1 - 東京都ノルディック・ウォーク連盟

第4回 東京都ノルディック・ウォーク連盟 指導部会定例勉強会
ポールを使った有酸素性運動・レジスタンス運動
柔軟性運動・バランス運動
全日本ノルディック・ウォーク連盟 指導部技術委員 関東ブロック長
アメリカスポーツ医学会 ヘルスフィットネススペシャリスト
日本体力医学会 健康科学アドバイザー
健康・体力づくり事業財団 健康運動実践指導者
芝 田 竜 文
●有酸素性運動 (エアロビック運動/エアロビクス)とは?
米軍軍医の、ケネス・H・クーパー(Kenneth H. Cooper)が心肺機能を改善させる
運動プログラムを開発、これを "AEROBICS" と名づけて1967年に発表した。
このプログラムでは12分間走(クーパーテスト)により評価した体力区分と年齢をもとに
各自に合った運動を実施する。これが日本では「有酸素運動」と訳された。
酸素を取り入れながら、軽~中程度の強度で心拍数や酸素摂取量を一定に保ちながら
大筋群を反復して長時間(10分以上)続ける運動
有酸素性エネルギー供給が優先的に使われる。※クエン酸回路(TCA)・電子伝達系
そのため、呼吸循環機能が促進し、取り込んだ酸素によって多量に糖や脂質などの
エネルギー基質を消費するため、高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)、肥満などの
生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防・改善に貢献する。
(例、ノルディックウォークほかウォーキング~マラソン、自転車、水泳など)
機器を用いない有酸素性運動の指導上の留意点
1、一般に、初期段階では、個人で運動強度のコントロールが容易なウォーキングや自転車
のような単一の運動を実施するが、継続するにつれ退屈による継続意欲の低下、使用頻度
の高い筋のオーバーユースによる傷害、筋の使用頻度の違いによる筋バランスの悪化など
をおこすことがある。
これらをカバーする※クロストレーニングを上手く組むことで、有酸素性運動の継続効果を
保ちながらプログラムのリフレッシュを図る。
※クロストレーニング ― 運動様式の異なる運動種目を複数行うことで、偏った筋のトレーニングを避けたり
組み合わせによって、より良い効果をもたらす方法
2、ウォーキングやジョギングは一人で実施できるため、運動強度をコントロールしやすい利点
があるが、それだけに安易に実施しやすく、体調によって事故を起こすことがある。
体調チェックについて十分な指導が必要である。
3、水泳やノルディックウォークは実施経験がある場合でも、スキルの低下やペースにより運動
強度が高くなるため、選択には注意と助言が必要である。
プログラム開始前に技術を確認し、必要があればスキルを再学習する機会を設ける
4、屋外環境で行う運動は、天候、場所(道路の安全性、起伏、交通量、コース)、
時間(明るさ、暗さ、暑さ、寒さ)等について事前の調査を十分に行い、
個人に合ったコース設定の目安をアドバイスする。
5、エアロビックダンスやアクアビクスでは、年齢、体力、身体状況など多様な方が参加するため、
各人が至適運動強度で運動できるように、また、症状や障害を悪化させないために、健康運動
を指導する者は、あらかじめ強度のコントロール方法や適正姿勢、動作、呼吸法などを習得
させる時間を用意し、セルフコントロール(自己管理)を促す。
6、複合運動(スポーツなど)については、ハイリスク者、低体力者、自覚症状のある人は注意して
行う。また競争場面を少なくし、運動強度が高くなりすぎないよう促す。
7、整形外科的な障害をもつ人や肥満者の場合、インパクトの高い運動や長時間の運動を避け、
低インパクトの種目を断続的あるいはインターバル形式で行う。
あるいは水中運動を行うなどの選択をする。
●レジスタンス運動とは?
筋力や筋持久力、筋量の増大を目的として、筋に負荷抵抗を与える運動である。
対象者もアスリート、高齢者、運動療法者など幅広くなっており、近年では転倒、
寝たきり予防や機能改善(ADLの維持・向上)、フィットネス、生活習慣やメタボ
リックシンドロームの予防改善、心臓リハビリなど多岐にわたる目的で行われて
いる。
負荷方法についても自体重、パートナーによる抵抗、ゴムバンドやチューブなど
ダンベル、マシンなどがある。
そのため負荷、つまり筋に抵抗をかける運動を総称して
レジスタンス運動(resistance : 抵抗)というようになった。
※適正姿勢で隊幹部を保持し、適正な動作で実施することで、日常生活動作や
運動機能を向上させることができる。
※適正姿勢 ― ①腰幅に足を開く ②横から見て耳、肩、腰、膝、外くるぶしが一直線に
なるように立つ ③両手はもも横に揃える ④肩を挙げ、後ろに引いてストンと落とす
⑤顎を軽く引き頭の上から糸で引かれているように身体の縦軸をまっすぐに保つ
●無酸素性運動/アネロビック運動/アネロビクス
酸素を利用しないで、高負荷の強度で短時間で激しく単発的に行う運動
※エネルギー供給はATP-CP系・解糖系
(例)、ウエイトトレーニング、短距離走、高跳び、砲丸投げなど)
推奨するレジスタンス運動実施手順のための負荷強度と反復回数の関係
負荷強度
(%MAX)
反復回数
100% 95%
1
2
90%
85%
80%
75%
70%
65%
60%
55%
50%
4
6
8
10
12
14
16
18
20
可
より高い筋力刺激
より高い傷害危険性
推 奨
高い筋力刺激
低い傷害危険性
可
より低い筋力刺激
より低い傷害危険性
(Wayane LW,Thomas RB シニアのための筋力トレーニング―安全で効果的な運動指導ガイド、小室史恵、高田和子(訳)NAP出版2001より)
一般的な筋力・筋持久力のためのガイドラインは
負荷強度が最大筋力の70-80%(8~12RM)である。
初期プログラムとしては低負荷強度60-70%(14~16RM)が推奨される。
高負荷強度(80-90%)は健康な競技志向などの上級者向きである。
目的に応じた負荷強度、反復回数
1、最大筋力
90~100%強度(概ね3~1RM)、1~3回、3~5セット、セット間の休息3分以上
2、筋力・筋肥大
75~85%強度(12~6RM)、6~12回、3~5セット、セット間の休息1分以内
3、筋持久力
30~60%強度(50~20RM)、20~50回、2~3セット、セット間の休息1~2分
4、筋パワー・スピード
30~60%強度(50~20RM)、任意の回数、2~3セット、セット間の休息3分程度
柔軟性運動とは?
柔軟性の向上を目的とした運動で、柔軟性を向上するということは、
一般に関節の可能性(関節可動域)を広げるための運動のことをいう。
関節可動域は、関節を構成する骨の構造と関節にまたがる軟部組織
(筋組織、腱組織、結合組織、靭帯など)の伸展性によって決まる。
骨の構造は変えることができないが、軟部組織の伸展性はストレッチング
で高めることが可能である。
ただし、靭帯が伸ばされるとむしろ関節が不安定になり、傷害を生じやすく
なるので、関節可動域を広げるためには筋や腱をゆっくり伸張することが
必要である。
筋や腱組織が硬いと関節の可動域が制限され、身体を大きく動かすことが
出来ない上、傷害発生の原因にもなる。
例1:ハムストリングの柔軟性低下→肉離れを起こしやすい
例2:腰背部の柔軟性低下→腰痛につながる
ストレッチングとは?
「伸ばす、引っ張る」ことを意味するStretchの動名詞で、
一般的には、関節を屈曲したり伸展させたりして、意識的に「筋や腱を伸ばす」
運動のことを指す。
身体活動・スポーツ前後の準備運動や整理体操として、
また、種々の関節可動域(range of motion,ROM)を広げる柔軟体操として
広く普及している。
静的ストレッチング(スタティックストレッチング)
反動をつけずにゆっくりと筋や腱を伸張していき、伸張した状態でしばらく維持
する方法
動的ストレッチング(ダイナミックストレッチング)
ストレッチ姿勢の保持をせず、動きながら筋や腱を伸張させる方法
この中には、はずみや反動をつけて瞬間的に強く筋をストレッチするバリスティ
ックストレッチング(伸張反射を誘発して筋や結合組織、腱などの損傷を招く
危険があることから一般の人が健康づくりとして行う場合には勧められない)
も含まれる。
バランス運動とは?
静止姿勢および動的動作中の運動制御能力を高めるためのトレーニングの一つ。
平衡感覚や身体調整といった体幹姿勢や手足の繊細な動きと、スムーズで巧みな
全身の動きの調整を行い、神経伝達や筋収縮がタイミングよく、うまく連動しながら
それをコントロールする能力を高めるための運動である。
運動制御能力を高めるトレーニングは、特に転倒のリスクが増した高齢者で
運動プログラムの一環として推奨される。
運動制御能力を高めるトレーニングにはバランスと敏捷性を含む運動であり、
高齢者の体力向上と転倒予防のためのl包括的な運動ブログラムの一環とし
て推奨される。
主に身体の奥の筋肉(体幹深部のインナーマッスル)を鍛えることも、身体の
姿勢維持やバランスを保つうえで重要であると考えられる。
バランス運動を行う際のポイント!
1、立って行う運動は、安全を第一に考え、ふらついても大丈夫な壁際などで行う
2、膝や腰に痛みがある場合は、無理して行わないようにする
3、レジスタンス運動や柔軟性運動とあわせて行うことで、転びにくい身体、転んで
も大丈夫な身体づくりに効果的です。
実際の現場で皆さんは、どんな運動種目を実践していますか?
みなさんで安全で効果的、かつ楽しく実施できる運動のバリエーション、
指導法を共有しましょう!