NA]OM V O l U O J f5, N U O J h e" R1 3a u l y ,1998) 牛のお灸に学ぶ 高松文三 これ以後、保坂先生が牛にまつわる様々 な疾患にお灸を試みたのはいうまでもな 3.ホルモン分泌促進。100日以上発情の来 い。即効性の高い消化器疾患、はいうにおよ の率で翌日から一週間の聞に発情が起こ ない牛にもお灸をすると、 9 0 % . . . . . . . 1 0 0 % 近年、アメリカにおける鎖灸の普及は ばず、不妊症を含む繁殖障害、泌尿器疾 ることや、乳量が20%程増えたりするこ ブームと呼ぶにふさわしいが、銀灸するの 患、運動器疾患など、大抵の疾患にこうか となどから見ても、これは明らかだ。た は人間だけとは限らない。犬猫などのペッ トにする織も、それほど珍しいととではな があるという。また従来の方法と併用しで だ面白いのはホルモン分泌過剰な場合 もよく、応用自在ということら しい。 お灸 は、むしろそれを抑える働きがあるとい くなってきた。もちろん、獣医師が織を施 の特性として: うことだ。そこで次の作用 すのだが、実はI.V. A .S .と呼ばれる国際的 1.比較的簡単である な獣医鍛灸協会があるのをつい先頃知って 2 . 資格が要らない 驚いた。アメ リカ国内だけでもメンバーが 千人ほどいるというのだから、獣医師が鍛 灸に寄せる関心というのは並のものではな い。動物にはプラシーボ効果を無視してよ いだろうから、やはり確実に効ぐという確 信があ って のことだろう 。 そこで今、日本で繁殖陣害などの各種の て話題になっている獣医師を紹介したい。 保坂虎重先生 (60歳)が牛にお灸を試す きっかけになったのは、日中国交回復と、 近ぐのよく流行っ てい る銭灸院と、その向 かいのこれまたよく流行って いる ラーメン 屋であるという 。 1972年 、 ニクソン大統領は中国を訪問 し、それがアメリカにおける大々的な鍛 ブームのきっかけになったことは周知のと おりである 。同じ年に、少し遅れて田中首 相が訪中 。 日中国交回復がな り、その副産 物のーっと して 中国の鍬 麻 酔 は 日 本 で も 話 薦 騒 伊ザ 駒 題を呼んだ。 以前から、マニュアルどおりの治療法に きか。例えば便秘にお灸をすると、便が 3.安価である 4 . 副作用がない 5 . 即効性がある などがあげられる 。 繁殖障害に悩んでいたある酪農家は、お 灸を始めてから牛の一年一産が可能になり、 すっかりお灸のファンにな ってし まった。 牛の疾患に、お灸を使ってすごい効果を出し 山 掴~. 4.二重調整作用 。 自動調節作用と言うべ 柔らかくなり通常便となるが、逆に下痢 にお灸をすると使が硬ぐなり通常便とな る。牛の生体にお灸の刺激を極度に上手 く利用し、自分にと って一番バラ ンスの ょいところ へ持 ってゆ くよう だ。 5.転調作用。病態がはっき りしないものに お灸をすえると 、病態が はっきり して、後の処置 がしやすくなる 。 私自身は四番目の二 重調整作用 という のが 一番興味深い 。ど の牛 に対しでも、どのよう な病気 に対し て も大体 同じツボで、同 じ刺激 量で治 る理由もここに あるよう だ。人間の場 合、牛 ほど単純に行か ないにせよ 、ある程度 ¥ ・ ・ 岡 町 主 ¥uj' > : : ' : : : i : ' ' : ' : ' "溺掃 こういう作用があ るは 写真提供:毎日新聞久留米支局 ずだ。 お灸に関して その酪農家は繁殖障害におけるお灸の効 " . , , は、病人や病状の陰陽虚実にそれほど拘わ 飽きたらなかった保坂先生はそれまでにも 漢方を家畜に応用したりしていた。そうい 果を四つあげている 。 L 発情がはっきりし 、妊娠しやすく らずとも よいのではないか。いわゆ る沢 田 流の基本穴が、大抵の疾患 に効果があるの う先生だから、織の話題は大いに刺激とな なった。 2 . 乳房炎が少なくな った。 3 . 産後の起立不能がなくな った。 4 . 後産停滞がほとんどなぐなった。 これ らは要するに、産後の肥立ちがよく なるということだ。 お灸が効くことは確かだ。だがそのメカ ニズムには、まだ不明な点が多い。 しかし お灸の及ぼす作用については、多数の例か ら帰納的に割り出せる 。保坂先生はその作 用を大体次のようにまとめて いる。 1 . 自律神経系の調節。 中でも副交感神経 を刺激する。 したがって、胃腸の賠動促 進、子宮収縮 ・勝 目光収縮な どを促す。牛 のツポが背腰仙骨部に多いのも 、そのあ たりの神経支配と関係が深いようだ。 2 . 免疫系の刺激。一種の ヤケ ドの傷が免 疫反応を刺激す る。 もそんな理由ではないかと思う 。 り、まずは牛に電気鎖を施してみた。 とこ ろが牛の方は気味悪がるばかりで、これと いう手応えがなか った。 そんなとき、知り 合いの酪農家の話しにふと感じるところが あった。その人は胃腸が悪くて鍛灸院 に 通っていたが、お灸をし て もらうと、急に 気分が爽快になり腹が空ぐとの こと。そ し てそのまま向かいの ラー メンゃに飛び込む のだそうだ。おかげで向かいのラー メン屋 も大忙しというような話しであ った。 “これはひょ っとすると牛にも応用でき るのでは"と思いつき 、早速、調子の悪い 牛に お灸をしてみると J 先生の予想どお り、その牛は誕を流し始め 、次々と糞と尿 を出し、急に元気になって食べ始めたので ある 。そのお灸の即効性に、保坂先生はハ マッテしまった のである 。 では、保坂先生が長年の経験から選んだ 牛の基本穴を紹介しよ う。9 穴ある。 ぐり返 すようだが、これらのツポでほとんどの問題 は片が付くと いう 。 ( 図 1 ) 天平 第 13 胸椎 と第 1 腰椎赫突起との間で 柔らか い陥凹部 後 丹 田 第 1と第 2腰椎赫突起問の陥凹部 腎門 第2と第3腰椎練突起問の陥凹部 安腎 百会 第3と第4腰椎赫突起聞の陥凹部 腰椎と仙椎赫突起聞 の陥 凹部 帰尾 ・尾帰 百会か ら腰角方向へ8セ ンチ 離れたとこ ろ。左側を帰尾、右側 を尾帰 という。 尾根 仙椎と第一尾椎の問 。 予備の ツポ 天平の前の陥凹部 人間のツポと比較してみた い。 天平 は背中 ( GV7)、後 丹 田 は 懸 枢 4 7 NA]OM VOluOJf5 ,NUOJsεR 13a u L y ,1998) 塁 塁 前J I I智恵子 『 黄帝の足跡ー鍋灸伝統の歴史を追って』 著者ピーター・工クマン 帰尾 東洋医学には、お互いに全く違った特質 をになう伝統の流れがいくつかあります。 特に、鍛灸の伝統には多くの流派がありま す。事実、東洋から西洋へとこの医学シス テムが伝わってゆぐ過程で、極東の国々そ してヨー ロッパの国々でも、その国特有の 鎖灸術のスタイルを発展させて今日に至っ てい ます。 西洋にあっては、これらの新しく発展し た鎖灸術の中で二つのスタイルが比較的有 図1 9カ所のツポ 名になり ました。それらは今日、革命以後 の新中国で広ぐ使われ、中国伝統鍛灸と名 牛の生命を操作する 。美味しい肉にするた うってアメリカに多大な影響を与えたTCM 安腎も命門の変動穴と見る 。百会というツ めに飼料をいじくり、早ぐ太らせるために ボは人間では頭の頂点にあって百脈の会す ホルモンを与え、病気を防ぐために抗生物 と、イギリス ・レミントンとアメリカ ・メ リーランド州のコロンピアで教えられてい るところの意である 。別に一身の陽気の最 高点の意もある 。するとやはりこれは、腰 質を入れたりする 。牛は本来の抵抗力を無 ぐし、ますます病気に羅り易くなる 。例え る五行録法(レミントン録法=L .A .)と呼 ばれているものです。 の陽関 (GV3) が一番近いようだ。牛は腰 ば、乳牛がよく羅る乳房炎なども、昔は漢 この二つの流派の治療法が共通の伝統に でものを考えるのかも知れない 。帰尾(尾 帰)は胞宵 (BLA8) であろう 。尾根は腰余 ( GV2) と思う 。 こうしてみると人間の場 方薬や民間薬などを使って、それなりに上 手く対処していたらしいが、今は抗生物質 一本槍という 。当然、耐性菌が出現し、そ 根ざすものとはいえ、共に 2 0世紀に入って から発展したという事を、歴史的に実証し 合の不妊症のツボと似ている 。 人間の場 合、これに下腹部のツボを 2~3加えたいと の抗生物質は効かなくなる 。そしてまた新 しい抗生物質が出てくるという悪循環に陥 でさえもこの事実を知っている人は非常に ころだが、牛では無理だろう 。 る。 稀です。 (GV5) 、腎門は命門 (GV4) であろう 。 ~高度な検査技術と新薬を駆使して最 ている記述は英文出版物の中には見あたり ません。今日に至るまで、西洋では銭灸師 実際のやり方は、まず温灸用のモグサを 新の治療をしている獣医がいるところほ 著者ピーター ・エクマンは、医師として ピンポ ン玉大に丸めたものを必要数だけ用 ど、乳房炎が治らない 。 』 という事態も起 錨灸師として治療を続け、かつ教鞭をとる 意する 。牛の頭を保定する 。尻尾を後ろ足 こっているという 。治療費がかさむ一方 聞に 2 0年の年月をついやして、異なった鎖 にひもで軽ぐ縛っておぐ 。モグサを尻尾で 払い落とされないようにするためだ。次に で、実のところ治療に関しては何も進歩し ていない 。不妊症におけるホルモン剤の多 灸流派の起源についてインタビュー ・手紙 のやり取りそして文献と、広範囲にわたる 灸 ツボに味噌を塗る 。 これは脱落防止とヤ 用も、悪循環を生む。 こうしてみると、家 歴史的リサーチの成果を記しました。そし ケド防止の二つの意味がある 。 (私見だ 畜の疾病の多くは抗生物質やホルモン剤な て、西洋の錨灸師の間で最も知られている が、アメリカで試すときはアロエゼリーが どのクスリに頼りすぎた 『人災』ではない 二つの流派、 TCMとL.A.に視点をおき、他 ょいと思う 。)着火してから燃え尽きるま か、というのだ。 で 5分 ~ 1O分。 この問、ぐれぐれも火には 用心をすること 。 の諸国で発展した織法とどのような関わり 我々もこの家畜たちと大差があるように 合いがあったか、またこの二つの流派が世 は思えない。そこから脱するには、自分の 界的な性質を持ったものであることを証明 しています。 私自身が牛のお灸から学んだととについ 健康は自分で守るという姿勢が一番大事で て少し触れたい。私の治療はほとんどお灸に ある 。その時、お灸という手軽で誰にでも 頼ってきたが、牛のお灸の話しを聞いてから 出来て、しかもよぐ効く療法は、強い見方 書かれていますが教訓的で哲学的であり、 ますます我が意を強くした。もうじき四人目 になってくれるだろう 。 又探査的要素は、徹底的な分析と歴史的記 録によって裏打ちされた力作です。 の子供が生まれるのだが、保坂先生の話しを この本は、ぐだけた一人称のスタイルで この本は、 TCM が1 9 5 0 年代に新中国で 読んで以来、ほとんど毎日妻にお灸をすえる 高松文三 ,D. O.M . ,L .Ac ようになった。産後の肥立ちもきっとよいに 1982卒、ニューメキシコ ・サンタフ工 作られたという史実を知らずに、 TCMのみ 違いないと信じている。あと一つ考えさせら れたのは、健康管理に関して言えば、牛が置 ototamaI n s u t i t u t eを卒業。1988年ょ のK りダラスにて開業、現在に至る 。鋸灸に加 が唯一の識灸法と思い込んでいるアメリカ の繊灸師にはぜひ読んでほしい本です。ま かれている現状は人間のそれとほとんど変わ え操体法、マクロバイオティックも指導す た 、 J .R. ウオーズレイによって発展された る。合気道は 10年以上の修行を穣み、まも 五行レ ミントン織法が教えられているレミ なぐ指導もす-3予定。 ントン校 ・コロンピア校の卒業生も、この りがないということだ。 つまり、人間は自分の都合の良いように 4 8
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