フランスワイン産地 その歴史風土… 2010.4.10 原 弘之輔

フランスワイン産地 その歴史風土… 1
2010.4.10 原 弘之輔
フランスは「ワイン王国」と言われます 高級ワインの多くがボルドー ブルゴーニュ地方
から生まれてますが フランス全土各地からもいろいろなワインが生み出されてます
「村が違えばワインも違う」それぞれが個性を持ったワイン産地です パリよりも地方へ行っ
てこそフランスらしいワインを多く見ることができます 「パリはフランスではない」「ボルドー
とブルゴーニュはフランスワインではない いまやインターナショナルワインと言われてます」
ボルドーやブルゴーニュにも有名なシャトーや ドメ-ヌが沢山あります
フランス各地のワインを生み出してきた特色のあるワイン産地 それを生み出してきた長い
歴史と風土がその背景には息づいています
わが国では明治から第2次大戦までワインは輸入品 高いもの 古いほどよいといったイ
メージが定着していて,ワインは厄介なもの高いもの難しいものといったイメージがワインを
日本から遠ざけてしまったようです ワインは多種多様違った味わいを知ることでワインの
楽しみがあります 安いからといって悪いものではなく高級ワインと日常ワインとは「それぞ
れ持ち味が違うだけでワインは価格に左右されるものではない」と言われます
フランスを代表するワインの産地 ボルドー ブルゴーニュ シャンパーニュ ロワール川
流域 コートデュローヌ アルザス プロバンス ラングドッグル-ションについて少しふれ
てみました
1 bordeaux ジロンド川流域にぶどう畑が広がってます フランス第2のワイン生産量 20世紀以降
大規模工業化都市化が進みぶどう畑は減少しますがが 品種改良 醸造技術の向上 生産者の努力でこれを乗り越えてきました 1855年パリ万博を機会にメドック地区の「格付けシャトー制」のワイナリーが制定されて
2種以上のぶどうをブレンドしてその比率がシャトー制の特徴といわれます 今日のボルドー
ワインのヒエラルキーが世界的に認められました ボルドーの主要産地はAO C(原産地規
制呼称)で分類されメドック地区は 1-5級まで61のグランクリュ(格付けされたシャトー)
で格付けがされています
赤ワインの最高峰メドックの第1級は「シャトー ラ トゥール」 サンテミリオンは 「シャトー
オーゾンヌ」ソーテルヌは「シャトー ディケム」といった具合です
ボルドーは歴史的に見ると 1153年 ヘンリー2世がイングランド王位を継承してイギリス
に王朝を開いたためボルドーはイギリスの手に落ちます 1453年 英仏百年戦争の最後
の合戦地カスティヨン その英雄のタルボットの名がメドックの「シャトータルボ」に今なお残
っています 当時イギリス人はボルドー産赤ワイン「クラレット」を輸入普及させて 18世紀にはボルドー
市は繁栄の頂点にたち経済発展します 都市化も進み フランスワイン産業の中心となり
ボルドー港はワインの輸出基地として繁栄 この時期ワインは従来の「樽詰めから瓶詰め」
され コルク栓の開発で長期保存も可能になりました
chateau graves rouge
1000
chateau petrus 1944 メルロー 100000
2 bourgogne 2
パリから南へ150キロ ドイツとフランスのベルトゾーンにある 大陸性気候 平均気温10度「赤ワインの王国」といわれます
特有の文化圏を持っていてシャブリや ボージョレーが有名 ボルドーのようなシャトー制
はないが「ドメーヌ(一貫しておこなう生産者の自家栽培 醸造 瓶詰)」がその特徴 ひと
つの畑が生産者ごとの小さな区画に分かれています ワインの主流は「単一品種」が多く ピノノワールの赤 シャルドネの白が有名 「地方名
地区名 村名 畑名と表示されているのが上級ワイン」の印とされる ボージョレー ボージョ
レーヴィラージュ 特級のクリュボージョレー(村名表示)など ボージョレーヌーボーとは
「マセラシオンカルボニック」という醸造法により早く出荷できるようにしたものをいいます
ここでのワインはシャブリのヨンヌ県 コートドール コートシャロネーズ マコネ ボージョレーと5地区に分類 歴史的にはパリの都市化産業化によってシャブリ周辺の産
地も変化 少量生産の高級ワインからパリで働く労働者向け安いワインへと変化していきま
す 急斜面の栽培地を離れて肥沃な土壌を開墾してぶどう品種を植樹して 労働者向けの安い赤ワインが南仏からパリへと大量に流入していきます
ヨンヌ県もこの競争に負けてパリから撤退 19世紀末にはぶどう畑も壊滅状態して 果樹
や穀物の耕作地に転売された時です 18世紀コンティ王子が取得し自分の名を付した赤の極上品 cote de nuit の
ヴォーヌロマネ村 の小さな畑で年間6千本生産の romanee conti ピノノワールは40万円
もします 1973年から「ドメーヌ ド ラ ロマネ コンティ」として法人組織になって経営さ
れています bourgogne rouge ピンノノワール 1000 romanee conti 400000 beaujoleis ガメイ1000 chablis シャルドネ2000
3 cotes du rhone
北はリヨンから南はアヴィニヨンまで200㌔フランス2大河川のひとつローヌ河 スイスア
ルプスに源流を持つローヌ河に沿って広がる南仏赤ワインの主要産地で高級赤ワインを
産出しています ボルドーに次ぐフランス第2のAO C ワインを出荷AOCワ制度発祥の地
でもある ぶどう畑が小さく 「単一オーナー 同一ファミリー」が多い ボージョレーと同様
に庶民のワインから近年は栽培者と醸造家の品質改良にかけた熱意と努力で
今ではトップクラスの赤ワインを産出しています ローヌ河はコートデュローヌ地方のワイ
ンの発展に貢献して来ました 傾斜地には真夏に強い日射しが照り付ける独特の地理的
条件が個性的なワインを多く生み出して来たワイン産地です
cotes du rhone グルナッシュ赤1000 vincent rochette グルナッシュ白1000
(参考)
① A О C 最高級ランクワイン 原産地 品種 栽培法 醸造法の基準をクリアした上に専門家の
利き酒テストに合格したもの 原産地呼称国立研究所の検査で400ほどの生産地が
ある
② A 0 U DQS A〇C基準よりややゆるいランク
③ V IN DE P AY S 生産地限定で産地名をワインの名称に表示可 フランス産テーブルワイン(地酒)
④ V IN DE TA BLE
Eu内で原産地 国の異なるワインをブレンドできる 品種名 収穫年表示ができない
3
4 A L SAC E
フランスの北端ライン河沿いのアルザス地方はワイン産地で言うとドイツと地続きです
ドイツの支配下にあったためドイツ系のぶどうを栽培してるのが特徴 辛口白ワインの産
地 「ぶどう品種表示」システムをとっているので ぶどうの品種名を知ることが必要 例え
ばリースリング(ドイツの高貴種ぶどう) アルザスは第二次世界大戦まで仏独の間で揺れ
動いたワイン産地 普仏戦争の結果ドイツ領になり第一次大戦後はフランスに併合され
第二次大戦が始まると ドイツに占領され戦後フランスに再統合されてワイン産地も最大
の受難を受けたところ アルザスの素晴らしい山麗とワインの里 ワイン街道100キロの道
程にはワイン村が100ほどあり おいしいワインを作り続けて何百年も変化していない村と
そこに住む人の息づかいがアルザスにはあります
alsace riesling brandluft リースリング1000
5 CHA MPAGNE
パリの北東150㌔中心都市はランス ここにシャンパンメゾンの本社が集中しています
13世紀ー19世紀までノートルダム大聖堂で25人の歴代国王の戴冠式があったところ
ステンドグラスには47年修道院に勤めたドンぺリニヨンが描かれてます
1860年シャンパンの「BR UТ」をだしたポメリー社のカーブは18㌔ モエシャンドンのカー
ブは28キロ 室温11.2度をキープぶどう畑の格付け(クリュ)を「ボルドーはシャトー」
「ブルゴーニュはクリマ(畑)」毎に 「シャンパーニュは村単位」で評価がされています
グランクリュ プルミエクリュといった具合です 発泡性ワインのシャンパンを名乗れるのはシャンパーニュ地方の法律で指定の地区内で
生産されたぶどうを使って瓶内醗酵されたものに限定されてます 他で作られたものは「ヴァ
ンムスー」といわれます ワインはぶどうの果汁を醗酵させて果汁の糖分が酵母菌の働きで
炭酸ガスとアルコールに分解され出来上がりますが ワイン作りではこの炭酸ガスは仕込
み途中で発散するためこれを瓶に閉じ込めることでワインは発泡性になります シャンパン
は収穫年度の異なるワイン赤と白ワイン 異なる村のワイン これらをブレンドした技術とい
われてます
6 VAL D E L О IRE
全長1000㌔フランス最長の大河ロワール渓谷沿いには多くの城館があり「フランスの庭」
フランス国家発祥の地とも言われてます1453年百年戦争で敗北したイギリスがフランス
から撤退後この城館建設が始まります のちにルネッサンス様式のエレガント優美な城館
が多く作られロワール宮廷文化が開花していきます
ロワール渓谷最大で 建設に150年かけた「シャンポール城」は440の部屋があり壮大
又ルネッサンスの香り高い「シュノンソー城」は16世紀ー19世紀にかけての城主がすべて
女性で「6人の奥方の城」ともいわれています最上流には温泉ヴィシー 三ツ星レストランのトロワグロもあります ロワールには甘口白ワイン ライト感覚のロワール
ワインが人気でミュスカデ種辛口白も最近人気を呼んでいます
rose danjou1000 muscadet sevre et maine surlie ムスカデ1000
(参考)
① フランスワイン品種 白 シャルドネ ソーヴィ二ヨン リースリング シュナンブラン セミヨン ミュスカデ ピノグリ
② 赤 カベルネソーヴィ二ヨン メルロー ピノノワール シラー ガメイ グルナッシュ カベルネフラン
4(完)
7 LAN GUEDОC EТ R О USSI LLОN
東はローヌ河河口から西はスペイン国境まで100㌔にわたる地域 フランス第一の温暖地帯 日照りも長くぶどうの成長も早い 地中海沿岸から丘陵地帯に
広大な産地が広がっています フランス第1のワイン生産地 日常消費用の赤ワインの大
量供給源となっています
ヴァンドターブル (日常消費ワイン)ヴァンドペイ(上級の地酒)では全フランスの60㌫を
占めています かっては安ワインの代名詞で労働者向けの安価な赤ワインの生産地で そのライバルもカリフォルニア チリ アルゼンチンであった 今ではボルドー ブルゴー
ニュに次ぐワインの有数の生産地になっています
AOC VDQSワインはぶどう品種に規制があるために新しい品種を使って新しいワイン作
りに挑戦する場合は「ヴァンドペイ」ランクになる ワイン栽培地としてエキサイテングなワイ
ン産地として期待されています domain de gourgazaud chardonny シャルドネ1000 hospitalet collectionl カベルネソーヴィにヨン1000
8 P RО V ENCE フランスワインの起源 最古のぶどう栽培地といわれています 南仏南斜面は日当たりが
よく ここで取れたワインは「瓶詰めされた太陽」といわれる 東はコートダジュール ニース
カンヌ サントロぺ 西はマルセイユ エクスアンプロバンス サロンドプロバンス アルル
と広がっています ここコートドプロバンスはフランス最大のロゼワインの産地です
最近は東のロゼワインから西の赤ワイン中心へ移行しているようです
カンヌのムージャンは三ツ星レストラン「ムーランドムージャン」がありカンヌ映画祭には
参加者たちで賑わいます 歴史的には15世紀ブドウ栽培王プロバンス伯が百年戦争で
疲弊したプロバンスにブドウ栽培を進めミュスカ種をこの地に導入しました イギリス国王ヘンリー2世の妻エレノオールドプロバンスのおかげで19世紀ワイン生産は
大きく成長しました
ニースから180㌔地中海の島コルシカは元ジェノヴァ共和国から1768年フランス領に
なったがワインはイタリー系の品種が多く使われています