アメリカのある宗教 における児童に 対する性犯罪の秘密

アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アメリカのある宗教
における児童に
対する性犯罪の秘密
危機にあるエホバの証人
著作権留保、バーバラ・J・アンダーソン,2007 年
日本語訳
Sayed Faraj 2010 年
すべての著作権を留保します。公表されている裁判記録とその他、いくつかの情報源から
の簡単な引用箇所を除いて、発行者の書面による許可がない限り、印刷、転記、コピー、
オーディオ等の方法を問わず、この刊行物を再生したり、再生機能ある媒体に保存するこ
とを禁止します。
この日本語訳は、著者の許可を得ております。
ウオッチタワー・ドキュメンツ.LLC.
1527 ノルマンディー通
ノルマンディー、テネシー、37360
ウオッチタワー・ドキュメンツ,LLC.ウエブ・サイト・アドレス
www.watchtowerdocuments.com
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
序文
この本の目的は、エホバの証人によって性的虐待の被害にあった子供達の告発に対して、エホバ
の証人の指導者達が、秘密裏にどんな方針でどのように取り扱っているかに光を当てて明らかに
することである。
“児童虐待は嫌悪すべきである。“とは、エホバの証人が好んで、繰り返し使う言葉である。
彼らが秘密にしている行動を証明する証拠は、彼らが口に出して言うよりも、雄弁に実態を物語る。
この宗教団体は、他の宗教には例を見ない、児童性的虐待についての適格な対応方針を持って
いると宣言しているが、内実は長い間、隠し続けてきた秘密があって、私はその証拠のあることを知
っている。
私は、この秘密を明らかにすることにした。
しかし、そうするには、数千ページもの裁判記録を手に入れる必要がある。
は、数ヶ月の間にこの仕事を完成させる事はできなかった。
これらの助けなくして
このために様々な支援を頂いた
多くの素晴らしい人々に感謝の意を表したい。
12件の訴訟の裁判記録を手に入れるのは、愉快なものではなかった。
私の良き友、リチャード・
ラウ氏の助けがなければ、私一人では、手に入れることができたか、疑わしい。
彼は、官僚主義
の迷路の中で、裁判記録を注文するために 50 時間以上も電話をかけまくったに違いない。
リチャードのこの助けの価値は計り知れない。 私は、彼の助けに感謝しすぎることはない。
私の夫ジョーの愛と助けがなくては、この大きな仕事は難しかったと思う。 彼は、数ヶ月間、私が
夜明けから日没まで、一日中すべての書類を読み、分析し、意見を書いている間は、ほぼ独身同
様であった。
義理の妹リンダは、手首の骨折が直ったばかりにもかかわらず、我が家の家事を
助けてくれて、本当に感謝している。
私を助けてくれたすべての人々をがっかりさせないように、幾人かの素晴らしい人達の名前を挙げ
たい。
彼らの金銭的援助、あるいは専門技術の提供によって、この CD が完成したのである。
ブルースとドリアン・ベーカー、ジョイ・グラント、ガルベツ・ファミリー、アラン・フユーエルバッハ、
ケリー・ラウダバック・ウッド、ジム・ペントン、ランディー・ワッターそして、名前を出して欲しくない多く
の人達に対して、感謝と心からの愛情を奉げたい。
無名の人達は私と同じく、単にエホバの証
人の子供達の安全を願うだけの動機で協力してくれただけなのだが、エホバの証人の報復を恐れ
て名前を出しては欲しくないのだ。
この並外れたカバー・デザインはマローン・イラストレーションの本当に親切で素敵な男性であるデ
イブ・マローンのデザインによるものである。
彼は、注文を受けると直ちに着手してくれた。
彼
はすぐに友達である女性写真家を呼んで彼女の娘である少女にポーズを取ってもらって、このカ
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
バーを作ってくれたのである。
私は、このすべての人達に感謝の意を表したい。
クリスは、私のパソコンのシステムをメンテしてくれていて有難かった。
そして私を助けてくれた数
人のカナダ人の少年、少女達を忘れることはできない。
この CD にある数千ページの裁判記録を、読者がより良くご理解頂くように、幾つかのコメントが書
かれている。
私の作品は、児童性的虐待問題についてのエホバの証人内部の動きのほんの一
部だけを描いているだけである。
た。
私は裁判記録から収集した情報のすべてを書ききれなかっ
ここに集められた裁判記録に挑戦して新しい発見をするのは、読者にもお任せしたい。
読者がそうしてくださる一方で、私も“アメリカのある宗教における児童性的虐待の秘密”の原稿に、
さらに手を加えたいと思う。
そして、目に入れても痛くない私の息子ランスに、特別の感謝をしたい。
であり夫となったことを誇りに思う。
ます。
あなたは、最高の父親
あなたの母親であることは、私だけのもので、嬉しいことであり
これによって、私は子供達を守るために働く力を与えられている。
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
目次
導入
最終的に幻滅する。
“サイレント・ラム(沈黙する小羊)”と NBC ニュース番組デート・ライン
デート・ラインの出演して排斥される。
新しい献身
序言
1. これらの訴訟
これらの訴訟は
訴訟は何についてなのか
についてなのか?
2. 事実
3. 関連事件の
関連事件の背景
■ものみの塔は悔い改めた者の恩典を失う。
4. 裁判記録:
裁判記録:他の5件の訴訟
5.エホバの
エホバの証人は
証人は何を間違えたのか
間違えたのか?
えたのか?
■3年ルール
■地区監督ドナルド・アミーの手紙
6. 責任を
責任を明らかにした示談
らかにした示談
■同じ会衆の2人の性的虐待者
7. 被告は
被告は児童性的虐待について
児童性的虐待について報告
について報告していない
報告していない。
していない。
■児童虐待を報告する方針はなかった。
8. ものみの塔法務部
ものみの塔法務部は
塔法務部は、同サービス部
サービス部を代表している
代表している。
している。
9. ものみの塔
ものみの塔スポークスマン J.R.ブラウン
J.R.ブラウン氏
ブラウン氏の証言
10.
10.ものみの塔
ものみの塔の秘密の
秘密の支払い
支払い
■レインミューラー氏の証言に見る KAHH Ins.計画(示談)の概要
■ものみの塔の法廷外の秘密の示談
11.
11.らくだの背骨
らくだの背骨を
背骨を折った一本
った一本のわら
一本のわら
■ものみの塔の児童性的虐待の取扱方針
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
導入
私は、経験もなく、不満な日々を送っていた 14 歳の時、私の生涯のチャンスを狭めてしまい、そ
してその後 44 年の行方を決めてしまう選択をした。・・・・最も攻撃的で議論の多い宗教団体である
エホバの証人のメンバーとなった。 そして、これが私の生活の中心となった。
私は、考古学の勉強をしたいという願いを、捨てざるを得なかった。 なぜなら、この宗教団体は高
等教育を禁じていたからである。
布教活動が教育よりも大切とされていた。
私は、友達を選ぶにしてもエホバの証人、結婚相手もエホバの証人と心に決めていた。
私は 1954 年から 1998 年までエホバの証人であった。
た。 その時、彼はもちろんエホバの証人であった。
彼は、エホバの証人として注意深く訓練された。
よく承知していた。
1959 年にジョー・アンダーソンと結婚し
1961 年に息子ランスが生まれた。
私達、家族はこの宗教に対する人々の反対を
彼らが聞こうが聞くまいが、粘り強く人々に伝道するからである。
私達は、ある人達には伝道のやり方のために、嫌われたものの、それでも夫と私は約 80 人の人をこ
の信仰に導いた。
1982 年、エホバの証人の勢力が拡大していた当時、私達は長年にわたる忠実なエホバの証人と
してニューヨーク市ブルックリンのものみの塔本部でボランティアとして住み込み、働くよう招かれた。
そこは“ベテル”と呼ばれていて、私達は“ベテル人”となったのである。
人達は数千人規模であった。
その当時、ベテルで働く
そこに住み働く目的は、何億冊にものぼる“ものみの塔”、“目ざ
めよ”などの刊行物を印刷することにあった。
初めの1年間、私は発送部門で働き、その後、“エ
ンジニアリング部”に移り、そこで6年間、秘書と調査の仕事をした。
その後、著作部に異動となり、
そこで約4年間、エホバの証人の年代史「エホバの証人―神の王国を告げ知らせる人-1993 年」
(日本語版の題:ふれ告げる人々)の主任調査者となった。
ものみの塔本部で働く間、1990 年代初めの頃、長老を含む何人かのエホバの証人が会衆内に
おいて児童性的虐待を行なっていることを知った。
また、ものみの塔本部のスタッフはその内の
多くの事実を知っていたが、組織の方針によって、警察当局に届け出でることができないこと、そし
て会衆メンバーにも知らせることができない状況にあることを知った。
この組織の方針は、エホバ
の証人が公に掲げている立場、つまり児童に対する性的虐待は許されるべきではなく、又、隠され
るべきでもないという立場に真っ向から相反するものであった。
1993 年 1 月に私はものみの塔本部からテネシー州の自宅に戻ってからも、雑誌“目ざめよ”の上
席著者として、1996 年 12 月まで、児童性的虐待の調査を続け、また、“目ざめよ”の記事を書き続
けた。
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
私は、ものみの塔の組織内部での児童性的虐待の事実をはじめて知った時、罪を立証するため
には2人の証人が必要であるという聖書の教えが、児童性的虐待にも適用されるということは、思い
もよらなかった。
私は、1997 年以降になって、児童性的虐待の罪について2人の証人が必要
という組織の方針が、逆に会衆内の性犯罪者を守る結果となっており、子供達にとって大変、危険
なものであることをはじめて知った。
もし性的ないたずらを受けた被害者が当事者ではない2人
以上の証人を立てることができなくて、しかも加害者が容疑を否定するなら、被害の訴えは行き場
がなくなってしまう。
こうして、守秘義務が有効に効くことになる。
被害者は、他の人に話して
はならないことを義務付けられていて、もし違反すれば、彼等自身が排斥されることになってしまう。
このようにして児童性的虐待者は、隠され、子供達は餌食となっているのである。
最終的に
最終的に幻滅する
幻滅する。
する。
私は、大きく言って、メンバー達は、皆同じように見える組織に属していた。
しかし、水面下の現実においては、一人ひとりの生活に対する姿勢、生き方は大きく違っている。
なぜなら、エホバの証人はエホバ神が組織を導いてくださると信じる、自己告白の信仰だからであ
る。
そして、個々のエホバの証人を外部からの影響から守るため、エホバの証人の指導者達
は、群れのメンバーの生活のすべての面において規則を作るのである。
指導者達は、その意図するところは良いのであるが、群れのすべての社会的条件について、一律
の指示を出すというパリサイ派になってしまったのである。
彼等指導者の指示は、会衆を守る
意図を持って書かれたものであるが、多くの場合、悪いやつとその悪の秘密を守る結果になってい
るのである。
1998 年、私は組織を正式に離れたが、その前約1年間は、組織からだんだん距離をおいていった。
私は、不安を退けようとして地元の大学に行き、いくつか試験を受けて、奨学金を受取ることになっ
た。
これにより、私は世界中のエホバの証人の友達がいなくてもやっていける強さを得ることに
なった。 ( 彼らエホバの証人が、もはや私は仲間ではないと知れば、彼らは間違いなく私を避け
るだろうことを、知っていた。)
を知った。
私は、大学に行くことによって、ものみの塔の外に生活があること
このとき、私の夫と私は結婚して 39 年であった。
ことは何もなかった。
私たちはお互いに秘密にする
夫ジョーは、私がものみの塔の児童性的虐待に関する方針 (私は害悪
であると考えていた。)について私が今までやってきたことを知っており、私がものみの塔の組織の
中で大変な困難を抱えていたことを、充分、承知していた。
そのため、私がこの宗教を離れる
ことについて夫は受入れてくれた。
私は一人の女性として、この悪弊に沈黙するか、又は排斥されるかしかなかった。
子供達を児童性的虐待から守るために、私は全くの無力であり、怒りと挫折感にこれ以上、耐える
ことはできなかった。
いずれにせよ、私は誰に対しても、エホバの証人の組織について、否定的なことを言わなかった。
だから、彼らは、私を脅威と感じることはなかった。
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
“サイレント・
サイレント・ラム(
ラム(沈黙の
沈黙の小羊)
小羊)”と NBC の番組デート
番組デート・
デート・ライン
2000 年の終わりごろ、私はエホバの証人の長老ビル・ボーエン氏と会った。 彼は長老の職を降
りて、児童性的虐待について世間に公けにしようと腹を決めていた。
それは、2001 年 1 月 1 日に起きた。
辞任した。
ビル・ボーエン氏は、児童性的虐待問題によって、長老を
彼の地元のケンタッキー州の新聞等のメディアの取扱いは大変なものであった。
加えて、私とビルは、彼が立ち上げたウエブ・サイトを“サイレント・ラム(沈黙の小羊)”と名前をつけ
て、エホバの証人の犯人によって、性的な虐待を受けたエホバの証人の被害者が自分達の受けた
被害について投稿できるようにすることで意見が一致した。
始めてから、数週間の間に約 1,000 通、5年後には約 7,000 通の経験談が投稿された。
始めのうち、私は自分の身元を明らかにしなかった。
数週間の内に、私とビルは NBC の番組
デート・ラインのインタビューを受けるため、ニューヨーク行きの飛行機に乗っていた。
番組の製
作者は、この問題について集中的に調査した結果、私達の言っていることが事実であると理解し、
このインタビューが計画されたのであった。
ニュース番組
ニュース番組デート
番組デート・
デート・ライン出演
ライン出演によって
出演によって排斥
によって排斥される
排斥される
ものみの塔の指導者は、NBC に電話して、その番組が何時放映されるかを聞き、それが 2002 年
5 月 28 日であることを知った。
ものみの塔本部指導者は、直ちに私達2人の所属する会衆の長
老に連絡して、NBC に密告した私達を取り調べるための審理委員会を開くように指示を出した。
5 月上旬、私は、自分に対して告げられた虚偽の容疑に対して無実であることを立証した。
数日中に、長老達は新しい、でっちあげの容疑によって、審理委員会を計画した。
私には、無駄であると思われ、出席を拒否した。
もし私が、これらの容疑を否認したとしても、彼
らは間違いなく、別の容疑を持ち出すのは、明らかだからである。
いずれにしても、私はエホバの証人の兄弟姉妹の間に分裂をもたらしたことによって、2002 年 5 月
19 日に排斥された。
排斥されたメンバーは、悔い改めない罪人と見なされ、ものみの塔に対して狡猾な行いをした、
信用できない者と見なされる。
私にとっては、デート・ラインの番組が放映される直前に排斥
されることは、明らかであった。
なぜなら、この番組を見るエホバの証人達が、番組の中で私が
語るエホバの証人の組織内部における児童性的虐待事件について、事実であると信じないように
仕向けるためである。
夫ジョーも、引き続いて、2002 年 7 月に同じく分裂を引き起こしたとの容疑で、排斥された。
私を弁護し、児童性的虐待について個人的な意見を表明したことによって、ジョーはもはや組織人
間ではなくなった。
ジョーはビル・ボーエンと私と同じく、児童性的虐待が起きた時に、組織が
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
長老に要求するやり方に対して批判的であった。
ジョーは当時も、そして今も、児童性的虐待の
容疑を自ら取り調べるべきではないと信じている。
それは、どこの州に住んでいたとしても、仮に
宗教指導者が法律上の届出義務がない州であっても、長老は直ちに警察当局に届け出るべきだ
と信じている。
新しい献身
しい献身
私はエホバの証人としてバプテスマを受けた 14 歳の時から、自分の生涯を思い返してみた時、
どこで最初の一歩を踏み出したのか、ただ驚くばかりである。
その時は、エホバの証人に教え
られた命の不思議について、他の人達が理解できるよう助けたいという思いだけあった。
私は、命の不思議が説明できるものであるとか、エホバの証人は情け深い優しい宗教であるといっ
た妄想にもはや縛られていないことに喜んでいる。
私は、エホバの証人の組織内部で起きた児童性的虐待を公表した“ユダ”であるとレッテルを貼ら
れているが、私は引続きこの宗教組織内部の隠された秘密を暴きたいと心に決めている。
2003 年、最初の児童性的虐待事件の訴訟が起こされて以降、5 年の間に、私は、エホバの証人
が児童性的虐待について、どういう方針によって、どのように取り扱っているかについて、関係当事
者の理解を深めるように積極的に支援した。
2003 年以降に起された児童性的虐待関連訴訟は
一つも公表されず、2007 年 2 月に、ものみの塔の指導者達によって、法廷外の解決、つまり和解に
よって解決されたが、私は失望している。
しかしながら、これで終りではない。
私は、5,000 ページ以上の裁判記録を入手して、“アメリカのある宗教における小児性愛の秘密―
危機にあるエホバの証人“として秘密を明らかにした。
序
およそ 5,000 ページの裁判記録が、4つの州における 12 の裁判所の訴訟記録から集められた。
これらの裁判記録は 1999 年以降にエホバの証人及びその組織を被告とする 12 件の訴訟に関わ
るものである。
ここでの主な関心事は、エホバの証人の児童性的虐待の被害者と同じくエホバの証人及びその
組織の被告との間で、2007 年の初めに和解によって解決された9件の訴訟事件である。
しかし、加えて同じく和解で解決された2件の訴訟記録もここに含まれている。 一つは 2000 年、も
う一つは 2006 年に決着したものである。
更に、我々が裁判記録を調査した結果、もう一つを発
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
見した。 これは 2004 年に被告人の権利を侵害しない前提で裁判が却下されていた。
その書
類はこの中にも情報として含めておいた。
概観すると、2007 年に解決された 16 人の被害者の関連する 9 件の訴訟には共通する事実があ
る。
これらの訴訟は、2003 年から 2006 年の間に、テキサス州フォート・ワースのラブ&ノリス法律
事務所によって裁判所に届けられた。
主たる被告は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・
INC;オレゴン州のエホバの証人の一つの会衆、テキサス州にあるエホバの証人の一つの会衆、カ
リフォルニア州北部の6つのエホバの証人の会衆、カルフォルニア州南部の一つのエホバの証人
の会衆となっている。
である。
そして8人の加害者、すべてエホバの証人であるが、彼らが共同被告人
カトリックの場合と異なって、エホバの証人の場合は、これら9件の訴訟を秘密裏に和解
で解決している。
9件のほとんどは、1月末の決着し、2月中旬に訴訟が却下されている。
2006 年 10 月に、私はこの 16 人の被害者の訴訟はまもなく解決されるであろうとの印象を持った。
2月上旬に、私とサイレント・ラム(沈黙の小羊)のビル・ボーエンは、これらの訴訟が法廷外の和解
で解決されたことを知った。
私達は、原告も被告も、公表されることを望まないということ以外の
情報を得ることは出来なかった。
ビルはこれ以上、この訴訟が解決されたことの発表を待つ事を
望まなくて、2007 年 5 月 10 日にプレス発表を行なって、これを受けて AP 通信は 2007 年 5 月 11
日に、これを記事にした。
そしてエホバの証人側はこれを確認した。
ビルはウエブ・サイト“
www.silentlambs.org”に、9 件の訴訟の却下状のコピーを載せたが、それ以上の事実はほとんどつ
かんでいなかった。
されている。
この却下状には、両者とも、本件について再提訴しないことに合意したと記
通常、このような合意がなされたということは、被告が、この場合はエホバの証人側
が金で解決したことを意味する。
解決された数ヶ月の後、私は、この9つの訴訟に関わる重要な事実を、非常に興味ある書類・・・・
被告側のものみの塔、エホバの証人が、永遠に葬り去りたいと願っている秘密文書を含む・・・と共
に、提供できる運びとなった。
私は、またこの9つの和解による解決にも拘わらず、恐らくそれ以上のものがあることを発見した。
入手した書類の中に、2007 年 3 月 15 日に開催予定を伝える「案件運営会議通知」があった。
訴訟案件は、“デニス S 対ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC 他であった。
この件はソノマ郡上級裁判所に、訴訟番号 234168 として届けられていた。
本件は、“カリッサ W.とニコル D.の調整案件”と記載されていた。
この書類の表紙に、
2007 年 7 月に、ソノマ郡上級
裁判所記録部はデニス S.の案件について、2007 年 3 月に法廷外の和解で解決されたため、判事
の権限によって裁判を却下したと確認した。
この法廷外での解決の知らせをはじめに聞いた時、私は14件の訴訟が含まれていると記録した。
後になって、私は、ナパ郡裁判所は、2007 年 2 月に却下されたカルフォルニアの 7 件及びテキサ
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
スの1件、オレゴン州の1件、合わせて 9 件だけが届けられた訴訟案件であると考えたのは誤りであ
ると確信した。
AP 通信の記者の質問に対して、ものみの塔側の弁護士マリオ・マリノ氏は9件の
訴訟であると答えた。
もし、もっとあるなら、マリオ・マリノ氏は、慎重に情報開示はしないであろう。
しかしながら、私達は今や 10 件あることを知った。
そして、現在、実際には 14 件が和解によって
解決された模様で、これを確認する調査が必要であるが、しばらく時間がかかりそうである。
1.これらの訴訟
これらの訴訟は
訴訟は何についてなのか
についてなのか?
のか?
エホバの証人の組織において、方針を決定し、エホバの証人に命令するのは、統治体である。
統治体は、多くの法人格のある組織を通して命令を出すが、主として“ものみの塔聖書冊子協会ニ
ューヨーク・INC” と“ものみの塔聖書冊子協会ペンシルバニア・INC”である。
原告がエホバの
証人の組織は、会衆内子供達を守る義務を負っているにも関わらず、注意を怠り、通常、要求され
る義務を怠ったと訴える相手側がこの法人である。
例えば、被告側は、誰の監視もないところで、
長老もしくは奉仕の僕が、子供と一対一に置かれることを禁止する方針を具体化しなかったこと等
である。
統治体は、子供達を一人で男性の長老と共に家から家への野外奉仕に出ることを許し
たり、また成人男性の長老などとの聖書研究に付き添いなしで子供たちを出席させるよう、両親に
勧めたり、誰の監視もないところで、これらの男性が子供達相手に“相談”することを許したりしたこ
と等である。
ものみの塔は、会衆の長老が、児童性的虐待の被害の訴えを受けた時、どのように対応すべき
かを、指示する責任がある。
ものみの塔本部は、会衆の長老達に対して手紙(通達)を出して、
児童性的虐待の訴えがあった場合には、“ものみの塔法務部”に連絡して、警察に届けるか否か
指示を仰ぐように指令を出していた。
いた。
しかしな、これは世俗の捜査を阻害
阻害するよう
するように仕組まれて
例えば、長老はしばしば、公衆
公衆電話
電話から
から匿名
匿名の
電話
から
匿名
の電話をするように指示された。
これは、
情報を求める捜査当局が、長老達に接触できないようにするためである。
被告“ものみの塔”は、長老達に、児童性的虐待の告発について調査するよう求めた。
長老達
は、エホバの証人の方針及び教義として“2人の証人のルール”を当てはめるよう求められた。
もし加害者が犯罪を認めず、無実であると主張した場合には、児童性的虐待の告発の件を機密文
書と付箋のついたファイルに移管することになっていた。
長老達は、証拠を集め、証人から証言
を聞き、児童性的虐待者に対して課せられる組織内部での罰について判断するように求められ
た。
彼らは調査の結果を警察当局に明らかにすることを禁止されていた。
察に届出る方針は今もない。
事実、児童性的虐待を警
被害者とその家族は、世俗の警察当局や、会衆の他のメンバー
に対して何も言うなと言われていた。
秘密保持が他のすべてに優先して強調された。
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被
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
害者とその家族は、適切な医学的心理学的処置を受けることを思いとどまるように言われた。
長老が児童性的虐待の告発について“ものみの塔法務部”に電話で問い合わせると、本部が意
図する調査の進め方に誘導するような質問を受けた。
ショッキングで不適切であったのは、性
的虐待の犠牲者は、子供でなくて長老自身の間違いではないのかという質問があった。
世俗の警察当局に対し告発しなければ、加害者は、長老の監督下に置かれる以外には、何ら罰
を受けることはなかった。
違反者は排斥されるか、組織から追放されるかの罰を受けるときもあっ
たが、極秘の内に叱責を受けるか、または何らかの制限を受けるか、特権を失う程度の時もあった。
悲しいことに、会衆のメンバーは、身内に危険な児童性的虐待者がいることを知る由もなかった。
ものみの塔は、通常、児童性的虐待者を、驚くほど短い期間の間に、排斥処分から回復させたり、
制限を解除していた。
さらに、証拠を見ると、児童性的虐待者を数年以内に長老や奉仕の僕に
再任していることも、めずらしいことではなかった。
一体、誰が児童性的虐待者を責任ある地位に再任したのか?
私達は、裁判記録にその責任
者の名前が記載されていることから、その一人を知っている。
その男は、ものみの塔本部サービス部で働いており、児童性的虐待者を 1964 年以降、何度も、何
度も、責任ある地位に再任していた。
ものみの塔本部は、長老達に対し、児童性的虐待の告発を受けてから、それに続く審理委員会
で行なわる内容と経緯を、ものみの塔サービス部に書面で報告するように指示していた。
サービ
ス部は、コンピュータによるデータ・ベースに、これらの情報を保管していたが、他の長老達や会衆
メンバーには、これらの事実を隠していた。
エホバの証人の指導者達は、会衆メンバーを保護
するために、これらの情報を保管する責任がある。
しかしながら、これらの情報は、本来、被害
者の両親、長老達、司法当局に対し、誰が犯人かを知らせて、子供たちを守るために使うべきであ
るにもかかわらず、ものみの塔は、この情報を隠したのである。
ものみの塔サービス部は、ものみの塔法務部の依頼人であるため、(弁護士/依頼人の機密保
持の関係が成立する)、原告と裁判所はものみの塔の組織内部に起きた児童性的虐待事件の拡
がりと真相を裏付ける証拠書類を容易に入手することは出来なかった。
ものみの塔とエホバの証人の監督者達との間で公式な情報が出されることはまれであり、私は見
たことがない。
弁護士/依頼人に存在する機密保持だけでなく、著作権によっても許可なくして
手紙を公表することは、許されていない。
しかしながら、長年、ものみの塔の米国の地区監督で
あった人の秘密の手紙が見つかり、それによると、児童性的虐待者が引続き責任ある地位に留ま
ることを許可し、結果、児童に対する性的虐待が続けられるままに放置されたことが書かれている。
(この手紙は、オレゴン州の裁判所の公開書類の中に紛れ込んでいた機密書類の中に見つかっ
11
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
た)
手紙の著者は、このほとんど知られていない規則に変わりはないかと質問に対して、児童性
的虐待の場合は、このような寛大な措置はもはやないと答えている。
これは 1994 年に遡るが、こ
の著者は、あるエホバの証人会衆内で長老である犯人が多くの子供達を性的に虐待したおぞまし
い状況を見たことがあるが、この規則が存在してために、犯人は長老の職を解任されることもなく、
審理委員会も開かれることもなかった。
とは言え、この規則は 2000 年にも、生きていた。
ものみの塔は、“児童性的虐待者として知られている者”が、何時、別の会衆に異動したかを、知
りうる立場にあるが、あえて、事前に会衆に警告できるように監視することをしていなかった。
1991 年にある児童性的虐待者が、ものみの塔と統治体によって、奉仕の僕として任命された。
この犯人は、1991 年から 1999 年の間に、4 人の子供たちに性的な虐待を加えた。
のうちの一人が、これら裁判記録に登場する原告である。
この被害者
事実、この犯人は、数年の間にこれら
被害者達と何度も対決したが、エホバの証人の審理委員会は前提として、一つの事件について2
人の証人を必要としているため、結果的に、何の罰も受けることはなかった。
この犯人は会衆
から会衆へ異動することで、25 年から 30 年間の間、ほとんど知られることなく犯行を続けていた。
被害者の両親は、新聞社に対して次のように答えている。
「私は、同じ会衆内に児童性的虐待
者として告発を受けていた犯罪者がいたなどとは、全く知るよしもなかった。
会衆の長老は、この
犯人が、前にいた別の会衆から児童性的虐待の訴えを受けていたことを知っていたにもかかわら
ずである。」
エホバの証人の組織は、何年もの間、児童性的虐待事件を法廷外の和解で、密かに解決してき
た。
私と同じくものみの塔本部で働いていた友達の一人が4年ほど前に、エホバの証人であ
る弁護士と、個人的に話した内容について次のように語ってくれた。
「彼等弁護士はしばしば、ものみの塔本部に呼ばれて、性的虐待を受けた被害者とその両親に会
って、250,000 米ドル(約 22,500,000 円:@90 円で換算)を限度として、法廷外の和解による解決を
はかり、訴訟を取り下げさせるよう交渉する権限を与えられていた。
弁護士によれば、原告は、
わずか、数千ドルの示談金で示談に応じることは、普通よくあったそうである。
というのは、多く
を要求すれば、ものみの塔の伝道活動の資金を奪ってしまうことを心配しているからである。
1996 年にものみの塔は、カルフォルニア州の会衆の長老が会衆内の子供に対して性的虐待を行
なったことから、密かに 50,000 米ドルを支払ったが、彼等がこれを知ったなら、当然、怒るであろう。
ここには、2007 年 2 月に解決された9件の訴訟に関わる裁判記録と、その他3件の取り下げられ
た訴訟に関する記録が含まれている。
ものみの塔は、この9件の訴訟の原告達が受け入れ可能な、しかもできるだけ早い裁判所の判決
に協力するのではなく、訴訟の却下を勝ち取るために頑強に抵抗したのである。
しかし、これは、ものみの塔にとって悪夢であった。
12
というのは、カルフォルニア州、オレゴン州の
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
高等裁判所は、被告のものみの塔側は、聖職者の守秘義務を理由に、原告側が要求した書類の
提出を行なわないように要求したが、裁判所はこの要求を却下したからである。
裁判所は、被告ものみの塔と会衆の審理委員会との間のやりとりは、聖職者守秘義務に該当しな
いということで、被告側の要求を却下したのである。
カルフォルニア州の裁判所は、審理委員会
の目的は、排斥の罰則に相当する罪であるか否かを調査することであるとの判断であった。
加えて、同裁判所は、審理委員会がやりとりを公表しない理由は何もないと判断した。
事実、
審理委員会は、聴取した情報をものみの塔本部に報告するよう要求されている。
カルフォロニア州においては、下級裁判所が、被告側と犯人の間のやりとり、被告と長老の間、また
は被告と被害者との間でどんなやりとりが行なわれたかの証拠書類の提出を求めたのにも、かかわ
らず、被告は約1年間、裁判所の決定に従わなかった。
判所の決定を不服として控訴院に上訴した。
被告ものみの塔は、最後には、下級裁
しかしカルフォルニア州控訴院は、上訴を却下し、
下級裁判所に差し戻した。
下級裁判所は、被告側に該当の書類を提出するよう命令した。
今後、ものみの塔、エホバの証人の組織は、“宗教団体”であることを理由として、情報開示を拒
否する“いわゆる第一修正の権利”(米国憲法上の権利として、思想信条の自由の権利を認めた条
文)の陰に実態を隠すことは、困難になるであろう。
聖職者特権による守秘義務について被告側が負けたことは、この宗教団体の児童性的虐待につ
いて適切な対応を怠ったゆえに傷つけられた原告側にとって、唯一の素晴らしい判決であった。
2.事実
これらの裁判は、ものみの塔の宗教自身には何の関係もない。
被告ものみの塔側は、原告が申し立てていることは、ものみの塔側の“第一修正の権利”を踏みつ
けるものであると主張して、常に問題の焦点をぼかそうとしてきた。
そうではないと原告側の弁護
士は言っている。
「本訴訟は、被告ものみの塔によって、任命された代理人が、与えられた権威と信頼の
地位を子供に対する性的虐待という犯罪に利用したものであり、そして被告ものみの
塔は、子供達を犯罪者の管理下に置いたものである。
また、本訴訟案件において、
被告ものみの塔は、児童性的虐待事件を意図的にもみ消そうとしただけでなく、この
事件及び、組織内における他の同様の事件を当局に届け出でることを積極的に
妨げた。
同時に、被告ものみの塔は、この犯罪者達が、与えられた地位を罪の
ない子供達を性的に虐待する機会に利用していると知った後においても、これら犯罪者
を権威と信頼の地位に置き続けた。
最後に、本訴訟において、子供達を性的な虐待
から守るために、合衆国及びカルフォルニア州は、法律によって、これら児童性的虐
待者の責任を問うことを求められているものである。
13
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
被告ものみの塔は、犯罪者達が、引続き子供達の監督の地位に留まるならば、犯罪
を繰り返すであろうと知りながら、原告に対してこれら犯罪者達を擁護し、その職に置き
続けた。
このように、知りながら犯した不作為の罪について、本法廷が提訴するのは
“第一修正の権利”を妨げることにはならない。
更に、被告ものみの塔が、被害者に沈黙を守るよう強要し、且つ児童性的虐待事件を
警察に届け出ないように意図的に行動したことに対して、本法廷が提訴するのは、この
“第一修正の権利”を何ら妨げるものではない。
被告ものみの塔のこれらの行動は、
宗教上の理由によるものではなく、会衆の他のメンバーに対して警告したり、虐待を警察
当局に届け出るなど、最低限度の対応を取ることを怠り、かつ会衆の子供達を監督する
立場に犯罪者を任命し続けた責任から逃れようとしたものである。※1
※1:2005 年 3 月 11 日訴状 p2-3「同様の訴訟全てにおける被告の抗弁申立に対する
原告の反論」
今や、法廷外の和解は終わってしまい、原告側の弁護士がものみの塔の汚いごまかしを、公開
することはできないが、ここにはこれら提訴の内容を裏付ける多くの証拠書類があり、すべての読者
は、読むことができる。
この証拠は、かっては機密書類であったが、現在は公表されている裁判
記録の中から収集されている。
被告側は、エホバの証人の会衆の通信文や書類を原告、被害者達や、原告側弁護士、そして何
よりも重要なのは公共の注視の下に開示しないように、延々と法廷闘争を続けたのである。
被告は、犯罪を隠し、エホバの証人の幹部が知っていることや、子供達を犯罪者から守るためなす
べきことを何もしなかったことを、公開法廷で証言しないで済むように、法廷外での和解解決に持
ち込むため、どんな手も使ったのである。
以下の裁判記録に、原告カリッサ・W とニコル・D が、被告ものみの塔は、エホバの証人の性的虐
待者から子供達を守るために何もしなかったと訴えている証言を載せたので、読んで下さい。
ちろん、この“被告 Roe※2”に対する訴えは、立証される前のものである。
※2 Roe とは、すべての被告に対して付けられた名前である。 この時点では、被告の内、身元が
確認されていない者がいたため。
ニコル・D に対する虐待
「被告“ROE”の代理人、エドワード・ヴィルガスは、少なくとも 1972 の初めごろから、長老の
立場を利用して、”ROE”被告の監督下にあった子供達に性的に虐待する意図をもって近
づいた。
同じ期間、同じく被告“ROE”の代理人、エドワード・ヴィルガスは、長老の立場を利用して
14
も
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
被告“ROE”の監督下にあった他の子供達を、性的に虐待した。
1978 年ごろ、エドワード・ヴィルガスは、長老であり、被告“ROE”組織の指導者である立場
を利用して、被告“ROE”組織の監督下にあった子供である原告ニコル・D に近づいて、性的
な虐待に及んだ。
原告ニコル・D は、性的に虐待された当時、7歳であった。
エドワード・ヴィルガスは、被告“ROE”組織の指導者として与えられた権威を利用して、原告
ニコル・D にオラル・セックスを強要した。
原告ニコル・D が両親にこの性的な虐待のことを話したとき、父親は直ちに被告“ROE”の指
示に従って、被告の長老達 ROE 9 に報告した。 “ROE”被告は、エドワード・ヴィルガスを個
人的に叱責したが、彼の責任を問うためのそれ以上の手を打つこともなく、又、エドワード・
ヴィルガスの監督下に子供を預けている両親、家族、及び会衆の他のメンバーに連絡するこ
ともなかった。 従って、エドワード・ヴィルガスは引続き、与えられた権威を利用することが
出来た。
被告”ROE“は、20 年以上の間、エドワード・ヴィルガスが、長老の立場を利用して、組織の
保護下にある子供達に近づき、性的虐待や、身体的な虐待を行なっていたことを、知ってい
たか、もしくは知りうる立場にいた。
しかしながら、”ROE”被告は、エドワード・ヴィルガス
を地元の会衆の指導者の地位に置き続けて、地元の会衆の数多くの子供達の面倒を任せ
たままの状態に置いた。
被告”ROE“の代理人(エドワード・ヴィルガス)は、それをいい
ことに、組織内の権威を利用して、被告及び他の子供達に対し性的虐待を行なった。
被告”ROE”は、その代理人つまりエドワード・ヴィルガスが、被告“ROE”の庇護下にある
子供達を性的に虐待していたこと、現在もしていることを、組織の内外に通告することは
しなかった。
更に被告“ROE”は、若い被害者達を、この虐待から守るための対策をなんら講ずることもなか
った。
それどころか、被告“ROE”は、この事実を知りながら、原告側及び他の者には隠して
いた。
被告“ROE”は、性的虐待を助け、扇動し、認めていた。
被告“ROE”は、彼らの代理人が、庇護を任せた子供達を、性的に虐待しているとの連絡を
受けたとき、この問題を取り扱う責任を引き受けた。
対して、この問題を自分達に任せるようにと言った。
被告”ROE“は、被害者達の家族に
しかしながら、被告“ROE”は、この
性犯罪を警察当局に届けることもせず、また、彼らが非常に危険な小児性犯罪者を子供達
の面倒を見る立場にいる事実を、組織の他のメンバーに警告することもなかった。
彼らは、原告やその家族が性犯罪のトラウマにどう取り組んだらよいのか、また、専門家、
その他できうる限りの助けを得ることに対して、積極的に阻んだのである。
被告“ROE”は、代理人エドワード・ヴィルガスの行為の責任を追及し、そして彼に自分の
性癖にきちんと向合わせるための、適格な対策を何ら講じなかった。※3
※3 2003 年 7 月 24 日に提出されたニコル・D の申し立てのまとめと証拠写真、裏付証拠。
カリッサ・W に対する虐待
15
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
1970 年頃、原告カリッサ・W とその母親ベティー・ホプキンスは、被告”ROE“の代理人エドワ
ード・ヴィルガスとその妻マーサ・ヴィルガスを通じて、被告”ROE”の指示の下に置かれた。
被告”ROE“は、新しく、エホバの証人に転向させる目的のために、ヴィルガスの家の外にある
デー・ケア・センターを使っていた。
原告カリッサ・W は、その当時1歳であった。
ベティ
ー・ホプキンスは、新たにエホバの証人になって、彼女の娘、つまり原告カリッサ・W を被告の
庇護下に預けた。
少なくとも 1972 年の初めごろから、被告”ROE“の代理人エドワード・ヴィルガスは、長老の地
位を利用して、被告”ROE“の庇護下にある子供達に近づき、性的に虐待を行なった。
1972 年頃、被告“ROE”の代理人エドワード・ヴィリガスは、原告カリッサ・W を性的に虐待した。
とりわけ、エドワード・ヴィルガスは、彼女の性器を撫で、指をワギナに入れ、そしてオラル・セッ
クスを強要した。
その当時、彼女は 3 歳~4 歳であった。
その後、12年~13年にわた
って被告“ROE”の代理人エドワード・ヴィルガスは、長老という指導者の立場を利用して、被
告の庇護下にあった原告カリッサ・W を性的に虐待し続けた。
原告の立場は、被告の組織内においては、小さなものであり、一方、エドワード・ヴィルガスは
被告”ROE”の中では、精神的指導者としての権威によって、原告他の者たちを管理し影響を
与えることができた。
被告”ROE”は、エドワード・ヴィルガスを権威ある立場におくことによっ
て、原告や他の者に性的虐待を行なうことを可能にした。
的に隠し続けた。
そして、その虐待の事実を積極
被告団の各メンバーは、それぞれの立場を利用して、エドワード・ヴィル
ガス及びその他指導者が、これら小さなもの達を性的に虐待し、搾取すること、さらに被告
“ROE”の組織内に起きている性的虐待の事実を隠し、隠蔽することに加担し、また教唆・扇動
した。
20 年以上もの間、被告”ROE”は、代理人エドワード・ヴィルガスが、組織に置ける責任ある
立場を利用して、組織の庇護下にある子供達に近づき、性的に虐待していたことを知ってい
たか、もしくは知りうる立場にあった。
しかしながら、被告“ROE”は、エドワード・ヴィルガスを
地元の会衆の指導者の立場に置いたまま、被告“ROE”の地元会衆の多くの子供達の面倒を
見る地位に置き続けた。
そして、被告“ROE”の代理人エドワード・ヴィルガスは、組織に
おける権威を利用して、原告やその他の者を性的に虐待した。
被告“ROE”は、その代理人エドワード・ヴィルガスが被告”ROE”の庇護下にある子供たちを
性的に虐待しているという事実を誰にも届け出ることをしなかった。
被告はさらにこれら小
さな被害者達をエドワード・ヴィルガスの虐待から保護するための手を打つ事をしなかった。
それどころか、原告やその他の者からの訴えを知りながら隠していた。
被告“ROE”は、性
的虐待を手助けし、そそのかし、且つ認めたのである。
被告“ROE”は、その代理人が、組織の庇護下にある子供たちを性的に虐待したという報告を
受けた時に、この問題を取り扱う責任を自ら引き受けた。
16
彼らは被害者達の家族に対して、
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
被告”ROE“にこの問題を任せるように言った。
しかし、被告”ROE“はこの性的虐待の事
実を司法当局に届けもせず、また組織の他のメンバーに対して、子供達を指導する責任ある
立場に、危険な性的虐待者がいることを警告もしなかった。
彼らは、原告やその家族が性犯罪のトラウマにどう取り組んだらよいのか、また、専門家、その
他できうる限りの助けを得ることに対して、積極的に阻んだのである。
被告“ROE”は、代理
人エドワード・ヴィルガスの行為の責任を追及し、そして彼に自分の性癖にきちんと向合わせ
るために、適切な対策を何ら講じなかった。※4
※4 2003 年 7 月 24 日提出の事実認定命令 P4-5 にある、カリッサ・W の証拠写真、裏付証拠の
メモ参照
本件については、原告の訴えは、被告の代理人エドワード・ヴィルガスが原告を性的に虐待
していた事実によって、確証された。
は、被告の知るところとなった。
彼は他の子供達にも性的虐待を加えていたが、それ
しかし、被告は、エドワードを叱責する事もせず、彼が原告
や他の子供達に対して性的虐待を続けるのを放置していた。
被告は、エドワード・ヴィルガ
スの管理下にある子供達を守るために、他のメンバーに警告することもしなかった。 更にエド
ワード・ヴィルガスは、ナパ郡において、多くの性的虐待を犯していた。 訴訟番号 CR17623
※5
※5 同一箇所 P8 参照
カリッサ・W とニコル・D の訴訟の後まもなく、2003 年 7 月 24 日にカルフォルニア州の最初の 18 件
の訴訟が、原告側の弁護士から提訴される予定であったが、被告側の弁護人は、“原告側は
法廷に、聖職に関わる問題、宗教的教義の解釈や、信仰上の慣行の問題を許しがたいほど、巻き
込むものであって、この提訴を禁止すべきである“との、要請状を裁判所に提出した。
これに対する裁判長の決定は、“分かり易く簡単に言って、「そうではない」”、更に加えて“被告は、
憲法上の第一修正の権利を、これらの訴えを隠すために使うべきではない。
のケースは、いずれも提訴以外の手段によっては、語り得ないものである。
被告が言うこれら
原告側が、関係法
規を徹底して検証した結果から明らかなように、本法廷は、憲法上の自由行使の条文に関わること
なく、原告の主張を聞くことができるものである。
よって、被告側が、原告の主張は憲法の第一
修正条項による情報非開示の権利に反するから禁止すべきであるという異義申立ては、これを却
下する。※6
※6 2003 年 12 月 2 日付、2003 年 12 月 17 日承認済のカルフォルニア州ナパ郡上級裁判所
判事 W.スコット・スノードン署名の召喚状無効申請書に対する却下命令を参照。
17
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
このハードルが克服されると、法廷闘争は3年間にわたって激しく行なわれた。
多くの訴訟が被告側に対して提訴された。
この期間に更に
しかしながら、2007 年 2 月に法廷外の和解による解
決の時点まで残ったのは、7件であった。
裁判記録を見ると、2006 年 10 月にサン・ディエゴにおいてカルフォルニア州での7番目の訴訟、こ
れは被告にとって特別に呪うべき内容であったが、これが提訴された頃から、法廷外の和解による
早期の解決を求める動きが水面下で始まっていた。
当局は、犯罪者、会衆の奉仕の僕は、終に
司法当局に明らかなものになり、FBI の最重要指名手配者のリストに載ったと発表した。
サン・ディエゴ訴訟が起された時までに、被告側の弁護人は、その年、夏頃から和解の話合いを行
なっていたが、カルフォルニア州、ナパ郡の公判予定日 2007 年 4 月 3 日が迫っていることから、和
解解決に向けての話合いを集中的に行なった。
18
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
3.関連事件の
関連事件の背景
元々、原告側の弁護人である在サクラメントのノーラン・ソール・ブレスフォールド法律事務所、在
テキサス州フォート・ワースのラブ&ノリス法律事務所、在テキサス州ヒューストンのケニス・フィビッ
チ&ハーレー・ハンプトン法律事務所は、カルフォルニア州北部の各郡において、原告に代わっ
て17件の訴訟を提訴していた。
被告は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC、ものみ
の塔聖書冊子協会ペンシルバニア・INC,及び、カルフォルニア州各地のエホバの証人会衆であ
った。
その後、原告側の弁護士は、その内の5件を自発的に取り下げた。
それは、2004 年 5 月に各法律事務所が相互に協力するため協議の結果、原告にとって、利点が
ないと判断されためである。
まもなくして更に6件の訴訟が自発的に取り下げられて、結果、カ
ルフォルニア州ナパ郡の裁判所に提訴されたのは6件の訴訟となったのである。 ※7
※7 2006 年 11 月 26 日付で提出された原告側の追加訴訟案件との共同審理申し立てに対する被
告側の反対意見を参照。
2004 年 8 月 31 日、ヨロ郡上級裁判所の判事トーマス・E・ワリナー氏は、原告側の案件共同にか
かる申立の聴取を行なった。
議論になった一つは、共同することによって、被告側の性的虐待
の事実解明の過程を無視する可能性になりはしないかという点であった。
2004 年 9 月 3 日、ワ
リナー判事は、原告の申立を認めて、ナパ郡を、共同訴訟の管轄裁判所と指定した。
それから
以降、6件の訴訟は、一番早く提訴された「カリッサ・W とニコル・D 対ものみの塔聖書冊子協会ニ
ューヨーク・INC 及び同一グループ 訴訟番号:26-22191」の名称で受理された。
この6件の訴
訟は、同時に共同訴訟手続評議会(JCCP)番号 4374 と指定され、その内、2件がトラクトⅠ、それ
以外の4件がノン・トラクトⅠと指定された。
6件の訴訟は、10人の別々の原告が北カルフォルニアの6つのエホバの証人会衆に属する5人
の犯人を訴えるものであった。
2006 年 5 月 8 日、原告と被告との間で非公式に和解交渉が行なわれたが不成功に終わった。
これは、カルフォルニア州テハマ郡のティム・W の訴訟番号 52594、そして同じくカルフォルニア州
ヨロ郡のダニエル・ウエスト、シェーン・ペンスそしてアンバー・ペンスの訴訟番号 CV03-1439 であ
った。
同じ月、原告は、本件については、ヨロ郡のウエスト/ペンスの第一回目公判に、預ける
のが最も適切であると示唆した。
た。
公判は 2006 年の終りか 2007 年初めに開かれるよう要請され
3人の原告は、弁護人によって、証言録調書を作成し、また証人の証言録作成も完了して
いた。
そして、残る証言録調書の作成も 2006 年夏までに完了するように手配された。
19
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
加害者のティモシー・シルヴァは、見つからず、すでに死亡したものと思われた。
テハマ郡のティム・W の公判は 2007 年 4 月に行なわれるよう要請された。
その時に、
そして同じくテハマ
郡の別件、訴訟番号 52598:ジュリアヌ・ウインバリー・ガティエレズとヨシュア・ウインバリーの公判
は 2007 年 6 月に開くことで検討された。
その年 5 月に、原告はこの公判が別々に行なわれる
ことに同意した。※8
※8 ナパ郡上級裁判所、訴訟番号 26-22191 の公判日決定の申立、2006 年 5 月 24 日受理
ものみの塔
ものみの塔「聖職者秘密特権
聖職者秘密特権」
特権」論争に
論争に敗れる。
れる。
公判日を決定するまでの道のりは容易なものではなかった。
いつものことであるが、被告側は、
原告の訴えに対して無罪を主張して多くの異議申立を申請する。
初めの頃、被告側は、書類
の提出を拒否するため、「聖職者秘密特権」を認めるよう主張した。
しかしながら、2005 年 9 月
29 日に、裁判所は被告ものみの塔とエホバの証人の審理委員会との間の連絡・交信は、聖職者
秘密特権には当てはまらないとの決定を下して、被告側に、原告側に書類を提出するように命令
した。
<裁判所の資料>
訴訟番号:26-22191
共同訴訟手続評議会(JCCP)番号:4374
書類作成提出命令の申立についての決定
書類作成提出を求める原告側の申立が 2005 年 8 月 31 日に提示された。
本法廷はその内容を読み、検討し口頭での議論を聞いた上で、これを受理し、以下の通り、
決定した。
原告側が要求した書類作成提出に関する申立は、一部において認める。
続いて、一部の書類については、弁護士と依頼人との間に限るものとする。
被告側は、原告の書類作成提出要求に対して、多くの反対意見を提示したが、原告側の
要求に対して2つの異議を申し立てているに過ぎない: 聖職者の秘密特権と弁護士・
依頼人の間の秘密特権であって、本法廷は以下において、詳細を述べる。
他の異議については、被告が本訴訟上の問題としておらず、本法廷は、これらの異議を
理解できない。
要請された開示要求は、広すぎることなく、適切である。 そして、1976 年
東セルビア正教ディオセス対ミリヴォジェヴィッチの判例 426(合衆国 696)によって禁止され
ているものではない。
20
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
1.聖職者秘密特権
証拠コード番号 1032
この章において、“聖職者の通信”とは、信者と聖職者との間のみで秘密裏に行な
われるもので、聖職者の知る限り、第三者のいない場において、教会、宗派、団体
の修養、礼拝の過程において行なわれるものである。 聖職者は教会の規律、教
義の下で聞くことを認められているか、もしくは聞くことを習慣としているもので、聖
職者が聞いた内容について秘密を守ることが義務付けられているものである。
被告は、原告側が要求したいくつかの書類について、証拠コード番号 1032 にある聖職者
秘密特権によって保護されているという理由によって、提出要求を拒否した。
本法廷は、虐待容疑で告発された者と審理委員会の間の通信に対して、この特権は適用
されないと判断する。
原告、被告から提出された証拠によれば、この審理委員会にて
行なわれた通信は、聖職者特権の範疇には入らないことは明らかである。
第一に、審理委員会の目的は、犯した罪が、排斥という罰則に当るものであるかどうかを
調査するものであることは明白である。
これは、原告側から提出された証言抜粋からだ
けでなく、被告側が原告側の証言に異議を唱えるために提出した刊行物「ものみの塔」
によっても、確証される。
(“審理委員会は、排斥の対象となるような大罪が犯された場合にのみ行われる”P18)
第二に、審理委員会は、秘密を守る義務の下に行なわれてはいないことから、聖職者秘密
特権には該当しない。
事実、提示された証拠によれば、審理委員会は、児童に対する
性的虐待事件について聴取した内容をものみの塔本部に報告するように求めている。
聖職者秘密特権は適用されないため、被告は、以前、この特権を主張して作成提出を拒ん
だすべての書類を、20日以内に提出しなければならない。
2.弁護士・依頼人秘密特権対象文書:
被告が作成提出を拒んでいた書類については、弁護士・依頼人の関係に基く秘密特権に
よって守られている。
原告も本法廷も、秘密特権対象記録一覧表なしでは、充分に
異議を唱えることはできない。
被告は、原告に対して秘密特権対象記録一覧表を10日
以内に提出しなければならない。
その後、原告は証言証書の補足を10日以内提出すること。
本法廷は、本件について、
書面で決定を下す。
判事レイモンド・A・ガダニ 2005 年 9 月 29 日※9
※9
2005 年 9 月 29 日付け書類作成提出要請申立に対する決定
21
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
被告は、その意向に反するが、裁判所の命令に従って、2つの秘密特権対象記録一覧表、一つ
は被告であるカルフォルニア州北会衆のために、もう一つをものみの塔のために用意した。※10
※10 両方とも、マリオ・F・モレノの証言の付属書類として証拠書類 A,B として 2005 年 10 月 19 日に
提出され、受理された。
<被告ものみの塔側の資料>
被告エホバの証人北会衆、レッド・ブラフ・INC(以下“北会衆”と略)は、以下の通り、
秘密特権対象記録一覧表を提出する。
要請番号 3:聖職者―聖職従事者―聖職者秘密特権対象文書一覧表と証拠番号
コード 1030 他
1.1981 年 1 月 21 日付けアッパー・レイク会衆の長老から北会衆の長老あての手紙
2.1988 年 11 月 23 日付け、S-53b 様式によるサービス部(ものみの塔本部)長老から
カルフォルニア州レッド・ブラフのすべての会衆の長老への報告
3.1994 年 12 月 1 日付け、S-77 様式による北会衆審理委員会の長老からサービス部
長老への報告
4.1994 年 12 月 1 日付け、S-79b 様式による北会衆審理委員会の長老からサービス部
長老への報告
5.1994 年 12 月 1 日付けの北会衆長老からサービス部長老に当てられた手紙
6.1994 年 12 月 3 日付けの北会衆長老からサービス部長老に当てられた手紙
(この手紙はオレゴン州クラフマイヤー訴訟のファイルにあった)
7.1998 年 10 月 2 日付け北会衆長老からカルフォルニア州コットンウッド、東会衆の長老
宛ての手紙
8.1988 年 10 月 16 日付け、巡回監督からサービス部長老あての手紙
9.2002 年 12 月 31 日付け、ジェームス・ヘンダーソンから北会衆長老宛ての手紙
要請番号 3:弁護士―依頼人関係に係る秘密特権対象一覧表
1.1995 年 7 月 11 日付け、ものみの塔法務部ニューヨークから北会衆長老宛ての手紙
2.ものみの塔法務部から北会衆長老宛ての日付けなしの手書きの法的助言のメモ
3.1995 年 11 月 20 日付け、ものみの塔法務部ニューヨークから北会衆長老宛ての手紙
4.1996 年 6 月 6 日付け、ものみの塔法務部ニューヨークから北会衆長老宛ての手紙
※11
22
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
※11 証拠 A、2005 年 9 月 24 日付け被告北会衆の特権記録
被告ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC(以下“ものみの塔 NY”)は以下の
秘密特権対象記録一覧表を提出した。
要請番号 27(d): 聖職者―聖職従事者―聖職者の秘密特権対象記録一覧表及び
証拠コード番号 66 1030 他
1.1988 年 10 月 16 日付け、巡回監督からサービス部長老宛ての手紙
2.1988 年 11 月 23 日付け、S-53b 様式によるサービス部長老からカルフォルニア州
レッド・ブラフにおけるすべての会衆長老あて(手紙)
3.1994 年 12 月 3 日付け、北会衆長老からサービス部長老宛ての手紙
要請番号 27(i): 聖職者―聖職従事者―聖職者の秘密特権対象記録一覧表及び
証拠コード番号 66 1030 他
1.1994 年 12 月 1 日付け、S-77 様式による北会衆審理委員会の長老から、サービス部
長老宛の(報告)
2.1994 年 12 月 1 日付け、S-79b 様式による北会衆審理委員会長老からサービス部長老
宛ての(報告)
3.1994 年 12 月 1 日付けの北会衆審理委員会長老からサービス部長老宛の手紙
4.1994 年 12 月 26 日付けの巡回監督からサービス部長老宛ての手紙
(これはオレゴン州クラフトマイヤーの訴訟記録の中にあった)
弁護士―依頼人間の秘密特権対象文書一覧表
1.1995 年 7 月 11 日付け、ものみの塔 NY 法務部から北会衆長老宛ての手紙
2.1995 年 11 月 3 日付け、ものみの塔 NY 法務部からカルフォルニア州ウキア
東会衆長老当ての手紙
3.ものみの塔 NY 法務部から北会衆長老宛ての日付なし手書きによる法律的上の助言
メモ
4.1995 年 11 月 20 日付け、ものみの塔 NY 法務部から北会衆長老宛ての手紙
5.1996 年 6 月 6 日付け、ものみの塔 NY 法務部から北会衆長老宛ての手紙 ※12
※12 証拠物件 B 被告ものみの塔聖書冊子協会 NY・INC 秘密特権対象文書一覧表
23
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
2005 年 9 月 24 日受理
被告は1年にわたり、裁判所の命令に異議をとなえて従わず、最終的にカルフォルニア州、第一
控訴地区の控訴院に提訴した。
<被告ものみの塔側の資料>
ルーディーとビル:今朝送った E-メールに続いて、以下の通り通知する。
ものみの塔ペンシルバニアは、個人の利益に反する裁判所の命令に従わないよう決定
した。
本件の回答について断固として防御するため、本件を覆すために提訴するも
のである。
ものみの塔ニューヨークと北会衆は、聖職者―聖職従事者―聖職者
秘密特権問題に係る2件の裁判所決定・トラックⅠの事案について、提訴して見直しを求
めるよう申請する決定を下した。
よって、私は 2005 年 10 月 19 日(水曜日)午後 1 時
30 分に、聖職者秘密特権の対象となる書類の作成提出を求める裁判所の命令に関して、
ナパ郡の裁判所に一方的に提訴する。
が、B 法廷ないしは C 法廷であろう。
ナパ郡裁判所の担当部は指定されていない
私が 30 分前に事務局に確認したところ、どちら
の法廷でも取扱い可能とのことであった。
感謝
ボブ・シュナック※13
※13 2002 年 10 月 15 日付け、ロバート・J・シュナックから、ルディー・ノレン/ウイリアム
ブレスフォールド宛てのファックス
以下は、2006 年 6 月 28 日付けで、カルフォルニア州控訴院に対して、被告が提出した書類提出
命令に対する差止の提訴理由である。
これは、差止命令申請からの抜粋である。
続いて“問題”は、同じく抜粋された「関連事実の時系列による一覧表」である。
被告側からの
視点から見た事実関係の時系列一覧表は、読者の理解に役立つであろう。
<被告ものみの塔側の資料>
この申請が問題としているのは、第一審裁判所が誤って、強制命令を出したかどうかと
いう点である。
考えられる。
強制命令を出したのは、第一審裁判所の裁量権の乱用にあたると
なぜなら、提出要求のあった書類の開示は、第一に、聖職者秘密特権
によって禁じられている。 第二に合衆国憲法の第一修正事項によって禁じられている。
第三に、合衆国憲法並びにカルフォルニア州法に定める自由執行条項によって禁じら
れている。※14
※14 カルフォルニア州控訴院、第一審地区、申請者:ものみの塔聖書冊子協会ニュー
ヨーク及びカルフォルニア州レッド・ブラフ、エホバの証人北会衆、
受理者:カルフォリニア州ナパ郡、カルフォルニア上級裁判所ティム・W
24
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
差止命令申請、署名者:ロバート・J・シュナック、付属書類:要点と権限について
のメモ。 書類日付:2006 年 6 月 28 日
<被告ものみの塔側の資料>
事実関係の
事実関係の時系列
このトラックⅠの事案は、共同被告人のティム・W 在住のジェームス・ヘンダーソンによる
性的虐待容疑に基くものである。
これは、10 年以上前の出来事であり、又、同じく
共同被告人のウインバリー在住のアルヴィン・ハードの事件については、24 年以上も
前の出来事である。
2003 年 6 月 24 日、原告は被告教会(ものみの塔)に対して、それぞれ、ジェームス・ヘン
ダーソン及びアルヴィン・ハードが犯した児童に対する性的虐待の事実を知りながら、
それを開示せず、また届け出もしなかった容疑について被告の教会(ものみの塔)を
提訴した。
2005 年 1 月 15 日、原告は被告の教会(ものみの塔)に対して書類提示を求めた。
とりわけ、求められたものは、ヘンダーソン及びハードが別々にエホバの証人会衆の
中で聖職者に対して行なわれた悔い改めという秘密の霊的な会話の記録であった。
2005 年 4 月 5 日、被告の教会(ものみの塔)は、原告が要求しているものの一部は
聖職者秘密特権および弁護士・依頼人特権に基いて秘密が守られるべきものである
という理由から、異議をとなえた。
2005 年 7 月 29 日、原告は、これらの書類は、聖職者秘密特権にも弁護士・依頼人秘密
特権にも該当しないとして、強制提出命令を申請した。
2005 年 8 月 19 日、被告の教会(ものみの塔)は、要求された書類は、特権及び憲法
によって機密が守られるものであると主張して、強制提出命令に異議をとなえた。
強制提出を求められた問題の書類は、悔改告白者ジェームス・ヘンダーソンと任命され
たエホバの証人の長老との間、及び悔改告白者アルヴィン・ハードと任命されたエホバ
の証人の長老との間において行なわれた霊的な会話に関するものである。
2005 年 9 月 29 日、第一審裁判所は原告側の主張を一部受け入れ、被告の教会(も
のみの塔)に、聖職者秘密特権に基いて、開示を拒んでいたすべての書類を提出する
よう命令した。
第一審裁判所は、被告の教会(ものみの塔)が主張していた、弁護士
―依頼人秘密特権を主張していたすべての書類に関する一覧表を作成し提出するよ
25
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
う命令した。
これについて原告側の証拠提出申立の権利を留保した。
2005 年 10 月 24 日、第一審裁判所は、被告の教会(ものみの塔)に対して、控訴院に
対する提訴が受理されるまでの期間、書類の提出を猶予することを認めた。
2005 年 11 月 22 日、第一審裁判所は、上記の書類提出猶予の期限を 2006 年 4 月
28 日までの延長を認める簡易申立を受理した。
2006 年 5 月 1 日、第一審裁判所は、さらに書類提出期限を、2006 年 6 月 30 日まで
延長する申立を受理した。
救済の根拠
この提訴が問題としているのは、第一審裁判所が書類の提出命令を出したことは、誤りで
はないかということである。
第一審裁判所の命令は権利の乱用である。 なぜなら、提出を要求された書類は、第一
に、聖職者秘密特権によって、第二に合衆国憲法の第一修正条項によって、そして第
三に、連邦政府並びにカルフォルニア州法の自由執行権によって開示を禁じられて
いる。
他の救済手段の欠如
第一審裁判所のこれら秘密特権対象文書の提出命令に対する、唯一の救済手段は、
問答方式による見直しだけである。 なぜなら、“一度、秘密特権対象文書が開示され
ると、まさにその開示そのものがもたらす損害を救済する手段はないからである。“
(韓国データ・システム会社 対 上級裁判所判例、1997 年 51 カルフォルニア、控訴院
第4法廷 1513,1516)
嘆願
被告の教会(ものみの塔)は、本法廷に以下の通り嘆願する。
1. 上級裁判所に対して、2005 年 9 月 29 日付けで原告の主張に沿って出された、被告
に対する書類の強制提出命令を取り消すか、もしくは何故、書類提出を強制すべきでは
ないかの根拠を示すよう命令する令状の発行を要請する。
さらに、令状が返却され次
第、上級裁判所に対して、2005 年 9 月 29 日付けの原告の主張を認めた書類提出命令
の取消もしくは凍結を求める強制執行命令もしくは、被告の救済を保証する書類提出命
令の執行猶予命令を出すよう嘆願する。
2. 本嘆願者/被告の教会(ものみの塔)に対し、カルフォルニア法廷手続規則 56・4 の
規定に基き、費用の裁定を要請する。
26
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
3. その他、適切で妥当と思われる救済措置を要請する。※15
※15 同書
被告が要請したこの取消命令は、2006 年 7 月 6 日に、拒否され、2006 年 10 月 16 日に
至って、下級裁判所が再度、本訴訟を取り扱うこととなった。
<裁判所の資料>
訴訟番号:26-22191
共同訴訟手続評議会(JCCP)番号:4374
事実認定の書類提出命令について
2006 年 10 月 13 日、本法廷は原告側が被告側に要求した書類提出に関する申立
について聴取を行なった。
本法廷は書類提出要求を読み、又、支持する意見、反対する意見をそれぞれ検討し、
又、口頭弁論を行なった結果、以下の通り決定した。
原告側によって
原告側によって提出
によって提出された
提出されたウッドランド
されたウッドランド長老
ウッドランド長老に
長老に関する宣誓
する宣誓証言
宣誓証言/
証言/保全命令の
保全命令の要請
(申立#
申立#1)
被告ものみの塔は原告に対して、4人の長老達の宣誓証言に当っては、聖職者秘密
特権を発動すること、そして“審理委員会及びその調査内容についての質問には、
どんなものであれ“反対すると通告した。
原告は、彼ら(4人の長老)が法廷の前に
証言すること、そして質問に答えることを求める裁判所命令を要求した。
本法廷は、以前、トラックⅠの訴訟について、性的虐待容疑者と審理委員会との間
に行なわれた会話については、聖職者秘密特権は適用されないとの決定を下した。
(2005 年 9 月 29 日の裁判所決定を参照)
この決定は、トラックⅠ以外については、強制力はないが、被告は、裁判所に別の判断を
下すほどの信憑性のある証拠を提示することが出来なかった。
よって、以前の決定に示されたように、本法廷は、ものみの塔が聖職者秘密特権を主張
することはできないと決定するものである。
書類提出命令の内容に従って、被告は、
書類をその日付を考慮することなく、作成し提出しなければならない。
原告が指摘したように、性的虐待の犯行の日以降の書類が、関連の情報を含むものであ
ると思われる。
これらの理由により、原告の申立#1 は認められた。
27
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
原告側の
原告側の PMK の宣誓証言執行と
宣誓証言執行と書類提示を
書類提示を求める一般
める一般申立
一般申立#
申立#2
原告側は、いくつか特定の問題について被告ものみの塔の最も知識のある長老(PMK)
の証言を要求した。
被告はやはり聖職者秘密特権を理由に6つの分野についての質
問に答えることに異議をとなえた。
上記の理由により、又以前の本法廷の決定により、
本法廷は、これらの質問に答えることは、聖職者秘密特権に該当しないと判断する。
被告側は、更に児童性的虐待事件より後の書類は関連性がなく、更なる証拠書類の
発見につながらないと主張し、提出書類の範囲について異議を申し立てた。
上記のごとく、本法廷は、これら書類は発見できると判断し、原告の申立てた申立#2
を認めるものとする。
原告側の
原告側の PMK の宣誓証言の
宣誓証言の執行と
執行と書類提示を
書類提示を求める申立
める申立#
申立#3
原告は、エホバの証人の組織が持っている”1970 年から現在までの児童性的虐待の証
拠および容疑者の取扱いについてすべて“について、最もよく知っている者(PMK)の証
言を要求した。
最もよく知っている者(PMK)ブロー氏は、証言の中で、これらの事に
ついては、彼が働いていたサービス部よりも、むしろ法務部が取り扱っていると証言した。
よって、彼は、答えるのに充分な情報を持ち合わせていないと言った。
従って、原告は以下の調査を要求した。 (1)法務部の組織、スタッフ、業務内容は何か。
(2)エホバの証人の組織内における児童性的虐待容疑の調査、回答に関わる法務部の
役割は何か。 (3)“児童虐待電話メモ”なる書式が、児童性的虐待の情報を得て、記録
するために作成されたと言われるが、その書式が作られたいきさつとその使い方は何か。
(4)児童性的虐待容疑に関して法務部の指導下にある記録は何か。 (5)電話メモに含
まれている“質問事項”に対する回答はどんなものがあるか。
被告は、それらの質問は弁護士-依頼人秘密保持または作成者特権の秘密保持義務に
よって守られていて、答えられないとの回答であった。
これに対し、原告は(1)、(2)の
質問について、守秘義務特権を侵害するような内容開示を要求しているのではなくて、
あくまで組織の方針とその実施がどうなっているかに関心があるに過ぎないと反論した。
(3)と(5)の質問は、(電話メモの)様式が存在することを知っており、これは、原告の訴え
の核心部分に触れる部分であり、原告は白紙のメモに関する情報が必要であると主張し
た。
最後に(4)については、原告は守秘義務特権を侵害するつもりはなく、法務部に
よって記録され、保管されている情報に関わる一般的な情報を求めているに過ぎないと
主張した。
28
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
本法廷は、(1)、(2)及び(4)については、弁護士-依頼人秘密保持特権あるいは作成
者秘密保持特権をなんら侵害することなく、法務部の組織、機能、方針に関わる一般的
な情報を求めるものであるという原告側の主張を認める。
は、保護さるべき情報を求めているものである。
一方、(3)及び(5)について
教会(ものみの塔)の弁護士の宣誓に
述べられている通り、電話メモは、弁護士およびその助手が、会衆の長老たちからの報
告に基いて、法務部の依頼人である長老に対する法的な助言を与えるために記入され
るものと考えられる。
同様に“質問事項”の記入内容から集められた情報も、弁護士の
作成物と考えられ開示はできないものと考えられる。
以上の理由から、裁判所は、(1)、(2)及び(4)について原告側の主張を認め、一方(3)及び(5)
については却下した。
2006 年 10 月 16 日付けレイモンド・A・ガダーニの判決
以下は、読者が原告の見解をご理解頂くためにここに提示したものである。 これは裁判所が引
続き事実関係を明らかにするようにと命令を下した後、2006 年末までに起きた事実を要約したも
のである。
この時点において、原告側の弁護士は、7件目の訴訟、サン・ディエーゴの件である
が、これをナパ郡の法廷に共同訴訟案件として提訴した。
<原告側弁護人の資料>
トラクトⅠの訴訟は、公判が始められる状況になった。
月 3 日の開始と決定された。
第一回目の公判は 2007 年 4
この公判のためにさらに多くの事実関係の解明が必要
であったが、相当の事実が明らかにされた。
ノントラクトⅠの訴訟については、事実認定の初期段階にあった。 その内、一つの訴訟
について原告の証言が行われた。
他の3件の訴訟については、証言は予定されてい
なかった。 これらの訴訟について一人の証人の証言が行われた。 原告、被告側の両
者間で、最初の事実認定の証拠の交換が行なわれた。
ノントラクトⅠの訴訟については、まだ長老(各会衆を監督する立場の個人)の証言はま
だ行なわれていなかった。
ノントラクトⅠの訴訟についても、事実認定が行なわれてお
り、一つの行動がきっかけで、急速に事実認定が進むことが予想された。
得られた情報、調査及び確信するところによると、事実認定と法律の定めによる行動は
以下の通り:
多くの加害者はすべてエホバの証人で、それぞれ会衆の指導的な立場にあり、会衆の
メンバーに対して責任を持っていた。 そして各自は、それぞれ状況は異なるが、極悪非
29
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
道の行いをなした。 すべての場合において決定的であるのは、これら加害者達の児童
性的虐待の事実が、その王国会館の他の指導者達の知るところとなり、そしてその情報
が更に組織の内部に広まったことである。
すべてのケースに共通しているのが、いずれの場合も教会(ものみの塔)の責任者の決
定によって、犯罪が警察当局に隠されていたことである。
また、すべてのケースに共通
しているのが、組織内部においてこの犯罪者と相談して、その犯罪行為を内部的に処理
するよう組織的な決定がなされていたことである。
またすべてのケースに共通しているのが、会衆内の指導者の一人が会衆の仲間の子供
達に対して憎むべき行為を行なった性犯罪者であることを、会衆の他のメンバーに言わ
ないようにとの決定が付随してなされていることである。
すべてのケースに共通しているのは、会衆指導者の立場にある性犯罪者が、その犯罪
の事実が知られるようになった後においても、会衆メンバーの子供達に対して性的虐待を
続けたということである。
すべての訴訟に共通して、法令違反―法令違反による指導者の任命、地位保全、監督義
務違反; 重大なる過失―故意による不法行為; 受託義務違反からなる違法行為を主張
している。
また、幾つかの事案では、詐欺―故意による虚偽陳述; 詐欺―隠蔽;
陰謀; 故意による精神的苦痛の加害等を主張している。
これらの問題がすべての件において顕著な特徴である。
弁論は多くの場合において、
これらの主張によって試練に立たされ、共同訴訟法廷の判事は、様々な有罪理論と訴訟
の理由について判断を下した。
訴訟は複雑である:被害者は性的虐待に起因するトラウマによる精神的・心理的苦痛を訴
えた。 これらの苦痛や傷害は個々によって、複雑かつ個人的なものであったが、他の不
法行為によってもたらされた苦痛や傷害には見られないものであった。 これらが複雑であ
るのは、事件の件数が多いこと、エホバの証人の信仰という環境の中での家族関係
そして組織のメンバーに対する管理・影響力などが関係している。
このカルトは、教会(ものみの塔)の指導に服することを要求し、もし従わない場合、組織か
ら追放されるという恐怖感を植えつけている。
この事実が、これらの訴訟を何年も長引
かせることになり、またこの長期化によって、多くの罪のない子供達がさらに傷つくことにな
ってしまっている。
なぜなら、この訴訟は、宗教団体が関係していて、通常の不法行為
には見られない憲法解釈上の固有の問題を含んでいる。
一法廷において一人の判事によって、これら共通の問題の審理を行なうことは、
(1)訴訟材料を有効に活用すること (2)重複事項の回避、一貫しない決定、命令及び判
決を回避すること (3)解決可能性が高くなること:多くの裁判官や職員、多くの電話交信、
長くて複雑な陳述、時間のかかる法律、証言聴取による時間的浪費が回避できること等の
30
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
効果がある。
同じような訴訟に慣れた裁判官は、当然、手早く手続きを進めることができ
るし、個々の案件に費やす時間の無駄を省くことができる。
当然の事ながら、複数の公判が行なわれると、特に個々の審理において同じ法律による
申し立てが成される場合、多くの時間と費用が費やすことになる。
そして、本件に固有
の憲法上の問題や事実認定に対して予想される異議などを考えると、複数の裁判官の場
合は、違った違憲が出されることは避けられない。
最も重要なのは、これらの訴訟は、
略式判決を申請する対象となるということから、同一の陳述、同一の事情聴取は裁判に最
も貢献するものである。
裁判官が、事前申し立てに対して、異なる決定を下したり、一つの審理において証拠に対
する異議が出される可能性はなくなる。
争点効(同様の訴訟において前訴の争点が、
後訴の争点として優先すること)が適用されるか否かも、議論となるテーマであった。
別々の裁判によって、複数の判決が出され、これに対して上告がなされると、多大な裁判
手続き、費用、人員が費やされるが、一つにまとめられた裁判がなされるなら、これらのも
のは回避できることになる。
共同訴訟の公判を行なうには、ナパ郡が最適である。
この郡は、原告の弁護士事務所
及び被告の弁護士事務所とも、非常に近い場所にあるからである。
原告と被告のエ
ホバの証人会衆が、すぐに行動できるという点からは、南カリフォルニアであるが、ニューヨ
ークとペンシルバニアの被告(ものみの塔)の多くの同じ証言録調書は、南カルフォルニア
にはなかった。 従って、新たな訴訟を、すでに提訴された共同訴訟に組み入れるには、
両方の当事者とその弁護人の便宜をはかるにはよかった。
被告の弁護人は、この共同
訴訟の連絡を受けたとき、原告側の弁護人に対して、この申立てに反対する旨、連絡して
きた。
※16
※16 訴訟 A をすでに共同審理となっている訴訟案件に追加するか否か、共同審理を
判事に求める申し立てを支持するルディー・ノーレンの宣誓書 P1~P4(2006 年
10 月 30 日受理)
2006 年末に判事が、サン・ディエゴの訴訟をカルフォルニア州ナパ郡の共同審理案件に含めるこ
とを許可したときには、7件の訴訟、14 人の原告、6 人の加害者、7つのエホバの証人の会衆が当
事者となった。
31
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
4. 裁判記録:
裁判記録:他の5件の訴訟
グラフマイヤー 対 ものみの塔
ものみの塔
ジャレド・グラフマイヤーの訴訟は、2006 年 6 月 6 日にオレゴン州において受理され、2007 年 2 月
に被告のものみの塔との間で法廷外の和解で解決された。
グラフマイヤーの証言録には、カルフォルニアのジョセリン・A 対 ものみの塔聖書冊子協会ニュ
ーヨーク・INC の訴訟に関して、ジェームス・ウオルター・ウイットニーが行なった事実認定証言のよ
うに、多くの特徴的な証拠が含まれている。
原告の弁護士は、グラフマイヤーの裁判審理において、ジョセリン・A の証言を証拠として採用した。
この理由は、エホバの証人の審理委員会での長老による事情聴取はまったく霊的な性格をもつも
のではないことを証言しているジョセリン個人の証言を証拠とするためであった。
証言録の一部はこの中に提供されているが、これを読むと本当に魅了される。
ウイットニーの
ウイットニーが、
北カルフォルニアに住んでいた時に、性的虐待の被害にあったエホバの証人の子供達の人数は、
数え切れない。
間違いなく、原告の申立に添付されているこの証拠は、およそ 5,000 ページにわたるこの裁判記録
のすべての書類の中で最も重要なものである。
これは、被告側であるカルフォルニア州、レッド・
ブラフのものみの塔の代理人(つまり長老及び地区監督)と同じく被告であるものみの塔本部ニュ
ーヨークとの間で取り交わされた秘密文書である。
アミー・
アミー・B 対 ものみの塔
ものみの塔
アミー・B の訴訟は 2003 年 6 月 3 日にテキサスにて受理され、2007 年 2 月に、ものみの塔と法廷
外の和解で解決された。
加害者ラリー・ケリーは、エホバの証人の長老であった。
原告の弁護士によれば、ケリーは、
1985 年にテキサス州、デュマのエホバの会衆において、審理にかけられ懲戒処分を受けた。
しかし、被告ものみの塔は、“すべてこのような事は、ものみの塔の組織内部で取り扱うという方針”
によって、警察当局に対してこの犯罪の事実を隠していた。
アミー・B の裁判記録に中に、被告側の弁護士は、略式裁判を要求している記録があった。
以下に添付した資料は、“略式裁判の証拠書類”で、被告ラリー・ケリーを含めて3人の宣誓供述書
が含まれている。
これらは、アミー・B の証言録から抜粋されたもので、彼女(アミー)は、2人の
長老が彼女と両親を、王国会館の裏部屋に連れていき、そこで“この件(性的虐待)については、
噂をたてない方がよい。 すべては終わったのだ。 我々(長老)は、ここでの働きを続けなければ
ならないのだ。”と言われたと説明している。
また記録の中には、アミーの医療機関での受診記
録も含まれていて、それには、彼女が8歳から13歳までの間に性的虐待を受けたことによる影響に
ついて詳しく書かれている。
32
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ラリー・ケリーの証言録によれば、彼はアマリオ地区の TV パーソナリティーであった。
彼の TV 番組は幼児向けのものであった。
一時、彼は南西会衆の奉仕の僕であり、又デュマ
会衆では長老であった。
2004 年 3 月 29 日、テキサス州、ポッター郡のパートル判事は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨ
ーク・INC 及び、ものみの塔聖書冊子協会ペンシルバニアに対してのみ、略式判決の申立を認め
た。
しかしパートル判事は、被告が“聖職者秘密特権”によって書類の提出要求に対して異議を
申立ている点については却下した。
判事は多くの点について、原告側を支持し、被告のエホバ
の証人のデュマ会衆及びアマリオ南西会衆に対して、原告が申立てた書類提出を行なうよう命令
した。
2004 年 11 月 24 日、原告の弁護士は、補足資料を提出して、すべての長老及びエホバの証人の
役職者は、統治体の代理人の立場にいること、よってものみの塔聖書冊子協会ニューヨークともの
みの塔聖書冊子協会ペンシルバニアが申立てた略式裁判は否定されるべきであると裁判所に要
求した。
これについて、ものみの塔財務部長代理のアレックス・レインミューラーの証言、およびものみの塔
ペンシルバニア・INC の会長ドン・アダムスが 1986 年付けの宣誓供述書を含む証拠の一部がここ
には、含まれている。
被告ものみの塔ニューヨークとものみの塔ペンシルバニアは、アミー・B の訴訟について、もはや公
式には当事者ではなくなっていたが、統治体は原告との間で、法廷外の和解で解決することを決
定したのである。 ものみの塔ペンシルバニアは、リスク・マネジメント業務を行なっており、会衆を
守るために、調査し、必要によってはクレームに対して任意に金を支払うこともその業務の内であっ
た。
テキサス州のこの2つの会衆については、原告側の提示した証拠が強いものであり、もの
みの塔は、アミー・B の訴訟についても、2007 年 2 月の法廷外の和解に含めるのが一番と明確に
示したのである。
リチャード・
リチャード・チャーチフィールド、
チャーチフィールド、レズリー・
レズリー・チャーチフィールド
チャーチフィールドの
フィールドの夫婦と
夫婦と彼らの未成年
らの未成年の
未成年の子供ティナ
子供ティナ・
ティナ・
L・チャーチフィールドの
チャーチフィールドの後見人としての
後見人としてのレズリー
としてのレズリー・
レズリー・チャーチフィールド
対
ダニエル・
ダニエル・スティーブン・
スティーブン・フィッツウオーター、
フィッツウオーター、リン・
リン・フィッツウオータ
フィッツウオーター;
在エリントン、
エリントン、不明の
不明の団体、
団体、エホバの
エホバの証人の
証人の王国会館;
王国会館;
在ニューヨークの
ニューヨークの法人・
法人・ものみの塔聖書冊子協会
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク
塔聖書冊子協会ニューヨーク・
ニューヨーク・INC.
「X を通した私
した私」(意味不明)
意味不明)
この訴訟は 1997 年 12 月 5 日にネバダ州にて受理され、2000 年 1 月 26 日に秘密裏に法廷外の
和解にて解決された。
33
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ここには含まれていないが、多くの証言録が取られた。
原告の申立によると、被告ものみの塔は、
同じく被告のフィッツウオーターが未成年の子供達に対して行なった悪事(性的虐待)を隠して、も
み消していた。
原告は、この虐待が受けた傷害の直接の原因であると告発している。
モーレイ
対
エホバの
エホバの証人北アルバニ
証人北アルバニ・
アルバニ・オレゴン会衆
オレゴン会衆・
会衆・INC;
INC;
エホバの
エホバの証人北ボテル
証人北ボテル会衆
ボテル会衆;
会衆;
ものみの塔聖書冊子協会
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク
塔聖書冊子協会ニューヨーク・
ニューヨーク・INC 他同一グループ
他同一グループ
この訴訟は 2003 年 2 月 20 日にオレゴン州にて受理され、2006 年 5 月に、秘密裏に法廷外の和
解による解決がなされて、2006 年 7 月 19 日に訴訟が取り下げられた。
原告の申立によれば、被告ものみの塔は、その奉仕の僕であった、故ドン・セルジャンが子供達に
性的虐待を行なっていた事実を30年間の長きにわたり、知っていた。
年 8 月に審理が予定されたが、2006 年 10 月に延期された。
この訴訟は、当初、2006
2006 年 11 月 4 日、ジョン・A・マコ
ーミック判事は、原告と被告の様々な申立を受け入れて、結果として複雑な意見を言い渡した。
モーレイの件は、ネバダ州のチャーチフィールドのエドワード・L・バーク 対 フィッツ・ウオーター
の訴訟の証言録の一部に含まれている。
またリーナ・モーレイ・ストーンの証言録にも書かれている。
彼女によれば、加害者は奉仕
奉仕の
奉仕の僕
であったので、彼の言う事は何でも聞いたと説明している。
彼女の証言録は、恐ろしさに震えて
いる様子が伝わってくる。
特に彼女が14歳の時、自宅から逃げ出したのは、加害者セルジャン
の手の届かないどこか他の家がかくまってくれたら、安全だと思ったからと説明している箇所を読む
と何とも心が痛む。
カリーナ・
カリーナ・S.と
S.とアマンダ・
アマンダ・M.及
M.及びその友達
びその友達ディー
友達ディー・
ディー・ディー・
ディー・ハーベイ
対
ものみの塔聖書冊子協会
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク
塔聖書冊子協会ニューヨーク・
ニューヨーク・INC.;
エホバの
エホバの証人証人-東会衆;
東会衆;
エホバの
エホバの証人証人-ホワイトハウス会衆
ホワイトハウス会衆・
会衆・ものみの塔聖書冊子協会
ものみの塔聖書冊子協会ペンシルバニア
塔聖書冊子協会ペンシルバニア・
ペンシルバニア・INC.;
INC.;
エホバの
エホバの証人クリスチャン
証人クリスチャン会衆
クリスチャン会衆;
会衆;
ジェームス・
ジェームス・ハーベイ
この訴訟は、2003 年 4 月 25 日、テキサス州にて受理され、2004 年 7 月 21 日に共同訴訟として再
受理されたことに伴い、その権利義務を損なうことなく取り下げられた。
再度提訴することになったということである。
つまり、原告は、将来、
カリーナ・S.の裁判記録は、ここでは単に情報目的
のために残されていた。
34
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
加害者ジェームス・ハーベイの義理の息子カーティス・ホールの証言録は多くのことを明らかにして
いる。
カーティスは、彼の義父ジェームス・ハーベイが原告を性的に虐待していたことを知って
いたのである。
ジェームス・ハーベイは 2002 年にカリーナ・S.に対する性的虐待の容疑につい
て有罪とされ、無期懲役の判決を受けた。
ジェームス・ハーベイの性犯罪の証拠によれば、20
年以上の間に、実に多くの子供が被害にあったことを明らかにしている。
5.エホバの
エホバの証人は
証人は何を間違えたのか
間違えたのか?
えたのか?
私は人生の大半をエホバの証人として過ごしたが、この宗教組織のどこに、児童性的虐待者をか
くまう方針があるのか、分からない。
基本的に家父長的な組織におかれた女性としては、組織内
部の手続きについてはよく分からないというのはよく理解できる。
しかしながら、この宗教組織の
命令系統の中にいる男性の殆どは、1972 年に密かに取り入れられた組織の方針が、不道徳なエ
ホバの証人の長老や奉仕の僕たちに悪用されるとは気付かなかった。
又、これら不品行な長
老や奉仕の僕たちは、この組織がどのように運用されているかを熟知しており、また彼等の堕落し
た目的のために権威ある立場を利用し、その立場に留まる方法を熟知していた。
これらは実に
驚くべき事実である。
3年ルール
誰も、エホバの証人の会衆の責任ある地位の者が、児童性的虐待の犯罪を犯した後も、その地位
に居続けることは、あり得ない又は、可能性が極めて低いと考えるであろう。
しかしながら、エホ
バの証人の指導者達が定めたガイドラインによってこのショッキングな事態を可能にしたのである。
1972 年春、ものみの塔協会は、書籍「王国を宣べ伝え,弟子を作るための組織」を発行したが、そ
の P170 に、以下の通り述べられている。
<ものみの塔の資料>
もし長老又は奉仕の僕の地位にある者が、たとえ何年も前(some
some years ago)であっても、
ago
重大な悪行を犯したのであれば、非難されるべきである。 なぜなら、彼は自分が罪を犯し
たことにより、資格を失ったと自覚しながら、責任ある地位に留まっていたからである。
彼は非難を免れることはできません。(Ⅰテモテ 3:2,10 ;テトス 1:6,7) 彼は、審理委員会に
対して、規律に従わなかったことを知らせるべきであったし、またその地位から辞任すべき
であった。 しかるべき時に、これを行なわなかったことから、彼は今や、その地位を剥奪さ
れることになる。
これから約6ヶ月後に、エホバの証人たちは、1972 年 10 月号の王国宣教(※17)の記事にある質
問箱(P8)を読むことになった。
※17 王国宣教とは、ものみの塔協会が月刊誌として発行しており、世界中のエホバの証人が
35
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
週一回、王国会館で研究のために教科書として使われるものである。
エホバの証人が
宣教活動に参加する時の最新の方法について学ぶテーマについて書かれている。
又、エホバの証人が従うべき組織の最新の手続きや、宣教活動でのルールについて書か
れている。
<ものみの塔の資料:王国宣教>
この組織の書籍(王国を宣べ伝え、弟子を作るための組織)の P170 の2行目に書かれて
いる“何年も前”というのは、どういう意味か?
これは、1年もしくは2年以上を意味している。 “many years ago”(何年も前に)とは書か
れていないことに注意してください。 だから、具体的な年数のことではなくて、2,3年を
意味するものでしょう。
これは、兄弟がすでに悔改めていて、エホバによって、すでに
許されている、はるかな過去を暴きだして、現在に当てはめる事を意図していません。
多くの場合、雑誌“ものみの塔”が、それら悪行について書かれている聖書箇所について
注意を喚起した時より前に行なわれた悪行の事を言っています。
もし兄弟が何年もの間、忠実に奉仕してきて、エホバの祝福があることが明らかな場合に
どうして、彼は今の地位から引き下ろされる必要があるでしょうか? もし彼が行いについ
て、正しい見方を持ち、奉仕を続けるための良き助言を与えることができるなら。
また、地元会衆の長老団が、彼が会衆の尊敬を集めていて、過去2、3年間の間、資格が
あると認めた場合、彼はその地位に留まることができる。
悪行は、何年も後になってからも、公にされるべきでしょうか?
この書籍の P168 には、“公の非難”の項目にⅠテモテ 5:20 を引用して、一つ以上の違反を
犯したことを告白したもの達への非難に対する非難について書かれています。
しかし、
これは、最近、犯した罪についてです。 “行間”を読めば、これらの“罪”とは過去のもので
はなく、そのときのものです。 だから、悔改めが3年以上も前に行なわれ、罪は止んでい
るのいて、今や会衆に尊敬されているのであれば、何年も前(some years ago)に、一つの
罪を犯した者を公に非難する必要はありません。
この組織の書籍の説明によれば、何年か前(some years ago)とは、雑誌“王国宣教”に書かれてい
るように、“ここ2年または3年”を意味している。
ものみの塔本部内部のある事情通が私に話して
くれたところによると、“王国宣教での説明は、組織における慣行を単純明快に具体的に例示する
もので、長老であろうが他の者であろうが、可能な限り個人の判断の余地をなくそうとするものであ
る”。
36
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
しかしながら、ここには、“何年も前(some years ago)”が具体的に何年を意味するかという問題より
もっと重要な問題がある。 それは、数ヶ月の間をおいて発行された、この二つのものみの塔の刊
行物において、立場の変更が見られることである。
書籍「王国を宣べ伝え、弟子を作るための組織」においては、何年も前に重大な罪を犯しながら、
それを隠していた者は、会衆の責任ある地位から降ろす必要を指摘している。
しかし、王国宣教においては、そのような状況にある者であっても、一定の基準を満たせば地位に
留まることを許している。
1972 年において、この方針の変更が公にされた理由はなんであろうか、正当なものであるか疑わし
いのである。 そしてこの方針の大転換によって、重大な結末がもたらされたのである。
もし、もともとの指示がそのままであったなら、多くの子供達の心の痛みは防ぐ事ができたであろう
にと思う。 このもともとの方針から逸脱した理由が何であれ、変更された方針は、悲惨な結果をも
たらした。
エホバの証人の主な指導者や役員達は、“王国宣教”に書かれていることは、何年も前(many
years ago)に犯した重大な罪を弁解するためのものではなく、長老達の思慮の欠如によってなされ
た小さな罪、例えば、喫煙とか、時に酔っ払ったとか、正気を失ってしまったとかの状態を言ってい
ると主張している。
しかしその説明では、問題は説明できていない。 なぜなら、書籍“王国を宣
べ伝え・・・・」の書籍においては、小さな無分別な行為ではなく、重大な罪を犯した者に焦点を当
てているからである。
1991 年 11 月に、全米の長老と奉仕の僕を対象とした2日間の王国宣教学校が、指定された場所
で、開かれた。 王国宣教学校が開かれた場所のうち、一部において巡回監督が一つの講習を割
り当てられて、1972 年の王国宣教に述べられた方針を繰り返した。
彼らは、重大な罪を犯した
事実が判明した、あるいは告白した人達が、エホバの証人会衆の中で責任ある地位にあった場合、
もしその重大な罪が2,3年前のものであって、その後、彼らが会衆の尊敬を集めて、またその間に
神の祝福を受けている状況にあるなら、その責任ある地位から退く必要はないと述べたのである。
加えて、その者が責任ある地位から退くか否かの判断は、審理委員会を開かないで決定すること
ができるとしたのである。
数人の長老達は、長老のハンドブック※18 の余白に“姦淫の場合は除く”(婚姻関係以外の性的
関係)と書くように指示されたと主張しているが、ほとんどそれを覚えている者はいない。
※18 1991 年発行「あなた方自身とあなたの群れに注意を払いなさい」ものみの塔聖書冊子協会
オレゴン州の王国宣教学校に参加したある長老は、巡回監督が、姦淫のような重大な罪を犯した
場合であっても、その長老が過去3年間の間に霊的進歩を成し遂げた場合は、長老の職を追われ
ることはないと言ったと語っている。
この問題については、明らかに混乱がある。
37
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
もし、1991 年の王国宣教学校においてポルネイア(姦淫)とは何かを明確にして指示が与えられて
いたのであれば、問題は解決されていたであろう。 ―もし、姦淫のような重大な罪を犯した場合は、
その者は、職を解かれなければならないと。-しかし、殆どの長老はそのようには理解していない。
1995 年に話を進めよう。
巡回監督が、担当地域の各会衆を訪問し、長老達と話合いを持った時
に、1972 年の王国宣教の3年ルールについて 1991 年に開催された王国宣教学校で述べられた内
容をまとめた雑誌「ものみの塔」の記事が読まれた。
そこでは、責任ある長老達は、次のように言われている。
もし姦淫のような重大な罪が関与して
いる場合は、長老達は、審理委員会を開催する判断を下す前に、全体像を見なければならない。
つまり、ある長老が何年か前に姦淫の罪を犯したことを告白し、それ以降、霊的な進歩を遂げたな
らば、審理委員会を開催することは、当然のこととして必要なことではなくて、すべての“全体の状
況”を見たうえで、審理委員会の開催が必要か否かを指導しなければならないということである。
よって、その者が、何年か前に姦淫の罪を犯した場合、責任ある職を解くことは自動的に行なわれ
るのではなくて、罪を犯した当時から現在までの全体の状況によるのであるということである。
2001 年にケンタッキー州の長老職を辞任したビル・ボーエン氏は、ものみの塔協会が内部で起き
た児童性的虐待事件をもみ消そうとしていると公に非難している。(www.silentlambs.org)
彼は、属していた会衆の状況について、児童性的虐待の加害者が、会衆内の責任ある地位に留
まることを許容する上で、3年ルールが如何に重要な役割を果たしたかを述べている。
ボーエン氏は、会衆の記録を調べていくうちに、ある統括の立場にある長老が何年か前に、若い
少女を性的に虐待していたことを告発され、本人もその罪を認めたが、その長老職を解除されてい
ないことを見つけた。
2000 年に、ボーエン氏は性的虐待の事実を承知している長老達と対峙し
た時、何故、加害者は長老職を解かれていないのかと質問したが、彼ら長老達は 1972 年の王国
宣教の指示を指し示しながら、事件は何年も前のことであり、その加害者はその後、目立たない生
活を送っているように思われること、そして神の祝福を受けているように思われることがその理由で
あると説明した。
2005 年に、王国宣教学校が長老と奉仕の僕を対象として開催され、この問題に言及がなされた。
今回は、出席者達に説明された内容は、ある者が数年の間に一度、ポルノ映画を見たことがあるが、
その後はその罪を繰り返すことをしなかった場合は、その職に留まることができる。 もしその罪が
姦淫の罪であったことが隠されていた場合は、問題なく審理委員会が開かれると説明された。
なぜ、ものみの塔は、姦淫の罪の場合は、加害者は会衆内の責任ある地位に留まることができな
いと方針を変更したのか?
最も考えられるのは、2003 年の中頃にカルフォルニア州において、
ものみの塔協会、エホバの証人会衆に対して多くの訴訟が起されたからである。
訴訟の中で、エホバの証人の長老、又は奉仕の僕が児童性的虐待を犯しても、3年ルールの適用
によって、加害者がそのままの地位に留まっているか、もしくは他の会衆に異動した場合にも、その
38
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
職に再任されている事例が多く指摘されていたからである。
カルフォルニア州レッド・ブラフにおいて、1994 年に児童性的虐待の罪を犯した統括長老職にあっ
た者に、もし3年ルールが適用されなかったなら、他の児童性的虐待の被害は起こらなかったかも
知れない。(事実は、再びその統括長老が別の被害者から性的虐待の訴えで告発されたのであ
る。)
地域代表ドナルド
地域代表ドナルド・
ドナルド・アミーの
アミーの手紙
ここに提供された書類(以前は対外秘扱のもの)を見ると、この方針について混乱があったことが
伺える。
1994 年にものみの塔協会地域代表ドナルド・アミー氏からものみの塔本部に宛てら
れた次の手紙に注目してください。
地域代表は、ものみの塔の組織では、本部以外では最も
高い地位の役職である。 アミー氏はカルフォリニア州レッド・ブラフの児童性的虐待事件に関
連して、1972 年の王国宣教に述べられた指示についての懸念を述べている。
この手紙で重要なのは、レッド・ブラフ会衆の審理委員会が、ものみの塔本部サービス部の代表
(たぶん、当時、カルフォルニア州の長老達に助言をする立場にいたメルトン・キャンベル氏だと思
われる)に話した時、審理委員会は、“その点については、書籍”王国を宣べ伝え、弟子を作る組
織“の P97 の 7 行目に整理されているが、・・・・・・「姦淫を例外とする」という説明を加えるべきであ
った。”とサービス部から言われた。
更にアミーは突っ込んで、もし長老が 1972 年の王国宣教に
述べられたような罪を犯した場合でも審理委員会を開かない方針は、罪が子供に対する性的虐待
の場合にも適用されるのかどうかの議論をした。
この手紙は、児童に対して性的虐待の罪を犯
した長老に対しても、1972 年の王国宣教の方針は適用されることを証明している。
更に入手できた他の手紙について検討しよう。 この手紙は、レッド・ブラフ北会衆の長老から、児
童性的虐待の罪を犯したジェームス・ヘンダーソン長老の件について、ものみの塔本部のサービス
部に対して書かれている。 この手紙には、犯罪者ヘンダーソン長老が、審理委員会を逃れ、しか
も長老の地位に留まる目的のために3年ルールが適用されたことについての説明がなされている。
これらの資料がなければ、エホバの証人の会衆内部で子供達に対して恐ろしい性的虐待の罪を
犯した会衆の指導者達が、その罪が明らかになった後でも、絶望的な状況におかれた被害者の子
供達に対して、なお性的虐待を続けるため、この3年ルールを悪用している事実を証明することが
できなかったであろう。
被害者の子供達、両親達は、エホバによって指名された統治体が任命
した長老達を恐れて、被害の事実について沈黙を守るように強いられていたのである。
関心のある方は、次の手紙の右側にあるスタンプの日付に年の表示がないことにお気づきであろう。
これは“SSC 2003 年 8 月 12 日と読むのである。
39
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<ドナルド・
ドナルド・D・アミー氏
アミー氏の手紙>
手紙>
この手紙の原本をご覧になりたい方は、バーバラ・アンダーソンのサイト“Watchtower Documents
LLC”の中に収録されている“Secret of Pedophilia in an American Religion-Jehovah’s Witnesses in
crisis”の P34,35 にスキャンされたものがあります。
(丸秘)
丸秘)
SSC 8月 12 日
(レター・ヘッド)
エホバの
エホバの証人
地域 NO34
ドナルド・D・アミー
ウッドバーン オレゴン州 97071
1994 年 12 月 26 日
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC
25 コロンビア・ハイツ
ブルックリン ニューヨーク 11201
親愛なる兄弟へ
ポール・ピエール兄弟と私は、1994 年 11 月 29 日~12 月 2 日の週に、カルフォルニア州レッド・ブ
ラフのエホバの証人北会衆にて奉仕していました。
その週において、長老達が審理委員会を招
集し、ジェームス・ヘンダーソン兄弟を公に非難していることを知りました。
この会衆で統括長老として奉仕してきた人です。
ヘンダーソン兄弟は、
彼は、この会衆の兄弟ではないが、カルフォ
ルニア州、パレルモ会衆のメンバーであった若い人を性的に虐待したことを告白しました。
その若い人はナタン・ドッタという人です。
ナタン・ドッタは、名乗り出てきて、ジェームス・ヘンダ
ーソンにも、名乗り出てきて、過去の罪を告白するように要求した。
始めのうち、ジェームス・ヘンダーソンは、すでに罪を犯さなくなってから3年以上たっていると、地
元の長老団に告げていた。
1972 年 10 月の王国宣教の“質問箱”の見解によれば、このケース
は、審理委員会の対象ではなく、又、ジェームス・ヘンダーソンは、引き続いて統括長老の職に留
まることができるものと思われる。
審理委員会とその会長を務めるボディー・リヨン氏は、ものみの
塔本部の法務部と相談し、またサービス部の兄弟とも話をした。
議論の中で、3年目に悔改めが
なされたかどうかがポイントとして指摘された。
これに対して、ヘンダーソンが妻に対して告白し
たことが、悔改めの証拠であると指摘された。
また、その後、彼にエホバの祝福があった証拠に
ついても問われた。
また、1991 年に開催された王国宣教学校で行なわれた、書籍「王国を宣べ
伝え、弟子を作る組織」の P97 の 7 行目に問題は整理されていることも指摘された。
は、その書籍に“姦淫の場合を除く”と追記すべきであったと指摘した。
40
審理委員会
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
我々は、更に提示された証拠によって、ジェームス・ヘンダーソンが、この8月の時点で見れば、彼
の犯した性的虐待の罪は小さなものであるとわかり、安堵した。
しかし、これによって、長老団と
我々巡回監督が、答えを知りたいと思ったのは、以下の点である。
“王国宣教 10 月号の「質問箱」に示された声明が、この問題に対する確定した解答なのか?”
このヘンダーソンのような小さな性的虐待の罪であっても、社会的なスキャンダルに発展しうるので
はないか。
このような変化が起きた場合には、審理委員会が取り上げる問題になるのかどうか?
しかも、1970 年代初めに、ジェームス・ヘンダーソンは、カルフォルニア州、メアリビルの会衆にお
いて、奉仕の僕か長老の職を解かれているではないか。
じ罪を犯したと認めている。
そして、また今になって、彼は再び、同
我々は、彼が最後に罪を犯したのが3年前のことであるとか、審理
委員会にて取り上げることはなく、彼はその長老の地位に留まることができるだとか、単純に言い切
れるのか?
王国宣教は、事件がスキャンダルに発展した場合はどうするのか、又、現場の地元
の会衆において起こりうる質問には何も述べていない。
私は、1991 年の王国宣教学校に出席した兄弟達の殆どが、書籍「王国を宣べ伝え弟子を作る組
織」の P97 の 7 行目に“姦淫の場合は除く”と注意書きを挿入すべき点をまったく理解していないこ
とに気付いた。
私がここで述べたことについて、より適格に取り扱うことができるように、これらの
情報の改定をして頂くことはできるでしょうか?
その王国宣教の質問箱の第2段落の最後の文
章には、次のように述べられている。
“多くの場合、これらの悪行は、雑誌「ものみの塔」において、「聖書によれば、このような悪行につ
いてこのように言っている」と注意を喚起する前に起きているのが実態である。 我々は、明らかに
今日の多くの事について、単純に「聖書によれば・・・・」と言い切ることはできない。
ですから、情
報の改定が必要であると思われますが、どのようにお考えですか?”
我々は、水曜日の野外奉仕の後の夕刻、ジェームス・ヘンダーソンを告発した審理委員会のメンバ
ーと会った。
この時までにさらに多くの情報が提示されていて、長老団と本件について話し、再
度、審理委員会を編成するのが賢明であると思われた。
我々は、続く木曜日の夕刻に長老団と
会い、この問題を取り扱った審理委員会を再開することとしメンバーを指名した。
この審理委員
会は、ポール・ピエール兄弟と私を、アドバイザーに招いて、その夜遅くに、ジェームス・ヘンダーソ
ンと会った。
この委員会において、ジェームス・ヘンダーソンは会衆の子供ティム・ワードを相手
に自慰行為を行なったことを告白した。
性器をもてあそんだことを認めた。
突っ込んだ質問の結果、彼は何年か前に、彼の息子の
また彼は、前の審理委員会において、他に性的な悪戯を行
なったことがあるかとの質問に対して嘘をついていたことを認めた。
私とピエール兄弟は王国会
館を中座して出発したのであるが、その後、審理委員会はジェームス・ヘンダーソンを排斥したこと
を知った。
41
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
地区担当の弁護士は、審理委員会の会長リヨン兄弟を質問のために呼んだ。 しかしリヨン兄弟は、
審理委員会で知りえたことは、聖職者秘密特権に当り、何も言えないと言った。 弁護士は同意し
たが、協力するよう求めた。 兄弟達は、警察によく協力し、二人の被害者のナタン・ドッタとティム・
ワードは警察に名乗り出て、ジェームス・ヘンダーソンは自分達が小さい時に、性的な虐待を行な
ったと申し出た。
ジェームス・ヘンダーソンは先週、逮捕されて、2,3の新聞とテレビのニュース
に彼の顔写真と共に逮捕されたいきさつについての記事が載った。 今のところ、犯人がエホバの
証人であることは何も述べられていない。
審理委員会の兄弟達は、これは、警察へ協力したこと
と、事柄が公になる前の段階でジェームス・ヘンダーソンが排斥されたことによるものであると感じて
いる。
我々としては、この件がこのまま静かに推移し、エホバの名前が、この薄汚い状況から守
られることを願っている。
少なくとも、これまで他に4人の子供達が、ジェームス・ヘンダーソンか
ら被害を受けたと訴えてきている。
ジェームス・ヘンダーソンが一体、どこまで告発されるか、全
く分からないが、彼が 70 年代以降にも、薄汚い性癖を止めなかったことは明確である。
彼は、このエホバの証人の組織にいることは、ふさわしくない。
この事件について、何が実際に起こったのか、ものみの塔協会が理解して頂けることを望みます。
エホバがベテルにおられる兄弟達を祝福し、野外において起きる事柄に対する洞察力をあなた方
にお与えになりますように!
あなたの兄弟
ドナルド・A・アミー 地域#34
署名
P.S.(追伸):ポール・ピエール、カルフォルニア#69 &
ボディー・リヨン、審理委員会 会長
北会衆、レッド・ブラフ、カルフォルニア州
42
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
6. 責任を
責任を明らかにした和解
らかにした和解
2003 年 7 月、ジェームス・ヘンダーソンの性的虐待の被害者ティム・W はものみの塔協会に対して
受けた被害について訴訟を起した。 2007 年 2 月に、ティム・W は 16 人の被害者の一人として、も
のみの塔との裁判について、法廷外の和解によって解決した。 支払われた和解金の正確な金額
は秘密になっている。
しかしながら、16人の被害者に対して支払われた和解金は少なく見積も
っても、約 1 千 3 百万ドル(日本円換算:11 億 7 千万円 @90円で換算)と推測されている。
このようなやり方で、ものみの塔は裁判上の決着によって、責任を認めることはしなかったが、性的
虐待の犯罪者を組織の責任ある地位に留まることを許し、又、エホバの証人の会衆の責任ある地
位に再任させることを許し、結果、より多くの子供達が性的虐待の被害を被ることを許してしまった
ことについて、責任を認めたのである。
これらすべての裁判の中でも、カルフォルニア州、テハマ郡のティム・W の事件に関する公開資料
が、ものみの塔が子供を性的虐待の被害から守れなかった事情について多くの情報を提供してい
る。
ティム・W の第2回目の修正訴状において、次の通り断言している。
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC は、ジェームス・ヘンダーソンが少なくとも
1964 年から性犯罪を犯し続けていたことを知っていた。
しかし、この30年間にわた
って、彼を奉仕の僕や長老に任命、もしくは再任していた。
事実、ティム・Wの第2回目の修正訴状によれば、1988 年、ジェームス・ヘンダーソンはレッド・ブラ
フの監督に任命されたが、“レッド・ブラフ南会衆の長老もしくは奉仕の僕は、ジェームス・ヘンダー
ソンが、職場の「サクラメント・ビー新聞」の地区マネージャーであった時、一人の少年に性的ない
たずらを行なったことがあるとの報告を受け取っていたが無視した。”
ティム・W の第2回目の修正訴状:訴訟番号 SCV52594 カルフォルニア州、テハマ郡のコピーの冒
頭部分は重要である。
次の事実に注意して頂きたい。 ティム・W の訴訟は 2007 年 4 月 3 日に
審理され、ウインバリー・ガティエレツの審理は 2007 年 5 月 15 日にそれぞれ行なわれる予定が立
てられた。 それぞれの審理は10日間行なわれる予定であった。
4 月 3 日は約2ヶ月先であり、
その時、ティム・W の弁護人は、第2回目の修正訴状を提出する許可を求めていた。 その訴えは、
ものみの塔に対してダメージの予想される内容であった。
もちろん、原告の訴状は、事柄の一方の事実関係を述べているものである。
その申立内容が入
手された証拠に基いて事実であろうと判断するのは、陪審員である。
私は、陪審員が、ティム・W の弁護人によって準備された第2回目の修正訴状(※下記に表示しま
すので参照してください)に主張された内容と、提出された証拠を見たならば、被告側は大きなダメ
43
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ージを伴う結果になることを知っていたと考えている。
従って、ティム・W の強固な内容を持つ訴状が、他の原告被害者達との共同訴訟として、数日以内
に受理され、次回の公判が 2007 年 1 月 31 日に予定されていたことから、被告ものみの塔側の弁
護人ロバート・J・シュナック氏は、2007 年 1 月 31 日に受理された7件の共同訴訟に対する和解の
通知に署名した。 (もちろん、ものみの塔の統治体の許可を得てからであるが)
原告側の弁護士グレゴリー・S・ラブ氏は 2007 年 1 月 31 日付けにて訴訟取下げ申立に署名し、
2007 年 2 月 13 日に受理された。
和解による解決の日程は 2007 年 2 月 1 日とされ、2007 年 2
月 13 日に、請求棄却条件付きで、つまり、当事者双方は、同じ案件で再度、裁判を起さないという
合意の下に、すべての訴訟が取り下げられた。
第2回修正訴状(案)
ルディー・ノーレン、SBN 59808
ステファン・W・オーウエンズ SBN 84859
ノーレン・&・アソシエイツ(法律事務所)
1501 番地 28 通り
サクラメント、カルフォルニア 95816
電話:(916) 733-0600
ファックス:(916) 733-0601
原告ティム・W
弁護人
カルフォルニア上級裁判所
テハマ郡
訴訟番号:SCV 52594 共同訴訟委員会
共同訴訟番号:26-22191 手続番号:4374
原告
ティム・W
対
被告
ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク INC. ,
カルフォルニア、レッド・ブラフエホバの証人北会衆・INC. ,
ジェームス・ヘンダーソン 以下 1 から 20 まで同様
審判請求内容
44
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
1.業務上過失責任
2.過失による任命、地位留保、監督上の過失
3.受託義務違反
第2回修正訴状(案)
ティム・W は、ここに第2回修正訴状を以下の事由の通り提出する。
Ⅰ.当事者
1.原告ティム・W、1977 年 10 月 26 日生まれは、ここに述べられる限り、カルフォルニア州
タホマ郡の住人である。
2.被告ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC、ニューヨーク州法に基く法人は、
この訴訟を受け、回答を提出した。
3.被告カルフォルニア州レッド・ブラフ、エホバの証人北会衆・INC、カルフォルニア州法
に基く法人は、この訴訟を受け、回答を提出した。
4.被告側当事者、まとめて“被告ものみの塔”は、それぞれ、単独のビジネス主体として
運営されている。
Ⅱ.管轄裁判所
5.原告の被害額は、当法廷の管轄上、定められた最低金額を超えるものである。
6.裁判区域は、カルフォルニア州、テハマ郡で適切である。 原告の申立の原因たる
行為、あるいは不作為は、カルフォルニア州、テハマ郡にて行なわれたからである。
Ⅲ.すべての行為の原因に共通する事実
7.被告ものみの塔は、それぞれ異なる法人格および団体から成る階層組織として構成
されている。 “統治体”は、エホバの証人に対する方針を決め、且つエホバの証人の
行動を指令し、また、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨークに代表される様々な組織
を運営している。
8. 地元のエホバの証人会衆は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC を通じて任
命された長老、及び奉仕の僕によって指導され、これらの法人、団体によって示達さ
れた規則に従うように求められている。
45
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
9. ここに提示されたすべての書類において、カルフォルニア州、レッド・ブラフエホバの
証人北会衆、およびこの会衆の長老達は、統治体とものみの塔聖書冊子協会ニュー
ヨーク・INC.の代理人として行動しており、この代理関係の範囲において、彼等が行な
った不法行為の責めを負う。
10.被告ものみの塔は、これらの方針や規則を通して、原告を含むエホバの証人の組織
内の子供達を守ることを意図していた。 しかし残念ながら、被告ものみの塔は、この
義務を果たすための合理的な注意義務を怠った。
11.被告ものみの塔は、彼らが任命した指導者達が、組織内の子供達が性的虐待を受
けていたことを知っていたか、もしくは知りうる立場にあったにもかかわらず、組織内
においてこのような性的虐待を防ぐための常識的な対策を実行することにおいて、過
失があった。
例えば、長老または奉仕の僕が、子供達と、第三者の監視のない所
で、一対一で向き合うことを禁止する方針を出す事などができたにもかかわらず、
これをしなかった。
12.被告ものみの塔は、子供達を性的な虐待の危険から守る対策を打つどころか、逆に
会衆の両親達に対して、長老、奉仕の僕を、自分達の子供達を預けるに足るだけの
信頼ある者として見るよう勧めていた。 被告は、子供達が一人で男性の会衆メンバー
と共に、野外奉仕に出ることを認めていた。 被告は、子供達が付添人なしで男性との
聖書研究会に出席することを勧め、また、長老が、子供達を王国会館の外に連れ出し
て、第三者の監督なしで、“相談”することを許していた。
13.被告ものみの塔は、児童性的虐待の訴えを受けた時、どのように対処するかを長老達
に指示する責任を持っていた。
被告ものみの塔は、長老達に対して、被告ものみの
塔“法務部”に、事件を警察等、司法当局に届け出るか否かの指示を仰ぐよう、
方針を出した。
しかしながら、この方針は世俗の捜査に対して協力を拒むか、邪魔
をするように想定されていた。
例えば、長老達は、しばしば、本部に相談する時、電
話ボックスから匿名で電話するように指示された。 これは、捜査当局が、捜査のため、
面会すべき者を特定できないようにするためであった。
14.被告ものみの塔は、地元の会衆の長老団に対して、児童性的虐待の訴えが起きた場
合は、予め定められた方法によって調査するように求める方針とその規則を出した。
例えば、“2人の証人ルール”を児童性的虐待の訴えに適用するように指示し、もし
容疑者が、自白するか、あるいは2人以上の目撃証人がいない場合、その訴えを
無視するよう求められた。
46
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
15.被告ものみの塔は、長老で構成される“審理委員会”の編成及び業務実施要領を取
決めた手続き及び事実認定の規則を制定している。 この委員会は、児童性的虐待
の加害者に対して、どんな判決が適切か、又、どのような罰則が科せられるべきか、証
拠を検討し、容疑者を尋問するために招集される。 長老達は、調査した結果を司法
当局に開示することを禁止されている。
16.被告ものみの塔は、児童性的虐待について有罪とされた組織のメンバーに罰則を課
する義務を負っている。 通常、被害の訴えは、世俗の司法当局には隠されてしまうの
で、加害者は、被告ものみの塔によって罰則を課せられる以外には、何ら罰せられるこ
とはない。 違反者は、しばしば、組織から“排斥”されるか、組織から追放される。 し
かし、多くの場合、彼らが課する罰則は秘密にされて、会衆メンバーの只中に、危険極
まりない児童性的虐待者がいるということを知られないようにするため、犯人は、“非
難”されるか、もしくは行動に制限を加えられる。 又、他の場合には、被告ものみの塔
は、通常、驚くほど短い期間の間に、排斥されたメンバーを復帰させ、又は行動の制
限を廃止している。
その間、加害者はしばしば、王国会館における集会に出席して
おり、会衆のメンバーに対して警告されるようなことはない。
17.被告ものみの塔の方針は、表面的にはエホバの証人の組織内の子供達を守るように
制定されているが、何にも増して秘密保持が強調されている。 被害者とその家族達
は、世俗の警察当局に届けないよう、定期的に言われている。
被害者達は、適切な
医療を受けたり、心理療法を受けたり、あるいは兄弟や親しい友達に打ち明けたりする
ことを、妨げられないまでも、勧められなかった。 その代わり、長老の相談を受けるよう
に指示された。
18.被告ものみの塔は、地元の会衆と長老に対して、児童性的虐待の訴えが長老、奉仕
の僕、開拓者以上のレベルのエホバの証人に対して起された場合には、被告ものみ
の塔の“サービス部”宛てに書面で報告するよう指示を出した。
また児童性的虐待
の訴えに対して行なわれた審理委員会の記録はすべて提出するように指示していた。
被告ものみの塔は、何年もの間の児童性的虐待の訴えに関する記録をファイルしてい
る。 最近では、コンピュータによるデータ・ベースとして整備された。 被告ものみの塔
は、これらの情報を会衆メンバーの保護のために整備する責任を負っている。
従って、これらの情報を合理的な配慮を持って活用する義務を負っている。
しかしながら、会衆の両親達、司法当局、それに犯人以外の長老達にとって、誰が児
童性的虐待の犯人であるかを特定できるだけの情報を機密扱いとは言え、保持してい
たにも関わらず、被告ものみの塔は、最も緊急に必要としている人達の目に触れない
47
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ように隠していた。
また、被告ものみの塔は、これらの情報を活用して、子供達
を性的虐待から守る対策を出すことが出来たにもかかわらず、放置し、無視し、何ら対
策を打たなかった。
19.被告ものみの塔は、いつにても、“児童性愛者として知られている者”として彼等自身
が言う者達が、どこの会衆からどこの会衆へ異動したか、知りうる状態にあった。
しかし、被告ものみの塔は、これらの情報を使って、性犯罪者が、どこの会衆にいるか
を、監視して適切な警告を与えることをしなかった。
20.被告ものみの塔は、会衆メンバーのエホバの証人が、ある会衆から、他の会衆に異動
する場合、前に属していた会衆が、“紹介状”を用意するように規則を定めていた。
しかしながら、被告ものみの塔は、紹介状が確実に相手の会衆に送られたか、あるい
は紹介状の内容が、正確な情報と適格な警告が述べられているかどうか確認すること
を怠っていた。 もし児童性的虐待者が、その性癖を知っていた会衆から、別の会衆
に異動し、次いでその会衆から第三の会衆に異動する場合、被告ものみの塔の規則
では、当初、所属していた会衆、つまりその者が児童性的虐待者と知っている会衆か
ら出された第1回目の紹介状を付けることさえ、要求していない。
21.これらは、被告ものみの塔が、組織内の子供達の保護について責任を負っているにも
かかわらず、その責任を果たす為の合理的な配慮を怠っていたことの、ほんの一例
である。
22.ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC.は、ジェームス・ヘンダーソンが 1964 年
以降、性犯罪者であったことを実際、知っていた。 にも拘らず、彼らはこの30年間の
間、ヘンダーソンを奉仕の僕及び長老に任命したり、再任命していた。 さらに、彼ら
は、ヘンダーソンが異動した幾つかの会衆で次々に児童性的虐待を犯し、その都度、
何度も被害訴えの報告が届けられたにも関わらず、その異動を許可していた。
23.1964 年 7 月 13 日、エホバの証人のクリア・ハイランド会衆は、ものみの塔聖書冊子協
会ニューヨーク・INC.サービス部に対して、ジェームス・ヘンダーソンが会衆の他のメン
バーと男色行為を行い、相手が興奮のあまり失神してしまったという事件があったこと
について報告の手紙を出した。
この手紙には、ヘンダーソンは、1962 年以来、この
会衆にいたが、彼の被害者に対する発言として、“ただ一度だけした”と言ったことを引
用している。
24.この手紙の目的は、ヘンダーソンの被害者が、婚外でしかも異常性愛の性交渉を持
48
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ったことに関して、この被害者を排斥処分に当るか否かを相談するためであった。
この手紙は、サービス部のカルフォルニア州の“窓口担当”であった、メルトン・
ヴィクター・キャンベルが受け取っていた。
窓口責任者としてキャンベルは、会衆
に対して相談にのり、時には、会衆メンバーを排斥処分にすべきかどうかの指示を
与える立場にいた。 彼はまた、長老、奉仕の僕を任命する権限を与えられていた。
彼は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC.の管理代表者であった。
25.キャンベルは、ヘンダーソンが会衆にとって危険人物であることを認めていた。
それにも関わらず、この8年後、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC.の管理
代表のキャンベルと統治体は、ヘンダーソンをカルフォルニア州、ウキア会衆の奉仕の
僕、次いで長老兼野外奉仕監督に任命したのである。
26.少なくとも 1960 年代中頃以降、エホバの証人会衆は、上記に述べられたように、メン
バーが新しい会衆に異動した場合、紹介状が送られるようになっていて、それには、児
童性的虐待のような重大な違反事項について書かれているはずであった。 よって、
被告ものみの塔の方針によれば、ウキア会衆は、ヘンダーソンの過去について、当然、
知らされていたはずである。
27.ヘンダーソンはウキア会衆からユバ市の会衆に異動し、そこで長老に再任された。
彼は、審理委員会において、“2人の若者に対して変態性行為を行なった”と告白した
後、1974 年に長老職を解任されていた。
彼の妻でも、夫がなぜ解任されたのか知
らない。 エホバの証人の慣行は、昔も今もメンバーは、秘密裏に規律により罰則を受
け、配偶者さえその理由を告げられることはない。 しかしながら、被告ものみの塔の方
針によって、本部のサービス部は報告を受け取っている。
28.ヘンダーソンは他の会衆に異動しており、被告ものみの塔の方針に従って紹介状が
新しい会衆に届けられていたなら、1970 年代のいつかの時点で、ヘンダーソンはカ
ルフォリニア州、メアリズビル会衆によって、長老もしくは奉仕の僕の地位から解任され
ていたはずである。 さらに別の新たなる報告が本部宛に出されたはずである。
29.1981 年 1 月 21 日、アッパー・レイク会衆は、ヘンダーソンのために、レッド・ブラフ会衆
に対して紹介状を送り、奉仕の僕に任命されるのが適切であると書かれていたが、過
去の性犯罪暦については何も書かれていない。
30.1988 年 11 月 23 日、当時、北レッド・ブラフ会衆の長老であったヘンダーソンは、レッ
ド・ブラフ市担当の監督に任命された。 時を同じくして、南レッド・ブラフ会衆の長老か
49
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
もしくは、奉仕の僕は、ヘンダーソンが職場で少年に対して性的虐待を働いたとの報
告を受け取ったが無視した。
31.1992 年 10 月 20 日、ある若者が、レッド・ブラフ会衆の長老に電話をかけて、ヘンダー
ソンから性的虐待を受けたと打ち明けた。 彼は、またヘンダーソンが自分と他の人に
対して性的虐待を犯したことを認める書面に署名していると言った。 彼は、長老に会
ってくれるようまた、罪を認めた書面を受け取ってくれるよう頼んだ。 しかし、長老は、
その依頼を断り、若者に対して、2度と近づくなと言った。
32.1994 年にヘンダーソンに性的虐待された被害者が警察に届け出たことがあり、その後、
ヘンダーソンは、長老ボディー・リヨンに、自分は子供に性的虐待を犯したと告白した。
もう一度、被告ものみの塔は、彼を軽い罪で取り扱うつもりでいたが、他にも被害者が
いることが分かり、そして更に重要なのは、レッド・ブラフの警察の知るところとなったた
め、ついにヘンダーソンは排斥された。
33.このように 1963 年から 1993 年の間、つまりティム・W に対する性的虐待が始まった時、
被告ものみの塔は、少なくとも5回、ヘンダーソンが性犯罪を犯しているとの報告を受
け取っている。
34.被告ものみの塔は、ジェームス・ヘンダーソンが危険な性犯罪者であるとの明白な知
識を得てから30年たった 1993 年において、ヘンダーソンが原告ティム・W に第三者の
立会いなしでも近づくことを許していた。 一方ヘンダーソンは、与えられた長老及び
市担当監督の地位に伴う信用と尊敬を悪用して、ティム・W を性的に食い物にし、性
的虐待は 1994 年まで続けられた。
35.ヘンダーソンを繰り返し、長老職に任命しまたその地位に留まることを許すことによっ
て、被告ものみの塔は、彼を会衆において信用ある立場に置いた。 被告ものみの塔
は、会衆メンバーが、彼を信頼の置ける人物であると見なし、安心して彼らの子供達を
任せることができると見なすであろうことを知っていた。 同様に、会衆の子供達も、ヘ
ンダーソンのような長老もしくは奉仕の僕は信頼できる人であると教えられていた。
36.被告ものみの塔は、原告ティム・W とその母親に、重要な事実を隠していた。
もの
みの塔は、ヘンダーソンが過去30年間の間、性犯罪を犯し続けてきたことを黙認し、
隠し通すことによって、彼が性犯罪を犯すことを助け、そそのかしていた。 被告ものみ
の塔は、会衆内の子供達の安全及び権利よりも、組織の秘密を守ることを大事にして、
情報を隠し通してきた。 彼らはティム・W や他の子供達の身の安全が確保されるべき
50
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
権利を意図的に奪って、重要な事実を隠し通した。
Ⅳ.第一の行為
慣習法上の過失
37.原告は、この修正告訴の上記の1から36までの条項を加えて、ここに再申立をする。
38.原告は、ここのすべてに述べられているように、被告ものみの塔は、その組織内の性
犯罪者から、原告を守る義務を負っている。
39.しかしながら、被告ものみの塔は、その会衆内における長老もしくは奉仕の僕が、監
督なしで、もしくは付添者なしで子供達との接触を回避する対策を実施せず、逆にそ
のような単独での接触を勧めており、管理上の重大な過失があった。
40.被告ものみの塔は、その代理人であるジェームス・ヘンダーソンが原告を身の危険に
さらすことを予見できたにもかかわらず、原告の身の安全確保に重大なる過失があっ
た。
被告ものみの塔は原告に対する義務違反を犯し、その結果、原告に大きな
危害を与えた。
41.被告ものみの塔は、ヘンダーソンの過去の児童に対する性犯罪暦を知っていたか、も
しくは知り得たにもかかわらず、意図的に原告及びその家族に警告せず、これらの事
実を黙認していた。
42.被告ものみの塔は、ヘンダーソンの過去の児童に対する性犯罪暦を知っていたか、も
しくは知り得たにもかかわらず、会衆内においてヘンダーソンが単独で原告を含む子
供達と接触することを黙認していた。
43.これらの被告の重大なる過失の結果として、原告は被害を受け、未だに心理的なトラ
ウマ、精神的苦痛、精神的苦痛に伴う身体的症状、不安感、自信の欠如、恥辱、人と
しての当然の喜びの欠如等の被害を被っている。
Ⅴ.第二の行為
任命、地位保全、監督における過失
44.原告は、この修正後の告訴、1~43の条項をここに加えて再申立する。
45.被告ものみの塔は、ヘンダーソンの児童に対する性犯罪暦を知っていたか、もしくは
知り得たにもかかわらず、そしてヘンダーソンが子供達に単独で接触しうる立場になる
51
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ことを知っていたか、もしくは知り得たにもかかわらず、彼を長老及び市担当の監督に
任命してしまったことに重大な過失が認められる。
46.被告ものみの塔は、ヘンダーソンが子供達を危険にさらす可能性と予見性を予め具
体的に知りながら、ヘンダーソンを監視し、監督することをしなかったことに重大な過失
がある。
47.これらの被告の重大なる過失の結果として、原告は被害を受け、未だに心理的なトラ
ウマ、精神的苦痛、精神的苦痛に伴う身体的症状、不安感、自信の欠如、恥辱、人と
しての当然の喜びの欠如等の被害を被っている。
Ⅵ.第三の行為
受託義務違反
48.原告はこの修正告訴の条項1~47の項目を、ここに加えて再申立する。
49.原告は、ここの書類のすべてに述べられた通り、被告ものみの塔は、小さく弱い立場
にある原告を守り、面倒を見る義務を負っていることから、原告との間に受託関係が成
立する。 被告ものみの塔は、原告の信用と信頼を持たれる立場にあり、よって、この
関係によって、被告は原告の利益を最大限守るために行動する義務を負っている。
50.原告は、被告との間にこのような特別な関係があることから、被告ものみの塔が原告の
身の安全を守り、危険の可能性に対し警告をしてくれるはずという信頼と信用を寄せて
いた。 よって、上記に述べられた行為は、被告ものみの塔が原告に対して負う受託義
務違反となる。
51.上記に述べた通り、被告の不法行為によって、原告は被害を受け、未だに心理的なト
ラウマ、精神的苦痛、精神的苦痛に伴う身体的症状、不安感、自信の欠如、恥辱、人
としての当然の喜びの欠如等の被害を被っている。
Ⅶ.求刑
よって、原告は被告ものみの塔の各組織、個人に対して個別に、且つ共同して以下
の通り、求刑を求めるものである。
・証拠に基く、損害賠償
・証拠に基いて、過去及び将来にわたる医療費の保障
・証拠に基いて、過去失われた及び将来失われる所得の補償
52
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
・判決以前に発生した利息
・訴訟費用
・法廷が妥当と判断する慰謝料
ノーレン&アソシエイツ法律事務所
原告側弁護人 ルーディ・ノーレン
ものみの塔本部サービス部と会衆との間に交わされたジェームス・ヘンダーソンに関する文書が、
これに続くのであるが、原告はこれら文書をカルフォルニアにおける事実認定の過程において
受け取った。
これらの文書は、元々は、カルフォルニア州レッド・ブラフにおいて作成されたもの
であるが、オレゴン州のグラフマイヤー 対 ものみの塔の訴訟案件の証拠書類としてナパ郡弁護
士によって、提出されたものである。
グラアフマイヤー訴訟は、同じく 2007 年 2 月にものみの塔
との間で法廷外の和解によって解決された。
これらは、ナパ郡法廷の公開文書ではないが、
オレゴン州の裁判所においては公開文書になっている。
これらの文書の最初の内、様式 S77 による文書の真ん中に書かれた「質問」の箇所に注意して頂き
たい。
これは、エホバの証人が排斥された後に、長老が記入してものみの塔協会に送られる書
類である。 :
“悪行の証拠として何があげられましたか? 自白ですか、2,3人以上の証人です
か?”
これは、ものみの塔のよく知られていない“2人の証人”の方針の例である。 ジェームス・ヘンダー
ソンの審理委員会における事情聴取においては、彼を有罪とする証人が少なくとも2人いたことか
ら、彼は排斥されたのである。
る。
しかしながら、この質問には、答えられていない疑問が湧いてく
“もし、2人目の証人が名乗り出て、警察に届け出た被害者の訴えを裏付ける証言をしなか
ったならば、果たしてものみの塔は、ヘンダーソンのような児童性的虐待者を排斥するであろう
か?“
同じ会衆内の
会衆内の2人の児童性虐待者
もし、読者がこれらの情報だけでは、被告が、性犯罪者と知られた者を権威を持つ地位に任命し
たことによって、子供達を守るべき義務に違反したということについて確信を持てないと言われるな
らば、次の文書を見て頂きたい。 これは、2007 年 5 月 15 日に公判の始まったウインバレイー
訴訟の裁判記録から抽出されたものである。
性犯罪者アルヴィン・ハードは、レッド・ブラフ会衆
の3人の子供達に対し、性的虐待を犯した。
以下に提示された排斥の文書と犯人の陳述を見て
53
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
下さい。
性犯罪者アルヴィン
性犯罪者アルヴィン・
アルヴィン・ハードと
ハードと同じくジェームス
じくジェームス・
ジェームス・ヘンダーソンは
ヘンダーソンは、一時期、
一時期、同じ会衆に
会衆に
いたのである。
いたのである。
アルヴィン・ハードは、現在、オレゴン州ウマティラにあるトゥー・リバー矯正施設
に収監されている。
アルヴィン・ハードは、過去30年以上にわたって数人の子供達に性犯罪を犯した。
1976 年から 1981 年までの間に、ハードは、原告ウインバレイ及びグティエレツに対して
性的な虐待をした。 ハードは審理委員会に付され、非難された。 ハードは、エホバ
の証人の組織内の別の子供達に対して性的な虐待を続け、又、審理委員会に付され、
非難された。 しかしハードは引続き、サウス・ダコタ州次いでオレゴン州のエホバの会
衆に異動されて、そこでまた別の子供達に対して性的虐待を行なった。
結局、オレゴン州クラマト・フォールにおいて有罪判決を受ける直前に、たぶんエホバ
の証人の審理委員会に付され、排斥処分となった。(証拠5に提示されたアルヴィン・
ハードの証言の抜粋を参照) ハードの証言の抜粋を見ると、彼が幾つかのエホバの
証人の会衆において、多くの子供達を性的な虐待を犯したことは明らかである。 ハー
ドの証言抜粋は、1981 年以降、カルフォルニア州、オロビールにおいて児童性的虐待
容疑に対して開かれた審理委員会、同じくパラダイスにおいて開かれた審理委員会、
そしてオレゴン州、サウス・ダコタ州の会衆における審理委員会、これらの長老達との
間に相互の情報交換があったことを明らかにしている。
長老達は、ハードの過去の
児童性的虐待を知っており、また新たな児童性的虐待の訴えに対応していたのである。
そして、1997 年に行なわれたものみの塔の方針が変更されたことによって、長老達は、
情報交換を行なう過程で、ハードの過去からの犯罪暦を知るに至ったのである。※19
※19 2006 年 9 月 16 日受理された、事実認定のための PMK(最も事情をよく知る者)
の証言と証拠を要請する申立書 P5
54
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<機密文書>
原本 P44
(表側)
1995 年 3 月 22 日
排斥又は
排斥又は追放の
追放の通知
南
レッド・ブラフ
会衆の名前
カルフォルニア
市
20727
州
会衆番号
ジム・ヘンダーソン
1994 年 12 月 1 日
排斥又は追放される者の名前
排斥、追放の日付
回復の日付
該当箇所に印(*)を付けて下さい。
(*)長老
( )奉仕の僕
( )定期開拓者、特別開拓者
( )ものみの塔協会に刊行物受け取りの登録がされた者、又は雑誌送付先会衆(この場合、新しい
住所と名前を記入してください)
排斥の理由となる違反事項(追放の場合は理由を書いてください):
子供に対する性的虐待
ローマ書 1:24,26,27,32
Ⅰコリント 6:7,10
啓示(黙示録)22:15
事件について全体像を簡潔に記入してください:(1)悪行に至った原因 (2)以前に非難されたか、
相談したことはありますか (3)この処置が必要である理由、例えば悔改めにふさわしい行いがな
い等(裏側の#3 を参照)(余白が足りない場合は、適宜、用紙を追加してください)
彼は、会衆内の子供達に対して性的虐待を行なった。 彼はホモセクシュアルであることを告白し、
過去何年間にわたって、嘘とたくらみの偽善的な生活を送ってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(裏側)
悪行の証拠は何か、自白か2人以上の証人か。
2人の証人
審理委員会の長老の署名(線の下に氏名をタイプし、線の上に署名)、(追放の場合、取扱委員会
が署名)、(委員長の名前も付記して下さい)
ボディー・リヨン
署名
ドナルド・アミー
署名
この者は、あなたの決定に対して上訴しましたか?
いいえ
上訴する場合は、この報告を上訴
委員会の手紙と共にものみの塔本部にお送り下さい。 もし審理委員会が更に意見のある場合は、
書面にて上訴委員会経由でものみの塔本部に送付して下さい。
上記の者が、過去に排斥もしくは追放されたことがある場合には、下記にご記入下さい。
1.日付
2.当時の氏名
3.復帰日
注:この報告原本を S-79a 及び S-79b の様式原本と共に記入後、ものみの塔本部にお送り下さい。
コピーは会衆の丸秘資料としてファイルして下さい。 本部はこれらの書類を受領後、s-79b を
返却します。 もしこの者が組織に復帰(又は死亡)した場合、この S-77 用紙写しの復帰日を記
録して下さい。
様式 S-77
D0007
(表を見て下さい)
55
1995 年 4 月 8 日
証拠 A
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<機密文書>P45~P47
日付(不明:95 年 12 月 1 日?に読める)
審理委員会
レッド・ブラフ北会衆
委員長 ボディー・リヨン
ジム・ヘンダーソン
1994 年 10 月 4 日に、我々はリヨン兄弟に対して、彼(ヘンダーソン)は、ナタン・ドッタと性行為を持
ち、児童に対する性的虐待について有罪であると連絡した。
1994 年 10 月 4 日に長老団は会議を持ち、ボディー・リヨン、ビル・ミューリン、ロン・ピット、ルロイ・
レイド・ジュニアから成る審理委員会を編成した。
審理委員会は、1994 年 10 月 6 日にジム・ヘンダーソンと会い、そこで彼はパルレモの不活発なエ
ホバの証人のバプテスマを受けていない息子ナタン・ドータと性行為を行なっていたと自白した。
ジム・ヘンダーソンは、ナタンとの性行為は3年前までのことで、その後は何もない。 ただ、この事
について、父親の知るところとなったため、名乗り出たと報告した。
審理委員会は、本件が児童性的虐待であることから、電話にてものみの塔本部の助言を求めた。
3年以上前の罪については 1972 年 10 月号「王国宣教」の記事による混乱が見られた。
我々はものみの塔本部に電話で相談した後、長老団は約1週間にわたる話合いの結果、審理委
員会を立ち上げることにした。
ヘンダーソンが1週間休暇を取っていたので、我々はその期間を調査に当てた。
この件につい
ては、約5人が知っていることが分かった。 そしてそれぞれの話を総合するとヘンダーソンの自白
と一致しない箇所がいくつかあった。
そこで 1994 年 11 月 10 日に、ヘンダーソンと会って、確か
めたが、彼は自分の主張に固執した。
我々は 1994 年 11 月 12 日にジム・ヘンダーソンと妻ドナ
と共に更に話し合った。
ヘンダーソンが頑強に自説を主張していて、彼と被害者ナタンとが対立したため、ナタン・ドータが
委員会の会議に参加したいと要求した。 会議はレイド兄弟とリヨン兄弟とが仲介することになった。
ナタン・ドータは、性的虐待は数百回行なわれて、最も最近では1年半前のことであったと主張した。
結局、ヘンダーソンは、ドータの言い分を認めた。 この会議は 1994 年 11 月 19 日に行なわれた。
(この会議にはナタン・ドータの両親も出席していた)
証拠 A
10P の内の 4P
56
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
1994 年 11 月 13 日、リード兄弟とリヨン兄弟はドータがヘンダーソンの性犯罪の犠牲者だと指名し
た数人に会ったが、彼らはそうではないと言った。
1994 年 11 月 17 日、審理委員会はジムと面談した際、彼は 1972 年に起きた同様の違反のために
恐喝され賠償金を支払ったと言った。
彼がいうところの“賠償金”を支払ったことは、確認するこ
とができた。
1994 年 11 月 17 日、審理委員会は、ジムに対して現在の地位にはもはやふさわしくないと言い渡し、
ナタン・ドータの事件は公に非難され、そしてサービス会議が開かれて会衆メンバーに案内され
た。
一週間後に、レッド・ブラフ南会衆のジョージ兄弟が、リヨン兄弟に会いに来て、次のように話した。
5年ばかり前に、タミー・アンダーソンがジョージ兄弟に会った際、彼女の弟は、ジムと同じ職場に
働いていて、その時に、ジムから性的な虐待を受けていたと。 (ジムはサクラメント・ビー新聞社の
支局長であった。)
しかし、その時はジョージ兄弟としては、事実を確かめる方法がなかったため、
そのまま忘れられてしまったと語った。
次の日の朝、リヨン兄弟は警察当局に呼ばれ、事件について事情聴取を受けた。 なぜなら、ナタ
ン・ドータの父親が警察に届け出たからである。
警察の質問を受けて、リヨン兄弟はナタン以外
に少なくとも4人がヘンダーソンから受けた被害について警察に届け出ていることを確信した。 警
察はまだ告発はしていないようであった。
審理委員会が再度、設けられた。 警察の事情聴取を受けたレイド兄弟とリヨン兄弟は、事件は単
独の問題ではないことが分かった。
リヨン兄弟は、巡回監督のピエール兄弟と地域監督のアミー兄弟に、本件について同席するように
求めた。
そして 1994 年 12 月 1 日に開かれた審理委員会においてヘンダーソン兄弟に対して
以下の通り決定した。
1. 以前から何度も言っているように、ナタン・ドータに性的虐待を行なった。
2. ヘンダーソンは一度、ナタン・ドータを強姦した。
3. ヘンダーソンは北会衆のまだバプテスマを受けていない若い開拓者であったティム・ワードを
性的に虐待した。
4. ヘンダーソンは恐喝金を払っていた。
5. ヘンダーソンは自分の息子グランツに対しても性的な虐待を行なった。
6. ヘンダーソンは、自分の職場である新聞社で少年に対して同じような行為に及んだと聞いてい
ると質問したが、彼は否定した。 彼が嘘を言っているのは明らかであった。
彼は又、この時
を捉えて、審理委員会に対して別の嘘を言った。 アミー兄弟とピエール兄弟はここで退席し
た。 審理委員会はジム・ヘンダーソンを排斥処分にすることを決定した。
証拠 A
10P の内、
57
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
事件は世間の注目するところとなった。 リヨン兄弟とリード兄弟は、警察当局と、すべての当事者
は、警察に届け出ることで合意し、エホバの名前は本件と関係付けられることはしない事となった。
ジム・ヘンダーソンは、巧妙に立ち回り、嘘をつき、自分の犯した重大な罪を過小評価されるよう企
んできたことが明らかになった。 彼はホモセクシュアルでかつ幼児性愛の性癖を持っていることが
明らかになった。
彼は、会衆及び地域社会の子供たちにとって危険人物であることが明らかに
なった。 彼は強いられた場合以外は審理委員会に出席しなかった。 又、彼は、神のものというよ
りも、この世的な悲しみをあらわにした。
よって、我々は、彼は悔改めていないと感じた。
我々の判断の基礎とした聖書の言葉は、ローマ人への手紙 1:24,26,27,32・・・・・Ⅰコリント人への
手紙 6:9,10・・・・・、啓示(ヨハネの黙示録)22:15
敬具
ボディー・リヨン・ジュニア
署名
ルロイ・レイド・ジュニア
署名
ロン・ピッツ
ビル・ミューレンズ
署名
署名
D0011
証拠 A
10P のうち P6
58
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<機密文書>P48
(レター・ヘッド)
エホバの証人・北会衆
SSY 1994 年 12 月 13 日
カルフォルニア州レッド・ブラフ
ルート通り 16 番地 96080
1994 年 12 月 3 日
ものみの塔
25 コロンビア・ハイツ
ブルックリン、ニューヨーク 11201
親愛なる兄弟へ
本状をもって、ジェームス・L・ヘンダーソンはもはや北会衆の統括監督ではなくなったことをお知
らせいたします。 彼は姦淫の罪を犯した事を自白したことによって、彼を排斥する必要があるも
のです。
長老団は、ロナルド・L・ピッツを暫定的に統括監督に選任いたしました。
ピッツ兄弟は今まで
秘書として働いておられ、その後任としてグランツ・L・ヘンダーソンを秘書の職におくことを決定
いたしました。
グランツ・L・ヘンダーソン兄弟は奉仕監督として働いておられたため、その後
任には、ビリー・J・マリンズ兄弟を選任いたしました。
地域監督のアミー兄弟及び巡回監督のピエール兄弟はこの人事異動についてすでにご存知で
す。
S-29 様式の住所変更届を同封いたしました。
敬具
ドナルド・L・ピッツ
署名
グランツ・L・ヘンダーソン
署名
ビリー・J・マリンズ
署名
D0011
証拠 A
10P の内、7P
59
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<機密文書>P48
2003 年 2 月 13 日受領
(レター・ヘッド)
エホバの証人・北会衆
王国会館住所:カルフォルニア州 96080 レッド・ブラフ、リード通り 755 番地
通信先:カルフォルニア州 96080 レッド・ブラフ、リサ通り 13735
電話:530-527-4923
エホバの証人イースト・コットンウッド会衆
カルフォルニア州 98022 コットンウッド、ラホーム・レーン 4053
ジャック・ディーン気付
1998 年 10 月 2 日
親愛なる兄弟へ
ジェームス・ヘンダーソンに関すること本状をお送りします。 彼は、現在排斥されていますが、そち
らの会衆に出席しています。
貴殿は、彼が何故、排斥されたかをすでにご存知だとは思います
が、ものみの塔協会本部の 1997 年 3 月 14 日付けで出されている本部指示及び 1997 年 12 月に
開催された「王国宣教学校」において出された“児童性的虐待者として知られている者”が、会衆を
異動した場合に、該当する指示に基いて、本状をお送りするものです。
更に彼はすでに排斥さ
れている状況にあります。
ジェームス・ヘンダーソンは 1994 年 12 月に上記に述べられた理由によって、北レッド・ブラフ会衆
から排斥されました。 彼は、犯した犯罪によって刑務所に送られ、1997 年 12 月に刑期を終えて、
それ以降、そちらの会衆の集会に出席しています。 本状はこの事情についてお知らせするもので
す。
貴会衆が、本件についてご検討されることを感謝いたします。
王国の利益のための兄弟のお働
きの上に、エホバの祝福がありますように。
敬具
北レッド・ブラフ会衆―奉仕委員会
署名(2名 判読困難)
証拠 A
10P の内、P10
60
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<機密文書>P50
エホバの証人 レッド・ブラフ会衆
96060 カルフォルニア州、レッド・ブラフ
メイスター市ボックス 40 #3 通り
1981 年 8 月 31 日
ものみの塔聖書冊子協会
25コロンビア・ハイツ
ブルックリン、ニューヨーク 11201
親愛なる兄弟、
我々、エホバの証人のレッド・ブラフ会衆の審理委員会は、アルヴィン・ハードを会衆から排斥処分
にした。
この措置は 1981 年 8 月 22 日に実施された。
この措置が取られた理由は、彼が、姦淫に関するエホバの法に対して著しい違反を行なったから
である。 彼には、一定の悔改めが見られたのであるが、我々、審理委員会は彼が会衆を汚染する
可能性があることから、彼を排斥する以外に方法がないことで意見が一致した。
この結論に導い
た証拠は以下の通りであります。
1.彼は会衆の3人の子供とオラル・セックスを行なった。
被害者の年齢は5歳、9歳、11歳であ
る。 すべて、ハードから子供達に対して行なわれたものである。
2.1981 年 9 月 1 日の「ものみの塔」誌の P28 の 23 行目に書かれているように、“長期間にわたっ
て隠れて重大な罪を犯していた者に対しては特別の注意を払う必要がある。 彼の自白によれ
ば、年長の少女に対しては少なくとも3回、行為に及んでいた。 9歳の少女に対しては、彼女が
6歳の時から性的虐待を続けていて、最近では 1981 年 8 月 8 日であった。 少年に対しては最
近5回ないしは6回、行為に及んだ。
被害者の数の多さと家族への配慮、そして犯された罪のパターンを考慮して、我々は上記の処分
をする決定をした。
エホバへの奉仕にあって
ケニヨン・E・マニング
署名
グレン・ヒンケル
ウイリアム・ミラー
署名
署名
(手書き)被害を受けた子供たち ホリー、ジュリー、判読不能
証拠 A
D0003
10P の内、P1
61
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
<対外秘>P51~P68
レッド・ブラフ、カルフォルニア 会衆排斥又は追放記録
氏名: 排斥又は追放の日付:
理由:
会衆復帰日:
(SSR 1981年10月21日)
氏名: アルヴィン・ハード 排斥又は追放となった日付:1981年8月22日
理由: 児童性愛、ホモセクシュアル(会衆内の2人の少女と一人の少年とのオラル・セックス)
会衆復帰日: 1982年3月22日 SSR 1982年6月14日
氏名: 排斥又は追放となった日付:
理由:
会衆復帰日: 氏名: 排斥又は追放となった日付:
理由:
会衆復帰日: 氏名: 排斥又は追放となった日付:
理由:
会衆復帰日: 氏名: 排斥又は追放となった日付:
理由:
会衆復帰日: D0004
証拠A
10Pの内、P2
62
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1
2
3
4
5
6
7
8
9
カルフォルニア州上級裁判所
1 ものみの塔法務部: テハマ郡
2006年2月17日
ロバート・C・ジェームス氏
2
相談役
原告: 3
ものみの塔聖書冊子協会
ジュリエンヌ・ウインバレイー・ 訴訟番号:52598
4
ニューヨーク・INC.
カティエレツ他
5
12563-9204 ニューヨーク、パターソン
6
ウオッチタワー・ドライブ 100
共同訴訟番号:4374
被告:
7
ものみの塔聖書冊子協会
8 ビデオ撮影者: ボブ・グレイダー
ニューヨーク、INC.他
9
シネマトグラファー音響サービス
10
10
99336 WA ケニーウイック
11 及び共同訴訟の件
11
W・クリーンウオーター通り 6201
12
12
D号
13
アルヴィン・ブランチャード・ハードの証言ビデオ
14
原告の要請によって取られたもの
13
14 立会人: ポール・ソールマン
15
15
16
2006年2月17日 16
17
10:30AM 17
18
97882オレゴン州、アマティラ 18
19
ビーチ・アクセス通り82911 19
20
20
21
ブリッジズ&アッソシエイツ
21
22
公認速記録人
22
23
97882 オレゴン州、ペンドルトン、私書箱223
23
24
(541)276-9491 (800)358-2345
24
25
1 25
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
10
3
ここに、原告の要請によって、アルヴィン・ブランチャード
2
ハードの証言が、カルフォルニア州の民事手続に従い、
3 ジュリエンヌ・ウインバレイー・カティエレツ他 対
2006年2月17日(金)午前10:30から、97882オレゴン州
4 ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC.他
ウマティラ、ビーチ・アクセス通り82911のトウー・リバー・
5
索引
コレクショナル協会において、オレゴン州公認速記人
6 訴訟番号:52598 共同訴訟番号:4374 スーザン・スタークウエザーの面前においてなされたこと
7
を記録する。
8 2006年2月17日
9
・ ・ ・ 10
証言
11 アルヴィン・バランチャード・ハード ページ
11
12
アロン・パイパー
出廷者
12
13 原告側: ルディー・モレン氏
13 ノーレン氏の尋問
6-171
14
ノレン・ソール・ブレルスフォード 14 シュナック氏の尋問 172-185
15
法律事務所 15 ノーレン氏の再尋問 185-196
16
11335 ゴールド・エクスプレス・ドライブ 16
17
105号 17
条件
18
95670-6310 カルフォルニア州、ゴールド・リバー 18 審理委員会に関するミヤード氏の証言についての
19
19 聖職者秘密特権に関して、証拠コード番号1030に
20
20 基く異議申立て 1・13
21
21
22
22
証拠提出要請:
23
23
(なし)
24
24
証拠:
25
2 25
63
(なし)
4
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1
2
3
4
5
6
7
8
9
飲酒運転のためか?
2006年2月17日
1 長老達は、私が児童性的虐待者であったことを
A.はい
2 知っていたから。
Q.それは1998年に起きたか?
3 だから、彼らは私が何も・・・私を監視する必要があった
A.はい
4 のでは。・・・私は監視なしで、トイレを使うことはなか
Q.よろしい。ザピド市警察に記録はあると思うか?
5 ったし、ほかにも・・・・・
A.はい、あります。
6 Q.彼等はどうしてあなたが、児童性的虐待者であった
Q.あなたは逮捕された時、オレゴン州の有効な運転
7 と知っていたのですか?
免許証を持っていましたか?
8 A.私がサウス・ダコタにいた時、彼らに言ったからです。
A.はい、持っていました。
9 私は、一時、児童性的虐待を行なったことを、これら
10 Q.あなたは、サウス・ダコタに住んでいた時、運転免
10 兄弟達に告白したからです。
11 許証を持っていましたか?
11 そうしたら、彼らは会衆にこの問題を委ねると言ったん
12 A.少しの間、持っていました。 と言うのは、私は、
12 です。
13
アルコール治療プログラムを受けていて、運転免許
13 たぶん1995年より後、確か1997年に、出された「もの
14 証を返却するのを忘れていた。 保険をかけることが
14 みの塔」誌に、児童性的虐待者は、責任ある地位に、
15 できなかったからです。 免許証を返却するには、保険
15 就く事ができないとか、そのような指示が・・・・・
16 に入っていることが必要だから。 だからオレゴン州に
16 Q.あなたが児童性的虐待をしたと話したサウス・
17 に帰った時に、更新したんです。 ですから・・・
17 ダコタの長老の名前を覚えているか?
18 Q.しかし、サウス・ダコタにいた時、しばらく免許証
18 A.一人はロジャー・ケリーです。 もう一人はスティーブ・
19 を持っていた。
19 テイラーだったと記憶してます。
20
20 それにもう一人いたと思いますが、何と言う名前だった
21
21 か、覚えていません。
22
22
23
23
24
25 24
27
1 A.ええ、そうです。 だって、免許証を返却するため
1 Q.あなたは、その2人の長老にそのことを自分から
2 に、フリー・ウエイを運転して戻ってくる必要があった
2 伝えたのですか?
3 から。
3 A.そうです。
4 Q.あなたが、個人的に非難された時、審理委員会
4 Q.あなたは、それを伝えることが、あなたにとって
5 に出席しましたか?
5 義務であることを分かっていましたか?
6 A.はい
6 A.はい。私はバプテスマを受けた者ですから、そう
7 Q.3人の長老がメンバーだったか?
7 する必要があると思っていました。
8 A.ええ、たしか3人だったと思います。
8 Q.その長老達は、あなたが児童性的虐待の前歴が
9 Q.結果はどうでしたか?
9 あることを知った時、彼らは、会衆メンバーとの関係
10 A.アルコールについてだけ非難されました。
10 において、どんな注意をあなたに与えましたか?
11 それ以外には、会衆内では何もありません。 というの
11 A.彼らは、私は会衆の責任ある地位に就くことは
12 は、その当時は、集会に出席していなかったから。
12 できないと言った。 私は、元々、集会に出席して
13 Q.あなたは、会衆に関する限り、実際のところ、何の
13 いなかったから、問題にはならなかったですが。
14 とがもなかったということ?
14 Q.えっと、あなたは1992年から1995年まで、集会
15 A.はい。
15 に出席していますね。
16 Q.間違いないですか?
16 A.それは、サウス・ダコタ州ラピド市でのことです。
17 A.間違いありません。
17 Q.確かに
18 Q.あなたはクラマト・フォールのアルタモント会衆に
18 A.1997年のものみの塔誌の記事が出るまでは、全く
19 いた時、審理委員会に呼び出されたことが、ありませ
19 問題にならなかったのですが。
20 んか?
20 その記事が出たのが確か1997年だったのですが、
21 A.それは審理委員会ではなくて、何人かの長老の
21 私は、1997年から1998年までの間、まったく集会に
22 ところに行っただけです。 そして・・
22 出席していなかった。
23
23
24
26 24
アルヴィン・ハードの件ーブリッジ&アソシエイツ法律事務所(800)-358-2345,ノーレン(541)-276-9491
64
28
P25~P28
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1 Q.えっと、時系列的に整理して見ると。 あなたが、
2006年2月17日
1 した先の会衆に送っていたということと、そのカード
2 2人の長老、ケリーとテイラーとこの話をしたのは、あな
2 には、その種の情報が書かれているということです。
3 たが、集会に出なくなってからですか?
3 私がその会衆からいなくなってから、充分、時間が
4 A.その通りです。
4 経っていますから、よく分かりません。
5 Q.ということは、あなたが最初にサウス・ダコタのラピド
5 Q.審理委員会の長老は、あなたが児童性的虐待
6 市に行って、1992年から1995年の間にそこの会衆
6 の前歴があることを、以前の会衆から情報を得てい
7 の集会に出席していたが、あなたはこの話(児童性
7 たと、言っていましたか?
8 的虐待)を伝えていなかったということですか?
8 A.いいえ。
9 A.その通りです。 その必要がなかったのです。
9 Q.あなたがアルタモントに行ったときには、そこの
10 前の会衆から手紙がラピド市の会衆に出されていて、
10 会衆に、あなたが児童性的虐待の前歴があることを
11 その手紙の中にその情報は書かれていたからです。
11 明かしましたか?
12 だからいずれにしても、ラピド市の長老は知っていた
12 A.いいえ。 彼らは私を呼んで、姪と甥を預けたい
13 はずです。
13 と言った。 子供がいたからです。 それでそうした。
14 Q.そして、1997年に出されたものみの塔の新しい
14 Q.シンディーとチェスターは、エホバの証人でしたね?
15 方針によれば、あなたは長老達に、この情報(児童
15 A.そうです。
16 性的虐待)を伝える必要があることを知っていたの
16 Q.彼らは集会に出ていた?
17 ですか?
17 A.そうです。
18 A.当然です。 あなた方もそうではないですか。
18 Q.そして、審理委員会には呼ばれたのですか?
19 Q.1997年に何が変わったのですか?
19 A.いいえ。 2人の長老が、私に話をしただけです。
20 A.1997年に、DUI(何の略か不明)をもらった。 20
21 その件で私は長老に呼び出されて、この件で何か
21
22 問題があるのではと問われた。 それで、そうだと
22
23 答えた。
23
24 Q.OK 私が質問しているのは、1997年に 29
24
1 サウス・ダコタ会衆の2人の長老に、あなたが児童性
1 Q.その2人の長老を覚えていますか?
2 的虐待者であることを伝えねばと思った理由の根拠
2 A.一人は、マーク・ダールです。 もう一人について
3 となった1997年に変更されたものみの塔の方針は
3 は思い出せませんが、マークに聞けば分かると思い
4 何かとことです。
4 ます。
5 A.その長老、ロジャー・ケリーは、率直に、同じ質問
5 Q.マークのラスト・ネイムの綴りを教えてください。
6 をした。 私が覚えている限り、そうだ。
6 A.確か、Durr か 又は Dur だと思います。
7 Q.つまり、あなたの方からは、長老に伝えに行かな
7 Q.了解。 次に、あなたの前歴について、あなたが
8 かった。 彼らの方から、あなたの方に出向いてきた。
8 自主的に伝えたのか、それとも彼らが尋ねたから答えた
9 そういうことですね。
9 のか、これは重要な質問です。
10 A.そうです。 彼らが審理委員会に来るように求めて
10 A.彼らが尋ねたから、答えたのです。
11 来て、私は「はい」と答えたのです。
11 Q.OK あなたの前歴を彼らに話したかあるいは認め
12 Q.そしてあなたは、2人の長老による審理委員会に
12 たかして、その後、彼等長老は、シンディーとチェスター・
13 したのですね?
13 ミラーに連絡して、その情報を伝えようとしましたか?
14 A.もう一人いました。
14 A.ちょっと、整理してみたい。
15 Q.その方の名前を覚えていますか?
15 サウス・ダコタでは、その件でロジャー・ケリーに
16 A.覚えていません。
16 呼ばれた。 そして、私がここに来た時、彼らは
17 Q.その審理委員会で、あなたは、児童性的虐待者
17 彼(ロジャー・ケリー)は、知っている情報をここに
18 であることを明かし、又認めたということですね?
18 伝えた。 それは、私の開拓者カードに記入されて
19 A.えっと、ロジャー・ケリーが、私に尋ねたのです。
19 いる。 だから彼らは知っていた。
20 それで、私はそうでしたと答えた。
20 そして彼らは私を呼んで、それについて尋ねた。
21 Q.彼は、すでに知っていたということですか?
21 そして彼らは、・・・・
22 A.実際のところは、分かりません。
22
23 私が知っていたのは、彼らは開拓者カードを異動
23
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P29~P32
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1 A.いいえ、なぜなら情報はすでに伝えられていた。
1 にいたのは1991年頃ですね?
2006年2月17日
2 そして、彼らがその情報を他の会衆に伝えていれば、
2 A.たぶん。 サウス・ダコタのラピド市に引越したの
3 そして、その会衆が何も制限しなければ、私の前歴
3 が1992だから、・・・
4 は、会衆メンバーに伝えられていたはずだ。
4 Q.あなたがサウス・ダコタのラピド市に来る直前は、
5 Q.そのカードに個人的なあるいは公に非難される
5 あなははスーザンビルにいたということですね?
6 ような情報か、もしくは排斥の情報か、何か否定的な
6 A.はい。
7 情報が記入されていたら、新しい会衆の人達は、あな
7 Q.だから、スーザンビルにいたのは1991年という
8 たに会うと思うか?
8 ことになりますね?
9 A.いいえ。 彼らは、自動的にその情報を知ることに
9 A.はい。
10 なる。 カードには何が記入されているのですか?
10 Q.よろしい。 ところで、あなたは、サウス・ダコタ州、
11 Q.あなたがサウス・ダコタのラピド市会衆の集会に
11 ラピド市にいた時、警察に逮捕されてますね?
12 出ていた時、・・・・・推測でものを言わないで欲しい
12 A.はい。
13 のですが、・・・・そこの会衆メンバーは、あなたの
13 Q.児童性的虐待の罪ですか?
14 児童性的虐待の前歴を知っていたのですか?
14 A.いいえ。
15 A.いいえ。
15 Q.ここに2004年5月4日付の逮捕状-ファイル番号
16 Q.そこの2人の長老はあなたの前歴を知っていた
16 1762がある。 これはアルヴィン・ハードに対する
17 のですね?
17 児童性的虐待の犯罪を起訴するものである。
18 A.そうです。 なぜなら、私が話したからです。
18 A.それは・・・ 私がサウス・ダコタからクラマト・フォー
19 Q.分かった。 しかし、その情報が会衆の他の
19 ルに移った後の事だ。 私は収監された。
20 メンバーに伝えられたか否か、一体何が行なわれた
20 逮捕状が出されて、私はクラナト郡の刑務所に入
21 のかについて、あなたは知らないということですね?
21 った。
22
22
23
23
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41 24
43
1 A.その通りです。
1 Q.あなたはサウス・ダコタで逮捕されたのでは?
2 Q.そして、あなたが彼らに話したか、もしくは、マーク・
2 A.飲酒運転の罪でだ。
3 ダールとアルタモント会衆は知っていた。 なぜなら、
3 Q.では、ここにある児童性的虐待の罪を告発する
4 彼は、サウス・ダコタの会衆から、あなたが児童性的
4 逮捕状は何だ?
5 虐待の前歴があることの情報を得ていたからという
5 A.それは、1998年に、ある少年に対して性的虐待
6 ことですね?
6 を犯した時のものだ。 私はすでにクラマト・フォール
7 A.そうです。 7 に移っていた。 警察は逃亡者用の逮捕状を出した。
8 Q.あなたは長老マーク・ダールと名前を覚えていな
8 そして逮捕されたが、司法取引が与えられた。
9 いもう一人の長老は、アルタモントの会衆の他のメン
9 つまり、75ヶ月の猶予が与えられて、何もなければ
10 バーにあなたの前歴についての情報を伝えたかどう
10 自由になるということであった。 そしてその通りになった。
11 か知っていますか?
11 Q.この点を明確にしたい。 あなたは、サウス・ダコタ
12 A.そんなことは必要ないのでは、その人を監視して
12 州で、児童性的虐待の容疑では逮捕されたことは、
13 いればいいことではないですか。
13 絶対にないか?
14 Q.そんなことを聞いているのではない。
14 A.ない。
15 私が知りたいのは、あなたが集会に出席していた時、
15 Q.確かですか?
16 あなたの児童性的虐待の前歴について、出席メン
16 A.サウス・ダコタにいた時はない。
17 バーに公表されたか、あるいはあなたが出席してい
17 Q.分かった。 次に、スーザンビルの話に戻ろう。
18 ない時に、公表、あるいは通知されたかどうかという
18 あなたは、姪と甥と一緒に、スーザンビルに住んで
19 事だ。
19 いた時、会衆で何らかの責任ある地位にいたことは
20 A.知らない。
20 ありましたか?
21 Q.それでは、スーザンビルでの話に移ろう。
21
22 私は古い順番に、話をするが、あなたがスーザンビル
22
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P41~P44
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1 A.いいえ。
1 A.デニス・トンプソンです。
2006年2月17日
2 Q.集会にはいつも出席していましたか?
2 Q.デニス・コンプトン?
3 A.はい。
3 A.トンプソンです。
4 Q.今までに、児童性的虐待の容疑で逮捕されたこと
4 Q.トンプソン。 デニス・トンプソンはあなたが小児
5 はありますか?
5 性愛者であることを知っていましたか?
6 A.いいえ。
6 A.その通りです。 なぜなら、彼はその件で審理委員会
7 Q.しかし、あなたは今まで、子供に対して性的な虐
7 取り仕切ったからです。
8 待を犯してきましたね?
8 Q.それは、ハーマンの子供達の件についてで
9 A.はい。
9 すか?
10 Q.分かった。 では、今までにスーザンビル会衆の
10 A.いいえ。 それは、パラダイスの子供達、つまり
11 長老に対して、自分は小児性愛者であることを告げ
11 カルフォルニア州オロビールの。
12 たことはありますか?
12 Q.オロビール?
13 A.いいえ。
13 A.つまり、私はその頃、オロビールに住んでいて。
14 Q.なぜ?
14 その後、オロビールからパラダイスに引越して、
15 A.その当時は必要がなかった。
15 だからパラダイスにいた時に私は審理委員会に
16 Q.なぜ、必要ではなかったのか?
16 呼ばれて出席したのです。
17 A.えっと。 1997年以前に与えられた情報では、
17 Q.その話は又、いずれ話すとして、今はスーザン
18 必要なかった・・・つまり、自分のいる会衆において
18 ビルの時の話を整理したい。
19 面倒を見る・・・・・
19 だから、デニス・トンプソンはこの年1年間、スーザン
20 Q.つまり、スーザンビル会衆の長老達は、すでに
20 ビルに来ていて、あなたもいて、そこの会衆で教え
21 知っていたということを言いたいのか?
21 ていたということ?
22
22 A.そうです。
23
23 Q.彼は、あなたがいることを知っていた。
24
45 24 A.そうです。 47 1 A.実際にはそうではなかったと思う。 彼らが知って
1 Q.彼は、パラダイスにおけるあなたとの経験につい
2 いたかどうか、分からない。
2 て、スーザンビルの他の長老の誰かに話したかどう
3 Q.あなたは・・・
3 か、知っていますか?
4 A.カルフォルニア州パラダイスにおいて開かれた
4 A.いいえ、知りません。 ただ、彼が当時の統括監督
5 審理委員会に出ていた一人の長老を除いて・・・
5 であったグレン・ストラハン氏と話しをしていたのは 6 それは、私がまだ結婚していた時であるが、その一人
6 知っている。
7 の長老が他の長老達に伝えたかも知れないが、・・・
7 Q.もう一度、名前を言って下さい。
8 Q.分かった。 その長老の一人は・・・・つまり、我々
8 A.グレン・ストラハン。 彼はまだその会衆にいるか
9 は時を遡って、時系列を整理する目的を持っている。
9 どうかは知りませんが。
10 1970年代の時代に遡って整理してみると。
10 Q.グレン・ストラハン氏はあなたがスーザンビルにい
11 あなたがスーザンビルにいた当時、そこの長老の一
11 た1年間、統括監督であったということですか?
12 人は、以前はパラダイスにいたということか?
12 A.そうです。
13 A.彼はパラダイスにいた。 そしてスーザンビルの
13 Q.あなたがスーザンビルにいた間に、あなたが言って
14 会衆に移り、聖書を教えていた。 だから彼は地元
14 いる開拓者カードに関して、言及した人はその会衆
15 の監督にこの件を話していると思う。
15 に誰かいましたか?
16 はっきりとは分からないが。
16 A.私の知る限りいません。
17 Q.結構だ。 そのパラダイスから来た長老は、誰で
17 Q.あなたの理解によれば、この開拓者カードは、
18 すか?
18 以前、属していた会衆から送られてくる? ですね?
19
19 A.その通り。
20
20 Q.それで、スーザンビルの前にいた会衆はどこ?
21
21 A.カルフォルニア州パラダイスです。 思い出したの
22
22 ですが・・・・・
23
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P45~P48
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
2006年2月17日
1 そのカードについて思い出した。 カードは、野外奉仕 1 Q.1988年。
2 の監督のところに行ったことを思い出した。
2 A.ええ。 しかし私は19・・・には・・・、1988年かも
3 新しい会衆に移った場合、元の会衆はそのカードを
3 知れない。 1990年に私はパラダイスにいたから・・
4 送ることになっていて、送ったはずである。
4 だから・・
5 それは、本人が持参することはめったになくて、別に
5 Q..結構です。 だから1988年には、あなたはパラダ
6 後から郵送される。 だから、私が新しい会衆の中
6 イスに住んでいて、そこの王国会館に出席していた。
7 に入っても、彼らは私の行いを知っているはずだ。
7 これでいいですか?
8 私の思い出す限り、こういうことだ。
8 A.はい。
9 Q.では、あなたがパラダイスからスーザンビルに移
9 Q.あなたは現在、働いていますか?
10 って、スーザンビル会衆に出席するようになった時、
10 A.はい。
11 あなたは、パラダイス会衆に電話するなりして、今は
11 Q.パラダイスにいた時は、どこで働いていましたか?
12 スーザンビル会衆に出席するようになったと連絡し
12 A.カルフォリニア州、オロビールにあるルイジアナ・
13 ましたか? そのような方法を取るということですか?
13 パシフィックで働いていました。
14 A.いいえ。 彼らは私がどこか他へ行くことは気がついて 14 Q.では、あなたはスーザンビルに引越すまで、パラ
15 いた。 そして私自身も、その当時は、どこへ行くか
15 ダイスに続けて住んでいたのですか?
16 はっきりしていなかった。
16 A.いいえ。 パラダイスの前にはハゼル、そしてカル
17 Q.それを知りたかったのだ。 パラダイス会衆の人達
17 フォルニア州、チコにも住んでいました。
18 はっきりしていなかった。どのようにして、あなたが
18 Q.そして、あなたはパラダイスからスーザンビルに
19 どこに行くのか知ることになるのか?
19 引越した。
20 A.野外奉仕監督が、手紙を書くか電話をして、私の
20 A.その通りです。
21 開拓者カードを新しい会衆に送るからです。
21 Q.そこで、私が知りたいのは、あなたがパラダイスに
22
22 住んでいたすべての期間に関してである。
23
23
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51
1 Q.しかし、あなたがどこに行ったかを知らせる必要が
1 A.はい。
2 あるでしょう?
2 Q.別の言い方で質問しますが、あなたは1988年に
3 A.ええ。
3 パラダイスに住むようになってから、1991年にスーザ
4 Q.あなたは、スーザンビル会衆に、自分はパラダイ
4 ンビルに移るまでの3年間、継続的にパラダイスに
5 ス会衆から来たと言って、彼らがパラダイス会衆から
5 住んでいましたか?
6 情報を得るか、又はあなたがパラダイス会衆に連絡
6 A.その通り。
7 して、スーザンビルにカードを送ってもらうかどちらか
7 Q.よろしい。 では、あなたがパラダイスに住んでい
8 ではないですか?
8 た時、会衆の長老に、あなたが児童性的虐待の
9 A.ええ、野外奉仕の監督と話をしました。 会衆の
9 前歴があることを話した。 それで正しいですか?
10 メンバーとなった時、最初に開拓者カードを持たな
10 A.オロビール会衆の子供達を性的に虐待したと
11 ればならないから、会衆を移った場合も、元の会衆
11 いうことをです。
12 は、新しい会衆の野外奉仕監督に電話するか、手
12 Q.よろしい、オロビールで。 しかし、児童性的虐待
13 紙を書いて、開拓者カードを送ることになる。
13 を告白した。 いいですね?
14 Q.パラダイス会衆には何年いましたか?
14 A.はい。
15 A.詳しくは思い出せません。(少し沈黙)
15 Q.その告白は審理委員会においてでしたか?
16 Q.では、私から言いましょう。 あなたの妻ハゼル
16 A.告白した時のことですか?
17 から聞いたところ、あなたは1988年頃から、パラダイ
17 Q.そうです。
18 に住んでいて、スーザンビルに移るまでそこにいた。
18 A.いいえ。 2人の長老がいました。 私が告白した
19 それで正しいですか?
19 時、長老達は記録を取って持っていった。 その後
20 A.いいえ。 1980年には私はパラダイスにいた。
20 私は審理委員会に出席した。
21
21 Q.よろしい。 最初、2人の長老に、審理委員会の
22
22 の席以外で話したということですか?
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P49~P52
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
1 A.はい、そうです。
2006年2月17日
1 A.その通りです。 私は自分自身で両親の所に
2 Q.そして彼等長老が審理委員会を開いて、あなた
2 行って、伝えた。 私は、両親が警察を呼ぶならそ
3 は、その席上、再度、自白をしたということですか?
3 の場で待っているからと伝えた。
4 A.はい。
4 Q.それは私の質問の答えになっていない。
5 Q.審理委員会が開かれる前に、あなたが話した長老
5 ハードさん。 もう一度言います。
6 は、どなたですか?
6 あなたが個人的非難を受けた時、その審理委員会
7 A.顔は覚えていますが、名前は覚えていません。
7 に両親が出席していなくて、あなたと3人の長老だけ
8 しかし審理委員会に出席していた長老は覚えています。 8 がその場に居た場合、あなたの理解では、長老は
9 Q.どなたですか?
9 両親のところへ行って、伝える必要はないという
10 A.一人は、デニス・トンプソンです。 因みに、彼は
10 ことですか?
11 私が、スーザンビルにおいて話した相手でもあります。
11 A.彼らは両親の所に行った。 つまり、両親に伝えた。
12 Q.他に覚えていませんか? 審理委員会に出席
12 個人的非難の問題としては、審理委員会が開かれ、
13 していた長老のファースト・ネームでも?
13 私が出席して、両親も出席するよう招かれたが、
14 A.いいえ、覚えていません。 思い出せないのです。
14 誰も出席しなかった。
15 Q.あなたが審理委員会の前に話した2人の長老は
15 さらに、両親はこの後6年間の間であれば、この
16 2人とも、あるいはどちらかが、審理委員会にも出席
16 件について何らかの行動を起すことはできると伝え
17 していましたか?
17 られている。
18 A.一人が出席していました。 その方は年配の方
18 Q.そうしたら、両親にはすでに知っていて、且つ、
19 でした。
19 あなたが審理委員会で話した内容も知っている
20
20 ということですか?
21
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23
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1 Q.それであなたがオロビールで児童性的虐待を
1 A.当然です。
2 犯したことを自白した結果、どんなことが行なわれた
2 Q.分かった。 では、性的虐待の被害にあったのは
3 のですか?
3 4人の少女でしたか?
4 A.私は、個人的に非難されて、個人的に非難され・・
4 A.少年1人と少女3人です。
5 それ以上詳しいことは、あなたの方から質問して
5 Q.少年1人と少女3人?
6 下さい。
6 A.はい。
7 Q.そうしよう。
7 Q.彼らの名前を覚えていますか?
8 A.OK
8 A.覚えていません。
9 Q.先ず、最初にエホバの証人の宗教において、
9 Q.名前を、ラスト・ネームを覚えていませんか?
10 個人的非難とは何か、言ってください。
10 A.ベルモントが少年の名前、ラスト・ネームです。
11 A.個人的非難とは、内部的に行なわれるもので、
11 ナタンがファースト・ネームです。 ナタン・ベルモント。
12 発表されることはない。 しかし公の非難は発表
12 Q.少年の名前は?
13 される。 もし周りに人が居て、この人達が犯された
13 A.ナタン・ベルモント
14 罪のことを知っている状況である場合、そして被害
14 Q.ナタン・ベルモント。 そして少女達は同じ家族
15 に会った子供達の両親もそこに招かれた場合など。
15 でしたか?
16 このような場合ですと公の非難となるでしょう。
16 A.いいえ。 別です。
17 今回の場合、誰もいなかったことから、個人的非難
17 Q.彼らのラスト・ネームは?
18 となりました。
18 A.覚えていません。
19 Q.あなたの理解によれば、あなたの自白は、被害者
19 Q.私が名前を言うので、思い出して下さい。 20 の両親には伝える必要はないということですか?
20 マリアという名前の少女はいましたか?
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P53~P56
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
2006年2月17日
1 A.いいえ。
1 Q.推測で言って欲しくないのだが。
2 Q.少女の一人はラスト・ネームがヘルマンでしたか?
2 A.彼女は、その問題に向合いたくなかったのです。
3 A.その子は、レッド・ブラフ会衆でした。
3 Q.彼女は、以前にその問題にぶつかったことが
4 Q.私はオロビール会衆についてだけ、言います。
4 あるのではないですか? 5 A.OK
5 A.そうです。
6 Q.ちょっと、待って下さい。(少しの間、沈黙)
6 Q.そして、あなたの奥さんは、又、あなたが児童性
7 マリア・サッコールという少女を相手にしたことは
7 的虐待を起したことを知った。
8 ありましたか? S-a-c-k-l-lです。
8 A.ええ。
9 A.覚えが無い。 いいえ、違います。
9 Q.そして、あなたと別れた。
10 Q.ロザンヌ・ヒーザー、ナタリー・ロザンヌ・ヒーザーと
10 A.そうです。
11 ナタリー・ヘルマンいう少女を相手にしたことはあり
11 Q.奥さんは、どこで・
12 ますか?
12 A.すいません。 その時は、妻は別れていません。
13 A.ある時、不適切に体に触ったことがあります。
13 妻と別れる前には、この件については明かしていま
14 Q.3人とも?
14 せん。 そして妻はサクラメントへ行った。
15 A.はい、3人とも。
15 Q.奥さんはあなたと別れてからどこに行ったのです?
16 Q.OK ではモナ・マッキントシュは?
16 A.カルフォルニア州のチコです。
17 A.彼女は私を非難したが、私はやっていない。
17 Q.奥さんはどこに住んでいたか知っていますか?
18 彼女は、私の前妻の妹だ。
18 A.覚えています。 アパートにいて、そして私が
19 Q.ショーン・マッキントシュは?
19 そこに行って、そして一緒に戻った。 だから・・・
20 A.やった。
20 Q.奥さんはチコにアパートを見つけて、パラダイス
21
21 のあなたの家から、そこに引越した?
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1 Q.ヴィッキー・キャロルは?
1 A.はい。
2 A.やった。
2 Q.奥さんはあなたとよりを戻すまでの間、チコには
3 Q.今日、あなたはここに出席したが、被害者の名前
3 どのくらい住んでいましたか?
4 を覚えていないという。 私はその名前をつかんで
4 A.実際のところ、妻は・・・確か、レッド・ブラフに戻
5 いる。 私は、これに時間を多く咲く事はできない。
5 った。 いや・・・それは私達が住んでいた所で・・・
6 ナタン・ベルモントの他にオロンビール会衆の
6 私は、すべてのことを思い出そうとしていますので、
7 被害者の子供の名前を言ってください。
7 それをあなた方にお伝えしたいと・・・
8 A.母親の名前がパットであった子供が居たが、ラスト
8 妻とは、パラダイスに居た時、2回別れています。
9 ネームを思い出せない。 サッコールだったかも
9 最初の時は、妻はサクラメントに行った。 そして
10 しれない。 それがさっき言われた・・
10 私が行って戻った。
11 Q.そうだ。 11 妻がサクラメントに居た時、別件の児童性的虐待に
12 A.そして、彼女の子供の名前が思い出せないが。
12 いてか、もしくはオロビールでの件について告白
13 私が不適切に体に触った女の子は2歳だったから。
13 した。
14 Q.結果的として・・・別の角度から質問しよう。
14 Q.あなたは、オロビールでの児童性的虐待の件を
15 あなたがパラダイスに住んでいた時に、奥さんの
15 告白したのが何年だったか覚えていますか?
16 ハゼルと離婚したのですか?
16 A.カルフォルニア州、パラダイスに引越したすぐ後
17 A.そうです。
17 の事だったと思います。
18 Q.理由は何ですか? 彼女の方から言い出したの
18 Q.1988年頃ではないですか?
19 ですか?
19 A.そうです。 私達がオロビールからパラダイスに
20 A.そうです。
20 引越したから。 はっきりしました。
21 Q.彼女の方から言い出した理由は何ですか?
21 私達がオロビールからパラダイスに引越して、妻が
22 A.私が思い出す限りでは、私側の問題のためである
22 パラダイスに来て、初めて離れて行った。
23 と思います。
23
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P57~P60
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
2006年2月17日
1 そして私達はパラダイスに戻った。 そして1990年
1 覚えていないので、よく分かりません。
2 頃に、妻は又、離れていった。
2 Q.OK あなたが個人的非難を受けたことは、開拓
3 Q.なぜ、オロビールでの4人の子供の性的虐待に
3 者カードに書かれても、何の理由で非難されたか
4 ついて、告白したのですか?
4 については必ずしも書かれることはないということ
5 A.良心の問題です。 聖書に基く良心、 良心。
5 ですか?
6 私は、このような行為から、離れようともがいていた。
6 A.分かりません。
7 Q.だから、あなたは長老に話そうと決断した。
7 Q.では、非難の公表の問題ですが、個人的非難
8 A.ええ、そうしました。
8 の意味は、審理委員会に出席した長老と関係者
9 Q.誰かがあなたを非難したからではないと?
9 限りとして外には漏らさないということですか?
10 A.そうです。 誰かに非難されたからではありません。
10
11 Q.被害者の子供達の両親も含めてか?
11 シュナック氏:その質問の仕方について異議があります。
12 A.そうです。
12 その質問は彼の証言を歪めることになります。
13 Q.あなたは、両親のところへ行って、話したと言っ
13 あなたが答えて下さい。
14 ったが?
14 証人:質問を言い換えて下さい。
15 A.そうしました。 会えなかった方がお一人いました
15 ノーレン氏:了解
16 が後で電話しました。
16 Q.(ノーレン氏)個人的非難とは、あなたが説明した
17 Q.いつ、あなたは、パラダイス会衆で個人的非難を
17 ように、この席で長老との間で話されたことについて
18 受けましたか? そしてその非難の後も、王国会館
18 は、秘密が守られるという意味ですか?
19 の集会に出席することは拒まれなかったのですか?
19 A.その通りです。
20 A.はい。 拒まれませんでした。
20 Q.そして、会衆にも伝えられることはないということ。
21
21 確かですね?
22
22
23
23
24
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63
1 Q.個人的非難の場合は、会衆の他のメンバーは、
1 A.その通りです。
2 何が起きたのか知ることはないということですね?
2 Q.他の長老にも伝えられないということですか?
3 A.その通りです。
3 A.他の長老は、個人的非難があったということは
4 Q.本当にそうですか?
4 知り得ると思います。
5 A.はい。 5 Q.しかし、それ以上のこと、その理由については
6 Q.あなたの知る限り、会衆の他のメンバーは、あなた
6 誰も知らないということですね?
7 が後で電話しました。個人的非難を受けたことに
7 A.そうです。
8 ついて、一切知らないと、確かですか?
8 Q.従って、我々が話している開拓者カードには、
9 A.はい、彼らは知らないです。
9 個人的非難についての個別の情報は含まれて
10 Q.そして、あなたは1991年にサザーンビルに引越す
10 いることになりますか?
11 まで、その会衆にいて集会にも出席していた。
11 A.私の考えでは、どのくらいの期間のものが有効
12 確かですか?
12 とされるかに寄ると思います。 もし、過去数年間
13 A.はい。 ただし、パラダイスの中では住む所を変え
13 の情報だけなら・・・よく分かりません。
14 ましたが。
14 Q.OK
15 Q.あなたは、今日、この席にいて、サザーンビルに
15 ノーレン氏:少し休憩しないか?
16 送られたあなたの開拓者カードの中に、あなたが
16 ビデオ撮影者:スイッチを切ります。
17 パラダイスで児童性的虐待について告白したと
17
18 書かれていたか、どうか知りませんか?
18 ビデオ撮影者:スイッチを入れます。
19 A.まったく分かりません。多分、書かれていない。
19
20 Q.では、あなたの開拓者カードには、パラダイスで
20
21 あなたが個人的非難を受けたことが書かれているか
21
22 どうか、知っていますか?
22
23 A.多分、書かれている。でもよく分かりません。
23
24 思い出せないので。
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(休憩)
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アルヴィン・ハードの件ーブリッジ&アソシエイツ法律事務所(800)-358-2345,ノーレン(541)-276-9491
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P61~P64
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
アルヴィン・ブランチャード・ハード
2006年2月17日
1 Q.(ノーレン氏)ハードさん、あなたの以前の奥さん
1 A.そうです。
2 によれば、あなたは1985年からオロンビールに
2 Q.ルイジアナ・パシフィックでは何をしていましたか?
3 住んでいたそうですね?
3 A.機械のチェーンを引き、製品の等級を付ける仕事
4 A.そうです。
4 です。
5 Q.あなたは、1988年にパラダイスに引越すまで、
5 Q.パラダイスに居た時と同じ仕事ですか?
6 1985年からオロビールに続けて住んでいましたか?
6 A.はい。
7 A.そうです。
7 Q.あなたはオロビールの会衆で、責任者の地位に
8 Q.あなたは、オロビールに住んでいた間、エホバの
8 ありましたか?
9 証人の会衆に属していましたか?
9 A.いいえ。
10 A.はい。
10 Q.あなたが、オロビールで児童に対して性的虐待
11 Q.では、その会衆の名前を覚えていますか?
11 を始めたのはいつですか?
12 A.いいえ、覚えていません。
12 A.数ヵ月後・・・・・私の思い出せる限りでは、私が
13 Q.通りの名前とか場所とか覚えていませんか?
13 集会に出席するのを止めてから1ヶ月かそこらの
14 A.どちらも覚えていません。
14 事ですが、何時かははっきり思い出せません。
15 Q.集会にはいつも出席していましたか?
15 Q.この子供達とはどのようにして知るようになった
16 A.しばらくの間はそうです。
16 のですか?
17 Q.オロビールでは、どの位の期間、定例的に集会
17 A.私の娘が定期開拓者であったので、子供達が
18 に出席していましたか?
18 私の家に連れて来られたので・・
19 A.多分、8ヶ月から1年ぐらいの間です。
19 Q.ということは、子供達への性的虐待はあなたの
20
20 自宅で行なわれたということですか?
21
21 A.はい。
22
22 Q.それは子供達が、あなたの娘に会いに来ている間
23
23 に行なわれたという事ですか?
24
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67
1 Q.今までこの質問をしなかったが、質問すべきだと
1 A.つまり、子供達は家に残されたということです。
2 思うので、お尋ねしますが。 あなたは集会に出席
2 娘は子供達の母親と一緒に野外奉仕に出かける
3 していた時は、いつも奥さんと一緒でしたか?
3 ので。
4 A.ほとんどの場合、そうです。
4 Q.つまり、あなたは子供達のベビー・シッティングを
5 Q.奥さんはエホバの証人でしたか?
5 をしていたということですか?
6 A.そうです。
6 A.それはナタン一人だけです。 一回、ベツが居た
7 Q.少しの例外を除いて、あなたとあなたの奥さんは
7 と思います。
8 一緒に集会に出席していたということですね?
8 Q.えっと、被害者の子供は4人じゃ、ないですか?
9 A.ほとんどの場合、そうです。 娘も一緒でした。
9 A.3人です。
10 Q.ベツですか?
10 Q.分かった。 ナタンと2人の少女ですね。
11 A.そう、ベツです。
11 A.そうです。
12 Q.では、あなたがオロビールに住んでいた時、8ヶ月
12 Q.少女の名前は覚えていないのですね?
13 から1年を除いて、あなたは何故、集会に出席して
13 A.一人は覚えています。 あなたがパット・サッコール
14 いなかったのですか?
14 の名前を言われたので、少女の一人はパットの2歳の
15 A.時には、あなたでも、仕事や他の活動に忙殺され
15 娘だったと思います。 私は不適切にその少女の
16 て、忙しくて、出席できない場合があるでしょう。
16 体に触った。
17 Q.どこで働いていました?
17 Q.たった2歳?
18 A.私は、ルイジアナ・パシフィック*で働いていた。
18 A.そうです。
19 Q.あなたがパラダイスに住んでいた時と同じ職場
19 Q.あなたは、オロビールにいた時、この子供達の
20 ですね?
20 両親と争いになったことはありましたか?
21
21 A.いいえ。
22 *ルイジアナ・パシフィック
22 Q.両親は気が付かなかったということですか?
23 排出装置のメーカー
23
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P65~P68
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
7.被告側は
被告側は児童性的虐待を
児童性的虐待を届け出ず。
今まで見てきた様々な証拠から明らかなように、被告ものみの塔は、児童性的虐待の訴えがなされ
ると、いつも決まって、それを警察に届け出でることはしなかった。 しかし、1997 年 1 月 1 日付けで
カルフォルニア州刑法 11165・7(a)(32)の定めによって、エホバの証人達の何人かが強制届け出人
としてリスト・アップされた。
被告ものみの塔は、児童性的虐待の事件について共同訴訟として提訴されたことに対して異議申
立をし、これに対して原告側はそれぞれ反論の申立を行なったのであるが、その反論申立資料の
8-9 ページに、被告ものみの塔の弁解が書かれている。
それによると、被告ものみの塔は、カル
フォルニア州においては、1997 年以前には、児童性的虐待の訴えについて警察への届け出が義
務付けられていなかったというものである。
これは、6件の訴訟の内の5件についてなされたものである。(7件目の訴訟が 2006 年 10 月に共同
訴訟として受理されたが、2005 年 3 月になされたナパ郡の裁判所での共同訴訟には含まれていな
い) 原告側の弁護人は被告ものみの塔の論点を以下のように述べ、証拠提出をしている。
被告ものみの塔がカルフォルニア州刑法 11164 に従って届け出を求められた唯一の事例は
シェーン・ペンスの代理人であるダニエル・ウエストの事例である。
残る他の事例において
、被告ものみの塔は児童に対する性的虐待について警察当局に届出ていなかった。
これは重大なる過失である。
ものみの塔の組織は、保護を任された子供達を守るため
何らかの行動を起すことができたのに、子供達の保護を最重要な問題として行動し
なかった。 代わりに、児童性愛者を保護する方を選んだ。 原告は被告ものみの塔
の組織が子供達を性的虐待の被害から守らなかったばかりでなく、警察に届出なかったの
は管理上の重大なる過失責任であると申し立てた。
原告は、被告ものみの塔のような分別をわきまえた慎重な組織は、児童性愛者が組織内に
いて、子供達を性的に虐待している事実を原告と、原告の家族及び警察当局に通知すべき
であったと申立てている。※20
※20 被告ものみの塔がすべての共同訴訟を取り消すよう求めた申立に対して、原告側の
異議申立が 2005 年 3 月 15 日に受理されたが、その異議申立の P9 を参照されたい。
本件、シェーン・ペンスの代理としてダニエル・ウエストの件について申立てられている。
シェーンは 1997 年 1 月 1 日以降に、加害者によって、性的虐待を受けた。
1997 年 1 月 1 日以降、刑法 11165.7(a)(32)の定めに従って、組織の長老達は、届出義務
者としてリスト・アップされた。 シェーンの申立によれば、彼は 1992 年頃から 1997 年までの
間に、ティモシー・シルヴァによって性的な虐待を受けた。(11-26,27 のウエストの修正陳述
を参照) シェーンは又、被告ものみの塔は、シルヴァが責任ある地位についてから、その立
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
場を利用して、面倒を任された子供達を性的に虐待していた具体的な事実を、少なくとも、
1987 年から知っていたと主張している。(11-22,27 のウエストの修正陳述を参照)
カルフォルニア州刑法 11164-児童性的虐待と届け出義務に関する法律が、1997 年 1 月
1 日に施行されて、聖職者(長老)は児童性的虐待の疑いのある場合は警察に届出
ることが義務付けられた。 シェーンによれば、被告ものみの塔は、彼が性的虐待を受ける
前も、受けた後も、組織上の代理人、エホバの証人シルヴァの不法行為、性的虐待につい
て、警察当局に届出ていないと申立てている。(1-58 ウエストの修正陳述を参照)
シェーンは、刑法 11164 が施行された後に、性的虐待を受けており、被告ものみの塔は、
法律に基く届出義務があるにもかかわらず、警察当局に届出なかった。
被告は、法律上
の義務を確認することをせず、シェーンが虐待され続ける状況を許してしまった。※21
※21 被告ものみの塔がすべての共同訴訟を取り消すよう求めた申立に対して、原告側の
異議申立が 2005 年 3 月 15 日に受理されたが、その反対申立の P8-9 を参照された
い。
確かに、被告は 1997 年以前には、法律上の義務がなく、児童に対する性的虐待の訴えについて
警察に届けていなかったと陳述している。 しかしながら、被告は法律改正後においても、逃げられ
る場合は、引続き警察に届けることはしなかった。 被告ものみの塔およびエホバの証人の宗教団
体が、一連の子供に対する性的虐待事件を届出なかった背景にある彼らの理屈は、いつも“神の
名(エホバ)とその組織”が非難されないことが基本であって、必ずしも、児童性愛者を守るためで
はないのである。
ただしいくつか例外はあるが。
“非難されないように”ということの本当の意
味は何であろうか?
エホバの証人は、信者を増やすために、彼等は本当のクリスチャン愛がある兄弟姉妹としてのグル
ープを維持している;そしてエホバの証人はその道徳観においても価値観においても他の宗教の
信者よりも優れている。
信じている。
信者達は、エホバの証人の信仰は、より良い夫、妻、子供を造り上げると
よって、否定的な評判は間違いなく、注意深く築きあげてきたイメージを汚し、一般
の人達がエホバの証人になるのを妨げることになる。
“エホバの証人”のような狭量の宗教は、
“世間からの注視”に対して閉鎖的なコミュニティーであって、彼等自身がこの世に対して演じてい
るものと異なる姿を知られたくないのである。 彼らは、丁度、誤った忠実の概念によって家庭内の
秘密を守ろうとする身体障害者を持つ家族のように、閉ざされたドアーの奥で何が起きているのか
を知られたくないのである。
エホバの証人が児童性的虐待を警察に届けないもう一つの理由は、エホバの証人でない方には
理解できないであろうが、エホバの証人にとって、児童性的虐待は、犯罪ではなくて“罪”として受
けとめられていたのである:児童性的虐待を犯した男は、罪人ではあるが、犯罪者ではないのであ
74
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
る。 そして罪人に対してどのように対処するかも、組織の規則によって定められているのである。
もっとも、この問題については、最近の否定的な評判によって、組織の態度は変わってきたのであ
るが。
エホバの証人の規則について言うならば、ものみの塔の組織においては著名な故リチャ
ード・アブラハムソンが、1994 年 11 月 26 日に王国宣教学校において長老達に次のように教えたの
である。 “どんな悪行に対する容疑についても、2 人の証人の原則によって裁く必要がある。 一
方、実態が明らかな児童性的虐待のような場合は、会衆内の他の審理上の悪行容疑と同じように
取り扱われるであろう。”
これは、明らかに、児童性的虐待の場合、警察当局に届けることが排
除されている。
エホバの証人の組織内で今まで隠されてきた児童性的虐待事件が明らかになった後においても、
この宗教組織の聖職者(つまり長老)は、警察への届出が義務付けられていない州においては、あ
えて届出なさいとは指示されていない。
現在に至るまで、組織は、警察への届出を勧めていな
いのが現状である。
しかしながら、1970 年代になって、ものみの塔の指導者は、非常に具体的な指針を出して、会衆の
長老達に、児童性的虐待の訴えがあった場合には、ものみの塔本部に報告することが義務付けら
れた。 さらに児童性的虐待の訴えの内、重要だと思われるものについては、会衆の長老はものみ
の塔本部の“法務部”に電話で、助言を求めなければならないとされた。 長老達は、証拠を集め、
証人尋問を行い、児童性的虐待者に対して判決をくだすよう求められた。 長老達は、調査の結果
を警察に明かすことを禁じられており、その代わりものみの塔本部の法務部に報告するよう義務付
けられた。
しかしながら、これらの方針は、世俗の警察の捜査に対する協力を妨げるように作られていた。
例えば、ある長老が、本部の法務部に電話をかけたとすると、先ずどこの州に住んでいるか質問さ
れた。 住んでいる州の法律が、警察に届けることを義務付けられている場合には、ものみの塔本
部は、相談をしてきた長老に対して次のようなやり方をするように勧めた。
“即ち、問題の会衆の長老が、外の公衆電話ボックスから匿名で、会衆のもう一人の長老に対して、
電話をかける。
その後、2人の長老は、何日の何時に、誰から誰へ電話があって、何の用件か
を記録に残し、2人の長老が署名し、法律に従って児童性的虐待の届けがなされた証拠として会
衆のファイルに残しなさいというものである。”
これは、司法当局が、これ以上、彼らに対する踏み込んだ捜査ができないようにするためになされ
たものであることは疑いない。 警察に届出るよう義務付けている州法には、聖職者がどのように報
告したらよいかについては書かれていないことから、この電話メモの目的は、危険な児童性的虐待
者の手から子供達を守ることではなく、ものみの塔の指導者を守ることにあることは明らかである。
2001 年に、NBC の番組“デート・ライン”がものみの塔の組織内における児童性的虐待事件につい
て特集番組を準備していた矢先、テネシー州、ファヤットビルにおいて一人のエホバの証人が児童
性的虐待の容疑で逮捕された。 被害者の子供達の一人は、私達の友人の子供であった。 この
事件は今から9年前に起きた。 私はその友人に電話をして聞いたところでは、彼女は最初に、長
75
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
老に届け出たとのことであった。
長老達は“私達の手に任してください”と言われたので、彼女は
そうしたそうである。 しかし9年後になって、テネシー州、ファヤットビルで、エホバの証人である犯
人が逮捕されたので、彼女は長老達に対して、自分の娘が被害にあった9年前に、警察に届出た
のかと問い質した。
回答によれば、長老の一人が、公衆電話ボックスから当局に電話するように
任されたので、他の長老はその通り届けられたものと思ったとのことであった。 私の友人は、何時
までたっても、警察から連絡がないので不思議に思ったが、長老達は正しく対処してくれているも
のとばかり思っていた。 しかし、他の子供が同じ犯人によって児童性的虐待に被害を受けるに至
って、勇気を奮い起こして警察に連絡したとのことであった。
私は、公衆電話ボックスから警察に届けると聞いて奇妙に思ったことを覚えている。 王国会館に
は電話がちゃんとあるのに。
話ボックスなのか?
長老達だって、自宅にはそれぞれ電話があるのに、何故、公衆電
しかし、カルフォルニア州の一連の裁判記録に中から、ものみの塔本部から
出された“児童性的虐待の電話メモ”を見つけるに至るまで、私は、それ以上、公衆電話ボックスの
件を考えていなかった。
この電話メモは、長老が児童性的虐待事件について報告するため、も
のみの塔本部の法務部に電話をかけた時に、法務部の担当者が記入し完成する仕組みになって
いる。 驚いた事に、公衆電話ボックスを使えと言う指示は、電話メモの様式の中にあって、州法に
よって警察への届出が義務付けられている州にある会衆の場合は、公衆電話ボックスを使いなさ
いという示唆がなされていたのである。
電話メモの様式による幾つかの質問事項の中に一つ極めて不適切な質問がある。 それは“何人
の長老が、被害者の過失によってか、又は自ら進んで、児童性的虐待に巻き込まれたと思うか?”
というものである。 この質問及び他の幾つかの質問は、いみじくも長老達がどの程度まで、調査を
行なうことを期待されていたかを明らかに示している。
原告側の弁護人は、被告ものみの塔から 1994 年まで実際に使われていた電話メモの白紙用紙4
枚を入手することができた。
彼らが本当に入手したかったのは、提訴している原告被害者の児
童性的虐待について記録された電話メモである。 しかし、被告ものみの塔の弁護人マリオ・F・モ
レノ氏は提出を拒んだ。
3.原告側の、ものみの塔法務部に関する事実認定申立 NO.3 に含まれる証拠 3 によれば、
電話メモには4つの様式がある。(それぞれ 1989 年版、1992,1993 年版、1993 年版)
それらには、すでにものみの塔ニューヨークによって“機密”とスタンプが押されていた。
被告ものみの塔は、これら電話メモ様式一つひとつを事実認定の過程の当初に提出し
た。 ものみの塔法務部の弁護士達は、1989 年から 1995 年までの間、会衆の長老から
組織内の児童性的虐待事件について法律上の助言を求める電話を受けるたびごとにこ
れらの様式の一つを使っていたのである。
これらの電話メモは、ものみの塔法務部の弁護士もしくはその監督下にある助手達が、
依頼人であるエホバの証人の会衆の長老達から、機密情報として、又、聖職者としての
76
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
特権上、知りえた情報を記録し、完成したのである。 記入が完了した電話メモは、もの
みの塔法務部の弁護士が、依頼人である会衆の長老に対し行なう法律上の助言及び、
長老に与える法律上の助言の書類のために活用していた。 よって、これら記入済み
電話メモにはどれも、ものみの塔法務部の弁護士が依頼人である長老達から得た機密
情報及び聖職者特権上の機密情報が記録されていることになる。
従って、この訴訟において、あるいは他の機会においても、これらの記入済み電話メモ
を開示することは、法務部の弁護士とその依頼人との間に交わされた機密情報、聖職者
機密情報を開示することになる。 加えて法務部弁護士が機密情報、聖職者機密情報の
要約を作成して開示する場合においても、同様に弁護士とその依頼人間の機密情報及
び聖職者機密情報を開示することになり得るし、又、弁護士の作品情報を開示する結果
を招くことになる。 ※22
※22 被告ものみの塔の弁護人マリオ・F・モレノ氏の宣誓証言- 原告側のものみの塔法
務部に対する PMK(最もよく知っている人物)による証言書提出申立に対する被
告側の反論
この被告側の宣誓証言は、2006 年 9 月 26 日に受理されている。
2006 年 10 月 16 日、レイモンド・ガダニュは、「(電話メモの)質問事項から編集された情報は、弁護
人の作品であって、知りえるものではない」として、被告側に有利な判断を下した。 この意味は、
記入済み電話メモは、弁護士―依頼人間の固有の情報として保護されるということである。
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アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
法務部 SRS000000090
児童性的虐待電話メモ
児童性的虐待電話メモ サービス_____
メモ
1.電話の日時:
2.電話の受け手:
3.電話の相手方と電話番号:
4.会衆の名称、都市、州:
厳秘
5.加害者の名前、年齢、会衆での地位:
6.被害者の名前、年齢、会衆での地位:
7.性的虐待の性格と程度について簡単に記入して下さい。
8.何時、性的虐待が起きましたか?
9.被害者は加害者と一緒の家にいましたか?
10.被害者を保護するためにどのような努力がなされていましたか?
11.当局に届けましたか? □はい □いいえ
12.届けた場合、その内容を報告して下さい。
13.この性的虐待について他に誰が知っていますか?
14.長老または会衆に警察から事情聴取のために連絡がありましたか? □はい □いいえ
15.与えられた指示
州法上届け出義務なしの州 □
長老は、______州児童性的虐待
州法上届け出義務ありの州 □
長老は、______州児童性的虐待届出法により、児童性的虐待
届出法により、児童性的虐待の訴えを届出でる の訴えを届ける義務がある。 長老は直接、加害者と話をして、自白
義務はない。 事実を知っている者が、届出
するつもりがあるかどうか確認し、その気が無い場合は、性的虐待の
るか、法的手続きを取るかは、個人の判断に 事実を知っている者に報告を求めなければならない。 もし誰も事実
よる。 ものみの塔本部の方針は秘密を守る を知る者がいない場合は、2人の長老がお互いに、公衆電話のような
ことである。 長老が警察から、召喚令状を
中立的な場所から、匿名で電話をすること。 電話をした日と時間、
受けたら先ず法務部に連絡すること。 電話の当事者双方の名前、関連事項について記録に残さねばなり 本部は、長老がこの件について、他の重大な
ません。 そしてこの記録は、2人の長老によって署名し、法律に
悪行と同じように取り扱っても異論はない。 に基いて児童性的虐待の届け出がなされた証拠として会衆の書類
長老は、児童性的虐待の記事(82年6月22日、 として残して下さい。 ものみの塔本部の方針は秘密を守ることである。 85年1月22日、86年12月22日、83年10月1日)
長老が、警察から召喚令状を受けたら、先ず法務部に連絡すること。 を参考に家族に適切な霊的助けを与えること。 本部は、長老がこの件について、他の重大な悪行と同じように取り扱
これ以上の性的虐待を防ぐため、積極的な
っても、異論はない。 長老は、目ざめよの児童性的虐待の記事
対策を取ること。 長老は他に被害者が出な
(82年6月22日、85年1月22日、86年12月22日、83年10月1日)
いように状況を注意深く見守ること。
を参考に、家族に適切な霊的助けを与えること。
16.その他の指示:
17.事後の経過についての指示:
裏面へ
1989年 78
WTNY00566
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
SRS000000092
担当部 法務 サービス
児童性的虐待電話メモ
児童性的虐待電話メモ
電話の日付:
電話の受け手:
厳秘
電話の相手方:
会衆の名称、都市、州
加害者の名前、年齢、会衆での地位:
被害者の名前、年齢、会衆での地位:
虐待の性質と程度について簡潔に記入して下さい:
与えられた指示:
事後の経緯:
1992年
WTNY 00568
79
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
法務部 SRS000000093
児童性的虐待の
児童性的虐待の電話メモ
電話メモ サービス_____
メモ
1.電話の日時:
2.電話の受け手:
3.電話の相手方と電話番号:
4.会衆の名称、都市、州:
厳秘
5.加害者の名前、年齢、会衆での地位:
6.被害者の名前、年齢、会衆での地位:
7.性的虐待の性格と程度について簡単に記入して下さい。
8.何時、性的虐待が起きましたか? □自白 □否定 □不明
9.被害者は加害者と一緒の家にいましたか?
10.被害者を保護するためにどのような努力がなされていましたか?
11.当局に届けましたか? □はい □いいえ
12.届けた場合、その内容を報告して下さい。
13.この性的虐待について他に誰が知っていますか?
14.長老または会衆に警察から事情聴取のために連絡がありましたか? □はい □いいえ
15.与えられた指示
州法上届け出義務なしの州 □
長老は、______州児童性的虐待届出
州法上届け出義務ありの州 □
長老は、______州児童性的虐待届出法により、児童性的虐待
法により、児童性的虐待の訴えを届出でる義務 の訴えを届出る義務がある。 長老は直接、加害者と話をして、自白
はない。 事実を知っている者が届出でるか、
するつもりがあるかどうかを確認し、その気が無い場合は、性的虐待の
法的手続を取るかは、個人の判断による。 の事実を知っている者に報告を求めなければならない。 もし誰も
ものみの塔本部の方針は秘密を守ることであり、 事実を知る者がいない場合は、2人の長老がお互いに、公衆電話の
長老は1989年7月1日の手紙をご覧下さい。 ような中立的な場所から、匿名で電話をすること。 電話をした日と
警察の捜査が入った場合、当事者に会衆を
時間、電話の当事者双方の名前、関連事項について記録に残さなけ
巻き込まないように勧める。 警察から召喚
ればなりません。 そしてこの記録は3人の長老によって署名し、法律
令状を受けたら、先ず法務部に連絡すること。 に基いて児童性的虐待の届出がなされた証拠として会衆の書類と
本部は、長老がこの件について他の重大な
して残して下さい。 ものみの塔本部の方針は秘密を守ることであり、
悪行と同じように取り扱っても異論はない。
長老は1989年7月1日の手紙をご覧下さい。 警察の捜査が入った
長老は1992年3月24日の手紙をよく参照して、 場合、当事者に会衆を巻き込まないように勧める。 警察から召還
児童性的虐待の記事を用いて、被害者家族
令状を受けたら、先ず法務部に連絡すること。 長老がこの件を他
に霊的な助けを与えなさい。(目ざめよ1993年
の重大な悪行と同じように取り扱っても、異論はない。 長老は
10月9日号) 被害者には、最大の配慮と
1992年3月23日の手紙をよく参照して、児童性的虐待の記事を
親切を持って扱うこと。 まだ子供の性的虐待
用いて、被害者家族に霊的な助けを与えなさい。(目ざめよ1993年
の被害者を容疑者と向合わすのは必要なこと
10月9日号) 被害者には、最大の配慮と親切を持って扱う事。
でしょうか? これ以上の性的虐待を防ぐ
まだ子供の性的虐待の被害者を容疑者と向合わすのは必要なこと
ため、積極的な対策を取ること。 でしょうか? これ以上の性的虐待を防ぐため、積極的な対策を
長老は他に被害者がでないように状況を注意
取ること。 長老は他に被害者がでないように状況を注意深く見守
深く見守ること。
ること。
16.その他の指示:
17.事後の経過についての指示
裏面へ
1993年 80
WTNY00569
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
SRS000000094
18.追記
厳秘
質問
1.長老はどんな対策を取りましたか?
2.長老は、法務部に電話する前、どの位の期間、この訴えを知っていましたか?
3.下記の手紙を読みましたか? はい いいえ
1989年7月1日 □ □
1993年3月23日 □ □
1993年2月3日 □ □
4.この容疑者は以前にも訴えがありましたか?
5.被害者の子供は、医者の診断を受けましたか?
6.この件を長老に訴えたのは誰ですか?
7.被害者の子供との話し合いはどこで行なわれたましたか?
8.長老は直接、被害者の子供と話しましたか?
9.何人の長老が、被害者に過失があったか、もしくは被害者は喜んで行為に及んだと感じましたか?
WTNY 00570
81
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
SRS000000095
児童性愛者プロフィール
児童性愛者プロフィール
弁護人-依頼人守秘事項
厳秘
法務部: サービス部: 1.記入日: 電話の受け手:
2.電話の相手方の氏名: 電話番号:
会衆名称: 都市、州:
3.容疑者氏名: 会衆内の地位:
会衆名称: バプテスマを受けた日:
誕生日: 年齢:
本人は長老、奉仕の僕又は開拓者として奉仕したことはありますか? □なし □有
有の場合、何時ですか? その時の地位は何でしたか?
容疑者と被害者との関係は何ですか?
4.被害者: 会衆内の地位:
会衆名称: 年齢:
5.報告者: 長老へ最初に報告した者:
報告者と被害者、又は容疑者との関係は?
6.長老は容疑者と話をしましたか? □いいえ □はい
どんな状況においてですか?
罪を認めましたか? 否定しましたか? □自白した。 □否定した。 □不明
7.性的虐待の性質、程度について簡潔に記入して下さい:
8.どんな性的虐待ですか?
9.何時、起きましたか?
10.現在、同じ家に住んでいますか? □いいえ □はい
11.同じ家に他に子供はいますか? 12.被害者を守る為にどんな努力がなされましたか?
13.警察当局に届けましたか? □いいえ □はい
届け出の詳細について記入して下さい:
14.誰が児童性的虐待について知っていますか?
15.長老に警察から連絡がありましたか?
どんな指示がありましたか: 法令全書を参照 16.その他の指示:
17.意見:
18.事後経過とフォローアップの日付:
1993年
WTNY00571
82
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
児童性的虐待を
児童性的虐待を届け出ない方針
ない方針
原告は、被告側に対して、エホバの証人の組織が児童性的虐待の告発について、そして 1970 年
から現在に至るまでの間における児童性的虐待の証拠について、どのように取り扱ったか、またそ
の方針について最もよく知っている者(PMK: Person Most Knowledgeable )の証言を要求した。
被告ものみの塔は、これに対してサービス部の代表であるギャリー・N・ブロー氏が応じた。 彼は
2005 年 11 月 15 日に、原告側の弁護人との間で以下の通り証言した。
児童性的虐待に関する
証言は以下の通り。
Q.しかし、あなたは前に、長老達は司法当局が行なうような尋問方法について訓練を受けて
いないと言ったではないか?
A. その通りです。
Q. 私の質問は、---長老以外の誰でもない---他でもない長老達が何をするよう期待され
ているかということだ。
単純な話で、なぜ長老は児童性的虐待の訴えを受けたら、直
ちに警察に電話して、調べてもらうようにしなかったのかということだ?
A. それは 1994 年以前においてでの話ですか?
Q. そうだ。
A. ええっと、場合によるのでは、多くの州では届けが義務付けられていなかったので。
長老団の立場としては、会衆内の個々人の面倒を見るということですから。 しかし、
その当時は、警察を呼ぶように個々人に指示していました。
Q. OK
A. そして家族や、それを知っていた人は、警察に対して保護を求めるために連絡していま
した。
Q. しかし 1994 年以前においては、そのような方針はなかった。 1994 年以降の方針が何
であるかは言っていない。
少なくとも、1994 年までは、児童性的虐待の訴えがあった
場合、長老達が警察を呼んで、調べるように依頼することは、エホバの証人の組織の方
針ではなかった。 ということですか?
A. そうです。 確かに方針はなかった。 しかし、それは会衆が子供を守るために何もしな
かったということではない。
確かに、会衆の人々には、警察に届けることを勧めては
いなかった。※23
※23 証拠2番、2006 年 9 月 15 日受理:「被告ものみの塔法務部に関して、最も知識のある
者(PMK)の証言請求申立」申立番号 3 に含まれている「ギャリー・N・ブローの証言抜
粋」P97~8, 2005 年 11 月 15 日
83
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
8.ものみの塔法務部
ものみの塔法務部はものみの
塔法務部はものみの塔
はものみの塔サービス部
サービス部の権益代表
ものみの塔法務部と弁護人-依頼人の関係にある米国内の様々な機関、例えば統治体、米国支
部委員会、米国内支部の各部門、カルフォルニア州を含む米国内のエホバの証人会衆、及びそ
の長老達との関係がどうなっているのか、ほとんど知られていない。
この状況から、法務部と他
の機関との間の連絡がどのようになされているかを知るのは、ほとんど不可能である。 ものみの塔
の弁護士マリオ・モレノは、判事に対して次のように説明している。
ものみの塔法務部はものみの塔ニューヨークの顧問弁護士であり、同様に傘下の組織や
企業の顧問弁護士としても機能している。 ものみの塔法務部は何人かの弁護士を抱えて
おり、一般的な又、法律上の相談に応じている。 ものみの塔法務部の依頼人は、米国内
の様々なエホバの証人の企業、統治体、米国支部委員会、ニューヨークにある米国支部の
各部、カルフォリニア州の会衆を含む米国内のエホバの証人、これら会衆の長老団等で
ある。
従って、ものみの塔法務部は、ものみの塔米国サービス部、会衆、会衆の長老達
と弁護人-依頼人の関係にある。 ものみの塔法務部は、米国ものみの塔サービス部、会衆
そしてその長老達との間に交わされる通信は、弁護人-依頼人関係およびその他、適用さ
れ得る法律上の権利に基いた秘密保持が適用されるものと考える。 会衆の長老として、
ものみの塔法務部の一般的な相談相手として、私は、米国ものみの塔サービス部及び、
会衆の長老がものみの塔法務部の弁護士と法律上の助言を得るために交わされた通信
は、弁護人-依頼人間の守秘義務によって、秘密保持の対象となると信じるものである:
法務部の弁護士達は、法務部に相談してくる長老達に対して、これらの通信は弁護人依頼人関係に基いて、機密保持されるべきであるとしばしば、念押してきた。※24
※24 2006 年 9 月 29 日受理された、マリオ・F・モレノ氏の被告ものみの塔を支持する証言
「ものみの塔法務部に関して PMK(最もよく知っている者)の証言及び証拠提出請求に
対する抗弁 P2」
上記の理由から、原告側弁護人は、被告ものみの塔ニューヨークの児童性的虐待を記録した電話
メモを、証拠として提出する裁判所命令を得ることができなかった。
私は、ものみの塔本部の著作部に所属していた 1991 年後半に聞いたある事を思い出した。
ものみの塔誌のある上級著者が、児童性的虐待の事件が明らかになった件について激昂していた
のであるが、その彼が私の上司となって、私に次のように話してくれた。
ものみの塔本部のサー
ビス部に送られる組織内の児童性的虐待事件に関する通信文は、すべて法務部に送られるとのこ
と。
彼によると、サービス部は、過去において、事柄を“素晴らしく”、めちゃめちゃにしてしまった
ので、統治体が介入して、児童性的虐待の訴えについては、すべて法務部に報告するように規則
が定められた。
当時、私はこれは素晴らしいアイデアであると考えていたが、しかし、私は今で
84
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
は、長老達もサービス部もものみの塔法務部の依頼人であることから、この取り決めによって、エホ
バの証人のメンバーは、ものみの塔に対して訴訟を起すことが困難になっており、この取り決めは
組織を守るために機能していることが分かった。
なぜなら、会衆の長老達とサービス部との間で
何が行なわれているのかを具体的に明らかにする資料は、普通なら、裁判所に証拠として提出さ
れるのであるが、この弁護人-依頼人守秘義務に阻まれて、提出されないからである。
又、逆に、この取り決めは、エホバの証人の組織内の児童性的虐待について、隠さなければならな
い秘密があることを、物語っている。
これは、被告ものみの塔が、16 人の被害者との間で、法廷
外の和解による解決を選んだことの理由と同じである。
ものみの塔の指導者達が、これら傷つい
たエホバの証人達の犠牲によって階級組織の主要メンバーを保護し、又、被害にあった証人の寄
付金によって、統治体をはじめとする指導者達が、“象牙の塔”で生きつづけているのは、何とも異
常な事態であると思う。
9.ものみの塔
ものみの塔の首席スポークスマン
首席スポークスマン J.R.ブラウン
J.R.ブラウン氏
ブラウン氏の証言
2005 年 9 月 15 日、被告ものみの塔の弁護人ロバート・J・シュナック氏は、ものみの塔聖書冊子教
会ニューヨーク・INC.の広報部の役員であった J. R. ブラウン氏の証言を求める原告側の要請に
基く裁判所からの通知を受け取った。
続いて、被告側は、J. R. ブラウン氏の証言は必要ないと
して裁判所からの命令に対して抗告を求めた。
2005 年 9 月 30 日に、被告側弁護人は、他の2つの説明書と共に、“J. R. ブラウンの証言”と題す
る以下の書類を裁判所に提出した。
私は、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC.広報部役員です。 私はすべてに
おいて法的行使能力があり、私の知りうる限りの情報、知識に基いて以下の通り、証言いた
します。
与えられた情報と私の信じることに基き申し上げます。 2002 年の 4 月か 5 月頃、ものみの
塔広報部は、英国 BBC 放送のベトサン・ポウイーズ氏からファックスによる質問状を受け取り
ました。
それによると、BBC はエホバの証人と児童性的虐待の問題についてのテレビ番
組を放送する計画であるとのことでした。
それには、カルフォルニア州の児童性的虐待に関する共同訴訟の件ついては触れていま
せんでした。
2002 年 5 月 9 日以前には、BBC パノラマのベトサン・ポウイーズ氏宛ての
回答書が用意されました。
私は広報部の役員であることから、回答書の手紙に署名する
よう求められ、そうしました。 しかしながら、私
私は、手紙の
手紙の主題にあった
主題にあったエホバ
証人が児童
にあったエホバの
エホバの証人が
性的虐待についてどう
性的虐待についてどう取
についてどう取り扱っているか、
っているか、個人的にまた
個人的にまた特別
にまた特別に
特別に知っているわけではなく、
っているわけではなく、又、
85
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
BBC のベトサン・
ベトサン・ポウイーズ氏
ポウイーズ氏の質問に
質問に答えるために、
えるために、個人的に
個人的に児童性的虐待について
児童性的虐待について調
について調
査をしたわけでもありません
をしたわけでもありません。
唯一の役割は
役割は、広報部役員として
広報部役員として回答書
署名をする
ありません。 私の唯一の
として回答書に
回答書に署名をする
ことだけでありました
ことだけでありました。
りました。
私は、現在、カルフォルニア州で提訴されている共同訴訟において、原告側が、私の証言
を求めていることを知っています。 私は、カルフォルニア州の共同訴訟について、訴えら
れている事実の一つでも知っているわけではありません。 又、私はカルフォルニア州共同
訴訟を担当している訳でもなく、監督しているわけでもなく、何も知らないのです。
私は、知らされている情報に基き、又、その情報が真実で正確であると信じたもの以外は
何ら述べていないことを、ニューヨーク州、及びカルフォルニア州の法律の下にここに証言
します。※25
※25 2005 年 9 月 30 日受理、J. R. ブラウンの証言請求申立に対する異議申立を支持
する J. R. ブラウンの証言
J.R. ブラウンが引用している内容を理解して頂くために、ブラウン氏が英国 BBC パノラマ放送の
ベトサン・ポウイーズ氏に対して出した回答書を次のページに掲げた。※26
記録のために言っておくが、私がものみの塔本部著作部に所属していた 1989 年から 1992 年まで
は、ブラウン氏が証言した“エホバ
エホバの
エホバの証人が
証人が児童性的虐待についてどう
児童性的虐待についてどう取
についてどう取り扱っているか、
っているか、個人的
にまた特別
にまた特別に
っているわけではなく という点について、ものみの塔本部ではおおっぴらに
特別に知っているわけではなく“
議論されていた。
雑誌“目ざめよ 1991 年 10 月 8 日号”には児童性的虐待について優れた記事が掲載されたが、
これが発行された後、ものみの塔本部は、数千もの手紙を受け取った。
これらの手紙の多くは、
当時、統治体メンバーのロイド・バリー氏が監督してした著作部にあった“読者との通信課”のスタッ
フから、“目ざめよ誌”の編集者ハリー・ペロヤン氏の下に届けられた。
“読者との通信課”は、私の所属していた著作部と同じ階の反対側にあった。 “読者との通信課”
では、多くの児童性的虐待に関する手紙が読まれ、内容によって対応が取られ、その後、記録保
管のためにスキャンされコンピュータに保存された。
当時、その課を担当していたのは、J. リチャード・ブラウン氏で、今から数年前には、ものみの塔
広報部の公式スポークスマンであった。 彼は 2005 年 9 月、つまり、この証言書を提出した時に
は、広報部の担当役員であった。
私が知っている限り、皆が彼を J. R.と呼んでいて、 “読者との
通信課”において8人の男性と 3,4 人の女性のスタッフを指揮していたのである。
私の知っている限り、“読者との通信課”の人達は、ものみの塔聖書冊子協会に宛てられた通信文
86
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
を呼んで、内容を検討し、回答する部署であった。
勿論、ものみの塔協会が、回答のために用
意できる資料は、その刊行物に限られていたのであるが。
の対応をしていた。
さらに J. R.のスタッフの幾人かは電話
彼らは電話で、ものみの塔の刊行物のどれに該当するかなど、教義上であ
るか否かの質問に関わらず、回答をしていた。
J. R.を含めて、“読者との通信課”のチーム・メンバーは、“目ざめよ誌”の記事に対する多くの反響
について間違いなく知っていた。
ものみの塔本部に15年以上働いていた2人のスタッフは、電
話でこのような問題、つまり児童性的虐待の被害者の後遺症である、抑圧された記憶、多重人格
障害、現在では解離性同一性障害とか、言われるそうだが、これらに立ち入るような問題を電話で
の相談に応じることを取りやめるように言われた。 この2人は、これらの問題に巻き込まれるなとい
う規則を厳格に守らなかったとの理由から、その職から外された。 この2人は、児童性的虐待の被
害者達の苦境に、非常に同情的であったのである。
私の知る限り、この2人は個人的な時間をさいて、この問題の様々な側面について勉強していたの
で、被害者に対して助言するのには、組織の中では一番適した立場に居たと言える。
このような助言をする仕事について、ほとんどの統治体メンバーが難色を示していた。
私はこの2人の方、マイケル
マイケル・
マイケル・St・
St・ジャンとリッキ
ジャン リッキ・
リッキ・ハトソンがものみの塔本部の閑職に追いやられた
ハトソン
理由の背景に実際、何が起きたのかについて詳しく知っている訳ではない。 しかし、J. R. ブラウ
ンは、間違いなく、すべての事情を知っているはずである。
私は、統治体のメンバーであるロイ
ド・バリー氏が、児童性的虐待の後遺症に苦しむ被害者に対する心理療法のようなものを止めるよ
うにと命令したにもかかわらず、この2人が従わなかったことが、異動の理由であることを知ってい
る。
私は、後日、ロイド・バリーから、これは統治体のあるメンバーからの圧力によるものであるこ
とを聞いた。
ハリー・ペロヤン氏は児童性的虐待の被害者からの手紙のほとんどを、私に見せてくれた。
はじめ、私はハリーがこれらの手紙をどのように手に入れたのか分からなかったが、後になって分
かってきた。
それは、彼が“読者との通信課”の中に人脈を造った後に、全幅の信頼を置いてい
た私を“読者との通信課”に送り込んで、これらの手紙のなかでも特にデリケートなもの、恐るべき内
容のものを取ってくるようにしたのである。
よう指示した。
ある時、ハリーは私に、J. R. ブラウンの事務所に行く
J. R. ブラウンは、私を見て、椅子から立ち上がって、部屋から出てきて、幾つか
の手紙を手渡した。 彼の部下の2人の女性は、私達が立っていた場所から数フィートしか離れて
いない場所に居たのであるが、彼女らは、仕事の手を休めて、私達が“目ざめよ誌”の児童性的虐
待の記事に対する驚くほどの多くの手紙が寄せられた事や、それらの異常な内容について交わし
た会話に、まったくその通りといった同感の表情を示したのであった。
ある時、私は J. R.のスタッフメンバーの一人から、フォルダーに入った1行間隔でタイプされた 23
87
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ページの手紙を受け取った。
この恐ろしい内容の手紙の差出人は、2人姉妹の一人で、彼女等
がまだよちよち歩きの頃から、2人が受けてきた性的虐待について書かれていた。
彼女の両親
は悪魔的アルコール中毒カルトとも言うべきエホバの証人であったが、排斥されていた。
もかかわらず彼女は成人してから、バプテスマを受けてエホバの証人になった。
それに
それは、私が今
まで聞いたこともないような、誠に卑劣極まりない扱いを受けた子供時代を生き延びてきたが、結婚
によって幸福と平安が得られたのであるが、それも長くは続かなかった。
あるきっかけによって、
恐ろしい感情の激昂によって、子供時代の恐るべき記憶を呼び覚まし、激しい精神分裂の症状を
引き起こしたのである。
彼女は多重人格障害と診断されてから、長老達が同情し、助けの手を
差し伸べてくれ、大きな助けとなった。
彼女は、特にものみの塔本部の“読者との通信課”の皆さ
んが電話相談に乗ってくれたことに特別の感謝を述べている。
彼は彼女に聖書による相談を勧
めて、彼女はそれによって、神の助けに全幅の信頼を置くようにすることを学んだと述べている。
又、別の時、彼女が“読者との通信課”に電話をかけたときは、同じ男性が応対して、彼女の話に
じっくり、耳を傾けて、彼女が信じている悪魔的悩みに寄り添ってくれた。
それは、“読者との
通信課”の助けに対して、心から感謝の意を表する特別な手紙であった。
しかし、彼女は、こ
の“読者との通信課”の人達が、上司によって左遷されたことを知る由もなかった。
J. R.ブラウン氏は、エホバの証人が通常、組織内の児童性的虐待事件をどう取り扱っていたか、
事態が明らかになってどのように事態が展開していたかを、知らないはずがない。
特に彼は
何年もの間、ものみの塔の公式スポークスマンであったし、その前は“読者との通信課”の役員で、
1991 年以降は児童性的虐待事件を取り扱っていたからである。
※26
(レター・ヘッド)
ものみの塔
聖書冊子協会
広報部
25 コロンビア・ハイツ、ブルックリン、ニューヨーク 11201-2483 USA
電話:(718) 560-5670
ファックス:718-560-5419
オリジナル ファックス送付済み
2002 年 5 月 9 日
ベトサン・ポウイーズ様
BBC パノラマ
親愛なるベトサン様,
88
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
2002 年 4 月 30 日付けの貴ファックスにて、英国放送 BBC テレビは、「エホバの証人が児
童性的虐待に事件についてどのように扱っているのか」の番組を準備なさっているとご連
絡頂ました。
次の通り回答いたします。
私どもは、一般論としては、インタビューを受けることに反対するものではありませんが、
貴社の放送において、出演する人達の内には、現在、何人かのエホバの証人がいるよう
に思われます。
私達の兄弟姉妹達が、公の場面で結果的に反対者に利用されてしまうのは適切でもな
ければ、又、聖書的でもありません。(Ⅰコリント人への手紙 6:1~8、エペソ人への手紙
4:2)
あなたが、この点についての私達の立場をご理解頂けるものと信じております。
私達は、インタビューに応じることはできませんが、あなたがファックスであげられた質問
については、喜んでお答えいたします。 あなたの質問はもっぱら、私達の組織において
記録している児童性的虐待の記録がどういうものであるかという点に集中しているように
思います。 あなたは、“テレビ番組に対してなされた重大な訴えの性格“を考慮すると、
私達エホバの証人がどのように、内部の児童性的虐待を記録に残しているかが、決定的
に重要であると言っておられます。
しかし、あなたはどのような訴えか、具体的には示
しておられません。 とはいえ、エホバの証人が、児童性的虐待の訴えがなされた場合に、
どのように取り扱っているかを、最初に申し上げます。 あなたはこの点について、お尋ね
になっていないようですが、私達はこれについて、率直に申し上げることが、本質であると
思います。
米国において、エホバの証人の誰かが、もし児童性的虐待の容疑で訴えられた場合、会
衆の長老が調べることになります。 手順は以下の通りです。 2人の長老が、それぞれ、
訴えた人(被害者)と容疑者に会って、訴えとその反論を聞きます。 もし、容疑者が容疑
を否定した場合には、2人の長老は、訴えた人(被害者)と容疑者とを長老2人の立会い
のもとで直接、対決してもらいます。
その場でも、容疑者が否認し、更にその容疑を立証する者が誰もいない場合には、長老
としては、会衆内においては何も行動を起す事はできません。
なぜできないのか? 私達は聖書に基く組織でありますので、聖書に定めた通りにする
とが
必要があります。 具体的には「人の犯すどんな罪の場合であれ,何かの咎、また罪に関
し、ただ一人の証人が立ってこれを責めるべきではない。二人の証人の口または三人の
証人の口によってその件は定められるべきである(申命記 19:15)」、イエスも、この原則を
マタイ福音書 18:15-17 において確認しています。
89
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
私達の支部が、児童性的虐待の訴えを受け取った場合には、容疑をかけられた者の過
去の記録が調査され、他の場所に住んでいた時に、同様の訴えがなされたことがあるか
どうかを調べます。 また、別の被害者が、同じ容疑者に対して信頼すべき訴えを起した
場合、長老は聖書によって認められた方法によって対処します。
しかし、長老が会衆として何らかの行動を起す事ができなくても、その国の個人情報保護
法上、許されるなら、その国のエホバの証人の支部に報告されることになります。
同様に、個人情報保護法上、許されるならば、児童性的虐待の容疑をかけられた者の記
録が、支部に残されます。 エホバの証人の各支部は、その所在地の法律によって、許
されている場合は、それぞれ自前の記録を保管しています。
にいる児童性的虐待の容疑者の記録は持っていません。
米国の場合は、他の国
個人情報保護法によって、
これらの記録を保管することが許されていない場合は、長老は、法律によって許される範
囲で、子供たちを守る為、どんなことでも行なう。 目的は、個人情報が守られる権利と、
子供たちの安全を守る優先順位の高い問題とのバランスをどう取るかであります。
(Ⅰテモテ 5:19)
エホバの証人の支部への報告に加えて、長老は法律に基いて、その訴えがまだ証拠の
無いものであっても、警察当局に届けることが求められている場合もある。 そのような場
合、長老は法律に従うことが求められ、又、被害者は警察に届けることができるし、そうす
るのは、彼らの当然の権利である。 米国においては、この法律に基く届け出義務は、州
ごとにそれぞれ異なっている。 この届出義務と平行して、取り扱うことは、困難な事では
あるが、ものみの塔法務部は、最大限、努力している。
訴える者(被害者)と容疑者が、長老の立会いの下で向合った結果、容疑者が罪を認め
た場合には、長老は適切な処罰を下すことになる。 もし、容疑者が悔改めない場合は、
彼はエホバの証人の会衆メンバーとして留まることは許されない。 たとえ、彼が心から悔
改めて、今後、一切そのような行為を絶対にやらないと決めたとしても、“ものみの塔誌
1997 年 1 月 1 日号“の記事に述べられた原則が適用されます。
記事には“子供達を守る為に、児童性愛者と認められた者は、会衆において責任ある地
位につくことはできません。“ 更に、その者はエホバの証人の全時間伝道者である”開
拓者“などの全時間奉仕の役割に付くこともできません。(Ⅰテモテ 3:2,7-10)
私達はこのような行動を取るのは、聖書の基準を保つことと、私達の子供を守るためで
す。
私達の組織に属する者は誰でも、この基準に従う、つまり肉体的にも、精神的に
も、道徳的にも、霊的にも汚れのない者となることが期待されています。
(Ⅰコリント 7:1, エペソ 4:17-19, Ⅰテサロニケ 2:4)
ごく少ない例として、児童性的虐待の前科がある者が、十年単位の期間の間、模範的な
90
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
エホバの証人であった場合に、会衆での責任ある地位に任命される場合があります。
すべての状況が注意深く検討されなければなりません。 例えば、ずっと前に16歳の少
年であった者が、当時、同じく16歳の少女と合意の上で性的関係を持っていたと仮定し
ましょう。 このような事件が起きた場合、米国の法律によっては、長老は児童性的虐待と
して、警察に届けなければならない。 そして 20 年たったとしましょう。 その州の児童
性的虐待の法律が変わったかもしれない。 又は、この2人は結婚したかもしれない。
2人とも、模範的な生活をして、尊敬されているかもしれない。 これら、まれなケースかも
知れませんが、このような人は、会衆の責任ある地位に任命されることもあり得ます。
私達の手続は、何年かの間に改良されてきた。 ここ数年の間に採用されている私達の
方針によれば、児童性的虐待の罪を犯した者が、極めてまれではあるが、もし会衆の
責任ある地位に任命されるに当っては、少なくとも 20 年以上が経過していなければなら
ない。 聖書によれば、罪を悔改めるなら、“悔改めにふさわしい行いをして、神に向か
わなければならない“ そして、私達は、聖書の言う事を受け入れている。(使途 26:20)
また、私達の子供の安全を確保することは、最重要であるから、会衆の長老達が、ずっと
昔に、児童性的虐待の罪を犯した者を、責任ある地位に推薦する場合には、非常に注
意深くしなければならないと実感しています。
あなたは、私達の組織が米国内において、23,720 人の児童性的虐待者をリストに記録
していると言っておられる。 これは嘘です。 まず、私達が記録している人数はそれよ
り、かなり低い。 加えて、私達の記録にある人数に注目するのは意味がない。 なぜな
ら、私達の記録にあるのは、児童性的虐待の訴えを受けたが、証拠がなくて容疑が明確
でない人達も多数、含まれているからである。 私達は米国の法律を守るために、これら
の記録を保管しているのです。 さらに私達のリストには、多くの専門家が取り組んでいる
いわゆる“抑圧された記憶”に基く訴えに関するものも含まれています。
そしてまた、このリストには、エホバの証人になる前に児童性的虐待の容疑をかけられた
者、そしてバプテスマを受けたことのない者で同じく容疑をかけられた者であるが、エホ
バの証人と同居しているという理由からリストに載せている者が含まれています。(例えば
エホバの証人の子供から、児童性的虐待の訴えを受けたエホバの証人ではない父親や
義父などがこれに当たります。)
更に保守的に考えて、住んでいる州の法律によって、
児童性的虐待と見なされるかもしれないし、見なされないかもしれない者の名前も含めて
います。(例えば、合意の上で 15 歳の少女と性的関係を持っていた 16 歳の少年のような
場合) 更に、覗きの罪、幼児ポルノグラフィーに関係した者などもリストに含まれていま
す。 当然の事ながら、事実、児童性的虐待について有罪とされる者もリストに載ってい
ます。 私達は、米国において、このリストを持っていることについて弁解はしません。
法律によって求められること以外にも、私達の群れを危害から守るよう努力するためにこ
のリストは有効だからです。(イザヤ 32:2)
91
クリスチャン(エホバの証人)の両親は、児童
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
性的虐待の危害を加える可能性のある者が、会衆の責任ある地位に任命される場合に
は、予め、察知できるように努力が払われていることを知っていれば、安心感を得る事が
できます。
ポウイーズさん、私達の仕組が完全であると結論付けないで下さい。 人間の組織で、完
全なものはありません。 しかし、私達は児童性的虐待に対しては聖書の教えに基いて
堅固な方針を持っていると信じています。
児童性的虐待の罪を犯した者は、躊躇なく
会衆の責任ある地位から外されますし、又、その罪を知りながら、他の会衆へと異動させ
ることは絶対にありません。
私達は、児童性的虐待を嫌悪しています。 例え、一人の被害者であっても、非常に多
いと考えます。 少なくとも 1981 年以降、私達は、“ものみの塔、目ざめよ”の雑誌に関連
記事を掲載して、児童性的虐待から子供達を守ることの必要性と重要性について、エホ
バの証人のみならず一般大衆をも教育してきました。 とりわけ、“ものみの塔誌”1997 年
1 月 1 日号の記事“邪悪なことは憎悪しましょう”、同じ雑誌の 1983 年 10 月 1 日号の記
事“近親相姦の被害者を助ける”、それから“目ざめよ誌”の 1993 年 10 月 8 日号にある
記事“お子さんは危険にさらされています”、“どうすれば子供を守れるか”そして、“家庭
での予防”、同じく“目ざめよ誌”1985 年 1 月 22 日号の記事“児童性的虐待―すべての
母親の悪夢”が主なものです。 私達は何年もの間に、この方針が強化されなければなら
ない地域に気付いていますので、見直してきました。 今後とも、見直していく予定です。
あなたがこの手紙から多くの情報を得られることと信じています。 お気づきのように、私
達としましては、あなたの質問リストにある一つひとつのご質問に細かくお答えするよりも、
より広い観点からお答えしております。
も送って頂きました。
あなたは、同じ質問状を私達のロンドン支部に
エホバの証人ロンドン支部は、その内部手続きと英国の法律に
従って、あなたのご質問にお答えするものと思います。
どうぞ宜しくお願いします。
敬具
J. R. ブラウン
(署名)
ディレクター
広報部
JRB:01
92
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
10.
10.ものみの塔
ものみの塔の秘密の
秘密の支払
ものみの塔聖書冊子教会ペンシルバニアは、1989 年以降、全米規模の、“王国会館共済(KHAA:
Kingdom Hall Assistance Arrangement)“という、保険プログラムによって、損害保険(物損補償+
損害賠償補償と推定される)をかけている。 ※27
※27 証拠 B 2004 年 8 月 25 日、P121、アレキサンダー・レインミューラーの証言、
これは、2005 年 3 月 14 日に受理された証拠提出命令に対するものみの塔ペンシルバニア
の異議申立を支持するロバート・シュナック氏の証言付属資料にある。
原告側の弁護人は、カルフォルニア州におけるこの保険プログラムの内容の提示を要請した。
事実認定の過程において、被告ものみの塔ペンシルバニアは、この保険プログラム KHAA による
保険金請求と保険金支払が記録されている元帳を原告側弁護人に提出するように求められた。
これに記録されている保険金請求は、興味あるものである。
概要説明の欄に、“長老
長老の
長老の悪行”が
悪行
記入されていた。
保険事故の日付は 1989 年 1 月 1 日、被保険者の欄には“カルフォルニア州、レッド・ブラフ会衆”
保険金支払額は 50,000 ドルである。
原告側の注記は以下の通りである:
b. KHAA(王国会館共済)とリスク・マネジメント
ものみの塔ペンシルバニアは、過去25年間にわたり、カルフォルニア州において、損害保
険とリスク・マネジメントを実施運用してきた。 ものみの塔ペンシルバニアは、該当する期
間、損害保険プログラム(含む K,W)を通して、エホバの証人の組織に関与してきた。
ものみの塔ペンシルバニアは、この損害保険を購入しその保険料を支払うためにカルフォル
ニア州から、数百万ドルの金を集めた。 更に、ものみの塔ペンシルバニアは、リスク・マネジ
メント業務を行なっており、それには、カルフォルニア州における損害調査と損害請求に対
する任意支払※a も含まれている。 これらの中
これらの中には、
には、この訴訟
この訴訟・
訴訟・トラック1
トラック1の被告である
被告である長老
である長老
の“長老の
長老の不法行為”
不法行為”によるかなりの金額
によるかなりの金額が
金額が損害賠償金として
損害賠償金として、
として、ものみの塔
ものみの塔ペンシルバニア
から支払
から支払われている
支払われている。
われている。
次ページにある幅の狭い線の引かれた事実認定請求によって、原告側は、カルフォルニア
関連の多額の支払の詳細について把握しようと試みた。 原告はものみの塔ペンシルバニ
アのリスク・マネジメント業務について調査し、カルフォルニアからものみの塔ペンシルバニア
に対する損害金請求及び、カルフォルニアにおいてなされた損害調査と損害額の支払にい
たるまでの過程についての情報を求めた。※28
※a 任意的支払:訳者はサラリーマン時代、リスク・マネジメントと損害保険プログラムの設計
93
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
に関わった経験があり、ここでいう任意的支払とは、企業などのリスク・マネジメントにおい
て、損害保険でカバーされない、又は損害保険は掛けてあるが、保険料コストを軽減す
るために、予め設定される免責金額の範囲内で、企業の自己負担によって、支払われる
損害金のことである。
※28 2005 年 3 月 30 日付け、原告側の被告に対する証拠提出の申立を支持する原告側
の回答 P7.
トラックⅠの訴訟は、ティム・W 事件の共同被告人ジェームス・ヘンダーソン及び、ウインベール・
ガティエレツ事件の共同被告人アルヴィン・ハード※29、同共同被告人ものみの塔が当事者となっ
ている。 次の元帳の記録からお分かりのように、1996 年 2 月 14 日に 50,000 ドルの支払がなされ
ている。
※29 2004 年 8 月に、アレックス・レインミューラーは、この問題の起きた当時、ものみの塔本部ニュ
ーヨークの財務部の部長代理として働いていた。 財務部はニューヨーク本部にあったが、実態は、
ものみの塔ペンシルバニアのために仕事をしていた。 “あなたは何年、財務部長代理として働きま
したか?”との質問に対して、レインミューラー氏は、“6ヶ月間”と答えている。
更に“あなたは、その6ヶ月に先立って、ものみの塔ペンシルバニアとはどのように関わっていまし
たか?”との質問に対して、レインミューラー氏は次の通り答えている。 “私は、ものみの塔ニュー
ヨークの会計課長として9年間、働いていて、ものみの塔ペンシルバニアの会計事務の全部を取り
扱っていました。”
2004 年 8 月 25 日付けのアレックス・レインミューラーの証言 P15,17~18、
証拠書類 B、2005 年 3 月 14 日受理された、原告側の証拠提出命令に対して、異議を申立てた
ものみの塔ペンシルバニアの回答がある。
被告側弁護人のロバート・シュナック氏がものみの塔
ペンシルバニアの主張を支持した証言録に、この証拠は添付されている。
94
アメリカのある宗教における児童に対する性的虐待の秘密
KHAA(王国会館共済)請求ー1996年~2003年/テキサス、カルフォルニア 2004年5月24日 P1
報告
事故概要
事故発生日
シロアリ、カビ、アスベスト
被保険者
保険請求
保険金支払
カ州、サクラメント
任意請求
任意支払
$10,448.0
$0.00
$21,731.0
$0.00
$3,135.5
$0.00
アーデン21170
王国会館侵入
カ州,サンフランシスコ
ベイビュー130930
水道管破裂・王国会館水浸
テキサス州デュマ
129866
カビ
カ州、東サクラメント
$1,307.2
$0.00
カビ
カ州、オロビール
$3,008.5
$0.00
$2,407.0
$0.00
$50.0
$0.00
$1,161.1
$0.00
ラスプルマス20164
カビ
カ州、サクラメント
ノースゲイト21261
カ州、サンタクルーズ
バソナパーク
長老の不法行為
1989.1.1
カ州、レッドブラフ会衆
$50,000.0
$0.00
信号待ち中の車両衝突
1994.7.1
ミラ・ローナ大会ホール
$36,738.0
$0.00
暴風による屋根損壊
1996.2.1
カ州、北レッドブラフ
20727
道路での転倒
1996.2.19 カ州、レセダ会衆
本入れバッグに躓く
1996.3.1
カ州、サクラメント
$10,000.0
$0.00
$1,200.0
$0.00
$0.0
$0.00
グリーンヘブン会衆
車椅子のステップに転倒
1996.5.21 カ州、ターロック
北スパニッシュ会衆
WTPA 00265
95
アメリカのある宗教における児童に対する性的虐待の秘密
精査(複数点検)2004年5月31日 P10
補償金
請求日
番号
金額
実行日
2001.02.20
401298
$6.00
2001.02.23
12/22/20
2001.03.22
401371
$3,000.00
2001.03.29
12/22/20
2001.03.22
401371
$94.80
2001.03.29
12/22/20
2001.05.05
401441
$1,721.51
2001.05.09
12/22/20
2002.03.15
401908
$1,654.18
2002.03.19
12/22/20
1998.12.21
400058
$210.00
1998.12.24
12/05/19
1991.01.13
400100
$172.00
1999.01.15
12/05/19
1991.01.13
400102
$361.00
1999.01.15
12/05/19
1998.11.24
400015
$925.00
1998.11.28
04/27/19
2003.01.03
ACH-2000218
$125.00
2003.01.08
12/28/20
2003.01.24
ACH-200022
$4,219.51
2003.01.29
12/28/20
2003.02.06
ACH-200023
$700.00
2003.02.12
12/28/20
2003.03.07
ACH-200024
$575.00
2003.03.13
12/28/20
1999.10.05
400525
$545.93
1999.10.08
07/04/19
1999.08.11
400436
$155,000.00
1999.08.12
08/22/19
1998.09.30
89805
$836.00
1998.10.06
08/22/19
1996.04.04
19827
$50,000.00
1996.02.14
01/01/19
1996.11.12
247183
$260.99
1996.11.15
02/19/19
WTPA 000259
96
受取人
事故日
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
P362
A. レインミューラー
2. Q265?
3. A. もう一度、質問を言ってください。
4. Q. そのページを見ましたか?
5.
これには、すべての種類の請求がのっていますか?
6. A. そうです。
7. Q. 事実、この書類には、
8.
カルフォルニア州において
9.
KHAA(王国会館共済)によって支払われた。
10. すべての種類の損害請求が含まれている。 そうですね?
11. A. その通りです。
12. Q. このページ
このページの
ページの真ん中に
13.
“長老の
長老の不法行為”
不法行為”と書かれた項目
かれた項目があり
項目がありますね
がありますね?
ますね?
14. A. はい。
15. Q. この長老の不法行為について
16.
何か知っていますか?
17. A. いいえ、知りません。
18. Q. ここに、カルフォルニア州の
19.
レッド・ブラフ会衆と書かれていますね?
20. A. はい、そうです。
21. Q. あなたは、レッドブラフ会衆が、
22.
KHAA(王国会館共済)の
23.
共済掛け金を拠出していたか
24.
内容について何か知っていますか?
25. A. 具体的には言えない。
P363
11.
ものみの塔ペンシルバニアの保険(共済)から・・・
12.
会衆に戻ったのか?
13. A. 会衆は、たぶん、
14.
リスク・マネジメントに連絡して
15.
状況について細かく説明したと思われる。
16.
そして、リスク・マネジメント部門は
17.
更に会衆に連絡して、
18.
どんな支援が必要か質問したであろう。
97
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
19. Q. 保険担当(リスク・マネジメントチーム)では、
20.
何人、このような質問に答えられる立場にあるのか?
21. A. 多分、5人・・・
22.
程度が電話応対で答える。
23. Q. 一握りの人達?
24.
5人以下?
25. A. 恐らく、5人以下でしょう。
P364
1. A. レインミューラー
2.
ほとんどの人は、
3. Q. 人の交代が多いのか?
4.
それとも、ほとんど同じ人達
5.
で交代がないのか?
6. A. 何年かの間、
7.
人の交代が多かった。
8. Q. 誰が、この特殊
この特殊と
われる・・・
特殊と思われる・・・
9.
長老の
長老の不法行為に
不法行為に関わる賠償請求
わる賠償請求を
賠償請求を
10.
取り扱うのか、
うのか、法務部か
法務部か、保険部門か
保険部門か
11.
を決定した
決定した記録
した記録はあるのか
記録はあるのか?
はあるのか?
12. A. よく分
よく分かりません
かりません。
13. Q. この長老
この長老の
長老の不法行為について
不法行為について
14.
もっと知
もっと知りたいのだが、
りたいのだが、
15.
どんな記録
どんな記録が
記録が残っているのか?
っているのか?
16. A. 多分、我々が今、見ている
17.
コンピュータ上のデータ・ベース、
18.
これらは支払の記録だが、
19.
1989 年以降に、会衆との間で
20.
交わされた通信記録のファイルが、
21.
このファイルがまだ残っているか、どうか
22.
そのファイルが完全にあれば、
23.
確実に残っているとは、言えないのですが
24.
しかし、大抵の場合、そのような通信記録は
25.
残っていると思われます。
98
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
P365
1. A. レインミューラー
2. Q. そのファイルはどこに
3.
保管されているのか?
4. A. 事務所です。
5. Q. もし我々が求めれば、あなたは
6.
そのファイルを
7.
見つけることができますか?
8. A. はい。
9. Q. あなたは、カルフォルニアにおいて
10.
王国会館共済によって
11.
児童性的虐待の損害賠償請求
12.
が今まで支払われたことを知っていましたか?
13. A. 個人的には知りません。
14. Q. あなたは、
あなたは、王国共済が
王国共済が
15.
児童性的虐待に
児童性的虐待に対する損害賠償金
する損害賠償金
16.
を補償するようになっていたことを
補償するようになっていたことを
17.
知っていましたか?
っていましたか?
18. A. はい。
はい。 王国共済は
王国共済は
19.
そのような保険金支払請求
そのような保険金支払請求があれば
保険金支払請求があれば
20.
補償するようになっていたと
補償するようになっていたと思
するようになっていたと思います。
います。
21. Q. それは、カルフォルニア州でも
22.
事実であると?
23. A. はい。
24. Q. あなたは、
あなたは、この長老
この長老の
長老の不法行為
25.
が児童・・・
児童・・・(次ページへ)
・・・
P366
1. A. レインミューラー
2.
性的虐待であることを
性的虐待であることを知
であることを知っていましたか?
っていましたか?
3. Q. いいえ、知りませんでした。
4. A. この 50,000 ドルが
ドルが、支払われる
支払われる前
われる前、
5.
この金額
この金額が
適切であると決定
金額が適切であると
であると決定される
決定される
6.
に至った根拠
った根拠や
根拠や、その検討手続
その検討手続きは
検討手続きは
7.
どのようなものでしたか?
どのようなものでしたか?
8. シュナック氏:彼はすでに
99
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
9.
知らなかったと証言しています。 あなたは、
10.
一般論として何が起きたのか
11.
を質問しているのですか?
12. Q. 私は、支払を決める
13.
手続きがどのようなものなのかを質問しているのです。
14. A. この個別の場合についてですか?
15. Q. このような事例の場合についてです。
16. シュナック氏:彼は
17.
一般論として質問しています。
18. A. 一般論として言えば、
19.
会衆との間で話し合いが行なわれます。
20.
そして、法務部の弁護士と話し合われます。
21.
また、状況によっては、
22.
組織上部との話し合いが行なわれて、
23.
最終決定がなされる前に、
24.
即時、回付されます。
25. Q. カルフォルニア州で被害が発生したら、
P367
1. A. レインミューラー
2.
この資料には、エホバの証人ではない人も
3.
含まれていて、多くの人達がリストにありますが、
4.
通常の場合、
5.
示談書とか、交付される
6.
書類は作成されますか?
7. A. 通常の慣行としては、
8.
もし、解決の合意が成立したら、
9.
示談書が作成されて交付されます。
10. Q. 誰が書類を
11.
作成しますか?
12. A. その個別の事案について
13.
指名された弁護士が作成します。
14. Q. 法務部所属の弁護士か、又は
15.
カルフォルニア州の弁護士を
16.
指名するのですか?
17. A. その通りです。
100
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
18. Q. その示談書が作成されたら
19.
控えの一部は、
20.
事務所のファイルに保管されますか?
21. A. はい、そのようになって
22.
いると思います。
23. Q. そして、あなたのファイルに
24.
その控えが含まれていると
25.
私が推定するのは妥当と思われる。
P368
1. A. レインミューラー
2.
そして、その賠償金請求に関連する
3.
通信文書も含まれていると
4.
私が推定するのも、妥当と思われる。
5. A. そうです。 すでに申し上げた通りです。
6. Q. この保険金
この保険金が
保険金が支払われた
支払われた
7.
この長老
この長老の
不法行為に関して、
して、
長老の不法行為に
8.
もし、
もし、仮にレッド・
レッド・ブラフ会衆
ブラフ会衆が
会衆が、
9.
この KHAA(
KHAA(王国会館共済)
王国会館共済)に
10.
加入していなかったとしたら
加入していなかったとしたら、
していなかったとしたら、
11.
この保険金支払
この保険金支払いについては
保険金支払いについては
12.
他の会衆が
会衆が負担した
負担した拠出金
した拠出金
13.
から、
から、支払われたことになりますか
支払われたことになりますか?
この理解でよいですか
われたことになりますか? この理解
理解でよいですか?
でよいですか?
14. A. その通りです。
15. Q. ものみの塔ペンシルバニア
16.
が、管理しているのですね?
17. A. その通りです。※30
※30 レインミューラーの証言 P334~36, P341, P345~6, P353~55, P362~368, P374
レインミューラーの
レインミューラーの証言から
証言から得
から得られた KHAA(
KHAA(王国会館共済)
王国会館共済)保険プログラム
保険プログラムの
プログラムの概要
米国内のエホバの証人会衆は、KHAA(王国会館共済)に任意に加入できる。
掛け金は、エホバの証人メンバー一人当たり、年間 4.5 ドルである。
この 4.5 ドルに会衆メンバーの合計人数をかけて、12で割る。 この金額を毎月支払うことになる。
こうして集められた KHAA の拠出金によって、損害保険会社のエクセスカバー(※b)の損害保険を
101
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
購入して、会衆とものみの塔ペンシルバニアの損害を補償する。
※b エクセス・カバーとは、免責金額を設定した損害保険のことで、比較的小額の事故は
自分で負担して、免責金額を超過した事故についてのみ、損害保険で補填するもの。
米国の損害保険では一般的で、財産保険、賠償責任保険ともこのような保険設計が
一般的である。 損害全額を保険でカバーする方式よりも、コスト・パフォーマンスがよ
い。
この KHAA(王国会館共済)は、1989 年から始められて以来、ものみの塔ペンシルバニアは、損害
保険を掛け続けてきた。 ただ、高額免責金額が設定され、その免責金額の範囲内の事故は、自
己負担とする方式であった。 もし、事故補償額が免責金額を超過した場合にのみ、損害保険会
社が支払うことになる。
興味あることに、KHAA(王国会館共済)でカバーできるリスクの一つに
“長老及び奉仕の僕が、割り当てられた業務遂行に起因して、損害賠償請求を受けた場合”が含
まれていた。 レインミューラーは、これを知っていたから、KHAA(王国会館共済)は児童性的虐待
による損害賠償請求をカバーできると証言したのである。
ものみの塔ペンシルバニアの KHAA(王国会館共済)の元帳には、$142,256(約 13,500,000 円 @
95 円で換算)の支払請求が計上されており、これの意味することころは、損害保険会社に請求しな
いで、共済から支払うことである。
つまり、13,500,000 円以上の免責金額が設定されているという
こととなる。 レインミューラーの証言による限り、ものみの塔ペンシルバニアのスタッフが高額の支
払を調べた結果、高額免責金額が設定されていることによって、ものみの塔は、司法当局を巻き込
まずに、自己の裁量によって“長老の不法行為”に起因する損害賠償金を支払う事ができるという
ことになる。※c
※c 免責金額を超える支払は、損害保険会社によって保険金が支払われることになる。
この場合、損害保険会社は、裁判所の判決文、あるいは調停による和解書等、司法当局の
公的機関の証拠書類を証拠書類として要求する。 つまり、必然的に司法当局が事件に関与
することになる。
カルフォルニア州のレッド・ブラフ会衆は、1989 年に発生した“長老の不法行為”に対して$50,000
が請求された場所である。 記録には、児童性的虐待に起因する請求とは書かれていないが、原
告側の弁護人は、“長老の不法行為”というのは、共同訴訟-トラック1の被告(長老)のことであると
示唆している。 これ以外の情報がないので、何故、この長老が警察に届けられなかったのかの理
由を知ることはできない。
1996 年の初め頃に、この請求金額は支払われているが、これは地区監督のドン・アミー氏が児童
性的虐待の加害者ジェームス・ヘンダーソンについてものみの塔本部に手紙を書いた 1994 年 12
102
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
月のほぼ1年後のことである。 ジェームス・ヘンダーソンか又はアルヴィン・ハードのどちらが、“長
老の不法行為”の該当者となるのか? ヘンダーソンは、1981 年にレッド・ブラフに引越してきて、
1994 年に逮捕されるまで、そこに住んでいた。 ヘンダーソンはこの期間に数人の少年に対して
性的虐待を繰り返したが、1994 年まで、長老職を解任されることはなかった。
1989 年に KHAA(王国会館共済)による$50,000 の請求を受け取った被告ものみの塔は、このよう
な高額請求の責任がヘンダーソンにあると考えたなら、彼は長老の職から解任されたと考えるのが
妥当と思われる。
アルヴィン・ハードは、1970 年から 1981 年の間にガイティエレツに対して性的虐待を繰り返し、また
彼女の弟のウインバリーに対しては 1981 年から 1982 年の間に同じく性的な虐待を行なった。
アルヴィン・ハードはヘルマンの3人の子供、その他の子供達にも性的虐待を行って、ある両親か
ら訴えられたのであるが、これらが起きたのはレッド・ブラフであった。
アルヴィン・ハードは証言の中で、1985 年の初め、カルフォルニア州オロビールに、続いて同じカ
ルフォルニア州チコに住んでいたと言っている。
それから、1989 年にカルフォルニア州パラダイ
スに引越し、1991 年にカルフォルニア州スーザンビルに引越すまでそこにいた。 1992 年にサウ
ス・ダコタ州のラピド市に移ったのであるが、そこで、長老達はハードが児童性的虐待者であること
を知った。 1998 年に彼は、サウス・ダコタで2人の少年に性的虐待を加えた。
2004 年までには、
ハードは、オレゴン州クラマト・フォールの刑務所に入った。※31
※31 2006 年 2 月 17 日付けアルヴィン・バランチャード・ハードの証言 P25~32, P41~48、
この証言は、オレゴン州ウマティラのトウー・リバー矯正収容所において収録された。
この証言は証拠物件5番として、2006 年 9 月 15 日付けの一般事実認定請求及び、PMK(最も
事実を知っている者)の証言請求を支持する司法当局のメモランダムに添付されている。
被告ものみの塔は、20年以上にわたって、ハードが子供に対して性的虐待を行なっていたことを
知っていた。
原告ウインバレイー・ガティエレツと被告ものみの塔の訴訟は、2007 年に被告もの
みの塔側からの和解によって解決されたが、原告の原訴状には、ハードは会衆内の責任ある立場
を利用して、子供たちを繰り返し、性的に虐待していたと書かれている。
KHAA(王国会館共済)
元帳に書かれていた、“長老の不法行為”とは、アルヴィン・ハードが 1970 年代後半から
1985 年ごろオロービルに移るまでの間、レッド・ブラフに住んでいて、長老職にあった時に、犯した
児童性的虐待のことである可能性が高い。 恐らく、レッド・ブラフでハードに性的虐待を受けた被
害者の一人が、訴えることができるような年齢になった後、レッド・ブラフの長老に訴えたのであろう
と思われる。 もちろん、その時には、もはやハードはレッド・ブラフにはおらず、長老もしくは奉仕
の僕ではなくなって数年経っていたと思われる。
よって、レッド・ブラフ会衆は、密かにこの被害
者に対して、賠償金を支払うために KHAA(王国会館共済)に 50,000 ドルを請求したものと思われ
る。
多分、いつか、誰かが進み出て、隠された秘密を明らかにすることになると思う。
103
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ものみの塔
ものみの塔の法廷外での
法廷外での秘密裏
和解解決
での秘密裏の
秘密裏の和解解決
レインミューラーの証言によって、KHAA(王国会館共済)がどんな損害を補償するか、光を当てら
れたことによって、最近の児童性的虐待事件のうち、2007 年に支払われた賠償金はものみの塔ペ
ンシルバニアの自家保険(KHAA-共済だから、自家保険となる)から一部、支払われ、免責金額を
超過した部分は、損害保険会社への保険金請求することによって、合計 13 百万ドル(約 12 億 35
百万円-@95 円で換算)が支払われたものと考えられる。※32
※32 バーバラ・アンダーソンの注から
被告ものみの塔が法廷闘争において、当初、ものみの塔ペンシルバニアを被告メンバーから外す
ように注力したことに、注目すべきである。
しかし、彼らの作戦は、失敗に終わった。
カルフォルニア州裁判所が、ものみの塔ペンシルバニアは、カルフォルニア州において、業務を行
なっていることから、司法上の当事者であると決定したことからである。 どのような業務か?
それは、カルフォルニア州において 25 年以上にわたって、彼らが運営してきた保険とリスク・マネジ
メント業務、つまり KHAA(王国会館共済)そのものである。
仮にカルフォルニア州裁判所が、ものみの塔ペンシルバニアを外す決定をして、他のエホバの証
人の各組織から成る被告団となったとしても、ものみの塔ペンシルバニアは、全米のすべてのエホ
バの証人の会衆に保険(共済)を提供していることから、引続き、判決に伴う賠償金を支払う立場に
置かされているのである。
いずれにせよ、全米、約1百万人のエホバの証人一人ひとりは年間
4.5 ドルをものみの塔ペンシルバニアの KHAA(王国会館共済)に拠出しており、このお金は、子供
達の安全を守る義務を負っているものみの塔の指導者達の失策、過失に伴う損害の補填に使わ
れているということである。
私の計算が正しいとすれば、この和解金を充当するには、全米の約1
百万人のエホバの証人の KHAA(王国会館共済)の拠出金の4年分が必要である。
エホバの証人一人当たりにすれば、そんなに大きな金額ではないが、これらのお金は、指導者の
失策による損害に使うのではなく、本来、宣教活動に使われるべきではないのか。
脚注
裁判所の担当官が見逃してしまった結果、私は裁判所の封印の押された 13 ページにわたる和解
に関する書類を入手した。 ナパ郡裁判所の高官から、封印の押された書類は公開してくれるなと
の依頼を受けたので、私は、書類の題名だけを残して本文を削除した上、この CD(裁判記録の)に
残した。
この依頼は、2007 年 6 月 27 日付けの手紙で来ており、ナパ郡カルフォルニア州上級裁判所、執
行事務官ステファン・A・ブッチ氏から送られている。 ブッチ氏の手紙のコピーには、本分が削除さ
れた 13 ページの書類が添付されてこの CD(裁判所記録)にも収録されている。
104
この手紙は、共
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
同訴訟の一部であるチャリッサのケースと混同しないようにして頂きたい。 ブッチ氏の手紙は、法
廷外の和解/訴訟の取下げがなされた後に書かれたものであり、その段階では、ブッチ氏が封印
するよう要求した書類は、他の裁判記録と共に、すでに公開された後であった。
この13ページの手紙には、ものみの塔聖書冊子協会ニューヨーク・INC の提案した法廷外の和解
の詳細な内容と、チャリッサの共同訴訟案件中の一つの訴訟案件の原告が同意した内容につい
て書かれていた。 ものみの塔はこの原告との間で 750,000 ドル(約 71,250,000 円-@95 円換算)
を少しオーバーする今額で和解をした。 和解書は、2007 年 2 月 2 日及び、2007 年 2 月 3 日付け
で署名された。
9件の訴訟における 16 人の原告も、2007 年 2 月中に和解に応じた。
私は、裁判所の指示によって公開できないが、ものみの塔は、他の原告にも同じ程度の和解金を
支払ったものと考えられる。
私が、ものみの塔が支払った和解金合計額がおよそ 13.000,000 ド
ル(約 12 億 35 百万円)と述べた根拠はこれである。
責任の存在を否認する声明:ナパ郡裁判所がこれらの書類(13 ページの手紙)を送ってから、その
10日後に廃棄命令を出したのであるが、その 10 日間にすでに様々な個人や、機関に配布されて
しまっている。 従って、筆者としては、これらの書類がどのように使われたのか、把握できない状況
である。
105
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
11.
11.らくだの背骨
らくだの背骨を
背骨を折ったわら
ったわら
諺にいう“らくだの背骨を折ったわら”が、若い時の私に宗教についての幻想を引き起こした。
してこの幻想によって、私の人生は飲み込まれてしまっていたのである。
そ
私はこの文書のはじめ
に、この“らくだの背骨を折ったわら”とは、一体何なのか、話していなかった。
しかし、今や、そ
れを話すのが私の責任だと思う。
私は、1991 年の秋から 1996 年末までほぼ5年間の間、多くの子供達が受けた性的虐待に対しても
のみの塔の指導者達が負うべき責任について考えて、眠られぬ夜が続いた。 なぜか?
なぜなら、ものみの塔の指導者達は、児童性的虐待者として訴えられていることを知りながら、ある
場合には、本人が自白したにも関わらず、これらの男達を、エホバの証人会衆の責任ある地位に
留まることを許したからである。 そして、すべては一般のエホバの証人には知られることはなかっ
た。 最終的に 1997 年になって、ものみの塔組織の代弁者である雑誌“ものみの塔”は“邪悪なこと
は憎悪しましょう”と題する記事を掲載し、次のように書いた。
会衆の子供たちを保護するためにも,子供にわいせつなことをしてきたことが知られている
人は,会衆内の責任ある立場に就く資格がありません。また,開拓者になることや他の特別
な全時間奉仕を行なうこともできません。
私にとっては、統治体がエホバの証人の子供達の安全を図るために必要な手段を講じることが、
安心を得ることであると考えていた。 その頃、私は、フロリダ州マイアミでは著名な女性裁判官が、
新聞のインタビューに答えて、彼女自身が子供の時に両親から受けた性的虐待について語ってい
る記事を読んだ。 彼女は、大人になってからも、何年もの間は、何らかのきっかけによって、虐待
の記憶を思い出すと精神的パニックに陥ってしまう経験を語っていた。 私はその新聞記事の切り
抜きをものみの塔の“目ざめよ”誌の編集者であるハリー・ペロヤンに送った。 私は、またペロヤン
氏に対し、エホバの証人の組織が、これ以上、児童性的虐待者を会衆の責任ある立場に置かない
ように仕向けるため、ものみの塔誌の記事の編集をしてくれたことに、感謝の気持ちを書いた手紙
を添えて送った。
それから数週間後に、私はハリーから、その後の人生の方向を変えてしまうような、返事を受け取っ
た。 彼は、“ものみの塔誌 1997 年 1 月 1 日号”に書かれたエホバの証人による児童性的虐待の
記事は、新鮮な風を与えたが、これは“5年間にわたる血と汗と涙の結果”、やっと得られたもので
あると書いていた。
ハリーは、ものみの塔本部のある人々(指導者)は、どうしてこんなにも無知
わる
(あるいはこんなに悪)なのか、そして何故、この問題についての記事を掲載することにこんなに反
対するのか理解できないと言っていた。 彼は、法務部にたいして、“記録を正すように助け”を求
めた。 もし、ものみの塔がこのように“めくらの方向”に進み続けるならば、“もっと大規模で強力な
訴訟”に巻き込まれるであろうし、又、もし、長老が、児童性的虐待者を守ろうとするなら、ものみの
塔は、そのような長老を守ることはできなくなるであろうと。
106
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
しかし、ハリーのしめくくりに述べた結論は異常であったので、私は、気持ちを静めて座り込んでし
まった。
というのは、物事を変える権限のある指導者達が、過去5年間、何も行動を起さなかったことによっ
て、バプテスマを受けたエホバの証人の加害者に、同じくエホバの証人の子供達を性的に虐待す
る機会を許してしまった。 そしてハリーは、被害にあった子供達の破壊された人生について、一
体、誰が答えてくれるのであろうかと自問していたからである。
ハリーは、努力の結果、組織の変
化をもたらしたことから、かれの良心はすっきりしていると付加えていた。
そして私が個人的に知っていて尊敬している人達は、全世界の6百万人のエホバの証人たちの人
生に対して権限を持っているものみの塔の指導者であるが、彼らが、過去5年間にわたって何も行
動を起さなかったことによって、訴訟に参加しなかった被害者を含めて多くの子供達が強姦され、
男色の相手にされ、虐待されたのである。 私は、彼等指導者達こそが責任を負うべきであると、一
点の曇りもなく実感した。 私はものみの塔本部の著作部に居たとき、エホバの証人の会衆内部に
おける児童性的虐待の問題を統治体に対して、情報を伝え続けていたので、彼らの不作為には弁
解の余地はない。 彼らの倫理、道徳観念は、妥協的であって、私は、もはやこのグループと共に
いることに良心を平静に保つ事ができなくなった。
そして、―神は彼らと共におられないーという
結論に至るまでに長くはかからなかった。 そして私は組織から離れることにした。
その後、ものみの塔本部サービス部が、2007 年 3 月 14 日付で“児童性的虐待者とは誰の事か?”
という題で、すべての長老団に親展扱いで送った手紙を読んだ時、私は、この判断は正しかったこ
とを知った。 そこには、クリスチャン会衆と社会におけるそのような者とは誰かについて、“以前、児
童性的虐待者として知られた者”(斜体文字は筆者が強調)と書かれていた。
手紙は更に、“もし、
会衆メンバーが会衆内のある者が、児童性的虐待者であったこと、そしてその者が尊敬もされてお
らず、それどころか、会衆を躓かせることを知っているなら”と続く。
文面上は、具体的に言って
いないが、これは明らかに逆の表現で“もし、会衆の誰もその者が、児童性的虐待者であったことを
知らず、且つ社会で良い評判を得ているなら、会衆メンバーの特権がある”ということになる。 そし
て、この事が実際に起きたのである。
彼等が、過去に児童性的虐待を犯した事や、あるいはその容疑者として訴えられた事を、社会や
会衆が知らず、一見信心深い生活をしている彼等が、会衆内の特権的な地位に留まっていたので
ある。
また手紙には、“他の者は、エホバの証人のバプテスマを受ける前に、児童性的虐待の罪を犯した
かも知れない。 長老団は、個々人に対して質問してはならない。”
エホバの証人の組織は、組
織の責任ある地位につく者の前歴を調べないばかりか、バプテスマ以前に、児童性的虐待の前科
があるか否かについても、質問しないのである。
ものみの塔の“児童性的虐待者として知られた者”についての立場は、組織の3年ルールの方針に
ぴったり合う。 つまり、ある長老または奉仕の僕が、過去に児童に対して性犯罪を犯し、またその
107
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
罪を隠していたとしても、少なくとも3年間にわたって、信心深い生活を送っていれば、その責任あ
る職を解かれることはないというものである。
児童性的虐待についての
児童性的虐待についてのエホバ
についてのエホバの
エホバの証人の
証人の組織の
組織の方針
2002 年 7 月に、ものみの塔本部は広報部を通してビデオニュースを出した。 これは、新聞等メデ
ィアの否定的な報道に対する回答として出された。 これには、ものみの塔の児童性的虐待に対す
る方針についてインタビューを受けた人の発言が含まれていた。
その内、3人はものみの塔組
織の特権的な立場にいる人達であった。 一人は J. R. ブラウン氏で、エホバの証人の組織のスポ
ークスマンであると紹介されている。 フィリップ・ブラムレイー氏は、エホバの証人の組織の相談役
と紹介されている。 しかし、奇妙なことに、デイビッド・シンクレア氏だけが、会衆の長老と紹介され
ていた。
ビデオ・ニュースでは、ブラウン氏とブラムレイー氏はものみの塔の高官として紹介されたが、デイ
ビッド・シンクレア氏が、3人のうち、一番偉い立場にあることについて、何も語られていなかった。
デイビッド・シンクレア氏は、ものみの塔聖書冊子教会ニューヨーク・INC の役員であり、そして、彼
は、ものみの塔の海外部門を統括していて、世界各国のエホバの証人の活動を検査し監督する立
場にある人である。
彼は又、この宗教でいう“与えられた者たち”で、統治体メンバーの次に来る
立場の人である。※34
※34 ものみの塔誌 1992 年 4 月 15 日 P12-17,31
これらの説明を踏まえて、ものみの塔の相談役フィリップ・ブラムレイー氏は、この中で面白い意見
を述べている。
そのような事例はあったが、報告されるべき状況にはなかった。 もしくは、配慮されるべき状
況にはなかった。 方針はあったが、完全には守られなかったと言うのと、この問題を隠した
り、又は最小限に留めるための方針があると言うのと、全然違う。 エホバの証人が児童性的
虐待に関する方針を持っていることは、宗教界においては例を見ないことである。
ブラムレイー氏の発言は、ものみの塔協会はエホバの証人の内部における小児性愛の問題を隠し
たり、過小評価するための方針はないと言うことを一般社会に対しても、エホバの証人に対しても、
示唆している。 しかし幾つかの疑問が湧いてくる。
ものみの塔は「児童性的虐待の問題に関する情報を隠すような方針を持っていない」と主張した
まさにその同じプレス発表に、なぜ、わざわざ、ものみの塔の高官の声明を必要としたのか。 元々、
ものみの塔のプレス発表についての公式な立場は、わざわざ高官を引っ張り出さないということに
なっていたはずである。 そして、デイビッド・シンクレア氏は、統治体メンバーにあと一歩のところに
いる地位にもかかわらず、なぜ、ジョー会衆の長老としてビデオ・ニュースに現れたのか? なぜ、
シンクレア氏の地位を秘密にする必要があるのか?
108
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
なぜ、法廷審理の行なわれている間、ものみの塔は、会衆内の児童性的虐待の報告につかわれる
電話受付メモの用紙の提出を、あのように頑強に抵抗したのか? 何故、用紙のフォームを秘密に
する必要があるのか?
児童性的虐待の訴えがあれば、会衆の責任者たる長老が法律上の義務によって警察に届けること
が必要な州に住んでいる場合、なぜものみの塔は、長老にわざわざ公衆電話を使って匿名で、届
け出をさせるような指示があるにもかかわらず、これを一般のエホバの証人に開示していなかった
のか? なぜ、これらを秘密にするのか?
ものみの塔が、児童性的虐待に関するの訴訟について法廷外の和解を申請した時に、何故、裁
判所に対して書類の封印を申請したのか?
なぜ、秘密にする必要があるのか?
ものみの塔は、有力な広報部があり、また顧問弁護士のフィリップ・ブラムレイー氏が、ものみの塔
の児童性的虐待に関する取扱方針は、“宗教界において他に例を見ないものである”との声明を
出しているが、そうであるなら、なぜ、ものみの塔広報部は、訴訟が和解によって法廷外で解決さ
れたこと、及びものみの塔の任命した会衆の責任者の犯行によって被害に会われた被害者の皆さ
んに対するお詫びの声明について、一切のプレス発表をしなかったか? 何故、秘密にするの
か?
なぜ、ものみの塔は、児童性的虐待の被害者及び家族に対して、“常に勇気を持って”、犯罪を届
出でることを、教義の一つとして採用しなかったのか?
なぜ、ものみの塔は、各会衆の長老達に
対して、児童性的虐待の訴えについては、“必ず、地元の警察に届ける”という立場を取らなかった
のか? それをしていれば、少なくとも、周りのエホバの証人たちは、子供達を加害者たちの魔手
から守るための手段があったはずである。 なぜ秘密にするのか?
このような質問と明らかにされた文書から導き出される結論は、ものみの塔は、エホバの証人会衆
の内部における児童性的虐待の被害について、隠そうとするか、過小評価しようとする組織体質を
持っていると言わざるを得ない。
なぜ、ものみの塔世界本部(ベテル)のメンバーたちは、ものみの塔本部の指導者達のこのような
振る舞いに我慢しているのか?
今や、子供達をこのように危険な目に合わせた組織の方針・ルールを造った責任者、そしてエホバ
の証人を危機に陥れたことに重要な役割を果たした指導者の退任を要求すべき時である。
109
アメリカのある宗教における児童に対する性犯罪の秘密
ものみの塔
ものみの塔
広報部
ビデオ・ニュース記録
J. R. ブラウン: エホバの証人の組織スポークスマン
ブリッツ・インファンテ博士: 精神病、精神病理医
デイビッド・シンクレア: 会衆長老
フィリップ・ブラムレイー: エホバの証人 相談役
児童性的虐待に
児童性的虐待に関するエホバ
するエホバの
エホバの証人の
証人の方針
ブラウン氏
:我々は、エホバの証人の会衆内における児童性的虐待に関して大変、積極的
な方針を取っている。 それは、基本的に子供たちを守るように造られている。
そして、それは連邦政府及び州政府の法律を遵守するようになっていて、法律
との間に矛盾はない。
インファンテ博士 :私は大変よい方針であると考える。 長老は基本的に性的虐待を上位の責任
者に報告する立場にある。 もし責任者がいない場合は、他の成人の責任者が
取って代わって、報告する。 子供たちを守る為である。
シンクレア氏
:もし我々にこのような方針がなかったら、私のようにこの問題を取り扱った経験
のない者は、混乱するであろう。 助けをどこに求めればよいか分からないから
だ。 しかし、このような方針が用意されていることを知っていれば、必要な助け
を得ることができる。 安心できる。
だから会衆内において、必要な準備を通
して、子供達は必要な霊的助けと直面する困難を克服する勇気を与えられ
る。
ブラムレイー氏
:そのような事例はあったが、報告されるべき状況はなかった。 もしくは、配慮
されるべき状況にはなかった。 方針はあったが、完全には守られなかったと言
うのと、この問題を隠したり、又は最小限に留めるための方針があると言うのと、
全然違う。 エホバの証人が児童性的虐待に関する方針を持っていることは、
宗教界においては例を見ないことである。
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