触覚センサをもった発泡体成型による 柔軟な自由形状 - JSK

2P1-N-105
触覚センサをもった発泡体成型による
柔軟な自由形状センサ皮層の開発
○ 林 摩梨花(東京大学)
岡田 慧(東京大学)
正 稲葉 雅幸(東京大学)
杉山 悠(東京大学)
正 稲邑 哲也
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$ $ はじめに
ロボットが柔らかい皮膚と触覚を持つことは,家庭や教
育施設などの日常的な生活空間でロボットと人間とが触れ
合う際に必要となってくる.また一方で人間にとって親し
みやすい外形状を設計者の意図どおりに造形することも重
要である.そこで本研究では,柔軟で,触覚を持ち,表面
に 次元曲面を自由に作ることの出来る,ロボット外装の
構成法を示すことを目的とした.
*
自由形状センサ皮層の設計方針
本研究では安全性を確保できる柔軟さと,触覚センサ,お
よび表面形状の造形の自由さを持つロボット外装を自由形
状センサ皮層と呼ぶ.この外装を構成するには以下のよう
な問題を考慮する必要がある.
, * 次元曲面上へのセンサの配置方法
- 柔らかさと形状の自由さを持った被服の素材
* 配線方法
次元曲面上へのセンサの配置
これまで,ロボット用の柔軟な触覚センサに関する研究
は,触覚センサスーツ
や,音響共鳴テンソルセル触覚セ
や,感圧導電性ゴムと導線を縫いこんだ触覚センサ
ンサ
有機トランジスタを大面積に配置したもの
ゲル中に
色の異なる点を描いてカメラでその位置変化を見る触覚セ
,がある.商品としては,
ンサである
社製の
や,タッチパネルなどに用いられている静電
容量タッチセンサ,光ファイバをスポンジ中に埋め込んだ
等がある.
ニッタ社製
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(3.4/
567.8/
*
*
567
柔らかさと形状の自由さを持った被服の素材
柔らかさという言葉の意味ををここでは,圧縮されやす
く,曲げやすいという性質を持ち,表面がなめらかもしく
は毛のようなもので覆われていて,人間や動物に近い触感
を持つことと定義した.また,形状の自由さという言葉に
ついては,設計者が意図したとおりの 次元的な形状にす
る事ができて,ロボットが関節を動かすなどして外装が伸
縮した場合にも,その変形を設計者がある程度設計できる
という意味で用いる.
このような柔らかさと形状の自由さをロボットの表面に
持たせるための素材としては,ゴムやゲル,布のような柔
軟さを持ったシート,綿,ウレタンフォーム等の発泡体が
考えられる.布のように平面的な素材を裁断して張り合わ
せて内側に詰め物をするように外装を構成した場合は表面
にしわやたるみが出るために,細かい形状を保たせる事が
∼
程度で
出来ない場合がある.ゴムやゲルは比重が
あり厚みを持たせると重くなる.圧縮率はスポンジや綿に
比べると低い.
本研究ではセンサ原理に,ウレタンフォームといった発
*
以下ではこれらの問題について述べる.
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このうち平面状に配置されたセンサシートを,ロボット
の外骨格に貼り付けたり,服のように袋状にしてロボット
を入れたりするという方法は,平面や円筒面へ沿わせるに
は十分であるが 次元曲面にしわやたるみが無いように沿
わせる事は出来ない.このために,表面形状の自由さは減
少する.また,しわやたるみがあると,ロボットが体を動
かした際にセンサの反応がしわによる影響を受けてしまう
ため,センサ処理が困難になる.
本研究では安全性を確保できる柔軟さと,触覚センサ,お
よび表面形状の造形の自由さを持つロボット外装を目指し
ているので, 次元的にセンサ素子を配置できるという点と
スポンジの持つ柔軟さに着目して,ニッタ社製
に用いられているセンサ原理を採用した.
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$
9: -9
[No.05-4] Proceedings of the 2005 JSME Conference on Robotics and Mechatronics, Kobe, Japan, June 9-11, 2005
2P1-N-105(1)
Ԙ
泡体中に光ファイバを埋め込んだものをを選択したが,こ
れはセンサ素子の一部となっている発泡体が,柔らかさと
形状の自由さにおいて利点を持っている.また,硬さを調
節して成型することが出来るので,ロボットの身体各部で
センサ感度を調節することも出来ると考えられる.
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配線方法
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触覚センサをロボットに実装する際は配線が問題となる.
触覚はロボットの表面に分布させる必要があるので,セン
サのための配線に体積がかさむことと,ロボットのメンテ
ナンスのために触覚センサを取り外す際にこの配線を取り
外したりつけたりすることに難しい点がある.
皮層の成型と同時に配線もすることが出来,皮膚そのも
のをつけたりはずしたりすることが出来れば配線の手間が
省ける.そこでロボット骨格側に光ファイバを配線し,そ
の上からウレタンフォームの発泡前の薬剤を混合して流し
込んでモールド成型するという手順で作成することにした.
Inner
Model
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Free form
skinfold structure
センサ特性と成型の自由度の評価
Photo devices
Commercial
USB Camera
スポンジを成型するに当たっては日新レジン 発泡ウレ
タンソフト(主成分:変性ポリオール(主剤),4 4 ジ
フェニルメタンジイソシアネート(硬化剤)),を用いた.主
剤と硬化剤の配合比率によって硬度が異なってくるが,今回
程度で配合した.
は人肌程度の柔らかさを持つように
のように直径
,高さ
の円筒形の中に,
の深さにファイバを埋め込んだ状態
底面の中心から
をモールド成型した.この試
でポリウレタンスポンジ
験片に外光を遮断するように覆いをかけ,上から圧力をか
けた.図にあるように,一方のファイバの端から赤色
からの光を入力して
カメラでもう一方のファイバの端
値の赤色成分の値を記録した.実験結果
面を録画し,
に示す.約20秒間だけステップ的に,それぞれ
を
の荷重をかけて,時間的な変化を観察し
たところ,ややクリープは残るものの荷重の変化を検出で
下は1分間かけて押し付けて
きることが確認できた.
離した際の荷重とセンサ出力の関係である.ヒステリシス
のあることがわかる.
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センサ特性
(*
Optic
fiber
ԛ
発泡体成型によるセンサ皮層の成型法
本節では発泡体の成型手順について説明する.
に成
型手順を示した.まず外形とロボット骨格の型を作成する.
などを用いて最終形状のモデルを作ってからそれ
3
を反転した型をラピッドプロトタイプ装置などを用いて作
成すれば,簡単に作成することが出来ると考えられる.次
に,ロボット骨格の型の表面に光ファイバを配線する.そ
して光ファイバを埋め込んだ状態でウレタンフォームの発
泡前の薬剤を流しいれてモールド成型する.型からはずし
て外光を遮断するために塗装して,光ファイバの端を撮像
素子へ組み立てる.
のとおりである.撮像デバ
全体のシステム構成は
カメラを用いて,小型のデバイスで多点
イスは市販の
を簡単に観測出来るように図った.
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(0
USB cable
Optic fiber
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?6+
PC
LED
( -> ! !$ このセンサは光を使用しているのでスポンジ内部に外光
が入ると出力される輝度値が上昇する.先ほどと同じ図の
試験片を用いて,錘を載せずに光量の違なる状況でのカメ
のよ
ラの出力を 分間測定し平均をとったところ,
うな結果が得られた.カバーをつけなければ外光の影響を
受けることを確認した.よってセンサ皮層を成型した場合
にスポンジの外部を塗装したりすることでつけることで遮
光することが必要である.塗料には伸縮性が必要であるの
2P1-N-105(2)
,
$,
Force
Gauge
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CMOS camera
条件
USB camera MU2-48(Aplux Co.)
センサ出力
4A0:
8-90
,-4A-
ゴムシートカバーにより遮光
PC
室内(消灯時)
室内(点灯時)
25mm
Red LED
FR3863X(Stanley Electric Co.,LTD.)
80mm
B
paraboloid
load 6.0kg
load 0.2kg
load 1.7kg
78
77.5
77
76.5
( 2> !
76
75.5
Red component output of CMOS camera
Red component output of CMOS camera
10mm (A)
5mm (B)
A
78.5
75
74.5
0
20
40
60 80 100 120 140 160
time[sec]
80
79
78
85
80
75
70
65
60
55
50
under concave
under projection
45
40
0
77
5
10
15
20
Load [kg]
76
( 4> !
!
75
0
1
2
3
4
5
6
7
8
(2
Load [kg]
( 0> # # 36167
で,ラテックスゴム(
社製
絵の具を適量混合したものを用いた.
80mm
height
5mm
Red component output of CMOS camera
( *> ; ! $ @
299)にアクリル
成型の自由度および外形状の内部のセンサに与える
影響の確認
*
本研究の自由形状センサ皮層は 次元的な曲面を成型す
ることが出来るが,どの程度まで自由な外形状を実現でき
るかを実際に成型することで確認した.また,表面に凹凸
ができることで,光ファイバ端点の位置と凹凸の位置関係
によって,センサ出力が異なってくることが予測されるが,
これについても実験によって確かめた.
-
左のように,表面に放物面の凹みを持つような 種
右に
類の型を用意し,スポンジをモールド成型した.
突起の寸法を示した.パターン はほぼ型どおりのものが
出来たが,パターン は離型する際にスポンジがちぎれた
り,型の凹み部分に大きな気泡が出来てしまい,うまく成
型出来なかった.
<
"
(2
表面に凹凸が出来ることによって内部のセンサに影響が
のパターン のへこ
出る事が予測される.よって,
みの部分と突起の直下にそれぞれ光ファイバを端面が裏面
になるように埋め込んで,上から均等
の底面から約
の薄い線はへこみの直下濃い線は突
に荷重をかけた.
起の直下におけるセンサ出力である.突起の大きさがこの
程度であれば,突起の有無についてのセンサ出力の変化は
見られない.現段階では,表面形状がセンサ出力の変化に
与える影響よりも,各センサ素子間の恒常的なセンサ出力
のレベルに差があることのほうが問題である.
2P1-N-105(3)
(2
2
(4
"
( 8> # ! ! !$ 小型ロボットへの実装
(8 のように実際のロボットのための自由形状センサ皮
( A> ! ! !$
層を作成した.このように小型のロボットの外面を3次元
的な曲面に設計することが出来る事,押したときに圧縮さ
れて柔らかいさわり心地になっていることを確認した.
このロボットの内部のアクチュエータおよび骨格は
に示したとおりであり,岡田ら
により開発されたものを
に示したように,2つのパーツからなる
用いている.
の骨格にかぶせて,継ぎ目を
自由形状センサ皮層を
接着することで組み立てた.
(A
.A/
(:
(:
おわりに
本研究では,柔軟で,触覚を持ち,表面に3次元曲面を
自由に作ることの出来るロボット外装の構成法を示すこと
を目的とした.三次元曲面上にセンサを配置するため,発
泡体中に光ファイバを埋め込み,発泡体が圧縮されること
によるセンシングする方法を選択した.この発泡体を三次
元的にモールド成型することで,実際に設計者の意図した
ような自由形状を保つことが出来て柔軟な外装を構成する
ことが出来ることを確認した.
現在の問題点には,外部からの衝撃等によって光ファイ
バが内側で折れた際,折れた箇所のみを交換する事が出来
によって提案され
ないという点がある.既に篠田ら
ているように,センサ素子を含むモジュールが超小型であ
り,配線が不必要であれば,製作の簡単さと部分的な交換
とが出来る.今後は送受光素子の小型化,センサ素子とプ
ロセッサのモジュール化に取り組んでメンテナンス性の向
上を図りたい.
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文献
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岡田慧 冬野明 木野泰之 小倉崇 稲葉雅幸 井上博允
.A/
.,/ 稲葉雅幸 星野由紀子 井上博允 導電性ファブリック
超小型プロセッサを用いたサーボユニットによる小型
を用いた全身被服型触覚センサスーツ 日本ロボット
ヒューマノイドの実現 日本機械学会ロボティクス・メ
学会誌 B$ ,4 5 , A9CA4 ,::A
カトロニクス講演会=9* 講演論文集 ,D,C*(C1-
.-/ 吉海智晃 但馬竜介 加賀美聡 篠田裕之 稲葉雅幸 井
-99*
上博允 音響共鳴型テンソルセル触覚センサによる滑り
.:/ 篠田裕之 柔らかい機会の人工皮膚 日本ロボット学会
予知と把持動作への応用 日本ロボット学会誌 B$ -9
誌 B$ ,: 5 8 A,0CA,8 -99,
5 A A4ACA82 -99-
.,9/ E $
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3 ,--- 3 " $ " # :28C:4, ,:::
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2P1-N-105(4)