ワイン課通信 2009年8月号 お疲れ様です!バニュルス上野の横畠と申します。 暑い…とけそうです(>_<)さわやかな風が吹くすてきなテラスで、キリッと冷えた白ワイン飲みたくないですか?(‘-^)b-☆ 上野店では8月23日まで白ワインフェア開催中です。カヴァも含めてグラスで12種類飲めちゃいます。 いきなり告知ではじまりましたが、今回のテーマはスペインが世界に誇る酒精強化ワイン・へレス(シェリー)です。 *へレスの産地* 原産地呼称「へレス」「ケレス」「シェリー」「マンサニージャ=サンルカール・デ・バラメダ」で保障される生産地はイベリア半島南端の アンダルシア地方にあり、シェリー三角地帯と呼ばれています。この三角をつくる町以外に、いくつかの畑や行政区域も含まれ ます。産地の中心にある町がヘレス・デ・フロンテラ(略してへレス)です。 東京とほぼ同緯度にありますが、地中海性気候&1年間のうち約300日 が晴れ&空港から町までヤシの木の並木道、という南国ムードがあふれて います。このあたりはポニエンテという大西洋から吹く風がぶどうの木に 海の湿気をもたらし、夏の乾燥を和らげぶどうの木が熱くなりすぎるのを 注! 防ぎます。そしてなんといっても大きな特徴はアルバリサ○ 写真をみてください!!輝く太陽、青い空、地面の白とぶどうの葉の緑の 縞模様がなんと美しいことか!!!…が、夏場は40度を有に超え、 アルバリサの照り返しがハンパないそうです。う~ん、暑いのは苦手デス(-_-) 注 アルバリサ…漸新世の時代にこの地域を被っていた内海の堆積物で形成される有機の白い泥炭石で、炭酸カルシウム、粘土、硅土に富む。 ○ 保湿性が高く、冬に降った雨をスポンジのように吸い取り、表面が乾燥して固まる夏にぶどうの木に水分を与え続けるスゴイ奴! ちなみに年間降水量は東京の半分以下!そのほとんどが10月から5月に降るらしい。 *ぶどう品種~ヘレスになれるのは3種のみ!!!~* パロミノ 栽培・醸造の特性上、圧倒的に優勢な品種!栽培されるぶどうの約95%を占めています。 特徴はというと、糖度はそんなに高くないし、風味はニュートラルだし・・・個性ナシ?? いえいえ、それこそが特有の熟成工程を経るヘレスにピッタリなのです!!! ペドロ・ヒメネス フルーツの風味と独特な香りをもったスバラシイ甘口ワインに化けます。 そのために、太陽のもとで干しぶどう状にする「ソレオ」という工程を通ります。 栽培量はごくごくわずか。 モスカテル 食用にもされる品種。海の近くでよく育ちます。 ペドロ・ヒメネスより甘みのやさしいヘレス「モスカテル」の原料。 チピナオ(大西洋岸のビーチリゾート)のモスカテルが有名です。 *THE・醸造* 通常の白ワインと同じ醸造課程を経て、ワインができあがりました。 11月まで放置され(もとい、静かに寝かされ)固形物はすべてタンクの底に沈殿し、澄んだお姿となりました。 アルコール11~12度の完全な辛口ワイン…のはずなのに、なんだ?なんだ??ワインの表面に カッテージチーズのような、おからのような…なんだか白いモアモアが浮いていますけど? はい、きました。きましたよ、コレ。 いわゆる産膜酵母です。いわゆるフロールです。 通常のワインの場合酸膜酵母が発生したものは失敗とみなされますが そこがヘレスはヘレスたる所以。ヘレスではフロールがよい方向に作用します。 このような酸膜酵母は世界的には非常にめずらしいものなのです。 この時点で最初の分類が行われます。 香りが大変クリーンで、色が淡く、軽やかなワイン・・・フィノ ボディがあり、色が濃く、骨格がしっかりしたワイン・・・オロロソ そして、はい、きました。マンヲジシテノ酒精強化!!! ワインの蒸留酒を使ってフィノは15度まで、オロロソは17度までアルコール度を上げます。 フロールはアルコールが15度のとき最も活発になります。15度にしたフィノの場合、熟成期間中ワインの表面を フロールが完全に覆い続けます。この膜はサッカロミセス属の酵母によって構成され、ワインから空気を遮断し 酸化を防ぎます。同時にワインにフロール特有のイーストっぽい香りを与えます。これを生物学的熟成と呼びます。 一方オロロソはというと、アルコール度が高いためフロールが生育できません。そのためワインは常に空気にさらされて酸化し 色が琥珀になり、香り豊かに力強くなります。これを酸化熟成、もしくは物理化学的熟成と呼びます。 *熟成~そう、その名はソレラ・システム~* ヘレスは独得のシステムで熟成されます。 普通のワインが一度樽詰めしたらそのまま熟成させるのに対し ヘレスの場合は樽から樽へ、新しいへレスを古いヘレスと ブレンドしながら熟成させます。これがソレラ・システムです。 熟成庫のワインは図のように3~4段に積み上げられ 一番下の樽はソレラと呼ばれ一番年代が古いワインが入っています。 出荷するときは必ずソレラから出します(サカ)。 ただしソレラは絶対に空にしてはいけません。 最大でも一度に内容量の3分の1までしかサカしません。ソレラの減った中身を補充するのに使うのが 積み上げられた樽のへレスです。ソレラのすぐ上の2段目の樽は、ソレラより少し若いワインが入っています。 それをソレラに補充します(ロシオ)。さらに2段目の樽の減った中身をさらに上の3段目からロシオします。 一番上の樽の補充はソブレタブラとよばれる酒精強化された新しいワイン (他のヴィンテージのものと混ぜない単一ヴィンテージのワイン)を使います。 日本でいう「先祖代々のウナギのたれ」方式とでもいいましょうか。 使った分だけ新しいたれを足して混ぜて、先代の味を継承していく、そう、あれです。 ヘレスのソレラには100年以上たつものも多いそうです。まさに文化!まさに歴史!! *へレスの種類・分類* 1 ビノ・へネロソ・・・パロミノ種でつくられ、醗酵を完了するため完全な辛口です ○ 2 ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル・・・甘い品種(ペドロ・ヒメネスとモスカテル)でつくられ、 ○ 醗酵を止めてぶどうの糖分を残すため完全な甘口です 3 ビノ・へネロソ・デ・リコール・・・上のふたつをブレンドしてつくられ、いろいろな段階の甘さのへレスとなります。 ○ 1 ビノ・へネロソの仲間たち~ ~○ <マンサニージャ> フィノと同じもので、海辺の町サンルーカルで熟成されたものです。 サンルーカルは湿った涼しい海風を受けるので、内陸にあるヘレスよりもフロールの 生育環境がよく、その気候条件によってソルティな風味が生まれます。 ドライで軽やかでシャープ!そしてカモミールのような香りもあります。 <オロロソ> 酸化熟成した辛口ワイン。香りが豊かでフルボディで紹興酒に少し似ている? フィノのようなキレのいい辛口ではなくまろやか♪甘く感じることもありますが、含まれている グリセリンの影響です。内陸にあるヘレスは酸化熟成に向いていて プエルトのフィノ、サンルーカルのマンサニージャ、へレスのオロロソとよばれています。 <アモンティジャード> フィノに分類されフィノとして育ったものが途中でフロールを失い、酸化熟成したもの。フィノとオロロソの中間的存在 <パロ・コルタード>。 酸化熟成系の中でもとくに微妙な個性を持ち、テイスティングによって「これはパロ・コルタードだ!」 と判断されたときのみ生まれるレアな存在。オロロソのボディにアモンティジャードの香りをもつといわれ、 人工的につくることはできず、偶然にあらわれるのを待つ。ひたすら待つ!!! 2 ビノ・ドゥルセ・ナトゥラルの仲間たち~ ~○ <ペドロ・ヒメネス> 名前の通り、ペドロ・ヒメネス種でつくられたもの。凝縮した甘さ、トロンとした濃度…絶品! <モスカテル> モスカテル種でつくられたもの。香りにモスカテル特有のサワーさがあります。ボトリングされている商品はごくわずか… 3 ビノ・へネロソ・デ・リコールの仲間たち~ ~○ <ドライ> 直訳すれば辛口ですが、実際にはほのかな甘口。おもにフィノをベースにしています。 <ミディアム> 基本的にはアモンティジャードをベースにしてペドロ・ヒメネスで甘みをつけたもの。 <クリーム> オロロソがベース。ボディのあるオロロソに甘味が加わった分、 さらに厚みが増し、温かさが感じられます。 書き忘れていました *貯蔵熟成庫・ボデガについて* スペイン語でいうボデガは、貯蔵熟成庫という意味以外に、個人宅のワインセラーや酒屋さん、 ワインメーカーなどお酒に関するものに広く使われています。 ヘレスの熟成は、原則としてへレスとその隣町のプエルト、サンルーカルの三都市で行われます。 貯蔵されているワインが朝のかすかな海風と大西洋から吹く ポニエンテの風をうけられるように、ボデガは海の近く、もしくは海にむかってひらけ た高台になければいけません。さらに、太陽のあたる時間を最低にし、最大の湿度が 得られるように、北西―南東向きに建てられています。 ボデガの中は、たとえ外気が40度を超す暑さでも、常に気温18度前後 湿度は80~90%程度を保っています。フロールは暗くて静かなところが 大好き!そのため太陽の光が届かないよう、窓は高い位置に横長に造られています。 さらに海風は入るけど光は入らないように、窓はブラインドもしくは エスパルト草のカーテンで覆われています。 長々と書いてきましたが、要するに… 一・ぶどうの栽培地域は、へレス、プエルト、サンルーカルを中心とする地域の 認定された畑で栽培すること! 二・ぶどうは、パロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルのみ! 三・熟成はオーク樽を使用し、伝統的なソレラ・システムで最低3年熟成させること! ちなみにヴィンテージ・シェリーもあるからね!! 四・熟成場所は、へレス、プエルト、サンルーカルの三都市内のボデガのみ!!! こんなところでしょうか…??? よく「酒飲みが最後に行き着くのはシェリー」という話を聞きます。 私はお酒が大好きですが、まだまだシェリーの世界にどっぷりハマったことはありません。 まだまだ未知多き分野です。 正直、あんまり好んでは飲まないですし・・・(←こらっ!!!) 今回ワイン課通信を書くにあたって、もうずいぶん前に勉強したことをいろいろ思い出して復習しましたが、 自分でもびっくりするほど忘れていたことだらけでした。 まったくバニュルスで働いているのに…けしからんことです。 なんだかまとまらない話ですみません。 また出直してきます。 長々とおつきあいありがとうございました<(_ _)> バニュルス上野店 横畠久美子 参考資料/「シェリー、ポート、マデイラの本」明比淑子著(小学館) 日本シェリー委員会 ホームページ
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