着色米の対策について 米の農産物検査においては、粒面の全部または一部が着色し、搗精しても着色が除 けないものは「着色粒」に区分され格下げの要因となってしまいます。平成24年は着 色粒の発生が多く、問題となりました。 玄米が着色する原因は様々あり、農産物検査ではカメムシ類による「斑点米」も着 色粒に含まれますが、本稿では「斑点米」以外の着色粒について紹介します(「斑点 米」と区別するために“着色米”と表現します)。 新潟県における着色米の多くは病害(病名は「褐色米」や「腹黒米」と呼ばれます) であることが確認されています。県内では「褐色米」の発生が大部分を占めますので、 「2 1 発生原因」以降については「褐色米」を中心に紹介します。 平成 24 年に確認された着色米について (1)病名「褐色米」、「腹黒米」 「褐色米」は玄米全体が淡褐色~暗褐色になる病害です。表面に黒褐色小斑点 を伴うこともあります。病原菌には「カーブラリア菌」、「アルタナリア菌」と呼 ばれる種類のものがあります。 「腹黒米」も「褐色米」の病原菌とは別の「アルタナリア菌」が原因となり着 色する病気で、玄米の腹部分が褐色になり、ここを中心に褐変が広がります。 図1 褐色米 (左2粒:褐色米、右2粒:健全米) 図2 腹黒米 (2)原因不明の症状 「こしいぶき」で発生が多く見られました。玄 米 の 側 面 に 淡 褐 色 の 斑 紋 が あ り 、一 見 す る と カメ ム シ 類 に よ る 「 斑 点 米 」 に 似 て いま す 。 し か し、 吸 汁 痕 が な い 点 や 発 生 位 置 が 異 なる 点 、 玄 米 内部 の 変 質 が 見 ら れ な い 点 で 「 斑 点 米」 と は 異 な りま す 。 病 害 に よ る 症 状 で は な い こ とが 確 認 さ れ てい ますが、発生原因は今のところわかっていません。 図3 原因不明の症状 2 発生原因 平成 24 年に発生した着色米からは、「褐色米」の原因菌であるカーブラリア属菌 やアルタナリア属菌が多く分離されており、 「褐色米」が主な原因と考えられます。 -1- これらの菌は一般に病原性は弱く、イネや畦畔雑草の枯葉などの上で腐生生活を営 み、枯れ込みが進むほど多量の胞子を形成します。形成された胞子が飛散して出穂 後、特に開花中の頴内に落下して感染します。侵入した病原菌は登熟中期頃になっ て玄米を侵し始め、感染の約 30 日後頃から症状が認められるようになります。 3 「褐色米」の多発要因 「褐色米」は夏季に高温・乾燥 条 件と なっ たり フェ ーン現 象に遭 (幼穂形成期) 寡 照 (出穂期~糊熟期) 高温・干ばつ (黄熟期~成熟期) フェーン現象 う と発 生し やす くな ります 。この 高 雑草・稲体上 温 降 雨 菌増殖 よ うな 条件 では 、イ ネの老 化が進 (発病助長) 早期 落水 み 抵抗 力が 低下 した り、イ ネの下 (感染・発病) 葉 の枯 れ上 がり が増 加しま す。雑 草 やイ ネの 枯死 葉に は多量 の胞子 軟弱徒長 断根・稲体衰弱・傷もみ 稲体老化 抵抗力低下 褐色米多発 が 形成 され るた め、 出穂期 頃に雑 草 の枯 死葉 が多 く残 る条件 でも褐 地 品種間差 割 れ 倒伏・収穫遅延 色 米が 多発 しま す。 また、 出穂後 の 早期 落水 も多 発生 につな がりま 土壌の理化学性 す。さらに、倒伏や刈り遅れは発 生を助長し、収穫後は籾水分が高 い状態に置くと症状が進みます。 4 図4 褐色米の多発要因 (想定模式図、竹谷ら1981) 「褐色米」の発 生 防 止 対 策 「褐色米」の発生を抑制するには、伝染源量の抑制やイネの体質健全化などの耕 種的防除を基本とし、多発生した地域では薬剤防除を組み合わせる必要があります。 地力維持や適切な施肥・中干し等の基本的な栽培管理を徹底することで、イネの 体質を健全に維持し、下葉の枯れ上がりを防止します。また、出穂後の早期落水を 避け、イネの活力維持を図り、フェーン現象が予測される場合には湛水等の適切な 水管理を行います。 畦畔等の枯死雑草も伝染源になりますので、出穂期頃に畦畔の枯死雑草が少なく なるように除草管理をします。除草剤による畦畔除草を行う場合は、出穂期の1か 月前までに行います。草刈り機で除草する場合も、出穂直前には草刈りをしないよ うにし、また、刈った草は持ち出すなどして処分します。通常、斑点米カメムシ類 対策として行われている地域一斉の草刈りを徹底することが、褐色米の発生防止に も有効です。 また、適期収穫に努め、籾水分が高い条件での刈り取りを避けましょう。収穫後 は籾の乾燥を徹底しましょう。 毎年被害が発生する地域や、前年度に被害の多かった地域では、「変色米(カー ブ ラ リ ア菌 )」 ※ や 「変 色 米 ( アル タ ナ リア 菌)」 ※ に 登録 のあ る 殺菌 剤に よる 防除を考慮してください。 (※:農薬の適用病害名が「変色米(○○菌)」という登録となっています。) 【経営普及課農業革新支援担当 -2- 堀 武志】
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