経費節減のための全学的方策―物品購入費― 各大学において、効率化係数・経営改善係数への対応として、経費の節減は非常に 重要な課題となっている。そこで、以下複数回にわたって、国立大学で実施されてい る各種の経費節減策(今回は物品購入費の節減)の具体的内容について紹介する。な お、以下のデータは、研究代表者 天野郁夫による「国立大学における学内資金配分 の変動過程に関する総合的研究」(日本学術振興会 基盤研究A 平成15年~18年) における調査研究活動の一環として収集されたものである。 1.物品購入費の節減方策の有無 全学的な経費節減に関連して、物品購入費の削減に関する具体的な方策をもってい る大学は、全体(回答校数83大学)の66.3%となっている(2006年1~3月時点)。 2.物品購入費の節減方策の具体的内容 次に具体的な節減方策は、おおむね以下の6種類に整理され、それらの具体的な事 例のいくつかを以下に紹介する。 ①単価購入・一括購入・共同調達・競争入札等 ・「定期的に購入するものについては単価契約の方法で、また、まとめて購入でき るものについては一括購入の方法で経費削減を行っている。」 ・「全学的な共通使用物品及び一定の使用量が見込まれる物品について、逐次単価 購入及び一括購入の該当品目を拡充し、経費の節減を図っている。」 ・「什器類、用紙類の全学的な一括契約を行い、経費節減を図っている。」 ・「重油やコピー用紙等について、近隣国立大学と共同調達を行っている。」 ・「できる限りの取りまとめ一括発注、競争契約(入札、見積競争)を実施してい る。」 ・「新規業者を積極的に開拓し参入させることにより、既存業者との競争を促し契 約額の低下を図っている。」 ②定期刊行物・印刷物の見直し ・「定期刊行物について、購入廃止や共用により購入数量を大幅に削減。新聞につ いて、共通スペースでの閲覧や、インターネットを利用することにより、購入数量 を大幅に削減。業者から購入する規程集、総覧、要覧の類について、事務局で購入 するものを共用することとし,各部局での購入を廃止。」 ・「定期刊行物の購読数を見直し、必要最小限の部数としたこと。」 ・「定期刊行物等の購読再見直し(重複購読の廃止)」 ・「印刷物について、廃止、統合、発行部数、発行回数の縮減を図っている。」 ③インターネットの利用 ・「インターネットを利用した教員発注で、発注量を集めることで物品購入の単価 を下げることにより節減を図る」 ・「図書の購入において,オンラインストアである「Amazon.co.jp」による購入 (カード決裁)を実施することにより,経費の節減を図っている。」 ・「インターネットを利用した物品等の購入により経費の節減を図るため、実施要 項を策定し実施予定。」 ④ペーパーレス化 ・「ペーパーレス化の推進、Web上の教職員情報供用システムの活用により、用紙 並びに印刷物の購入経費を抑制。」 ・「両面印刷や枚数の少ない印刷はコピー機を使わずプリンターを使うなど」 ・「会議資料等をホームページに掲載し,ペーパーレス化を実施」 ⑤学内リサイクルなど ・「物品の有効利用及び効率的活用を促進するために、遊休物品や貸付物品等の情 報を提供する「九大WEBリサイクルシステム」を平成18年度から稼働させる予 定である。」 ・「返納物品の再利用促進のためホームページを活用した再利用システムを立ち上 げた。」 ⑥その他 ・「長期使用に努める。部品の交換修理が可能な製品,保守,修理サービス期間の 長い製品を購入する。事務用品について,詰め替え可能なものを購入する。」 ・「安価な品目について,学内ホームページに掲載」 ・「備品等の更新時期を見直し,必要不可欠なもののみ更新する取扱を実施」 ・「既存物品の活用,共同利用を図ることによる新規購入費の節減。」 ・「耐用年数経過物品の継続使用」 ・「ディスカウントショップでの立替購入制度を導入している。」 ・「通販等利用による経費の削減を図っている。」 3.まとめ 効率化係数・経営改善係数等の影響により、各大学にとって経費の節減は非常に重 要な課題となっている。実際に、物品購入費の削減に関しても、各大学でさまざまな 節減方策が実施されている(①単価購入・一括購入・共同調達・競争入札等、②定期 刊行物・印刷物の見直し、③インターネットの利用、④ペーパーレス化、⑤学内リサ イクル、⑥その他)。しかしながら、これらの取り組みはこれまで報告した他の経費 (非常勤教員人件費・非常勤職員人件費・旅費)よりもやや遅れている。いずれにし ても、物品購入費の抑制・削減が、教育・研究・社会貢献サービスの質低下につなが らないように十分な配慮が必要である。 上記は、天野郁夫(研究代表者)「国立大学における学内資金配分の変動過程に関する総合的研究」 (基盤研究A 平成15年~18年)における調査研究活動の一環として行ったものである。
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