今、求められるケア会議は 組織横断的・ 事例検討会である 今 こ

中
日本福祉大学研究フェロー、精神科医
■
「 会議 」がなければ
何事も動かない
て、情報交換し役割分担するため
相互関係が深化
同じ時間と空間
臨床会議(Clinical Meeting)=一般に「ケア会議」
対人サービスの対象者に関する会議
異なった考え方
独創的な発想が
生まれる
意思決定の迅速さ
■
に開催されている。実質的に有効に
ケア会議を運営するためには、ネッ
を定めるために、改めてケア会議の
機能しているものと、主に監査のため
トワークやコーディネーターが必要で
本質を論じておきたい。
の形式的なものがある。良くも悪くもあ
ある。以前は保健所や保健センター
まり変わらないまま継続している。病
が核となった。最近では社会福祉協
院は機関中心で病理中心の機能分
議会、地域包括支援センターなどが
医療保健福祉の領域における会
担がはっきりしているので、よほどの事
呼びかけることもある。地域の強みや
議は大きく二つの機能が求められる。
■
医療・福祉領域の
会議に 2 つの機能
「管理会議 」と「臨床会議 」
「 形だけ 」に
ならないためには ?
所属機関中心から
地域中心の動きへ
例でないともめないし、会議の必要性
弱み、歴史や事情によって実に様々
一つは組織や機関の運営のために
も少ないかもしれない。
である。
設定される管理会議( Management
アマネジメントという手法を用いて、複
本論で課題となる会議は、組織を
しかし、わが国の医療保健福祉サ
M e e t i n g )であり、いわゆるモノ、カ
越えて、地域の中で、本人中心の生
ービスが病院や入所施設中心から地
ネ、ヒトを管理する。もう一つは、サー
国が現場の会議のあり方に口を出
活モデルに基づき、多職種が参加し
域ケア中心の構造に大転換するので
ビス利用者を主題にして、最終的に
数の機関の多様な専門職と連携しよ
し始めたのは、1987 年の「 高齢者サ
て行うものであり、いわば「 組織横断
あれば、この「 組織横断的・多職種
はサービスの質を修正するために設
うとするならば、なおさら会議がなけ
ービス総合調整推進会議及び高齢
的・多職種参加型の生活モデル事
参加型の生活モデル事例検討会 」
け ら れ る 臨 床 会 議( C l i n i c a l
れば動かないはずである。
者サービス調整チーム設置運営要
例検討会 」である。誰に命令権があ
を実践可能なものにする工夫を避け
M e e t i n g )である( 図 1 )。
わが国の介護保険制度では、行
綱 」という局長通知からであろう。実
るわけでもないので、互いが有用に感
ることはできない。
政主導でケアマネジメント活動が導入
際には保健所単位で年に1~2 回の
じるかどうかで開催が決まる。会議費
今のところ、会議の構成員の多く
活モデル事例検討会 」は、地域ケア
された。当初は会議の必要性が説か
形式的な会が開催されて、いつの間
や交通費の予算がつくのはごくわず
が病院や施設に所属している。所属
における臨床会議を意味する。会議
れなかったために、ほとんど会議が実
にか消えていった。似たような地域会
かな機会でしかない。
機関中心の動き方をしながら、利用
の目的に沿って、見立てなのか手立
践されなかった。後に会議を開かな
議の指示はほぼすべて形式的なもの
高齢者をめぐって個別の会議や調
者中心の立場に、果たして立てるの
てなのか、ネットワーク形成のためかス
いと報酬が減算されると定められてか
に終わっている。介護保険制度では
整会議もあろうが、障害者をめぐる会
であろうか?それでも過渡的なわが国
タッフ教育のためか、地域課題の発
ら、形だけでも開催されるようになっ
報酬で支配されるため、無視するわ
議も、虐待や自殺未遂者に対するも
では、介護保険関連機関、障害者
見のためか意見調整のためか、それ
た。
けにもいかない。しかし、どこの世界
の、
さらに生活困窮者に対する会議も
相談支援機関、訪問看護、診療所
ぞれの運営で強調点が変わってくる。
であっても、会議の仕方は現場の組
これから予定されている。各地域の
など、地域中心に動こうとする構成員
サービス利用者とその家族が会議に
臨床的必要性よりも行政指導によっ
織が独自に決めて運営するもので、
現場で柔軟に読み替えて運営しなけ
も増えている。地域ケア体制への移
参加するかどうかについても、そのメ
て行動を決めがちである。その結果、
法で定めようというのに無理がある。
れば、行政ご指定の会議開催に追わ
行に関することこそ、助言体制や予
リットとデメリットを勘案して、柔軟に計
さまざまな会議が上位下達で定めら
病院や入所施設では、管理会議
れてサービス提供のゆとりがないとい
算措置を整備すべき点であろう。
画すればよい。少なくとも、専門家チ
れて、義務的な会議に追われてしまう
のほかに、複数の臨床会議が定期的
とか営業戦略のために、関係者が会
議を設定するのは当たり前である。ケ
月刊ケアマネジメント 2013.3
モノ・カネ・ヒトを管理する
→ 組織の質を改善する
管理者で構成される
始末である。これから向かうべき方向
医療保健福祉の専門職が集まっ
でも、例えば新しい自動車を開発する
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扌
組織や機関を運営するための会議
八幡批芦史著:
『ミーティング・マネージメント』生産性本部、1998
せないはずである。一般の産業現場
1951年生まれ。弘前大学医学部卒。
精神科医。1988年より埼玉県立精
神保健総合センターで、精神障害者の
社会復帰や地域精神保健にかかわる。
2001年より日本福祉大学社会福祉学
部教授。日本ケアマネジメント学会理
事。 著書に、『 ケアマネジメント実践
のコツ 』
『 図説ケアチーム 』
『 ケア会議
で学ぶ精神保健ケアマネジメント 』
『心
の病 回復への道 』他多数
管理会議(Management Meeting)
目的によって、 見立てや手立て、 人材養成など
→ サービスの質を改善する
現場の技術者で構成される
に、会議を開くことはその活動に欠か
のなか たけし
当事者意識と参画意欲が
生まれる
扌
今、求められるケア会議は
組織横断的・�������
多������
職種参加型の
事例検討会である
図 2 会議の特徴(メリット)を生かそう
扌
野中 猛
今こそ本質から考えよう
図 1 対人サービス組織に必要な会議
特 別 寄 稿
介護支援専門員の多くは、いわば
う、本末転倒な状態となろう。
「組織横断的・多職種参加型の生
ームの見立てや手立ての方針が一
月刊ケアマネジメント 2013.3
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