X線自由電子レー ザー-電子ビームプ ロファイルモニター システム

X線自由電子レー ザー-電子ビームプ ロファイルモニター システム-
"NI画像関連のソ フトウェアとハード
ウェアは、プロトタ イピングツールや豊
富な画像ライブラリ を備え、様々な規格
のカメラに対応し、 デバイスの選定から
実際の開発段階ま で、LabVIEW
を用いて容易に統合 することができるた
め、システム全体の 開発時間の短縮を可
能となりました。"
- 株式会社 松浦 電弘社, 扇谷 大 氏
課題:
1オングストローム の「X線自由電子 レーザー」を世界で 初めて実用化するに あたり、SASE (自己増幅型)の FEL(自由電子
レーザー)の放射光 発生のための線形加 速器試験機におい て、電子ビームを直 線軌道に極めて精度 良く走らせるための アライメント技術が
重要であり、また課 題となっていた。
ソリューション:
拡張性のあるPXI システムにより、シ リアルインター フェースモジュール を組み込むだけで、 単一で多機能な計測 ・制御が可能なシス
テム構築を実現し た。
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お客様名:
株式会社 松浦電弘 社 - 扇谷 大 氏
はじめに
大型放射光施設 (SPring- 8)を拠点として放 射光に係わる最先端 の研究を行っている 独立行政法人理化学 研究所では、波長1 オングストローム*
以下のX線自由電子 レーザーを世界で初 めて実用化しようと する計画、SCSS (SPring- 8 Compact SASE [Self Amplification of Spontaneous Emission]
Source)プロ ジェクトと呼ばれ る、国家基幹技術に 指定されている国の 基幹プロジェクトの 1つに相当する最先 端の研究を行ってい
る。次世代放射光源 「X線自由電子レー ザー」などの放射光 分野の研究は、物質 科学、生命科学、環 境科学などの分野へ 応用されている。 *
オングストロー ム(記号:Å)は長 さの単位で、原子や 分子、可視光の波長 など、非常に小さな 長さを表すのに用い られる。1Åは 10-10m =
0.1ナノメートル (nm)= 100 ピコメートル (pm)と定義
されている。
現状と課題
この1オングスト ロームの「X線自由 電子レーザー」を世 界で初めて実用化す るにあたり、 SASE(自己増幅 型)のFEL(自由 電子レーザー)の放
射光発生のための線 形加速器試験機にお いて、電子ビームを 直線軌道に極めて精 度良く走らせるため のアライメント技術 が重要であり、また
課題となっていた。 その許容誤差は、 10~20メートル あたりにわずか数マ イクロメートルであ り、これらの動作検 証のため、加速管の
複数箇所での電子 ビームの空間プロ ファイルのモニタリ ングと計測を複数の CCDカメラを使用 した画像により行う システムの開発の依 頼を受けた。
システム要件
1. 高分解能 CCDカメラモニタ システムは、有効画 素数1,000 ×1,000ドット 以上を有し、20フ レーム/秒以上のフ レームレートを持つ
こと。また電動ズー ムレンズ部は動作距 離300 mm以上 500 mm以下で あり、倍率は7倍以 上を有すること。
2. 高フレーム レートC CDカメ ラモニタシステム は、有効画素数 640×480ドッ ト以上を有し、60 フレーム/秒以上の フレームレートを持 つこと。
3. 映像出力方 式は、 Camera Linkインタ フェースであるこ と。
4. 制御室に設 置されるコンピュー タから、放射線管理 区域に設置されるカ メラシステムの機能 を遠隔で制御可能で きること。(ズー
ム、フォーカス、 シャッタースピード 他)
5. 制御室とカ メラシステム部の間 の映像伝送系は光 ファイバーで構築す ること。
6. 外部トリガ によるシャッター開 閉と、シャッター幅 0.2 m秒以下の 制御が可能であるこ と。
7. 外部トリガ 信号に同期して 1,000フレーム 以上のビームプロ ファイル計測を連続 的に行えること。
システム概要
本システムの構築に は、上記のシステム 要件を満たす製品と してN IのPX Iシステム(図1参 照)をベースとし、 画像入力ボードやシ リアルインター
フェースなどのハー ドウェアと LabVIEWを採 用した。信頼性と安 定性が高いPX I コントローラと PX Iバスによる 高速データ転送能力
により、高解像度カ メラおよび高フレー ムレートの両方のカ メラからの画像集録 時にも、データの欠 損がなく画像集録・ 解析を行うことが可
能となった。また本 システムは画像集録 だけではなく、複数 のカメラの電動ズー ムレンズを使用する ことから、遠隔での カメラの切り替え制
御とレンズ制御が不 可欠である。拡張性 のあるPX Iシス テムにより、シリア ルインターフェース モジュールを組み込 むだけで、単一で多
機能な計測・制御が 可能なシステム構築 を実現した。
1. システム構成
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1. システム構成
本システムのコン トローラにはインテ ル® PentiumM®2. 0 GHzのCPU と1 GBのメモリ を搭載した「NI PXI-8196」 を採用した。PXI コントローラの
Windows OS上で動作する LabVIEWを使 用してアプリケー ションを構築し、カ メラの制御、レンズ の制御、カメラの切 り替え、画像の解
析、解析結果の保 存、画像の保存、お よび画像の再生を行 う。また、 LabVIEWを用 いて制御も行う。 ハードウェアとその 他の構成は下の図2
のようになる。
図2. システム構 成図
2. システムの詳 細とNI製品を使う メリット
使用するカメラ は、システム要件の 解像度(有効画素 数)とフレームレー ト以上を満たした Camera Linkタイプのも のを選択した。NI
のフレームグラバ ボードは種類が豊富 で、35 以上のカ メラメーカが製造す る500以上のカメ ラ機種など、様々な タイプのカメライン
タフェースに対応し ている。また、NI 画像入力ソフトウェ アは、 Camera Linkを始め様々 なカメラの規格に対 応したドライバソフ トウェアであるた
め、豊富な選択肢の 中から本アプリケー ションに合ったカメ ラを選定することが できた。高解像度 CCDカメラは、 2/3型プログレッ
シブスキャンカメラ を使用し、高速フ レームレートCCD カメラは1/2型プ ログレッシブスキャ ンカメラを使用し た。上記の両カメラ
は課題の有効画素数 とフレームレートを 満たし、 Camera Linkの規格に 沿っている。フレー ムグラバボードに は、NIの Camera Link対応の画像
入力ボード「NI PXI-1428」 を選定し、付属の画 像入力ソフトウェア を合わせて使用する ことで、カメラ特有 の設定も制御でき、 LabVIEWによ
り光ファイバーシリ アル通信経由で露光 時間やゲインレベル などの設定や変更が 可能となった。ま た、高解像度CCD カメラの電動ズーム
レンズには、動作距 離 (Working Distance) が300 mm以上 500 mm以下 で、最高倍率7倍の 電動ズームレンズを 選定した。本システ
ムの電動ズームレン ズはシリアル通信で ズーム・フォーカス の各制御ができるた め、シリアルインタ フェースボード 「NI PXI- 8420」を使用
し、LabVIEW からの制御も可能と した。シリアル通信 を利用することで、 放射線管理区域に設 置してある電動ズー ムレンズを制御室か
ら遠隔操作で制御す ることが可能となっ た。カメラとレンズ の設置方法は下の図 3のようになる。
図3. 自己増幅型 放射光発生のための 線形加速試験器
加速管の複数箇所で の電子ビーム空間プ ロファイルのモニタ リングのために12 台のカメラを設置し ているが、オンライ ン解析の処理を行え
るように、12台中 1つのカメラを計測 専用のカメラとして 切り替える必要があ る。最大4台まで切 り替え可能なカメラ 切替器を5台用意
し、図2のように配 置することにより、 最大20台までのカ メラを切り替え可能 とした。選定したカ メラ切替器はシリア ル通信で遠隔操作す
ることができ、レン ズ制御と同一のモ ジュール「NI PXI-8420」 を使用した。また、 カメラからの映像伝 送系はレンズ制御と 同じく長距離の高速
データ転送になる が、画像データ光信 号変換器(図2参 照)を使用すること で映像伝送が可能と なった。 外部トリ ガ信号によるシャッ
ター開閉制御は、電 子ビームの発生後、 カメラに到達するま での遅延があるた め、0.2ミリ秒以 下での高精度の遅延 コントロール制御が
必要となる。画像入 力ボード「NI PXI-1428」 は4つのトリガを搭 載しており、その中 の2つのトリガを使 用して正確な遅延制 御を実現した。1つ
のトリガで外部トリ ガを受け、任意の遅 延時間後に再度トリ ガを発生し、もう1 つのトリガで発生し たトリガを受けるこ とで、カメラの
シャッタータイミン グと電子ビームの同 期が可能となった。 すべての信号伝達を ハードウェアタイミ ングで行うため、マ イクロ秒精度での
シャッター動作制御 を実現でき、複雑な 同期制御を可能とし た。 さらに 「NI PXI- 1428」はケー ションで、再度別の パラメータなどでも
解析が可能となるた め、バイナリから ASCIIへの変換 や、さまざまな画像 形式に再変換して保 存することもでき た。LabVIEW で作成したユーザイ
ンタフェースは図4 のようになり、実際 の実験から得た電子 ビームのプロファイ ル画像が表示されて いる。
課題解決
線形加速器試験器 において、この電子 ビームプロファイル のモニタリングシス テムは、X線自由電 子レーザーを世界で 初めて実用化に貢献
するものと考える。 それには、次の2つ の効果が大きい。 1) NI画像関連 のソフトウェアと ハードウェアは、プ ロトタイピングツー
ルや豊富な画像ライ ブラリを備え、様々 な規格のカメラに対 応し、デバイスの選 定から実際の開発段 階まで、 LabVIEWを用 いて容易に統合する
ことができるため、 システム全体の開発 時間の短縮を可能と した。 2) PXIシステムの同 期制御機能やフレー ムグラバボードに搭
載されているハード ウェアタイミングク ロック機能により、 電子ビームパルスと 撮像周期を容易に同 期させることが可能 となった。
お客様情報:
株式会社 松浦電弘 社
扇谷 大氏
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図4. LabVIEWで作 成したユーザインタ フェース画面(電子 ビームのプロファイ ル)
法律関連事項
このユーザ事例(こ の「ユーザ事例」) はナショナルインス ツルメンツ (「NI」)の顧客 によって作成された ものです。このユー ザ事例は「現状のま
ま」提供され、一切 の保証を伴いませ ん。また、このユー ザ事例の使用につい ては、本サイトの使 用条件でより具体的 に記載されていると おり、一定の制限を
受けます。
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