インタビュー くまもと県南フードバレー推進協議会会長 つためには、挑戦を続けるしかな 立ち、挑戦してみようという事業 非常に好評で、東京のレストラン に使われているのですが、これが 熊本のフードバレーはフードビジ 路の拡大にも取り組んでいます。 品パッケージの改良やさらなる販 に「 次産業化・農商工連携によ が経過しました。県南地域を対象 の産業を変えるようなメガヒット しているのですが、いきなり地域 ーケット「西鉄ストア」が、 「くま 1 状をどう見ていますか。 進体制の構築」を目指す構想の現 販路拡大」 、 「人材育成の強化・推 ジアとの貿易拡大・首都圏等への 業・研究開発機能等の集積」 、 「ア 化」 、 「地域内生産物等を生かす企 る地域内生産物等の高付加価値 たるか予測が難しく、ヒットを放 トのニーズが多様化して、何が当 と思っています。昨今はマーケッ び込むような流れを生み出したい が出たときに地域に大量得点を呼 ヒットを積み上げて、いずれ長打 野球に例えるなら、むしろ小さな 100万円も売り上げる事業者 ほどの売り上げがあり、中には月 のコーナーでは月に1000万円 たな販路がもたらされました。こ 出荷しており、地域の生産者に新 県南地域から約 現在、8店舗で展開されています。 が出るというわけではありません。 もと産直市場」を設置しており、 の農家などが このプロジェクトは、自ら奮い 6 30 142 Zaikai Kyushu / FEB.2015 い。そのために、挑戦し続けるた めの仕組みを県南に生み出してい きたいですね。地域の事業者のか たがたのチャレンジ精神とそれを 継続的に生み出す仕組みがかみ合 えば、メガヒットも遠くないと思 います。 ●どんな事例が出てきましたか。 ばんぺいゆ 白柚 例えば、八代市特産の晩 でペーストを作っている「デザー ト工房オレンジ会」 。晩白柚ペース 者がどれくらい増えるかが重要で でも使われています。また、協議 トは晩白柚カクテル「マキシト」 す。その場を提供するのが私たち 会が支援する研究会制度を活用 ●くまもと県南フードバレー構 想の推進母体である「くまもと県 ネスの分野でシリコンバレーのよ 鍵は 「小さなヒット」 にあり 地域にバリューチェーンを の役割で、協議会には、意欲のあ 南フードバレー推 進協 議会 」が うにイノベーションの創出を目指 る会員事業者の方が増えています。 し、地域の事業者と連携して、商 2013年7月に発足して 年半 域外流通企業との連携事例も 出てきました。福岡のスーパーマ 「自らを奮い立たせて 小さなイノベーションを積み上げ、 〝地域の恵み〟 に高い付加価値を」 小野 泰輔氏(熊本県副知事) South Kumamoto 受け入れられたことが、生産者の もおられます。福 岡の消 費 者に たモスフードサービス(東京都) トの生産拠点を置いて農業参入し ビジネスセンターを整備します の「い業 研 究 所 」内に、ア グリ 門家やアドバイザーとつなぐワン ね。地域の事業者を対象に、専 業が増えています。 自信につながっているでしょうし、 も含め、県南地域に立地される企 今後の設備投資や雇用の拡大に 地域の農業とつながることによる、 験研究、製品開発のためのオー ストップ相談 窓口、機 能性や鮮 プンラボ機能の提供、人材育成 もつながるものと、 期待しています。 ほかにも、昨 年、鏡町カ漁キ業 協 同組合が、期間限定で牡蠣小屋 バリューチェーンの形成に期待し のためのセミナールームの提供と 次加工支援などの試 「鏡オイスターハウス」をオープ たいです。県南地域の弱点の一つ いった四つの機能を集約した拠点 今年度はパッケージアイス(かち もちろん、フードバレーと関連 した企業進出も出てきています。 求められますね。 ●そんな取り組みをフードビ ジネスの集 積につなげることが い光景でした。 人が訪れるというのは、かつてな いる港湾地区に県内外から続々と げたそうです。普段、閑散として カ月間で、2500万円を売り上 ニーズはあるわけですから、これ のが望まれる姿です。 次加工の 済循環が域 内で完結するという 産者と加工業者の取り引きの経 いない話です。がんばっている生 かれているわけで、非常にもった 値を付ける部分を域外に持ってい が見受けられます。製品に付加価 ち出して加工してもらっている例 でできないため、域外に原料を持 せるとか、そういったことが域内 です。青果物を粉末にして乾燥さ 県としては四つの機能を提供する 業者にPRしていくかが重要です。 もらうか、また県外の食品関連事 を地域の事業者にいかに活用して た施設がありませんでした。これ がありますが、県南にはそういっ ー、熊本市内に産業技術センター 県 北の合志市に農 業 研 究センタ フードバレーの象徴的な拠点と して整備するものです。熊本には ありますか。 になるそうですが、狙いはどこに 度保持、 ンしました。これが行列ができる は、 次加工の能力に乏しいこと 大きな雇用を生む企業誘致は 当 然 重 要ですし、加えてこれが ほどのにぎわいで、 月からの4 割り氷)製造のアクアピア(大阪 造工場を建設し操業を開始しま です。この部分は県としても今後、 らず、事業者個々が活用法を見い ●来年度は県が、八代市鏡町 昨年 月、八代市北部と隣接 する氷川町に、九州自動車道の宇 ます。 だしてもらうことにも期待してい 積極的に取り組むべき課題だと思 外港工業用地内に「上組八代物 流センター」の新設を決め、県と 立地協定を締結しました。主に食 品が取り扱われる予定です。昨年 アグリセンターを新設 〝四つの機能〟 の活用を した。また港湾輸送などを手掛け 1 っています。 府柏原市)が と打ち出していますが、それに限 1 はビジネスチャンスでもあるわけ 1 月、芦北町に製 1 る上組(兵庫県神戸市)は、八代 8 度、八代市と熊本県山都町にトマ ができましたが、これと国道 号 城氷川スマートインターチェンジ 3 を結ぶ道路が整備中であり、完成 Zaikai Kyushu / FEB.2015 143 3 八 代 特 産の晩白柚を 使って開発したペースト 「マキシト」 Food Valley 西鉄ストアにフード バレーの産 直コー ナーが登場した インタビュー くまもと県南フードバレー推進協議会会長 小野 泰輔氏(熊本県副知事) プロフィル ●おの・たいすけ 1974年東京都出身。東京大 学法学部卒。 アンダーセンコンサルティング、国 会議員事務所勤務などを経て、2008年熊本県 政策調整参与、10年熊本県政策参与(知事補 よび水俣・芦北の両 通っており、八代お ら南九州自動車道が 芦北地域には従来か 縮されます。水俣・ までの移動時間が短 ある「い業研究所」 場が立地し、その後空港付近にセ 付近に自動車や家電の組み立て工 いで高速道路のインターチェンジ まず港湾地区で鉄鋼業が栄え、次 す。産業の流れは重厚長大から軽 より品質の高いもの、付加価値 の高いものの創出を目指すことで などに使われる高級砂糖)にしな これを見て「なぜ和三盆(和菓子 販売されているのです。専門家が 値が求められるようになりました。 これが一箱300円ほどの廉価で 薄短小へ移り、さらに高い付加価 いのか」と首をかしげていました。 いが大きいようですが、熊本では 価が高いそうです。これは土の違 名な沖縄産のものと比べて、栄養 いるところです。同校には食品科 校を活用できないものかと考えて 球磨郡あさぎり町の県立南稜高 れ、果実のような甘みでヒットし の塩分濃度が高い干拓地で栽培さ と言えるでしょう。しかし、八代 ンなどは農産物の中で重厚長大型 一方、球磨地域は距離的なハン るという変遷を遂げてきたわけで デーがあるので、その補完のため、 す。農業も同じで、スイカやメロ 先ほど産業の流れがより付加 価値の高いものへと移っていると 質で量産していきます。 菌状態で蚕や冬虫夏草を高い品 場のクリーンルームを利用し、無 業で農業参入しました。半導体工 地域でも栽培されていますが、有 地域からのアクセス ミコンダクタ関連の産業が集積す 学科などフードビジネスに関連し た「塩トマト」は 個300円と 工品を試作するための拠点として、 生産現場が労働集約型であること れています。もちろん、民間には 加価値を高めていくことが求めら 144 Zaikai Kyushu / FEB.2015 すれば八代市北部に は良好です。 また先ごろ、県内のある企業が、 県北の広大な畑地を購入し養 蚕 た学科があり、試験・研究のため に変わりはないのですが、単位当 面白い取り組みをされている方が いう高値で売られた例もあります。 いう話をしましたが、農業でも付 また将来のための人材育成という たりの収量が多く、小さな面積で 方を見つけて、どう支援していく 観点からも、アグリビジネスセン かなどを検討していきたいですね。 熊本の園芸作物分野は、これで成 か。また逆に行 政が有 するノウ 高い収益を挙げることができます。 たくさんいますので、そういった 功したのです。今も稲作からこう ここ 〜 年の課題だと考えてい 限り多くの事業者と密にコミュニ ハウをいかに活用していただくか。 ケーションを図り、細かいニーズ した転換ができない地域もあるよ ます。 す。 を拾い上げ〝つなぐ役割〟を果た そういったことを常に考えていく その先には、機能性という高付 加価値化もあるわけです。熊本は していけたらと思っています。 うですが、熊本は先人のおかげで 高付加価値化目指し 行政は 〝つなぎ役〟 を 2 ●地域にどんな変化を求めま すか。 サトウキビの産地で、水俣・芦北 ことが大事だと思います。できる ターのサテライト施設にできない の機械も備えています。ここを加 1 時代の流れに乗っていると思いま 1 集客スポットになってい る鏡町漁協の牡蠣小屋 佐担当) を歴任し、 12年から現職。
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