流通BMS特集|流通BMSとは(概要)

流通BMS特集|流通BMSとは(概要)
1-1. 流通BMSとは
流通BMSとは流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standards)の略称で、流通業に携わる企業が統一的に利用でき
る、EDIの新たな取り決めです。
経済産業省が中心となり、業界団体や大手GMSと協調して仕様を検討し、2007年にはスーパー業界で初めて流通BMSを導入しま
した。 流通BMSの大きな特徴は、次の2点です。
1.インターネットの利用
流通BMSは通信手段としてインターネットを採用しています。通常の電話回線を用いる従来のJCA手順に比べてインターネット回
線は圧倒的に高速なため、通信にかかる時間が大幅に短縮します。低額で月額固定料金のサービスも多く、通信コストの削減に
つながります。
2.メッセージの標準化(統一)
流通BMSでは、どのような取引にも汎用的に使用できるよう、メッセージを標準化しています。流通業全体で取り扱うメッセージを
統一することで、取引先別に行なっていたシステム開発を削減できます。データ形式(フォーマット)にはXMLを採用し、将来用途が
拡大した場合でも容易に項目を追加できるなど、柔軟性の高さもメリットです。
1-2.従来型EDIの課題
現在主流のJCA手順は今から30年以上前の1980年に制定されました。高性能パソコンやインターネットのような高速通信網もない
時代であり、今日の流通サプライチェーンを担うには技術的にも古く、課題も少なくありません。
<老朽化した通信基盤>
JCA手順の通信速度は2400bpsまたは9600bpsで、インターネットの通信速度に比べると理論上数百分の一と非常に低速な仕様で
す。企業によっては発注データの送受信に1時間以上かかることもままあります。
また専用の通信機器(モデム)が必要であり、故障の際の修理や買い替えがしにくい状況です。
<データの制限>
JCA手順では1件のデータは256byte(256文字)と規定され、漢字が扱えないため、受発注データには最小限の情報しか盛り込め
ません。加えて、データ形式や項目は小売店が各々自由に定めており、卸・メーカー側では自社システムへの連携を個別に開発し
なければならず、開発費用の負担も問題です。
またデータが構造化していないため項目の追加や変更を容易に行えず、受発注業務に制約がありました。
1-3.流通BMSの特徴
前述の課題を解決するために生まれた流通BMS。その特徴である「インターネットの利用」と「メッセージの標準化(統一)」につい
て、掘り下げてご説明します。
1.インターネットの利用
流通BMSでは、ADSLや光ファイバーといったインターネット回線を利用します。従来型EDIの場合には、JCA・全銀・全銀TCP/IPと
いった通信プロトコル、さらには公衆回線・ISDN回線と多様な通信回線があり、すべての通信手段に対応し、なおかつ複数同時接
続のために電話回線を何本も敷設しなければなりませんでしたが、流通BMSの場合はインターネット回線に集約できます。
2.メッセージの標準化(統一)
メッセージの標準化は、業務の標準化ともいえます。EDI導入の際は、どの業務を対象とするか、やり取りするデータの仕様をどう
するかといった取り決めを小売店と卸・メーカーの双方で行う必要がありますが、こうした取り決めを複数の小売店と複数の卸・
メーカー間で個々に行うことは極めて非効率です。
同一業界であれば日々行う取引もほぼ同様であるため、メッセージの標準化は業界全体の業務効率改善につながり、後述の通
り、EDI開始までの期間短縮や、システム開発費用削減などの効果ももたらしています。
1-4.流通BMSの普及状況
財団法人流通システム開発センター と流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会) の調査によると、2012年1月時点での
卸・メーカーにおける流通BMSの導入企業数は3,900社に上るそうです。また小売店でも90社以上で流通BMSが導入されていま
す。
2012年には、イオングループ各社が流通BMSへ完全移行することも発表しており、小売店・卸・メーカーの双方で、今後より一層流
通BMSの導入が進むでしょう。
<小売店における流通BMS導入状況>
導入済み
導入予定
業態
合計
企業数
主な企業
企業数
主な企業
イオンリテール、イオン北海
道、イオン九州、イオン琉
球、マックスバリュ各社、ベイ
シア、マルエツ、ハローズ、
丸久、近商ストア、平和堂、
シジシージャパン、成城石
井、サンライフ、ダイエー、泉
スーパー
102
谷、オークワ、イトーヨーカ
堂、西友、イズミヤ、バロー、
アークス、主婦の店赤穂店、
13
いなげや、サミット、タイ
ヨー、ユニー、ヤオコー、ヤ
オハン、東急ストア、サンプ
エコス、カスミ、マルエー、ヒ
バリヤ、義津屋、三和スト
115
アー、フレスタ
ラザ、フジ、ライフコーポレー
ション、サンエー、西鉄スト
ア、Aコープ九州、エフコ、み
しまや
8
小田急百貨店、丸井、高島
屋、そごう・西武
2
井筒屋、コレット井筒屋
10
ドラッグストア
8
ユタカファーマシー、タキヤ、
岩崎宏健堂、薬王堂、マツモ
トキヨシホールディングス、
中部薬品
3
クスリのマルエ、ウェルパー
ク、ミック・ジャパン
11
ホームセンター
4
LIXILビバ、コメリ、カインズ、
サンデー
0
-
4
生協事業連合
4
東海コープ事業連合、コープ
きんき事業連合、コープ九州
事業連合
0
-
4
倉庫型会員スト
ア
0
-
1
コストコホールセールジャパ
ン
1
ボランタリー
チェーン本部
1
全日本食品
0
-
1
ディスカウント
ストア
0
-
1
ミスターマックス
1
合計
127
百貨店
※流通BMS協議会の公開情報(2013年12月1日現在)を元に作成
20
147
1-5. 流通BMSの導入メリット
流通BMSを導入してどんなメリットがあるのかは、導入を検討する際に最も気になる点でしょう。先行して流通BMSを導入した卸・
メーカーでは、実際に次のような導入効果が得られています。今後、流通BMS対応企業が増えるほど、小売店、卸・メーカー双方で
導入効果が一層高まるでしょう。
1.通信時間の短縮とコスト削減効果
流通BMSの共同実証では、流通BMSはJCA手順と比較して通信時間を90%以上削減できることが確認されました。通信時間の短
縮は単に通信費用の削減につながるばかりではなく、出荷・検品業務の開始が早められることを意味します。
・ 発注データの受信に日々40分程度要していたが、1~2分程度に短縮できた
・ 従来に比べ、1時間半早く出荷業務に入れるようになった
・ JCA手順用の固定電話回線を縮小できた
・ 出荷までのリードタイムが伸びて余剰時間が確保できることで、ピッキングにかかる作業を平準化できた
2.取引先別対応負荷の軽減
メッセージの標準化(統一)により小売店ごとの個別仕様は少なくなるため、卸・メーカーにおけるシステム改修コストは削減できま
す。また流通BMSという共通仕様に基づくため、新規小売店の追加の際も最小限の仕様確認を行うだけで済み、対応期間が早ま
る効果も現れています。小売店は、導入にあたっての前提事項をまとめた「流通BMS協定シート」や、現行EDIで使用しているメッ
セージとの比較をまとめた「マッピングシート」などの資料も提供しており、打合せ作業を軽減する取り組みも行われています。
・ 小売店との間で初めて流通BMS対応した際には4ヶ月の準備期間が必要だったが、以降は1ヶ月程度で開始できている
・ 従来型EDIでは、自社システムの改修に1ヶ月ほどかかっていたが、流通BMSの場合は半月程度で対応している
3.取引データ精度の向上による業務改善
流通BMSでは発注から請求支払までの各取引段階で都度データ交換を行うことで、双方で取引情報の精度が上がります。伝票運
用が前提であった従来型EDIに比べて、計上日や相殺内容の認識違いによる違算の発生も減少し、業務改善につながったという
声も聞かれます。