食品成分の抗酸化力を科学しよう

食品成分の抗酸化力を科学しよう
担当教員 仲西友紀
TA 北岡直明
<実験の背景>
近年、テレビ、雑誌、新聞等で『抗酸化』や『抗酸化物質』という言葉が多く使われ
ており、私たちの体内で酸化を防いでくれる成分は、健康の維持に役立つと言われてい
ます。では、なぜ酸化を防ぐことが健康につながるのでしょうか?
私たちは呼吸によって空気中から酸素を取り入れています。そして、体内に取り込ま
れた酸素は、脂肪や糖分を燃やしてエネルギーを発生させるのに使われます。その際に
消費される酸素のうち一部は、他の物質と強く反応する“活性酸素”と呼ばれるものに
変化します。普段の生活でも“活性酸素”は発生しているのですが、紫外線やタバコ、
ストレス、激しい運動などは大量の活性酸素を発生させます。
“活性酸素”は反応性が高く、私たちの体を構成するタンパク質、脂質、炭水化物、核
酸など多くの有機物と反応し、それらを酸化させます。“活性酸素”により酸化された
有機物は、正常な機能を失い、時には毒性を示すものもあるため、結果として活性酸素
は、動脈硬化、糖尿病、アルツハイマー病、癌など様々な病気の原因になると言われて
います。
そのため『抗酸化物質』は、
“活性酸素”による障害から私の体を守り、健康の維持
や病気の予防に役立つと考えられます。今回は、身近な食品の『抗酸化力』を、実験を
通して感じてみましょう。
タバコ
紫外線
ストレス
活性酸素
抗酸化物質
動脈硬化、糖尿病、アルツハイマー病、癌など
激しい運動
<実験の原理>
物質の『抗酸化力』を測定する方法はいくつかありますが、今回は、DPPH(ジフェニ
ルピクリルヒドラジル)という物質を用いた実験を行います。
DPPH の構造
DPPH は不対電子を持つラジカルで、活性酸素ではありませんが、活性酸素と同様に
他の物質と反応し、酸化させる作用を持っています。また、DPPH は他の物質を酸化す
る能力を持っているときは「紫色」を示しますが、他の物質を酸化する能力がなくなる
と「紫色」を失う性質を持っています。つまり、DPPH の紫色を消し去ることのできる
物質は、DPPH の酸化能力を奪う=「抗酸化力を持っている」と判断することができま
す。
抗酸化物質
DPPH
DPPH
(酸化能力:有)
(酸化能力:無)
<実験の手順>
純水(0.8 mL)+ サンプル A(0.2 mL)
① チューブに 0.8 mL の
純水を入れて、更にサ
ンプル A の原液 0.2
mL を加える。
(5 倍希
釈)
。
A
(5 倍希釈)
純水(0.8 mL)+ サンプル B(0.2 mL)
② チューブに 0.8 mL の
純水を入れて、更にサ
ンプル B の原液 0.2
mL を加える。
(5 倍希
釈)
。
B
(5 倍希釈)
④ 用意した 5 倍希釈の A、B をよく混ぜてから、それぞれ 0.3 mL ずつとり、DPPH 試薬の
入った試験管に加えてください。そして、DPPH 試薬の紫色がどう変化するか観察して
ください。
③ DPPH 試薬を 4 本の試験管に、それ
ぞれ 0.9 mL 入れます。
<実験の結果>
・DPPH 試薬の紫色が消失した場合に抗酸化力「有」、紫色が残った場合は抗酸化力「無」
と判断してください。
・自分の実験結果だけではなく、同じグループのメンバーの実験結果も合わせて、下の
表の抗酸化力の有無の欄を埋めてください。
食品(飲料)
抗酸化力
食品(飲料)
の有無
抗酸化力
の有無
1
緑茶
5
水道水
2
トマトジュース
6
紅茶
3
コーヒー
7
オレンジジュース
4
スポーツドリンク
8
醤油
<参考:食品に含まれる抗酸化物質の例>
・ビタミン類
ビタミン A、ビタミン B2、ビタミン C、ビタミン E
・ポリフェノール類
フラボノイド、タンニン、リグニン、など
・ペプチド
カルノシン、アンセリン、など
・ミネラル
亜鉛、セレン、など
・その他
メラノイジン、クエン酸、リンゴ酸、など