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Dec. 2013
Vol.39
Medical Device Daily
未来を変える革新技術―医療イノベーショントップ 10……1
Medical Device Daily
韓国の医療機器輸出が躍進……3
Medical Device Daily
製造業に革命をもたらす 3-D プリンター……5
Healthcare Risk Management
混乱を招く統一性のない業務連絡コード……6
Hospital Employee Health
感染予防にはワクチン? それともマスク?……7
インド専門ニュース
インド通信……8
メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
未来をひらくバーチャル病院……9
The Academia Highlight[39]
循環器疾患治療の最近の話題……10
by うのめ・たかのめ
Medical Device Daily……11
Kawanishi Hotline……19
カワニシホールディングス
トムソン・ロイター
AHC Media LLC
Dec. 2013
Vol.39
未来を変える革新技術――
医療イノベーショントップ 10
人工眼や癌の遺伝子診断がランクイン
クリーブランド・クリニック(オハイオ州)は、
とができるからだ。同様の人工眼は、ほかにも複
毎年恒例となっている医療イノベーショントップ
数のメーカーが開発している。
10 を発表した。これは同クリニックが主催し、多く
の医療経営者や投資家、起業家、臨床医が集うメデ
ィカルイノベーションサミットで最も注目されるイ
ベントの 1 つで、今年もデバイス・バイオ・医薬品
など多分野の新製品が選出された。
同クリニックウェルネス部門の部門長 Michael
Roizen は、「選考委員が選んだイノベーションが実
用化されるまでには少し時間がかかるかもしれない
(ArgusⅡ>http://2-sight.eu/)
が、これらの技術や製品が 2 年以内に商品化され、
2
成功を収めることはまず間違いない」と語る。来年
の医療業界に大きな影響を与えると予想されるイノ
ゲノム解析による癌診断
ベーションの 1~10 位を紹介する。
ゲノミクスとは遺伝子に関する学問で、遺伝子
1
が細胞に与える影響や、遺伝子と疾患の関係を研
究している。近年、ゲノムの解析技術は長足の進
人工眼システム
歩を遂げ、手術なしに患者の腫瘍内の遺伝子を分
析し、癌の特徴や侵襲性を予測できるまでになっ
20 年の歳月と 2 億ドルを費やして開発された
た。さまざまな遺伝子診断が登場しており、癌の
人工眼システムが、ついに認可された。2 月に市
種類にあった治療法を選んだり、副作用を回避し
販前承認(PMA)を取得したこの人工眼は、網膜
の後ろに植込む 60 個の電極と小型カメラを搭載
たりできるようになってきた。
したサングラス、腰部分に装着可能な画像処理ユ
パターンが脳に伝わり、ある程度の視覚を得るこ
3
とができる。2011 年に CE マークを取得したこと
型の神経刺激デバイスは、FDA の諮問委員会で高
難治性てんかん用の
植込み型神経刺激装置
ニットで構成される。カメラで撮影した画像を電
気パルスに変換し、
ワイヤレスで電極に送信して、
網膜上の生きている細胞を刺激する。すると光の
難治性てんかんの発作頻度を低減できる植込み
や、2012 年に FDA の諮問委員会が強く推薦した
く評価された。これは小型の刺激装置を頭蓋内に
ことが、今回の承認につながった。
植込み、脳内のてんかん焦点に細いリードを配置
同クリニック眼科部門の Peter Kaiser は、
「こ
するもので、発作の予兆を検知すると微弱な電気
のシステムは、眼科業界に旋風を巻き起こす」と
パルスを発し、異常な電気信号をブロックするこ
語る。網膜は再生機能を持たないため一度損傷す
とで発作を未然に防止できる。
てんかん患者の 3 割は薬物療法で効果が得られ
ると視覚を失ってしまうが、
電極を植込むことで、
重度の網膜色素変性症患者でも視覚を取り戻すこ
ず、開頭手術によっててんかん焦点を取り除く外
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科治療が次の選択肢となる。この神経刺激装置は
低侵襲的に留置できるため、新たな選択肢として
期待されている。
C.ディフィシル感染症治療に
糞便細菌叢移植
C.ディフィシル感染症は、抗生物質の投与で正
常腸内細菌叢(腸内細菌の集合体)が壊れて引き
起こされる、
やっかいな薬剤耐性菌感染症である。
一般的な治療法は、バンコマイシンなどの抗生物
質の投与だが、糞便細菌叢移植を行う消化器専門
(NeuroPace>http://www.neuropace.com/)
医も多い。この斬新な治療法は、正常腸内細菌叢
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を持つドナーの糞便を食塩水に混ぜ、結腸内視鏡
幅に改善したが、さらなる発展を遂げようとして
ないようなコーティングを施した錠剤にするなど、
いる。C 型肝炎では初の経口薬となる sofosbuvir
デリバリー方法を変えれば受け入れやすくなり、
(ソホスブビル)に対する FDA の審査は、最終
新たな治療法となるだろう」と指摘している。
や浣腸で患者の腸内に送り込むもので、患者の腸
C 型肝炎用の経口薬
内環境を整えることができる。
同クリニック心臓血管部門の部長 Steven Nissen
1990 年代に比べると C 型肝炎の治療成績は大
は、
「ドナーの糞便を大腸に到達するまで吸収され
段階を迎えた。ソホスブビルは直接作用型抗ウイ
ルス薬(DAA)で、臨床試験での奏効率は 9 割を
超える。注射剤ではなく経口薬のため、長期にわ
たるインターフェロン療法に抵抗がある患者にも
使用できる。
(sofosbuvir>http://www.gilead.com/)
5
手術中の意思決定を支援する
麻酔情報管理システム
(http://www.clevelandclinic.org/)
により、
術中に収集する情報は飛躍的に増加した。
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最新のコンピューターや超小型の電子回路を組み
に毎年新たに 50 万人の患者が心不全と診断され
合わせた新しい麻酔情報管理システムは、薬剤の
ている。心不全治療にはさまざまな医薬品や医療
投与量や患者の生体情報を 1 つの画面に表示・記
機器が使用されているが、心不全で入院した患者
録することができる。リアルタイムの患者データ
の 5 年後生存率は 50%に満たない。しかし、心不
を収集して提示することで、術中の適切な診断や
全の症状を緩和し、ほかの臓器への悪影響を抑制
意思決定を支援する。
できる新たな治療方法が登場するかもしれない。
女性ホルモンのリラキシンが
急性心不全に有効
かつて、手術中に患者をモニタリングするツー
ルは、脈拍を測る指と、血圧を測るカフという非
常にシンプルなものであった。しかし麻酔の進歩
米国の心不全患者は約 500 万人と言われ、さら
同クリニック麻酔部門の部長 David Brown は、
妊娠中に分泌される女性ホルモンであるリラキ
「麻酔管理システムのおかげで医師は患者の治療
シンを人工的に合成した急性心不全の治療薬候補
に集中できるし、手術室のモニタリング装置をす
「Serelaxin」(ノバルティス社が開発中)は、心
べて統合することもできる。いい意味で、手術室
不全や心臓発作の発生後 2 日間投与した場合、症
の環境を一変する影響力がある」
と評価している。
状を緩和できることが証明されている。
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の場にいなくても、軽~中等度の鎮静剤を自動で
クを予測できる新たなバイオマーカーが発見され
投与できるコンピュータ支援下個別鎮静システム
た。腸内細菌が生成する副産物である TMAO(ト
(CAPS)を承認した。CAPS は、緊急時に麻酔
リメチルアミン N-オキシド)と呼ばれるもので、
科医を利用できる医療機関であれば、トレーニン
TMAO の血中濃度は、今までの診断法では予測で
グを受けることで麻酔医でなくとも大腸内視鏡検
きなかった、将来的に重度の心疾患が発生するリ
査時に使用できる。
スクを予測できる優れたスクリーニングツールに
コンピュータ支援下
個別鎮静システム
FDA は今年、大腸内視鏡検査の際に麻酔医がそ
心疾患リスクを予測する
TMAO アッセイ
心臓発作や脳卒中といった重度の心疾患のリス
大腸内視鏡検査を受ける米国人はこの 15 年間
なるという。TMAO 濃度を測定するアッセイは来
増加する一方で、その費用は年間 100 億ドルを超
年登場予定だが、TMAO を標的にした医薬品の製
える。CAPS は、限られた医療費とスタッフを有
品化はもう少し先になる予定だ。
効に活用し、内視鏡検査の効率化に貢献すると期
10
待されている。
B 細胞レセプターの
シグナル伝達阻害剤
B 細胞性リンパ腫の治療薬として、シグナル伝
達経路に関係する分子を標的にして癌細胞の分化
を抑止する経口薬が登場した。B 細胞レセプター
阻害剤 ibrutinib(イブルチニブ)は、癌細胞の増
殖や活性化を促すシグナルを効果的にブロックす
ることで癌の進行を停止し、正常な細胞を維持し
つつ癌細胞を死滅させる。ほかの治療薬と違って
正常な細胞にはほとんど影響しないため、免疫系
への影響がなく、副作用を抑制できる。
「Medical Device Daily」
(2013 年 10 月 17 日)
(SEDASYS>http://www.ethicon.com/)
韓国の医療機器輸出が躍進
経済成長の新たな軸として期待される医療機器産業
「輸出が増加した背景には、GE やシーメンスと
韓国保健産業振興院(KHIDI)の報告によると、
2012 年における韓国の医療機器の輸出は、前年に
いった世界的な大企業が、韓国を製造・輸出の拠
比べ 17.5%増の 20 億ドルとなった。特に新興国
点にするために投資していることが挙げられる。
に対する輸出の伸びが大きく、輸入の伸びは低調
また、韓国市場が非常に小さいため、国内企業が
だったことから、韓国の医療機器における貿易赤
輸出に積極的なことも影響している」と、KHIDI
字は縮小しつつある。
の主任研究員 David Hwang は説明する。
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おり、サムスンなど大企業の動向をにらみつつ
輸出の伸びは、BRICS(ブラジル・ロシア・イ
続々と進出していくと見られている。
ンド・中国・南アフリカ)諸国向けが特に顕著で、
2009 年以来、
年間 3~4 割増で成長し続けている。
「政府が医療機器産業を新しい経済成長の軸と
BRICS への輸出は 2009 年には医療機器の輸出全
位置付けたのを受け、韓国保健福祉部は、韓国メ
体の 8.2%だったが、2012 年には 23.3%を占める
ーカーが CE マークや ISO を取得するための助成
までになった。その内訳は、対中国が 1.75 億ドル
金プログラムなど、医療機器産業育成を目的にし
(前年比 66%増)
、対ブラジル 5,600 万ドル(同
た方針をいくつか打ち出している」と Hwang は
36%増)
、対ロシア 1.6 億ドル(同 25.4%増)
、対
説明する。
インド 6,700 万ドル(同 7.6%増)となっており、
経済成長が著しく、医療サービスに対する需要が
ウォンジュ医療機器テクノバレー
増大している中国での伸びが目立つ。一方で、先
進国に対する輸出は、2009~12 年の間で 2.8%減
少した。
「中国では米・日・欧州製の医療機器が人気だが、
購入の際にはたいてい政府を通す必要がある。韓
国メーカーの製品は米国や欧州のものほどブラン
(http://www.wmit.or.kr/)
ド力はないが、中国と地理的に近いため、価格面
で競り合える」と韓国輸出入銀行の主任研究員
韓国保健福祉部は、経済を牽引していく医療産
Oh Kyung-il は言う。
業を育成するため、2005 年から「先端医療健康産
高度に発展した電子・画像技術を有する韓国の
業特区」を指定している。現在、テグ・キョンサ
医療機器メーカーは、中国のメーカーに対する技
ン市とオソン市の 2 カ所が、政府の肝いりで開発
術支援が可能だ。これが急伸する中国市場のニー
中だ。また、2003 年に設立された「ウォンジュ医
ズと相まって、市場の多様化につながっている。
療機器テクノバレー」は、ウォンジュ市が 1998
急速な成長が見られた輸出に比べ、輸入は前年
年から進める特区の形成に大きく貢献している。
比 3.2%の微増にとどまっている。ただ、この輸入
さらに韓国保健福祉部は、3 月に医療機器メー
の伸び悩みは前年の輸入額が高かったことが原因
カーのための支援センターを海外に設立し、試験
であり、医療機器の輸入に関する需要は依然とし
的にサービスを開始した。
この支援センターでは、
て大きいという。
販売した韓国製医療機器のアフターサービスや、
韓国における医療機器の需要は、高齢化と国民
現地の医療従事者への教育、海外に進出する韓国
の健康意識の高まりにともなって増大している。
の中小企業への支援などを行う。初年度の 2013
一般的に、韓国の病院は先進医療機器を日・米・
年は、韓国政府が同センターの設立や事業にかか
独から輸入しており、輸入量では地理的に近い日
る費用の 8 割を援助しており、今後 3 年間は支援
本が最も多い。スイス貿易振興会の報告書による
を続けるという。
と、韓国における医療機器の 6 割以上は輸入で賄
一方 MFDS は、医療機器に関する規制を厳し
くしている。MFDS は今年 6 月 28 日に医療機器
われている。
韓国国内には約 2,000 社の医療機器メーカーが
法の改正を行い、危険度の最も高いクラス 4 では
あるが、そのうちの 78%は生産額 90 万ドル以下
STED(医療機器の承認等許認可の際の医療機器
の中小企業だ。しかし、韓国食品医薬品安全処
の有効性、安全性に係る基本要件に適合すること
(MFDS、旧 KFDA)によると、2012 年の医療
を示す証拠としての資料)の提出を必須化し、そ
機器の承認数は前年よりも 6.9%増えて 3,100 点
の他のクラスでも任意提出とした。現在は、ソフ
となり、国内で製造した医療機器の承認数が初め
トウェアの安全な基準の設定に取り組んでいる。
て輸入製品の承認数を超えた。韓国メーカーの多
「Medical Device Daily(2013 年 10 月 11 日号)
くはビジネスの拡大を求めて海外進出を目論んで
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製造業に革命をもたらす
3-D プリンター
導入で医療機器の可能性は広がるか
未来の技術が急速に実用化されつつある。3-D
ザインの微調整も容易で、調整によってフィット
プリンターは 3 次元データをもとに立体物を造形
感や機能性がどのように変化するかを確認するこ
する装置で、複雑な形状のものでも容易かつ短時
ともできる。
間で造形できることが特長。現在はインクの代わ
りに樹脂等をノズルから吐出し、断面形状を積み
重ねて立体物を造形する方法が主流で、製造業を
中心にさまざまな分野に普及している。医療分野
でも盛んに応用されており、今年 6 月には、気管・
気管支軟化症の新生児用に気管スプリント
(写真)
を作製したという報告もあった。
3-D プリンターでの試作品製作などを手掛ける
(http://uofmhealthblogs.org/)
rp+m 社は、3-D プリンターメーカーの ExOne 社
と 8 月に業務提携し、ExOne 社の 3-D プリンタ
このように、3-D プリンターで人体に使用する
ー用材料のラインナップにタングステンを追加す
デバイスが作製され始めると、3-D プリンターの
る契約を締結した。タングステンは、RoHS(電
技術をどのように規制するかという問題が浮上し
子機器での特定有害物質の使用を制限する EU の
てくる。現在 FDA は、傘下の研究機関で、3-D
指令)の規制対象である鉛の代替材料として期待
プリンターが将来的に医療機器の製造にどのよう
されており、鉛と同等の放射線防護能力がありな
な影響を与えるかを評価している。また、FDA の
がら、無害で、厚みや重量を 4~5 割軽減できる。
別の研究機関では、
コンピュータモデルを使用し、
両社は共同で、タングステン製の放射線防護シー
特定の患者用にオーダーメードで作成した医療機
ルドの開発に着手するほか、rp+m 社はさらに、
器を別の患者に使用した場合、安全性と有用性に
タングステン以外の材料の採用についても研究す
どう影響するかを評価している。さらに、3-D プ
るという。
リンターの造形方法の違いが、作製物の強度や耐
rp+m 社では、患者の CT 画像をもとに個人に
久性に与える影響を評価している研究機関もある。
あった人工股関節をつくることも可能だ。インプ
こういった研究は、FDA が将来、3-D プリンター
ラントは既製の型により大量生産されたものがほ
で作製したデバイスのサイズ、材質、安全性やイ
とんどで、個々の患者用にオーダーメードで作ら
ノベーションに関する評価基準を決める際の指標
れたものではない。外科医は植込み時に患者の解
となる。
剖学的構造にあうようインプラントを調整する必
3-D プリンターの登場で、製造方式はマスプロ
要があり、この過程が感染リスクを高めていた、
ダクション(大量生産)からマスカスタマイゼー
と同社 CEO の Matt Hlavin は説明する。
ション(大量カスタム生産)に移行しつつある。
3-D プリンターを使えば、こういった特注品が
「3-D プリンターは世紀の大発明であり、市場が
簡単に作製できる。従来、製品の開発は時間がか
どこまで成長するのかはとても予測できない」と
かるうえ、多額の設備投資が必要だったが、3-D
Hlavin は語っている。
プリンターなら必要な時に必要な分だけ作製でき
「Medical Device Daily」
(2013 年 9 月 4 日号)
るため、費用対効果にも優れている。さらに、デ
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混乱を招く
統一性のない業務連絡コード
院内放送は情報の透明性が重要
病院ではさまざまな業務連絡が暗号化されて放
代わりに平易な表現を使用するよう努めており、
送されているが、病院によって同じコードでも意
MHA は そ の た め の 用 語 集 も 開 発 し て い る
味が異なることがある。例えば、ある病院では「コ
(http://www.mnhospitals.org/)
。
ードレッド=火災発生」の意味で使っているが、
MHA のいう平易な表現とは、
「西棟 4 階で火災
別の病院では「セキュリティーのヘルプ要請」の
警報器が作動、患者や来訪者の避難は現段階で必
意味になるという具合である。
要なし」や、
「412 号室に緊急要請」といったもの
だ。以前は「火災」や「心臓発作」といった言葉
を院内放送で患者に聞かせるべきではないと考え
られていたが、最近の研究では、意味不明なコー
ドを耳にするほうが患者の不安をあおることが分
かっている。そのため放送では、何が起こってい
るのか、自分はどんな行動を起こす必要があるの
かが伝わるようにすることが重要だ。MHA が会
員の 322 の医療機関に行った調査でも、平易な表
(http://www.med.unc.edu/)
現で放送する方法に賛成する意見が大多数を占め
た。調査結果は以下のとおりとなっている。
病院によって放送のコードが異なると、医師や
スタッフが混乱するだけでなく、患者を危険にさ
患者や来訪者に伝えたほうがよい情報とは?
らす可能性まであると、ミネソタ州の病院協会
Minnesota Hospital Association(MHA)で患者
安全に取り組む Tania Daniels は指摘する。MHA
・医療的な緊急事態に関する情報:94%
が 2010 年に実施した調査では、患者の行方不明
・天候に関する情報:94%
を表すコードは 22 種類、安全上の警告を示すコ
・行方不明の患者に関する情報:90%
ードは 18 種類も確認された。
・火災に関する情報:87%
・危険物を所持した侵入者に関する情報:67%
「コミュニケーションミスは有害事象の最も大
きな原因となる。コードの統一性のなさは明らか
にコミュニケーション方法の問題であり、患者の
安全上の問題に関する放送は、扱いが非常に難
安全に直結する」と Daniels は警告する。スタッ
しい。これについては平易な表現がうまい解決法
フのなかには、院内で使用されるコードの意味を
とは限らないため、Daniels は、安全管理者や地
理解しきれていない者もおり、特に複数の病院で
元の警察と協同して解決法を探るようアドバイス
勤務する医師にその傾向が強い。
している。
「多くの地域では、地元の警察が状況に
混乱を避けるためには、まず、院内放送を利用
応じた標準の対処法を持っている。地元の警察の
した業務連絡を全体的に控えるべきだと Daniels
基準を採用すれば、万一の際に戸惑うこともなけ
は言う。携帯電話やパソコンなどを使うことで、
れば、対応に困ることもない」
。
院内放送は大幅に減らすことができる。また、放
送を行う際には、できるだけコードの使用を控え
「Healthcare Risk Management」
ることも有効だ。ミネソタ州の病院ではコードの
(2013 年 9 月号)
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感染予防にはワクチン?
それともマスク?
インフルエンザの感染拡大は本当に抑えられるのか
春の花粉症とならび、冬のインフルエンザのシー
変動的であることから、予防策としては弱いと感
ズンには、マスクを着用している人が俄然多くなる。
じる人もいる。ヴァンダービルト大学(テネシー
日常生活でマスクをする習慣のない欧米人には、日
州)
の予防医学部門の主任教授 William Schaffner
本人のマスク姿はいさかか奇妙に映るらしい。その
はそう話したうえで、
「病院は導入可能で効果のあ
感覚を逆手にとって、米国では「ワクチン接種か、
る、実践的な解決方法を模索している」とルール
マスク着用か」という究極の選択をスタッフに迫り、
導入に理解を示す。
インフルエンザワクチン接種率の向上をもくろむ医
一方、米国疾病予防管理センター(CDC)の医
務官 David Kuhar によると、マスクの効果に関
療機関も出てきた。ただ、これらの予防策には疑問
を投げかける声も上がっており、感染拡大を防ぐた
するデータがないため、CDC としてはこのルール
めの試行錯誤はまだまだ続きそうだ。(編集部)
を推奨していないという。
「インフルエンザの流行シーズンには、ワクチン
を接種するか、マスクを着用する」というルール
は、全米の病院でますます浸透しつつある。マス
クの着用を義務化することで、解雇といった強硬
手段を用いずに、スタッフのワクチン接種率を高
(http://www.methodisthealthsystem.org/)
めることができるためだ。
たっては、たいてい「誰に適用されるのか?」
「い
最大限の予防を
ネブラスカ州の医療機関 Methodist Health
つ、どこでマスクを着用していなければいけない
System も、
「ワクチンかマスクか」のルールを採
のか?」といった点が問題になる。これについて
用している。同病院の健康管理部門のリーダー
は病院によって対応が違い、一定数以上の患者に
Sue Davis は、院内の感染対策次第で、インフル
接するスタッフにマスク着用を義務付ける病院も
エンザの流行期間は長くも短くもなると語る。
米国病院協会が提唱するこのルールの導入にあ
あれば、ワクチンを接種していないスタッフ全員
Methodist では、インフルエンザとワクチンの
に、院内では常に着用するよう義務付ける病院も
効果についての講習を受ければ、いかなる理由で
ある。また、スタッフがマスクを着用しているか
もワクチン接種を辞退することが許されている。
を管理者に監視させ、着用しない場合には人事部
しかし、インフルエンザの流行時期になると、ワ
に判断を委ねる病院もある。こうした取り組みの
クチン接種をしていないスタッフは全員、病院の
多くは、非常勤の医師やボランティア職員といっ
通路や病室では必ずマスクを着用しなければなら
た契約社員にも適用されるのが一般的で、ある病
ない。昨年のマスク着用期間は 12 月から開始さ
院では、ワクチンを接種したスタッフの名札にス
れ、その間、病院の掲示板には、
「ワクチンを接種
マイルマークのステッカーを貼り、ワクチンを打
していないスタッフはマスクを着用している」旨
ったかどうかが分かるようにしている。
が告知された。また、せきなどの呼吸器症状があ
インフルエンザのワクチン接種は、流行するウ
る患者にも、マスクの着用が要請されたという。
イルス型の予測が難しいこととワクチンの効果が
導入当初は不満を訴えるスタッフもいたが、
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Vol.39
Methodist でのワクチン接種率は 70%から 95%
接種できない者もいるからだ。
Marshfield Clinic(ウィスコンシン州)は、ワ
へと大幅に改善した。
クチン接種には強く賛同しているが、接種してい
最小限の感染対策で十分?
スタッフがマスクを着用したがらないことを利
ないスタッフにマスク着用を義務付けてはいない。
宗教上、あるいは健康上の理由のある人はワクチ
用してワクチン接種率を高めることには問題があ
ン接種が個別に免除され、患者の治療エリアから
るとする病院もある。ヴァンダービルト大学の職
外れされるだけだという。
員用クリニックのディレクターMelanie Swift は、
同クリニックでは、体調の悪いスタッフには自
「マスク着用が患者保護のためというのなら、ワ
宅で休むよう指示し、職場復帰時に呼吸器症状が
クチン接種予定のスタッフも、接種前にはマスク
ある場合には、患者のケアをする間マスクを着用
を着用すべきだ」と、ルールのずさんさを指摘す
するよう義務付けている。
「Marshfield はワクチ
る。Swift はまた、スタッフのワクチン接種状況
ン接種の有無に関わらず、必要であれば適宜マス
という個人的な医療情報を患者、面会人、同僚や
クを着用する習慣がある」と安全衛生管理のマネ
管理者などに広く知らせることは、プライバシー
ージャーBruce E.Cunha は語っている。
の侵害になりかねないと話す。ワクチンを接種し
「Hospital Employee Health」
(2013 年 9 月号)
ていないスタッフのなかには、健康上の理由から
インド通信
インド専門ニュースサイト「インド新聞」より、運営会社ムロドーの
許諾を得て、最新情報をお届けします。(http://indonews.jp/)
治験は海外製薬ではなく
国民のために:最高裁(10/25)
る。同社はフランチャイズ方式を採用し、全国 700
カ所の研究所で毎日 2 万件以上の診断を実施して
インド国内で実施される臨床試験(治験)につい
いる。先ごろ同社株の 5%を売却した CX パートナ
て「インド人被験者を実験台として利用している」
ーズの購入時と売却時の価格から計算すると、現
として、医師や非政府組織(NGO)が海外の大手
在の同社の時価総額は 132 億ルピー(約 216 億円)
製薬会社を相手取り、公益訴訟を提起した。最高
となり、わずか 3 年の間に企業としての価値が 2
裁はこの主張を受け、
「治験は医薬品メーカーの利
倍に増大したことになる。同社の CEO は、業界
益ではなく、インド国民の健康増進を目的として
で最も低い水準に設定した診断料金が成長を促す
実施しなくてはならない」とする判断を示した。
要因となっていると語っている。
さらに、治験に関する規制を強化するよう政府に
インド医科大学、豪大学と
トラウマ治療の研究(11/13)
命じたほか、被験者の合意を音声か映像で記録す
ることを実施要件とする方針を表明した。政府の
統計によると、2005~12 年の間に行われた治験
全インド医科大学は、オーストラリアの医療機関
475 件で計 2,644 人が死亡しており、うち 80 人
アルフレッド・ヘルス、モナシュ大学、国立心的外
は治験が直接の死亡原因と認められたという。
傷研究所と共同で、トラウマ(心的外傷)治療の
研究を行う。これまで蓄積してきた知見や研究成
診断サービスのタイロケア、
時価総額が 3 年で 2 倍(10/28)
果を相互に提供し合い、治療体制の充実を図るの
が狙い。インドのトラウマ治療はまだ歴史が浅く、
診断サービスを手がけるタイロケア・テクノロジ
一貫した治療を受けられる体制の整備が遅れてい
ーズ(ナビムンバイ)が近年、急成長を遂げてい
るうえ、地域間格差も顕著となっている。
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8
Dec. 2013
Vol.39
未来をひらくバーチャル病院
スマートフォンとロボットで課題を解決
――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
最近、スマートフォン、テレビ電話、手術ロボ
も持ち出せる。さらに、病院に行かずして薬剤の
ットなど、すでに存在する技術を組み合わせて合
効果や副作用をチェックできるアプリなど、医用
理的な治療を追求し、遠隔医療や在宅治療の可能
アプリも続々と開発されている。
「患者の服薬遵守をフォローするのは難しいが、
性を広げる医療モデルが普及し始めている。
遠隔医療は、自宅や病院にいる患者と別の場所
スマートフォンと専用のセンサーがあれば、患者
にいる医師を ICT 技術によってつなぎ、テレビモ
のバイタルサインから容体をモニタリングし、最
ニターを通じて診断や治療を行う。慢性的な病
悪の事態を回避できる」
。こう断言するのは、モバ
院・医師不足に悩む地域の住人、自由に行動でき
イル医療の第一人者で、スクリップス・トランス
ない一人暮らしの高齢者といった患者に有用な技
レーショナル科学研究所所長のエリック・トポル
術だが、それだけではない。遠隔医療はすでに伝
博士だ。さらにトポル氏は、
「スマートフォンがあ
染病の流行、世界的に珍しい症例の治療法、ある
れば、現在米国で行われている心電図検査の 7 割
いは困難な外科手術などの医療情報を地球の裏側
以上が不要になる」と話す。
にいる専門家と共有し、迅速にアドバイスをもら
うために利用されている。
また、現在のロボット手術は同じ手術室内、も
しくは隣接する部屋からの操作が主流だが、将来
的には施設・州・国等の垣根を越えての遠隔操作
も普及すると思われる。全米で成功事例が報告さ
れ、その活躍ぶりに関心が集まっている支援ロボ
(http://www.cisco.com/)
ットの院内導入も進んでいる。
「医療アシスタント」
と呼ばれるこのロボットは、内蔵カメラで撮影し
新技術の相乗効果で、今後の医療環境は大きく
た患者の目や口内の画像を、患者と、現場で立ち
変わるだろう。患者は病院に行かないと受けられ
会う看護師の両方に提供するなどして、円滑なコ
ない診察がいつでもどこにいても受けられるよう
ミュニケーションを実現している。
になり、インフルエンザなどの流行期に通院する
医療に使用できるスマートフォン用のデバイス
必要もなくなる。病院は巨大ネットワークを通じ
やアプリも急激に増えている。例えば、患者の体
て機能とアウトカムを強化でき、複数の診療所な
の表面に取り付ける各種センサーや体内に挿入す
どに通う患者の健康を一元管理できるようになる。
るナノチューブなどのデバイスとスマートフォン
このような「バーチャル病院」の実現にあたっ
を組み合わせることで、場所を問わず、患者のバ
ては、欧米では個人情報のセキュリティーやアウ
イタルサインや血中の前立腺特異抗原といったマ
トカムに対する説明責任などが最も大きな壁にな
ーカー濃度を継続的にモニタリングできる。心臓
るとされている。日本ではさらに、診療報酬の取
発作が起きる数時間~数日前に医師や患者に警告
り扱いや保険外併用療養費の問題など、抜本的な
を発することができるのも、常時監視できるスマ
制度改正が必要となってくるだろう。しかし、先
ートフォンならではだ。ICU のモニタリング機器
進国が共通して抱える医療費の増加・医師不足・
と同等の性能を持った腕時計サイズのデバイスも
高齢化の現実を前に、バーチャル病院は確実に実
登場しており、スマートフォンと一緒にどこへで
現に近づいている。
9
Dec. 2013
Vol.39
The Academia Highlight アカデミア・ハイライト [ 39]
循環器疾患治療の最近の話題
うのめ・たかのめ
by
循環器疾患によるわが国の死亡数は約 35 万
ッピングを掲示している。このように、カ
人で、死因別では癌に続く 2 位となっている。
テーテルナビゲーションシステムの臨床現
脳血管系疾患が頭打ちであるのに対し、心疾
場への導入は静かに進行中で、術前ナビゲ
患は増勢で、発症究明による歯止めに期待す
ーションの普及も始まっている。米国では
ることは、以前本稿で伝えたとおりである。
術者の健康のために手術支援ロボットの設
置を働き掛ける動きもあり、循環器疾患の
今回は、最近開催された国内外の循環器関
連学会の話題も取り込んで、この 1 年余りの
治療現場はさらに変容していく。
間の循環器疾患治療の歩みを振り返ってみる。
診断キットの開発競争も激しさを増して
わが国の植込み型補助人工心臓(VAD)の
いる。冠動脈疾患では、患者は胸の痛みの
認可は欧米に比べ大幅に遅れていたが、一昨
ほか多様な不快感を訴えて受診するが、真
年「Dura Heart」が 1,810 万円で保険収載さ
性であることはまれである。不要な検査を
れて以降、生存率が体外式 VAD より良いこと
減らす方策として、遺伝子診断キットの活
もあって、3 製品が健闘中である。
用が散見されるようになった。まだサービ
経カテーテル治療手技は、大動脈弁留置術
ス提供側からのデータが根拠になっている
(TAVI)用デバイスの新たなサプライヤーが
ものが多く信頼性には欠けるものの、一つ
現れて活性化したほか、冠動脈形成術(PCI)
の方向性ではある。さらに、心疾患のバイ
も、生体吸収性ポリマーを用いたステントが
オマーカー候補も多数見出されている。
相次いで臨床試験で低狭窄化を実証、上市が
究極の心疾患治療の一つは心筋細胞の再
期待されている。薬剤溶出ステント(DES)
生である。ようやく誘導心筋細胞の培養に
旋風は一服したとはいえ、改良自己拡張型ス
は成功したがその効率は低く、治療法に応
テントが浅大腿動脈領域にも拡大するなど、
用できるめどはまだ立たない。2008 年にス
勢いは衰えていない。ベアメタルか生体吸収
タートした国による横断的プロジェクト
性ポ リ マー か の決 着 はま だ 先だ が 、次 世代
「循環器病克服 10 カ年戦略」も後半の日本
DES の上市や僧帽弁不全症対応も含め、今後
発世界標準の医療機器実現に向けてギアア
ップしたいところだが、過去 5 年の成果は
も心不全治療の一翼を担うだろう。
また、話題になっている手技に、改良アテ
「心疾患治療支援オートパイロットシステ
ローム切除術がある。カルシウム沈着と複合
ム」が実証実験を継続している程度で、前
したアテロームを安全に削り取れるカテーテ
途多難を思わせる。当面は、スマートチッ
ルで、ステント不適合の症状に有効である。
プを内蔵してカテーテル先端部に全方位画
循環器学会・心臓病学会・不整脈学会等の
像診断の機能や病変部の切除機能を持たせ
合同研究班は、従来治療が難しいとされてき
た、全方位診断・治療一体型スマートカテ
た心房細動にまでカテーテルアブレーション
ーテル開発等のほうが有望だろう。また、
の有用性が認められ、臨床実績が増加する現
東北大学病院で実施中の、体外低出力衝撃
状に照らして適応ガイドラインの見直しを行
波治療による血管新生促進で心筋虚血が改
なったが、施術に必要な設備として、3-D マ
善できる事例の深堀りにも期待したい。
10
Dec. 2013
Vol.39
Medical
Device Daily
2013/11/1― 2013/11/30
(
)
Orthopedics
スポーツ中の受傷が多い前十字靱帯(ACL)損
傷では、再建とリハビリを行ってもピボットシフ
ト(回旋不安定性)が発生し、思うように膝を動
DJO 社の人工肩関節置換術
かせないケースがある。しかし先月、ルーヴァン
プランニングシステム
大学附属病院の医師によって、ヒトの膝関節に新
Match Point
たな靭帯が発見され、治療効果の大幅な改善が期
2013 年 11 月14 日
待されている。
新 し い 靭 帯 を 発 見 し た の は 同 病 院 の 外科 医
DJO Global 社の人工肩関節用の術前計画シス
Steven Claes と Johan Bellemans で、膝関節の
テム「Match Point System」を初めて使用した症
前方部分にあるこの靭帯を「前外側靭帯(ALL)」
と命名した。ALL は 97%の人に存在し、ACL を
例が、米国と豪州で実施された。
Match Point は、CT 画像をもとに患者の 3-D
治療してもピボットシフトが発生するのは、この
データを作成し、
手術計画を立てられるシステム。
ALL が損傷しているからだという。両氏は、
「ALL
3-D データから患者の解剖学的構造にあったリー
損傷を治療する術式を研究しているが、その結果
マーガイドを作製し、置換術を最適化することも
が出るのは数年先だろう」と話している。
できる。3-D データを作成するソフトウェアには、
3-D プリンター用のデータソフトウェアで有名な
マテリアライズ社のソフト「SurgeCase Connect」
を採用している。
Cardiology
各社が注力する
RDN デバイス
使用する人工肩関節は、DJO 社の人工肩関節
「Turon」とリバース型人工肩関節「Reverse」で、
2013 年 11 月 4 日
どちらも市販前届 510(k)を完了し、CE マーク
を取得している。
トランスカテーテル心臓血管治療学会(TCT)
で、腎除神経術(RDN)用デバイスを開発するメ
ーカー5 社が臨床試験の結果を発表した。RDN は
Turon
治療抵抗性高血圧の有効な治療法として注目され
Reverse
ており、自社開発以外に他社を買収して市場に参
入するメーカーも多く、各社が市場のポテンシャ
ルに期待を寄せている。
(1) メドトロニック
(http://www.djoglobal.com/)
アブレーションカテーテル「Symplicity」の
治療後 3 年の追跡結果を発表した。この試験
新しい膝の靱帯発見で、
前十字靱帯の
治療効果改善に期待
は欧州と豪州の 24 施設、収縮期血圧が平均
184mmHg(140mmHg 以上が高血圧)の 106
人を対象に行われた。被験者全体では平均
33mmHg の収縮期血圧の低下が見られ、半数
2013 年 11 月27 日
11
Dec. 2013
Vol.39
以上が 140mmHg 以下の状態を維持できた。
(5) Kona Medical 社
さらに、RDN に起因する有害事象もなく、3
現在開発中の高密度焦点式超音波(HIFU)を
年間の安全性が証明された。
用いた RDN システム「Surround System」
CE マークは取得しているが米国では未承認
の良好な試験結果を発表した。他社で一般的
のため、同社は承認取得をめざし、米国でも
な RF カテーテルではなく、体外から HIFU
臨床試験を行っている。
を照射して腎動脈神経を焼灼するため、低コ
ストで非侵襲的だ。次回は、最適な HIFU 照
射レベルを調査する試験を行う予定という。
(http://konamedical.com/)
Neovasc 社の
(http://www.medtronicrdn.com/)
狭心症治療デバイス
(2) セント・ジュード・メディカル
Neovasc Reducer
複数電極を配置したバスケット型の先端を持
2013 年 11 月 7 日
つアブレーションカテーテル「EnligHTN」
の良好な追跡結果を発表した。46 人の治療抵
Neovasc 社(カナダ)は、難治性狭心症を治療
抗性高血圧患者を対象に行われた試験では、
治療後1年半で平均 22mmHg の収縮期血圧
する植込みデバイス「Neovasc Reducer」の臨床
低下が確認された。
試験で、良好な結果を得た。
これは中央部を絞ったステント状のデバイスで、
(http://professional-intl.sjm.com/)
頸部の小切開からカテーテルを用いて冠状静脈洞
(3) ボストン・サイエンティフィック
に留置する。ステントのように血管を拡張するの
バルーンに複数の電極を配置したアブレーシ
ではなく、血流を一部妨げることで背圧をかけ、
ョンカテーテル「Vessix」の有効性を評価す
血液が十分に届いていない領域への浸透を促す。
る試験の結果を発表した。欧州・豪州の 23 施
即効性はないが、術後 1~2 カ月で胸痛を緩和で
設、146 名を対象に行われたこの試験では、
きる。手術時間は短く、20 分ほどだ。
被験者全体の 85%で血圧低下が確認され、治
今回の試験は、カナダ心臓血管学会が作成した
療後 6 カ月で平均 25mmHg、治療後 1 年で平
狭心症の重症度分類のクラスⅢ以上の患者 104 人
均 30mmHg の収縮期血圧の低下が見られた。
を対象に、欧州とカナダで行われた。その結果、
CE マークを取得しており、欧州・中東・豪州
Reducer 群は非治療群に比べて重症度が 2 段階以
などで販売されている。同社は 2012 年に
上改善し、有害事象の発生もなかったという。
同社は今回の試験結果を FDA に提出し、米国
Vessix Vascular 社を買収して、RDN 市場に
での臨床試験を申請する予定だ。CE マークはす
参入した。
でに取得しており、欧州の販売代理店を探してい
(http://www.bostonscientific.com/)
る。従来の方法では治療が困難な狭心症患者の、
(4) コヴィディエン
新たな治療オプションとして期待がかかる。
バルーン内部にらせん状に電極を配置したア
ブレーションカテーテル「OneShot」を今年 1
月に発売した。OneShot は 2012 年に Maya
Medical 社を買収して獲得した製品で、CE マ
ークを取得している。
(http://covidiensites.com/cirse2012/video.php)
(http://www.neovasc.com/)
12
Dec. 2013
Vol.39
療後 6 カ月の再々狭窄とステント内の遠隔期内径
メドトロニックの
リード不具合の検知機能 LIA
他社製リードにも適応拡大
損失(LLL)について、薬剤コーティング群と非
コーティング群を比較した。その結果、薬剤コー
ティング群の LLL は目標値の 0.14~0.4mm より
もはるかに少ない 0.07~0.24mm となり、再々狭
2013 年 11 月 11 日
窄や有害事象の発生率も優位に低かった。
メドトロニックは、植込み型除細動器(ICD)
同社はフォローアップを今後 2 年間継続するだ
や 両 室ペ ー シン グ機 能 付き 植込 み 型除細 動 器
けでなく、小血管病変を持つ患者を対象とした新
(CRT-D)に使用するリードの不具合を早期発見
たな臨床試験も実施する方針だ。
する機能 Lead Integrity Alert(LIA)について、
(http://www.angioscore.com/)
市販前承認(PMA)の適応拡大の承認を得た。
LIA は、ペーシング・センシング不全を事前に
ボルケーノが IVCF
検知できる機能で、リード「Sprint Fidelis」の断
Crux Vena Cava Filter を
線を早期発見するために 2008 年より同社の ICD
発売
や CRT-D に搭載されている。臨床試験では、
Sprint Fidelis を使用した 75%の被験者で、不適
切作動が起こる 3 日前に機能不全を検知できた。
今回の適応拡大により、LIA を搭載した同社の
2013 年 11 月 18 日
ボルケーノは、下大静脈フィルター(IVCF)
ICD や CRT-D に、他社製のリードを組み合わせ
「Crux Vena Cava Filter」の販売を開始する。
ても使用できるようになった。セント・ジュー
これは、ナイチノール製ワイヤーを 8 の字型に
ド・メディカルの「Durata/Riata」
、ボストン・サ
組んだフレームに ePTFE(ゴアテックス)製フィ
イエンティフィックの「Endotak」のほか、バイオ
ルターを備えたデバイスで、下肢の静脈から肺へ
トロニックの製品などが対象になる。従来のリー
移動する血栓を捕捉できる。留置には平均 5 分、
ドインピーダンスだけのモニタリングと比較した
回収には平均 7 分かかる。昨年 Crux Biomedical
場合、LIA は Durata/Riata で約 6 倍、Endotak
社を買収したことで引き継いだ製品で、CE マー
で 4 倍もの機能不全を検知できたという。
クと市販前届 510(k)は承認済みだ。
傘型のフレームを持つ一般的な IVCF の回収率
(http://www.medtronic.com/)
は平均 34%で、留置位置のずれやフィルターの破
損など、長期留置による有害事象が問題となって
アンジオスコアの DEB
Drug-Coated AngioSculpt、
臨床試験で有用な成績
いる。Crux Vena Cava Filter は、留置・回収と
も 98%の成功率を誇り、位置ずれやフィルター破
損、それにともなう塞栓といった有害事象の発生
2013 年 11 月 14 日
もなく、安全性と有用性が実証されている。
アンジオスコアが、薬剤溶出バルーンカテーテ
ル(DEB)「Drug-Coated AngioSculpt Scoring
Balloon Catheter」の臨床試験の結果を発表した。
経皮的血管形成術(PTA)用のバルーンカテーテ
ル「アンジオスカルプト」に抗増殖剤をコーティ
ングした進化版で、バルーン表面のナイチノール
製ワイヤーが拡張時のスリップを抑制する。
試験は、冠動脈にベアメタルステントを留置後、
再狭窄を起こした患者 61 人を対象に行われ、治
(http://www.cruxbiomedical.com/)
13
Dec. 2013
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Lutonix はバルーン部分に抗増殖剤パクリタキ
ボストンが冠動脈用の DES
Promus Premier の
市販前承認を取得
セルをコーティングしており、
再狭窄を抑制する。
薬剤は効果的に動脈壁へ浸透するよう調合され、
また使用量も最小限のため、薬剤曝露による悪影
2013 年 11 月 26 日
響を軽減できる。
現在行われている臨床試験では、
浅 大 腿動 脈 もし くは 膝 窩動 脈に 末 梢動脈 疾 患
ボストン・サイエンティフィックは、経カテー
(PAD)がある患者を対象に、薬剤を溶出しない
テル大動脈弁留置術(TAVI)
、腎除神経術(RDN)、
通常のバルーンカテーテルと治療効果を比較して
心臓マッピング、左心耳閉塞などで高い技術力を
いる。
DEB は、永久的に留置されるステントに比べ、
発揮している。2014 年に欧州、2016 年に米国、
2017 年に日本での発売が予定されている生体吸
体内に異物を残すことなく治療効果が得られるた
収性ポリマーを使用した DES「Synergy」の注目
め、近年、医師からも高い注目を集めている。ス
度も高く、2017 年までにこれらの製品で売り上げ
テント内再狭窄にも有効とされ、世界中で年間 10
が 13 億ドル増加するとの見方もある。
億ドルの市場があると言われている。
同社は 11 月に、冠動脈用の薬剤溶出ステント
(http://www.lutonix.com/)
(DES)
「Promus Premier」の市販前承認(PMA)
を取得した。これは薄いプラチナクロム製のスト
Ophthalmology
ラ ッ トか ら 抗増 殖剤 エ ベロ リム ス を溶出 す る
DES で、直径 2.25~4mm、全長 8~38mm の範
Presbia 社、老眼用の
角膜インレーFlexivue の
囲で 47 サイズがそろう。薬剤のコーティングに
用いられるフッ素化ポリマーは、薬剤溶出だけで
第Ⅱ相試験を開始
なく、柔軟性の維持にも一役買っている。また、
2013 年 11 月 14 日
細径のデリバリーシステムは操作しやすく、先端
部は画像下で確認しやすい。今年 2 月に CE マー
Presbia 社が、老眼用の角膜インレー(インプ
クを取得し、欧州ではすでに販売されている。
ラントレンズ)
「Presbia Flexivue Microlens」に
ついて、治験用医療機器の適用免除(IDE)の承
認を取得し、来年から第Ⅱ相試験を実施する。
Flexivue は、直径 3.1mm、厚さ 15μm の親水
性ポリマーでできた角膜インレーで、フェムト秒
レーザーを使用して角膜実質に植込まれる。麻酔
なしで約 10 分の施術で挿入でき、必要に応じて
取替え・抜去も可能だ。加齢により水晶体が弾力
(http://www.bostonscientific.com/)
を失い、焦点をうまく調整できなくなるために近
C.R.バード、DEB
Lutonix DCB の
見視力が低下するのが老眼だが、Flexivue を植込
2013 年 11 月 27 日
の患者で眼鏡が不要になった。CE マークは取得
C.R.バードが、薬剤溶出バルーンカテーテル
Presbia 社は 2017 年中に臨床試験結果を提出し、
むことで焦点の調整を補正できる。
欧州で実施された臨床試験では、平均の近見視
市販前承認を申請
力は 0.2(術前)から 0.8(術後)に改善され、78%
済みで、
米国外の 40 カ国以上で販売されている。
(DEB)「Lutonix DCB」の市販前承認(PMA)
の最終申請を行った。
2018 年の米国発売をめざす。
(http://presbia.com/flexivue/index.php)
14
Dec. 2013
Vol.39
Neurology
ートが競技を再開するには医師の証明が必要との
新法案が可決された。また、複数の医療機器メー
カーが、アスリートの脳震盪を即座に検知・評価
Raumedic 社の
できる製品を開発している。
脳内モニタリング用
カテーテル Neurovent-PTO
(1) MC10 社&リーボック
2013 年 11 月 5 日
競技用ヘルメットの下に被るインナーキャッ
プ 型 の 頭 部 衝 撃 力 測 定 デ バ イ ス
Raumedic 社は、1 本で頭蓋内圧(ICP)
、頭蓋
「CHECKLIGHT」を 7 月に発売した。ショ
内温度(ICT)、組織酸素分圧(PtiO2:脳組織の
ックセンサーを内蔵しており、頭部に衝撃を
酸素量)を同時に測定できるカテーテル
受けると首筋にある LED ライトが光って衝
「Neurovent-PTO」の市販前届 510(k)を完了し
撃の度合いを知らせてくれる。
た。
(http://shop.reebok.com/)
先端にあるセンサー部分を頭蓋内に留置して
PEEK 製のボルトで固定し、もう一方の先端を専
(2) Tekscan 社
用のモニターに接続して測定する。測定の際に脳
脳震盪を評価する体のバランステストシステ
内の酸素を消費しないため、低酸素状態でも使用
ム「MobileMat BESS」を発売したばかり。
でき、状況の変化に対する反応が早い。また、セ
圧力センサーが組み込まれたマットの上に立
ンサーは製造時に調整済みなので、現場で初期化
ち、マットと接続したパソコンもしくはモバ
する必要がなく、常温で 2 年間保管できる。
イル端末の指示通りの姿勢をとることで、バ
脳外傷患者が脳虚血に陥ると死亡の原因となる
ランス能力を正確に評価できる。
が、Neurovent-PTO で脳内の状態をモニタリン
(http://www.tekscan.com/)
グすることで、脳の損傷を早期に検知できる。
(3) クリーブランド・クリニック
脳震盪を評価する iPad 用アプリケーション
「C3」を開発している。画面上のオブジェク
トに触れるまでの時間や正確さを測定するテ
ストや、iPad に内蔵されたジャイロセンサー
や加速度センサーを利用したバランステスト
などを行うことで、脳震盪を総合的に評価で
(http://www.raumedic.com/)
きる。
アスリートの脳震盪を
検知せよ
(http://www.cleveland.com/)
(4) i1 Biometrics 社
衝 撃 を 評 価 す る シ ス テ ム 「 i1 Biometrics
2013 年 11 月 25 日
Impact Intelligence System」を販売してい
る。衝撃センサーを内蔵したマウスガードを
脳震盪や外傷性脳損傷(TBI)などは長期的に
装着したアスリートが衝撃を受けると、その
脳活動に支障をきたすほか、アルツハイマー病や
情報がワイヤレスでパソコンに送信・クラウ
パーキンソン病などの神経退行性疾患の発症リス
ドに蓄積され、衝撃レベルが分析される。遠
クを高める。しかし、スポーツによる TBI のじつ
隔地にいても結果を確認できるため、専門の
に 9 割は見過ごされているのが現状だ。
トレーナーが現場にいなくても的確なアドバ
イスを受けられる。
アスリートの脳損傷に対する関心は高まってき
ており、オハイオ州では脳損傷を起こしたアスリ
(http://www.i1biometrics.com/)
15
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Vol.39
Nyxoah system は、舌下神経のある顎に植込む超
(5) Contect 社
音声を分析することで衝撃のレベルを評価す
小型インプラントと、パッチ型の体外式バッテリ
る iPad 用アプリケーションを開発している。
ーからなるシステム。就寝前にパッチを貼るとイ
約 15 の単語リストを読み上げるテストで、平
ンプラントが一晩中舌下神経に刺激を与え、気道
常時の音声と頭部に衝撃を受けた時の音声を
閉塞を防止する。インプラントは直径 20mm、厚
比較分析することで、衝撃の程度を評価する。
さ 2.5mm のコイン型で、他社の神経刺激装置に
比べかなり小さく、製品寿命は 12 年と長い。植
Other Products
込みにかかる時間はわずか 15 分だ。パッチは直
径 90mm、厚さ 5.5mm で、ワイヤレスでインプ
ラントに電力を供給できる。
InControl 社、
Nyxoah 社は現在、承認取得に向け臨床試験を
女性の尿失禁治療デバイス
InTone の CE マークを取得
行っている。
2013 年 11 月 7 日
InControl Medical 社が、女性の尿失禁を緩和
するトレーニングデバイス「InTone」について、
ISO 13485(医療機器の品質保証のための国際標
(http://www.nyxoah.com/product)
準規格)と CE マークを取得した。
InTone はデバイス本体とコントローラーから
サイノシュアー社、
各国で薬事承認を取得
なり、膣内に挿入し電気刺激を与えることで、膀
胱や尿道を支える機能が低下した骨盤底筋を鍛え
2013 年 11 月 11 日
られる。デバイスは患者が片手で挿入でき、手術
や医薬品を使用することなく自宅で治療可能だ。
コントローラーは刺激のレベルを調節できるほか、
皮膚科、形成外科分野向けのレーザー機器を開
生体フィードバックモニター機能を備え、骨盤底
発するサイノシュアーは、米国・欧州で薬事承認
筋の収縮力をその場で確認できる。
を取得した製品について、欧米以外の国々での承
市販前届 510(k)は昨年完了している。また、コ
認取得を順調に進めている。
ントローラーを省略した廉価版の「Apex」もある。
ピコ秒レーザーシステム「PicoSure」は、ピコ
秒(1 兆分の 1 秒)の超短パルスレーザーを照射
(http://www.incontrolmedical.com/)
し、刺青や色素性病変を除去する。カナダでの承
Nyxoah 社、
OSA 治療システムの
認に続き、豪州でも薬事承認を取得した。
2013 年 11 月 7 日
ら交互に発することで脂肪を溶解し、皮膚を引き
中国の薬事承認を取得したのは、脂肪吸引シス
テム「Smartlipo MPX」だ。このシステムは、2
米国特許を取得
種類の波長の異なるレーザーを 1 本のプローブか
締めながら脂肪を吸引できる。
Nyxoah 社(イスラエル)は、閉塞性睡眠時無
さらに同社は、販売契約を結んだ NuvoLase 社
呼吸(OSA)の治療システム「Nyxoah system」
のレーザー治療装置「PinPointe FootLaser」に
について、11 件の米国特許を取得した。
ついて、
韓国の薬事承認を獲得した。
この装置は、
米国で 40 歳以上の 5 人に 1 人が悩む OSA は、
睡眠時の筋弛緩により舌根部が気道を塞ぐことで
ペン型のプローブで爪にレーザーを当てることで、
爪真菌症を治療できる。
起こり、高血圧や心疾患をもたらす危険がある。
(http://www.cynosure.com/)
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Dec. 2013
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を測定できる。褥瘡や組織浮腫が表面化する前に
FDA 諮問委員会、
コクレアの EAS
Nucleus Hybrid を推奨
検知可能で、目視では診断が難しい褐色の皮膚の
患者でも問題なく使用できる。他の診断装置に比
べて費用対効果が高く、操作も簡単だ。
2013 年 11 月 12 日
褥瘡の多くは早期発見することで予防できるが、
表面化してから発見されることが多く、痛み、合
FDA 諮問委員会は、コクレアのハイブリッド型
併症、入院期間の長期化などにつながり、医療費
人工内耳(EAS)システム「Nucleus Hybrid L24」
高騰の原因となっている。臨床試験では、平均で
表面化する 10 日前に組織浮腫を検知しており、
の承認を勧告した。これは、低音域に残存聴力を
有する高音急墜型感音難聴患者向けのシステムで、 褥瘡予防に効果を発揮すると期待されている。
米国では現在、市販前届 510(k)を申請中だ。
耳の内部に植込む人工内耳と、補聴器を備えたサ
ウンドプロセッサーからなる。高音域は人工内耳
(http://www.bruinbiometrics.com/)
による電気刺激、低音域は補聴器による音響刺激
を行うことで聴力を補助できる。
Evena 社の静脈を透視できる
米国で高音急墜型感音難聴患者 50 人を対象に
着用型イメージングデバイス
行った臨床試験では、言語テストで 18.1%、文章
Eyes-On Glasses
の聞き取りテストで 12%のスコア改善が見られ
た。残存聴力の低下もしくは喪失の有害事象が 22
2013 年 11 月 21 日
人の患者に発生したが、失った残存聴力は人工内
耳でカバーできることから、諮問委員会は EAS
Evena Medical 社は、静脈を透視して見やすく
は補聴器と人工内耳のギャップを埋めるブリッジ
するメガネ型のイメージングデバイス「Eyes-On
的なデバイスになると見ている。
Glasses」の発売に向け、準備を進めている。
日本では、メドエル(オーストリア)が「メド
Eyes-On は、4 種類の波長を持つライトとビデ
エル人工内耳 EAS」
(代理店は日本光電)の薬事
オカメラをフレームに搭載している。穿刺する部
承認を今年 9 月に取得したばかりだ。
位に光を照射すると、スクリーンにリアルタイム
で皮下の静脈が可視化されて表示される。本体を
装着するだけなので作業がしやすく、デバイス使
用中でも通常の視界を妨げないため、スクリーン
越しに患者とアイコンタクトをとることも可能。
Bluetooth、Wi-Fi、3G の通信に対応しており、
(http://www.cochlear.com/)
撮影した画像を電子カルテや記録媒体に送信して
保存することもできる。開発にあたっては、提携
表面化する前に褥瘡を
検知できる Bruin 社の
ハンディスキャナーSEM
しているエプソンの着用型ディスプレイ
「Moverio」の技術が取り入れられ、製品の小型・
軽量化や画像の高画質化に大きく貢献している。
米国では市販前届 510(k)を完了済みで、欧州で
2013 年 11 月 18 日
は CE マークを申請中だ。
Bruin Biometrics 社は、表皮下水分量を計測す
るスキャナー「SEM Scanner」の CE マークを取
得した。
測定用の電極とスコア表示用のモニターを備え
たハンディー型のスキャナーで、電極を患者の皮
膚に当てるだけで、即座に非侵襲的に皮下水分量
(http://evenamed.com/)
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Agreement&Contract
は CryoLife 社が世界的に販売権を持っており、
日本ではセンチュリーメディカルが代理店だ。
Starch 社 CEO の James Ji は、中国でビジネ
ジェノミック、抗癌剤の
コンパニオン診断薬を開発
スを行うメリットを 2 つ挙げる。1 つは、中国国
家食品薬品監督管理局(CFDA)に中小企業専用
2013 年 11 月 26 日
の申請窓口「express window」が設置され、承認
ジェノミック・ヘルスは、バイオマーカーの探
たこと。もう 1 つは、海外で活躍する中国人が帰
索や医薬品開発を行う Almac Group(英)と独占
国して起業する際の助成金制度だ。このほか、中
的なライセンス契約を締結した。これによりジェ
国製品の質が向上したことも追い風になっている。
審査の順番待ちが 2 年から 3~6 カ月に短縮され
ノミックは、Almac 社の遺伝子マーカーを使用し、 一方、懸念材料は知的財産権(IP)の保護で、ま
アントラサイクリン系の抗癌剤で効果がある乳癌
だまだ抜け道の多い法律や、IP の概念がない国民
患者を特定するコンパニオン診断薬を開発する。
の認識を改善する必要があるという。
アントラサイクリン系の抗癌剤は、癌の遺伝子
(http://starchmedical.com/)
を破壊することで癌細胞を死滅させる薬剤で、治
Administration
療効果は高いが心毒性などの副作用も大きい。現
在、この抗癌剤を使用するかどうかは、患者の年
齢や腫瘍の大きさなどから判断されているが、治
インドが医療機器の
承認制度を強化
療効果を得られず副作用に悩む患者も多い。ジェ
ノミックは、新たな診断薬で正確に抗癌剤の効果
2013 年 11 月 19 日
を予測できれば、有用で安全な治療が行えるとし
て、開発に意欲を燃やしている。
インド保健家族福祉省が今年 8 月に起案した
Global Market
「医薬品・化粧品法」の改正法が、来年にも成立
する見通しとなった。
今回の改正は、今まで医薬品や化粧品と同じル
中国の帰国奨励策を活用する
Starch Medical 社
ールで規制されていた医療機器を切り離し、専用
の安全基準で管理することが目的だ。輸入・輸出・
2013 年 11 月 12 日
製造・流通について総合的なルール作りをめざし
ており、医療機器や化粧品の承認を管轄する組織
も、現在の国家医薬品基準管理機構(CDSCO)
中国は、
「世界の工場」だけでなく「イノベーシ
ョンの拠点」となるよう政策をシフトしており、
から新設された Central Drug Authority(CDA)
規制緩和や起業助成金の交付などを行っている。
に変更される。さらに CDA の審査過程には、医
これを活用し、中国への回帰を積極的に行ってい
療機器専門の諮問委員会が加えられ、医療機器の
るのが、中国人科学者が米国で起業した Starch
安全性が審議される。
Medical 社だ。
今回の法改正について、インド医療機器産業協
米国では研究開発コストが高騰しているため、
会(AIMED)は、患者の安全性が向上すると一
同社は 2011 年に Beijing Huan Qiu Li Kang
定の評価をしたうえで、過剰な規制は国内メーカ
Biotech 社を設立して生産拠点を中国に移し、さ
ーの発展と低価格製品の供給を阻害するとの懸念
らに 2012 年には研究開発センターを上海に設立
を示し、円滑な管理体制作りを求めている。
した。主力製品はでんぷんベースのポリマーを使
用した生体吸収性止血材で、液状の「PerClot」
編集部注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し
ています。
とフォーム状の「SealFoam」がある。PerClot
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Kawanishi Hotline
前号の Medical Device Daily から、カワニシグループの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。
OrthoSensor 社、人工膝関節の
圧力センサーVerasense の
CE マークを取得〈10/7〉
確認できるので、術者も安心できるし、患者にと
全人工膝関節置換術(TKA)中に、人工膝関節
や周辺組織への負荷を測定する圧力センサー内
蔵インサート。対応インプラントはストライカ
ーの「トライアスロン」とバイオメットの
「Vanguard」
。市販前届 510(k)は完了済み。
求ができるかどうかが採用のポイントになる。
っても適切なサイズの材料を使用できる点で優
れた製品。ディスポーザブル商材だけに、保険請
(原田)
安川電機がArgo社のロボットスーツ
ReWalkをアジアで販売〈10/3〉
• TKA の手技はある程度確立されているが、本当
下半身麻痺患者用のモーターを組み込んだロボ
ット義肢で、筋電位センサーではなく、使用者
の重心位置を検出して歩行を補助する。安川電
機がArgoMedical Technologies(イスラエル)
社と提携し、アジアで独占的に販売する。
にこだわるドクターは、大腿骨と脛骨の関節面の
ギャップを正確に合わせようとしている。ナビゲ
ーションシステムがあればリアルタイムにギャ
ップ測定はできるが、圧力までは測定できない。
「Verasense」はワイヤレスで簡便に圧力を測定
• サイバーダインのロボットスーツ「HAL」がドイ
でき、かなり正確に関節面のギャップを整えるこ
とが可能なので非常に興味深い。普及に際しては、
対応インプラントが少ない点が足かせになりそ
ツで保険収載されるなど、医療ロボットの市場は
広がっている。特に日本では、高いロボット技術
と看護・介護のマンパワー不足という両面から、
う。(青木)
近い将来新しい市場が作られていくのではない
• 手技に習熟したドクターには不要かもしれない
か。ただ、先行する HAL にしてもまだ十分な認
が、アイデア商品として注目されそうな製品。現
知が得られているとは言えず、価格や市場アピー
在対応インプラントは 2 種類のみだが、将来的に
ルも含めて、本格的な競争はこれからだろう。患
は全メーカーを網羅できるようになるかもしれ
者にとって介護者なしに自力で動けるようにな
ない。ただ、現状ではストライカー・バイオメッ
るのは喜ばしいことだが、普及に関しては、患
トが有利なため、ディーラーにとっては商権の有
者・医療者双方にあると思われる医療ロボットへ
無によって防御にも攻めにも活用できる製品と
の不信感や抵抗感をどれだけ払拭できるかがカ
言えるだろう。TKA 症例は年々増加傾向にある
ギになる。HAL と同程度の価格設定とすると、1
ので、償還価格がつき、良好な臨床成績が出せれ
カ月あたり 15~20 万円程度のレンタル価格にな
ば、ボリュームは大いに期待できる。(若江)
ってくるか。(齋藤)
• 現在 TKA を扱う各社のトレンドは、ナビゲーシ
• 前号で複数の支援ロボットが紹介されているこ
ョンシステムに絡めた製品展開や、トラベキュラ
とからも、この領域における活発な開発状況や将
ーメタルの製品展開といった印象。これは、術後
来性の高さがうかがえる。特にこの「ReWalk」
に患者の感覚でしか判断できなかった手術の良
は、安川電機がアジア全域で販売するので注目し
し悪しを、術中に具体的な数値として見ることが
ている。販売エリアが日本限定ではなくアジアと
できるという他社にない観点から展開を試みて
広範囲なため、価格を抑えた競争力のある製品と
いる製品なので、競争力は十分にある。(梅林)
なるのではないか。(武智)
• TKA でのインプラント挿入後の靭帯バランスを
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Vol.39
Tyber社のチタンでコーティングした
PEEK製椎体間スペーサー〈10/17〉
注目のデバイス関連記事を
ピックアップ!(未掲載記事より)
椎体終板と接する面にチタンパウダーを溶射し
た「Interbody Spacer」シリーズは、PEEK素
材の持つ生体適合性と、チタン素材の持つX線下
の視認性と骨融合性をあわせもつ。市販前届
510(k)を完了した。
■ AtheroMed 社のアテローム
切除カテーテル「Phoenix」〈10/22〉
先端部にあるプロペラ状のブレードが回転し
ながらアテロームを削り、カテーテル内へ吸引
するシステム。
臨床試験での成功率は 95.1%。
• 現在主流の PEEK 素材に、骨形成を促進するチタ
• 新鮮血栓を水流で砕く製品はあったが、これ
はある程度固着したアテロームを血管内で
直接削り取る大胆なデバイス。押しつけるだ
けのバルーンでの拡張と異なり、物理的に除
去できるので長期成績も期待できそう。石灰
化病変に対応できるのかが気になる。
(長﨑)
ンパウダーをコーティングしたハイブリッド品。
PEEK 製スペーサーはギザギザ形状で抜けを防
止しているが、骨形成促進のための微細な加工を
施したものはない。期待できそうな製品だが、コ
ーティングが剥離しないかが気になる。(千羽)
• PEEK 素材のインプラントは術後に X 線による
設置位置の確認ができず不安、という声を時々耳
■ AirXpanders 社のティッシュ
にする。その点、この製品は X 線で確認できるう
エキスパンダー「AeroForm」〈10/21〉
えに生体適合性があり、市場性はかなり高い。患
圧縮した炭酸ガスのリザーバーを内蔵したシリ
者にとっても、骨融合しやすいので確実に固定で
コン製インプラントで、乳房再建の際に皮膚の
き、術後の定期的な経過観察も容易なので、痛
引き伸ばしに用いる。体外からのリモコン操作
み・痺れの発生した場合に再手術の必要性の有無
でガスを放出できる。
を的確に判断できるメリットがある。(増本)
• 現在日本で認可されているのは、アラガン社
の「ナトレル 133 ティッシュ・エキスパンダ
ー」のみで、生理食塩水を注入して拡張する
ため穿刺が必要。AeroForm は非侵襲で拡張
中国で薬事承認を取得したZynex社の
リハビリ用デバイスNeuroMove〈10/28〉
が行え、拡張期間も生食注入の 6 カ月に比べ
て 17 日と大幅に短縮できるため、認可され
ればかなりの需要が見込める。(増本)
脳卒中や脊椎損傷で麻痺した部位を動かそう
とする脳の信号を検知し、刺激として患部にフ
ィードバックすることで未損傷の脳組織に信
号パターンを学習させ、運動機能を再建する。
市販前届 510(k)と CE マークは承認済み。
■ テレフレックスの PICC
「Arrow with Chlorag+ard」
〈10/17〉
• 要支援・要介護認定者(あわせて 550 万人程度)
カテーテルの表面から液体消毒薬クロルヘキシ
の約 27%は脳卒中が、約 3%は脊髄損傷が原因と
ジンを徐放する技術 Chlorag+ard を採用した
言われている。要介護 1 および 2 の 3 割程度が対
末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)
。カテー
象になると仮定した場合でも、約 60 万人が市場
テル治療に起因する感染症と血栓症を予防する。
の母数になる。同様のリハビリ機器としてはロボ
• 現場の抗菌 PICC に対するニーズは高い。
「今
後普及する」と言われながらいまひとつ普及
していない PICC だが、安全性や感染率の面
から間違いなく普及が進むだろう。(樋口)
• 担当施設でも、感染対策の面から PICC カテ
ーテルが採用されている。今後はさらに同様
の製品が開発されるのでは。(河野)
ット装置もあるが、こちらのほうが簡便に使用で
き、リハビリに特化しているので優位だと思う。
リハビリの時間的・肉体的負担を軽減しつつ予後
が改善できるならば、患者の QOL 向上の効果は
大きく、入院・治療期間の短縮にもつながるので
医療費抑制効果もある。ただ、従来の理学療法・
作業療法のみと比較した場合の有意差を示せな
※〈 〉は MDD の配信日、
( )内は回答社員の名字
いと、市場には受け入れられないだろう。
(樋口)
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Dec. 2013
Vol.39
[出典紹介]
MDD (Medical Device Daily)
トムソン・ロイター
HRM (Healthcare Risk Management)
AHC Media LLC
医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。
医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。
医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。
CMA (Case Management Advisor)
入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。
HCM (Hospital Case Management)
病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。
SDS (Same-Day Surgery)
感染症コントロールから償還、コスト削減策まで、日帰り手術の効果と安全性を高める情報を幅広く収録。
HEH (Hospital Employee Health)
安全機能付き器材、感染管理、危険有害性など、医療従事者の安全と健康を維持するための情報を提供。
アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福山健/前島達也
エディトリアル・スタッフ――佐藤崇/海野裕美/岩田斐/宮長夕紀/岡山大学 MESS/三宅優美
デザイン・フォーマット制作――川畑博昭
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平
崇
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[編集人]―――佐藤
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