プライマリケア医・開業医の キャリア選択について 東京大学医学部医学科 M1 升本 浩紀 なぜこの調査をしようと 考えたのか? 日本には多くの医療施設が存在する が、その中で最も多いのは無床の一 般診療所である(1。 (全医療機関数176308件のうち、無床 診療所数は約51%の89613件である。 ) なぜこの調査をしようと 考えたのか? (1 なぜこの調査をしようと 考えたのか? (2 なぜこの調査をしようと 考えたのか? プライマリケアのACCCA(3の概念 近接性(Accessibility):地理的、時間的、経済的、精 神的にかかりやすいこと 協調性(Coordination):他科専門医や地域との連携 、地域住民との協力を行う 継続性(Continuity):一人の「人」としてのつながり、 病気のない健康なときから関わる なぜこの調査をしようと 考えたのか? 包括性(Comprehensiveness):年齢、性別、臓器にと らわれず、予防も含めた診療を行う 文脈性(Accountability):「価値観」「考え」「思い」や「 状況や経過」「家族の意思」を尊重する なぜこの調査をしようと 考えたのか? M1、M2などの時間割を見てみると 卒業後の進路などについて考えるの に役立つ学習機会が全くない。 自分の希望として、最も患者と密な 距離で医療行為が行えるプライマリ ケアに興味がある。 なぜこの調査をしようと 考えたのか? 卒業後、プライマリケア医はどのような キャリアパスを歩むべきなのかが大学で は学べない 是非自分で調査してみたい。 どのように調査したか。 複数のプライマリケア医にインタビュ ーを行い、どのようなキャリアパスを 歩んだかを調査した。 どのように調査したか 様々なプライマリケア医の医師がいるが どの医師にインタビューを行うか プライマリケア医にはどんなカテゴリー があるかを考え分類した。 どのように調査したか 勤務形態 専門科 診療形態 勤務地域 開業医⇔勤務医 総合診療医⇔専門医 在宅診療⇔外来医療 都市部⇔地方 自分の関心から8つのカテゴリー を想定した どのように調査したか 勤務形態、専門科、診療形態、 勤務地域に場合分けをして 全パターンを調査すると2の4乗の 16人にインタビューが必要となる。 1ヶ月では実現不可能 どのように調査したか 8つのカテゴリーを多く含むように理 論的サンプリングをした。 開業医であり、総合診療医/元専門 医、外来診療/在宅診療、都市部/ 地方のカテゴリーを含む3人の医師 にインタビューを行った。 どのように調査したか インタビュー① 松村医院 東京都世田谷区にて開業 外来と在宅診療の 両方を行う 総合診療医 どのように調査したか インタビュー② トータルファミリーケア北西医院 静岡県富士市にて開業 外来診療と在宅診療、病児保育 総合診療医 どのように調査したか インタビュー③ 祐ホームクリニック 東京都文京区 (及び宮城県石巻市) 在宅診療のみ 元循環器内科医 どのように調査したか この3人のインタビューにおいては勤 務医および専門医での開業は含むこ とができなかった どのように調査したか インタビュー項目について 以下の項目についてインタビューを行った。 なぜプライマリケア開業医を選んだのか (選択に何が影響を与えたのか) 開業までのキャリアパスは理想だったか プライマリケア開業医になるためには、 どのようなキャリアパスを経るべきか インタビューの結果 インタビュー① 松村医院 1991年 北海道大学卒(卒後22年目) 医局に所属するのが一般的な時代 に独力で職場を探し、慈恵会医大病 院での研修、国立東京第二病院・総 合診療科の研修を経て、東京大学や UCLAでの研究期間の後、開業 インタビューの結果 開業の理由は開業医である父の体調悪 化により キャリアパスに関しての後悔は在宅医療 を経験していない事 理想的には、優れた指導医と日常疾患( common disease)を多く経験できる病 院で研修すべき、また在宅医療は経験し た方がよい インタビューの結果 インタビュー② 北西医院 1991年 東京慈恵医大卒(卒後22年目) 東京第二病院の内科系プログラム、総合診療 プログラムを経て、内科医として勤務。 地域の病院勤務の後、5年間様々な科(小児科 、産婦人科、緩和医療、整形、皮膚科)で研修 を行った。 インタビューの結果 開業の理由は、開業医(産科)である 父の体調悪化により 自身のキャリアパスはプライマリケア 開業医を目指すにあたって理想的だ ったと考えている 研修先などで様々な人・環境に触れ て、方向性を決めるのがよいとのこと インタビューの結果 インタビュー③ 祐ホームクリニック 1996年 東京大学卒(卒後17年目) 三井記念病院循環器内科を経て、東 京大学大学院にて博士号取得、東京 大学病院や三井記念病院にて循環器 内科を経験。宮内庁病院に勤務した後 、3年間医療コンサルタント会社に勤務 。その後祐ホームクリニックを開業。 インタビューの結果 開業の理由は、医局や企業では出来な い、自分の好きな事をやれる余地がある から 開業までのキャリアパスは当時の状況 では選択の余地があまりなかった 理想的には、家庭医療プログラムで研修 した後、さらに救急や外来の経験を積み 、できれば非医療的なことも経験して開 業するべき 考察 キャリアパスについて 3人の医師は共に内科系であり、非常勤 としての勤務を含めると一次~三次医療 をすべて経験している。 相違点は、武藤医師のみ親族から継承 せずに開業しており、またコンサルタント 会社という非医療的キャリアを経験して いた。 考察 プライマリケア開業医をなぜ選んだか 松村医師、北西医師の直接的な理由は、 元経営者の体調悪化による。しかし、親 が開業医であったため、医師像の原点と してイメージされていた。 武藤医師のみ自分のやりたい事をする余 地を獲得するために開業されている。 考察 プライマリケア開業医をなぜ選んだか ・プライマリケア開業医というキャリアパスの選 択には、原点としての医師像、親の開業医院 の継承、自由裁量の範囲の広さ、などが影響 していると考えられた ・米国の先行研究では、学生時代の家庭医療の 研修期間の長さが最もプライマリケア開業医と いう選択に影響力があると言われている。(4 考察 自分のキャリアパスが理想かどうか はっきりと理想通りであると答えたの は北西医師のみ。松村医師は在宅 未経験が後悔する点であり、武藤医 師は後悔した点は述べなかったが、 医局制度により職場選択の自由が あまりなかった。 考察 どのようなキャリアパスを経るべきか 全員が、多くの診療科で研修し総合的な 診療能力を獲得すべきであるという考え 。 武藤医師、北西医師は研修後も様々な 経験をすべきであるという考え。松村医 師は早い時期に開業すべきであるという 考えだった。 結論 ・プライマリケア開業医に至る理想的なキャリ アパスは家庭医療プログラムなど様々な科、 様々な医療が経験できる研修を受けるべきで ある。 その後、早く開業するべきか、さらに様々な科 で経験を積むべきかは研修先での環境に影響 されるだろうと感じた。 参考文献 1) 厚生労働省「医療施設調査」 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/11/dl/1-1.pdf> (2013年1月30日にアクセス) 2) 福井県「第五次福井県保健医療計画」 <http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/iryou/iryoujouhou/iryoukeikaku_d/fil/ 004.pdf>(2013年1月30日にアクセス) 3) 日本プライマリ・ケア連合学会 「家庭医療専門医~あなたにとって何でも相談できる身近な医師を~」 <http://www.primary-care.or.jp/public/primarycare_iryo.pdf> (2013年1月30日にアクセス) 4) Determinants of primary care specialty choice: a non-statistical meta-analysis of the literature.
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