864.本当に大丈夫? 他人の家に宿泊、米旅行サイト体験 破 日本経済新聞2012.12.16. 1000 急成長「エアB&B」1000 1000万泊突 (傍線:吉田祐起引用) ”として、米国の若者のあいだで愛用者が急増している旅行サイトが ある。米エ “新しい旅の仕方” アビーアンドビー(エアB&B)だ。旅行者と空き部屋を貸したい家主をネットで結びつけたサービス で、同サイトを通じて成立した宿泊日数はすでに1000万泊を超えている。滞在先が「ひとの家(う ち)」となるため、旅先で住民感覚を味わえるうえ、宿泊費が通常のホテルより割安となるのが支持 を集める理由だ。ただ、実際どうなのか、不安を抱く人もいそうだ。記者自ら米2都市でエアB&B 旅行を体験してみた。 (ニューヨーク=清水石珠実) 160 300 ■サンフランシスコ「1泊160 160ドル以下」で300 300件も候補 米エアB&Bのサイトの利用方法は、通常の旅行サイトとほとんど変わらない 最初の宿泊都市はサンフランシスコ市(カリフォルニア州)だ。宿泊先は、会社の出張規定に基づ き1泊160ドル以内で探すことにした。通常の旅行サイトに宿泊予定日を入力すると、市内のホテ 350 ルは軒並み350 350ドルを超えており、泊まれそうな物件はほとんど見当たらない。一方、エアB&B のサイ トでは予算以内の物件が約300件見つかった。ホテル代が高騰する大都市で予算内のホ テルを探すのに苦労した経験を持つビジネスマンは多いと思うが、エアB&Bはそんな場面でも役 立ちそうだ。 借りられる物件は、「家(アパート)全体を借りる」「1人部屋に泊まる」「相部屋に泊まる」の3種類 に分かれる。出張の場合、他人とシャワーや洗面所を共有する煩わしさは避けたいので「アパート 全体を借りる」を選択。それに、「駅のそば」や「ネット接続有」などを条件に加えると、宿泊候補は3 件に絞られた。 ■内外装の写真が充実、利用者の書き込みも参考 -1- エアB&Bのサイトは、物件の内装や外観の写真が充実している 各物件とも家の外装から部屋の内部まで写真が充実しており、それらを一つ一つクリックしながら 「どこに泊まろうか?」と選ぶ作業はなかなか楽しい。どの部屋も印象が似ているホテルとは違い、 部屋の内装は「地中海風」「ヴィクトリア調」など家主の好みで大きく異なる。「家主がとても親切」「近 所にたくさんレストランがある」など、過去の利用者による書き込みも家主の信頼度や近隣の雰囲 気などを判断するうえで多いに参考になった。候補3件のなかから過去に女性の宿泊者が多い物 件を「治安がいい証拠」と判断し最終選択した。 1泊費用は153ドルと十分に予算内だ。 エアB&Bのサイトの使い方は、通常の旅行サイトとほぼ同じ。チェックイン・チェックアウトの予定 日、支払い用のクレジットカード番号などの必要情報を入力して「決定」を押せば予約が完了する。 ただ、通常のホテルと違うのはここからで、事前に家主とカギの受け渡しの相談などをする必要が ある。記者の場合は、予約完了から30分後に「うちへの宿泊を歓迎します。当日、家の近所に着い たら、友人マークに電話して。電話番号は以下の通り。彼がカギを持参します」とのメールを受け取 った。 ■地元民しか知らない生の情報が得られる 「お待たせ。ミッション地区にようこそ」――。宿泊当日にアパートの前に到着して、指定の電話番 号に電話すると、3ブロック先に住むという家主の友人のマークさんが走ってカギを届けてくれた。 ミッション地区は、地元民に愛されるレストランやカフェが集まる地区として知られる。住民の中心 はベ ンチャー企業に勤める若者層やヒスパニック(中南米)系の人たちで観光客の姿は少ない。 部屋に案内してもらう間、スーパーマーケットやコーヒー店の位置などの役立ち情報を教えてもら う。 サンフランシスコ市ミッション地区にあるアパート。部屋は貸し切り、ネット接続完備だが、 通常のホテルの約半額で借りられた 「レストラン選びに迷ったら電話して。いつでも相談に乗るよ」とマークさん。旅先ではおいしい店 が分からず「ホテルのルームサービスで済ます」という人も多いが、知り合いのいない旅先で地元 民しか知らない生の情報を得られるのがエアB&Bの醍醐味だ。 このアパートの持ち主は30代前半女性アン・マクナマラさん(仮名)。仕事で海外出張が増え留守 がちになったことをきっかけに、自分の部屋を「有効活用しよう」と思い立つ。現在、週に2~3日は 借り手がついている状態で、エアB&Bを通じて得た臨時収入は「ボーイフレンドとの海外旅行代に 充てている」という。 ■過去にトラブルを訴える家主も 昨年夏、エアB&Bを通じて物件を貸していた家主が部屋を汚されたと訴え、米メディアで大きく取 -2- り上げられるという事態が起きた。その後、同社はアパートの破損や備品の盗難などのトラブルに 対して最大100万ドルを補償する規約を導入し、苦情に24時間体制で対応するためのカスタマー サービスを立ち上げた。留守宅を貸し出すことについて前出のアンさんは、「最大100万ドルの補 償もあるし、友人のマークが頻繁に確認してくれているから全然心配していない」と語る。 ハドソン川に浮かぶ引退フェリー船「ヤンキー号」。船内で聞こえるのは優しい波の音だけで、 ニューヨーク市内のにぎやかさがウソのよう 滞在2カ所目の都市は、ニューヨークだ。「ニューヨークは何度か訪問。1泊350ドルもするのに、 狭くて湯船無しのホテルは飽きた」という人にお勧めなのが、エアB&Bを使って「船上に泊まる」と いうアイデアだ。 200 ■1泊200 200ドル以下、NYで引退したフェリー船に宿泊 引退フェリー船「ヤンキー号」では、老犬ミスター・ブラウンが出迎えてくれる 市中心部マンハッタンからフェリーで7分。ハドソン川対岸のニュージャージー州ホーボーケン市 の埠頭に100年前に引退したフェリー船「ヤンキー号」は浮かぶ。持ち主のビクトリア・マッケンジー =チャイルズさんは11年前に同船を譲り受け、住居に改造。「小さな民宿を経営するのが夢だっ た」ので、空き部屋を約1年前からエアB&Bを通じて貸し出すようになった。 「米国だけでなく、欧州からも多くの観光客が泊まりに来るわ」と、管理人のヤスミン・オウスリーさ ん。こちらは常駐の管理人がいるので、カギの受け渡しなどを心配する必要はない。同船を訪れる と、ヤスミンさんと老犬ミスター・ブラウンが出迎えてくれた。 ■オーナーは芸術家、オムレツ振る舞う日も -3- 同船のオーナー、ビクトリアさんはハンドメード雑貨のアーティストとしても活躍する人で、船内は カラフルでキッチュな彼女の作品であふれている。埠頭や船内の一角を利用して野菜やニワトリを 育てており、管理人のヤスミンさんによると「卵がとれた日は、ビクトリアさんが宿泊者にオムレツを 振る舞う」という。一歩船内に足を踏み入れると、聞こえるのは優しい波の音だけで、ニューヨーク 市内のにぎやかさがウソのような静けさに包まれる。 泊まれる引退フェリー船「ヤンキー号」。持ち主はアーティストのビクトリア・マッケンジー =チャイルズさんで、船内はカラフルでキッチュな彼女の作品で飾られている ニューヨーク中心地マンハッタン越しに昇る朝日が望めるのも、船上に泊まる醍醐味。 引退フェリー船「ヤンキー号」からの眺め 「ニューヨークで船に泊まれるなんてクレージーでかっこいい。船上から眺めたマンハッタン越し の朝日は最高だった。また泊まると思う」と、ベン・ホーリーさんは大満足だ。マンハッタンで行われ たスケートボード大会に参加するために米中西部から訪問中だが、市内のホテルはどこも高すぎ たのでヤンキー号を選んだ。ヤンキー号の宿泊費は、相部屋なら約140ドル、1人部屋なら約200 ドルだ。 ■ホテルでの滞在とは違った体験が魅力 -4- 「ヤンキー号」が停泊するニュージャージー州ホーボーケン市は、 NYマンハッタンからフェリーで7分のところにある 「安くて少し変わった旅行をしたい」と願う若者層から火がついたエアB&Bだが、最近ではその 人気が中高年層へも広がりをみせる。「子どもが巣立った後の空き部屋を貸してみたら、世界中か ら旅行者が来て面白い体験ができたと感じている人が増えている」(エアB&B広報のジェイコブ・ カーさん)からだ。こうした貸し手体験が、「次回旅行するときは使ってみようか」という宿泊者願望 に変わり始めている。 “脱・ホテル” ”な旅行。知り合いのいないはずの旅先で疑似的 米国で世代を超えて支持を広げる“ な友人がいるというのがこのサービスの魅力だ。「現地の人と会話を楽しむ」「短期でルームメート 体験をする」といったホテル滞在とは違った経験ができる。 「部屋が写真と違ったらどうしよう」「他人を泊めるのは怖い」――。赤の他人を家に泊めたり、他 人の家に泊まったりすることになじみの薄い日本人のなかには不安を持つ人も多いだろう。そんな 人のために「信頼できる物件」「信頼できる宿泊者」を見分ける仕組みが用意してある。過去にトラ ブルがあった人や物件がすぐに分かるように、家主、宿泊者ともに利用履歴がサイト上で詳細に公 開されている。ネットオークション(競売)で出品者、落札者ともに評価の対象としている仕組みと同 じである。 今回の体験では危険性は感じなかったが、ネットオークションと同様、こうした仕組みがあるから 絶対安全というわけではない。サイト上での宿泊先の記述が事実と異なっている場合、料金の払い 戻しを申請できるが、エアB&Bはあくまでも仲介業者。宿を提供するのは、個人の家主で、法律や 条例で一 定の基準を保つことを約束しているホテルと異なる。家主との事前のやり取りで怪しいと 感じたら、ためらわずにキャンセルするなど、気をつけながら利用しよう。 ヨシダコメント: 如何ですか、安価でステキな旅行が楽しめそうですね。これって、新規ビジネスですよね。日本人 の持家主人公の場合は、欧米人とは異なる家屋感覚を持ちますが、借家を持つ家主さんにとって は、新しい顧客づくりになるでしょう。ともあれ、ご参考に供する次第です。 No.1(1-300) No.2(301-400) No.3(401-500) -5- No.4(501-700)
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