ソーラーカー用計測・表示計

ソーラーカー用計測・表示計
三重大・教育
○山本
尚登
三重大・教育学部生
菱田めぐみ
三重大・教育学部生
広瀬
大祐
三重大・教育
松岡
守
1. はじめに
平成 13 年度より技術教育講座電気工学研究室における卒業研究の課題及び研究室の活動として、 DREAM
CUP ソーラーカーレース鈴鹿 (ENJOY クラス:4 時間耐久レース)に出場している。昨年度は日程の都合上
不参加であったので本年で 4 度目の出場である。レースに出場することは、ソーラーカーの製作技術を学ぶだけ
でなく、出場する事で学生の物作りに対する意欲と関心を高め、さらにチームとしての共同作業の重要性を認識
させる効果も狙っている。以上の教育的な効果については、今研究大会で
育的意義
ソーラーカー製作とレース参加の教
として別に報告予定である。
本報告では、本年 8 月 7 日に開催されたレース決勝戦の走行時に取得したデータを示す。また、速度表示には
PIC を用いたデジタル表示システムを製作したのでこれについても報告する。
2. ソーラーカーレースに必要なデータ
ソーラーカーレースにおいて収集することが望まれるデータの種類を表1に示す。これらのデータから、製作
したソーラーカーの特性あるいは動力性能を評価する事ができる。また、レース中にドライバーが車体情報や走
行状況を把握できれば運転に反映でき、より良いレース結果が得られると思われる。あるいは、ピット要員にデ
ータが伝われば、ピット内で検討し、車体情報や走行方法等をドライバーへ連絡・指示することも可能となる。
そして、レース後には今後の車体改造に重要な検討資料が得る事ができる。
表1.
レース時に収集することが望まれるデータ
操作系
駆動系
電力系
車体系
その他
ハンドル操舵角
モーター回転数
太陽電池発電量
車速
位置情報
アクセル踏み込み量
モータートルク
太陽電池パネル温度
車体の傾き
風速
ブレーキ踏み込み量
モーター駆動電流
バッテリー残量
高度
3. データ収集方法
今回のレースでは、モーター駆動電流と後輪車軸回転数の 2 種類を収集した。表2に車体に取り付けた測定器
を示す。
表 2.
測定用機器
モーター駆動電流収集用
後輪車軸回転速度
PC520M ディジタルマルチメーター
電圧データーロガーVR71
クランプオン DC 電流プローブ
(株)三和電気計器
測定間隔
1秒
(株)ティアンドデイ
測定間隔
1秒
モーター駆動電流の測定は、デジタルメータにクランプオン DC 電流プローブを取り付けモーターへ接続され
ている配線へクランプした。後輪車軸回転速度の測定は、回転している後輪車軸のディスクブレーキ用ロータ外
周に圧着するように小型直流モーターを取り付け、回転により発電した電圧を電圧データーロガーへ取り込んだ。
2 台の測定器ともサンプリングタイムは 1 秒間隔であるが、同期はとれていない。
4. 測定データ
図1と図2に測定したデータを示す。図1はモーターの駆動電流である。モーター駆動電流の測定では、レー
ス中 4 時間分の走行データが記録されている。グラフからは、レース 4 時間終了まで約 15 分間隔で16の山が確
認できる。これは、一つの山がコースを一周したことを表す。従って 16 の山は 16 周した事となりレース結果と
一致する。そして 16 の山の形はだいたい同じような形状をしている。また、経過時間の 1:40、2:10、3:35 分ご
ろにモーター駆動電流が 3∼4 分間にわたり 0A のところがある。これは、ドライバー要員が交代した時間を示し
ている。
図2は後輪車軸回転速度から車体速度に換算したグラフである。グラフでは、レース開始時から約 2
時間分が記録されている。これは、使用した電圧データーロガーが 1 秒間隔の測定で 8000 点しか記録できないた
めである。図2の測定されている 2 時間のグラフからも 8 個の山が確認でき形状も似ている。図1の山の時間間
隔ともほぼ一致する。しかし図1と図 2 の山の形は異なる。レースが行われた鈴鹿サーキットは、高低差が激し
いコースであるため登りの状態では駆動電流が多く流れていても車の速度は増加しない。また、下りでは、アク
セルペダルを放した状態のため駆動電流がマイナス(直流モーターが発電している)の方向を示しているが車速
はプラスの方向を示している。
60
電
流
A
40
20
0
-20
0:00
0:30
1:00
1:30
2:00
2:30
3:00
3:30
4:00
4:30
3:00
3:30
4:00
4:30
-40
-60
経過時間 h
図1.モーターの駆動電流
50
時
速
km
/h
40
30
20
10
0
0:00
-10
0:30
1:00
1:30
2:00
2:30
経過時間 h
図2.車体の速度
5. 表示計の製作
あらかじめ後輪車軸の回転速度とディスクブレーキ用ロータ外周に取り付けた直流モーター(図3)の発電電
圧の関係を求め、タイヤ直径を考慮して車体速度に変換してドライバーにデジタル表示で常時視認できるように
した。図4に車体に取り付けたデジタル速度表示計の様子を示す。表示システムには PIC16F877 を用いた。開発
した言語は PICBASIC である。7セグメント LED の表示方法はダイナミック点灯とした。
図3.後輪車軸回転速度測定用モーター
図4.速度表示器の取り付け
6. まとめ
ソーラーカーの決勝レースにおいてモーター駆動電流と車体速度を同時測定した。コースは高低差の激しいコ
ースであり、両者は単純には対応しない。今後両者のデータを比較して効率的な走行法を解析する予定である。
車体速度の測定には後輪車軸に取り付けたディスクブレーキ外周に小型直流モーターを取り付け、その出力
電圧を記録することにした。車体速度については記録の他にドライバーが常時確認できるように、PIC マイコン
を用いたデジタル表示とした。耐久性の観点から、回転モニタを例えば非接触型に変えること、ドライバーへの
限られた表示スペースでより視認しやすい表示方法をくふうするのは今後の課題である。