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賃貸用建物を所有者から一括して借り受け、テナントに転貸していた者
が、当該建物およびその敷地の売買契約において、売り主に代わって買
主との交渉に当たった際、テナントから賃料減額の申入れを受けていた
ことを説明しなかったこと等について、説明義務違反を理由とする買主
に対する不法行為責任を否定した地裁裁判例。
Yは、賃貸用建物(本件建物)を所有者から一括して借り受け、これをテナ
ントに転貸していたところ、本件建物及びその敷地(本件土地)の売買契約に
おいて、売主に代わって買主Xとの交渉に当たった。
Xは、Yが右売買交渉に当たった際、過去にテナントから賃料減額の申入れ
を受けていたこと等、本件土地建物の評価に影響する事実をXに告げず、また、
テナントの業績が好調であるなどと虚偽の事実をXに告げたことにより客観的
評価以上の価格で本件土地建物を購入し、損害を被ったと主張し、Yに対し、
説明義務違反等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を求めた。
これに対し、Yは、売買契約の当事者でも仲介業者でもないYが説明義務を
負うことはなく、また、賃料減額の申入れがあった点等は、そもそも売主とし
ても説明義務を負う事項に当たらず、虚偽の事実を説明した事実もないとして、
不法行為責任を争うとともに、本訴請求が不当提訴に当たるとする反訴を提起
した。
本判決(東京地裁平成24年11月26日判決)は、賃貸用不動産の売買に
おいて賃料改定に関する交渉経緯等が説明を要する事項に当たる場合があるこ
とを前提として、これらの点について正確な情報を提供しないことによって買
主の判断を誤らせるおそれがあることを当然に認識すべき場合等、その作為・
不作為が信義誠実の原則に著しく違反するときには、買主が不法行為責任を問
われることも有り得るとしたうえで、本件においては、売主に代わってXとの
交渉を行っていたYは、売主と同様の責任を負うとしつつ、テナントから賃料
減額の申入れがあったにせよ、借地借家法上の減額請求権が行使されたわけで
はなく、従前賃料の支払が続いていたこと等を指摘して、Yに信義誠実義務違
反は認められないと判断し、Xの請求を棄却した。なお、Yの反訴請求につい
ては、本訴請求が法律的、事実的根拠を欠くことについて、Xが知っていた、
あるいは、容易に知り得たものとはいえないとして、これを棄却した。
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