課 題 名 発表者氏名 担 当 教 諭 希 薄 溶 液 の pH に 及 ぼ す 大 気 の 影 響 に つ い て 岡本 鈴木 暁 長寿 粕谷 祐樹 1.目 的 希 薄 溶 液 で は 大 気 雰 囲 気 中 で 測 定 し た pH を も と に 電 離 定 数 な ど を 計 算 す る と 、 そ の 値 が 理 論 値 と 大 き な 差 が で る こ と が あ る 。 私 た ち は こ の pH の 変 化 を も た ら す 原 因 が 大 気 中 の成分にあると考え、どのような物質がどのくらい影響するかを調べ考察した。 2.方 法 ( 1 ) 大 気 雰 囲 気 中 で 超 純 水 の pH の 変 化 を 調 べた。 ( 2 ) 0.1,0.01,0.001 mol/L の 酢 酸 水 溶 液 の pH の変化を調べた。 ( 3 ) 0.1,0.01,0.001 mol/L の 酢 酸 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 の pH の 変 化 を 調 べ た 。 ( 4 ) 0.1,0.01,0.001 mol/L の ア ン モ ニ ア 水 溶 液 の pH の 変 化 を 調 べ た 。 ( 5 ) 0.1,0.01,0.001 mol/L の 塩 化 ア ン モ ニ ウ ム 水 溶 液 の pH の 変 化 を 調 べ た 。 (6) 上 記 と 同 様に 、 窒素 雰 囲 気中 で 超純 水 、 0.001mol/L 酢 酸 ナ ト リ ウ ム 、 0.001mo/L 図 1 窒素雰囲気中での測定 塩 化 ア ン モ ニ ウ ム 水 溶 液 の pH の 変 化 の 測 定 も 行 っ た 。 3.結 果 9 9 8 8 超純水 大気中 酢酸Na 0.01 7 7 酢酸Na 0.001 6 6 酢酸 0.1 pH pH 酢酸Na 0.1 超純水 窒素雰囲気中 5 酢酸 0.01 5 酢酸 0.001 4 4 0 10 20 時間[min] 30 3 2 0 図 2 水 の pH の 変 化 10 20 30 時間[min] 図 図 3 酢 酸 ・ 酢 酸 ナトリウム水 溶 液 の pH の 変 化 ・ 図 2 の よ う に 、 大 気 雰 囲 気 と 窒 素 雰 囲 気 で は 超 純 水 の pH に 変 化 が 見 ら れ 、 窒 素 雰 囲 気 で は pH 約 6.5 で 安 定 し 、 大 気 雰 囲 気 で は pH 約 5.6 で 安 定 し た 。 ・ 酢 酸 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 で は 、 溶 液 の 濃 度 が 低 い ほ ど pH の 変 化 が 大 き く 見 ら れ た 。 ・ 酢 酸 水 溶 液 で は 、 ど の 濃 度 で も pH の 変 化 は あ ま り 見 ら れ な か っ た 。 表1 大気雰囲気における測定結果および計算結果(大気雰囲気 32.0℃) 酢酸 [CH3COOH]= 溶液濃度[mol/L] pH 0.1 2.68 0.1029 Kh - mol/L Ka 4.242E-05 [CH3COONa]= 0.09532 mol/L 酢酸ナトリウム 溶液濃度[mol/L] pH Kh Ka 0.1 8.04 1.261E-11 7.928E-04 0.01 6.20 2.635E-14 3.795E-01 0.001 6.07 1.448E-13 6.905E-02 表2 窒素雰囲気における測定結果および計算結果(窒素雰囲気 26.5℃) Kw(26.5℃)= 1.118E-14 酢酸 [CH3COOH]= 0.1029 mol/L 溶液濃度[mol/L] pH Kh Ka pKa 0.1 2.78 - 2.677E-05 4.57 理論値(25℃,イオン強度0.1) 2.754E-05 4.56 [CH3COONa]= 0.09532 mol/L 酢酸ナトリウム 溶液濃度[mol/L] pH Kh Ka 0.001 7.80 4.177E-10 2.677E-05 ・表 1 のように 大気雰囲気で酢酸及び 酢酸ナトリウム水溶液 の pH か ら 算 出 し た 加 水分解定数、電離定数 の値はすべてばらばら で一定の値にはならな かった。 ・窒素雰囲気で酢酸及 び酢酸ナトリウム水溶 液 の pH か ら 算 出 し た 電離定数の値は理論値 とほぼ一致した。 pKa 4.57 4.考 察 ・ 大 気 雰 囲 気 中 で は 、 炭 酸 ガ ス が 水 溶 液 中 に と け 込 ん で 電 離 し 、 pH 約 5.6 で 平 衡 状 態 に な る と い わ れ て い る た め 、 pH が 約 5.6 で 安 定 し た と 考 え ら れ る 。 ・ 酢 酸 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 の 濃 度 が 低 い ほ う が よ り 影 響 を 受 け た の は 、酢 酸 ナ ト リ ウ ム が 電離して生じる酢酸イオンの加水分解により生じる水素イオンの濃度よりも炭酸ガ ス が 溶 け 込 む こ と に よ り 存 在 す る 水 素 イ オ ン の 量 が 多 い 状 態 に な っ て い る た め 、加 水 分解しにくい状況になったからだと考えられる。 ・ 大 気 雰 囲 気 中 で の 酢 酸 、酢 酸 ナ ト リ ウ ム の 電 離 定 数 、加 水 分 解 定 数 の 値 が 一 致 し な か っ た に も か か わ ら ず 、窒 素 雰 囲 気 で そ の 値 が ほ ぼ 一 致 し た こ と か ら や は り 大 気 中 の 炭 酸ガスの影響が主原因であると考えられる。 ・ 窒 素 雰 囲 気 で は じ め に pH が 少 し 下 が っ て か ら 安 定 し た と い う 現 象 が す べ て の 溶 液 に 見られた。これについては、炭酸ガスではない何か他の原因があると考えられる。 5.今後の課題 ・ 窒素雰囲気中での測定にもかかわらず塩化アンモニウムの測定値と理論値との間に比 較的大きな差があったのは、炭酸ガスによる影響ではない他の原因があると考えられ るので、その原因を追求する。 6.参考文献 化学便覧 改訂 3 版 基礎編Ⅱ 丸善
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