第 6 回徳安医院体力測定総括 平成 26 年 5 月 31 日(土曜日) 2014/06/04 徳安医院 徳安敏行 平成 26 年 第 6 回 徳安医院体力テスト総括 恒例の徳安医院体力測定を平成 26 年 5 月 31 日に行ったので報告する。測定項目及び判定 は文部科学省の新体力テストにのっとり行った。本年は従来の検査に体脂肪率、肺機能検査を 追加して行った。 測定項目 1) 身体基本情報:身長、体重、肥満度、脈拍、血圧 2) 体力測定:握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、椅子立上がりテスト、10 m障害物歩行、6 分間歩行の 7 項目 3) 体脂肪検査(本年より施行):基礎代謝量、体脂肪率、内臓脂肪レベル、皮下脂肪率、 筋肉レベル、骨レベル、体組成年齢 4) 肺機能検査(本年より施行):肺活量、1 秒率、努力肺活量など 5) 基本生活機能チェック 6) 日常生活活動テスト 1.参加人数および基本情報 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 性別:総計 24 名。女性 19 名、男性 5 名 年齢:女性 79.5±7.0(61~91)才、男性 81.2±5.4(74~88)才。 身長:女性 146.6±6.1cm(133.3~156.5)、男性 159.3±4.8cm(152~165) 体重:女性 47.7±8.2kg(30~63.3)。男性 61.3±7.5kg(51.5~71.3)。 肥満度:女性 22.2±3.6%(16.5%~29.7%、男性 24.2±3.5%(18.9~28.0) 最高血圧:女性 140.7±22.9(110~182)、男性 135.6±12.6(114~146) 最低血圧:女性 74.4±9.9(60~89)、男性 80.0±7.5(70~90) 脈拍:女性 79.1±10.6(56~93)、男性 76.3±2.6(74~79) 最高(縦)と最低血圧(横) 身長と体重 年齢と性別 230 170 95 160 85 180 150 75 140 65 130 130 80 120 55 女性 男性 25 45 女性 65 男性 85 50 70 女性 90 男性 2.体力テスト ① 握力:女性 19.2±3.5(11.1~24.5)、男性 33.9±5.3(26.0~38.9) ② 上体起こし:女性 4.7±3.8(0~11)、男性 6.0~4.5(0~11) ③ 長座体前屈:女性 35.4±11.3(22~66)、男性 43±25.4(23~76) ④ 開眼片足立ち:女性 17.8±16.6(2~60)、男性 48.5±30.7(16~90) ⑤ 椅子立ち上がりテスト:女性 14.6±2.0(10~18)、男性 15±2.7(13~19) 1 110 ⑥ 10m障害物歩行:女性 10.5±1.8(6~14) 、男性 9.3±2.2(7.0~12.0) ⑦ 6 分間歩行:女性 720±223(145~1050)、男性 841±82(720~905) 今回の結果と全国平均値の比較(青は平均か優っている結果) 握力 上体起 こし 長座体 前屈 開眼片足 立ち 椅子立ち 10m障害物 上がり 歩行 6 分間 歩行 平均値 26.1 6.4 34.2 36.5 13-17 8.2 517 女性 19.2 4.7 35.4 17.8 14.6 10.5 720 平均値 29.0 7.7 35.3 56.7 15-17 7.2 551 男性 33.9 6.0 43.0 48.5 15.0 9.3 841 長座体前屈、椅子立ち上がりテストは平均、6 分間歩行は優っている。 各項目のグラフ 握力 上体起こし 45 15 80 長座体前屈 60 35 10 40 25 5 15 20 0 5 女性 男性 0 女性 開眼片足立ち 男性 椅子立ち上がり 20 100 女性 15 10m障害物歩行 13 80 15 11 60 40 9 10 7 20 5 0 女性 女性 男性 2 5 女性 男性 6分間歩行 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 女性 男性 解説 握力は筋力、上体起こしは腹筋と柔軟性、長座体前屈は柔軟性、背筋、腰部、臀筋など。開 眼片足立ちは立位保持とバランス能力を見る。10m障害物歩行は応用性(敏捷性)と筋力のバ ランス。椅子立ち上がりテストは下肢の筋力と敏捷性。6 分間歩行は総合的な体力、持久力と、 敏捷性などをみる。 3.体脂肪の測定 基礎代謝量は、生命維持に必要なエネルギー。体脂肪率は(15~25)、体重のうち体脂肪 が占める割合。内臓脂肪レベルは、内臓の周りについている脂肪が、どれくらいのレベルかを 表示(10 未満)。皮下脂肪率は、体重のうち皮下脂肪が占める割合(9~25)。筋肉レベルは、 体を動かす筋肉が占める割合(5~8) 。骨レベルは骨の重さが占める割合(5~8)。 ① 基礎代謝量:女性 964±95(737~1182) ② 体脂肪率:女性 28.8±4.9(21.3~37.9)、男性 21.6±4.8(13.6~26.6) ③ 内臓脂肪レベル:女性 9.6±3.2(4.5~16.5)、男性 11.5±2.8(7~14.5) ④ 皮下脂肪率:女性 23.3±4.1(17.3~31.7)、男性 16.5±4.0(10.1~21.1) ⑤ 筋肉レベル:女性 5.7±1.6(3~9)、男性 5.4±1.5(4~8) ⑥ 骨レベル:女性 5.5±1.5(3~9)、男性 5.4±(4~7) 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 基礎代謝量 40% 体脂肪率 20 内臓脂肪レベル 35% 15 30% 25% 10 20% 15% 5 10% 女性 男性 女性 男性 3 0 女性 体脂肪率は 30 未満が望ましい。内臓脂肪レベルも 10 未満が望ましい。 皮下脂肪率 筋肉レベル 40% 10 30% 8 20% 6 6 4 2 2 0% 女性 0 男性 骨レベル 8 4 10% 10 0 女性 男性 女性 男性 皮下脂肪率は 25 未満、筋肉レベル・骨レベルは 8 以下。 肺機能の測定も行ったが、テストに慣れないせいかうまくいかなかったので割愛させていただ きました。 2.日常生活活動テスト 1)設問 ①休まないでどのくらい歩けますか? 1. 5-10 分程度 2. 20-40 分程度 3. 1 時間以上 ②休まないでどのくらい走れますか? 1. 走れない 2. 3-5分程度 3. 10分以上 ③どのくらいの幅の溝だったら、飛び越えられますか? 1. 出来ない 2. 30cm程度 3. 50cm程度 ④階段をどのようにして登りますか? 1. 手すりや壁につかまらないと昇れない。 2. ゆっくりなら、手すりや壁につかまらずに昇れる。 3. さっさと楽に、手すりや壁につかまらずに昇れる。 ⑤正座の姿勢からどのようにして、立ち上がれますか? 1. 出来ない 2. 手を床についてなら立ち上がれる 3. 手を使わずに立ち上がれる ⑥目を開けて片足で、何秒くらい立っていられますか? 1. 出来ない 2. 10~20秒程度 3. 30秒以上 ⑦バスや電車の乗った時、立っていられますか? 1. 立っていられない 2. 吊皮や手すりにつかまれば立っていられる 3.発車や停車の時以外は、何にもつかまらず立っていられる。 ⑧立ったままでズボンや、スカートがはけますか? 1. 座らないと出来ない 2. 何かにつかまれば立ったままできる 3. 何にもつかまらないで、立ったままできる 4 ⑨シャツの前ボタンを、掛けたり外したり出来ますか 1. 両手でゆっくりなら出来る 2. 両手で素早く出来る 3. 片手でも出来る ⑩布団の上げ下ろしが出来ますか 1.出来ない 2. 毛布や軽い布団なら出来る 3. 重い布団でも楽に出来る ⑪どれ位の重さの荷物なら、10メートル運べますか 1. 出来ない 2. 5キロ程度 3. 10キロ程度 ⑫仰向けに寝た姿勢から、手を使わないで、上体だけ起こせますか 1. 出来ない 2. 1~2回程度 3. 3~4回以上 ※1 に回答の場合 1 点、2 に回答の場合 2 点、3 に回答の場合 3 点として総合得点とする。 満点は 36 点、点数が高いほど日常生活活動は良好となる。点数 36~25 点を良好、13~24 を低下傾向、13 点以下を低下と判定した。 日常生活活動テスト 年齢と日常生活活動テスト 35 1 30 25 9 14 20 15 10 60 問題なし 低下傾向 70 低下 80 女性 90 100 男性 3)グラフ(各得点の割合) 問1、歩行能力 29% 問2.走力 17 % 46 % 25% 46% 1点 2点 問3.障害物 3点 1点 38 % 2点 3点 21 % 1点 17 % 63 % 2点 3点 コメント;歩行能力は 46%の方が 20-40 分は歩ける。休まないで走れるは 3-5 分程度が 46%、10 分以上は 17%、さすがに少なくなっています。障害物はまだ大丈夫なようです。 5 問4.階段昇降 問5.立ち上がり 4% 54 % 1点 42 % 2点 3点 25 % 1点 問6.片足立ち 21 % 8% 67 % 2点 3点 1点 17 % 63 % 2点 3点 コメント;階段の昇降は、支えがなくても大丈夫なようです。立ち上がりは手を床につか ないとできない方が多いようです。片足立ちが 30 秒以上出来る方が 21%、出来ない方も 17%。バランス能力が低下していることが疑われます。 問7.バスや電車 17 % 58 % 1点 問8.立って着衣 25 % 2点 71 % 3点 1点 問9.ボタンかけ 29 % 4% 25 % 2点 3点 1点 46 % 25 % 2点 3点 乗り物に乗ると 83%の方が何か支えが必要なようです。着衣は立ったままで出来る方が 71%。ボタンかけも大丈夫なようです。 問10.布団上げ下げ 33 % 8% 1点 2点 問11.運搬 25 % 58 % 3点 1点 問12.上体起こし 17 % 58 % 2点 25 % 3点 1点 50 % 25 % 2点 3点 布団の上げ下ろしは 91%の方が出来るようです。荷物は 10kになると重たいようです。 上体起こしは 75%の方が難しく感じているようです。腹筋が弱ってきていることがうかが われます、鍛えましょうね。 6 4)各設問の平均得点 平均点 3.0 2.5 2.0 2.7 2.0 1.8 2.0 2.2 2.0 1.9 問5 問6 問7 1.6 2.0 2.3 2.1 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 問1 問2 問3 問4 問8 問9 問10 問11 問12 平均点 コメント:平均点が 2 点以下は問 2.休まないでどのくらい走れるか?問 4 階段をどのよう にして登れるか?問 7 バスや電車の中で支えなしでは立っていられない。一番高かったの は問 8.立ったまま着衣が出来るるの 2.7 点でした。 3.基本チェックリストに基づく分析 今回新しく厚労省の基本チェックリストを利用して参加者の分析を行った。質問は 25 項 目にわたり、はい、いいえ、で答える形式である。 1)質問票: 1.バスや電車で一人で外出している 2.日用品の買い物をしている 3.預貯金の出し入れをしている 4.時々友人の家を訪ねている 5.家族や友人の相談にのっている 6.階段や手すりや壁を伝わらずに階段を上ることが出来る 7.椅子に座った状態から何もつかまらすに立つことが出来る 8.15 分は続けて歩くことが出来る 9.この一年間に転んだことがある 10.転倒に対する不安は大きい 11.この 6 ヶ月間で2k 異常の体重減少がある 12.肥満度は 13.固いものが食べにくい 14.お茶や汁物などでむせることがある 15.口がよく渇く 16.週に1回以上は外出する 17.外出する回数が減ってきている 7 18.周りの人から物忘れがあると言われる 19.自分で電話番号を調べて、電話をかける事が出来る 20.今日が何月何日かわからないときがある 21.毎日の生活に充実感がない 22.これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 23.以前は楽に出来ていたことが、最近おっくうになってきた 24.自分が役に立つ人間だと思えない 25.訳もなく疲れたような感じがする 2)判定方法 該当リスク 判定方法 全般的低下傾向 項目 1~20 の内 10 項目に該当 運動機能 項目 6~10 の項目のうち 3 項目以上に該当 口腔機能 項目 11~12 のうち全てに該当 低栄養 項目 13~15 の 3 項目のうち 2 項目以上に該当 閉じこもり傾向 項目 16 に該当、項目 17 も該当の場合要注意 物忘れ傾向 項目 18~20 項目のうちいずれかに該当 うつ的傾向 項目 21~25 の 5 項目のうち 2 項目以上に該当 3-a)結果一覧表 (0 点は該当しない、1 点は該当、例えば問い 1、バスや電車で一人で外出していますか? はいは 0 点、いいえは 1 点。生活機能が低下している答えが 1 点となる。 100% 13%13%8%21%13%50%29%25%17%67%13%17%46%21%25%13%50%29%8%29%25%17%38%42%42% 75% 50% 88%88%92% 88% 79% 25% 88%83% 83% 71%75% 54% 50% 92% 88% 79%75% 83% 71%75% 63%58%58% 71% 50% 33% 良好 疑問? 3-b)各設問ごとの結果のグラフ 8 問25 問24 問23 問22 問21 問20 問19 問18 問17 問16 問15 問14 問13 問12 問11 問10 問9 問8 問7 問6 問5 問4 問3 問2 問1 0% 生活機能 口腔機能 1 閉じこもり 3 5 21 19 23 生活機能良好 保たれている 注意 傾向なし 傾向あり 生活機能、口腔機能、閉じこもりの結果は良好でした。 運動機能 認知 栄養状態 10 14 4 11 13 20 運動機能良好 運動機能低下 良好 問題あり 運動機能、認知、うつ傾向はほぼ半数近くの人が該当しました。 うつ傾向 12 12 なし あり 9 問題なし 問題あり 4)得点分布 基本生活機能チェック得点分布 30 25 20 15 10 5 0 60 65 70 75 80 85 90 95 横軸年齢、縦軸得点(得点が高いほど生活全般の機能が良好に保たれている) 以上の結果より項目別に判定した結果が下の図である。 基本生活機能チェック 50% うつ 54% 認知 88% 閉じこもり 79% 口腔機能 83% 栄養状態 58% 運動機能 96% 生活機能 0% 20% 40% 60% 80% 100% 考察 世界における高齢化は急速に進んでいる。2013 年の高齢化率は 23.3%(人口全体に占める高 齢者の割合)、2020 年には 30%になると推測されている。労働人口は減少していく一方であ る。高齢社会を乗り越えるためには、どうしてもおじいちゃんやおばあちゃんにいつまでも元 気にしていてもらう必要がある。そこで高齢者の筋力を保つ事を考えトレーニングジムを置き、 励んでもらっている。体力測定は本年度で 6 回目である。 体力測定項目は文部科学省新体力テストにのっとり、それに基本チェックリスト(介護予防 事業、この人にどういった介護が必要かを考える為のチェックリスト)、日常生活活動テスト 10 を行っている。参加年齢は原則として 70 代の男女、自由参加である。 基本項目の所では血圧の高い人が多く見られた。体力テストでは、長座体前屈、椅子立ち上 がりテストは平均並み、6 分間歩行では全国平均を大きく上回った。握力開眼片足立ち、10m 障害物歩行は平均を下回った。特に女性において、開眼片足立ちは大きく平均を下回る結果で あった。柔軟性、筋力、バランス面の強化が必要と考えられた。 今回取り入れた体脂肪検査ではすべての項目で正常値を上回り、食生活、運動などの指導が 必要と考えられた。日常生活活動テストでは参加者の 41%が低下傾向にあった。平均点で見 ると問 2 走力問 4 の階段昇降、問 7 バスや電車の中で立っていられるか、この 3 問で 2 点を 下回った。 日常生活活動テストでは、年齢と総合得点の関係は特にないと考えられた。特に活動能力が 低下していると思われたのは、階段昇降が支えなしでは登れなくなっていた。次に問 2 休まな いでどのくらい走れますかの問いに、10 分以上と答えた人は 17%であった。問 8 立ってズボ ンがはけますかでは、71%の方がハイと答えていた。このあたり日常生活活動テストと体力 測定の結果は伴っていなかった。 基本生活機能チェックリストにおいては、生活機能、口腔機能、閉じこもり、栄養状態の項 目は問題なかったが、運動機能や認知の項目では半数近くの方が問題ありとしていた。 以上平成 26 年 5 月 31 日に当院で行った体力テストについて総括した。 最後になるが、参加者の皆様、設置から測定と頑張ってくれた職員、応援に来てくれた方々 に感謝の意を表したい。 平成 25 年 5 月 29 日 徳安医院 11 德安敏行
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