名古屋例会報告

名古屋例会報告
【日 時】
【場 所】
【テーマ】
【参加者】
2013年2月23日(土) 18:30~20:45
北区役所 7F 大会議室(東)
「吃音者を扱った作品について話しませんか?」
14名
【例会内容】
1.参加者から挙がった吃音者を扱った作品
●サマーセット・モーム「要約すると」
(小説。吃音の自叙伝)
◆「英国王のスピーチ」(映画。ジョージ6世の物語。アカデミー賞受賞作品)
▲重松清「きよしこ」
「青い鳥」
(吃音の教師が主人公。阿部寛主演で映画化)
■遠藤周作「彼の生き方」
▼諏訪哲史「アサッテのひと」
(小説。芥川賞作家。名古屋言友会創立40周年記念
例会で講演)
★岩明均「風子のいる店」
(漫画。吃音の女の子が喫茶店でアルバイト)
●三島由紀夫「金閣寺」(小説・映画。吃音の僧侶が金閣寺を放火)
◆筒井康隆「俗物図鑑」(小説)
▲井上ひさしのエッセイ
■あぶらだこ(音楽。日本のロックバンド。ボーカルが吃音者)
▼「北のカナリア」
(映画)
★押見修造「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
(漫画。吃音の女子高生が主人公)
●「中学生日記」(NHKドラマ。吃音の男子中学生が主人公。国際エミー賞受賞)
◆菊池良和「ボクは吃音ドクターです」
(エッセイ。福岡・北九州言友会の会員)
▲小島信夫「吃音学院」(小説)
■神山五郎「従病という生き方」
▼スキャットマン・ジョン(ミュージシャン)の作品 etc…
2.意見
・愛読の作品を持参された参加者(人によっては数冊、10 冊を持参)や、吃音を扱っ
た作品をほとんど読んでいない参加者も見えました。
・
「金閣寺」のように吃音者にとっては吃音者の小説だが、一般の人にとっては感じる
部分が違う作品も多い。年配の方は吃音を扱った作品として「金閣寺」を真っ先に
挙げる人が多いが、最近の若い人はこの作品を知らない人もいる。
(逆に若い人から
は、重松清さんの作品が多く挙がりました。
)
・吃音者を扱った作品には、作者の体験に基づいたもの、単に悩み・障害の一つとし
て扱ったもの、登場人物の話し方の一つとして吃音があるなど、いろいろ。
・映画監督の篠田正浩さんは吃音者ではあるが、吃音者の登場する作品を作っていな
いと思われます。
・吃音の有名人には、映画監督の羽仁進さん、スキャトマン・ジョンさん、俳優、
アナウンサー、スポーツマン、評論家など、いろいろみえます。
3.その他
参加者の近況報告、初参加の方の吃音相談会を行いました。
吃音改善研究会&例会 報告
【日 時】 2013年3月3日(日)13:00~16:30
【場 所】 北生涯学習センター 4F 第6集会室
【参加者】 15名
【吃音改善研究会報告】
1.ミニ講義
今回は近年話題になっている「聴覚フィードバック」についての概要をお話ししました。
「聴覚フィードバック」とは、自分自身が話す声を聴いて「監視」することによって、発
話の正確さを維持するための仕組みのことですが、吃音がある人はこの「監視」の方法に
特徴があるのではないかという考え方が提唱されています。とある研究者は、「自分の声を
聞かずに喋る」ことを勧めていますが、実際には難しいのは言うまでもありません。しか
し、これを「自分が吃っているかどうかを気にしすぎずに喋る」と解釈するならば、吃音
に対する対処策として、ひとつの知恵になるかもしれませんね。
2.電話練習
毎度お馴染みの電話練習ですが、今回は会社での業務報告など、より実践的なトレーニ
ングに取り組みました。また、飲食店での注文対応に、店側と客側の両方の立場から挑戦
するロールプレイングも行いました。これまでは、所定の文例を「読みながら」練習して
いたため、日常生活への応用が難しかったという反省の下、途中から書面なしに切り替え
ました。まだまだ試行錯誤の中ですが、より良い改善練習を目指していきたいと思います。
【例会報告】
〔テーマ〕 これが吃音の新方程式 ~誰も気づかなかった吃音の秘密~
「基本編」「応用編」「おまけ」の全3編にて進行しました。
「基本編」
では病をプラスととるかマイナスととるかで対処法が 180 度変わることを説明。
例えば風邪の熱をプラス(治療)ととり、たとえ薬で熱を下げても原因であるウィルスが
体内に残っていれば再度治療を行うべく熱が上がる。この場合、原因であるウィルスを体
外に出さなくてはいけない。本当の原因を見極める必要がある。対症療法ではなく原因療
法をしなくてはいけない。これを吃音に当てはめると吃音は治療ということになる。では
何に対しての治療なのか? 緊張を取るためと言うこともできるが、健常者でも緊張するが、
噛むことはあっても吃音にはならない。私の見解としては、随伴症状をすることによって
身体は通常の緊張から異常な緊張に変わる。この治療として吃音が出る。そこで“脱・随
伴宣言”というものを提案したい。思い切って随伴を止めてみるである。
「応用編」ではそうは言ってもなかなか言葉を発することへの恐怖は尋常ではないと思う。
そこで“3秒ルール”というものを提唱したい。森田療法(あるがままになすべきことを
なす)を応用したもので、どんなに言葉を発することが怖くても3秒以内に話し始めると
いうものである。「おまけ」では私の個人的な仕事のことでのご案内をしました。
最後に、今回3名の新来者がお見えになられたので、生活や仕事上での悩み、子どもさ
んが吃音であることの相談などに会員が真摯に回答しました。例会終了後はミスタードー
ナッツグループと居酒屋グループに分かれて更に親睦を深めました。
言
語
( i n
聴
覚
士
養
成
校
と
の
交
流
会
日 本 福 祉 大 学 中 央 福 祉 専 門 学 校 ) 報 告
3月2日(土)
、言語聴覚士の養成校である日本福祉大学中央福祉専門学校との交流会を
開催しました。同校には昨年の4月から私自身が通っている縁もあり、吃音を含む発話障
害(構音障害、音声障害など)を主に担当されているという専任講師の西井三奈穂先生の
ご厚意により、今回の企画が実現しました。言友会からは4名が参加しました。
【内容】
①
言友会の紹介
…パワーポイントを使い、言友会の使命や活動について、例会や吃音改善研究会など平素
の活動から、近年盛り上がっている社会的支援の取り組みに至るまで、その全体像につい
て説明しました。
②
体験談発表
…言友会のメンバーが、それぞれの立場から吃音に対する経験や考え方を披露しました。
③
グループワーク
…4つのテーブルに分かれ、学生の皆さんからの率直な質問に答えたり、私たちが医療機
関や言語聴覚士に望むことなどについて話し合いました。
【感想】
昨年の名古屋医専との交流会に続き、2回目の取り組みとなりました。今回は、卒業間
近の2年生を対象としたこともあり、言語聴覚士としてのデビューを間近に控えた学生の
皆さんからは、吃音に対する強い関心がうかがえました。しかし、一方ではそれは不安の
裏返しでもあり、実際に自分が臨床の現場に立ったとき、吃音がある人にどのように対応
したいいのか分からない、という正直な声があったのも事実です。
言友会が今回のような交流会を通じて、当事者団体として臨床の現場に貢献できること
はまだまだ沢山あるのではないでしょうか。私たちがリアルな体験を伝えることで、彼ら
も吃音がある人に対して「体温」が感じられたのではないかと思います。また、話し合い
を通じて、
「病院に来た吃音者を決して見放さず、寄り添っていきたい」という発言を聞く
こともできました。
『英国王のスピーチ』におけるライオネル・ローグのような、吃音があ
る人と伴走できる言語聴覚士が、もっと必要です。他ならぬ私たちこそが最高のテキスト
であるという自負を持ち、今後も言語聴覚士の養成校との交流を続けていきたいと考えて
います。
自分の人生で一大事件が起きました
昨年の9月に本当に久し振りに言友会に参加しました。私が例会に参加した理由は、
人生の大きな転機である結婚式という一大イベントを開催することになったからです。
結婚式を成功させるため、普通の人でも大変な事なのに、更にスピーチを大勢の人の前で
やらなければいけない事がとても不安で、どうにかしたいという思いで過ごしていました。
そんな時、たまたま「英国王のスピーチ」の演劇をやるということを知りました。
「吃音」
を生の舞台でやるところを、ぜひ一度観に行きたいと思い、早速東京まで観に行きました。
公演が始まるまでは、大勢の観客に圧倒され、自分の方が緊張していました。スピーチの
場面ではドキドキしたけれど、私たちの恥ずかしいことを演じている役者の演技に感動し
て心強く思いました。また真剣にやっているのを観ると、逆に良い人に見えてきました。
劇の最後は感動して、お客さんのカーテンコールで自分自身も自信がつき、勇気ももらえ
て良かったです。
そして、その後、名古屋言友会の例会に参加したのでした。久し振りの例会では懐かし
い顔ぶれと、新しい人たちがいて、嬉しくなりました。言友会に参加して改善されるのが
少なくても、みなさんの結婚式での経験談を聞いたりして参考になりました。少しは攻略
法も分かった気がしました。なかなか人に相談しても説得力はないけれど、言友会のみな
さんのアドバイスは勉強になりました。例会が終わってからの2次会では、より身近に話
すことができて、とても楽しい時を過ごせました。生きていくための参考になってとても
有意義でした。
私の女房が白無垢が着たいので結婚式は神前式になりましたが、後から知ったのですが、
神前式では誓詞を読まなくてはならなかったのです。そして結婚式の当日になりました。
いよいよ緊張の誓詞を読むときが来ました。意外とその場では、隣に女房がいてくれたの
で、それがすごく心強いというか、安心感があってすらすらと言えました。そして披露宴
が始まって緊張はしましたが、感動したり、自分たちが主役でやれるのは、とても楽しく
感じられました。会社関係の人、友人や親戚の前での最後の謝辞もまた緊張しましたが、
感動していましたのでうまく乗り切ることができました。披露宴が終わったときはすごく
ホッとして、この半年間の不安が無事に終わって、やり切ることができて、すごく自分自
身に自信がつきました。
言友会のみなさんに助けられて良かったので、これからも参加したいと思います。
吃音入門講座⑥ ~吃音と女性~
今年1月に名古屋言友会で「第1回 女性の会」が行われました。女性は、友人関係、結
婚、姓名の変更、PTAや親戚、近所の付き合い、電話応対、受付・・・など、男性とは少し
違った悩みや場面があるとよく聞きます。私もこの間、初めての美容院で緊張してしまい、
受け答えが上手くできませんでした。女性同士で話し合い、共感し合い、解決策を考える
ことができるので、女性の会はとても大切であると思います。
さて、女性と吃音の関係を見るために吃音を性別で分けた視点でみたとき、男性と女性
で異なる特徴があることが分かります。まず男女比の違いです。学齢期や成人期の男女比
は約3:1とされており、男性の方が多いことが分かります。最近の研究においては、吃
音の症状が出始めの幼児期の男女比は約1:1であると言われています。
次に、女性の方が自然回復しやすいことです。小児期吃音においても自然回復の要因の
一つとして考えられています。先の男女比の年齢において学齢期以降になると男児の比率
が増えるのは、男性と比べて吃音の症状が出てから数年の女性の回復率が高いためと考え
られています。
なぜこれほどまでに吃音の発症において性別の差があるのかには、様々な研究がされて
います。①自分が発した音の確認(フィードバック)の違い(男性の方が外からの音の刺
激に依存している。女性はあまり強く依存していない説)や、②言葉の発達の男女差など
があります。一方で、以前話題になった「話を聞かない男、地図が読めない女」という
本があります。そこでは、男性と女性の脳を男脳と女脳に分けていました。医学的な根拠
はないのですが、一般に女性はおしゃべり、言語野(言葉を話す脳の場所)が活発に働く
とも言われます。また、同じものを見ても男性と女性では見方が異なるとされています。
このように脳の活動や処理の仕方が異なることが性別の違いに大きく関係しているとも考
えられます。そして①や②の研究や説も少なからず脳の違いによるものと考えることがで
きるかもしれません。吃音において男女の差を見ていくと、脳の処理の男女の違いという
異なった見方ができました。明確に明らかなことではないのですが、別の視点から見るこ
とは吃音を考える上で重要な見方だと思いました。
数字的な男女の差を見てきましたが、男性でも女性でも吃音に対しての悩みや考え、葛
藤を抱くと思います。その中には男性特有、女性特有の悩みがあることがあります。女性
の会、言友会、病院などの専門機関などを状況に合わせて選択し、話ができる環境が増え
ることは素敵なことであると思います。女性は男性と比べて吃音の人数が少ないけれども、
話ができる環境が増える、増えていることはとても良いことであり、また話す人も聞く人
も、相手の話から自分自身のことを考え、振り返り、相手を支えると同時に自分も変わる
ことができる良い機会であると考えます。
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■参考文献
バリー・ギター著 長澤泰子監訳 『吃音の基礎と臨床』 2007年 学苑社
『コミュニケーション障害の臨床2 吃音』 2008年 協同医書出版社