. ホルモン測定
成長ホルモン,ソマトメジン
4. 運動負荷心電図検査
5. その他の検査
心エコー検査,ホルター心電図検査,潜水反射試験,
水中心電図検査,頭部 CT スキャン検査,脳波検査
班 329)が呈示している,国体参加選手に対する健康診断
の項目を,基本健診付録表 2,追加健診は付録表 3 に分
けて示してある.これらは,国際大会にも準用できるも
のと思われる.この基本健診項目に則して行われた平成
7 年度の総合判定結果をまとめ,報告している 330).この
報告によると,大会参加前に再検査や治療を指示された
選手は 1.4%(3,458 名中)であり,その内科的疾患ある
いは異常としては貧血や心電図異常が多かった.
②海外におけるスポーツ選手に対する
メディカルチェック(付録表 4)
ィション状態を把握する.理学的所見は,血圧測定,脈
Maron ら 331)は,大学生スポーツ選手 90 名のメディカ
拍数測定,胸部聴診,腹部触診などを行っているが,特
ルチェックを委託され,その結果を付録表 4 のように報
に胸部聴診は重要である.胸部X線写真は特に心陰影拡
告している.診察所見として心雑音が 21 名に認められ
大の有無をチェックしている.安静時心電図では,不整
たことは,注目すべき点である.既往歴(個人歴)とし
脈と心肥大所見の有無をチェックしている.スポーツ選
て胸痛を経験したことがある選手が 8 名いたことも,注
手に貧血が多いことはよく知られており,血球数算定は
目すべき点である.心電図変化としては左側高電位差が
主に貧血の有無をチェックしている.尿検査,血液生化
多く,他のこれまでの報告と余り相違は認められない.
学検査などは,潜在的な疾患の有無をチェックすると同
LaCorte ら 332)は,競技スポーツを行っている 13 歳∼
時に,選手の栄養状態のチェックにも利用される.国際
18 歳までの生徒 1,424 名全員に対して安静時心電図検査
的大会に出場するようなスポーツ選手は,以上のような
を実施し,その結果よりさらに精査を加えるスクリーニ
健康診断を定期的に行っていくことが必要である.
ング検査プログラムを構築し,行われた結果を報告して
国体選手に対する医・科学サポートに関する研究
いる.心電図検査所見異常は伝導障害 / 不整脈と肥大所
47
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
付録 表 4 循環器系検査に委託されたスポーツ選手 90 名の家族歴,個人歴の陽性所見と心電図変化
陽性診察所見(24 名)
収縮期雑音
19 名
収縮期クリック
2名
不整脈
3名
陽性家族歴(7 名)
マルファン症候群
1名
若年死あるいは心筋梗塞
6名
*
陽性個人歴(13 名)
胸痛
8名
意識消失前状態
1名
意識消失
1名
心雑音
2名
運動時呼吸困難
3名
不整脈
3名
2名
高血圧§
*
心電図変化(65 名)
#
左側高電位差
42 名
対称性陰性 T 波
1名
他の STT 変化
18 名
Rsr' V1/V2
16 名
左房拡大
6名
Q波
6名
左軸偏位
5名
右脚ブロック
2名
心室期外収縮
1名
*:何名かの選手は 1 個以上の異常所見を持っていた . 最初の検査では心電図所見のあった 4 名の選手はその後の非侵襲的循環器系
検査を受けなかったのでその分析からは除外されている .
#:判定基準は RV5 あるいは RV6 ≧ 3.0mV または SV1 あるいは SV2 ≧ 3.0mV
§:このうち 1 名はその後の検査で高血圧は確認されなかった .
見の 2 つに大きく分類され,伝導障害 / 不整脈は 75 名の
で,スポーツ許可が与えられた選手にスポーツ実施中に
生徒に,肥大所見は 12 名の生徒に認められた.伝導障
突然死を起こしたものは 1 名も認められなかった.この
害 / 不整脈の内訳の中では,異所性移動性心房ペースメ
ようなスクリーニング検査はスポーツ選手の突然死を予
ーカ 17 名,右室伝導遅延 16 名,左軸偏位 10 名,右軸偏
防する上で非常に有益であると,結論付けている.
位 8 名,早期興奮症候群 6 名,心室期外収縮 6 名などが
多く認められた.肥大所見は,右室肥大 7 名,左室肥大
5 名であった.これら異常所見を有していた生徒に運動
負荷試験,心エコー検査,ホルター心電図検査等を実施
前述した報告及び他のこれまでの報告 73),334)−338)を総
したが,すべての生徒で異常は否定され,競技参加が許
合的に判断するならば,以下のようなスクリーニング検
可された.このようなプログラムは効率的でないが,学
査プログラム(付録図 1)が,実施可能な,実際的なも
校側への教育的効果を与えるし,生徒の家族を安心させ
のと考えられる.ウイルス感染症や意識消失の既往歴,
ることにつながり,有用であると結論付けている.
若年突然死の家族歴,胸部症状を主とした自覚症状及び
Fuller ら
333)
は,North Nevada 内にあるハイスクールの
最近のコンディションに関して,十分に問診にて確認す
生徒で 13 ∼ 19 歳の競技スポーツ選手 5,615 名を最初に
る.胸部聴診,血圧測定,脈拍数測定などの診察を適格
スクリーニング検査し,3 年間にわたって経過観察した
に行う.安静時心電図検査,血球数算定を行い,胸部X
報告を行っている.スクリーニング検査としては,問診・
線写真,血液生化学検査などの検査を適宜加える.これ
循環器系検査(聴診及び視診)・血圧測定・安静時心電
らの検査にて異常を認めた場合には心エコー図検査を実
図検査が全員に実施された.スクリーニング検査で正常
施し,その結果を考慮してさらに運動負荷試験やホルタ
と判定された選手が 90%(5,033 名)を占め,異常と判
ー心電図検査を実施する.
定された選手は 10%(582 名)であった.正常と判定さ
れた選手は,そのままスポーツ許可と判定された.何ら
かのスクリーニング検査で異常と判定された選手には,
さらに心エコー検査が実施された.心エコー検査で高度
48
③国際大会参加前メディカルチェックに
必要と思われるスクリーニング検査(付録図 1)
4
プロスポーツ選手
①相撲
異常が指摘され以前にすでに診断されていた 1 名,心エ
日本相撲協会には相撲診療所があり,検診は全て相撲
コー検査で正常と判断されたが重症高血圧 5 名,アブレ
診療所で,年 2 回実施されている.項目は診察,血液検査,
ーション治療を受けていた上室頻拍 1 名(その後運動許
胸部 X 線写真(年 1 回)が主である.心臓検診は平成 2
可)及びさらに精査を有すると判定された不整脈 / 伝導
年より開始され,特別な体制をとっている.3 年に 1 回
異常 15 名の合わせて 22 名(0.4%)の選手にはスポーツ
の心電図及び心エコー法を必須項目とし,その所見によ
許可は与えられなかった.残りの 560 名は,この時点で
り運動負荷試験(マスター,トレッドミル),ホルター
スポーツ許可と判定された.つまりスクリーニング検査
心電図も適宜,精密検査として追加している.心臓検診
及び精査にて,合わせて 5,593 名(99.6 %)の選手にス
については循環器専門医が内科医務委員として診断,判
ポーツ許可が与えられた.その後 3 年間の経過観察の中
定,その後のフォローを担当している.新弟子(入門時)
心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン
付録図 1 国際大会参加前メディカルチェックのためのスクリーニング検査プログラム(案)
問診・理学所見・安静時心電図・血算
異常なし
貧血以外の
異常あり
貧血あり
スポーツ
参加許可
心エコー法
スポーツ参加
の可否判定
異常なし
異常あり
スポーツ
参加許可
スポーツ
参加禁止
その他の
精密検査
ホルター
心電図
運動負荷
心電図
スポーツ参加の可否判定
の検診は体格検査,血液検査,心電図,心エコー法を実
行っている.公傷もしくは大会の欠場については医師の
施している.
診断書で判断され,診察医の資格についても規定はない.
②ボクシング
プロ登録時の検診は協会指定医もしくは個人の選択し
た医師が行うが,日本ボクシングコミッションライセン
協会として組織的には検診に全く関与していないのが現
状である.
⑤自転車(競輪)
ス交付ドクターの資格が必要である.心電図,心エコー
プロ登録時は日本自転車競技連盟指定医が診察を行
法,運動負荷試験はいずれも協会の指定項目にはなって
い,循環器系では心電図が指定項目であるが,心エコー
いない.検診結果から競技参加の可否は協会指定医が判
法や運動負荷試験は指示されていない.連盟指定医には
定する.
特に資格は必要ではない.検診結果は協会が管理し,参
プロ登録後は協会が年 1 回の検診を義務づけている.
加可否は検診担当医が行うが,問題がある例については
疾患や障害が発生した際は協会指定医が復帰の可否判定
中央判定医師会議で最終判定が行われる.プロ登録後は
を担当しているが,この 20 年間では循環器疾患由来の
年 1 回の検診を協会が義務づけているが,個人が選択し
事故の発生はみられていない.
た医師が担当し,判定も任されている.協会として特に
③野球
プロ登録時の検診は各チームドクターに一任されてい
シーズン開始前の検診は義務づけていない.
⑥サッカー
る.循環器系の項目としては通常心電図検査を行うが協
J リーグ登録時には,内科・整形外科診察,尿・血液
会の指定項目ではない.検診結果は各チームが管理し,
検査(B,C 型肝炎,梅毒を含む.HIV 検査は行わなく
競技参加の可否判定は検診担当医が行う.プロ登録後の
なった),胸部 X 線,心電図,運動負荷試験(プロトコ
定期検診はチーム単位で義務づけており,協会としての
ールは指定なし)の必須項目に加え,近年,心エコー法
指導はない.毎シーズン開始前の検診についても協会の
が義務づけられた.登録後は,移籍時とシーズン前に診
指示はなく,各チーム単位でチームドクターが総括して
察,尿・血液検査,胸部 X 線,心電図を必須検査とし,
いる.
5 年ごとに運動負荷試験と心エコー法を行う.検診結果
④ゴルフ
検診については完全に個人に任せており,協会として
の管理は協会,チーム双方が行い,競技参加の可否はチ
ームドクターが判定する.検診を行う医師に求められる
資格はない.
の指定項目,年間の実施回数などの指示はない.通常,
検診は個人が選択した医師が担当し結果の管理も個人で
49
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 年度合同研究班報告)
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