物理学 2007 1.数学の基礎知識 1.数学の基礎知識 § 1.1 三角関数 1. 三角比 三角比の定義 直角三角形の、直角でない角度 θ について、a を底辺、b を対辺、c を斜辺と いう (右図)。 これらの辺の比を 三角比 といい、次のように定義する。 サイン sin θ = c コサイン タンジェント b a b 、 cos θ = 、 tan θ = c c a b (1.1) θ さらに、その逆数についても、以下のように定義する。 セカンド コタンジェント c c a cosec θ = 、 sec θ = 、 cot θ = b a b a コセカンド (1.2) Fig.1.1 三角比の基本公式 tan θ = sin θ cos θ 、 cot θ = cos θ sin θ (1.3) sin2 θ + cos2 θ = 1 (ピタゴラスの定理) (1.4) 1 + tan2 θ = sec2 θ 、 1 + cot2 θ = cosec2 θ (1.5) 2. 三角関数 関数としての三角比 角度 θ を変化させると、(1.1) 式、(1.2) 式の三角比もそれに応じて変化する。 これよりこれらの三角比 は、角度 θ を独立変数とする関数と考えることができる。 この意味でこれらを 三角関数 という。 弧度法 角度の単位としては、日常的には 60 進法による度、分、秒が使わ れるが、数学的にはこれらは不便なので、弧度法 によりラジアン と y いう単位で表すことが多い (Excel などのソフトもこの単位で表されて θ いる)。 弧度法とは右の図で、角度 θ の値を、半径 1 の円の θ の角に対する θ 1 x 弧の長さによって表すものである。 角度をラジアンで表したときの値 x と、度を単位として表したときの値 X の間には、 Fig.1.2 X x = π 180 (1.6) の比例関係がある。 この教科書では、特に断らない限り、角度は全てラジアンで表す。 三角関数の加法定理 sin(α ± β ) = sin α cos β ± cos α sin β 、 tan(α ± β ) = cos(α ± β ) = cos α cos β ∓ sin α sin β tan α ± tan β (以上複号同順) 1 ∓ tan α tan β 1- 1 (1.7) (1.8) 物理学 2007 1.数学の基礎知識 § 1.2 ベクトル 1. ベクトルの定義 スカラーとベクトル 3, x2 のような大きさだけを持つ量をスカラー といい、大きさと方向を持つ量をベクトル という。ベク トルは n 次元空間 (n = 1, 2, · · · ) での矢印で表され、その元を始点、先を終点という。∗1 ベクトルの相等 2 つのベクトルの大きさ、向きがともに等しいとき、両者は相等しいという。このとき、片方のベクト ルを平行移動してもう一つのベクトルに重ねることができる。 単位ベクトル 大きさ 1 のベクトルを単位ベクトル という。 2. ベクトルの和とスカラー倍 ベクトルの和 2 つのベクトル ~x、~y を、始点が同じ点 O になるように平行移動させ、こ の 2 ベクトルが 2 辺となるような平行四辺形の対角線ベクトルを、ベクトル ~x、~y の (ベクトル) 和といい、~x +~y と書く (図 1.3)。 ゼロベクトルと逆ベクトル 大きさが 0 で方向のないベクトルをゼロベクトル といい、~0 あるいは単に 0 で表す。また、あるベクトル ~x に対し、大きさが同じで方向が逆であるベ クトルを逆ベクトル といい −~x で表す。明らかに、 ~x +~y » ~y »»» ¤ »» ¤ ¤ ¤ ¤ : ~x O Fig.1.3 ~x + (−~x) = ~0 である。 ベクトルの差 ベクトル ~x と ~y の逆ベクトル −~y とのベクトル和を、ベクトル ~x から ベクトル ~y を引いた (ベクトル) 差 といい、~x −~y と表す。 ベクトルのスカラー倍 ベクトル ~x と同じ向きで、その大きさだけが α (∈ R) 倍であるベクトルを、~x のスカラー倍といい、α~x と書く (図 1.4)。α < 0 のときの α~x は、ベクトル |α |~x と大きさが同じで向きが逆、すなわち逆ベクトルとなる。 © * ©© * α~x ~ x r Fig.1.4 3. ベクトルの成分表示 位置ベクトルと相対ベクトル n 次元空間内のベクトルに対して、原点と n 個の座標軸 X1 , X2 , · · · Xn を設定する。ベクトルをその大き さと向きとを変えずに、始点を原点に持ってきたものを位置ベクトル という。 それ以外のベクトルを位 置ベクトルと区別するときには、相対ベクトル ともいう。 ∗1 この表現は直感的な理解のために使われる。物理の世界では、座標系を回転させても、表現が変わらない量を、向きを持た ない量あるいはスカラー量という。 これに対して、座標系を回転させるとその表現が変化する量を、一般にテンソル量とい う。そして 1 階のテンソル量のことを、ベクトル量という。 1- 2 物理学 2007 1.数学の基礎知識 このとき位置ベクトル ~x の終点の座標 x1 , x2 , · · · xn をベクトルの成分 といい、次のように表す。 x1 x2 ~x = . .. xn (1.9) n をそのベクトルの次元 という。また、n 個の成分からなるベクトルを n 次 (元) ベクトルという。 ベクトルの和の成分表示 ベクトルの和を成分で書き表すと、次の式のように書ける。 x1 y1 x1 + y1 x2 y2 x2 + y2 −−→ ~x +~y = . + . = . = x + y .. .. .. xn yn xn + yn (1.10) ベクトルのスカラー倍の成分表示 同様に、ベクトルのスカラー倍を成分で書き表すと、次の式のように書ける。 x1 α x1 x2 α x2 − → α~x = α . = . = α x .. .. xn α xn (1.11) ベクトルの大きさ n 次元ベクトル ~x の大きさを |~x | と書く。 これは成分により次の式で表される。 q |~x | = x12 + x22 + · · · + xn2 (1.12) ベクトルの向き xi n 次元ベクトル ~x と、各座標軸 Xi のなす角度をそれぞれ θi とし、その余弦 li = cos θi = を並べた、 |~x | ¡ ¢ l1 , l2 , · · · , ln は正負も含めたベクトルの方向を表す。これを 方向余弦 という。 このとき (1.12) 式より次の式が成り立つ。 n ∑ li2 = l12 + l22 + · · · + ln2 = 1 (1.13) i=1 ベクトルの時間微分 (直角座標での) ベクトルの時間微分は、それぞれの成分について微分したものを成分とするベクトルと なる。 d x(t) dt x(t) ~ d y(t) d r(t) ~ と表される。 r(t) = y(t) のとき、その時間微分は、 = dt d t z(t) d z(t) dt 1- 3 (1.14)
© Copyright 2024 Paperzz