デジタル画像相関法 を使用したタイヤの 非接触ひずみ・変形 同時計測

デジタル画像相関法 を使用したタイヤの 非接触ひずみ・変形 同時計測システム
"LabVIEW という直観的で分か りやすいグラフィカ
ル言語でプログラム を作成することで、
自分のような初心者 でもすぐに実用的な
ソフトウェアが開発 可能であった。事
実、サブピクセル精 度の DICM を
用いたひずみ計測と いう、通常ならば2
年程度をかけて組み 立てる計測システム
を、学部生の自分が わずか4ヶ月で作成
することができ た。 "
- 平岡 直樹 氏, 東京工業大 学 工学部 機械宇 宙学科 轟研究室
課題:
リアルタイムにタイ ヤの変形・ひずみを 計測するためには高 速、かつ正確なサブ ピクセル精度のパ ターンマッチングが 要求される。しか
し、三次元的な変形 を伴う対象に対する 高精度のパターン マッチングは非常に 計算が複雑であり、 高度な専門知識を必 要とする。
ソリューション:
NI Vision 開発 モジュールを用いた ことでサブピクセル 精度のパターンマッ チングを行うプログ ラムを極めて短時間 で開発することがで
きた。画像分析によ り得られた各データ を数値的に処理する ことで、面外変形を 考慮したひずみ計測 システムを構築する ことができた。ま
た、各画像処理の有 無やパラメータをフ ロントパネルから容 易に変更できるた め、撮影対象や撮影 条件が変わってもす ぐに対応可能とい
う、きわめて柔軟な システムの運用が可 能となり、システム の応用範囲が予想以 上に広がった。
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お客様名:
平岡 直樹 氏 - 東京工業大学 工学部 機械宇宙学 科 轟研究室
背景:
世界全体の自動車 の90%が ABS を標準装備 しており ABS の供給は十分に高い が、それでもなお、 多くの人身事故が雨 や雪による路面の摩
擦係数低下により引 き起こされている。 現在、走行中の路面 状態を運転者が直接 認識する手段がない ため、高い運転技術 を持った運転者に
とっても路面状態に 合わせた運転を行う ことは非常に困難で あり、路面状態認知 支援システムの開発 が急務となってい る。
これに対して、す でに米国ではタイヤ 空気圧監視装置の装 着義務化が開始さ れ、車両制動制御の 向上を目的として、 タイヤ変形計測セン
サを備えたインテリ ジェントタイヤの開 発が始まろうとして いる。しかし提案さ れているセンサは、 タイヤにセンサを直 接接着する方法であ
り、長期間の使用に より柔軟材料である ゴムからはく離する 問題があり難航して いる。そこで、本研 究ではホイールリム にイメージセンサと
複数のレーザダイ オードを装着し、画 像処理診断から非接 触でタイヤの3次元 変形を計測する革新 的なシステムを構築 する。タイヤの3次
元変形モニタリング により、路面とタイ ヤとの摩擦係数μを リアルタイムで計測 することが可能にな り、スリップ比と摩 擦係数の応答を見る
ことで、路面状態を 自動車運転手が認知 する路面状態認知支 援システムが実現さ れる。この路面状態 認知支援システムに より、悪路面環境を
走行中に運転者に警 告することで、運転 者は路面状態をリア ルタイムで認知する ことが可能になり、 悪路面でのスリップ による車両・人身事
故は大幅に減少する と期待される。
課題:
本システムの目的 は、イメージセンサ から取り込んだ画像 を元に、タイヤの変 形形状およびタイヤ 内面の二次元的なひ ずみをリアルタイム
に計測することであ る。画像分析による ひずみ計測法の一つ に、画像の特徴ピク セル移動量からひず み量を計算するデジ タル画像相関法 (DICM:
Digital Image Correlation Method)が存 在する。しかし、タ イヤのような撮影対 象に大きな形状変形 が伴う場合は、この 方法で直接ひずみ量
を求めることはほぼ 不可能である。よっ て、ひずみ計測を行 う前にタイヤの形状 変形を撮影画像より 計算し、その結果を 用いてデジタル画像
相関法の結果を修正 する必要がある。
リアルタイムにタ イヤの変形・ひずみ を計測するためには 高速、かつ正確なサ ブピクセル精度のパ ターンマッチングが 要求される。しか
し、三次元的な変形 を伴う対象に対する 高精度のパターン マッチングは非常に 計算が複雑であり、 高度な専門知識を必 要とする。
ソリューション:
【システム構成】
システム構築に は NI の LabVIEW 8.2を使用した。 また、画像解析用ソ フトウェアとして NI Vision 開発 モジュール 8.2.1を使用し た。
計測システムの概 要をFig.1に示 す。CCD カラー カメラで撮影したイ メージを画像集録 ボード NI PXI-1411に 取り込む。レーザダ
イオードの光によっ てマーキングされた タイヤ表面上の定点 を検出するために画 像の二値化をし、そ して粒子フィルタ等 を通すことで不必要
な情報を削除する。 計測したレーザ点の 移動からタイヤの形 状変形を計算する。
また、取り込んだ 画像から複数の ROI を切り取 り、それをテンプ レートとしてサブピ クセル精度のパター ンマッチングを行 い、ROI の変位
量からひずみを計算 する。二値化の際の 閾値や必要な情報の みを取り出すための 画像処理法、および パターンマッチング の際の精度と計算時
間の比重を決める各 パラメータはフロン トパネル(Fig. 2)で設定できる。
フロントパネルの 各項目は、
①変形計算進行状 況
対象の変形計算に ついて、何枚の画像 を処理したか、その 処理に何秒かかった かを視覚的・数値的 に表示する
②計算した平面形 状
計算結果から得ら れた情報を元に、平 面形状を三次元グラ フで描写する
③変形形状分を修 正した画像
変形情報を画像に 適応し、適切な大き さ・傾きに修正した 画像
④ひずみ計算進行 状況
ひずみ計算につい て、何枚の画像を処 理したか、その処理 に何秒かかったかを 視覚的・数値的に表 示する
⑤ひずみ計算結果
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⑤ひずみ計算結果
計算されたひずみ をグラフに表示する
⑥画像上のマッチ ング状況
パターンマッチン グで追跡したROI の位置情報を、画像 上の赤いマークで表 示する
Fig.1 計測 システムの概念図
Fig. 2 計 測システムのフロン トパネル
【結果】 本システムの最終 目的はタイヤの変形 ・ひずみを計測する ことであるが、タイ ヤは柔軟材料ゆえに 正確なひずみを知る ことが難しく、シス
テムの有効性を確認 しがたい。よって、 ひずみ本システムの 有効性および計測精 度を確認するため に、ひずみセンサや 理論式などにより正
確な変形・ひずみが 容易に分かる物質を 対象に計測を実施し た。
DICM のひず み計測精度を示す一 例として、ランダム パターンの存在す る GFRP の平 板に引張荷重を加え たときの、 DICM プログラ
ムによる計算値と歪 みゲージの測定値の 比較をFig.3に 示す。画像分析で あっても、サブピク セル精度のマッチン グを行うことで、接
触型センサと比べて も遜色のない計測精 度が出ていることが 分かる。
Fig. 3 GFRP 引張にお ける接着型センサ と DICM の精 度比較
また、単純支持 Al 梁に荷重を加 え変形させたときの 変形の計測値と梁の たわみの式より計算 した理論値、およ び DICM で計 算したひずみの計算
値と、梁の式より計 算したひずみの理論 値の比較をFig. 4に示す。梁のたわ みという三次元的な 変形を伴う場合のひ ずみ計測を、一つの
固定カメラによる画 像分析のみで行うこ とは通常不可能であ る。しかし、形状変 形の計測と DICM によるひ ずみの計測結果をす り合わせることで、
Fig.4のように 正確なひずみを計算 することができる。
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(a)Al 梁変 形量の計算値と理論 値
(b)変形量修正 をした DICM によるひずみの計算 値と理論値
Fig. 4 形状 変形を伴うAl梁に おける理論値と計算 値の比較
以上の結果から、 本システムが変形・ ひずみ同時計測にお いて有用であること が確認できた。
NI Vision 開発 モジュールを用いた ことでサブピクセル 精度のパターンマッ チングを行うプログ ラムを極めて短時間 で開発することがで
きた。画像分析によ り得られた各データ を数値的に処理する ことで、面外変形を 考慮したひずみ計測 システムを構築する ことができた。ま
た、各画像処理の有 無やパラメータをフ ロントパネルから容 易に変更できるた め、撮影対象や撮影 条件が変わってもす ぐに対応可能とい
う、きわめて柔軟な システムの運用が可 能となり、システム の応用範囲が予想以 上に広がった。
LabVIEW という直観的で分か りやすいグラフィカ ル言語でプログラム を作成することで、 自分のような初心者 でもすぐに実用的な
ソフトウェアが開発 可能であった。事 実、サブピクセル精 度の DICM を 用いたひずみ計測と いう、通常ならば2 年程度をかけて組み
立てる計測システム を、学部生の自分が わずか4ヶ月で作成 することができた。
一般に、画像分析 による非接触ひずみ 計測が可能な測定機 器は、単純な一軸引 張でも200万円 ~、2台のカメラを 用いた三次元計測と
もなると1000万 円~、と非常に高価 である。一方、 LabVIEW で プログラムを開発し 計測機器を市販のカ メラなどで代用する ことで、全て合わせ
ても50万円程度で 計測システムを構築 することが可能であ り、大幅なコスト削 減を達成できた。そ の結果、測定する意 義はあるがあまりコ
ストは掛けられな い、といったところ も含めた広範囲での システムの使用が可 能となった。
お客様情報:
平岡 直樹 氏
東京工業大学 工学 部 機械宇宙学科 轟研究室
日本
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計測システムの概念 図
法律関連事項
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