－会報欅坂 50 号－大阪教育大学附属高等学校池田校舎 50 号 2007.12.18. 太平洋からも、北極海からも、もちろん大西洋からシルクロード紀行も。だから雨は少ない。しかし、古くから中国と地中海世界を結ぶ東西交通の要であり、またロシアと世界史を担当する佐々木先生が、今年の夏、シルインドを結ぶ南北ルートも通る内陸国際交易の十字クロードの旅に出かけられました、近年、毎年のよ路ともいえる場所だ。駱駝を何百頭も連ねた長いキうに、アンデスのワスカラン、カラコルム、ダウラャラバン（隊商）の列が砂丘を越え、オアシスの町ギリと世界の高山にチャレンジされた佐々木先生や村を辿って行くイメージを描いてしまう。しかし、のシルクロード紀行です。実際はどんなところだろう？自分の眼と足と全身を使って確かめたい、と思った。佐々木利昌（本校社会科教諭）〔タシュケントへ〕今回は、関西空港から韓国の〔夢〕わたしが初めてシルクロードのことを知っソウル（インチョン国際空港）経由でウズベキスタたのは、高校 2 年生の時。1964 年のことだ。世界史ンの首都のタシュケントまで飛んだ。大阪からソウの授業で、担当の先生が夢見るような眼差しで、「シルまでがほぼ 900 キロ。ソウルからタシュケントまルクロード」という言葉を語られた。その思いが、でがほぼ 5000 キロ。あわせて大阪からタシュケントわたしにも伝染したのかもしれない。「いつかシルまで 6000 キロ。飛行時間は大阪～ソウルが 1 時間半、クロードへ行きたい」という夢がわたしの胸の中にソウル～タシュケントが 7 時間、合わせて 8 時間半芽生えた。そして 43 年の歳月が流れた。わたしは 59 だ。大阪は東経約 135 度、タシュケントは東経約 70 歳になっていた。現役教員として最後の年である今度。経度差は 65 度だから時差は 4 時間である。ソウ年、その夢は実現した。ルで乗り換えを待つ間に、待合室で聞こえてくるア〔地図帳〕君たち全員が持っている地図帳（新詳ナウンスは、韓国語⇒英語⇒ロシア語の順番である。高等地図）の見開きの１～３ページを開いてもらうわたしは学生のころ、ロシア語を学んだが、なにせと、インドの北のほうに「カザフスタン」という国 40 年も前の話。機内アナウンスのロシア語は最後のが見える。そのすぐ南にウズベキスタンという国が「スパシーバ（ありがとう）」しかわからない。覚悟ある。その東隣りに国境線の形が複雑で、よくわかを決めたら眠くなって、目覚めたら中央アジアのアらないような小さな国がある。これがタジキスタンルマトゥイの上空、タシュケントまであと 1 時間。である。わたしが 8 月前半に訪れたのはこの二つのタシュケント時間で、夜の 9 時に到着したが、気温国だ。大阪から見ると、メルカトル図法では「真西」 31 度。意外に蒸し暑かった。だが、大阪からの方位（地球上の最短コースの方角）〔ウズベキスタン〕中央アジアはイスラム文化圏は西北西である。距離はおよそ 6000 キロだ。に入るはずなのだが、首都タシュケントの町並みは、〔中央アジアというところ〕今回わたしが訪れた、 19 世紀以来の帝政ロシアとソ連の支配が合わせてこの地域には、様々な呼び方がある。「トルキスタン 150 年続いたためだろうか、どちらかというと、ヨー（トルコ人の居住地）」、「内陸アジア」、「中央アジロッパ、それもロシアの都市という印象が強い。街ア」。最近では「中央ユーラシア」でないと駄目だ、行く女性もスカーフで頭髪を覆う人は意外に少ない。と主張する研究者もいる。地図をみればわかるとおソ連時代とは違って、宗教施設も復活し、目抜き通り、海から遠く隔てられた地域だ。インド洋からも、りには、中央アジア最大のロシア正教の教会もあっ 1 －会報 50 号－た。到着翌日、タシュケントから隣国のタジキスタるから、帽子・ゴーグル・覆面が必須。これも辺境ンへ移動する際、タシュケントの旧市街のバザールの旅の味だ。この国は社会的基盤整備が大幅に遅れ（市場）へ立ち寄った。さすがに、ここはいかにもている。ところどころ道路工事も始まっていた。タ中央アジアの町らしい、イスラム色に溢れたにぎやジキスタンの天然ガスやレア・メタルなどに関心をかな場所だったが、それでもスカーフを着用しない持つ中国が工事を担っている。昨年、同じような光女性が目立った。どこでもそうだが、現地へ行って景をパキスタンの奥地のカラコルム・ハイウエイでみないとわからないことが多い。みかけた。〔タジキスタンへ〕今回の旅のメインはタジキス〔タジキスタンの町〕1 時間ほど砂漠のなかのガタタンである。ソ連崩壊後、内戦が続き、また 1998 年ガタ道を上下左右にバウンドしながら走ったら、街には国連政務官の秋野豊さんが強盗団に射殺されたが見えてきた。急に車が静かになった。舗装道路にこともあって、外国人観光客が入りづらい国であっ入ったのだ。やっと強盗のような覆面をはずして、た。タシュケントから南へ走る。市街地を抜けると、一息ついたら、豊かな水量の川が見えた。シル・ダ舗装道路の両側に、緑の綿花畑が広がる。予備知識リヤだ。天山山脈の氷河を源流とし、3000 キロを流としては知っていたが、こんなに大規模なものとはれてアラル海に注ぐ中央アジアの大河だ。今回の旅思わなかった。どこまでも、どこまでも綿花畑だ。は、このシル・ダリヤと、もうひとつの大河アム・極端な単一栽培（モノカルチュア）だ。食糧生産（小ダリヤの間の地域、ソグディアナ（ソグド人の土地）麦やトウモロコシなどの）が犠牲にされて、ひたすを北から南へ縦断する旅だ。アラブ人イスラム教徒ら外貨獲得を綿花に頼るという経済システムは、19 が 8 世紀にこの地を侵略し、ソグド人の都市国家群世紀後半、アメリカ南北戦争[1861～65]の折に、アを次々に征服すると、彼らは地名から「ソグド」をメリカ南部からの綿花供給が止まり、原料綿花の国消し去り、「川の向こうの土地」という意味のアラビ際価格が上昇して以来、帝政ロシア、ついでソ連にア語「マー・ワルアン・ナフル」という、味も素っ継承され、そのまま現在も続いているのだ。乾燥し気もない地名に変えてしまった。昼過ぎ、タジキスた大地に灌漑用水を引いて、降り注ぐ太陽によってタン第 2 の都市ホジェンドへ着いた。町の中央をシ綿花が育つ。それはそれでいいのだけれども、灌漑ル・ダリヤがゆったりと流れるオアシスの町だ。13 用水として大地に河川の流水が取られてしまえば、世紀にモンゴル軍の攻撃を受けて破壊された城壁が下流に流れる水が減ってしまう。だから、中央アジ夕陽に照らされて歴史の興亡を物語る。日没後訪れアの大河シル・ダリヤのゴールのアラル海がやせ細た広場には高さ 20ｍ近い巨大なレーニン像が聳え立り、いずれは砂漠の中に消滅することになるのだ。っていた。ソ連が崩壊して 15 年。「いまどき、まだアラル海沿岸の漁民の生活がその基盤から破壊されレーニン像かなあ？」と思う。茜色の夕空を背景に、ているわけだ。人間の生産活動と地球環境のバランレーニン像をシルエットにして撮影。ソ連型社会主ス。それが崩れれば、「持続不可能な開発」になって義のたそがれと、この日のたそがれを合わせて「たしまう。そがれのレーニン像」というテーマの写真作品がで〔国境を越えて〕2 時間ほど走って、国境へ着いた。きた。私事にわたるが、妻はこの作品に次のような検問はけっこう厳しい。深さ 1.5m ほどの溝が掘って短歌を詠んだ。あり、係官はそこへ入って、自動車のボディーを下たそがれのレーニン像は寂しかな滅びし国のから点検する。密輸品や密入国者のチェックだ。タ名残とどめてジキスタンへ無事入国できたが、国境を越えた途端〔ソグド人の足跡を追う〕紀元前 6 世紀のペルシに、道路事情が一変した。舗装道路が消えた！ガタャ帝国以来、内陸アジアの交易を担ってきたのがイガタの道路をタジキスタン第 2 の都市ホジェンドまラン系のソグド人だった。ゾロアスター教（拝火教）で走ることになる。40℃近い気温のなかを、エアコを信仰する彼らは 8 世紀前半にアラビア半島から拡ンのない車で窓を開けて土煙をもうもうと上げて走大したアラブ人イスラム教徒の攻撃を受け、9 世紀に 2 －会報 50 号－政治的勢力としての力を失った。彼らの残した都市キスタンに入り、最南部のテルメズまで南下した。遺跡の最大のものがペンジケント遺跡である。そこアム・ダリヤをはさんで、1 キロ先の対岸は戦火の止へ行くには、ホジェンドから南下し 3400ｍの峠を越まぬアフガニスタン。高圧電流が流れている有刺鉄えねばならない。その峠越えの道路は未舗装で、ま線の防護帯が二重に張り巡らされ、撮影もできなかるで山岳ラリーのコースのようである。舞い上がるった。この町は紀元前 4 世紀のアレクサンドロスも、土ほこりのために一瞬前が全く見えなくなることも紀元前 2 世紀の中国の張騫（ちょうけん）も、紀元しばしばだ。深い谷底には、転落して大破した大型後 7 世紀の玄奘（げんじょう）も、14 世紀のモロットラックの残骸も見える。峠を越えてザラフシャンコの旅行家イブン・バトゥータも訪れている。いや、川の渓谷を東へさらに 60 キロ行くと、ペンジケントそれどころか、1979 年 12 月には、ソ連軍が、このの町に辿り着く。シルクロードの中心都市とも言う地を補給基地にしてアフガニスタンへ、泥沼の侵略べきサマルカンドまでは、あと 50 キロの地点だ。こ戦争を行ったのだ。の町の民宿に一泊。カタコトのロシア語でも、民宿〔再びタシュケントへ〕テルメズからタシュケンの家族の皆さんと意思疎通が成り立ち、私は一家のトへ国内線の飛行機で移動した。眼下に見えるウズ食卓に招かれて心温まる体験ができた。翌日、ソグベキスタンの大地は赤茶けた沙漠がどこまでも広がド人の都市遺跡を訪ねる。ザラフシャン川を見下ろる。その中に緑のベルトのように伸びるのはオアシす小高い丘の上に遺跡があった。ペンジケントとはスの綿花畑。1 時間半ほどでタシュケントに到着。旅「5 つの町」という意味だ。ゾロアスター教の神殿やの最後に訪れたのは日本人墓地だった。第 2 次世界民家の跡があった。遺跡の中央部分には、当時の街大戦末期、1945 年 8 月 9 日に、ソ連は対日参戦に踏路があり、車輪の轍の跡も見えた。8 世紀前半にアラ切った。これは 1945 年 2 月のヤルタ会談の秘密条項ブ人イスラム教徒の攻撃によって滅んだソグドの（ドイツ降伏後、3 ヶ月を目途として対日参戦を行人々の生活の匂いを感じる一瞬だった。う）に沿った行動だった。当時、現在の中国東北（旧〔タジクの人々〕ペンジケントから、さらにもう満州）に展開していた日本軍は経験及び装備共に不一度別の 3400ｍの峠を越えて首都のドゥシャンベま十分なものだった。多数の犠牲者（民間人の「満蒙で、また「山岳ラリー」だ。もう、へとへと・・・・。開拓団」を含め）を出して終戦。日本軍兵士 65 万人翌日はクシャーナ王朝時代に建てられた仏教僧院遺（これは定説。100 万人以上との説もある）が捕虜と跡を訪ねた。綿花畑の真ん中の遺跡。近くの農家のなった。ソ連のスターリン政権は彼らをシベリアにおばあさんが甘いスイカをご馳走してくれた。その連行し、極寒の地で鉄道建設や森林伐採などの強制柔和な表情に、彼女が今まで歩んできた人生の年輪労働を行わせた。当時の日本軍の現地指導部（関東を感じさせる人だ。中央アジアの町でも村でも、高軍総司令部）は 1945 年 8 月 29 日付けの公式文書で齢の人たちが、ある種の威厳をたたえ、地域の人々極東ソ連軍総司令官に対して「ソ連軍の経営のためから尊敬の念を集めている例をたくさん見た。イスに日本軍兵士をご活用ください」と明記している。タラフシャンというオアシス都市のナイフ工房の師関東軍指導部は自らの地位と安全の代償に兵士を売匠もそうだ。一つの仕事に何十年も打ち込んで、身り渡したのだ。抑留日本軍兵士のうち、確認されたにつけた技と威厳が、鎚音とともに伝わるようだっだけでも 6 万人が命を落とした。その抑留日本兵のた。ドゥシャンベに戻る途中、スイカや瓜を売る露一部は中央アジアへ移送され、強制労働に服した。店で仲良くなったベローズ君（12 歳）とペルヴィーそして、見知らぬこの地で息絶えた人々を、ひとりズ君（11 歳）兄弟。アディダスのＴシャツがよく似のウズベク人が墓地を作って、葬ってくれた。私が合う少年だった。ロバにまたがって一緒に写真をと訪れた時、現地の男性（そのウズベク人の孫に当たったヤコブ君（10 歳）は、別れるときに、いつまでるフッラームさん 38 歳）が、お墓と慰霊碑を丁寧にも手を振っていた。清掃していた。私はロシア語で、彼に話しかけた。「私たちは日本人です。ありがとうございます」と。〔アフガン国境へ〕タジキスタンから再びウズベ 3 －会報 50 号－２００７世界陸上競技大阪大会を終えてこの墓地に埋葬された 70 名余りの日本人の氏名と出身地が墓碑に刻んであった。青森から鹿児島まで、全国各地からだ。彼らは、息絶える時、自分がどこで生涯を閉じようとしているのかも分からなかった 8 月 24 日から 9 月 2 日まで、東京大会以来 16 年に違いない。せめて、生きて故郷の土を踏みたかっぶりとなる「2007 世界陸上競技大阪大会」が大阪たに違いない。そう考えると、私の胸は張り裂けそ長居競技場で開催されました。本校体育科の大松敬うになる。私はこみ上げるものがあって、嗚咽して子先生は、長年の陸上競技指導で培った経験を認めしまった。フッラームさんは私の背中をなでて慰められ，スターター・リコーラーを務められました。てくれた。この墓碑はまさに「慟哭の碑」である。大松その慟哭は、シベリアや中央アジアで息絶えた旧日敬子（保健体育科教諭）暑い熱い試合が終わりました。今年も日本一暑く、本軍兵士の慟哭であり、またその家族の慟哭であり、亜熱帯と化した OSAKA での 9 日間の戦いが終わりそして私の慟哭でもある。ここは旅の最後の訪問地ました。自分との戦い、他人との戦い、天候との戦に相応しい。シルクロードのロマンをかきたてる中いはどれもみな過酷なものでした。成功だったかど央アジアは、ソグド人とアラブの興亡、イスラム諸うかは出場した選手と、試合に関わった人々がどの王朝とモンゴルの興亡、イスラム教徒と帝政ロシアように感じられたかによるとは思いますが、私自身の興亡、旧日本軍兵士の抑留などに見られるように、は無事に終わって良かったということ、世界の広さ地球上の他の土地と同様、人類史の栄光と同時に悲を知ることができたこと、やはり陸上競技はすばら惨をも併せ持つ大地だった。しいと再確認できたことが良き思い出となりました〔旅を終えて〕今回の旅では、少年の日に憧れたし、これからも陸上競技に指導者として、審判としシルクロードを地上の旅で体験しただけではなく、て、ファンとして関わっていきたいと改めて思いま現代の中央アジアに暮らす人々と生きた交流を体験した。できたことが大きな収穫だった。英語がほとんど通東京大会以来 16 年ぶりに 8 月 25 日から 9 月 2 日用せず、ロシア語か現地のタジク語あるいはウズベに猛暑の大阪で開かれた世界選手権で私はスタータク語しか通じない地域で、どこまでコミュニケーシー・リコーラーを務めました。去年より審判編成がョンが可能なのか自信はなかった。しかし、たとえ始まり、練習会も含めて 11 日間の試合をなんと６名カタコトではあっても、ロシア語が壁を破る力とな（男女 3 名づつ）で組まなければいけないことになった。10 代の終わりから 20 代初めにかけて学んだりました。主任は大阪教育大学の陸上競技部の同級語学が 40 年近くたって、実際に役立ったのは本当に生で、15 年ほど大きな大会でコンビを組んできまし嬉しかった。また、今回の旅はアレクサンドロス大たので心丈夫でしたし、他の方とチームワークも大王の東方遠征からアフガン戦争まで、古代から現代変良かったと思います。ちなみに補助員も大阪教育までの歴史を追体験する旅でもあった。世界史の教大学の陸上部員でした。員という立場からすれば、これまで「わかりきったこと」として若い世代に語ってきたことが、現地へ本来は 1 種目につき同じ者がスターター・リコー行ってみると、実は不確かだったり、間違いであっラー・判定装置つきと３名から 4 名の編成を組むのですが、次の種目のメインスターターは休憩を入れたりしたことが少なくなかった。自分が新たに知りる等を考慮するとうまく回らずに、結局メイン以外えた世界が拡がれば拡がるほど、これまで「知ってはいろいろな種目を担当することになりました。まいると思っていた世界」が、本当は小さな世界であた、人数が少ないために 4 種目連続で担当し、2 時間ったことに気づく。だから旅を終えた今、私はこうほどあの日差しの中に出るという過酷な日もありま思う。「世界と人間をもっと広く深く知りたい」と。（ささきしたので、皆が体調管理に苦労しました。とにかくとしまさ）睡眠時間を確保することに始まり、水分補給や栄養 4 －会報 50 号－補給、マッサージ、ストレッチ等考えられることはをよく見ました。サングラス禁止でしたので、目がとにかくしました。1 人でも欠けると大変という状況疲れましたが、おおむねスタートの瞬間を見極めらで６名全員がよくぞ体力・集中力が続いたといまされたと思います。フライング判定機はヨーロッパに 2 らながらほっとしています。テレビ局のスタッフ・セットしかなく、国際試合毎に世界をまわっているボランティア・大学生の補助員も、もちろん選手ものだそうですが、1000 分の 100 秒の設定で反応し、熱中症で倒れる中、私たちスターターも含めて平均選手の足の振動をとらえフライングを取るようにな年齢がはるかに高い審判だけが倒れなかったそうでっています。が、それ以外の動きの判定は審判の判す。これは大会を支えているという使命感・責任感断に任されています。今回も機械は反応せず目視のからだと思います。何しろあの暑さの中、グランドみでリコールした者が３分の１になりました。審判よりも低い室内練習場が控え室で、クーラーも無い長とスターターだけが選手を失格にする権限を持っ場所で朝から晩まで過ごしたのですから。ているのですが、残念ながら 100M で 2 名の失格者私自身は女子の 100M ・100M ハードル・1500M・が出てしまいました。試合全体では 4 名です。仕方車椅子 1500M・1000M・4×100M リレー・マラソのないことながら後味の悪いことです。ンのメインを務めました。今年から国際大会は審判世界選手権はオリンピックと同じように各国 1 名用語が英語になり、「ON YOUR MARKS」「SET」のと標準突破選手が出場します。グランプリのように掛け声となりましたし、いろいろな場面で英語で注トップ選手ばかりでなく、監督もコーチもおらず一意しなければいけないことがありました。英語の苦人でやってきた選手もいれば、1 ヶ月ほど前からわざ手な私は事前に帰国子女の生徒に発音を聞いて練習わざ暑さに慣れるために大阪や和歌山・丸亀・沖縄しました。一日目に他の審判の方から世界陸連の方等で練習をしていた大国もあります（日本はなんとが発音がきれいだとほめてもらいました。生徒のお涼しい北海道で練習していたそうですが）。宿舎も高かげです。ありがとう。その英語ですが、各国からいので簡易宿舎に泊まっていた選手もいます。国のこられた国際審判員の方や、セイコーの機材スタッ格差が成績にも現れるのは少し寂しい気もしますが、フのイギリス人の方といろいろとお話がしたかった選手たちの動きや思い、観客の思いが一体化したあのですが、片言の単語しか並べられなくてもどかしの熱気とどよめきは競技場自体を動かしているかのい思いをしました。5 年後のロンドンオリンピックにようで鳥肌が立ちました。高速トラックでベストをはぜひとも渡英し、英語で話しをしたいと思ってい出した選手は大勢いたのですが、期待された世界新ます。外国のかたがたとコミュニケーションととる記録は出ず、世界 1 位と莫大な賞金がかかった順位には最低英語が必要と再認識しました。附属学校の争いとでなかなか厳しい精神状態であったのだろう生徒の英語力はかなりあると思いますが、これからといまさらながら勝負の厳しさも実感しました。高校の皆様が快く送り出してくださったおかげで、の国際社会には必要不可欠なので力を入れて勉強しおそらく一生に一度であろう貴重な体験が出来たこてほしいと思います。とを感謝します。また、ピストルを撃つときには「緊張した？」「ドキドキした？」とよく聞かれましたが、国際試合を（おおまつ 10 年以上経験していましたし、最初は予選から始まりますからそれぞれの選手の特徴がつかめますので、かなり落ち着いて打つことが出来たと思っています。ただ、今までの「位置について」「用意」とは間合いが違い、英語のほうが短いので、選手の動きも早く、スタートのタイミング（全員が止まったら打つ）がとりにくかったのと、フライングを出来るだけ取らないで済むようにしようとスタート前の選手の動き 5 けいこ）－会報 50 号－吹奏楽コンクール関西大会に出場して私たちは”上手な演奏”ではなく”思いきり私たちらしい演奏”が舞台でできたのではないかと思っています。関西大会での結果は一歩届かず奨励賞でしたが、吹奏楽部は、昨年に引き続き今年も北摂大会、大演奏が講評された用紙の枠外に力強く書かれた『大阪府大会を勝ち抜き、8 月 20 日、奈良県橿原文化会いなる可能性のある band です!!』という言葉は、と館で行われた関西大会に出場し奨励賞を受賞しまても感動的でした。した。生徒自らが選曲をし、指揮をし、曲を練り上私たちがコンクールまでのプロセスで得たものはげ獲得した輝かしい受賞です。部長の植木美帆さんこれからのさらなる『可能性』につなげるために、からの報告です。日々の活動を積み重ねていきます。附高吹奏楽部としての成長はまだまだ終わらせません！今後ともぜ吹奏楽部部長植木美帆（2-1）ひ応援よろしくお願い致します。改めて、どうもあ今夏の吹奏楽コンックールで、私たちは留学生のりがとうございました。コンスタンティンを含めた 1,2 年生 23 名で『ヴァレ～～～～～～～～～～ンシアの寡婦』という曲を演奏し、高校小編成部門ひとつ裏話を紹介させて下さい。府大会目前、留において地区・府大会を経て、大阪府代表として関学生のコンスタンティン（ドイツから）が体調を崩西大会の舞台を踏む機会をいただきました。関西大してしまい本番に出場できなくなってしまうという会には昨年に引き続く２回目の出場となりました。事態が起こりました。欠員が致命的だということよ夏休みをまるまる費やして私たちを見守って下さっりむしろ、府大会で終わってしまうと留学生であるた顧問の先生方、出場にあたり様々な形で応援して彼と演奏するチャンスが私たちになくなってしまう下さったすべての方に感謝しております。本当にあことが問題でした。これは絶対に関西に行くしかなりがとうございました。い。部員の意向で、コンスタンティンが叩くはずの選曲が始まる５月から本番の８月までの３ヶ月は、ふり返る私たち自身も驚くほど密度の高いものです。数十曲の候補から『ヴァレンシアの寡婦』を選ぶまスネアドラムは本番も舞台上に置いておきました。関西大会へ通ったとき、喜びと同時に（どこにあの切実な願いが通じたのか）というビックリがありまでに重ねた、数えきれない話し合い。また、楽譜がした。（うえきみほ）入手困難だったことから一人一人の譜面を部員総動員で書きおこしたことも例年にはない大変な作業でした。書き上げた譜面は約 340 枚。まともに練習ができる状態になるまでには予想を超える時間と労力弓道部近畿大会出場がかかったのです。しかしそのそれぞれに部員全員で関わることで、この曲が私たちにとって単なる”練本校弓道部は、本年始めて近畿大会に出場しまし習すべき曲”でなくなったのは間違いありません。た。弓道場の設備が無いために、炎天下での練習でｺﾝｸｰﾙでの学生指揮は、昨年同様他校にはない附高真っ黒になりながらの過酷な練習に耐えての成果吹奏楽部の特徴ですが、学生が指揮台に上って演奏でした。部員の附属高校の生徒だけが日に焼けていを引っ張ることを、部員は全くハンデとして捉えてたという報告が印象的でした。いないと自信をもって言うことができます。なぜなら、良い意味で指揮者と演奏者が対等になれるから弓道部部長小新智美（2-4）です。練習が本格的に始まってから本番までの２ヶ私たちは 11 月 4、5 日に和歌山県田辺市で行われ月間、「（ヴァレンシアの世界を作るために）こうした近畿大会に男女個人と女子団体で出場しました。よう」とひたすらみんなに呼びかけていたのは指揮我が弓道部にとって近畿大会出場は初めての快挙で者だけでなく演奏者でもありました。そこに上下関す。夏に近畿大会予選があり、そこから個人で男女係はいりませんでした。こういった活動の結果、 6 －会報 50 号－各 10 名、団体が各 3 校、近畿大会の出場権を得ます。奥の深いスポーツです。例えば、的に向かう時には初の近畿大会ということで、知らないことばかりでいつも礼をします。これは誠心誠意行射を行うといしたがとても良い経験となりました。納得のいくよう意味があります。弓というのは本来、生き物の命うな結果が出せなかったため、来年は大阪で行われを奪うものでしたので、道場には神棚があったり日るこの大会に今年の１年生が成長して出られることの丸が掲げられていたりします。そのくらい神聖なを期待し日々の練習に励んでいます。冬は寒いため場所であるため、礼を切り離せないのかもしれませか試合が少なく、2 年生の公式戦は 5 月 6 月に行われん。るインターハイ予選を残すのみとなっています。私たちは運動場奥のバレーコートの片隅に場所をそれでは、弓道部がなぜ急に活躍しだしたのかを確保して練習しています。試合で結果が出せれば、私なりの解釈で伝えたいと思います。私たちが熱心道場が建つこともあるかもしれないとわずかな希望に練習を始めたのは去年のことです。それまでは弓をもちながら…。これから冬にかけてますます過酷を引けるようになりたいな、という娯楽のような部な練習環境となりますが、部員が皆一本一本意義の活動だったと思われます。しかし去年の先輩方が、ある射をできるようになっていきたいと思っていま練習の方法を考え直したので練習量が増えました。す。意識も高まり、弓道部は生まれ変わったのです。学最後に良い報告です。11 月 10 日に行われた全国選校での練習は平日のみですが、上手くなりたければ抜弓道大会府予選において男子個人で上田が 2 位と休日は道場へ通うように勧めています。学校の環境なり、全国にはあと一歩およびませんでしたが近畿ではできない体配と呼ばれる弓道の礼儀作法をきっ選抜弓道大会の出場権を得ました。1 月に行われる近ちりとやることで、弓道の本質に少しでも近づけた畿大会にて、11 月のリベンジで上位入賞を狙えるよら、と思っています。道場には趣味で何十年も弓をう練習に励んでいます。皆さん応援よろしくお願い引いておられる方がたくさんいるので、指導をしてします。（こしんともみ）いただくこともできます。しかし 4 月は本当に辛いスタートでした。20 年間顧問をして下さっていた田中博康先生が転勤なさるという事実を去年の 3 月末に知らされ、結局顧問が英語暗唱大会で優勝して・・ゼロからの始まりでした。始業式よりも前から顧問の先生を探しまわった事は記憶に新しいです。顧問 10 月 28 日に行われた「第 47 回大阪府高等学校を受けていただいた桑原先生と牧野先生には本当に英語暗唱弁論大会感謝しています。暗誦の部」で、1 年生の国松安奈さんが優勝しました。この大会に、本校は毎年参ところで皆さんに少し弓道について知ってもらい加し、優秀な成績をおさめてきています。今年も多たいと思います。私たちは基本的に 28 メートル先にくの生徒が入選しましたが、暗誦の部で優勝した国ある直径 36 センチの的を狙います。高校生の行うよ松安奈さんに優勝の喜びを書いてもらいました。うな的中制の試合では、的の真ん中にあたっても枠の方にあたっても点数は同じです。○か×で判断さ国松れるので試合が淡々とスムーズに進みます。弓道の “ Please 試合は個人の的中が全てです。団体戦といっても３ make your 安奈 actions （1-1） reflect your words！” 人ないし 5 人の的中を合計して競います。しかし、この文は 1922 年の地球環境サミットで当時 12 歳その的中を出すためには自己の高い精神力と集中力だったセヴァン・スズキさんがされたスピーチの一が不可欠です。試合は的中があれば良いのですが、文で、今では伝説のスピーチとして語り継がれてい本当に「弓道」をやろうと思うとただ引けばいいとます。このスピーチは彼女が世界中で起きているいう簡単なものではなく、体配や射形も大切となる様々な問題を子どもの目から見て素直に表現したも 7 －会報 50 号－ので、大人達が言えなかった事実を言い当てた事でってから、見知らぬ女の子が「あなたのスピーチで有名です。私はこの一文が頭の中から離れません。涙が出てきそうになりました。」と言って歩み寄って私が初めてセヴァン・スズキさんのスピーチと出きてくれました。私はその時そのような事を言って会ったのは、高 1 の夏休みに入る少し前でした。授くれたことに驚いたと同時に本当に嬉しかったです。業で見た彼女のスピーチに圧倒されました。何か心優勝できた事はもちろんのことですが、見知らぬ女の中に訴えてくるものがあったのです。わずか 12 歳の子にそのように言ってもらえたことも、この暗唱という年齢だとは思えないほど、切々と世界の貧困大会に出場した私にとっての最大の喜びとなりましや環境問題について訴えていました。「すごい、本当た。私は今年の 11 月にユネスコ主催の中国の高校生とにすごい！」高 1 の夏休みの宿題にセヴァンさんのスピーチをの交流団の一員として中国に行く機会を持つことが暗唱するという宿題があり、夏休みが明けてすぐに、出来ました。この訪問の中で中国と日本の生徒の共そのスピーチのテストが行われました。その結果幸同学習として、貧困、環境問題など世界で起きてい運にも私が大阪府の高校生英語暗唱コンテストに出る問題についてのディスカッションを行いました。場することになりました。セヴァンさんのスピーチはこれらの問題について述セヴァンさんのスピーチは 6 分間ですが、私に与べられていた上、この訪問に際して掲げられていたえられたスピーチの時間はわずか３分間だったため、重要なキーワードも含まれていました。そのためセ文章を短縮しなければなりませんでした。ところが、ヴァンさんのスピーチは偶然にも、日中交流のディどのセリフも意味が深い文ばかりで削るのに大変苦スカッションの目的にぴったりだったのです。そし労しました。そしてそれから、ほとんど毎日隅田先て私は光栄にも中国の方の前でも、もう一度スピー生のご指導のもと、スピーチの練習を重ねました。チをさせていただきました。中国の高校生の一人が大会当日、会場に入った途端に、あちらこちらでこのスピーチの内容に深く感銘したことを語りかけ練習をしている人を目にしました。手の動作を大きてくれて、その後の交流へと繋がったことも思い出くして、物語風にスピーチをしている人を見た私は、深い経験です。また、このような経験を持ったこと圧倒されました。私のとは違う。私はあれほど手をで、人に心を込めて語りかけることの大切さを学ぶ動かさないし、あんなに激しく顔の表情もつけない。ことができ、相手の心に響いた時の喜びを体験するあらゆる人の迫力のあるスピーチを見てこのようなことができました。大会が初めてだった私は、その場の雰囲気に飲み込このスピーチコンテストは私に味わったことのなまれそうになりました。不安になった私は先生にそいような感動を与えてくれ、私の貴重な財産となりのことを打ち明けると、先生はこう励ましてくれまました。そして私は、何かを達成するにあたって、した。「自分らしくしたら大丈夫よ！」と。私は「自自分を信じることがとても大切なことだと気づいた分らしく」という言葉をかみしめ、徐々に自信を取のです。このような機会を与えてくださった隅田先り戻すことが出来ました。そして、頑張って「自分生を始め、会場まで応援に来て下さった山田学先生、の気持ちを相手に伝えよう」ということを意識して、ウォルシュ先生、そしてこのことに関わって下さっスピーチしようと思ったのです。予選を通過したのたすべての先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。ち、行われた決勝スピーチでは、私は、審査員方や本当にありがとうございました。会場にいる人達との適度なアイコンタクトや間の取（くにまつあんな）編集後記り方を意識して暗唱をするように心がけてスピーチを始めました。しかしスピーチの後半になると、気生徒が様々な場面で活躍してくれています。特にこの夏持ちが入りすぎてあまりそのことに意識が回らず、に成果をあげた吹奏学部・弓道部は、日常の指導者もいな彼女になりきってスピーチの内容を訴えようというい状況の中で、部員同士力を合わせてよく頑張りました。日ごろから何かと在校生の面倒を見てくれている卒業生の気持ちしかありませんでした。決勝スピーチが終わ皆様に感謝します。 8 （奥村芳和）