印刷 IT エンジニア用 JDF 基礎知識

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印刷 IT エンジニア用
JDF 基礎知識
CIP4 Organization
CIP4 Japan
印刷ワークフローと JDF/JMF の関係
コンテンツ作成
JDFジョブチケット作成ツール
PDF作成
クリエイティブ
各種ポストプレス
中綴じ
製本
ポストプレス
断裁
丁合
梱包
グラビア印刷
プレス
埋め込み
JDFジョブ
アセット
チケット
トランスファー 作成
MIS
管理
見積
報告
業務進捗
Eコマース
フロントエンド
プロジェクト管理
プリプレス
ワークフロー プリフライト
PDF作成
枚葉印刷
面付け
フレキソ印刷
輪転印刷
デジタル印刷
MIS
納品管理
RIP
トラッピング
CTP
校正
JDFジョブチケット作成
アセット・トランスファー
プリプレスワークフローソフトウェア
プリプレス装置ソフトウェア
ポストプレス
この冊子の発行にあたって
この小冊子「印刷 IT エンジニア用 JDF 基礎知識」をまとめた目的
は、印刷業務定義フォーマット JDF や JDF 規格を作成管理している
国際団体 CIP4 の事を、日本国内の印刷産業に従事しておられる方々
に正しく理解していただく為です。
JDF1.0 は 2001 年 4 月にリリースされましたが、JDF 仕様書をは
じめとして CIP4 から発行されるドキュメントは、どれも英語版のみ
でした。言うまでもなく欧米各国の多くは英語圏なので欧米のベン
ダーや印刷会社は JDF 仕様書や関連情報を簡単に理解する事が出来
ました。従って JDF ワークフローの恩恵を受ける印刷会社、製版業
者や PSP(プリント・サービス・プロバイダー)など、彼ら自身の
手で導入戦略を立案し実行する事で成功を収める事が出来ました。
しかし、日本においては JDF 仕様書を始めとする JDF 関連情報が
翻訳されて公開される事がほとんどありませんでしたので、JDF や
CIP4 について正しく理解する為の情報を得るのが難しい状況でした。
遅ればせながら、2007 年 6 月から CIP4 Japan Web サイトを開設し
CIP4 Web サイトの英語情報の一部を日本語化して掲載を開始したと
ころ、多くの方々からのアクセスが継続しています。
本冊子の内容は、上述した CIP4 Japan Web サイト掲載情報からア
クセス数の多いものを中心に加筆修正してまとめました。どなたがお
読みになっても理解出来るように心がけたつもりですが、難解な IT
用語が数多く残ってしまいました。
巻末に用語集も載せましたので、参考にして下さい。
CONTENTS
印刷ワークフローと JDF/JMF の関係 Page3
この冊子の発行にあたって Page4
1.CIP4 について Page6
2.JDF の概要 Page8
3.JMF の役割 Page10
4.JDF 基本解説
4.1. はじめに Page11
4.2. JDF の 3 つの主な機能 Page13
4.3.「ジョブチケットフォーマット」としての JDF の役割 Page15
4.4. MIS の役割 Page17
4.5. JDF 導入の為の戦略について Page22
5.用語集 Page25
1. CIP4 について
1.CIP4 について
CIP4 とは、プリプレス・プレス・ポストプレスの工程統合管理の
ための国際標準化団体(The International Cooperation for the In-
tegration of Processes in Prepress, Press and Postpress Organization)
で、米国司法省および連邦取引委員会に標準化団体として登録されて
いる非営利組織です。CIP4 は、スイスで設立され、常駐事務所を所
有せず、
各国に代表事務所を構える国際団体です。CIP4 は、各種装置、
ソフトウェア、周辺機器、工程などを網羅する通信・印刷業界、グラ
フィックアート業界や関連分野のベンダー、コンサルタント、エン
ドユーザをまとめる役割を果たします。CIP4 会員はカテゴリー別の
ワーキンググループに参加し、印刷業務定義フォーマット(JDF)の
新版を作成し、ユーザニーズを研究し、JDF ソフトウェア開発キット
(SDK)を作成しています。
現在 CIP4 には、300 社以上の会員が所属しています。会員は、着
実に増加しており、毎月のように新規の申し込みがあります。CIP4
は WebEx(Web 電話会議システム)を介してワールドワイドに活動
を行います。CIP4 には約 30 の技術・管理ワーキンググループが存
在し、
WebEx を介して毎週「交流」するグループもあります。したがっ
て、CIP4 は素晴らしい進展を見せていますが、数年前では考えられ
なかったことです。毎年世界各地で数回の顔を合わせての会議もあり
ます。
CIP4 は 2000 年 9 月に発足しました。CIP4 の前身である CIP3 は、
1995 年にハイデルべルグが立ち上げ、フラウンホーファーコンピュー
タグラフィックス研究所が運営していました。CIP3 はプリントプロ
ダクションフォーマット(PPF)を考案し、インキキープリセッティ
ングやポストプレス作業において成果をあげました。PPF は独自
フォーマットで記述されたため、CIP3 は XML への移行を考えてい
ました。やがてアドビ、ハイデルべルグ、アグファ、マンローランド
1. CIP4 について
の4社が協力して印刷業務定義フォーマット(JDF)という XML ベー
スのジョブ・チケットを考案し、仕様書の管理を CIP3 に引き継ぐよ
う依頼しました。ただし、CIP3 がすべてに対しオープンである公的
非営利団体として組織を再編すること、という条件付だったため、
CIP3 は組織を再編しました。
GCA が IAP(インダストリー・アーキテクチャー・プロジェクト)
を、
IFRA が ifraTrack などを考案したように、アドビは印刷用メタデー
タを変換する方法としてポータブルジョブチケットフォーマット
(PJTF)を考案しました。各メタデータプログラムには特有の欠点や
課題、改善点が多くありました。それゆえに JDF 標準規格をまとめ
る上で、下記に挙げた前提条件の明確化と課題解決の為に実際の経
験を踏まえた努力が必要でした。
1)メタデータをプロダクションファイルやポストスクリプト(PJTF
や ifraTrack)に埋め込むことに理由はない。フロントエンドシ
ステムがこうした大容量のプロダクションファイルを処理できな
いということは稀である。
2)メタデータはデータストアからデータストアへ移動できるように
類別され、構築されるべき。
3)基本言語はオープンでプログラミングツールに広く使用されるも
のなので XML であるべき。
4)JDF が開発される環境はパブリックでオープンな環境であるべき。
PJTF と PPF は JDF に「マップ化」されています。JDF ドキュメ
ントには PJTF や PPF から JDF へ移行する指示を記載した付表があ
ります。
JDF 仕様書の草案を作成した 4 社は、2001 年に CIP4 へ移行し
JDF1.0 を発行しました。しかし JDF1.0 を実装するのは不可能だっ
たと言われています。むしろ、CIP4 の会員が作成、変更、改善する
ことのできる「たたき台」でした。2002 年 4 月に JDF1.1 が、同年
2. JDF の概要
10 月には 1.1a が発行され、仕様と付属スキーマが大きく変更されま
した。現在市場で目にする機器の多くは JDF1.1 と JDF1.1a に準じて
製 造 さ れ て い ま す。 こ の 説 明 内 容 は 2004 年 4 月 に 発 行 さ れ た
JDF1.2 を基本にしています。会員が新版 JDF1.2 に準じてシステム
開発を行ったため、JDF1.2 の機能を備えた製品が多数 2004 年の
drupa(国際総合印刷機材展)で公開されました。
JDF は 4 つの単純な階層で管理されています。「プリプレス」や「デ
ジタルプリンティング」などのワーキンググループでは、各分野に適
した変更を求めて意見を交わしています。該当する変更は、仕様書内
のすべての変更を検討・承認する技術運営委員会(TSC: Technical
Steering Committee)へと提出されます。TSC は、ワーキンググルー
プ間で発生した問題を解決し、JDF 仕様書とスキーマの全体構造が
正しく機能するよう管理します。承認された変更情報は文書変更を担
当する編集長に渡されます。最後に、技術専門家が承認された変更情
報に対応したスキーマに変換して動作確認し、スキーマと仕様書を一
致させます。
2.JDF の概要
JDF とは印刷関連産業で使われているアプリケーションやシステ
ム間での情報交換を簡略化するためにまとめられた業界標準です。
JDF は、CIP3 の情報伝達フォーマットであるプリントプロダクショ
ンフォーマット(PPF)やアドビのメッセージ伝達・工程指示ファイル
フォーマットであるポータブルジョブチケットフォーマット(PJTF)
など既存のソリューションを元に構築し、拡張しています。また、
JDF を使用することで、営業や企画部門の見積りや総務業務などの
ワークフローと、生産に関わる工程管理、品質管理等のワークフロー
との連携と統合が可能になります。JDF は現在広がりつつある XML
ベースの多数の規格との接続性を有しており、様々なプラットフォー
2. JDF の概要
ムとの間で最大限のポータビリティを可能として、基幹システムなど
のインターネットベースのシステムとの親和性を高める事が出来ま
す。
JDF は、包括的な XML ベースのファイルフォーマットであり、今
後メッセージ記述標準とメッセージ互換プロトコルを融合したエンド
ツーエンドのジョブチケット仕様として、業界標準となるでしょう。
● JDF は異なるアプリケーションやシステムの間での情報交換を
合理化するようにデザインされています。
● JDF はメディア、デザイン、印刷関連、オンデマンド、E コマー
ス企業などすべての業界において、各ワークフローソリューショ
ンの実装を実現することを意図しています。
● JDF は多様なベンダーの各種製品を統合し、シームレスなワー
クフローソリューションを創出する事を可能にします。
JDF の最も優れた特長は:
1)印刷業務の生産工程全体の管理が可能。これらは企画、プリプレ
ス、プレス、ポストプレス、納品の各工程詳細記述を含む。
2)生産と管理情報システム(MIS)間のコミュニケーションギャプ
を埋めることが可能。したがって、印刷関連業における緊急業務
への対応や、事前の詳細見積や事後の実績データの算定はもちろ
ん、印刷機器の稼働状況把握も可能。
3)印刷業務における工程依存型の製品に対する視点と同様に、工程
非依存型の製品に対する視点も定義することによって、製品に対
する顧客との意見のギャップを埋めることが可能。
4)サポートするワークフローモデルを制限することなく、ユーザ限
定ワークフローを決定し、検索することが可能。任意の組み合わ
せや分散したロケーションでの連続処理、並列処理、オーバーラッ
プ処理、繰り返し処理も可能。
5)上述 1 ~ 4 は、ほぼすべての前提条件のもとで実現可能。
3. JMF の役割
3.JMF の役割
ここでは、JDF と MIS の関係やワークフローシステム、そして製
造現場のデバイスについて述べます。MIS やワークフローシステム
は JDF エージェントの役割を務め、コントローラと交信し命令を出
します。コントローラは JDF では重要な概念です。製造現場の各デ
バイスには個別のコントローラが組み込まれているか、又は物理デバ
イス(ターミナルやコンピュータ)がコントローラとして複数のデバ
イスを制御します。これらのコントローラは、一つの部門(例えば、
ポストプレスなど)における全デバイスを制御する事も可能です。)
MISと従来のポストプレスの橋渡しをするJMFコントローラを導入したJDF環境
ポストプレス部門
断裁
インターネット
顧客
中綴じ
JDFジョブチケット
搭載ウェブサーバ
従来の見積・
顧客管理・
計画システム
JMF
コントローラ
ラベル
貼付
社内ネットワーク
装丁
JDFのMISシステム
積載
JMFコントローラ JMFコントローラ
搭載JDF対応
搭載JDF対応
プルーファー
RIP
製造現場
(複数のJDF/
JMFデバイス)
JDF エージェントとコントローラ間で使用する言語がジョブメッ
セージングフォーマット(JMF)です。JMF は JDF 仕様に属してい
ます。JMF も同じく XML で構築されており、JDF スキーマの一部
10
4. JDF 基本解説
です。JMF を使用することにより、コントローラはイベント(スター
ト、ストップ、エラー)、ステータス(アベイラブル、オフライン、
ストール)
、結果(カウント、ウェイスト)および現在のオペレーショ
ン詳細情報などを JDF MIS やワークフローシステムと通信出来ます。
コントローラは JDF MIS やワークフローシステムを「登録」する
ことで、動作可能であることを知らせます。一つのコントローラが複
数のデバイスを制御する場合、コントローラはサポートしているデバ
イスに登録情報を提供します。ただし、この情報はメーカや型式など
の情報であり、前述のデバイス機能の代用にはなりません。
MIS やワークフローシステムは、JMF を使用して作業現場のデバ
イスに命令を出し、作業開始待ち状態の順序変更を可能にします。「可
能」という語句を多用していることにお気づきでしょうか。JMF セッ
ションでは、JMF オプションの詳細やコントローラが JMF に提供可
能なサポートレベルが明らかになります。JMF メッセージは、単方
向(MIS システムが命令を出しても、コントローラが応答しない場合)
または双方向です。プロセスオートメーション戦略に必要とされる
JMF は何かを決定することが、成果を生み出す JDF 装置の購入計画
立案のために重要です。
JMF は、一つのコントローラから別のコントローラへ命令を出す
ことも可能です。これは前述したようなプロセスとパイプライン処理
の連携をサポートするのに重要な機能です。
4.JDF 基本解説
4.1. はじめに
JDF は XML(拡張可能なマークアップ言語)をベースとしていま
すが、それだけではありません。XML は、既に広く認識された言語
であり世界標準となっていることから、JDF の基本標準言語に選ば
れました。Java、C+、.NET といったプログラムミング言語のアプリ
11
4. JDF 基本解説
ケーション・プログラミング・インターフェース(API)は直接
XML をサポートしています。また、すでに出回っている XML ツール、
データベース等は数多く存在します。例えば、XML は随所で見られ
ます、そしてバックオフィスシステムとウェブサーバ間のコンテンツ
伝達に、幅広く使用されています。
XML はプログラミング言語の文法および初期設定のデータタイプ
に関するルールを提供しますが、JDF の為には XML の持つ機能だ
けでは十分ではありません。XML そのものは、XML の「インスタ
ンス」をチェックまたは「確認」するための文書タイプ定義または
スキーマの定義を必要としません。検証は多くのアプリケーションで
必須であり、特にデータがデータベース(ワークフローおよび MIS
システムのバックにあるデータベース)にインポートされる場合は重
要となります。JDF はワールド・ワイド・コンソーシアム(W3C)
の XML スキーマ勧告をベースとしています。スキーマを使うと JDF
は検証が可能となり、CIP4 はユーザ定義データタイプ(例えば変換
で使用される「長方形」、「マトリクス」あるいは「色の名前」など)
を作成することができます。
JDF 仕様書は、ファイル命名(例えばホットフォルダ交換時の
URL/URI 使用)の仕様や JDF およびコンテンツファイルの MIME
マルチパートメッセージでのパッキング方法を規定します。 両者と
も HTTP(Hypertext Transfer Protocol)を使い、TCP/IP ネットワー
クを想定しています。ネットワークプロトコルおよび交換方式の選択
は、プロセスオートメーションプログラムだけでなく、JDF の XML
構成要素にとっても重要となります。
JDF 仕様書は JDF スキーマとともに無料で公開されており、www.
cip4.org から入手できます。 公開スキーマは我々の非常に柔軟な環
境の要求事項すべてに対応しています。実際には、ワークフローに対
応した構成要素だけを使用してスキーマのグループを作るほうが便利
かもしれません。この点については以下で詳しく述べます。
12
4. JDF 基本解説
JDF 仕様書が扱う分野全てを単独で実行するデバイス(即ち、プ
リンタ、印刷機、イメージセッター等)はありません。例えば、デジ
タル印刷業の場合、ハードケース綴じに関するデータのサポートはそ
れほど重要ではないかもしれません。また、RIP が JDF プリフライ
トをサポートする必要はありません。綴じ作業に画像レンダリング
データを扱う必要は恐らくありません。JDF 処理を行う必要がある
デバイスのグループを特定するため、CIP4 会員は、デバイスの各グ
ループの標準を規定する相互運用性適合規格(ICS)文書を作成しま
した。ICS 文書は認証試験の基準として使用されます。CIP4 は最初
の認証試験機関として GATF を認定しましたが、欧州やアジア地域
も追加される予定です。認証プログラムが定着し発展してゆく事で
「JDF 認証」と記された製品が増え、各 ICS 文書が適用されます。
ICS 文書は既に発行され無料で公開されています。我々は ICS 文書
がユーザによる JDF 対応製品購入時の指針となることを期待してい
ます。
4.2. JDF の 3 つの主な機能
コンセプトとして JDF は 3 つの主な機能を備えています。第 1 の
機能は、印刷ジョブの全工程をサポートする一つの共通言語の提供で
す。これが、JDF が「ジョブチケット」言語と呼ばれる理由です。
しかし、機能はそれだけではありません。第 2 の機能は、製造現場
のデバイスに対する命令と制御言語の提供であり、ジョブメッセージ
ングフォーマット(JMF)と呼ばれます。JMF は個別の仕様として
扱われてきましたが、実際は JDF の一部です。JMF は、制御ワーク
フローシステムやプロセスオートメーション環境下にある MIS が
ジョブの開始及び終了や、待機中作業の再オーダーなどをデバイスに
指示できるようにします。第 3 の機能は、ワークフローと命令、制御、
と工場自動化やジョブ生成の環境の構築に関する柔軟な手法の提供で
す。JDF1.2 には、以下のような改良が加えられました。
13
4. JDF 基本解説
● プリフライト機能の追加
● JMF メッセージングの改良
● ファイル命名および MIME コード化仕様の厳格化
● 品質管理および色管理機能の追加
●「デバイス性能」の追加
また、JDF1.2 に新たに追加された第 4 の機能として、デバイス機
能によって可能となったハンドシェイクの自動化が挙げられます。例
えば、JDF にはステッチャーが使用する 5 種類のホッチキスの針が
あります。新しいステッチャーが JDF ワークフローに追加された場
合、管理ワークフローシステムあるいは MIS は、新しいステッチャー
がどのホッチキスの針をサポートしているかを把握していなければな
りません。
「ハンドシェイク」とは、デバイスがサポートする一連の
JDF 要素および属性を MIS や
ワークフローシステムに伝達す
ることです。
こうした調整や「ハンドシェ
イク」はかつて印刷会社が行
うか、印刷会社のベンダーや
コンサルタントのサポートを得
て実施していました。NGP や
クラウン
オーバーラップ
ビュテッド
クリンチアウト
アイレット
PrintCity といったグループの
中には、参加企業のデバイス間のハンドシェイクを構築しているグ
ループもあります。こうしたグループの企業から製品を購入した場合、
確実にハンドシェイクが確立され、パートナー間のデバイスが事前に
統合されていることでしょう。
JDF1.2 のデバイス機能により、1.2 対応デバイスが JDF のどの点
を管理できるか、またはできないかについての詳細を自動的に問合せ
ることが可能となります。これは、プラグアンドプレイの総合的な相
14
4. JDF 基本解説
互運用性を実現するための重要なステップといえます。JDF1.2 対応
製品が数多く市場に出回り、バイヤーがこうした自動ハンドシェイク
機能を活用するまでにはもう少し時間がかかりそうです。
4.3.「ジョブチケットフォーマット」としての JDF の役割
ジョブチケットのアナログ版(作業指示書類)は、ジョブに関する
指示や仕様を含む作業手順情報が記録された封筒やフォルダと同じか
もしれません。ジョブチケットは、購入・顧客情報を伴う見積依頼
から始まり、見積、スケジュール設定、プリフライトを経て、最終的
には生産現場に至ります。各従業員が各業務を行い、作業を完了する
とジョブチケットが次へ進みます。JDF では同じ機能をデジタル処
理することが可能です。アナログのジョブチケット同様、顧客や販売
担当者から集められたジョブに関するメタデータから始まります。こ
の顧客「インテント」情報だけでは生産工程を動かすのに十分でない
可能性があり、さらなる情報入手が必要となります。顧客が見積段階
で「80 ポンド、オフセット、マット、白」と指定した場合、従業員
がブランド名を追加し、在庫状況やジョブの印刷に必要なシートある
いはロール紙の実数量(工程内の損紙などを考慮に入れた多めの量)
を確認します。
ジョブチケット:工程情報の発展
インテント
見積依頼
工程
見積
スケジュール設定
プリフライト
生産
15
4. JDF 基本解説
同様に、JDF にはジョブインプットデータおよび材料に関する 2
つの基本的カテゴリーがあります。それはインテントとプロセスです。
顧客インテントを保ちつつ、ジョブが各工程を進むに従って、ジョブ
が続行可能になる(実際に工程が実行される)まで工程データが追加
されてゆきます。従って、JDF を使用することは、ジョブに関する
全てのデータを事前に集めておくということではありません。JDF
インスタンスはジョブの各工程を通して拡張することができ、全ての
データを入力する必要はありません。JDF を補完する構想の中には、
導入時にジョブメタデータを保持することでデータの再入力を無く
し、作業情報の伝達ミスや余分な作業、混乱といった内在する問題を
避けるという考えがあります。JDF メタデータのソース例には以下
があります。
● 顧客ファイルとメタデータ — 顧客自身のファイルがメタデータ
のソースとなり、自動的に抽出できます。また、ファイルが
JDF データを転送する JDF 対応ツールとなることも可能です。
● JDF 対応プリフライトソフトウェア — プリフライトソフトウェ
アの有名企業数社が、プリフライト機能から抽出された JDF デー
タを提供する機能を追加しています。
● 貴社のウェブサイトや E コマースパートナーを介しての顧客に
よる入力 — PrintTalk ベースの E コマースツールやサービスを
使用している場合、知らないうちに利用可能な JDF データを既
に所有していることもあります。
● 所有する機器のデフォルトおよびプリセット — 製造仕様をシス
テムデフォルトとして設定できます。例えば、ホッチキスの針の
例では、あまり使用されないタイプをデフォルトに設定すること
もできます。
● MIS のジョブ「プロファイル」およびデフォルトセット — 多く
の空白を埋めるために使用するジョブタイプをあらかじめ設定で
きます。特に、文庫本印刷のように似た属性を持つジョブが中心
16
4. JDF 基本解説
となる場合です。1 つのジョブの設定を行うと、各ジョブに特有
な点に集中することができます。
● 直接入力 最後の選択は、オペレータによる直接入力です。
JDF を「チケット」として使用し、チケット内で1つのジョブに1
つのファイルを保持し、そのファイルに追加していくという形をとる
企業もありますが、大半の場合、
「ジョブチケット」とはワークフロー
を制御するソフトウェア内のデータベース内の仮想の構成を指しま
す。JDF は本来、システム間の交換フォーマットとして使われます。
ワークフローシステムが製造現場のデバイスを操作する際に、工程の
特定段階に関する仕様を含む JDF インスタンスを用意し、転送する
だけで済みます。
したがって、JDF は印刷ジョブの生産全工程を通してジョブデータ
を保存するための標準言語であり、単なるジョブチケット以上の役割
を担っています。実際、JDF の 2 つの重要な機能は、品質管理(QC)
データおよび各工程(開始時間、オペレータ / シフト、エラー / ウェ
イスト、終了時間など)に関する監査情報の収集です。監査および
QC データは電子データの形で直接デバイスから提供されるため、実
際のコストと見積の差異、ワークフロー内の障害、工程内の余分な生
産の自動調整などを解決する際に使用できます。また、管理者が計画
改良やリソース配分の最適化、顧客に役立つジョブ情報の提供などを
実施するために必要な、生産の全体像を改善する目的でも使用されま
す。
4.4. MIS の役割
JDF 仕様書で使われる「MIS」という用語はどちらかというと適切で
はありません。MIS は「Management Information System」の略であ
り、1960 年代には報告システムを意味し、1970 ~ 80 年代には会計、
請求、在庫、その他マネジメント監視機能などを含むようになりまし
17
4. JDF 基本解説
た。JDF で使われる MIS は、印刷プロセスオートメーションにおい
て営業・販売業務からと生産・管理業務を含む、全ワークフおよび管
理システムを含みます。印刷用 MIS には、マネジメントレポート、
会計業務などを含む企業全体のシステムから印刷前工程のみを制御す
る部門別ワークフローシステムまで多岐にわたる規模や種類の MIS
システムがあります。
基本的なことですが、これらのシステムは JDF データを受け取り、
JDF データを分解し、内部データベースにデータを保存できなけれ
ばなりません。また、アウトプット用にデータベースから JDF デー
タを生成する能力も必要となります。(一方向のみのワークフローシ
ステムには注意しましょう。JDF データを受け取れるがアウトプッ
トできないシステムは、最終的にプロセスオートメーションプログラ
ムの障害となります。)この要求事項は、これらのシステムが JDF の
読み込み・検証を行うとともに、JDF の生成・検証を行う能力が必
要であることを示唆しています。
検証とは公開された JDF スキーマあるいは正常に機能するサブ
セットに対して JDF インスタンスをチェックし、ストラクチャの規
則が順守されているかを確認するプロセスを意味します。検証機能を
統合している企業もあれば、第三者が開発したツールを使用している
企業もあります。重要なのは、市販の XML スキーマ検証ツールであ
ればすべて使用可能というわけではない点です。JDF 仕様書には、
市販の一般的検証ツールでは検証することができない“IF-THEN”
条件が含まれています。例えば、ICC カラープロファイルのアウト
プットが、別の ICC カラープロファイルを既に持つ文書ファイルに
組み込まれた画像と関連付けされ、2 つのプロファイルが一致しない
場合、文書に最初からあったカラープロファイルのアウトプットが優
先され、新しい画像を変換しなければならない場合もあります。こう
した状況は、印刷業界では一般的です。JDF 仕様書には、JDF イン
スタンスに値が存在する場合、デフォルトがある時点で設定される例
18
4. JDF 基本解説
が多数あります。CIP4 が提供している JDF 検証ツールは、こうした
“IF-THEN”条件だけでなく、多くのベンダーが JDF MIS 製品に構
築している埋め込みシステムを考慮に入れています。
JDF MIS あるいはワークフローシステムは、ジョブを実行するた
めに製造現場のデバイスに命令できなければなりません。これは、プ
ロセスオートメーション及びコンピューター・インテグレーテッド・
マニュファクチャリング(CIM)の主な目的です。こうした指令機能
を実現するためには、JDF MIS およびワークフローシステムが JMF
の理解や読み書き能力を備え、インプットやワークフロー内の各デバ
イスのパラメータ要求事項を保存、活用する能力が必要となります。
従って最も重要な機能要件は、JDF MIS およびワークフローシステ
ムが JDF ジョブを自動生成する能力です。JDF ワークフローを進ん
で行くときに、各工程において 100 以上の異なるプロセスを特定し、
それらのプロセスにおいていくつかの「リソース」を関連付けます。
ノード1
アウトプット
リソース
インプット
ノード 2
例
JDF ではプロセスに関連付けられるインプット・アウトプットデー
タおよびパラメータ(メタデータ)であるリソースがおよそ 160 あ
ります。JDF ワークフローでは、1 つのプロセス「ノード」というア
ウトプットが次のインプットとなるため、「リソース」という用語は
単数形です。特定のジョブに必要な全てのインプットがシステムに
19
4. JDF 基本解説
よって利用可能となると、次に進むことができます。例えば、イメー
ジセッターのアウトプットは刷版で、その刷版は印刷機のインプット
となります。印刷機は刷版が完成しないと運転を開始できません。オ
ンボードコンピュータを持たずにマニュアル操作で作業している従来
のデバイスでも、同様の方法で管理することは可能です。例えば、デー
タ入力用ターミナルやバーコードでオペレータがジョブの詳細や指示
を伝達し、
「完成時間」や「オペレータ ID」等のインプットを入力可
能です。
JDF には、最も複雑なワークフローに対応するためのオプション
機能も搭載されています。例えば、JDF はジョブの創生や結合を可
能にします。この機能は、数種の異なる印刷物を何台かのプレス機で
同時に印刷する場合や、表紙を同時に印刷し、残りのページを綴じの
段階でまとめる場合などに使用できます。また、生産工程の一連のイ
ンプットおよびアウトプットと共に機能する「複合工程」を作成する
こともできます。例えば、デジタル印刷デバイスの多くは複合 RIP、
プリンタ、仕上げ装置から構成されていますが、インプットとアウト
プットのセットは 1 組しかありません。実は従来の印刷も、インク、紙、
断裁、測色などの工程を同時に実行していることから、複合工程と言
われているのです。インキシステムは最大・最小値を組み入れた特殊
な生産工程を使用することがあります。インキつぼやタンクが少なく
なってくるとインキシステムはオフラインに切り替わり、補充される
まで運転を停止します。補充とは、ある特定の最大量に到達すること
と定義できます。JDF MIS やワークフローシステムを選ぶ際には、
こうしたオプションを考慮に入れることも大切です。
JDF MIS やワークフローシステムのオプションとして、JDF と旧
デバイス制御言語間の変換を行うミドルウェアなどを提供するベン
ダーもいます。例えば、印刷機メーカー大手数社は、数年間に渡り、
自動化の進んだ印刷機を提供してきました。こうしたミドルウェアは、
独自に開発した工程自動化言語から JDF 対応環境へ移行する際に重
20
4. JDF 基本解説
要となります。オプションとして、JDF MIS あるいはワークフロー
システムに、見積、CRM、スケジュール設定、在庫管理、顧客報告、
会計、請求、E コマース、ERP システムなどの導入や接続も可能です。
例えば、統合された紙在庫システムでは、在庫量の削減、損紙の低減、
ジャストインタイム生産システムへのステップアップなどが可能とな
ります。
考慮すべき最も重要な選択条件は、導入する JDF MIS 及びワーク
フローシステムの将来への拡張可能性の可否です。JDF 仕様書は、
各工程やリソースに関連付けを行う全ての XML 要素および属性をほ
ぼ網羅していますが、仕様書が考えられる全ての可能性まで網羅して
いるとは言えません。JDF 仕様書の拡張が必要となる独自の機能を
有するベンダーにめぐり会うこともあるでしょうし、顧客や市場特有
のデータ要求事項に対処するため、独自の社内システムを自身で開発
し、独自の JDF 拡張を使用する場合もあるでしょう。
製造現場におけるフロントエンドシステムやデバイスが、従来では
理解不能であった拡張機能を持ったとしても、JDF MIS とワークフ
ローシステムはそその拡張機能を理解し使用可能としなければなりま
せん。JDF 拡張としてのみ利用できる特定のジョブパラメータを必
要とするデバイスを製造現場に追加する場合、JDF MIS やワークフ
ローシステムは、そのデバイスが拡張機能に必要な値を提供できる場
合に限って、デバイスを操作することができます。そうでなければ、
ジョブが何時、次工程へ進むことができるのかを把握することができ
ません。拡張機能は重要ですが、慎重に扱う必要があります。今まで
述べてきた事を理解すれば、ベンダーの拡張機能に対するニーズが正
当なものであるか、顧客を惹きつけるために既に特定されている JDF
要素や属性の言いかえをしているだけなのか、が判断できるようにな
ります。ベンダーは拡張機能に関する文書を提出できなければなりま
せん。CIP4 は、JDF 仕様書に含めるべき拡張機能をできるだけ提出
するようベンダーおよびユーザに呼びかけています。
21
4. JDF 基本解説
4.5. JDF 導入の為の戦略について
印刷プロセスオートメーションや JDF 導入の第1段階は、戦略立
案と導入監督の責任者を決めることです。しかし、1 人で担当するの
は不可能です。また、JDF 導入プロジェクトのリーダーがプログラ
ムの計画、導入を行う際、上級管理者のサポートがあり、部門長およ
び主要従業員の協力をいつでも得られる体制になっていることを確認
する必要があります。さらに、チーム内に顧客サポートスタッフやベ
ンダーを含めることも大切です。
ベンダーに関しては、現在使用しているベンダーの JDF 対応計画
について知っておく必要があります。また、既に所有している製品の
中で JDF 対応アップグレードが備わっているものはどれか、これら
のアップグレードは自動なのかオプションなのか、拡張機能について
はどうか、なども確認します。
現在の環境を文書化し、製造現場の機器およびシステムに対するベ
ンダーのアップグレード条件と比較します。何か抜けているところは
ありませんか?今後、取引の可能性があるベンダーは時宜を得た JDF
対応計画を用意していますか?それとも、ベンダー製品の将来のサ
ポートが無い状態ですか? JDF 機能を必要とする特注システムはあ
りますか?また、旧デバイスと JDF システム間の伝達を行うミドル
ウェアは必要ですか?ベンダーの中にこうしたミドルウェアを提供し
ているところはありますか?
社内全体での JDF 導入は短期間ではおそらく実現不可能です。現
実的には、数年間にわたって通常業務内に JDF を少しずつ組み入れ
ていく方法を考える必要があるでしょう。成功する為の秘訣は、一刻
も早く投資収益を得ることです。企業によって優先事項や環境は異な
ります。顧客最適化や製造ライン、部門、工場(大企業の場合)の中
で交換を必要とするものはどれか、また、改善が最も必要なものは何
かを検討します。さらに、企業の目標や短期収益を実現できる分野は
何かを検討する必要があります。限られた導入で速く収益を得ること
22
4. JDF 基本解説
に焦点を置くと、実経験から学ぶことができ、社内全体での導入に向
けて収益を最大化する方法を知ることができます。
2005 年から始まった CIP4 国際印刷生産革新賞(CIPPI Award)の
受賞企業の多くの事例では、印刷生産性の向上による売上げ・利益の
増加、品質改善や顧客満足度(CS)の向上が具体的な事例として挙
げられています。
以下に幾つかの事例を紹介します。
● Web 受発注システム — 印刷物の購入およびジョブに関する情
報のコミュニケーションに Web 受発注システムを導入すること
で、顧客データの取得、データ再入力の削減、顧客とのやり取り
の効率化を実現。
● コミュニケーションの改善 — JDF 実装により、顧客と従業員間、
部門間の行き違いを削減でき、作業のやり直し、遅れ、ジョブの
紛失などの削減。
● 顧客満足度の向上 — コミュニケーションを改善し、顧客に適時
かつ正確なジョブ情報を提供することで、顧客維持を改善。
● 生産性向上 — リソース全体にわたる作業やバランスロードの削
減、ワークフローの障害の除去により、生産性を向上させること
が可能。
● 無駄の削減 — ワークフローの各段階や各ジョブにわたるリアル
タイムでのカウントや使用日を把握することで、余剰印刷や実際
の無駄、工程間の無駄を最小限に抑える。
● 請求の精度向上 — JDF 対応ワークフローでは、ジョブ仕様から
多岐にわたる顧客の処理(対応、見積、請求)が改善され、精度
の高い請求書を顧客に提供できるようになります。その結果、支
払の迅速化や費用をめぐる争いの削減が可能。
優先事項や全体の効果は企業によって異なります。専有システムで
23
4. JDF 基本解説
ある程度の工程自動化を実現した企業もあります。短期的にみると、
JDF 対応システムとそれほど変わりがありません。しかし、長期的
には、JDF 対応システムのメンテナンスやサポートと比較すると、
専有システムのメンテナンスやサポートは負担になります。これが、
印刷業界における全デバイスに共通する標準言語の利点です。こうし
た状況は、CTP への移行の時と非常に似ています。顧客からデジタ
ルファイルを受け取り、面付けしたフィルムをアウトプットする体制
が既に出来ていた企業の場合、CTP への移行は簡単でした。しかし、
依然としてプロセスカメラやストリッピングフィルムを使用していた
企業と、当初は収益にそれほど差はありませんでした。しかし、先行
して CTP 導入を行った企業は発展を続け、移行により得られる収益
も増えていったのです。
投資対効果に関する優先事項と目標を設定したら、成功をはかる物
差しと成功を評価する方法を決めなければなりません。最後に、この
解説を読み終えられましたら、まず自社の業務のたな卸しをしてみま
しょう。各部門の業務内容の文書化やワークフローを整理してみて下
さい。その後、JDF の導入について検討し、投資対効果をまとめた
ら JDF 購入に関する戦略と方針を決め、全社一丸となって取り組ん
でください。
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5. 用語集
5.用語集
この用語集は CIP4 標準ではありません。中には、限定的で非常に
専門的に定義されている用語もあります。用語集の定義と JDF 仕様
書の定義に矛盾がある場合は、標準である JDF 仕様書が優先される
ものとします。
用 語
CIP3
定 義
「International Cooperation for Prepess, Press,
and Postpress」
(プリプレス・プレス・ポストプ
レスのための国際団体)の略。CIP4 の前身となる
団体で、PPF を考案。
CIP4
「The International Cooperation for the Integra­
tion of Processes in Prepress, Press and Post­
press organization」
(プリプレス・プレス・ポス
トプレスにおける工程の統合のための国際団体)の
略。スイスのチューリッヒで 2001 年に設立された
国際的な非営利団体。コンピュータを使って、印刷
関連業界におけるすべての工程を統合することを推
奨し、標準となる仕様書を作成する。
IFRA トラック
IFRA のジョブトラッキングおよび情報メッセージ
の標準であり、JDF を補足する。
IMF
IFRA メッセージングフォーマット(IFRA Messag­
ing Format)の略で、IFRA トラックの構成要素。
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5. 用語集
用 語
JDF
定 義
ジョブデフィニションフォーマット(Job Definition
Format)の略。CIP4 の主要工程自動化仕様の総称。
ま た、 ノ ー ド を 含 む JDF 内 の 最 上 位 要 素 で あ る
JDF 要素も存在する(
「ノード」については該当欄
を参照のこと)
。JDF の基本機能は、印刷ジョブ工
程全体の記述に使用するメタデータの提供、フレキ
シブルワークフローの自動化の方法提供、ワークフ
ローや MIS システムが新しいデバイスの JDF 機能
を決定するためのクエリ実行、ワークフローや MIS
システム作業現場でデバイスに指図するための指令
言語の提供である。
JDF コンシュー
JDF インスタンスを使用(または解読、利用)する
マ
デバイス、コントローラ、工程、キュー、エージェ
ント。
JMF
ジョブメッセージングフォーマット(Job Messag­
ing Format)の略。マルチレベル機能を備えた通信
フォーマットで、JDF の一部である指令言語。JDF
と同様、JDF の中で最上位要素である JMF 要素も
存在する。JMF は JDF 仕様書内で定義されている
ものであり、独立した CIP4 標準ではない。
MIS
JDF ワークフロー機能の一部であり、全工程および
システム構成要素とシステム制御間の通信を監視す
る。JDF においては、ワークフロー、製造管理、プ
レスルーム管理システム、印刷 MIS システムなどを
含む包括的用語として使われており、MIS(管理情
報システム)の広義の用法と混同しないこと。JDF
における「MIS」は、MIS の広義的な用法に含まれ
る管理報告、財務システム、会計およびその他の機
能を必要としない。
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5. 用語集
用 語
PDL
定 義
ページ記述言語「Page Description Language」
の略。印刷されるページを記述する言語の一般的用
語。PDF®、PostScript®、PCL® などがある。
PJTF
アドビシステムのポータブルジョブチケットフォー
マット「Portable Job Ticket Format」の略。
JDF 仕様書で直接 JDF にマップされている。
PPF
インクキープリセットシステムで幅広く使用されて
いる CIP3 のプリントプロダクションフォーマット
(Print Production Format)仕様。CIP4 が管理
している。
アトリビュート
XML 要素の特性の記述に用いられる XML コンスト
ラクト。例えば、
JDF リソース要素の「色」は「Lab」
と い う 属 性 を 持 っ て お り、 そ の「Lab」 属 性 は
100%色価値の特定染料の L a* b* 値を提供する。
他の例では、JDF リソース要素の「デジタルデリバ
リー」は「Method」という属性により、E メール、
ISDN ソフトウェア、ウェブサーバ、インスタント
メッセージなどを使ったデジタルファイル送信が可
能となる。
インスタンス
「JDF インスタンス」や「XML インスタンス」はよ
く使用される。JDF データは MIME コード化によ
りコンテンツファイルにバインドされるが、コンテ
ン ツ フ ァ イ ル と は 独 立 し て 存 在 す る。 そ れ で は、
JDF ファイルをどう呼ぶか?「文書」とすると、コ
ンテンツファイルと混同する。プリンタや顧客が参
照する「文書」は JDF を指すのではない。これは
XML の他のアプリケーションにも共通する問題で、
通常は XML(ここでは JDF)を指す用語として「イ
ンスタンス」を使用する。
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5. 用語集
用 語
エージェント
定 義
JDF および JMF を作成する JDF ベースのワークフ
ローの構成要素。
エレメント
JDF の構造化データを記述する XML ベースの構文
コンストラクト。JDF は印刷ジョブに関する構造化
されたメタデータであり、基本的な XML 構成単位
が「要素」である。JDF の最上位要素は「JDF 要素」
で、印刷ジョブを互いにネストする複数の JDF 要素
に分けることが可能となる。ネストした各 JDF 要素
は「ノード」と呼ばれ、これらのノードは、面付け、
色校正、フィルムから刷版へのコピー、スクリーニ
ング、カバーアプリケーション、箱詰めを初めとす
るジョブの全工程要素のノードとなる。
キュー
JMF メッセージシステムを介してデバイスのために
ジョブエントリを承認・管理する構成要素。
コントローラ
JDF ベースのワークフローの構成要素で、ジョブを
実行するデバイスを選び(ワークフローが責任を負う
範囲内)
、エージェントから JDF を受け取って送る
のに加え、ジョブステータスに関する情報を伝える。
ジョブ
JDF では、ジョブは階層ツリー型に構造化された 1
つあるいは複数のノードから構成され、顧客が要求
するアウトプットの記述を行う。例えば、「ジョブ」
は印刷済みの紙の束を意味する場合もあるし、印刷
済みの紙自体を意味する場合もある。「ジョブ」はま
た、完全命令の精度の各レベルを指す場合もある。
「ジョブ」とは、プリンタではプレスを 1 回転して
印刷が行われた紙の束と解釈し、バインダーでは複
数の紙と表紙から構成される一冊の本と解釈する可
能性もある。さらに、エンドユーザは 1 回の契約で
製造された本すべてと理解している可能性もある。
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5. 用語集
用 語
ジョブパート
定 義
JDF 対応 MIS、ワークフローおよび製造管理システ
ム関連への関与を管理する最小レベルを構成する1
つあるいは複数のノード。
タグ
XML 要素の始まりと終わりを示す XML コンストラ
クト。
デバイス
JDF ワークフローの構成要素で、JDF を解析し、
指示を実行する。デバイスとは、製品ベンダーが独
自に開発した方法でマシンを制御するソフトウェア
や、JDF 指示を直接実行する RIP などのソフトウェ
アを指す。
ノード
最終・中間製品やリソースを製造するのに必要なリ
ソースおよび工程仕様の詳細を類別する JDF 要素の
一種。
パーティション
JDF では、ジョブを構成する個々の物理的・論理的
パーツを「パーティション」と呼ぶ。コードパーティ
ションは、リソース要素の「PartIDKeys」という
属性によって指定される。
プロセス
製造ワークフロー内の各段階。
マシン
JDF を使用しないソフトウェアアプリケーションお
よびハードウェア機器。マシンは、独自仕様の方法
で接続された JDF デバイスによって管理される。
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5. 用語集
用 語
マネージャ
定 義
マネージャインターフェースを実装するソフトウェ
ア。マネージャインターフェースとは、JDF インス
タンス、JMF メッセージ、他のデータ(ネットワー
クなどを介して)を、下層階([JDF1.3]図 2.1 を
参照)のデバイスやコントローラのワーカーに送り、
デバイスやコントローラのワーカーから情報を受け
取る(ネットワークなどを介して)ためのインター
フェース。
リソース
JDF ノードによって修正・使用される物理的および
論理的構成要素。各工程にはインプット、アウトプッ
トがある。1 つの工程の JDF でのアウトプットは次
工程のインプットとなる。そのため、インプットと
アウトプットは総称して「リソース」と呼ばれる。
リソースの例としては、紙、画像、工程パラメータ
が挙げられる。
ワーカー
ワーカーインターフェースを実装するソフトウェア。
ワーカーインターフェースとは、J D F インスタン
ス、JMF メッセージ、他のデータ(ネットワーク
などを介して)を、上層階([JDF1.3]図 2.1 を参
照)のコントローラや MIS のマネージャから受け取
り、コントローラや MIS のマネージャに情報を送
る(おそらくネットワークを介して)ためのインター
フェース。
ワークセンター
タスクを遂行できる部門および下請け会社のような
組織。
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*本書記載内容の関連情報は以下の Web サイトをご覧下さい
CIP4:http://www.cip4.org/
CIP4 Japan:http://www.cip4.jp/
JDF ジャパン:http://www.jdf-japan.com/
*CIP4/CIP4 Japan への入会に関するお問合せ先
CIP4 Japan 事務局
E -メール:[email protected]
TEL:042-851-9280、FAX042-745-5709
*JDF 関連資料の日本語翻訳版頒布に関する問合せ先
株式会社プリンテクノ
E -メール:[email protected]
TEL:042-851-9280、FAX042-745-5709
(株)プリンテクノ:http://printechno.com/
*本書は、CIP4 Organization ならびに CIP4 Japan が JDF ユーザー
向けの参考資料として作成したもので、著作権は CIP4 に帰属します。
無断で複写、複製する事は禁じられています。
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®
CIP4 Organization・CIP4 Japan